説明

分注装置、自動分析装置及び分注方法

【課題】プローブを大径化することなく、密閉型の液体保持容器からの液体の分注精度を向上させる。
【解決手段】サンプル用ポンプと、サンプル用ポンプに接続されて液体試料205を吸引し吐出するサンプリングプローブ3と、サンプリングプローブ3を洗浄する洗浄液吐出ノズル209と、サンプル用ポンプ及びサンプリングプローブ3を制御するコンピュータとを備え、コンピュータは、試料容器101の液体試料205をサンプリングプローブ3内に吸引し試料容器101からサンプリングプローブ3を抜いてから反応容器5に液体試料を分注するまでの間に、サンプル用ポンプに設定量だけ吐出動作させる第1の手順、及び洗浄液吐出ノズル209にサンプリングプローブ3の先端部を洗浄させる第2の手順を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器や試薬容器等の液体を保持した液体保持容器から液体を採取して反応容器に分注する分注装置、これを備えた自動分析装置及び分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動分析装置には、一般に上部の開口部が開放された非密閉型の液体保持容器(試料容器や試薬容器等)が用いられるが、近年、真空採血管等のゴムキャップで開口部を塞いだ密閉型の液体保持容器が広く普及し、分注装置においても、開栓することなく密閉型の液体保持容器から直接液体を採取したいという要求がある。
【0003】
しかし、一般に密閉型の液体保持容器の内部は外気圧に対して陰圧になっていることが多く、この場合には、プローブを液体保持容器から引き抜くと、吸引した液体が外気に押されてプローブの先端から基端側に押し込まれてしまう。この場合、ポンプの動作量に対して液体の分注量が減少してしまい、所要の分注精度が確保されない。
【0004】
それに対し、液体試料の吸引用の通路に通気用の通路を並設し、2本の通路でプローブを一体に構成したものがある(特許文献1等参照)。当該技術によれば、2本の通路からなるプローブをゴムキャップに貫通させ、吸引用の通路を介して密閉型の液体保持容器から液体を吸引する最中、通気用の通路を介して通気することで、液体保持容器の内外の圧力差を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−304400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、吸引用に加えて通気用の2つの通路を有しているためにプローブ外径が太く、ゴムキャップに突き刺す際の摩擦力が大きいため、ゴムキャップに対するプローブの抜き挿しに大きな力を要する。その他、プローブ外面の磨耗、抜き挿し時のゴムキャップカスの発生、プローブを抜いた後にゴムキャップに残る孔からの保持液体の漏洩、ゴムキャップカスのプローブへの詰まり等の不具合も発生し得る。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、プローブを大径化することなく、密閉型の液体保持容器からの液体の分注精度を向上させることができる分注装置、自動分析装置及び分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、液体保持容器の液体をプローブ内に吸引して当該液体保持容器からプローブを抜いてから反応容器に液体を分注するまでの間に、ポンプに設定量だけ吐出動作させた後、プローブ先端を洗浄する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プローブを大径化することなく、密閉型の液体保持容器からの液体の分注精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る分注装置の一実施形態を備えた自動分析装置の概略図である。
【図2】本発明に係る分注装置を一実施形態に備えられた試料分注機構の模式図である。
【図3】液体試料の一般的な分注シーケンスを表した比較例の模式図である。
【図4】本発明の分注装置の一実施形態による分注シーケンスを表す模式図である。
【図5】開放型の試料容器からの吸引動作を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
本実施形態は、液体の分注装置、これを備えた自動分析装置、液体の分注方法に関する。自動分析装置は、血液、尿等の生体試料の成分を自動的に分析するものであり、試料容器や試薬容器から液体を採取して反応容器に分注する分注装置を有するものである。
【0013】
図1は本発明に係る分注装置を備えた自動分析装置の概略図、図2は後述する試料分注機構10の模式図である。
【0014】
図1に示した自動分析装置は、操作部ユーザインターフェース104、血液や尿等の生体試料が入った試料容器101を設置した試料ディスク(サンプルディスク)102、分析項目に対応した試薬が入った試薬容器(試薬ボトル)112を設置した試薬ディスク125、反応容器5が設置された反応ディスク4、試料容器101の液体試料を反応容器5に分注する試料分注機構(サンプリング機構)10、試薬容器112の試薬を反応容器5に分注する試薬分注機構20、反応容器5の試料等を撹拌する撹拌機構113、反応容器5内の目的成分の発光値若しくは吸光度又はそれらの変化を読み取る測定手段115、使用後の反応容器5等を洗浄する反応容器洗浄機構119等を備えている。
【0015】
試料分注機構10は、垂直に立設したポスト1と、ポスト1に基端部が取り付けられた水平なサンプリングアーム2と、サンプリングアーム2の先端部に垂設したサンプリングプローブ3とを備えている。サンプリングアーム2は、ポスト1に対して上下に水平移動するとともに、基端部を支点にポスト1に対して水平方向に回動する。サンプリングプローブ3は、図2に示したように管路11を介してサンプル用ポンプ(シリンジポンプ)107に接続されていて、サンプル用ポンプ107の進退動作に伴って液体試料の吸引動作及び分注動作を実行する。サンプリングプローブ3とサンプル用ポンプ107を繋ぐ管路11の内部は液体が保持されているおり、サンプル用ポンプ107の体積変化によってサンプリングプローブ3の先端開口から液体試料が吸引・吐出される。サンプル用ポンプ107は、さらに図示しないポンプに接続されており、このポンプとサンプル用ポンプ107の間は電磁弁201により遮断されている。管路11内の液体を排出したり吸引したりする際、電磁弁201を開放し、図示しないポンプによって管路11内の液体を吸引・吐出する。
【0016】
また、図1では試料ディスク102に同心円状に3列の試料容器101がセットできるように容器保持部が形成されており、サンプリングプローブ3による試料吸引位置は試料容器101の各列に1箇所ずつ設定されている。ただし、図示したように同心円状に配置した多数の試料容器101を試料ディスク102上に直接搭載する場合に限らず、試験管(図示せず)に載せた状態で試料容器101を試料ディスク102に搭載することもある。
【0017】
試薬分注機構20は、既述した試料分注機構10とほぼ同様の構成であり、ポストを支点に水平に回動可能な可動アームの先端に試薬分注プローブ110を備えている。試薬分注プローブ110は、試薬用ポンプ111の動作に伴って液体試薬の吸引動作及び分注動作を実行する。図1では、試薬ディスク125に同心円状に2列の試薬容器112がセットできるようになっており、試薬分注プローブ110による試薬吸引位置は試薬容器112の各列に1箇所ずつ設定されている。
【0018】
上記反応容器洗浄機構119は、特に図示していないが、反応容器5を洗浄するための機構の他、試料分注機構10のサンプリングプローブ3に洗浄液210(図4(e)参照)をかける洗浄液吐出ノズル209(図4(d)参照)と、洗浄液吐出ノズル209から吐出した洗浄液210を受ける容器(以下、洗浄槽)とを備えている。これら洗浄液吐出ノズル209や洗浄槽は、サンプリングプローブ3の旋回経路上(例えば試料ディスク102と反応ディスク4の間)に配置されている。
【0019】
本実施形態の自動分析装置において、入力装置(キーボード121やCRT118の画面等)によって個々の液体試料の分析項目が入力される。試料ディスク102、試料分注機構10、サンプル用ポンプ107、試薬ディスク125、試薬分注機構20、試薬用ポンプ111等といった自動分析装置の各構成機器は、こうして入力された個々の液体試料の分析項目に応じて制御手段であるコンピュータ103によって制御される。
【0020】
コンピュータ103により実行される自動分析装置の基本動作について簡単に説明する。
【0021】
試料容器101内の液体試料を分析する場合、コンピュータ103は、まず試料ディスク102を回転移動させ、目的の試料容器101を試料分注機構10による試料吸引位置に移送して停止させる。そして、当該試料容器102上にサンプリングプローブ3が位置する状態でサンプリングアーム2を下降させる。これに伴ってサンプリングプローブ3の先端が液体試料の液面に接触すると、液面検出回路151から検出信号が出力され、それに基づいてコンピュータ103は、サンプリングアーム2の駆動部による下降動作を停止させる。
【0022】
続いてコンピュータ103は、サンプル用ポンプ107を駆動してサンプリングプローブ3内に所定量の液体試料を吸引する。サンプリングプローブ3に液体試料を吸引している間、サンプリングプローブ3とサンプル用ポンプ107を繋ぐ管路11(図2参照)の内部圧力の変動を圧力センサ152により検出し、この検出信号を圧力検出回路153によって監視している。コンピュータ103は、圧力検出回路153からの信号を基に、試料吸引中の圧力変動に異常を検知した場合、試料が所定量吸引されていない可能性が高いと判断し、当該吸引中の液体試料の分析データにアラームを付加する。
【0023】
コンピュータ103は、サンプリングプローブ3内に液体試料を吸引した後、サンプリングアーム2の駆動部に指令し、サンプリングアーム2を上死点まで上昇させる。そして、反応ディスク4上の所定の反応容器5の上方位置まで旋回させ、サンプリングプローブ3を下降させて、サンプル用ポンプ107を駆動して液体試料を反応容器5内へ分注する。
【0024】
また、コンピュータ103は、反応ディスク4を制御して、液体試料を分注した反応容器5を試薬添加位置まで移動させるとともに、試薬ディスク125及び試薬分注機構20を制御して、該当の分析項目に対応した試薬を試薬ディスク125上の試薬容器112から反応容器5に分注する。分注動作は試料分注の動作と基本的に同じであり、試薬の液面を検出して試薬を吸引し、反応容器5に分注する。
【0025】
反応容器5に液体試料及び試薬を分注したら、コンピュータ103は、反応ディスク4及び撹拌機構113を制御して、当該反応容器5を撹拌位置に移動させるとともに、当該反応容器5内の液体試料及び試薬を攪拌する。その後、反応ディスク4を制御して反応容器5を測定位置に移動させ、光源ランプ114により検査光を反応容器5に照射し、測定手段115によって反応容器5の内容物の発光値或いは吸光度を測定する。測定手段115には、光電子増倍管や光度計等が使用される。測定手段115からの検出信号は、A/D変換器116でデジタル信号化され、インターフェース104を介してコンピュータ103に入力される。コンピュータ103は、この入力信号を基に分析項目の濃度を計算し、インターフェース104を介して当該分析結果を、メモリ122に格納するとともに、操作に応じてプリンタ117に印字出力、又はCRT118に画面出力する。
【0026】
測定後、コンピュータ103は、反応ディスク4を制御して洗浄位置に反応容器5を移動させ、反応容器洗浄機構119によって使用済みの反応容器5を洗浄する。反応容器洗浄機構119では、洗浄用ポンプ120により、洗浄液(水、イオン交換水等)を反応容器5内に供給するとともに、反応容器5から廃液を排出する。
【0027】
ここで、本実施形態の自動分析装置には、プローブの洗浄手段を備えた分注装置が備えられている。本実施形態では、液体試料を反応容器5に分注する分注装置を例に挙げて説明するが、試薬を反応容器5に分注する機構に適用することもできる。当該分注装置を構成するのは、前述したサンプル用ポンプ107、試料分注機構10、反応容器洗浄機構119、コンピュータ103等であり、コンピュータ103は、試料容器101の液体試料をサンプリングプローブ3内に吸引して試料容器101からサンプリングプローブ3を抜いた後、反応容器5に液体を分注するまでの間に、サンプル用ポンプ107に設定量だけ吐出動作させる第1の手順、及びサンプリングプローブ3の先端部を前述した洗浄液吐出ノズル209で洗浄する第2の手順を実行する。
【0028】
まず、比較例として、液体試料の一般的な分注シーケンスの模式図を図3に表す。
【0029】
図3(a)は、プローブ3’が液体試料205’を吸引するために試料容器101’に侵入する直前の状態を表している。試料容器101’は、ゴム等の軟材料からなる栓203’で密閉されている。プローブ3’には液体(システム水)202’(本実施形態で管路11に保持された液体と同様)が保持されており、プローブ3’から液体試料205’を吸引するための準備動作として、プローブ3’内に吸引した液体試料205’ が液体202’と接触して希釈されることを防止するために、プローブ3’の先端部に空気204’を吸引し、この空気204’によってプローブ3’内における液体202’と液体試料205’とを遮断する層を形成する。
【0030】
図3(b)はプローブ3’が栓203’を貫通し液体試料205’を吸引している状態を表している。このとき、液体202’との接触した場合の希釈抑制やサンプル用ポンプのバックラッシュ補正動作の吐き戻しに備え、必要量よりも多目にプローブ3’に液体試料206’(プローブ3’に吸引された液体試料に符号206’を付す)を吸引しておく。このとき、密閉された試料容器101’の内部圧力はサンプル用ポンプの吸引動作によって外部よりも低下する。また、例えば、試料容器101’が真空採血管である場合には、プローブ3’の侵入以前から試料容器101’の内圧が外圧より低いことがある。
【0031】
図3(c)は試料容器101’からプローブ3’を引き抜いた状態を表している。このとき、プローブ3’の先端開口部は、試料容器101’内部の陰圧下から外部の圧力環境に曝されるため、保持した液体試料206’は外気に押されてプローブ3’の先端部に空気207’が侵入する。
【0032】
図3(d)は反応容器5’に液体試料206’を吐出する直前の状態を表している。プローブ3’の先端部に空気207’が侵入しているため、サンプル用ポンプで規定量の吐出動作を実行しても、実際に反応容器5’に吐出される液体試料206’の量は空気207’の分だけ不足してしまう。また、この空気207’のプローブ3’への侵入量にはバラツキが生じるため分注再現性も低下する。
【0033】
そこで、本実施形態では、前述したように、液体試料を吸引して試料容器101からサンプリングプローブ3を抜いて反応容器5に液体を分注するまでの間に、サンプル用ポンプ107に設定量だけ吐出動作させる第1の手順、及びサンプリングプローブ3の先端部を前述した洗浄液吐出ノズル209で洗浄する第2の手順を実行する。
【0034】
図4は本実施形態の分注装置による分注シーケンスを表す模式図である。
【0035】
図4において、図4(a)−図4(c)及び図4(f)の手順は、図3(a)−図3(d)の手順に対応する手順であり、図4のシーケンスは、図3(c)及び図3(d)の手順の間に図4(d)及び図4(e)の手順を追加したものに相当する。すなわち、図4(d)及び図4(e)の手順が、上記の「第1の手順」及び「第2の手順」であり、これら図4(d)及び図4(e)の手順を追加することによって分注精度の安定化を図っている。各手順について説明する。
【0036】
図4(a)はサンプリングプローブ3が液体試料205を吸引するために試料容器101に挿入される直前の状態を表している。試料容器101は、ゴムなどの軟材料からなる栓203で密閉された密閉型の容器である。サンプリングプローブ3から液体試料205を吸引する準備動作として、上記同様、サンプリングプローブ3の先端部には空気204の層が保持されている。
【0037】
図4(b)はサンプリングプローブ3が栓203を貫通し液体試料205を吸引した状態を表している。吸引してサンプリングプローブ3に保持された液体試料206(サンプリングプローブ3に吸引された液体試料に符号206を付して液体試料205と区別する)がサンプリングプローブ3内に保持された液体202と接触することによる希釈の抑制やサンプル用ポンプ107のバックラッシュ補正動作の吐き戻しを許容するために、必要な分注量よりも多く液体試料205をサンプリングプローブ3内に吸引する。このとき、密閉された試料容器101の内部圧力はサンプル用ポンプ107の吸引動作により外部よりも低下する。また、試料容器101が真空採血管である場合は、サンプリングプローブ3を挿入する以前から試料容器101の内圧が外気圧よりも低いことがある。
【0038】
図4(c)は密閉された試料容器101からサンプリングプローブ3を引き抜いた状態を表している。このとき、サンプリングプローブ3の先端開口部にかかる気圧が上昇し、サンプリングプローブ3の先端部には空気207が侵入する。
【0039】
図4(d)はサンプリングプローブ3から液体試料206を若干量吐出した状態を表している。この手順において、コンピュータ103は、試料分注機構10を制御し、反応容器洗浄機構119の洗浄液吐出ノズル209及び洗浄槽(前述)の位置にサンプリングプローブ3を移動させる。そして、サンプル用ポンプ107を駆動してサンプリングプローブ3内の液体試料206の一部(若干量)だけ洗浄槽に吐出する。
【0040】
この際、例えば液体試料205や試料容器101の種類ごとにサンプリングプローブ3への空気207の侵入量のデータを収集し、サンプリングプローブ3に侵入し得る空気207の最大量を過去のデータを基に予め割り出しておく。或いは、サンプリングプローブ3に侵入し得る空気207の最大量を計算により求めておいても良い。そして、このデータをコンピュータ103の記憶部(図示せず)に格納しておく。これにより、コンピュータ103は、液体試料205や試料容器101の条件に応じた設定の吐出量(>空気207の体積)だけサンプル用ポンプ107を駆動し、サンプリングプローブ3から空気207を排出し、空気207を液体試料206に置換する。このとき、液体試料206が洗浄槽に若干量滴下され、その結果、図4(d)に示したように、サンプリングプローブ3の先端に液体試料206の液滴208が垂下する。
【0041】
なお、この吐出のステップを洗浄槽で実行する必要は必ずしもない。例えば液体試料206の表面張力が強く大粒の液滴208が許容される場合には、空気207を排出した上で、液体試料206を滴下することなく液滴208を垂下させる程度にサンプル用ポンプ107に吐出動作させる構成とすることも考えられる。このように吐出のステップで液体試料206が滴下しない場合には、吐出のステップを洗浄槽で実行しなくても、サンプリングプローブ3を試料容器101から引き抜いた直後や移動中に当該ステップを実行するプログラムとしても良い。このようにすることで、全体のフローの動作時間の短縮に役立つ。
【0042】
図4(e)はサンプリングプローブ3の先端部に洗浄液(水、イオン交換水等)210をかけている状態を表している。このステップにおいて、コンピュータ103は、反応容器洗浄機構119を制御し、洗浄液吐出ノズル209によってサンプリングプローブ3の先端部に洗浄液210を設定量かけて、サンプリングプローブ3に垂下する液体試料206の液滴208を除去する。本実施形態では、洗浄液吐出ノズル209によってサンプリングプローブ3に洗浄液210を下方からかける場合を例示的に図示しているが、上方から洗浄液210をかける構成としても良いし、プローブ先端に水平方向から洗浄液210をかける構成としても良い。
【0043】
図4(f)は反応容器5に液体試料206を吐出する直前の状態を表している。図4(d)及び図4(e)の手順を踏むことによって空気207や液滴208が除去されているので、図4(f)の分注の際には、サンプルプローブ3に保持された液体試料206の下面が、サンプリングプローブ3の先端に面一の状態になっている。したがって、サンプル用ポンプ107の動作量に対して過不足のない規定量の分注量が得られ、高精度の分注性能が確保される。
【0044】
以上のように、本実施形態では、試料容器101の内外の圧力差によってサンプリングプローブ3に侵入した空気207を排出し、これに伴ってサンプリングプローブ3に垂下する液滴208を洗浄により除去することにより、通気用の通路を設けずとも、吸引・吐出用の通路のみからなるサンプリングプローブ3を用いて密閉型の試料容器101内の陰圧に起因する分注精度の低下を抑制することができる。したがって、サンプリングプローブ3の大径化を抑制することができるので、サンプリングプローブ3を栓203に突き刺す際の摩擦力を抑えることができる。そのため、栓203に対するサンプリングプローブ3の抜き挿しに大きな力を要さず、プローブ外面の磨耗、抜き挿し時の栓203のカスの発生、サンプリングプローブ3を抜いた後に栓203に残る孔からの液体試料205の漏洩、栓203のカスのサンプリングプローブ3への詰まり等の不具合の抑制に貢献する。栓203に大きな孔が残らないので、試料容器101の密閉性を維持できる点もメリットである。また、一般のプローブを用いることができるので、プローブ構造が複雑化することもなく、装置コストも安価に抑えられる。
【0045】
なお、本実施形態は、試料容器101が密閉型である場合に限らず、試料容器101が開放型の場合にも問題なく適用可能である。試料容器101が開放型である場合に本実施形態を適用した場合のメリットについて次に説明する。
【0046】
図5は開放型の試料容器101からの吸引動作を表した模式図である。
【0047】
図5において、試料容器101に栓はされておらず、試料容器101は開放型となっている。液体試料205の分注を高速化するためには、液体試料205の吸引、サンプリングプローブ3の移動、反応容器5への吐出の一連の動作を速やかに実行しなければならない。しかし、試料吸引速度を上げると、サンプル用ポンプ107の吸引動作終了からサンプリングプローブ3及び管路11内の圧力が静定するまでに要する時間が長くなる。この場合、圧力が制定するまで、図5(a)に示したようにサンプリングプローブ3を試料容器101中の液体試料205に浸漬した状態で待機しなければならず、吸引速度を上げることで単純に分注動作の時間短縮とはならない。
【0048】
仮にサンプル用ポンプ107の停止後、サンプリングプローブ3及び管路11内の圧力が大気圧に静定する前にサンプリングプローブ3を液体試料205から引き上げると、図5(b)のように先端部に空気207が侵入する。また、圧力振動のハンチング中にサンプリングプローブ3を液体試料205から引き上げると、図5(c)のように時間経過して圧力が静定するとサンプリングプローブ3の先端に液滴208が垂下した状態になることもあり得る。このように、液体容器101が開放型であっても、吸引速度や吸引後の待機時間が適正でなければ分注精度に影響する恐れがある。
【0049】
それに対し、試料容器101が開放型である場合に図4(a)−図4(f)で説明した一連の手順を実行すると、図5(b)や図5(c)のようにサンプリングプローブ3の先端に空気207の侵入や液滴208の垂下が発生しても、吐出動作を行うステップ(図4(d))とプローブ先端を洗浄するステップ(図4(e))を実行することによって、空気207や液滴208を除去することができ、分注精度を確保することができる。この場合、吸引速度を上げても、圧力静定を待たずに液体試料205からサンプリングプローブ3を引き上げることがで、分注作業の時間短縮に貢献する。
【0050】
なお、サンプリングプローブ3及び管路11内の圧力振幅が過大で、サンプリングプローブ3の移動中に吐出ステップ(図4(d))を実行することが好ましくない場合(液体試料206が移動中に滴下する恐れがある場合)、吐出ステップを洗浄槽で実行させることが望ましい。吐出ステップにおける液体試料206の吐出量は吸引量のせいぜい数分の一で足りるので吸引時に比べて静定に要する時間は大幅に短く、この場合でも全体として時間短縮になる。
【0051】
なお、以上において、サンプリングプローブ3の先端を洗浄するステップで洗浄液210を用いる場合を例に上げて説明したが、気体(空気等)をサンプリングプローブ3の先端に噴き付けてサンプリングプローブ3に垂下する液滴208を洗浄し除去する構成としても良い。また、気泡を混入した洗浄液210をサンプリングプローブ3の先端に噴き付ける等、液体と気体を組み合わせて液滴208を洗浄し除去する構成としても良い。
【符号の説明】
【0052】
3 サンプリングプローブ
4 反応ディスク
5 反応容器
10 試料分注機構
20 試薬分注機構
101 試料容器
102 試料ディスク
103 コンピュータ
107 サンプル用ポンプ
110 試薬分注プローブ
111 試薬用ポンプ
112 試薬容器
119 反応容器洗浄機構
120 洗浄用ポンプ
125 試薬ディスク
204 空気
205 液体試料
207 空気
208 液滴
209 洗浄液吐出ノズル
210 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
このポンプに接続されて液体を吸引し吐出するプローブと、
このプローブを洗浄する洗浄手段と、
前記ポンプ及び前記プローブを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
液体保持容器の液体を前記プローブ内に吸引し当該液体保持容器から前記プローブを抜いてから反応容器に液体を分注するまでの間に、
前記ポンプに設定量だけ吐出動作させる第1の手順、及び前記洗浄手段に前記プローブの先端部を洗浄させる第2の手順を実行する
ことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
請求項1の分注装置において、前記第1の手順で前記プローブ内に保持した液体の一部を洗浄槽に吐出することを特徴とする分注装置。
【請求項3】
請求項1の分注装置において、前記第1の手順で前記ポンプの吐出動作を当該プローブの移動中に実行させることを特徴とする分注装置。
【請求項4】
請求項1の分注装置において、前記液体保持容器が密閉型であることを特徴とする分注装置。
【請求項5】
請求項1の分注装置において、前記液体保持容器が開放型であることを特徴とする分注装置。
【請求項6】
請求項1の分注装置において、前記第2の手順で前記プローブを液体で洗浄することを特徴とする分注装置。
【請求項7】
請求項1の分注装置において、前記第2の手順で前記プローブを気体で洗浄することを特徴とする分注装置。
【請求項8】
請求項1の分注装置において、前記第2の手順で前記プローブを液体及び気体で洗浄することを特徴とする分注装置。
【請求項9】
試料容器を設置した試料ディスクと、
分析項目に対応した試薬が入った試薬容器を設置した試薬ディスクと、
反応容器が設置された反応ディスクと、
ポンプと、
このポンプに接続されて液体を吸引し吐出するプローブと、
このプローブを洗浄する洗浄手段と、
前記ポンプ及び前記プローブを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記試料容器又は前記試薬容器である液体保持容器の液体を前記プローブ内に吸引し当該液体保持容器から前記プローブを抜いた後、前記反応容器に液体を分注するまでの間に、
前記ポンプに設定量だけ吐出動作させる第1の手順、及び前記洗浄手段に前記プローブの先端部を洗浄させる第2の手順を実行する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
液体保持容器の液体をポンプによってプローブ内に吸引し当該液体保持容器から前記プローブを抜いた後、反応容器に液体を分注するまでの間に、
前記ポンプに設定量だけ吐出動作させ、前記プローブの先端部を洗浄させることを特徴とする分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−106828(P2011−106828A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258945(P2009−258945)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】