説明

切り換え可能な光学的部品

切り換え可能な光学的部品およびかかる部品を製造する方法を記載する。
切り換え可能な光学的部品(1)は、部品(1)の光軸(A)に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の互いに混じらない流動体(20、22)を含む液体室を含む。第2の流動体(22)は、電気湿潤作用によって光軸(A)から離れる方向に移動可能であり、切り換え可能な光学的部品(1)に光軸(A)に沿った切り換え可能な透過率をもたらす。切り換え可能な光学的部品(1)は、光学的減衰器、たとえばシャッタ、フィルタまたは絞りとしての使用に適し、写真機、レーザ共振空洞、投射器および走査型光学的記録器用デバイスなどの用途において機械式代替品に代えて好都合に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り換え可能な光学的部品に関し、切り換え可能な光学的部品を含む光学的デバイスにも関する。さらに、本発明は、切り換え可能な光学的部品を製造する方法に関し、光学的走査デバイスを製造する方法にも関する。切り換え可能な光学的部品は、それだけには限定されないが、光学的な絞り、シャッタまたはカラー・フィルタとしての使用に、特に適している。
【背景技術】
【0002】
シャッタや絞りなどを含め、機械的可動部品に基づく切り換え可能な光学的部品は、既知である。機械的可動部品に基づく切り換え可能な光学的部品は、光学的透過率が相違する所定の状態、たとえば減衰率が高い状態または低い状態を切り換えることができる光学的透過特性を有する。しかし、機械的可動部品は、比較的大きく、製造が高価になることがある。さらに、機械的可動部品は、磨耗を受け、したがって寿命が限られ、その耐用年数の間に信頼性問題が起きることがある。
【0003】
米国特許出願第2001/0017985号に、機械的可動部品を必要とせず、所定の状態を切り換えることができる光学的透過特性を有する光学的デバイスが記載されている。図12および13は、実質的に不透明な第1の液体101と、実質的に透明な第2の液体102とを容器103中に含むデバイス100を示す。液体は、混じりあわず、それらの境界104が実質的に球状の表面の一部として形成されるように、容器103中において構成される。界面電気現象(電気湿潤)を使用して、第1および第2の液体101、102の間の境界104の形状を図12の構成と図13の構成で変化させることができる。
【0004】
図12の構成では、デバイス100に電圧が加えられておらず、デバイス100への入射光は、実質的に不透明な第1の液体101によって遮られる。デバイスに電圧を加えると、図13の構成がもたらされる。図13では、第1および第2の液体101、102の間の境界104は、第1の液体101がデバイス100の光路から除外されるように形作られる。境界104の形状は、境界104が容器103の内側表面に接触し、その接触領域から第1の液体101を強制的に排除するように制御される。したがって、デバイス100への入射光は、第1の液体101によって遮られることなく、デバイス100は実質的に透明になる。
【0005】
デバイス100には、いくつかの欠点がある。第1に、デバイス100は、接触領域の形状を円形でない何かの形になるように制御することが難しいので、比較的柔軟性がない。第2に、実際に、オン状態(図13)からオフ状態(図12)に変化するとき、容器103の内側表面から第2の液体102を引き離すのが困難になることがある。第2の液体102が内側表面から離れ、またこれに付着すると、単調でない遷移を示すことがおおくなる。
【0006】
第3に、オフ状態で2つの液体間の界面104が湾曲しているのは、デバイスがその領域全体で一様な透過特性を有さない恐れがあることを意味する。第4に、表面が湾曲しているので、光学的に有効な領域は、デバイスの実際の大きさより著しく小さい。第5に、2つの液体間の境界104が一般に湾曲しているので、液体は、レンズ効果が境界において生ずるのを避けるために、実質的に等しい屈折率でなければならない。液体の特性に対して、電気湿潤作用が起こるのを可能にし、透過率特性の所望の変動性をもたらす他の要求事項がある。したがって、デバイス中で使用するために利用できる液体の範囲は、比較的限定され、実用的なデバイスを実現するには、いくつかの特性について妥協しなければならない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の好ましい実施形態の一目的は、本明細書で言及されるまたはそうでなくとも従来技術の1つまたは複数の問題点に対処する、切り換え可能な光学的部品を提供することである。別の目的は、かかる部品を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、第1の流動体に結合された第1の電極と、第2の電極とを含み、第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して実質的に光軸に対して横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、切り換え可能な光学的部品を提供する。
【0009】
かかるデバイスは、非円形の、または他の形に形成された有効領域を有するように設計することができる。第2の液体が液体室の内側表面に接触して、透過率の実質的な変化をもたらす必要がなく、したがってその表面から第2の液体を引き離すという問題も起こらない。さらに、第1および第2の液体の間に実質的に平面である界面が可能になり、部品全体で高度な一様性が得られる。これは、第1および第2の液体の間の境界に起因して起こるレンズ効果の問題を防止し、切り換え可能な部品中により広い範囲の液体を使用できることを意味し、したがって液体の選択において妥協しなければならないことは、ほとんどなくなる。さらに、界面が実質的に平面であることによって、部品を薄くすることが可能になる。
【0010】
別の態様では、本発明は、切り換え可能な光学的部品を含み、この切り換え可能な光学的部品が、切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、第1の流動体に結合された第1の電極と、第2の電極とを含み、第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して実質的に光軸に対して横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、光学的デバイスを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、切り換え可能な光学的部品を製造する方法を提供し、この方法は、切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室を設けるステップと、第1の流動体に結合された第1の電極および第2の電極を設けるステップとを含み、第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して実質的に光軸に対して横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成されるものである。
【0012】
別の態様では、本発明は、光学的記録器の情報層を走査するための光学的走査デバイスを製造する方法を提供し、この方法は、第1の放射線ビームを生成するための第1の放射線源を設けるステップと、第1の放射線ビームを情報層上に収束させるための対物システムを設けるステップと、第1の放射線ビームを制御するように構成された切り換え可能な光学的部品を設けるステップとを含み、この方法は、設けられる切り換え可能な光学的部品が、切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、第1の流動体に結合された第1の電極と、第2の電極とを含み、第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して実質的に光軸に対して横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の目的および利点は、添付の特許請求の範囲によって記載された好ましい特徴から明らかになろう。
【0014】
本発明のより良い理解を得、本発明の実施形態をどのように実行に移すことができるかを示すために、ここで例として、添付の図面を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らによって、図12および13のデバイス100にともなう欠点の克服を可能にすることが実現され、小型であり機械的可動部品を有さず、多数の用途において使用できる切り換え可能な光学的部品が提供される。流動体がこの部品の光軸に対して実質的に横向きに移動するように構成された切り換え可能な光学的部品を提供することによって、多数の効果、たとえば可変開口率絞り、切り換え可能なカラー・フィルタおよびシャッタを得ることが可能となる。ここで、シャッタとして働く本発明の第1の実施形態の動作を説明する。
【0016】
図1は、第1の状態にある本発明の第1の好ましい実施形態による切り換え可能な光学的部品1の側面図を示す。この切り換え可能な光学的部品1の光軸は、ラインA−Aに平行であり、デバイスの有効領域は領域Bの上に延在する。切り換え可能な光学的部品1は、液体室2と、第1の流動体20と、第2の流動体22とを含み、シャッタを形成するように構成される。第1および第2の流動体20、22は、実質的に互いに混じらない液体からなり、光軸に沿って互いに相対的に置き換えられる。第2の流動体22は、実質的に不透明であり、第1の状態では、切り換え可能な光学的部品1内に配置されて、領域B全体にわたって連続する層の形になり、それによって光が領域Bにおいて切り換え可能な光学的部品1を通過しないようにする。第1の状態では、シャッタは、閉である。
【0017】
図2は、第2の状態にある切り換え可能な光学的部品1の側面図を示す。第2の状態では、第2の流動体22は、光が光軸A−Aに沿って領域Bを通過できるように配置される。第2の状態では、光軸から横向きで離れる方向に、脇の方へ領域Bから離れるように第2の流動体22を引っ張ることによって、シャッタは、開になる。
【0018】
ここで、切り換え可能な光学的部品1の動作をより詳しく説明する。具体的には、第2の流動体22をどのように使用して、切り換え可能な光学的部品1を第1の状態から第2の状態に切り換えるかを説明する。
【0019】
図1および2に、第1の電極24、第2の電極26および誘電性コンタクト層28も示す。コンタクト層28は、第2の電極26と第1および第2の流動体20、22の間に絶縁障壁を含む。切り換え可能な光学的部品1中の第1の流動体20は、極性または伝導性液体、ここでは水を含み、第2の流動体22は、非伝導性液体、ここでは油を含む。油および水は、実質的に互いに混じらなく、したがって別個の第1および第2の流動体20、22になる。油および水は、実質的に等しい密度になるように選ばれ、切り換え可能な光学的部品1が、重力および慣性の作用の影響を比較的受けないようにする。この部品が十分に小さければ、第1および第2の液体の密度は、互いに異なっても良い。コンタクト層28は、疎水性表面を有する電気絶縁性材料を含む。コンタクト層28の疎水性表面によって、切り換え可能な光学的部品1は、静止状態であるとき、図1に示すように確実に第1の状態にされるはずである。
【0020】
第2の電極26およびコンタクト層28は、デバイスの光路中にあり、したがって実質的に透明な材料からなる。たとえば、第2の電極26は、液晶表示器の分野で周知の透明な伝導体、インジウム・スズ酸化物の層を含む。
【0021】
他の光透過性伝導性層、たとえばRuO、PEDOTを使用することもできるはずである。コンタクト層は、アモルファス・フッ化炭化水素を含む。なぜならこの種の材料は、高度に疎水性であり、低誘電率を有し、良好な光透過率をもたらすからである。適正な特性の組み合わせを有する他の材料、たとえばポリアミドを使用することもできるはずである。
【0022】
第1の電極24は、第1の流動体20にそれと直接に接触して結合される。第1の電極24と第1の流動体20が直接に接触していることによって、その間での良好な電気伝導性を有した接触を確保することが可能になる。しかし、容量結合によって第1の電極24を第1の流動体20に結合することも可能である。これとは違って、第2の電極26は、第1および第2の流動体20、22から隔離することが好ましい。コンタクト層28は、液体室2の内側と第2の電極26の間の絶縁障壁になる。
【0023】
第1および第2の電極24、26の間に電圧源Vから電圧を加えると、電気湿潤作用によって、コンタクト層28の水による湿潤性が増大する。これは、水中の自由電荷が第1の電極24から反発され、第2の電極26に引き付けられ、したがって水を第2の電極26に引き付けることに起因する。実質的に、第2の電極26は、第1の流動体20に容量結合される。十分な電圧を加えた場合、水は、コンタクト層28に接触させられ、油は脇に移動させられて、油が光軸および領域Bから移動させられて離された図2に示す第2の状態をもたらす。第1および第2の電極24、26の間から電圧を除去すると、切り換え可能な光学的部品1が、図1の構成に戻るのが可能になる。
【0024】
図3および4は、図1および2の切り換え可能な光学的部品1がそれぞれ第1および第2の状態にある平面図である。この図から分かるように、切り換え可能な光学的部品1は、実質的に四角の形状をしているが、円形、楕円形、六辺形または不規則な形状を含め、他の形状も可能である。
【0025】
いくつかの技法を使用して、予想ができ再現性がある形で、確実に光軸から離れるように油を移動させることができる。液体室2の内側表面の湿潤性を変化させるのは、加えられた電圧に応答する油の移動の方向を制御する好都合な技法となる。
【0026】
油の移動の一例として、図1および2の実施形態では、コンタクト層28全体にわたって互いに平行に走る多数の等しい大きさで独立にアドレス可能なライン部に第2の電極26を分割する。この独立にアドレス可能なライン部に次々と電圧を加えることによって、そのライン部の上にあるコンタクト層28の湿潤性を次々と増大することができ、それによって油の移動が開始される位置、およびコンタクト層28を端から端に移動する油のその後の方向を制御する。電圧を加えて、切り換え可能な光学的部品1を第1の状態から第2の状態に切り換えるとき、独立にアドレス可能なライン部は、領域B全体にわたって一度に1本ずつ、順番に電圧を加えられ、他のライン部は付勢されない。これによって、電圧が加えられているライン部の下に、湿潤性が増大した一定の大きさの移動する領域が生成される。
【0027】
他の電極の組み合わせを使用して、油の移動を制御することもできる。たとえば、多数の独立にアドレス可能な同心で環状の電極を使用して、もっとも内側から始めてそれぞれに次々と電圧を加えることによって、その共通の中心から離れるように移動を制御することもできる。他の例では、1つの非伝導性領域または電極がない領域をコンタクト層の下に有する電極を使用することもできるはずである。この場合、油は、非伝導性領域の上の領域に集まろうとするはずである。均一な電極を使用して、製造した不均一部または他の不均一部をデバイス中に存在させることによって、移動が初期設定される油の移動を得ることができる。
【0028】
異なる電極に電圧を加えることによってコンタクト層の湿潤性を制御する方法の一別法として、たとえば、第1の水による湿潤性を有するコンタクト層の第1の領域と、より高い第2の湿潤性を有し、疎水性がより低い第2の領域とを設けることによって、コンタクト層の固有の湿潤性を部品全体にわたって変えることができる。この場合、電極に加えられた電圧に応答する油の移動は、比較的疎水性が低い領域から始まるはずである。
【0029】
液体室の内側表面に不均一部を設けて、加えられた電極の電圧に応答する第2の流動体の移動の再現性を高めることができる。
【0030】
たとえば、液体室の側壁を疎水性または親水性の材料で被覆することによって、側壁と油/水の間の界面張力を変化させると、加えられた電極の電圧に応答した特定の方向の油移動の再現性を高めることができる。さらに、壁の湿潤性は、液体間の界面がオフ状態で実質的に平面になる、またはある特有の曲率半径を有する(たとえば、光軸のまわりで油の変位の開始を促進する)ように、選ぶことができる。
【0031】
液体室の内側表面は、ある幾何的な不均一部、たとえばデバイスの中心に向かって延びる突起部などの不規則なフィーチャーを設けることもできる。デバイスの光軸に対して対称でないフィーチャーも適切な不均一部をもたらし、それによって加えられた電極の電圧に応答して起こる油の移動の再現性も高まる。
【0032】
コンタクト層の厚さまたは誘電特性に所定のプロフィールを部品全体にわたって与えて、様々な領域において加えられた電極の電圧に応答して電場の強さが相違するようにさせることができる。これは、電気湿潤の作用を局所的に増大することになる。たとえば、コンタクト層がより薄い領域においては、水および第2の電極が相対的により接近し、電場がより高くなる。油の移動は、電場がより高い領域で開始される。なぜならこの領域では湿潤性が増大しているからである。第2の電極に接触した第1の凹面の表面と、油に接触した第2の実質的に平面状の表面とを有するコンタクト層を使用することができるはずである。
【0033】
この場合、コンタクト層がもっとも薄い部分の上の油層が最初に移動し、油の移動がこの部分から進行するはずである。
【0034】
電気湿潤作用を局所的に増大する別の技法は、コンタクト層から延びた突起部を設けることを含む。突起部は、油層から延びており、電圧が電極に加えられていないときは、水と直接に連絡するように構成することができる。水が突起部の表面と触れていると、電圧が電極に加えられたとき、水がそこから油をより容易に移動することができる開始点が水に提供される。さらに、油層から突出している領域において、水による突起部の湿潤性の増大によって、突起部の作用が高まるので、油層から突出している領域において突起部を親水性被覆で覆うことができる。あるいは、電圧が電極に加えられていないときは、油層の下に留まり、コンタクト層と水の分離間隔を減らすことによって電気湿潤作用を局所的に増大させるように突起部を構成することができる。
【0035】
上記の技法のみ、またはその組み合わせを使用することによって、可変開口率絞りとして働き、油が光軸上の中心領域から移動して離れる切り換え可能な光学的部品を製造することができる。製造された絞りは、機械式絞りの代用品として、たとえばレーザ共振空洞内で、光学的ディスク記録/再生システム内で、または写真機内で使用することができる。
【0036】
図5は、第1および第2の鏡51、52と、絞り53の形としての切り換え可能な光学的部品とを含むレーザ共振空洞50を示す。レーザ空洞からの出力ビームは、第1および第2の鏡51、52の形状と、第1および第2の鏡51、52の分離間隔と、第1および第2の鏡51、52の間の光路中の、絞り53によってもたらされるような何らかの制約の存在とに依存する。有限開口を有するレーザ共振器は、コーゲルニックおよびリー(H. Kogelnik and T. Li)著、「レーザ・ビームおよび共振器(Laser Beams and Resonators)」、Appl. Opt. 5, 1966, ページ1550〜1567、ならびにシーグマン(A. E. Siegman)著、「レーザ(Lasers)」、University Science Books, Mill Valley, California, の本の第19章に広範囲にわたって記載されている。多数の用途用に特定のレーザ源を使用するのを可能にするために、空洞内の共振モードの同調、したがって出力ビームの同調が可能になるように、第1および第2の鏡51、52および/または絞り53の変更が所望される。しかし、鏡および/または絞りを調節することによって同調可能なレーザ空洞を実現する従来の機械式方法は、高価でかさばり信頼性にかける。本発明の一実施形態による絞り53を使用することによって、機械的可動部品に頼らず空洞内でモード構造を電気的に制御することが可能になる。
【0037】
これから説明する切り換え可能な絞りの別の用途は、光学的記録器62を走査するためのデバイス61中にある。図6は、光学的記録器62を走査するための、対物レンズ618を含むデバイス61を示す。記録器は、透明な層63を含み、その層の一方の側面上に情報層64が配置されている。透明層から遠くなる方向の情報層の側面は、保護層65によって環境の影響から保護される。デバイスの方向の透明層の側面は、入射面66と呼ばれる。透明層63は、情報層の機械的支持部になることによって記録器用の基板として働く。
【0038】
あるいは、透明な層は、情報層を保護するという唯一の機能を有し、一方情報層の他の側面上の層、たとえば保護層65または別の情報層および情報層64に接続された透明層が、機械的支持部になることができる。
【0039】
情報は、この図には示していないが、実質的に平行な、同心の、またはらせん状のトラック中に配列された光学的に検出可能なマークの形によって、記録器の情報層64に格納することができる。このマークは、光学的に読み出し可能な任意の形、たとえばその周辺とは異なる反射係数または磁化方向を有するくぼみまたは領域の形、またはその形の組み合わせとすることができる。
【0040】
走査デバイス61は、放射線ビーム612を放出できる放射線源611を含む。放射線源は半導体レーザでよい。ビーム・スプリッタ613は、発散する放射線ビーム612をコリメータ・レンズ614に向けて反射し、そのレンズは、発散する放射線ビーム612を平行ビーム615に変換する。平行ビーム615は、本発明の一実施形態による可変開口絞り600を含む対物システム618に入射する。
【0041】
対物システムは、1つまたは複数のレンズおよび/または格子を含んでよい。対物システム618は、光軸619を有する。対物システム618は、ビーム17を収束するビーム620に変形し、記録器62の入射面66に入射する。対物システムは、透明層63の厚さ分を通る放射線ビームの通過用に球面収差補正を適応されている。収束ビーム620は、情報層64上でスポット621を形成する。情報層64によって反射された放射線は、発散ビーム622となり、対物システム618によって実質的に平行ビーム623に変換され、その後コリメータ・レンズ614によって収束ビーム624に変換される。ビーム・スプリッタ613は、少なくとも収束ビーム624の一部分を検出システム625に向けて送ることによって、入射ビームおよび反射ビームを分離する。検出システムは放射線を捕捉し、それを電気出力信号626に変換する。信号プロセッサ627は、この出力信号を他の様々な信号に変換する。
【0042】
1つの信号は、情報信号628であり、その値は、情報層64から読み出された情報を表す。情報信号は、エラー補正用情報処理ユニット629によって処理される。信号プロセッサ627からの他の信号は、焦点エラー信号および半径方向エラー信号630である。焦点エラー信号は、スポット621と情報層64の間の高さの、軸方向の差を表す。半径方向エラー信号は、スポット621とスポットが追従するはずの情報層64中のトラック中心との間の、情報層64平面上における間隔を表す。焦点エラー信号および半径方向エラー信号は、サーボ回路631中に入力され、その回路は、これらの信号を、それぞれ焦点駆動部および半径方向駆動部を制御するためのサーボ制御信号632に変換する。駆動部は、この図には示していない。焦点駆動部は、焦点方向633で対物システム618の位置を制御し、それによってスポット621の位置が情報層64の表面と実質的に一致するようにスポット621の実際の位置を制御する。半径方向駆動部は、半径方向634で対物レンズ618の位置を制御し、それによってスポット621の半径方向の位置が、情報層64中の追従するはずのトラック中心ラインと実質的に一致するように、スポット621の半径方向の位置を制御する。この図のトラックは、この図の表面に対して直角方向に走っている。
【0043】
この特定の実施形態では図6のデバイスは、記録器62より厚い透明層を有する第2の種類の記録器を走査するようにもなされている。デバイスは、第2の種類の記録器を走査するために異なる波長を有する放射線ビームを使用する。第2の種類の記録器に関する第2の放射線源は、デバイス61中に含まれる。この好ましい実施形態では、放射線源611は、CD用レーザおよびDVD用レーザを含み、したがってデバイスは、CDおよびDVDのディスクを走査することができ、さらに適切なCDおよびDVDのディスクに書き込むことができる。
【0044】
CDディスクから読み出すために必要な光ビームの開口数(NA)は、通常0.45であり、一方DVDディスクから読み出すために必要なNAは、0.65である。光学的記録器を走査するために、対物システム618においてデバイス61の光路中に切り換え可能な絞り600を導入することによって、CDおよびDVDのディスクの両方のフォーマットに適するようにビームNAを変えるのが可能になる。
【0045】
記録媒体を再生するのに適するようにNAを調節するために絞り600を切り換えることに加えて、再生モードおよび記録モードを切り換えるときに、絞りを使用してビームのNAを変えることができる。書き込み時、ディスクの情報層上のスポット中に大きいピーク・パワーを生成するために、ディスク読み出し中よりもNAをいくらか大きくしてディスク上にビームを合焦することが好ましい。ディスク上へのマークの書き込みは、ディスク上にスポットの中心ピークを加えて実施され、一方スポットのサイドローブは、記録媒体の状態を変えるのに十分なエネルギーを含まない。その結果、スポットのサイドローブをディスクの傾きに対してより反応させるより大きいNAは、書き込み時問題を生じない。逆に、読み出し中、サイドローブ反射からのクロストークを防ぐために高い縁強度および非常に小さいサイドローブを生成することが好ましい。したがって、読み出すためには、NAは、書き込み段階より小さいことが好ましい。絞り600を使用して、記録または読み出しの要求に対してビーム・プロフィールを整合させる助けとすることができる。ビームNAの変化をさせるのみならず、本発明の好ましい実施形態による切り換え可能な光学的部品を使用して、記録モードと読み出しモードでビーム形状を変えることができる。上述したように、記録用ビームは、通常ピーク強度が高くなるように形作られる。しかし、読み出す場合は、互いに隣接するトラック間のクロストークを低減することが重要である。いくつかの例では、楕円形または他の非円形の対称的なビーム形状を使用することができ、そのビーム形成は、切り換え可能な光学的部品の開口形状を変えることによってもたらされる。
【0046】
光学的情報記憶システムをCDおよびDVD機能を有するものとして説明してきたが、切り換え可能な光学的部品を同様に他の情報記憶フォーマット、たとえばブルーレイ・ディスクを有するシステムに適用することができる。
【0047】
第2の液体として使用に適した油には、鉱物性の油、たとえばシリコン油が含まれる。適切な量の染料または顔料を油に添加することによって、油の選ばれた光学的透過特性を調整して効果を得ることができる。油に添加する染料の量および種類を選ぶことによって、様々な光学的な効果を得ることができる。たとえば、上記のシャッタまたは絞りを得るためには、黒色染料を添加することによって油を実質的に不透明にする。あるいは、着色染料を添加して切り換え可能なフィルタ作用を実現することができる。別の例として、光散乱粒子を油に添加して切り換え可能な拡散性反射フィルタを製造することができる。無色の油を染色しまたはその他の方法で処理した油の代わりに、固有色または光散乱作用を有する油を使用して、光学的透過率の所望の変化が得られると予想できる。切り換え可能な光学的部品は、可視スペクトル外で動作することができるはずで、たとえば電磁スペクトルの紫外線または赤外線の部分で有効であることを理解されたい。切り換え可能なフィルタの用途には、シアン・フィルタを使用して日中と夜間の感度を切り換えることができる写真機およびビデオカメラにおける使用、または様々な色の画像が時間に連続的な投射によって重畳されるビデオ投射システムにおける使用が含まれる。
【0048】
図7は、2重カラー・フィルタを含む切り換え可能な光学的部品7を示す。2重カラー・フィルタは、2個の部品を含み、そのそれぞれが本発明の第1の実施形態について説明したのと同様に実質的に機能するように構成されているが、固形の隔離する境界がその間にない1個の液体室に密閉されている。1個の切り換え可能な光学的部品中に2個のフィルタを組み込んだことによって、大きさを減らすことが可能になる。
【0049】
液体室2は、第1の流動体20と、第1のフィルタとして働く第2の流動体22と、第2のフィルタとして働く第3の流動体23とを含む。第1、第2および第3の流動体20、22、23は、光軸に沿って互いに相対的に配置される。第1の電極24は、第1の流動体20に接触し、第1および第2のフィルタに対して共通である。
【0050】
2重フィルタの作用を実現するために、第2および第3の液体の透過率を互いに異なるように選ぶ。たとえば、第2の流動体22は、シアン色に着色され、第1の状態では、領域B全体にわたって連続する層の形になり、それによって領域Bにおいて切り換え可能な光学的部品1を通過する光をフィルタリングするように、切り換え可能な光学的部品1内に配置される。たとえば、第3の流動体23は、マジェンタ色に着色され、第1の状態では、領域B全体にわたって連続する層の形になり、それによって領域Bにおいて切り換え可能な光学的部品1を通過する光をフィルタリングするように、切り換え可能な光学的部品1内に配置される。液体室2内のすべての液体の密度は、実質的に等しく、切り換え可能な光学的部品4が重力および慣性の負荷を受けたとき安定性が得られるように選ばれる。システムが十分に小さい場合、第1および第2の液体の密度は互いに異なっても良い。
【0051】
共通の第1の電極24と、第1および第2のフィルタの第2の電極26および/または第3の電極26’との間に適切な電圧を加えることによって、第2および第3の流動体22、23によって構成されたフィルタ層のどちらかの一方または両方が部品の光路から外に出て切り換えが可能になる、2重フィルタを製造することができる。第3の電極26’は、第2のコンタクト層28’によって液体室内の流動体から隔離される。第2のコンタクト層28’は、第3の電極26’と第1、第2および第3の流動体20、22、23の間の絶縁性障壁になる。第1および第2のフィルタの第2および第3の電極26、26’、または第1および第2のフィルタの他の特性は、それぞれのフィルタが加えられた電圧に対して異なって応答し、ある範囲の作用を可能にするように変えることができる。より詳しくは、図10および11の説明と関連して以下で説明する。
【0052】
図8は、電圧が第1、第2および第3の電極24、26、26’に加えられているときの切り換え可能な光学的部品4の平面図を示す。第2および第3の電極26、26’は、それぞれ複数の独立にアドレス可能なライン電極を含み、しかし第2の電極26のライン電極は、第2および第3の流動体22、23を互いに異なる方向で光軸から移動して離すことができるように、実質的に互いに直角に配列される。他の電極構成を使用して様々な効果を得ることもできる。
【0053】
オフ状態で水に接触する液体空洞の内側壁は、実質的に親水性である。このようにして、水が2つの油の流動体間に保持され、油の流動体は、部品の末端部から離れて移動できないようにする。
【0054】
図9は、2個の切り換え可能な光学的部品を含む写真機9を示す。絞り91およびシャッタ92が設けられ、これらを使用して写真機94内のCCD93における、または他の光学的検出器における受光を制御する。本発明の実施形態による絞り91およびシャッタ92を使用すると、絞り91およびシャッタ92を互いに非常に接近させて配置することが可能になる。これは、製造するデバイスが小型になるので有利である。シャッタ92と絞り91を互いに接近させた配置が確保されるので、シャッタ92の必要な開口部直径が最小になる。これは、シャッタ92の大きさが小さくなるにつれてシャッタ92の最小の切り換え時間が減るので、有利である。
【0055】
明るい状況では、絞り開口部の直径を小さくし、速いシャッタ・スピードが必要になる。上記のように、シャッタ92が絞りに近接して配置されているとき、必要なシャッタ92の開口部の大きさが小さくなるので、速いシャッタ・スピードがより容易に得られる。暗い光の状況では、絞り開口部の直径を大きくする。しかし、暗い光の状況では、長い露出時間も所望され、したがって必要なシャッタの開口部の大きさを大きくし、その結果として生じるよりゆっくりした切り換えに対応することができる。
【0056】
シャッタ92を開き閉じるのと同時に絞り開口部の大きさを動的に変えることによって、様々な光学的効果を達成することが可能になる。
【0057】
図10は、1個のデバイス中に組み込まれた切り換え可能なフィルタおよび絞りの側面図を示す。大きさを小さくするのみならず、複数の部品をパッケージ中に組み込むことによって、デバイスを通過する光が通らねばならない境界の数も少なくなる。各境界は起こり得る反射損失を意味するので、境界の数が減ることは有利である。さらに、2重部品の製造にともなう製造コストは、同じ機能を果たすために2個の別々の部品を製造するコストより低減される。
【0058】
さらに、他の部品の統合も可能であり、たとえば図11に示す光学的デバイス11を参照されたい。光学的デバイス11は、レンズと、切り換え可能な光学的部品とを含む。図11に例として示したレンズは、切り換え可能な光学的部品と一体に形成された調節可能な電気湿潤レンズであるが、他の固定されたまたは調節可能なレンズを切り換え可能な光学的部品に結合することもできるはずである。
【0059】
第1および第2の電極24、26のみならず、さらに、図11のデバイスは、レンズ調節電極27および第3の流動体23も含む。第1および第3の流動体20、23は、実質的に透明であり、湾曲した表面25に沿って互いに面している。静止時の表面25の曲率は、第2のコンタクト層28’の、第1および第3の流動体20、23による湿潤性によって決定される。
【0060】
第1および第2の電極間に電圧V1を加えることによって、絞り作用をもたらすように、上記と同様に第2の流動体22の位置を変えることができる。第1の電極24とレンズ調節電極27の間に電圧V2を加えることによって、調節可能な仕事率(power)のレンズが得られるように、第1および第3の流動体間の界面25の形状を変えることができる。
【0061】
本明細書では第1の液体を水として言及してきたが、この用語はある範囲の極性および/または伝導性の液体を包含するものであることを理解されたい。適切な電気湿潤作用を得るために、水および油でない液体システムを使用することが可能であり、実際に、液体の1つが液体でなく、ガスまたは蒸気を含むことができる。油および水の例では、デバイスについての電気的な測定ができるように、塩化ナトリウムなどの電解液を水に含めることができる。
【0062】
製造を簡単にするために、コンタクト層は、基板の上部において疎水性の表面被覆を含むことができる。基板は、所望の形状で形成でき、疎水性の表面被覆をそれに適用することができる。この技法を使用すると、コンタクト層を製作するのに必要な疎水性材料の量を最小にすることができ、これは、適切な疎水性材料が比較的高価になりがちであるので、有利である。コンタクト層として使用するのに適切な疎水性材料、またはコンタクト層の疎水性の表面被覆は、アモルファス・フッ素重合体を含む。
【0063】
本発明の実施形態による切り換え可能な光学的部品は、同様の作用を達成するための機械式装置に比べると、比較的小型にすることができる。小さい直径であるのみならず、切り換え可能な光学的部品は、光軸の方向に非常に薄くなるように製造することもできる。実用的なデバイスは、現在、直径が500μmの小ささで、cmスケールのデバイスまでのより大きなデバイスの範囲も可能で、組み立てることができる。
【0064】
切り換え可能な光学的部品は、直径が小さいときは、切り換え時間が10ms程度になるように制御することができる。
【0065】
上記で説明したように、重力、回転または衝撃による負荷に対する切り換え可能な光学的部品の抵抗力を増大するために、油および水の密度を整合させることができる。比較的小さなシステムでは、切り換え可能な光学的部品中の表面張力および界面張力は、慣性力を抑えて、デバイスを比較的安定にさせることになる。実験的な試験では、直径が約5mmより小さいデバイスは、ある範囲の第1および第2の液体の場合、十分安定であることが示されている。より大きいデバイスの場合、第1および第2の液体の密度の精密な整合をさせることがより重要になる。水の密度をある程度まで微調整するために、純水の密度とは異なる密度を有するメタノールまたは他の水溶性液体の量を可変にして、水と混合することができる。このようにして、水の密度を精密に変えて、油の密度との良好な整合を得ることができる。
【0066】
密度の整合は、他の液体の密度と整合するために、異なる密度の油を混合することによっても達成することができる。
【0067】
本明細書に説明してきた本発明による切り換え可能な光学的部品の用途例のみならず、切り換え可能な光学的部品を使用できるはずの他の光学的デバイスも当業者は予想できよう。さらに、直列または並列に構成された複数の切り換え可能な光学的部品を使用して、光学的デバイス用に切り換え可能な透過特性を提供することができるはずである。
【0068】
たとえば、切り換え可能な赤、緑および青のフィルタを、時間に連続して重畳させる投射器中、または他の表示用途で、組み合わせることができるはずである。
【0069】
図7の2重フィルタの実施形態は、2種の可変特性を含む切り換え可能な光学的部品の一例を含む。明らかに、可変特性の他の組み合わせがすべて可能であり、たとえばシャッタとフィルタ、シャッタと絞り、フィルタと絞りなどである。さらに、可変レンズを含む図11の実施形態では、切り換え可能な光学的部品は、説明された可変特性のどれでも有することができる。
【0070】
これまで説明してきた切り換え可能な光学的部品は、既存の周知なデバイスおよび技法より多数の利点を有する。詳細にデバイスを説明したのみならず、この技術が特に適している多数の用途も提示してきた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による、第1の状態にある切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図2】第2の状態にある、図1の切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図3】第1の状態にある、図1の切り換え可能な光学的部品の平面図である。
【図4】第2の状態にある、図1の切り換え可能な光学的部品の平面図である。
【図5】本発明の第2の好ましい実施形態による、レーザ共振空洞内の定位置にある切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図6】本発明の第3の好ましい実施形態による、光学的記録器を走査するためのデバイス内の定位置にある切り換え可能な光学的部品の概略側面図である。
【図7】本発明の第4の好ましい実施形態による、第1の状態にある2重切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図8】第2の状態にある、図7の切り換え可能な光学的部品の平面図である。
【図9】2つの本発明の実施形態による切り換え可能な光学的部品を備えるカメラ装置の側面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態による切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態による切り換え可能な光学的部品の側面図である。
【図12】オフ状態に構成された従来技術によるデバイスの側面図である。
【図13】オン状態に構成された図12のデバイスの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り換え可能な光学的部品であって、
切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、
第1の流動体に結合された第1の電極と、
第2の電極とを含み、
第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して、第2の流動体が、光軸に対して実質的に横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、ことを特徴とする切り換え可能な光学的部品。
【請求項2】
第2の液体が、非伝導性の液体であり、第1の液体が、少なくとも極性液体および伝導性液体のなかの1つである、請求項1に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項3】
第2の電極と液体室内の第1および第2の流動体との間の絶縁性障壁を形成する第1のコンタクト層をさらに備える、請求項1または2に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項4】
第1のコンタクト層が、第1の液体に対するよりも、第2の液体に対してより高い湿潤性を有する材料を含む、請求項3に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項5】
第1のコンタクト層が、アモルファス・フッ素重合体(amorphous fluoropolymer)を含む、請求項3または4に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項6】
第1のコンタクト層が、第1の液体による第1の湿潤性を有する第1の領域と、より高い第1の液体による第2の湿潤性を有する第2の領域とを備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項7】
第2の流動体の移動が、電気湿潤作用によって起こされる、請求項1ないし6のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項8】
第1のコンタクト層が、第1および第2の流動体から第2の電極への分離間隔が減らされて電気湿潤作用が局所的に増大した領域を備える、請求項7に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項9】
第1のコンタクト層が、電気湿潤作用を局所的に増大するために、液体室中に突出した領域を備える、請求項7または8に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項10】
液体室の内側表面が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答する第2の流動体の移動の再現性を高めるように構成された不均一部を備える、請求項7ないし9のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項11】
切り換え可能な光学的部品の光軸上に湿潤性を増大した領域を設ける、請求項6に応じて請求項7ないし10のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項12】
第2の電極が、複数の独立にアドレス可能な部分を備える、請求項1ないし11のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項13】
独立にアドレス可能な部分が、ある範囲の加えられた電圧に応答して第1のコンタクト層全体にわたって異なる湿潤性を提供するように構成される、請求項12に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項14】
第2の電極が、透明であり、光軸を実質的に横切るように構成される、請求項1ないし13のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項15】
切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って液体室内に第1および第2の流動体に相対的に配置された第3の流動体と、
第3の電極とをさらに含み、
第3の流動体が、第1および第3の電極に加えられた電圧に応答して、光軸に対して実質的に横向きの方向に移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、請求項1ないし14のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項16】
第3の電極と液体室内の流動体との間の絶縁性障壁を形成する第2のコンタクト層をさらに備える、請求項15に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項17】
第3の流動体が、第2の流動体とは異なる透過率スペクトルを有する、請求項15または16に記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項18】
切り換え可能な光学的部品に電圧が加えられていないとき、第1の流動体に接触した液体室の内側表面が、第2の液体によってよりも、第1の液体によってより高められた湿潤状態になる、請求項15ないし17のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項19】
前記液体のすべてが、実質的に等しい密度である、請求項1ないし18のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項20】
切り換え可能な光学的部品が、少なくともシャッタ、絞り、拡散反射器またはフィルタのなかの1つである、前記請求項のいずれかに記載の切り換え可能な光学的部品。
【請求項21】
切り換え可能な光学的部品を含む光学的デバイスであって、
切り換え可能な光学的部品が、
切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、
第1の流動体に結合された第1の電極と、
第2の電極とを含み、
第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して、光軸に対して実質的に横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、光学的デバイス。
【請求項22】
少なくとも、請求項1ないし20のいずれかに記載のさらなる切り換え可能な光学的部品をさらに備え、
切り換え可能な光学的部品が、光学的デバイス用の切り換え可能な透過特性を提供するように直列または並列に構成される、請求項21に記載の光学的デバイス。
【請求項23】
レンズをさらに含む、請求項21または22に記載の光学的デバイス。
【請求項24】
レンズが、切り換え可能な光学的部品と一体に形成される、請求項23に記載の光学的デバイス。
【請求項25】
レンズが、調節可能な電気湿潤レンズである、請求項23または24に記載の光学的デバイス。
【請求項26】
光学的デバイスが、光学的記録器の情報層を走査するためのデバイスを備え、
デバイスが、第1の放射線ビームを生成するための第1の放射線源と、情報層上に第1の放射線ビームを収束させるための対物システムとを備え、
切り換え可能な光学的部品が、第1の放射線ビームを制御するように構成される、請求項21ないし25のいずれかに記載の光学的デバイス。
【請求項27】
第1の放射線ビームとは異なる波長の第2の放射線ビームを生成するための第2の放射線源をさらに備え、
対物システムが、情報層上に第1または第2の放射線ビームを収束させるように選択的に構成され、
切り換え可能な光学的部品が、さらに第2の放射線ビームを制御するように構成される、請求項26に記載の光学的走査デバイス。
【請求項28】
切り換え可能な光学的部品が、対物システム中に組み込まれる、請求項26または27に記載の光学的走査デバイス。
【請求項29】
切り換え可能な光学的部品を製造する方法であって、
切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室を設ける工程と、
第1の流動体に結合された第1の電極および第2の電極を設ける工程とを備え、
第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して、光軸に対して実質的に横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成される、方法。
【請求項30】
光学的記録器の情報層を走査するための光学的走査デバイスを製造する方法であって、
第1の放射線ビームを生成するための第1の放射線源を設ける工程と、
第1の放射線ビームを情報層上に収束させるための対物システムを設ける工程と、
第1の放射線ビームを制御するように構成された切り換え可能な光学的部品を設ける工程とを備え、
設けられる切り換え可能な光学的部品が、
切り換え可能な光学的部品の光軸に沿って互いに相対的に配置された第1および第2の流動体を含む液体室と、
第1の流動体に結合された第1の電極と、
第2の電極とを含み、
第2の流動体が、第1および第2の電極に加えられた電圧に応答して、光軸に対して実質的に横向きに移動し、それによって光軸に沿った、液体室の透過率を変更するように構成されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−500614(P2006−500614A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537399(P2004−537399)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003927
【国際公開番号】WO2004/027489
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】