説明

切削装置

【課題】切削ブレードの状態検出を行う検出手段の発光面及び受光面が加工屑によって汚れるのを抑制する。
【解決手段】切削ブレード31を覆うブレードカバー32と、発光面380と受光面381とを結ぶ光軸382が切削ブレード31の刃先によって遮蔽される量に基づいて切削ブレード31の状態を検出する検出手段38と、切削により飛散する切削水を排出する排出手段とを備えた切削装置において、ブレードカバー32は発光面380、受光面381にそれぞれ流体を供給する第一、第二の噴出口390、391を有し、第一、第二の噴出口390、391は、切削ブレード31の半径方向外側かつ発光面380及び受光面381と排出手段との間に形成して発光面380、受光面381の汚れを抑制し、第一、第二の噴出口390、391から噴出される流体が発光面380、受光面381に到達するまでの経路が切削ブレード31を避けるようにして切削ブレード検出の正確性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードの破損等の状態を検知する機能を有する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウェーハの表面に格子状に形成されたストリート(切断ライン)によって区画された多数の領域にIC、LSI等の回路が形成され、回路が形成された各領域をストリートに沿って分割することにより個々の半導体チップを製造している。半導体ウェーハを分割する分割装置としては、一般に、ダイシング装置としての切削装置が用いられている。
【0003】
この切削装置は、一般に、ダイヤモンド砥粒を含む砥石部を備えた切削ブレードを回転させつつ、切削ブレードと半導体ウェーハとを相対的に切削送りしながらストリートに沿って切削ブレードを切り込ませることによってストリートを切削する。そして、ストリートの切削により分割されて形成された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話機やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0004】
このような切削装置には、切削中の切削ブレードの破損を確認するために、例えば、切削ブレードカバーに切削ブレードの破損を光学的に検出する破損検出センサが備えられている。かかる破損検出センサは、例えば、発光素子と受光素子とを対向配置して、発光素子と受光素子とを結ぶ光軸上に切削ブレードの砥石部が位置するように設けられている。そして、この受光素子が受光する光量によって、切削ブレードの破損状態を検知するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−83077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、切削ブレードによる切削では加工屑が発生し、切削ブレードの回転によってその加工屑が飛散するため、加工屑によって発光素子の発光面と受光素子の受光面とが汚れてしまい、適切に発光及び受光ができなくなるという問題があった。そして、かかる問題を解決するためには、定期的に発光面と受光面の清掃を行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主な技術的目的は、切削によって発生する加工屑によって発光面と受光面とが汚れることが抑制された切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークを保持する保持手段と保持手段に保持されたワークを加工する加工手段とを有し、加工手段はスピンドルの先端部に取り付けられた円形の切削ブレードと切削ブレードを覆うブレードカバーとを備え、ブレードカバーは、対向配置された発光面と受光面とを備え、発光面と受光面とを結ぶ光軸が切削ブレードの刃先によって遮蔽される量に基づいて切削ブレードの状態を検知する検出手段と、ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルと、ブレードの回転に起因して飛散する切削水を排出する排出手段とを有する切削装置に関するもので、ブレードカバーは、発光面に流体を供給する第一の噴出口と受光面に流体を供給する第二の噴出口とを有する洗浄手段を有し、第一の噴出口及び第二の噴出口は、切削ブレードの半径方向外側に位置し検出手段の発光面及び受光面と排出手段との間に形成され、第一の噴出口及び第二の噴出口から噴出される流体が発光面及び受光面に到達するまでの経路は切削ブレードを避けるように設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、洗浄手段が検出手段の発光面及び受光面に付着した加工屑を除去し汚れを抑制することができるため、切削ブレードの状態を検知する検出手段の機能を阻害しない。また、第一の噴出口及び第二の噴出口から噴出される流体が発光面及び受光面に到達するまでの経路は切削ブレードを避けるように設定されていることにより、第一の噴出口及び第二の噴出口から噴出される流体が液体である場合においても、切削ブレードの回転にともなってその液体が飛散することがないため、検出手段の機能がその液体によって阻害されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】切削装置の一例を示す斜視図である。
【図2】加工手段を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線切断部端面図である。
【図4】切削水を供給しながらワークを切削する状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す切削装置1は、保持手段2において保持されたワークを2つの加工手段3が切削加工する装置である。なお、加工手段は、1つだけであってもよい。
【0012】
図1に示すように、切削対象のワークWは、テープTを介してフレームFと一体となって支持される。図示の例のワークWの表面においては、縦横に形成されたストリートSによって区画されてデバイスDが形成されている。ワークWは、特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハやガリウム砒素等の半導体ウェーハ、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、LCDドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0013】
保持手段2は、テープTを介してワークWを吸着する吸着部20と、フレームFを固定する固定部21と、吸着部20及び固定部21を回転可能に支持する軸部22とを備えている。また、保持手段2は、切削送り手段4によって駆動されて水平方向の一方向(図1におけるX軸方向)に移動可能となっている。切削送り手段4は、X軸方向にのびるボールスクリュー40と、ボールスクリュー40と平行に配設されたガイドレール41と、ボールスクリュー40の一端に連結されたモータ42と、下部がガイドレール41に摺接するとともに内部の図示しないナットがボールスクリュー40に螺合する移動基台43とを備えており、モータ42によって駆動されたボールスクリュー40が回動することにより移動基台43がガイドレール41にガイドされてX軸方向に移動する構成となっている。
【0014】
2つの加工手段3は同様に構成されるため、共通の符号を付して説明する。加工手段3は、X軸と水平方向に直交するY軸方向の軸心を有するスピンドル30と、スピンドル30の先端部に取り付けられた切削ブレード31と、切削ブレード31を覆うブレードカバー32とを備えている。
【0015】
図1において拡大して示すように、切削ブレード31は、円形に形成され、基台310と、その周縁部に形成されダイヤモンド等の砥粒を含む砥石部311とから構成されている。ブレードカバー32の下部には、砥石部311をY軸方向の両側から挟むようにして一対の切削水供給ノズル33が形成されており、切削水供給ノズル33から砥石部311に向けて切削水を供給することができる。切削水供給ノズル33は、それぞれが切削水流入部34と連通しており、切削水流入部34から流入した切削水が切削水供給ノズル33から噴出する構成となっている。また、ブレードカバー32には、切削ブレード31の回転に起因して切削水が飛散する側の位置に、飛散した切削水を排出する排出手段35が配設されている。排出手段35は、例えば、その側部に形成された貫通孔から切削水を外部に排出したり、切削水を吸引して外部に排出したりするように構成される。
【0016】
切削ブレード31の側方には、切削ブレード31に向けて切削水を噴出する一対の切削水噴出部36が配設されている。切削水噴出部36は、その上方に設けられた切削水流入部37と連通しており、切削水流入部37から流入した切削水が切削水噴出部36から噴出する構成となっている。
【0017】
加工手段3は、切り込み送り手段5によって駆動されて鉛直方向(X軸及びY軸に直交するZ軸方向)に移動可能であるとともに、割り出し送り手段6によって駆動されてY軸方向に移動可能となっている。
【0018】
切り込み送り手段5は、鉛直方向にのびるボールスクリュー50と、ボールスクリュー50と平行に配設されたガイドレール51と、ボールスクリュー50の一端に連結されたパルスモータ52と、側部がガイドレール51に摺接するとともに内部の図示しないナットがボールスクリュー50に螺合する昇降基台53とを備えており、パルスモータ52によって駆動されたボールスクリュー50が回動することにより昇降基台53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に移動して加工手段3をZ軸方向に昇降させ、切削ブレード31のワークWに対する切り込み深さを精密に制御する構成となっている。
【0019】
割り出し送り手段6は、Y軸方向にのびるボールスクリュー60と、ボールスクリュー60と平行に配設されたガイドレール61と、ボールスクリュー60の一端に連結されたパルスモータ62と、側部がガイドレール61に摺接するとともに内部の図示しないナットがボールスクリュー60に螺合する移動基台63とを備えており、パルスモータ62によって駆動されたボールスクリュー60が回動することにより移動基台63がガイドレール61にガイドされてY軸方向に移動して加工手段3をY軸方向に移動させ、切削ブレード31のY軸方向の位置を精密に制御する構成となっている。
【0020】
図2及び図3に示すように、ブレードカバー32には、切削ブレード31の状態を検知する検出手段38を備えている。図3に示すように、検出手段38は、光を発光する発光面380と光を受光する受光面381とを備えており、発光面380と受光面381とは、発光面380と受光面381とを結ぶ光軸382が切削ブレード31の砥石部311の刃先と交差するように対向配置されて構成される。このように構成される検出手段38においては、光軸382が切削ブレード31の砥石部311の刃先によって遮蔽される量に基づいて切削ブレード31の砥石部311の破損や摩耗の状態を検知することができる。
【0021】
図2及び図3に示すように、ブレードカバー32の内周側には、発光面380に流体を供給して洗浄を行う第一の噴出口390と受光面381に流体を供給して洗浄を行う第二の噴出口391とを有する洗浄手段39が配設されている。図2に示すように、第一の噴出口390及び第二の噴出口391は、流体流入部392と連通しており、流体流入部392から流入した流体を第一の噴出口390及び第二の噴出口391から噴出する構成となっている。第一の噴出口390及び第二の噴出口391から噴出される流体としては、例えば水や空気など、発光面380及び受光面381を汚さないものが使用される。
【0022】
図2に示すように、第一の噴出口390及び第二の噴出口391は、切削ブレード31の半径方向外側であって、発光面380及び受光面381と排出手段35との間の位置に形成されている。詳しくは、切削ブレード31の外周側であって、光軸382が切削ブレード31の砥石部311の刃先によって遮断される位置に対して切削ブレード31の回転方向の上流側、かつ、排出手段35の位置に対して切削ブレード31の回転方向下流側に、第一の噴出口390及び第二の噴出口391が配設される。例えば、図2に示すように、切削ブレード31が、正面側から見て時計回りR方向に回転する場合は、時計回りR方向に、排出手段35→第一の噴出口390及び第二の噴出口391→光軸382が遮断される位置、の順に配設される。このような順に配設することで、飛散した切削水が洗浄手段39の洗浄機能を害するのを抑止することができる。
【0023】
図3に示すように、流体が第一の噴出口390から噴出されて発光面380に到達するまでの経路、及び、流体が第二の噴出口391から噴出されて受光面381に到達するまでの経路には、切削ブレード31が存在しない。すなわち、第一の噴出口390及び第二の噴出口391から噴出された流体390a、391aは、切削ブレード31には当たらず、切削ブレード31を避けて発光面380及び受光面381に直接供給される。発光面380及び受光面381の洗浄を確実に行うために、図3に示すように、発光面380及び受光面381に対して角度をつけて流体390a、391aが噴出されるように、第一の噴出口390及び第二の噴出口391を配設することが望ましい。
【0024】
図4に示すように、テープTに貼着されたワークWを切削する際には、ワークWに対して回転する切削ブレード31の砥石部311を切り込ませて加工手段3とワークWとを相対的にX軸方向に送り、それと同時に、砥石部311とワークWとの接触箇所に切削水供給ノズル33から切削水33aを供給するとともに、切削水噴出部36から切削水36aを噴出して加工屑の除去を行う。そうすると、切削ブレード31の回転に起因してその回転方向(時計回りR方向)に切削水及び加工屑が飛散する。そして、飛散した切削水及び加工屑は、その多くが、砥石部311とワークWとの接触箇所よりも切削ブレード31の回転方向下流側に配設された排出手段35に導かれ、ブレードカバー32の外部に排水35aとして排出される。
【0025】
一方、排出手段35から外部に排出されなかった切削水及び加工屑が、検出手段38を構成する発光面380及び受光面381に付着することもある。そこで、洗浄手段39を構成する第一の噴出口390から発光面380に向けて流体390aを噴出するとともに第二の噴出口391から受光面381に向けて流体391aを噴出し、発光面380及び受光面381に付着した加工屑等を効率的に除去する。流体として水を用いた場合の水の流量は、第一の噴出口390から噴出される水と第二の噴出口391から噴出される水とをあわせて、例えば0.5リットル/分とする。
【0026】
このようにして発光面380及び受光面381に付着した加工屑等を除去することにより、光軸382が切削ブレード31の砥石部311の刃先によって遮蔽される量が加工屑によって影響されないため、特別に発光面380及び受光面381の清掃を行わなくても、検出手段38による切削ブレード31の砥石部311の破損や摩耗の状態を検知する機能の正確性が確保される。
【0027】
洗浄手段39は、排出手段35よりもさらに切削ブレード31の回転方向下流側でかつ上方に位置しているため、飛散する切削水及び加工屑の影響を受けにくい。したがって、第一の噴出口390及び第二の噴出口391から流体のみを発光面380及び受光面381に供給することができ、噴出される流体とともに加工屑等も発光面380及び受光面381に向けて供給することがない。
【0028】
また、図3に示した光軸382を遮るように水が飛散したり、砥石部311に直接水がかかったりすると、切削ブレード31の状態検出に誤りが生じやすくなるが、第一の噴出部390及び第二の噴出部391から噴出される流体は、切削ブレード31を避けて直接発光面380及び受光面381に到達するため、第一の噴出部390及び第二の噴出部391から水が噴出されたとしても、その水が切削ブレード31の回転によって飛散し、光軸382上を水が舞うことはない。したがって、切削ブレード31の状態検出に悪影響を与えるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1:切削装置
2:保持手段
20:吸着部 21:固定部 22:軸部
3:加工手段
30:スピンドル
31:切削ブレード 310:基台 311:砥石部
32:ブレードカバー
33:切削水供給ノズル 33a:切削水
34:切削水流入部 35:排出手段 35a:排水
36:切削水噴出部 36a:切削水
37:切削水流入部
38:検出手段 380:発光面 381:砥石部 382:光軸
39:洗浄手段 390:第一の噴出口 391:第二の噴出口 392:流体流入部
4:切削送り手段
40:ボールスクリュー 41:ガイドレール 42:モータ 43:移動基台
5:切り込み送り手段
50:ボールスクリュー 51:ガイドレール 52:パルスモータ 53:昇降基台
6:割り出し送り手段
60:ボールスクリュー 61:ガイドレール 62:パルスモータ 63:移動基台
W:ワーク T:テープ F:フレーム S:ストリート D:デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークを加工する加工手段と、を有し、
該加工手段は、
スピンドルの先端部に取り付けられた円形の切削ブレードと、
該切削ブレードを覆うブレードカバーとを備え、
該ブレードカバーは、
対向配置された発光面と受光面とを備え、該発光面と該受光面とを結ぶ光軸が該切削ブレードの刃先によって遮蔽される量に基づいて該切削ブレードの状態を検知する検出手段と、
該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルと、
該切削ブレードの回転に起因して飛散する切削水を排出する排出手段と、
を有する切削装置であって、
該ブレードカバーは、
該発光面に流体を供給する第一の噴出口と該受光面に流体を供給する第二の噴出口とを有する洗浄手段を有し、
該第一の噴出口及び該第二の噴出口は、
該切削ブレードの半径方向外側に位置し該検出手段の該発光面及び該受光面と該排出手段との間に形成され、該第一の噴出口及び該第二の噴出口から噴出される該流体が該発光面及び該受光面に到達するまでの経路は該切削ブレードを避けるように設定されている、
切削装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−110631(P2011−110631A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267218(P2009−267218)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】