説明

列車制御システム

【課題】ハイブリッド鉄道車両において、エンジン出力を充電してから駆動力に利用するような、充電放電の二重損失伴う出力プロセスを回避するために、バッテリの放電は発車から制限速度まで等大きな駆動力を必要な時に使用し、大きな駆動力は不必要でありエンジンのみの出力で走行可能な惰行再力行走行中の充放電を抑止する。
【解決手段】エンジン101とバッテリ102と、エンジン101とバッテリ102からの出力を車輪の力に変換する駆動装置103と、バッテリ102に対する出力指令とエンジン101に対する出力指令を出力する駆動制御装置104とを備える列車制御システムにおいて、駆動制御装置104は速度履歴から惰行再力行走行を検知し、惰行再力行走行状態を検知した場合に、エンジン101に対して駆動装置103が出力する駆動力分の出力を指令し、バッテリ102に対して出力0を指令することを特徴とする駆動制御装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、インバータ技術の導入により、減速時に発生するエネルギーを再利用できる回生ブレーキが利用されている。近年は、架線のない非電化区間向けの車両として、ディーゼルエンジンとバッテリを搭載し、回生ブレーキにより減速時のエネルギーをバッテリに充電し、加速時にバッテリから放電して走行するディーゼルハイブリッド鉄道車両が開発されている。ディーゼルハイブリッド鉄道車両は、回生ブレーキにより従来のディーゼル車両よりも省エネルギー性能が向上する。さらに、加速時にはエンジンとバッテリ双方の出力で車輪を駆動することにより、同じエンジン容量を搭載した従来のディーゼル車両に比べて加速性能が向上する。一方、過充電や過放電によるバッテリ寿命の低下が問題だった。この問題を解決するために、バッテリ充電量を一定に保つように充放電電力を制御する特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−67510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で記述する方法では、大きな駆動力を必要としない状況においても、エンジンとバッテリの双方の出力により、不必要に大きな駆動力を発生させており、この時のバッテリ充電量の低下分をエンジン出力で発電した電力で充電することで補填する。このため、エンジン出力をバッテリに充電する際に損失が生じ、さらに充電したエネルギーを放電する際にも損失が生じ、エンジン出力が車輪での駆動力として活用されるまでに充電と放電の二重の損失が生じ、省エネルギー性能が低下していた。
【0005】
一方、鉄道車両は、駅間の大部分において、力行と惰行を繰り返して速度を維持する惰行再力行運転により走行するのが一般的である。この惰行再力行走行時は、速く加速しても遅く加速しても平均速度は変わらないため、大きな駆動力を必要としない代表的な状況である。
【0006】
本発明は、上記の課題を踏まえて、エンジン出力を用いたバッテリの充電による二重の損失を回避するために、バッテリの放電を、発車から制限速度まで加速する場合等大きな駆動力を必要な時に限定し、大きな駆動力を必要としない惰行再力行走行中の充放電を停止することにより、省エネルギー性能を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために、エンジンと、電力を充放電可能なバッテリと、エンジンの駆動力とバッテリからの出力電力を車輪の駆動力に変換する駆動装置と、エンジンに対する出力指令とバッテリに対するバッテリ出力指令を出力する駆動制御装置を備える列車制御システムにおいて、駆動制御装置は、車両の惰行再力行走行を検知した際に、バッテリからの出力電力を抑制して、エンジンの出力するエネルギーで走行するように制御する。
【0008】
好ましくは、駆動制御装置は、車両速度の履歴に含まれる速度の最大値と最小値の差が予め設定した値以下となった場合に惰行再力行走行を検知する。
【0009】
また好ましくは、駆動制御装置は、所定区間において予め定められた制限速度と車両速度の差が予め設定した速度幅以下となった場合に惰行再力行走行を検知する。
【0010】
また好ましくは、予め設定した速度幅は、予め設定した速度の範囲内で車両が加速と惰行を繰り返して走行した場合にダイヤを満足するように設定する。
【0011】
また好ましくは、予め設定した速度幅は、制限速度に応じて設定する。
【0012】
また好ましくは、駆動制御装置は、運転士からのノッチ指令を入力とし、ノッチ指令がノッチオフをトリガとして惰行再力行走行を検知し、ノッチオンが予め設定した時間以上継続した場合に惰行再力行走行の検知を解除する。
【0013】
また好ましくは、駆動制御装置は、速度の積分値から得られる車両位置を入力とし、車両位置が予め設定した区間となった場合に、惰行再力行走行を検知する。
【0014】
また好ましくは、駆動制御装置は、速度の積分値から得られる車両位置を入力とし、車両位置が過去の走行において同じ制限速度領域で惰行再力行を複数回繰り返す区間となった場合に、惰行再力行走行を検知する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、惰行再力行走行状態を検知し、惰行再力行走行状態の無駄な放電を停止することで、エンジン出力を充電してから駆動に使用するために生じる充電放電の二重の損失を回避し、省エネルギー性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1による列車制御システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る駆動制御装置104の処理の一例である。
【図3】本発明の実施形態1に係る駆動制御装置104の動作例である。
【図4】本発明の実施形態2による列車制御システムの構成図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る駆動制御装置403の処理の一例である。
【図6】本発明の実施形態2に係る駆動制御装置403の動作例である。
【図7】本発明の実施形態3による列車制御システムの構成図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る駆動制御装置702の処理の一例である。
【図9】本発明の実施形態3に係る駆動制御装置702の動作例である。
【図10】本発明の実施形態4による列車制御システムの構成図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る駆動制御装置1002の処理の一例である。
【図12】本発明の実施形態4に係る駆動制御装置1002の動作例である。
【図13】シリーズ方式における駆動システムの構成図である。
【図14】パラレル方式における駆動システムの構成図である。
【図15】ノッチと車両速度に対する引張力指令の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、各実施例に分けて本発明の具体的な実施形態を説明する。各実施例に共通する本発明のハイブリッド鉄道車両の駆動システム構成図を図13と図14に示す。本発明は、図13または図14に示すハイブリッド鉄道車両の駆動システムに対するものである。図13の駆動システムは、一般にシリーズ方式と呼ばれ、燃料から回転エネルギーを発生させるエンジン101と、回転エネルギーから電力を発生させる発電機,該発電装置で発生した交流電力を直流電力に変換する電力変換器,電力の充放電が可能なバッテリ102,直流電力を交流電力に変換するインバータと該インバータにより制御される電動機とで構成される駆動装置103,電動機の回転軸と連結した車輪105、を備える。図14の駆動システムは、一般にパラレル方式と呼ばれ、燃料から回転エネルギーを発生させるエンジン101と、エンジンの回転軸に連結した変速機,エンジンと変速機の間に備えた発電機兼モータ,該発電機兼モータを駆動するインバータとで構成される駆動装置103,変速機の回転軸と連結した車輪105、とを備える。
【0018】
〔実施形態1〕
図1は本発明の実施形態1によるハイブリッド鉄道車両を示す構成図である。図1において、ハイブリッド鉄道車両は、図13および図14で説明した通り、エンジン101,バッテリ102,駆動装置103,駆動制御装置104および車輪105を備える。
【0019】
駆動装置103は、シリーズ方式、またはパラレル方式による、一般的なハイブリッド鉄道車両の駆動装置であり、エンジン101からのエンジン出力106とバッテリ102からのバッテリ出力電力107とを入力とし、車輪105への駆動力を出力する。
【0020】
駆動制御装置104は、速度履歴110と運転士からの引張力指令111を入力とし、バッテリ102に対するバッテリ出力指令108とエンジン101に対するエンジン出力指令109を出力する。ここで引張力指令111とは運転士がノッチを操作することで車両に対して要求される駆動力である。引張力指令111は一般に、図15に示すようにノッチと車両の速度に対する設計値に基づき運転台で作成される。
【0021】
駆動制御装置104について詳述する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態1に係る駆動制御装置104の処理の一例である。
【0023】
駆動制御装置104は、速度履歴110に含まれる速度の最大値201と速度履歴110に含まれる速度の最小値202の差が、設定値203よりも小さい場合に惰行再力行走行とみなし、惰行再力行走行中はエンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。それ以外の場合においては、一般的なハイブリッド鉄道車両の制御装置204により決定されるエンジン出力指令109とバッテリ出力指令108を出力する。制御装置204の具体例としては、エンジンが最適効率となる出力をエンジン出力指令109とし、不足分をバッテリ出力指令108とする制御装置204により指令することが考えられる。
【0024】
設定値203は、運転士が惰行から再力行に切換える速度幅と制限速度までの幅に設定することが望ましい。鉄道事業者の運転規則により再力行に切換える制限速度からの速度幅が定められている場合には、設定値203として規則に記載の速度幅に設定する。規則により定められていない場合には、与えられた惰行再力行の速度幅で走行した場合に、ダイヤが定める所要時間を満足する速度幅を設定値203とすることで設定する。
【0025】
図3は本発明の実施形態1に係る駆動制御装置104の速度履歴110として過去10秒間の速度履歴を用い、さらに、設定値203を10km/hと設定した場合における動作の一例を示している。車両は発車すると制限速度まで加速する。制限速度まで加速すると、惰行再力行走行を開始し、それに伴い速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が低下する。
【0026】
時刻t1において、速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が10km/h以下となると、エンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。この間、バッテリの充放電は停止し、充電量は一定値に保たれる。制限速度が解除されると再び加速する。
【0027】
時刻t2になると、速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が10km/h以上となり、惰行再力行検知が解除され、充放電が可能となり、充電量が変化する。
【0028】
最高速度まで加速すると、惰行再力行走行を開始し、それに伴い速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が低下する。
【0029】
時刻t3において、速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が10km/h以下となると、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として0を出力する。この間、バッテリの充放電を停止し、充電量を一定値に保つ。
【0030】
時刻t4において、車両が駅停車のために減速を開始すると、速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が増加する。速度履歴の最大値201と速度履歴の最小値202の差が10km/h以上となったら、充放電が可能となり、充電量が変化する。
【0031】
以上のように、本発明の実施形態1のハイブリッド鉄道車両は、車両速度の履歴から、速度の変化が予め設定した幅に収まった場合に充放電を停止する駆動制御装置104を備えることにより、大きな駆動力を必要としない惰行再力行走行中の充放電を停止することができる。このことにより、エンジン出力を充電してから駆動力とするという、充電放電の二重の損失を伴う出力プロセスを回避することができる。
【0032】
なお、従来のハイブリッド鉄道車両において、惰行再力行走行状態では惰行再力行走行中に次の加速に備えて充電していたが、本発明では、惰行再力行走行状態に放電しないので、発車時に十分な充電量が確保されていれば、最高速度に加速するまでに充電量過放電になることはない。
【0033】
〔実施形態2〕
実施形態1では、速度履歴に含まれる速度幅を指標として惰行再力行走行を検知するようにしたが、速度と制限速度との差分を指標に用いることで惰行再力行走行を検知するようにしてもよい。
【0034】
図4は、本発明の実施形態2によるハイブリッド鉄道車両を示す構成図である。
【0035】
本実施形態では、速度401と制限速度402を入力とする駆動制御装置403を備えることが実施形態1と異なる。
【0036】
図5は,本発明の実施形態1に係る駆動制御装置403の処理の一例である。
【0037】
駆動制御装置403は、速度401と制限速度402(軌道の所定区間に設定される車両の制限速度)の差が設定速度501よりも小さくなった場合、または、列車の最高速度502と速度401との差が設定速度503よりも小さくなった場合に惰行再力行走行とみなすことで、惰行再力行走行状態を検知し、惰行再力行走行中はエンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。それ以外の場合においては、一般的なハイブリッド鉄道車両の制御装置204により決定されるエンジン出力指令109とバッテリ出力指令108を出力する。制御装置204の具体例としては、エンジンが最適効率となる出力をエンジン出力指令109とし、不足分をバッテリ出力指令108とする制御装置204により指令することが考えられる。
【0038】
設定速度501と設定速度503は、運転士が惰行から再力行に切換える速度と制限速度までの幅に設定することが望ましい。鉄道事業者の運転規則により惰行から再力行に切換える速度が、制限速度からの速度幅で定められている場合には、設定速度501と設定速度503を規則に記載の速度幅に設定する。規則により定められていない場合には、駅間の所要時間が惰行から再力行に切換える速度幅に依存することを利用し、駅間距離とダイヤに基づく所要時間から、予め設定した速度の範囲内で車両が加速と惰行を繰り返して走行した場合にダイヤを満たす走行ができるように設定速度501と設定速度503を逆算することで設定する。
【0039】
図6は本発明の実施形態2に係る駆動制御装置104の、設定速度501を10km/h、設定速度503を10km/hと設定した場合における動作の一例を示している。車両は発車すると制限速度まで加速する。制限速度まで加速すると、惰行再力行走行を開始する。車両が発車した後、時刻t1において車両の速度と制限速度との差が10km/hよりも小さくなると、惰行再力行を検知し、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。この間、バッテリの充放電は停止し、充電量は一定値に保たれる。時刻t2において制限速度が解除されると、車両は最高速度を遵守した走行となる。車両の速度と最高速度との差は10km/hよりも大きいため、惰行再力行検知は解除され、充放電を伴った走行となり、充電量が変化する。時刻t3となり、車両の速度と最高速度との差が10km/hよりも小さくなると、エンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。この間、バッテリの充放電は停止し、充電量は一定値に保たれる。時刻t4になると車両が駅停車のために減速を開始し、車両の速度と最高速度との差が10km/hよりも大きくなると、充放電が可能となり、充電量が変化する。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態2のハイブリッド鉄道車両は、制限速度及び最高速度と車両の速度の差が設定値以下となったら充放電を停止する駆動装置403を備えることにより、実施形態1と同様の効果を実現できる。
【0041】
〔実施形態3〕
実施形態2では、速度と制限速度との差分を指標として惰行再力行走行を検知したが、運転士のノッチ指令の切替操作を用いることで惰行再力行走行を検知してもよい。
【0042】
図7は、本発明の実施形態3によるハイブリッド鉄道車両を示す構成図である。
【0043】
本実施形態では、ノッチ指令701を入力として惰行再力行走行を検知する駆動制御装置702を備えることが実施形態2と異なる。
【0044】
図8は本発明の実施形態3に係る駆動制御装置702の処理の一例である。
【0045】
駆動制御装置702は、ノッチ指令701がノッチオフ以外の状態からノッチオフとなったら惰行再力行走行開始と判断し、ノッチオフ以外の状態が設定時間801以上継続したら惰行再力行走行終了と判断する。惰行再力行走行開始から惰行再力行走行終了までの間、エンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。それ以外の場合においては、先行技術文献に示されている一般的なハイブリッド鉄道車両の制御装置により決定されるエンジン出力指令109とバッテリ出力指令108を出力する。
【0046】
設定時間801は惰行再力行走行時の一回の再力行に必要な時間に設定する。一回の再力行に必要な時間は、実施形態1に記載の惰行から再力行に切換える速度と制限速度の幅から、車両の駆動特性を基に、再力行の加速時間を算出することで設定する。
【0047】
図9は本発明の実施形態3に係る駆動制御装置702の設定時間801を30秒とした場合における動作の一例を示している。車両は発車すると制限速度まで加速する。時刻t1においてノッチ指令が0となったら、惰行再力行走行の開始を検知し、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。制限速度が解除されると、ノッチ指令1以上が指令され、車両は最高速度まで加速を始める。時刻t2においてノッチ指令1が指令され、ノッチ指令1以上が30秒継続した時刻t3において惰行再力行検知が解除される。この間、充放電を伴った走行となり、充電量が変化する。時刻t4において最高速度に達し、ノッチが0となったら、惰行再力行走行の開始を検知し、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。時刻t5において車両が駅停車のために減速を開始すると、この時ノッチは0未満であるので、惰行再力行検知が解除される。この間、充放電が可能となり、充電量が変化する。
【0048】
以上のように、本発明の実施形態3のハイブリッド鉄道車両は、ノッチ指令701を用いて惰行再力行走行を検知する駆動制御装置702を備えることにより、実施形態1,実施形態2と同様の効果を実現できる。
【0049】
〔実施形態4〕
実施形態3では、運転士のノッチ指令の切替操作を用いることで惰行再力行走行を検知したが、車両の位置が予め設定した区間となったら惰行再力行走行を検知してもよい。
【0050】
図10は、本発明の実施形態4によるハイブリッド鉄道車両を示す構成図である。
【0051】
本実施形態では、車両位置1001を入力として惰行再力行走行を検知する駆動制御装置1002を備えることが実施形態3と異なる。車両位置1001は速度の積分や、GPS情報およびトランスポンダ等により得る。
【0052】
図11は本発明の実施形態4に係る駆動制御装置1002の処理の一例である。駆動制御装置1002は、位置に対して惰行再力行区間を定めた惰行再力行位置データ1101を備え、惰行再力行位置データ1101に対し車両位置1001を参照することで惰行再力行走行を検知する。惰行再力行走行を検知中は、エンジン出力指令109として、引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。それ以外の場合においては、先行技術文献に示されている一般的なハイブリッド鉄道車両の制御装置により決定されるエンジン出力指令109とバッテリ出力指令108を出力する。
【0053】
惰行再力行位置データ1101は、過去の車両走行の実績から、同じ速度領域で惰行再力行走行を複数回繰り返した区間を惰行再力行走行区間と設定する。
【0054】
図12は本発明の実施形態4に係る駆動制御装置1002の、距離0.5〜2.5kmと距離3.5〜7kmを惰行再力行走行区間と定めた場合における動作の一例を示している。車両は発車すると制限速度まで加速する。位置p1に達し、距離が0.5kmを超えたら、惰行再力行走行の開始を検知し、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。制限速度が解除されると、ノッチ指令1以上が指令され、車両は最高速度まで加速を始める。位置p2に達し、距離が2.5kmを超えたら惰行再力行検知が解除し、充放電を伴った走行となり、充電量が変化する。位置p3に達し、距離が3.5kmを超えたら、惰行再力行走行の開始を検知し、エンジン出力指令109として引張力指令111に相当する出力を出力し、バッテリ出力指令108として、0を出力する。位置p4に達し、距離が7kmを超えたら、惰行再力行完治が解除され、充放電が可能となり、充電量が変化する。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態4のハイブリッド鉄道車両は、車両位置1001を用いて惰行再力行走行を検知する駆動制御装置1002を備えることにより、実施形態1,実施形態2と同様の効果を実現できる。
【符号の説明】
【0056】
101 エンジン
102 バッテリ
103 駆動装置
104 駆動制御装置
105 車輪
106 エンジン出力
107 バッテリ出力電力
108 バッテリ出力指令
109 エンジン出力指令
110 速度履歴
111 引張力指令
201 速度履歴に含まれる速度の最大値
202 速度履歴に含まれる速度の最小値
203 設定値
204 ハイブリッド車両制御装置
401 速度
402 制限速度
501,503 設定速度
502 最高速度
701 ノッチ指令
801 設定時間
1001 車両位置
1101 惰行再力行位置データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
電力を充放電可能なバッテリと、
前記エンジンの駆動力と前記バッテリからの出力電力を車輪の駆動力に変換する駆動装置と、
前記エンジンに対する出力指令と前記バッテリに対するバッテリ出力指令を出力する駆動制御装置を備える列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、車両の惰行再力行走行を検知した際に、前記バッテリからの出力電力を抑制して、前記エンジンの出力するエネルギーで走行するように制御することを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1の列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、車両速度の履歴に含まれる速度の最大値と最小値の差が予め設定した値以下となった場合に惰行再力行走行を検知することを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1の列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、所定区間において予め定められた制限速度と車両速度の差が予め設定した速度幅以下となった場合に惰行再力行走行を検知することを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項3の列車制御システムにおいて、
前記予め設定した速度幅は、前記予め設定した速度の範囲内で車両が加速と惰行を繰り返して走行した場合にダイヤを満足するように設定することを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
請求項4の列車制御システムにおいて、
前記予め設定した速度幅は、制限速度に応じて設定することを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項1の列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、運転士からのノッチ指令を入力とし、前記ノッチ指令がノッチオフをトリガとして惰行再力行走行を検知し、ノッチオンが予め設定した時間以上継続した場合に惰行再力行走行の検知を解除することを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
請求項1の列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、速度の積分値から得られる車両位置を入力とし、前記車両位置が予め設定した区間となった場合に、惰行再力行走行を検知することを特徴とする列車制御システム。
【請求項8】
請求項1の列車制御システムにおいて、
前記駆動制御装置は、速度の積分値から得られる車両位置を入力とし、前記車両位置が過去の走行において同じ制限速度領域で惰行再力行を複数回繰り返す区間となった場合に、惰行再力行走行を検知することを特徴とする列車制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−147611(P2012−147611A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5378(P2011−5378)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】