説明

列車無線システム

【課題】 列車乗務員が防護発報した場合、指令卓1は防護無線装置5から発報した音声データを移動局6経由で受信して音声出力するだけであるので、指令員は障害や故障の状況を正確に把握することが困難であった。
【解決手段】 防護発報したとき、車載カメラ8で撮像した画像データを車上サーバ7が移動局6へ送信する。移動局6は車上サーバ7から受信した画像データと防護無線装置5から受信した音声データとを無線送信することにより、指令卓1の指令員は列車乗務員の通報する発報情報と障害の画像情報とを確認でき、正確に障害や故障の状況を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害や故障の発生を近隣の列車に対して防護発報する防護無線装置を有する列車無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
線路上にがけ崩れなどの災害が発生すると、その災害による事故が波及しないように災害を発見した列車の乗務員は近隣の列車に対して災害の発生を防護発報する。このため、列車無線システムには防護無線装置が装備されている。
【0003】
図5は従来の列車無線システムを示す構成図であり、1はシステムを統括するための指令卓、2はこの指令卓1から送信されるデータを下り有線回線を介して基地局3へ送信する一方、基地局3から送信されるデータを上り有線回線を介して上記指令局1へ送信する列車無線地上装置、3は軌道に沿って複数設置された基地局、4は軌道上を走行する列車、5は列車4上に搭載された防護無線装置、6は上り無線回線を介して基地局3へデータ送信する一方、基地局3から送信されるデータを下り無線回線を介して受信する移動局、7は運行管理情報などを処理及び保存するための車上サーバである。
【0004】
即ち、指令卓1及び移動局6間では列車4の通常の運行中に音声データ、制御データ等の送受信を行っており、移動局6及び基地局3間では上下無線回線を使用して双方向の送受信を行い、基地局3及び指令卓1間では列車無線地上装置2を介し、上下有線回線を使用して双方向の送受信を行っている。
【0005】
いま、列車乗務員が何らかの障害や故障を発見すると、この障害や故障による事故が発生しないように近隣の列車4に対して防護無線装置5を使用して防護発報する。この防護発報は近隣を走行している列車1で受信され、障害や故障の発生を各列車1の乗務員が知ることができる。一方、障害や故障の情報は指令卓1の指令員にも伝達する必要があるが、防護無線装置5では指令卓1へ無線送信できない。
【0006】
そこで、防護無線装置5が防護発報すると、これを移動局6が検知し、防護発報の情報を防護無線装置5から受信し、基地局3へ向けて無線発信する。基地局3は上り無線回線を介して受信した防護発報の情報を有線上り回線を利用し、列車無線地上装置を介して指令卓1へ送信する。したがって、指令員は防護発報の情報を知ることができ、下り有線回線及び無線回線を利用して各列車4の移動局6へ音声データを送信し、各列車4の乗務員へ発生した障害や故障に対する指示を行うことができる。
【0007】
本発明は、以下に述べる実施の形態で明らかなように列車1に車載カメラを搭載し、車載カメラが撮像した画像データを指令卓1へ送信するものであるが、列車に車載カメラを搭載し、列車無線の回線品質データとともに車載カメラが撮像した画像データを記録するようにした従来技術が特許文献1に記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−48482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の列車無線システムでは、防護発報の情報を移動局6を利用して指令卓1へ送信するものとしているが、防護発報の情報は具体的には列車乗務員の音声データであり、指令員が発生している障害や故障を的確に把握することが困難であった。
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、発生している障害や故障の情報を的確に指令員に伝達することができる列車無線システムを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る列車無線システムは、列車に搭載され、障害発生時に近隣の列車に対して障害の発生を防護発報する防護無線装置、上記列車に取付けられ、上記障害を撮像するための車載カメラ、上記列車に搭載され、基地局を介して指令卓と無線通信する移動局を備え、該移動局は上記防護無線装置の防護発報を検知し、該防護発報の情報を上記指令卓へ無線送信するとともに、上記車載カメラが撮像した画像データを上記指令卓へ無線送信するように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、列車乗務員が防護発報した情報とともに、車載カメラが撮像した画像データを指令卓へ無線送信するように構成したので、指令員は発生している障害や故障を画像で確認することができ、的確に障害や故障の状況を把握することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る列車無線システムを示した構成図であり、1は指令卓、2は列車無線地上装置、3は基地局、4は列車、5は防護無線装置、6は移動局、7は車上サーバであり、図5の構成と同様である。8は列車4に取付けられた車載カメラであり、障害や故障の状況を撮像するためのものである。
【0014】
次に、がけ崩れなどの障害が発生したときの動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0015】
即ち、がけ崩れなどの障害が発生すると(S1)、列車乗務員は障害の発生を防護無線装置5を使用して防護発報し(S2)、近隣の列車へ障害の発生を通報する。防護無線装置5が防護発報すると、移動局6がこの防護発報を検知し、車上サーバ7へ防護発報したことを伝達する(S3)。車上サーバ7は防護発報を検知すると、車載カメラ8に対して撮像した画像データの配信を要求し(S4)、車載カメラ8から画像データを受信すると移動局6へ受信した画像データを送信する(S5)。
【0016】
移動局6は車上サーバ7から画像データを受信するとともに、防護無線装置5から列車乗務員が防護発報した音声データを受信し、これらを多重化して基地局3へ向けて無線送信する。移動局6から送信された画像データ及び音声データは基地局3から列車無線地上装置2を経由して指令卓1へ送信される(S6)。指令卓1では音声データ及び画像データを復調して図示しないスピーカから音声出力するとともにモニタに画像を表示する(S7)。
【0017】
これにより、指令員は列車乗務員の通報する防護発報情報及び障害の画像情報を確認することができるので、障害の状況を正確に把握でき、各列車の乗務員へ的確な指令を与えることができる。
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係る列車無線システムを示した構成図であり、1は指令卓、2は列車無線地上装置、3は基地局、4は列車、51、52は防護無線装置、61、62はそれぞれ対応する防護無線装置51、52に接続された移動局、8aは防護無線装置51に対応した車載カメラ、8bは防護無線装置52に対応した車載カメラである。
【0018】
列車無線システムは、一般に運転士側及び車掌側それぞれに移動局及び防護無線装置が設置される。この実施の形態2は各防護無線装置51、52に対応して車載カメラ8a、8bを取付けた構成としている。
【0019】
いま、防護無線装置51側の列車乗務員が防護発報したものとして、図4を参照して動作を説明する。即ち、障害が発生すると(S11)、列車乗務員が防護無線装置51を使用して防護発報する(S12)。防護無線装置51の防護発報は移動局61で検知され、車上サーバ7へ防護発報したことを伝達する(S13)。車上サーバ7は防護無線装置51の防護発報を検知すると、該防護無線装置51に対応する車載カメラ8aに対して撮像した画像データの配信を要求し(S14)、車載カメラ8から画像データを受信すると移動局61へ受信した画像データを送信する(S15)。
【0020】
移動局61は車上サーバ7から画像データを受信するとともに、防護無線装置51から列車乗務員が防護発報した音声データを受信し、これらを多重化して基地局3へ向けて無線送信する。移動局61から送信された画像データ及び音声データは基地局3から列車無線地上装置2を経由して指令卓1へ送信される(S16)。指令卓1では音声データ及び画像データを復調して図示しないスピーカから音声出力するとともにモニタに画像を表示する(S17)。
【0021】
なお、上述の説明では防護無線装置51が防護発報した場合について説明したが、防護無線装置52が防護発報した場合も同様に車載カメラ8bの撮像した画像データが指令卓1へ送信される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、防護無線装置を有する列車無線システムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る列車無線システムを示した構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る列車無線システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係る列車無線システムを示した構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る列車無線システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来の列車無線システムを示した構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 指令卓 2 列車無線地上装置 3 基地局 4 列車 5 防護無線装置 6 移動局 7 車上サーバ 8 車載カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載され、障害発生時に近隣の列車に対して障害の発生を防護発報する防護無線装置、上記列車に取付けられ、上記障害を撮像するための車載カメラ、上記列車に搭載され、基地局を介して指令卓と無線通信する移動局を備え、該移動局は上記防護無線装置の防護発報を検知し、該防護発報の情報を上記指令卓へ無線送信するとともに、上記車載カメラが撮像した画像データを上記指令卓へ無線送信することを特徴とする列車無線システム。
【請求項2】
列車に搭載され、障害発生時に近隣の列車に対して障害の発生を防護発報する少なくとも2つの防護無線装置、この防護無線装置に対応してそれぞれ上記列車に取付けられ、上記障害を撮像するための車載カメラ、上記防護無線装置に対応してそれぞれ上記列車に搭載され、基地局を介して指令卓と無線通信する移動局、この移動局の指令により、該移動局に対応する上記車載カメラの撮像した画像データを該移動局へ送信する車上サーバを備え、上記移動局は対応する上記防護無線装置の防護発報を検知し、該防護発報の情報を上記指令卓へ無線送信するとともに、上記車上サーバへ指令を送信し、対応する上記車載カメラの撮像した画像データを要求して受信し、上記指令卓へ無線送信することを特徴とする列車無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137642(P2010−137642A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314411(P2008−314411)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】