説明

判別装置

【課題】新規判別対象の登録、及び登録の解除の前後で、予め登録されている判別対象間の出力値の比率が変更されない判別装置を提供する。
【解決手段】予め登録されている複数の判別対象のうち、入力データが属する判別対象を判別するための第1の出力データを出力する固定ニューラルネットワーク26と、外部からの操作によって、新規判別対象が登録された際、入力データが当該新規判別対象に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変ニューラルネットワーク40を追加し、外部からの操作によって、新規判別対象の登録が解除された際、該第2のニューラルネットワークを削除するニューラルネットワーク管理部27と、第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記判別情報を生成することが可能な出力処理部29とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判別対象の追加が可能な判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、誤差逆伝播学習方式によって学習するニューラルネットワークが、画像認識、音声認識、パターン認識などの種々の分野において利用されるようになってきている。このようなニューラルネットワークは、入力データに基づいて、予め登録された複数の判別対象の中から、当該入力データが属する判別対象を判別することが可能である。
【0003】
このニューラルネットワークを利用したものとして、水中探知装置が知られている(特許文献1)。水中探知装置は、超音波を利用して、水底の泥や岩等の底質に関する底質情報を取得するものであり、底魚やエビ、カニなどの生息場所や、魚網の破損の原因となる岩場などを知るために利用されている。この底質情報は、水中探知装置の振動子から水底に向けて発射された超音波の送信パルスのエコー信号に基づいて生成された入力データを、ニューラルネットワークに入力し、当該ニューラルネットワークから出力された出力データを処理することにより得ることができる。そして得られた出力データは、表示モニタ等を介してユーザに報知される。
【0004】
ところで、ニューラルネットワークにおいて、新たに判別対象を追加(登録)したい場合がある。例えば、水中探知装置において、判別させたい底質(ユーザ底質)を新たに追加したい場合がある。このような場合、最も単純な方法として、ニューラルネットワークのニューロンの数を増加させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ニューロンの数を増加させる方法では、新規判別対象を登録する際(判別対象を追加する)際に、ニューラルネットワークの構造を変える必要があると共に、ニューロンの増加に伴って学習時間が爆発的に増加するという問題点がある。また、図20に示すように、登録されている判別対象各々の、入力データに対する類似度を出力するニューラルネットワークにおいて、ニューラルネットワークの構造を変える前後で、予め登録されている判別対象間の、同一の入力データに対する出力値の比率が変化する可能性がある。またさらに、登録した判別対象の登録を解除しようとした場合、再度ニューラルネットワークの構造を変える必要があるという問題がある。
【0007】
特に、水中探知装置において、ユーザが識別したい底質(ユーザ底質)は、水域、季節、天候等によって異なることが多いため、ユーザ底質の登録(新規判別対象の登録)、及び登録の解除が頻繁に起こる可能性がある。このユーザ底質の登録、及び登録の解除の度に、ニューラルネットワークの構造を変化させる必要があり、学習時間が膨大にかかる。さらに、予め登録されている底質間における同一の入力データに対する出力値の比率が変わるため、ユーザが、同じ入力データにも関わらず、底質が変化したと錯覚するおそれがあり、底質情報を正確にユーザに把握させることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、少ない学習時間で新規判別対象の登録、及び登録の解除が可能であり、かつ新規判別対象の登録、及び登録の解除の前後で、予め登録されている判別対象間の出力値の比率が変更されない判別装置を提供することにある。さらには、この判別装置を有する水中探知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水中へ送信された超音波のエコー信号を受信し、当該エコー信号に基づいた入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された出力データに基づいて、登録されている複数の底質のうち当該入力データが属する底質に関する底質情報を、所定時間毎に生成する水中探知装置であって、予め登録されている複数の底質のうち、前記入力データが属する底質を判別するための第1の出力データを出力する固定ニューラルネットワークと、外部からの操作によって、新規底質が登録された際、前記入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変ニューラルネットワークを追加し、外部からの操作によって、登録された新規底質の登録が解除された際、該可変ニューラルネットワークを削除するニューラルネットワーク管理部と、前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記底質情報を生成することが可能な出力処理部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、予め登録されている複数の底質のうち、入力データが属する底質を判別するための第1の出力データが固定ニューラルネットワークから出力される。外部からの操作によって、新たに新規底質が登録された際、可変ニューラルネットワークが追加され、入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データが当該可変ニューラルネットワークから出力される。また、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報を生成することが可能である。さらに、外部からの操作によって、当該登録された新規底質の登録が解除された際、可変ニューラルネットワークは削除される。
このように、可変ニューラルネットワークを追加、削除することにより、新規底質の登録、及び登録の解除をすることができるため、固定ニューラルネットワークの構造を変更する必要がない。また、可変ニューラルネットワークは、新規底質に属するか否かを判別するニューラルネットワークであり、ニューロンの数が少ないため、学習時間を抑えることができる。またさらに、入力データが新規底質に属するか否かをユーザに認識させることができる、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報を生成することが可能である。
なお、本発明に係る水中探知装置は、底質を判別する機能を備えたものであればよく、例えば、魚群探知機や測深機、ソナーなどが挙げられる。
【0011】
また、本発明の水中探知装置において、前記可変ニューラルネットワークは、受信した前記エコー信号に基づいて生成され、外部からの操作によって、前記新規底質の学習データとして設定されたユーザ登録学習データ、及び前記固定ニューラルネットワークの学習の際に用いられ、前記新規底質以外の底質の学習データとして設定された固定学習データによって学習されるようにされていてもよい。上記の構成によれば、受信したエコー信号に基づいて生成され、外部からの操作によって新規底質の学習データとして設定されたユーザ登録学習データ、及び固定ニューラルネットワークの学習の際に用いられ、新規底質以外の底質の学習データとして設定された固定学習データによって学習される。このようにすることで、可変ニューラルネットワークの学習の際に用いられる学習データは、水中カメラなどで実際に確認しなくても取得することができる。
【0012】
また、本発明の水中探知装置において、前記ユーザ登録学習データは、外部からの操作によって学習データの追加、及びユーザ登録学習データの一部の学習データを削除可能にされていてもよい。上記の構成によれば、ユーザ登録学習データは、外部からの操作によって学習データの追加、及びユーザ登録学習データの一部の学習データを削除可能にされている。このようにすることで、新規底質の学習データを優良なものにすることが可能であり、入力データが新規底質に属するか否かについての底質情報を精度良く生成することが出来る。
【0013】
また、本発明の水中探知装置において、前記底質情報は、前記第2の出力データから生成される、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値、及び/又は前記第1の出力データから生成される、前記入力データと前記予め登録されている複数の底質各々との類似度に相当する値からなるようにされていてもよい。上記の構成によれば、底質情報は、前記第2の出力データから生成される、入力データと新規底質との類似度に相当する値、及び/又は前記第1の出力データから生成される、入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度に相当する値からなる。このようにすることで、入力データと新規底質底質との類似度、及び入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度が一目瞭然となる。また、底質を判別する水域内で、入力データと新規底質との類似度が変化する様子、及び入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度が変化する様子が一目瞭然となる。
【0014】
また、本発明の水中探知装置においては、閾値を設定する閾値設定部を更に備え、前記出力処理部において、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、前記閾値以上の場合、前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記底質情報を生成し、前記第2の出力データが示す値が前記閾値よりも小さい場合、前記第1の出力データのみにより前記底質情報が生成されるようにされていてもよい。上記の構成によれば、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、閾値設定部により設定された閾値以上の場合、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報を生成し、閾値よりも小さい場合、第1の出力データのみにより底質情報が生成される。このように、入力データと新規底質との類似度に相当する値の大きさによって、第2の出力データを底質情報の生成に用いるか否かが決まるため、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、設定された閾値以上であるか否かが一目瞭然となる。
【0015】
また、本発明の水中探知装置においては、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、前記閾値以上の場合に、前記入力データが前記固定ニューラルネットワークに入力されないようにする可変ニューラルネットワーク出力判定部を更に備えていてもよい。上記の構成によれば、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、閾値設定部により設定された閾値以上の場合に、入力データは固定ニューラルネットワークに入力されない。こうすることにより、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値以上の場合に、固定ニューラルネットワークにおける処理を省くことが出来る。
【0016】
また、本発明の水中探知装置において、前記閾値は外部からの操作によって変更可能にされていてもよい。上記の構成によれば、閾値は外部からの操作によって変更可能にされている。こうすることにより、第2の出力データを底質情報に反映させるか否かを決定する、入力データと新規底質との類似度に相当する値の大きさを、ユーザは、自らの好みに応じて変更することが出きる。
【0017】
また、本発明の水中探知装置において、前記底質情報を出力する出力部(表示モニタやスピーカ等)を備え、前記出力部に出力させる前記底質情報の出力形態は複数あり、当該出力形態が外部からの操作によって変更可能にされていてもよい。上記の構成によれば、出力部に底質情報を出力させる出力形態は複数あり、外部からの操作によって変更可能にされている。こうすることで、ユーザは、自らの好みに応じて、出力形態を変更することが出来る。
【0018】
また、本発明は、入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された出力データに基づいて、登録されている複数の判別対象のうち当該入力データが属する判別対象に関する判別情報を生成する判別装置であって、予め登録されている複数の判別対象のうち、前記入力データが属する判別対象を判別するための第1の出力データを出力する固定ニューラルネットワークと、外部からの操作によって、新規判別対象が登録された際、前記入力データが当該新規判別対象に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変ニューラルネットワークを追加し、外部からの操作によって、新規判別対象の登録が解除された際、該第2のニューラルネットワークを削除するニューラルネットワーク管理部と、前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記判別情報を生成することが可能な出力処理部とを備えていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、予め登録されている複数の判別対象のうち、入力データが属する判別対象を判別するための第1の出力データが固定ニューラルネットワークから出力される。外部からの操作によって、新たに新規判別対象が登録された際、可変ニューラルネットワークが追加され、入力データが当該新規判別対象に属するか否かを判別するための第2の出力データが当該可変ニューラルネットワークから出力される。また、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された判別情報を生成することが可能である。さらに、外部からの操作によって、当該登録された新規判別対象の登録が解除された際、可変ニューラルネットワークは、削除される。
このように、可変ニューラルネットワークを追加、削除することにより、新規判別対象を登録、及び登録の解除をすることができるため、固定ニューラルネットワークの構造を変更する必要がない。また、可変ニューラルネットワークは、新規判別対象に属するか否かを判別するニューラルネットワークであり、ニューロンの数が少ないため、学習時間を抑えることができる。またさらに、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された判別情報が生成されるため、入力データが新規判別対象に属するか否かを容易に判別することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、予め登録されている複数の判別対象のうち、入力データが属する判別対象を判別するニューラルネットワークの構造を変更せずに、新規判別対象の登録、及び登録の解除を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示装置の外部構造である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第一底質表示形態、(b)は、第一比率表示形態について説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置のニューラルネットワークから出力される出力データを示す図であり、(a)は固定ニューラルネットワークから出力される出力データ、(b)は可変ニューラルネットワークから出力される出力データを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第一底質表示形態、(b)は、第一比率表示形態について説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第二底質表示形態、(b)は、第二比率表示形態について説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第二底質表示形態、(b)は、第二比率表示形態について説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第三底質表示形態、(b)は、第三比率表示形態について説明する図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態を説明する図であり、(a)は第三底質表示形態、(b)は、第三比率表示形態について説明する図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる水中探知装置の表示モニタに表示される底質情報の表示形態の一変形例を説明する図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る水中探知装置におけるメイン処理の動作の流れを表すフローチャート図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る水中探知装置における操作ボタン処理の動作の流れを表すフローチャート図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る水中探知装置におけるユーザ底質追加処理の動作の流れを表すフローチャート図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る水中探知装置におけるユーザ底質修正処理の動作の流れを表すフローチャート図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る水中探知装置における学習処理の動作の流れを表すフローチャート図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る水中探知装置のユーザ底質修正処理における表示モニタに表示される画面を示す図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る水中探知装置の一変形例を示す図である。
【図20】従来のニューラルネットワークについて説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る一実施形態である水中探知装置について図面を参照して説明する。図1は、水中探知装置1について説明する説明図である。
【0023】
(水中探知装置1の概略構成)
図1に示すように、水中探知装置1は、船舶5に搭載されている。水中探知装置1が搭載された船舶5の船底には、振動子11が設けられており、該振動子11は、超音波である送信パルスを水底に向けて発射し、当該送信パルスが水底で反射されたエコー信号を受信する。
【0024】
また、船舶5には、探知装置本体90が操舵室に設置されており、該探知装置本体90は、入力データ生成部6、可変ニューラルネットワーク部7(以下、可変NN部7)、固定ニューラルネットワーク26(以下、固定NN26)、出力制御部8、及び操作入力部70を有している。
【0025】
入力データ生成部6は、振動子11で受信されたエコー信号に基づいて、特徴量を算出し、後述の可変ニューラルネットワーク40(以下、可変NN40)や固定NN26に入力される入力データを生成する。
【0026】
固定NN26は、予め登録されている複数の底質のうち、上記入力データが属する底質を判別するための第1の出力データを生成する。
【0027】
可変NN部7は、操作入力部70を介してユーザから新規底質の登録がされた場合に、入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データを生成する可変NN40を固定NN26の前段に追加する。そして、当該可変NN40の第2の出力データに応じて、固定NN26に入力データを出力するか否かを判定し、出力すると判定した場合のみ、固定NN26に入力データを出力するようにされている。
【0028】
また、可変NN部7は、操作入力部70を介してユーザから新規底質の登録がされた場合、固定NN26の前段に追加されている可変NN40を削除する。
【0029】
出力制御部8は、固定NN26から出力される第1の出力データ、及び/又は可変NN40から出力される第2の出力データに基づいて、底質情報55を生成し、当該底質情報55をユーザが認識できるように、探知装置本体90に設けられた表示モニタ50などに出力する。
【0030】
(水中探知装置1の詳細構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る水中探知装置の構成を示すブロック図である。この水中探知装置1は、魚群を探知する機能と海底の底質を判別する機能とを備える。魚群を探知する機能については、従来のものと同様であるので説明を省略する。
【0031】
振動子11は、2つの周波数(ここでは50kHzと200kHz)の超音波である送信パルスを水底に向けて発射し、当該送信パルスが水底で反射されたエコー信号を受信する。送信パルス幅が1ms、周波数が50kHzのとき、送信パルスは50周期分の正弦波信号となる。
【0032】
入力データ生成部6は、送受信部12、周波数変換部13、A/D変換器14、検波部15、振幅データ記憶部16、深度算出部17、送信パルス幅算出部18、振幅データ抽出部19、ゲイン補正部20、平滑化部21、正規化部22、及び特徴量算出部23を有している。
【0033】
送受信部12は、後述の送信パルス幅算出部18から入力される送信パルス幅制御信号に応じたパルス幅の送信駆動信号を振動子11に供給するとともに、振動子11から出力されたエコー信号に対して帯域制限と信号増幅の処理を施す。
【0034】
周波数変換部13は、50kHzあるいは200kHzのエコー信号を中間周波数信号に変換する。この中間周波数信号の変換により、2つの周波数のエコー信号に対する以降の信号処理が共通化される。A/D変換器14は、中間周波数信号をデジタル信号に変換する。検波部15は、A/D変換器14から出力されるデジタル信号を検波して振幅データを出力する。振幅データは、振幅データ記憶部16に記憶され、深度算出部17や振幅データ抽出部19などによる演算処理時に振幅データ記憶部16から読み出される。
【0035】
深度算出部17は、振幅データから海底深度を求める。なお、海底深度の算出については、従来の方法と同様であるので説明を省略する。送信パルス幅算出部18は、深度算出部17で算出した海底深度に基づいて、海底深度に比例する送信パルス幅を算出し、この送信パルス幅に応じた送信パルス幅制御信号を送受信部12に送る。なお、送信パルス幅は、海底深度に正確に比例させてもよいし、略比例させるだけでもよい。振幅データ抽出部19は、海底深度に比例する時間間隔で、入力される振幅データから、後述の特徴量算出部23における特徴量の算出に用いる振幅データを抽出する。
【0036】
ゲイン補正部20は、振幅データ抽出部19で抽出した振幅データに対してTVG(Time Variable Gain)処理を施す。このTVG処理によって、超音波信号の伝搬損失に起因する受信信号レベルの減衰量が補正される。なお、図2ではゲイン補正部10を振幅データ抽出部19の後段に配置しているが、前段に配置してもよい。
【0037】
平滑化部21は、ゲイン補正後の振幅データを平滑化する。この平滑化によって、船体の僅かな動揺やノイズなどによる振幅データ値の変動を抑制し、判別結果の安定性を向上させる。
【0038】
正規化部22は、平滑化した振幅データをそれらの最大値で正規化する。振幅データを正規化することによって、底質判別結果が振動子11の感度の経年変化や海面付近の気泡などによる受信レベルの変動に影響されなくなる。本実施形態では、海底深度に比例したパルス幅の送信パルスを振動子11から発射し、エコー信号の所定範囲から海底深度に比例する時間間隔で振幅データを抽出し、抽出した振幅データに対してTVG処理を施し、さらにTVG処理後の振幅データを正規化している。この結果、正規化後の振幅データは、底質が同じであれば、海底深度によらず同じになる。したがって、正規化後の振幅データから算出する特徴量に基づいて底質情報を取得する本実施形態の水中探知装置1では、底質情報は海底深度に依存しない。すなわち、底質が同じであれば、海底深度が異なっても底質情報は同じになる。
【0039】
特徴量算出部23は、正規化した振幅データから特徴量を算出し、固定NN26や可変NN40等に入力される入力データを生成する。なお、50kHz、及び200kHzの処理サイクルごとに特徴量は算出される。また、本実施形態において、入力データは、この50kHzの処理サイクルで得られた特徴量、及び200kHzの処理で得られた特徴量を1組の特徴量セットとし、該特徴量セットに基づいて形成された19個の入力信号からなる。
【0040】
固定NN26は、予め登録されている複数の底質のうち、特徴量算出部23から出力される入力データが属する底質を判別するための第1の出力データを生成する。本実施形態では、予め4種類の底質{岩,石,砂,泥}が登録されており、第1の出力データは、入力データと各々の底質との類似度に相当する値である。
【0041】
ここで、固定NN26の構成について説明する。固定NN26は、入力層、中間層、出力層の3層からなる階層型ニューラルネットワークである。入力層は、入力データである19個の入力信号に、それぞれ対応する19個の入力ニューロンにより構成される。出力層は、予め登録されている4種の底質に、それぞれ対応する4個の出力ニューロンから構成されている。各出力ニューロンは、入力データと対応する底質との類似度に相当する値を出力信号として出力する。第1の出力データは、該4個の出力信号からなる。
【0042】
次に、固定NN26の学習について説明する。まず、水底の底質がそれぞれ岩、石、砂、泥である各場所で、水中探知装置1を用いて多数の入力データが収集されるとともに、水中カメラなどで実際に底質種別が確認される。次に、パーソナルコンピュータ等によって、上記の収集された入力データと確認された底質種別とから、誤差逆伝搬法によってシナプス結合係数が決められる。なお、このように誤差逆伝搬法によって決定されたシナプス結合係数は、後述のROM82に記憶されている。また、収集された入力データは、新規底質以外の底質についての学習データである固定学習データとしてROM82に記憶されている。
【0043】
可変NN部7は、可変ニューラルネットワーク判定部24(以下、可変NN判定部24)、可変ニューラルネットワーク出力判定部25(以下、可変NN出力判定部25)、ニューラルネットワーク管理部27(以下、NN管理部27)、可変NN40、閾値設定部28、及び学習データ取得部31を有している。
【0044】
可変NN判定部24は、NN管理部27から出力される登録信号に基づいて可変NN40が登録されているか否かを判定する。可変NN40が登録されていると判定した場合に、特徴量算出部23から出力された入力データを可変NN40に出力する。
【0045】
可変NN出力判定部25は、後述の閾値設定部28から出力される閾値信号に基づいて、特徴量算出部23から出力された入力データを固定NN26に出力するか否かを判定する。入力データを固定NN26に出力すると判定した場合には、当該入力データを固定NN26に出力する。具体的には、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、操作入力部70を介してユーザによって設定された閾値以上であることを示す閾値信号が閾値設定部28から入力された場合に、当該入力データを出力しないと判定する。一方、閾値よりも小さいとする閾値信号が閾値設定部28から入力された場合、該入力データを出力すると判定する。また、閾値モードではないことを示す閾値信号を、閾値設定部28から受信した場合には、入力データは常に固定NN26に出力される。ここで、閾値モードとは、入力データと新規底質との類似度に相当する値に応じて、固定NN26に出力するか否かを決定するモードのことである。
【0046】
NN管理部27は、特徴量算出部23から出力された入力データ、及び学習データ取得部31から出力された入力データを記憶する。また、NN管理部27は、新規判別対象である新規底質の登録、又は新規底質の登録の解除を示すNN操作信号を操作入力部70から受信する。なお、新規底質の登録を示すNN操作信号には、NN管理部27に記憶されている入力データのうち、可変NN40に学習させる入力データ(ユーザ登録学習データ)を指定する指定データが含まれている。
【0047】
また、NN管理部27は、新規底質の登録を示すNN操作信号を受信した場合、指定データが指定する入力データをユーザ登録学習データとして設定し、当該ユーザ登録学習データと固定学習データとを用いて、可変NN40に学習をさせる。また、同時に、可変NN40が追加されたことを示す登録信号を可変NN判定部24に出力する。一方、新規底質の登録の解除を示すNN操作信号を受信した場合、NN管理部27は、可変NN40が削除されたことを示す登録信号を可変NN判定部24に出力する。
【0048】
可変NN40は、特徴量算出部23から出力される入力データが、新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データを生成する。
【0049】
ここで、可変NN40の構成について説明する。可変NN40は、入力層、中間層、出力層の3層からなる階層型ニューラルネットワークである。入力層は、固定ニューラルネットワーク26と同様、入力データである19個の入力信号それぞれに対応する19個の入力ニューロンにより構成される。出力層は、新規底質、及び新規底質以外の底質にそれぞれに対応する2個の出力ニューロンから構成されている。各出力ニューロンは、対応する底質との類似度に相当する値を出力信号として出力する。第2の出力データは、該2個の出力信号からなる。
【0050】
次に、可変NN40の学習について説明する。まず、ユーザ登録学習データを、新規底質の底質情報として設定し、ROM82に記憶されている固定学習データを新規底質以外の底質情報として設定する。なお、ユーザ登録学習データのデータ量と、固定学習データのデータ量とが異なる場合、データ量が少ない方の一部のデータを複製することでデータ量を増加させ、ユーザ登録学習データのデータ量と、固定学習データのデータ量とが同じになるようにされる。次に、後述の主制御回路80を用いて、上記のユーザ登録学習データと固定学習データとから、誤差逆伝搬法によってシナプス結合係数が決められる。なお、誤差逆伝搬法によって決定されたシナプス結合係数、及びユーザ登録学習データは、後述のRAM83に記憶される。こうすることにより、水中カメラなどで実際に底質種別を確認することなく、可変NN40に学習させることができる。また、出力層の出力ニューロンの数が2個と少ないため、新規底質の登録の際にかかる学習時間を少ないものとすることができる。
【0051】
閾値設定部28は、上記の第2の出力データである、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、操作入力部70を介してユーザによって設定された閾値以上か否かを判定し、当該判定結果を示す閾値信号を可変NN出力判定部25、及び出力処理部29に出力する。なお、後述の出力処理部29において、底質情報の生成の際に、固定NN26の第1の出力データを常に用いる場合には、閾値モードではないことを示す閾値信号を可変NN出力判定部25、及び出力処理部29に出力する。
【0052】
出力制御部8は、出力処理部29、表示制御部51、音声制御部61、表示モニタ50、及びスピーカ60を有する。
【0053】
出力処理部29は、閾値設定部28から出力された閾値信号、並びに固定NN26から出力される第1の出力データ、及び/又は可変NN40から出力される第2の出力データに基づいて底質情報を生成する。具体的に述べると、出力処理部29は閾値設定部28から、閾値以上とする判定結果を示す閾値信号を受信した場合、第1の出力データに対して第2の出力データを優先した底質情報を生成する。一方で、閾値よりも小さいとする判定結果を示す閾値信号を受信した場合、第1の出力データのみから底質情報を生成する。また、閾値モードではないことを示す閾値信号を受信した場合、可変NN40が登録されている場合は、第1の出力データと第2の出力データとを用いて底質情報を生成し、可変NN40が登録されていない場合は、第1の出力データのみから底質情報を生成する。
【0054】
表示制御部51は、出力処理部29で生成された底質情報を表示用データに変換し、当該表示用データを表示モニタ50に表示させる。音声制御部61は、所定の底質情報に基づいて音声データを生成し、スピーカ60から出力させる。なお、水中探知装置1が表示モニタ50やスピーカ60を備えていない場合には、他の機器のモニタに表示用データを表示させたり、他の機器のスピーカから音声データを出力させてもよい。操作入力部70は、閾値変更の操作、表示形態(出力形態)の変更操作、新規底質の登録操作等のユーザの操作を検出する。
【0055】
学習データ取得部31は、外部から新規底質の学習データを取得することが可能にされている。例えば、他の水中探知装置1で取得された新規底質の学習データを、無線通信を介して取得したり、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部メモリに記憶された新規底質の学習データを取得することができるようにされている。
【0056】
ここで、『固定ニューラルネットワーク』とは、新規判別対象を登録する前に登録されている、複数の判別対象のうち、入力データが属する判別対象を判別するための出力データを出力するニューラルネットワークである。また。『可変ニューラルネットワーク』とは、入力データが新規判別対象、及び新規判別対象を登録する前に登録されている複数の判別対象のどちらに属するかを判別するための出力データを出力するニューラルネットワークである。
【0057】
また、『固定学習データ』とは、固定ニューラルネットワークの学習の際に用いられるデータである。『ユーザ登録学習データ』とは、新規判別対象についてのデータである。
【0058】
(水中探知装置の動作)
次に、水中探知装置1の動作について説明する。送受信部12は、送信パルス幅算出部18から入力される送信パルス幅制御信号に応じたパルス幅の送信駆動信号を振動子11に供給する。この結果、振動子11から50kHzあるいは200kHzの超音波の送信パルスが海底に向けて発射(送信)される。送信パルス幅が1ms、送信周波数が50kHzのとき、送信パルスは50周期分の正弦波信号となる。
【0059】
振動子11から発射された送信パルスは海底で反射し、海底エコーを含む信号が振動子11で受信される。この受信信号に対する帯域制限および信号増幅が送受信部12で行われ、さらに周波数変換部13で受信信号が中間周波数信号に変換される。この周波数変換により、2つの周波数の受信信号に対する以降の信号処理が共通化される。中間周波数信号(周波数変換された受信信号)は、A/D変換器14でデジタル信号に変換され、さらに検波部15で検波され、検波部15から振幅データが出力される。振幅データは、振幅データ記憶部16に記憶され、深度算出部17や振幅データ抽出部19などによる演算処理時に振幅データ記憶部16から読み出される。
【0060】
深度算出部17は、従来からの方法で海底深度を求める。送信パルス幅算出部18は、深度算出部17で算出した海底深度に基づいて、海底深度に比例する送信パルス幅を算出し、この送信パルス幅に応じた送信パルス幅制御信号を送受信部12に送る。例えば、海底深度が50m、100m、200mのとき、送信パルス幅をそれぞれ0.5ms、1ms、2msとする。また、海底深度が70m〜90m、90m〜110mのとき、送信パルス幅をそれぞれ0.8ms、1msとして、階段状に海底深度に比例させてもよい。つまり、送信パルス幅を海底深度に正確に比例させてもよいし、略比例させるだけでもよい。そして、送信パルス幅制御信号を受信した送受信部12から上述の送信駆動信号が振動子11に供給されると、振動子11から海底深度に比例するパルス幅の送信パルスが発射される。
【0061】
振幅データ抽出部19は、検波部15から出力される振幅データの系列の所定範囲から、すなわちエコー信号の所定範囲から海底深度に比例する時間間隔で振幅データを抽出する。ここで、振幅データの系列とは、送信パルスを1回送信して得られる複数の振幅データを、それらが生じた時刻の順に並べることによって生成される数値列である。
【0062】
ゲイン補正部20は、振幅データ抽出部19で抽出した振幅データに対してTVG(Time Variable Gain)処理を施す。このTVG処理によって、超音波信号の伝搬損失に起因する受信信号レベルの減衰量が補正される。図2ではゲイン補正部10を振幅データ抽出部19の後段に配置しているが、前段に配置してもよい。平滑化部21は、ゲイン補正した振幅データを平滑化する。具体的には、複数回の同じ周波数(50kHzあるいは200kHz)の処理サイクルで得た振幅データを、データ番号ごとに平均する。k回目の処理サイクルで平滑化部21が出力する値は、例えば、(k−4)回目からk回目までの5回の処理サイクルで得られた振幅データの平均値である。平滑化処理は、船体の僅かな動揺やノイズなどによる振幅データ値の変動を抑制し、底質判別結果の安定性を向上させる。
【0063】
正規化部22は、平滑化した振幅データをそれらの最大値で正規化する。振幅データを正規化することによって、底質判別結果が振動子11の感度の経年変化や海面付近の気泡などによる受信レベルの変動に影響されなくなる。本実施形態では、海底深度に比例したパルス幅の送信パルスを振動子11から発射し、エコー信号の所定範囲から海底深度に比例する時間間隔で振幅データを抽出し、抽出した振幅データに対してTVG処理を施し、さらにTVG処理後の振幅データを正規化している。この結果、正規化後の振幅データは、底質が同じであれば、海底深度によらず同じになる。したがって、正規化後の振幅データから算出する特徴量に基づいて底質を判別する本発明では、底質判別結果は海底深度に依存しない。すなわち、底質が同じであれば、海底深度が異なっても底質判別結果は同じになる。
【0064】
特徴量算出部23は、正規化した振幅データの系列における複数個の区間(以下、セグメント)について、各セグメント内の振幅データの合計値(これを特徴量とよぶ)を算出する。特徴量は、50kHzおよび200kHzの処理サイクルごとに算出される。本実施形態では各セグメント内の振幅データを合計することにより特徴量を算出したが、各セグメント内の振幅データ値の標準偏差を用いて、あるいは各セグメント内の振幅データから算出したモーメントの値を用いて特徴量を算出してもよい。算出された特徴量に基づいて入力データを形成する。なお、本実施形態では、50kHzおよび200kHzの処理サイクルで得た1組の特徴量セットに基づいて形成された19個の入力信号を入力データとしている。
【0065】
可変NN判定部24は、特徴量算出部23から入力データが入力された場合、NN管理部27から出力される登録信号に基づいて可変NN40が登録されているか否かを判定する。可変NN40が登録されていると判定した場合、該入力データを登録されている可変NN40に出力する。
【0066】
可変NN出力判定部25は、特徴量算出部23から入力データが入力された場合、閾値設定部28から出力される閾値信号に基づいて、当該入力データを固定NN26に出力するか否かを判定する。具体的には、該閾値信号が、第2の出力データが閾値以上の場合、当該入力データを固定NN26に出力しない。一方、第2の出力データが閾値よりも小さい場合、当該入力データを固定NN26に出力する。また、閾値モードではないことを示す閾値信号の場合は、当該入力データを固定NN26に出力する。
【0067】
固定NN26は、階層型ニューラルネットワークであり、特徴量算出部23から出力される入力データ、又はNN管理部27から出力される入力データに基づいて、第1の出力データを生成する。なお、出力データは4個の出力信号からなり、各出力信号が底質種別{岩,石,砂,泥}との類似度に相当する値となるように、シナプス結合係数が決められている。なお、シナプス結合係数はROM82に予め記録されている。
【0068】
つまり、固定NN26は、底質を判別する海底からのエコー信号により算出した入力データに基づいて、予め登録されている底質種別との類似度を示す数値(底質情報)を生成する。なお、予め登録されている底質種別の数は4個に限られるものではなく、また底質種別は、{岩, 石, 砂, 泥}に限られるものではない。
【0069】
NN管理部27は、特徴量算出部23から入力データが入力された場合や、学習データ取得部31から入力データが入力された場合、当該入力データを当該入力データの特性(入力データの取得時の時刻、水温、取得方法、水域等の情報)と関連付けて記憶する。また、NN管理部27は、新規底質の登録を示すNN操作信号を受信した場合、当該NN操作信号に含まれている指定データが示す入力データをユーザ登録学習データとして設定し、当該ユーザ登録学習データと固定学習データとを用いて、可変NN40に学習をさせる。また、同時に可変NN40が登録されたことを示す登録信号を可変NN判定部24に出力する。一方で、新規底質の登録の解除を示すNN操作信号を受信した場合、可変NN40の登録が解除されたことを示す登録信号を可変NN判定部24に出力し、可変NN40を削除する。
【0070】
可変NN40は、階層型ニューラルネットワークであり、特徴量算出部23から出力される入力データに基づいて、第2の出力データを生成する。なお、第2出力データは2個の出力信号からなる。そして、1つの出力信号は入力データと新規底質との類似度に相当する値、もう一つの出力信号は、入力データと新規底質以外の底質との類似度に相当する値となるように、シナプス結合係数が決められている。なお、シナプス結合係数はRAM83に記録されている。
【0071】
閾値設定部28は、可変NN40から第2の出力データが入力された場合、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、操作入力部70を介してユーザによって設定された閾値以上であるか否かを判定し、当該判定結果を示す閾値信号を可変NN出力判定部25、及び出力処理部29に出力する。
【0072】
出力処理部29は、閾値設定部28から出力された閾値信号、並びに固定NN26から出力される第1の出力データ、及び/又は可変NN40から出力される第2の出力データに基づいて底質情報を生成する。具体的に述べると、出力処理部29は閾値設定部28から閾値信号を受信した場合、第1の出力データに対して第2の出力データを優先した底質情報を生成し、閾値信号を受信していない場合、第1の出力データのみから底質情報を生成する。また、出力処理部29は、操作入力部70を介して出力形態が選択された場合、当該選択された出力された出力形態に基づいた底質情報を生成する。
【0073】
表示制御部51は、出力処理部29で生成された底質情報を表示用データに変換し、当該表示用データを表示モニタ50に表示させる。音声制御部61は、所定の底質情報に基づいて音声データを生成し、スピーカ60から出力させる。
【0074】
(探知装置本体90の外部構造)
次に、図3を参照して、本実施の形態における水中探知装置1の探知装置本体90の外部構造について説明する。
【0075】
探知装置本体90は、図3に示すように表示モニタ50と、ユーザによる操作の対象となる各種の操作ボタンを有する操作入力部70とが設けられている。操作入力部は、表示モニタ50に表示させる底質情報の表示形態の変更、可変NN40から出力される第2の出力データの閾値の決定、新規底質(可変NN40)の登録などの操作を可能にしている。
【0076】
(水中探知装置の電気的構成)
次に、図4を参照して、本実施の形態における水中探知装置1の電気的構成について説明する。本実施の形態における水中探知装置1は、主制御回路80、及び主制御回路と電気的に接続する周辺装置とを備える。主制御回路80は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPU81と、ROM82と、RAM83とを有している。
【0077】
CPU81には、振動子11、各種指示などの操作を入力するための操作入力部70、表示モニタ50の表示制御を行う表示制御部51、スピーカ60の音声制御を行なう音声制御部61、可変NN40に学習させる入力データを取得する学習データ取得部31が接続されている。
ROM82には、各種のプログラム 、固定NN26のシナプス結合係数、固定学習データ等が記憶されている。RAM83は、上記の振幅データ、特徴量、入力データ、可変NN40のシナプス結合係数、作成されたユーザ底質(新規底質)の情報等が記憶される。
【0078】
(表示モニタの表示形態)
次に、本実施形態における表示モニタの表示形態について、図5乃至図10を参照しながら説明する。
【0079】
(第1表示形態)
図5は、任意の時刻において、固定NN26の第1の出力データのみを用いて底質情報を生成した場合の表示形態(以下、第1表示形態)について説明する図である。
【0080】
図5は、底質情報55を生成しながら船舶5を走行させた時の表示モニタ50の画像である。図中の水平方向は時間を表すが、船舶5の船速が明らかな場合は、距離として表すことも可能である。表示モニタ50の画像は、図中の右端部tから矢印A方向に移動するように表示され、左端部tnに至ると、順次消滅するように表示される。従って、右端部t0の下部に表示された画像が最新の情報であり左端部tnに近づくにつれ、より過去の情報となっている。表示モニタ50の画像の上半分は、通常の水中探知装置が表示するものと同じ画像である。53は送信駆動信号に直接起因する画像、54は海底面の画像である。55は底質情報の画像であり、底質各々を表す基本表示画像56が識別可能となるよう(例えば、色彩を付すなど)にされている。具体的に述べると、56aは泥、56bは砂、56cは石、56dは岩を表す基本表示画像である。なお、上記の表示モニタ50の画像についての事項は、図8、図10を参照して説明する第2の表示形態、及び第3の表示形態についても適用される事項である、
【0081】
本実施の形態においては、図5(a)に示すように、予め登録されている底質のうち、類似度に相当する値が最も高い底質のみを表示する表示形態(以下、第一底質表示形態)と、図5(b)に示すように、予め登録されている底質の類似度に相当する値各々を、全体に対する比率に応じて表示する表示形態(以下、第一比率表示形態)との2種類の第1表示形態を有している。
【0082】
図5(a)に示す、第一底質表示形態は、例えば、固定NN26から出力された各底質の類似度に相当する値が、図6(a)に示すように、全体を100%とした場合に、泥が60%、砂が20%、石が10%、岩が10%であったとすると、泥の類似度に相当する値が最も高いので、図7(a)に示すように泥の基本表示画像である56aのみを表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。
【0083】
また、図5(b)に示す比率表示形態は、固定NN26から出力された各底質の類似度に相当する値を、ユーザが認識可能となるように表示する。本実施形態においては、図7(b)に示すように、各基本表示画像56の縦方向の幅が、各底質の類似度に相当する値の全体に対する比率に応じた長さとすることで、ユーザが認識可能となるようにされている。例えば、泥が60%、砂が20%、石が10%、岩が10%であったとすると、その縦方向の幅の比率は60:20:10:10となり、底質情報55の縦方向の長さを当該比率となるように各基本表示画像56に割り当てられる。
【0084】
(第2表示形態)
次に、任意の時刻において、固定NN26の第1の出力データ、又は可変NN40の第2の出力データのどちらか一方の出力データのみを用いて底質情報を生成する表示形態(以下、第2表示形態)について説明する。第2表示形態は、可変NN40から出力されたユーザ底質(新規底質)の類似度に相当する値が、閾値設定部28によって設定された閾値よりも大きい場合には、ユーザ底質を表すユーザ底質表示画像57を表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。一方閾値よりも小さい場合には、固定NN26から出力され各底質の類似度に相当する値に基づいて、基本表示画像56を表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。なお、ユーザ底質表示画像57は、基本表示画像56と識別可能となるように(例えば、色彩を付すなど)されている。以下、可変NN40から出力された、ユーザ底質、及びユーザ底質以外の底質についての類似度に相当する値が、図6(b)に示すように、全体を100%とした場合に、ユーザ底質(新規底質)が60%、ユーザ底質以外の底質が40%であった場合について説明する。
【0085】
本実施形態において、第2表示形態は、第二底質表示形態と第二比率表示形態がある。
【0086】
図8(a)は、第二底質表示形態を示している。図9(a)に示すように、第二底質表示形態は、閾値設定部28によって設定された閾値が50%だった場合、ユーザ底質の類似度に相当する値の方が大きいため、ユーザ底質表示画像57を表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。一方、閾値設定部28によって設定された閾値が80%だった場合、ユーザ底質の類似度に相当する値の方が小さいため、予め登録されている底質のうち、類似度に相当する値が最も高い底質のみを表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。
【0087】
図8(b)は、第二比率表示形態を示している。図9(b)に示すように、第二比率表示形態は、閾値設定部28によって設定された閾値が50%だった場合、ユーザ底質の類似度に相当する値の方が大きいため、ユーザ底質表示画像57を表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。一方、閾値設定部28によって設定された閾値が80%だった場合、ユーザ底質の類似度に相当する値の方が小さいため、予め登録されている底質の類似度に相当する値各々を、全体に対する比率に応じて表示モニタ50の右端部t0の下部に表示する。
【0088】
(第3表示形態)
次に、任意の時刻において、固定NN26の第1の出力データ、及び可変NN40の第2の出力データの双方の出力データを用いて底質情報を生成する表示形態(以下、第3表示形態)について説明する。
【0089】
本実施形態において、第3表示形態は、第三底質表示形態と第三比率表示形態とがある。
【0090】
図10(a)は、第三底質表示形態を示している。第三底質表示形態は、まず、底質情報55の縦方向の長さを、ユーザ底質、及びユーザ底質以外の底質についての類似度に相当する値の、全体に対する比率に応じて、ユーザ底質表示画像57及び基本表示画像56に割り当てる。例えば、図6(b)に示すように、全体を100%とした場合に、ユーザ底質が60%、ユーザ底質以外の底質が40%だとすると、図11(a)に示すように、ユーザ底質表示画像57と基本表示画像56との縦方向の幅の長さの比率は60:40とする。次に基本表示画像56の縦方向の長さを、予め登録されている各底質の類似度に相当する値の全体に対する比率に応じて、各基本表示画像56に割り当てる。
【0091】
図10(b)は、第三比率表示形態を示している。第3比率表示形態は、図11(b)に示すように、可変NN40から出力されたユーザ底質の類似度に相当する値が、閾値設定部28によって設定された閾値以上の場合には、第三底質表示形態と同じ表示形態をとり、閾値よりも小さい場合には、第一比率表示形態を採るものである。
【0092】
以上、本実施形態における表示モニタの表示形態について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、予め登録されている2つの底質を一つの底質として取り扱い、基本混合表示画像58として表示されるようにされていてもよい。図12では、予め登録されている底質である、泥と砂を同一の底質として取り扱った際の、表示形態を示している。
【0093】
また、図12に示すように、予め登録されている底質と、ユーザ底質とを一つの種類の底質として取り扱い、ユーザ混合表示画像59として表示されるようにされていてもよい。図12では、ユーザ底質と、予め登録されている底質とを同一の底質として取り扱った際の、表示形態を示している。
【0094】
また、複数の表示形態を表示モニタ50に表示することができるようにされていてもよい。
【0095】
なお、上記の各種の表示形態は、操作入力部70を介してユーザが選択できるようにされている。こうすることで、ユーザは、自らの好みに応じて、出力形態(表示形態)を変更することが出来る。
【0096】
(水中探知装置1のCPU81の動作)
次に本実施の形態に係る水中探知装置1の動作について説明する。
【0097】
(メイン処理)
水中探知装置1のメイン処理について説明する。図13は、メイン処理における水中探知装置1の動作の流れを表すフローチャート図である。
【0098】
まず、CPU81は、操作入力部70を介してユーザより、水中探知開始操作がされたか否かを判断する(S1)。水中探知開始操作がされていないと判断した場合(S1:NO)には、S1の処理に戻る。一方、水中探知開始操作がされたと判断した場合(S1:YES)には、海底深度を算出し、海底深度に応じたパルス幅の送信パルスを海底に向けて送信し、エコー信号を受信する(S2)。
【0099】
次に、CPU81は、受信したエコー信号に基づいて、入力データを生成し(S3)、可変NN40が登録(追加)されているか否かを判断する(S4)。可変NN40が登録されていないと判断した場合(S4:NO)には、後述のS8の処理に移る。一方、可変NN40が登録されていると判断した場合(S4:YES)には、入力データを当該可変NN40に入力し(S5)、閾値モードが設定されているか否かを判断する(S6)。閾値モードが設定されていないと判断した場合(S6:NO)には、後述のS8の処理に移る。一方、閾値モードが設定されていると判断した場合(S6:YES)には、可変NN40から出力される第2の出力データが閾値以上か否かを判断する(S7)。閾値以上でないと判断した場合(S7:NO)には、後述のS8の処理に移る。一方で、閾値以上と判断した場合には(S7:YES)、表示モニタ50、及びスピーカ60を制御して、ユーザに水底の底質が新規底質であることを報知する(S9)。
【0100】
S8の処理においては、CPU81は、固定NN26に入力データを入力する。CPU81は、S8の処理、及びS9の処理の後、可変NN40の第2の出力データ、及び/又は固定NN26の第1の出力データ、並びに選択されている表示形態に基づいて、底質情報を生成し、当該底質情報を表示モニタ50に表示する(S10)。
【0101】
次に、CPU81は、入力データを、当該入力データの特性(入力データの取得時の時刻、水温、取得方法、水域等の情報)と関連付けてRAM83に記憶する(S11)。次にCPU81は、操作入力部70の操作ボタンが操作されたか否かを判断する(S12)。操作されていないと判断した場合(S12:NO)には、S2の処理に戻る。一方で、操作ボタンが操作されたと判断した場合には(S12:YES)、その操作が水中探知終了の操作であるか否かを判断する(S13)。水中探知終了の操作であると判断した場合(S13:YES)には、本処理を終了する。一方で、水中探知終了の操作ではないと判断した場合(S13:NO)には、後述の操作ボタン処理をし(S14)、S2の処理に戻る。
【0102】
(操作ボタン処理)
水中探知装置1の操作ボタン処理について説明する。図14は、操作ボタン処理における水中探知装置1の動作の流れを表すフローチャート図である。
【0103】
まず、CPU81は、操作入力部70の操作ボタンの操作が、表示形態変更操作であるか否かを判断する(S20)。表示形態変更操作であると判断した場合(S20:YES)には、表示モニタ50に表示させる表示形態を選択された表示形態に変更し(S21)、本処理を終了する。一方、表示形態変更操作ではないと判断した場合(S20:NO)には、ユーザ底質追加操作であるか否かを判断する(S22)。ユーザ底質追加操作であると判断した場合(S22:YES)には、後述のユーザ底質追加処理をし(S23)、本処理を終了する。
【0104】
一方、ユーザ底質追加操作ではないと判断した場合(S22:NO)には、CPU81は、ユーザ底質削除操作であるか否かを判断する(S24)。ユーザ底質削除操作であると判断した場合(S24:YES)には、可変NN40を削除し、当該可変NN40の学習データを学習データの特性(ユーザ底質の名称、登録、及び登録解除操作がされた日時等の情報)と関連付けてRAM83に記憶し、本処理を終了する。
【0105】
一方、ユーザ底質削除操作ではないと判断した場合(S24:NO)には、CPU81は、ユーザ底質修正操作であるか否かを判断する(S26)。ユーザ底質修正操作であると判断した場合(S26:YES)には、後述のユーザ底質修正処理をし(S27)、本処理を終了する。
【0106】
一方で、ユーザ底質削除操作ではないと判断した場合(S26:NO)には、CPU81は、閾値変更操作であるか否かを判断する(S28)。閾値変更操作ではないと判断した場合(S28:NO)には、本処理を終了する。一方で、閾値変更操作であると判断した場合には、RAM83に記憶されている閾値を、ユーザによって選択された閾値に変更し、本処理を終了する。
【0107】
(ユーザ底質追加処理)
水中探知装置1のユーザ底質追加処理について説明する。図15は、ユーザ底質追加処理における水中探知装置1の動作の流れを表すフローチャート図である。
【0108】
まず、CPU81は、操作入力部70のユーザの操作に基づいて、新たにユーザ底質を作成するか否かを判断する(S40)。新たにユーザ底質を作成すると判断した場合(S40:YES)には、後述の学習処理をする(S41)。次に、CPU81は、学習処理により得られたシナプス結合係数、可変NN40の学習に用いられた学習データ、ユーザ底質の名称等の情報を含むユーザ底質情報を作成し、このユーザ底質情報をRAM83に記憶する(S42)。次にCPU81は、学習処理により得られたシナプス結合係数をもつ可変NN40を固定NN26の前段に追加し(S45)、本処理を終了する。
【0109】
一方で、新たにユーザ底質を作成しないと判断した場合(S40:NO)には、CPU81は、RAM83に記憶されている、過去に作成したユーザ底質情報の一覧(ユーザ底質の名称の一覧など)を表示モニタ50に表示する(S43)。次に、CPU81は、操作入力部70を介してユーザによりユーザ底質情報が選択されたか否かを判断する(S44)。選択されていないと判断した場合(S44:NO)には、S44の処理に戻る。一方で、選択されたと判断した場合(S44:YES)には、RAM83に記憶されている、当該選択されたユーザ底質情報のシナプス結合係数をもつ可変NN40を固定NN26の前段に追加し(S45)、本処理を終了する。
【0110】
(ユーザ底質修正処理)
水中探知装置1のユーザ底質修正処理について説明する。図16は、ユーザ底質修正処理における水中探知装置1の動作の流れを表すフローチャート図である。
【0111】
まず、CPU81は、過去に作成したユーザ底質情報を表示モニタ50に表示する(S60)。次に、CPU81は、操作入力部70を介してユーザによりユーザ底質情報が選択されたか否かを判断する(S61)。ユーザ底質が選択されていないと判断した場合(S61)には、S61の処理に戻る。一方で、ユーザ底質が選択されたと判断した場合には、操作入力部70を介してユーザにより追加学習操作がされたか否かを判断する(S62)。追加学習操作がされたと判断した場合(S62:YES)には、後述の学習処理をし(S67)、RAM83に記憶されているユーザ底質情報の当該シナプス結合係数、及びユーザ登録学習データの学習データの情報を更新し(S68)、本処理を終了する。
【0112】
一方で、追加学習操作ではないと判断した場合(S62:NO)には、図18に示すように、当該選択されたユーザ底質(ユーザ底質情報)のユーザ登録学習データの学習データの一覧を表示する(S63)。次に、CPU81は、操作入力部70を介してユーザにより削除する学習データが選択されたか否かを判断する(S64)。削除する学習データが選択されていないと判断した場合(S64:NO)には、S63の処理に戻る。一方で、削除する学習データが選択されたと判断した場合(S64:YES)には、当該選択された学習データをユーザ登録学習データから削除する(S64)。次にCPU81は、ユーザ登録学習データと、ROM82に記憶されている固定学習データとを用いて誤差逆伝播法により可変NN40のシナプス結合係数を算出し(S65)、RAM83に記憶されているユーザ底質の当該シナプス結合係数、及びユーザ登録学習データの学習データの情報を更新し(S68)、本処理を終了する。
【0113】
(学習処理)
水中探知装置1の学習処理について説明する。図17は、学習処理における水中探知装置1の動作の流れを表すフローチャート図である。
【0114】
まず、CPU81は、操作入力部70のユーザの操作に基づいて、可変NN40を学習させる際に、RAM83に記憶されている入力データを用いて学習させるか否かを判断する(S80)。ROM82に記憶されている入力データを用いて学習させると判断した場合(S80:YES)には、RAM83に記憶されている入力データの特性の一覧を表示する(S81)。次に、CPU81は、操作入力部70を介してユーザにより、入力データが選択されたか否かを判断する(S82)。選択されていないと判断した場合(S82:NO)には、S82の処理に戻る。一方で、選択されたと判断した場合には、当該入力データをユーザ登録学習データとし、ユーザ登録学習データとROM82に記憶されている固定学習データを用いて誤差逆伝播法により、可変NN40のシナプス結合係数を算出し(S90)、本処理を終了する。
【0115】
一方で、RAM83に記憶されている入力データを用いて学習をさせないと判断した場合(S80:NO)には、CPU81は、操作入力部70を介してユーザにより、学習データ取得開始操作がされたか否かを判断する(S83)。学習データ取得開始操作がされていないと判断した場合(S83:NO)には、S83の処理に戻る。一方で、学習データ取得開始操作がされたと判断した場合(S83:YES)には、海底深度を算出し、海底深度に応じたパルス幅の送信パルスを海底に向けて送信し、エコー信号を受信する(S84)。
【0116】
次に、CPU81は、受信したエコー信号に基づいて、入力データを生成し(S85)、該入力データを固定NN26に入力する(S86)。次に、CPU81は、固定NN26より出力された第1の出力データを用いて底質情報を生成し、当該底質情報を表示モニタ50に表示する(S87)。次に、CPU81は、入力データをRAM83に記憶(S88)する。
【0117】
次に、CPU81は、操作入力部70を介してユーザにより、学習データ取得終了操作がされたか否か判断する(S89)。学習データ取得終了操作がされていないと判断した場合(S89:NO)には、S84の処理に戻る。
【0118】
一方で、学習データ取得終了操作がされたと判断した場合(S89:YES)には、本学習処理で取得された入力データをユーザ登録学習データとし、ユーザ登録学習データとROM82に記憶されている固定学習データを用いて誤差逆伝播法により、可変NN40のシナプス結合係数を算出し(S90)、本処理を終了する。
【0119】
(本実施の形態の概要)
以上のように、本実施形態の水中探知装置1は、水中へ送信された超音波のエコー信号を受信し、当該エコー信号に基づいた入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された出力データに基づいて、登録されている複数の底質のうち当該入力データが属する底質に関する底質情報55を、所定時間毎に生成する水中探知装置であって、予め登録されている複数の底質のうち、入力データが属する底質を判別するための第1の出力データを出力する固定NN26と、外部からの操作によって、新規底質が登録された際、入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変NN40を追加し、外部からの操作によって、登録された新規底質の登録が解除された際、該可変NN40を削除するNN管理部27と、第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された底質情報55を生成することが可能な出力処理部29と、底質情報55を出力する表示モニタ50やスピーカ60とを備えている。
【0120】
上記の構成によれば、予め登録されている複数の底質のうち、入力データが属する底質を判別するための第1の出力データが固定NN26から出力される。外部からの操作によって、新たに新規底質が登録された際、可変NN40が追加され、入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データが当該可変NN40から出力される。また、可変NN40は、新規底質に属するか否かを判別するニューラルネットワークであり、ニューロンの数を少なくすることができるため、学習時間を抑えることができる。また、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報55を生成することが可能であり、当該底質情報55は、表示モニタ50やスピーカ60より出力される。さらに、外部からの操作によって、当該登録された新規底質の登録が解除された際、可変NN40は削除される。
このように、可変NN40を追加、削除することにより、新規底質の登録、及び登録の解除をすることができるため、固定NN26の構造を変更する必要がない。また、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報55が表示モニタ50やスピーカ60から出力されるため、ユーザは、入力データが新規底質に属するか否かを容易に認識することができる。
【0121】
また、本発明の水中探知装置1において、可変NN40は、受信したエコー信号に基づいて生成され、外部からの操作によって、新規底質として設定されたユーザ登録学習データ、及び固定NN26の学習の際に用いられ、新規底質以外の底質として設定された登録学習データによって学習される。上記の構成によれば、受信したエコー信号に基づいて生成され、外部からの操作によって新規底質として設定されたユーザ登録学習データ、及び固定NN26の学習の際に用いられ、新規底質以外の底質として設定された固定学習データによって学習される。このようにすることで、可変NN40の学習の際に用いられる学習データは、水中カメラなどで実際に確認しなくても取得することができる。
【0122】
また、本発明の水中探知装置1において、ユーザ登録学習データは、外部からの操作によって学習データの追加、及びユーザ登録学習データの一部の学習データを削除可能にされている。上記の構成によれば、ユーザ登録学習データは、外部からの操作によって学習データの追加、及びユーザ登録学習データの一部の学習データを削除可能にされている。このようにすることで、新規底質の学習データを優良なものにすることが可能であり、入力データが新規底質に属するか否かについての底質情報55を精度良く生成することが出来る。
【0123】
また、本発明の水中探知装置1において、底質情報55は、第2の出力データから生成される、入力データと新規底質との類似度に相当する値、及び/又は第1の出力データから生成される、入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度に相当する値からなる。上記の構成によれば、底質情報55は、第2の出力データから生成される、入力データと新規底質との類似度に相当する値、及び/又は第1の出力データから生成される、入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度に相当する値からなる。このようにすることで、入力データと新規底質底質との類似度、及び入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度が一目瞭然となる。また、底質を判別する水域内で、入力データと新規底質との類似度が変化する様子、及び入力データと予め登録されている複数の底質各々との類似度が変化する様子が一目瞭然となる。
【0124】
また、本発明の水中探知装置1においては、閾値を設定する閾値設定部28を更に備え、出力処理部29において、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値以上の場合、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報55を生成し、閾値よりも小さい場合、第1の出力データのみにより底質情報が生成される。上記の構成によれば、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値設定部28により設定された閾値以上の場合、第1の出力データに対して第2の出力データが優先された底質情報55を生成し、閾値よりも小さい場合、第1の出力データのみにより底質情報55が生成される。このように、入力データと新規底質との類似度に相当する値の大きさによって、第2の出力データを底質情報55の生成に用いるか否かが決まるため、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、設定された閾値以上であるか否かが一目瞭然となる。
【0125】
また、本発明の水中探知装置1においては、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値以上の場合に、入力データが固定NN26に入力されないようにする可変NN出力判定部25を更に備えている。上記の構成によれば、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値設定部28により設定された閾値以上の場合に、入力データは固定NN26に入力されない。こうすることにより、入力データと新規底質との類似度に相当する値が、閾値以上の場合に、固定NN26における処理を省くことが出来る。
【0126】
また、本発明の水中探知装置1において、閾値は外部からの操作によって変更可能にされている。上記の構成によれば、第2の出力データを底質情報55の生成に反映させるか否かを決定する、入力データと新規底質との類似度に相当する値の大きさを、ユーザは、自らの好みに応じて変更することが出きる。
【0127】
また、本発明の水中探知装置1において、表示モニタ50やスピーカ60に底質情報を出力させる出力形態は複数あり、当該出力形態が外部からの操作によって変更可能にされている。上記の構成によれば、ユーザは、自らの好みに応じて、出力形態を変更することが出来る。
【0128】
(本実施の形態の変形例)
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0129】
例えば、本実施形態において、可変NN部7(可変NN40)は、固定NN26の前段に一つのみ設けられているが、図19に示すように複数の可変NN部7(可変NN40)を設けることが可能にされていてもよい。こうすることにより、複数種の新規底質を判別対象として追加することが可能となる。なお、この場合、各々の可変NN部7の可変NN40の学習に用いられる固定学習データは、固定NN26の学習データ、及び後段に設けられている可変NNのユーザ登録学習データとなる。また、各々の可変NN部7の閾値設定部28によって設定される閾値を変えることにより、底質情報の生成の際に優先させる、可変NN40の出力データを変更することが可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 水中探知装置
25 可変ニューラルネットワーク出力判定部
26 固定ニューラルネットワーク
27 ニューラルネットワーク管理部
28 閾値設定部
29 出力処理部
50 表示モニタ(出力部)
60 スピーカ(出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中へ送信された超音波のエコー信号を受信し、当該エコー信号に基づいた入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された出力データに基づいて、登録されている複数の底質のうち当該入力データが属する底質に関する底質情報を、所定時間毎に生成する水中探知装置であって、
予め登録されている複数の底質のうち、前記入力データが属する底質を判別するための第1の出力データを出力する固定ニューラルネットワークと、
外部からの操作によって、新規底質が登録された際、前記入力データが当該新規底質に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変ニューラルネットワークを追加し、外部からの操作によって、登録された新規底質の登録が解除された際、該可変ニューラルネットワークを削除するニューラルネットワーク管理部と、
前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記底質情報を生成することが可能な出力処理部と
を備えていることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
前記可変ニューラルネットワークは、受信した前記エコー信号に基づいて生成され、外部からの操作によって、前記新規底質の学習データとして設定されたユーザ登録学習データ、及び前記固定ニューラルネットワークの学習の際に用いられ、前記新規底質以外の底質の学習データとして設定された固定学習データによって学習されることを特徴とする請求項1に記載の水中探知装置。
【請求項3】
前記ユーザ登録学習データは、外部からの操作によって、学習データの追加、及びユーザ登録学習データの一部の学習データを削除可能にされていることを特徴とする請求項2に記載の水中探知装置。
【請求項4】
前記底質情報は、前記第2の出力データから生成される、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値、及び/又は前記第1の出力データから生成される、前記入力データと前記予め登録されている複数の底質各々との類似度に相当する値からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水中探知装置。
【請求項5】
閾値を設定する閾値設定部を更に備え、
前記出力処理部は、前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、前記閾値以上の場合、前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記底質情報を生成し、前記第2の出力データが示す値が前記閾値よりも小さい場合、前記第1の出力データのみにより前記底質情報を生成することを特徴とする請求項4に記載の水中探知装置。
【請求項6】
前記入力データと前記新規底質との類似度に相当する値が、前記閾値以上の場合に、前記入力データが前記固定ニューラルネットワークに入力されないようにする可変ニューラルネットワーク出力判定部を更に備えていることを特徴とする請求項5に記載の水中探知装置。
【請求項7】
前記閾値は、外部からの操作によって変更可能にされていることを特徴とする請求項5、又は請求項6に記載の水中探知装置。
【請求項8】
前記底質情報を出力する出力部(表示モニタやスピーカ等)を備え、
前記出力部に出力させる前記底質情報の出力形態は複数あり、当該出力形態が外部からの操作によって変更可能にされていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の水中探知装置。
【請求項9】
入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された出力データに基づいて、登録されている複数の判別対象のうち当該入力データが属する判別対象に関する判別情報を生成する判別装置であって、
予め登録されている複数の判別対象のうち、前記入力データが属する判別対象を判別するための第1の出力データを出力する固定ニューラルネットワークと、
外部からの操作によって、新規判別対象が登録された際、前記入力データが当該新規判別対象に属するか否かを判別するための第2の出力データを出力する可変ニューラルネットワークを追加し、外部からの操作によって、新規判別対象の登録が解除された際、該第2のニューラルネットワークを削除するニューラルネットワーク管理部と、
前記第1の出力データに対して前記第2の出力データが優先された前記判別情報を生成することが可能な出力処理部と
を備えていることを特徴とする判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−266280(P2010−266280A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116626(P2009−116626)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】