利得調整装置、及び受信装置
【課題】有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができる利得調整装置、及び受信装置等を提供する。
【解決手段】入力信号である受信信号の利得を調整する受信利得調整部314は、受信信号を増幅する増幅器400と、増幅器400による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路412と、比較回路412の比較結果を用いて利得を調整する利得調整回路414と、利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路416とを含み、利得調整回路414が、時定数設定回路416によって設定された時定数に応じた速度で、入力信号の利得を調整する。
【解決手段】入力信号である受信信号の利得を調整する受信利得調整部314は、受信信号を増幅する増幅器400と、増幅器400による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路412と、比較回路412の比較結果を用いて利得を調整する利得調整回路414と、利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路416とを含み、利得調整回路414が、時定数設定回路416によって設定された時定数に応じた速度で、入力信号の利得を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利得調整装置、及びこれを含んで構成される受信装置等に関し、特に入力信号の利得を調整する利得調整装置、及びこれを含んで構成される受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子キーが送信する鍵データを認証することで、自動車等の車両のドアのロックや解除、エンジンの始動や停止等を許可する制御を行う電子キーシステムが実用化されている。この種の電子キーは、送信回路及び受信回路を備え、高い周波数選択性を有する受信回路により、外乱ノイズがある環境下においても車両からの信号を正しく受信し、送信回路により車両に対して応答信号を送信する。
【0003】
一般的に、車両からの送信信号(電子キーの受信信号)は、振幅遷移変調(Amplitude Shift Keying:以下、ASK)信号(広義には、振幅変調信号)であり、信号の振幅成分に送信データを重畳させた信号である。電子キーは、この振幅成分を残して復調側に送るために、増幅器の出力を飽和させることなく受信信号を増幅させる必要があり、受信信号の利得調整が重要になっている。
【0004】
図16に、電子キーが備える一般的な受信回路の構成例のブロック図を示す。
図17に、図16の受信回路の動作説明図を示す。図17において、受信信号の包絡線を模式的に矩形波で表している。
【0005】
電子キーが備える受信回路10は、増幅器12と、増幅器12により増幅された信号に基づいて増幅器12の利得を調整する利得調整回路14と、利得調整回路14の制御により該受信信号を減衰させる減衰回路16とを備えている。この受信回路10では、増幅器12が増幅した増幅信号の振幅に基づいて、利得調整回路14が、減衰回路16の減衰度を制御する制御信号Contを生成する。図17では、制御信号Contの電位が上がるほど、受信回路10の利得が小さくなるようになっている。利得調整回路14からの制御信号Contを受けた減衰回路16は、制御信号Contに基づいて、受信信号の減衰度を調整する。制御信号Contに応じた減衰度で減衰回路16により減衰させた受信信号は、増幅器12に入力される。こうして、受信回路10において受信される受信信号の利得が調整され、増幅信号の振幅が、所望の振幅となるように制御される。
【0006】
このような受信回路10では、受信信号としてバースト信号B1が受信される期間において、受信信号の利得が決定される。その後、復調対象となる通信データC1が送られてくる。通信データC1は、エッジ間の長さに対応してデータ“0”又はデータ“1”を表している。通信データC1の受信期間では、バースト信号B1を用いて決定した利得に固定(ロック)して受信信号を増幅することで、車両からの送信信号の強度にかかわらず、ほぼ同じ振幅の増幅信号を復調器側に渡すことができる。以上のように、受信回路10は、通信の冒頭のバースト信号の受信中に受信信号の利得を決定することで、受信信号の利得を調整している。
【0007】
このような電子キーシステムを構成する電子キーにおける受信信号の利得調整については、例えば特許文献1〜特許文献5に開示されている。
【0008】
特許文献1には、増幅された中間周波数信号を受けた受信信号強度指示器から出力されるレベルが最大となるように調整電圧を生成し、該調整電圧を整合回路部に供給するようにしたリモートキーレスエントリーシステムが開示されている。特許文献2には、電子キーの照合結果に基づいて受信感度を低下させ、エンジンが停止された際に該受信感度を元に戻すようにした車両用電子キー装置が開示されている。特許文献3には、携帯機側の受信感度切替スイッチの操作に基づいて、受信回路の受信感度を切り替えるようにした車両用電子キーシステムが開示されている。特許文献4には、高感度回路と耐妨害回路とを切り替える受信部を備えるキーレスエントリー装置が開示されている。特許文献5には、背景ノイズが検出されたときに受信感度を下げるようにしたパッシブエントリーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−18664号公報
【特許文献2】特開2005−207083号公報
【特許文献3】特開2006−306161号公報
【特許文献4】特開2007−39989号公報
【特許文献5】特開2010−216142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この種の電子キーシステムでは、低消費電力化を図るため、できるだけ短い期間に、図17のバースト信号を含む信号を送信することが求められる。そのため、電子キーでは、バースト信号を含む受信信号の利得調整をできるだけ速く収束させることが求められる。
【0011】
その一方、送信側は、バースト信号の後にスペースと呼ばれる無信号状態に設定した後に通信データを送る場合がある。この場合、受信信号の利得調整をできるだけ速く収束させようとすると、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまう。
【0012】
この点、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、受信中は有信号状態及び無信号状態にかかわらず受信信号の利得調整を行う。従って、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、有信号状態では利得を下げ、無信号状態では利得を上げる調整を行う。そのため、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという問題が残る。その結果、振幅成分に重畳された情報を抽出しにくくなり、復調側で復調できない場合が生ずる。
【0013】
このように、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができない場合がある。
【0014】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができる利得調整装置、及び受信装置等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の第1の態様は、入力信号の利得を調整する利得調整装置が、記入力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路と、前記比較回路の比較結果を用いて前記利得を調整する利得調整回路と、前記利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路とを含み、前記利得調整回路が、前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記利得を調整する。
【0016】
本態様においては、入力信号を増幅する増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路の比較結果を用いて利得を調整する際に、時定数設定回路により設定される時定数に応じた速度で、入力信号の利得を調整するようにしている。こうすることで、入力信号に振幅情報が重畳された場合に、有信号状態の後に無信号状態が設けられ、有信号状態において調整した利得が調整前の利得に戻り、上記の振幅情報が失われるという事態を回避することができるようになる。即ち、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置を提供することができるようになる。
【0017】
(2)本発明の第2の態様に係る利得調整装置では、第1の態様において、前記利得調整回路は、所定のノードの電位を保持する電位保持回路と、前記所定のノードを充放電する電流値を前記比較回路の比較結果を用いて制御する充放電回路とを含み、前記所定のノードの電位に応じて前記利得を調整する。
【0018】
本態様においては、利得調整回路が、電位保持回路と、電位保持回路の所定のノードを充放電する電流値を制御する充放電回路とを設け、このノードの電位に応じて利得を調整するようにしている。これにより、非常に簡素な構成で、ノードの電荷の充放電特性に対応した時定数に応じた速度で、利得を調整することができるようになる。
【0019】
(3)本発明の第3の態様に係る利得調整装置では、第2の態様において、前記充放電回路は、充電用電流源と、放電用電流源とを含み、前記利得調整回路は、前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値を調整する。
【0020】
本態様においては、充電用電流源及び放電用電流源により所定のノードを充放電するようにしている。これにより、例えばノードの電荷を放電しながら、入力信号が入力されたときにノードの電位が上昇し、例えば減衰度が非常に大きくなりすぎることにより利得調整を継続できなくなるという事態を回避することができる。
【0021】
(4)本発明の第4の態様に係る利得調整装置では、第3の態様において、前記充電用電流源の電流値は、前記放電用電流源の電流値より大きい。
【0022】
本態様によれば、上記の効果に加えて、所定のノードの電荷の充電を行って、利得調整を確実に行うことができるようになる。
【0023】
(5)本発明の第5の態様に係る利得調整装置では、第2の態様において、前記充放電回路は、1又は複数の充電用電流源と、各々が充電用電流源回路に対応して設けられる1又は複数の放電用電流源とを含み、前記利得調整回路は、前記比較回路の比較結果を用いて選択される1組の前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値を調整する。
【0024】
本態様によれば、放電用電流源及び充電用電流源の組を切り替えることで、非常に簡素な構成で、時定数と切り替えることができるようになる。
【0025】
(6)本発明の第6の態様に係る利得調整装置では、第5の態様において、各充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きい。
【0026】
本態様によれば、上記の効果に加えて、所定のノードの電荷の充電を行って、利得調整を確実に行うことができるようになる。
【0027】
(7)本発明の第7の態様に係る利得調整装置は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記入力信号を減衰させる減衰回路を含み、前記増幅回路は、固定ゲインアンプであり、前記減衰回路は、前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記入力信号を減衰させる。
【0028】
本態様によれば、固定ゲインアンプで構成される増幅回路の入力側に減衰回路を備える構成としたので、減衰回路により、時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で入力信号を減衰させることで利得を調整することができるようになる。従って、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置の構成を簡素化することができる。
【0029】
(8)本発明の第8の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記増幅回路は、可変ゲインアンプであり、前記時定数設定回路によって調整された時定数に応じた速度で、前記増幅回路の利得を変化させる。
【0030】
本態様によれば、増幅回路を可変ゲインアンプにより構成したので、時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、増幅回路の利得を変化させることで利得調整装置の利得を調整することができるようになる。従って、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置の構成を簡素化することができる。
【0031】
(9)本発明の第9の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第8の態様のいずれかにおいて、前記入力信号は、振幅変調信号であり、前記時定数設定回路は、前記増幅信号の復調結果に応じて、時定数を調整する。
【0032】
ここで、振幅変調信号は、振幅成分に、送信データを重畳させた信号である。このような振幅変調信号として、例えばASK信号がある。
本態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、振幅変調信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に設けられる復調器に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置を提供することができるようになる。これにより、無信号状態の前に設けられる有信号状態が短い期間であっても、復調可能な振幅情報を保持するように受信利得を調整することができるようになる。
【0033】
(10)本発明の第10の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第9の態様のいずれかにおいて、前記時定数設定回路は、前記利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数に切り替えると共に無信号状態において第2の時定数に切り替え、前記利得の調整後は、第3の時定数に切り替える。
【0034】
本態様においては、利得の調整中は、有信号状態又は受信号状態に応じて時定数を切り替え、利得の調整後も時定数を切り替えるようにしている。これにより、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができるようになる。
【0035】
(11)本発明の第11の態様に係る利得調整装置では、第10の態様において、前記第1の時定数は、前記第2の時定数より大きく、且つ、前記第3の時定数より大きい。
【0036】
本態様においては、有信号状態において第1の時定数に応じた速度で入力信号の利得を調整し、該有信号状態に続く無信号状態において第2の時定数に応じた速度で利得を調整するようにしている。第2の時定数は第1の時定数より大きいため、有信号状態で調整した利得は、無信号状態ではゆっくり元に戻るようになる。そのため、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を回避することができる。同様に、利得調整後には、第1の時定数より大きい第3の時定数に応じた速度で利得を調整するようにしたので、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を回避することができる。
【0037】
(12)本発明の第12の態様に係る利得調整装置では、第10の態様又は第11の態様において、前記時定数設定回路は、前記第2の時定数及び前記第3の時定数が無限大となるように時定数を調整する。
【0038】
本態様によれば、無信号状態において利得を固定し、且つ、利得調整後においても利得を固定するようにしたので、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を確実に回避することができる。
【0039】
(13)本発明の第13の態様は、受信装置が、前記振幅変調信号を受信する受信器と、前記受信器によって受信された前記振幅変調信号の受信利得を調整する上記のいずれか記載の利得調整装置と、前記利得調整装置によって調整された受信利得で増幅された信号に基づいて復調する復調器とを含む。
【0040】
本態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができる利得調整装置が適用された受信装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成の概要を示す図。
【図2】図1の電子キーの機能ブロックの一例を示す図。
【図3】図2の受信利得調整部の構成例のブロック図。
【図4】図3の受信利得調整部の構成例の回路図。
【図5】第1の実施形態において車両から送られてくる振幅変調信号の説明図。
【図6】図5の開始パターン信号の第1の説明図。
【図7】図5の開始パターン信号の第2の説明図。
【図8】図3の受信利得調整部の動作例のフロー図。
【図9】第1の実施形態における受信利得調整部の動作例を示す図。
【図10】第1の実施形態の変形例における利得調整回路の構成例の回路図。
【図11】図16の受信回路において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合の動作例の説明図。
【図12】図16の受信回路において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図。
【図13】第1の実施形態において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図。
【図14】第2の実施形態における受信利得調整部の構成例のブロック図。
【図15】第2の実施形態における受信利得調整部の構成例の回路図。
【図16】電子キーが備える一般的な受信回路の構成例のブロック図。
【図17】図16の受信回路の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0043】
なお、以下の実施形態では、入力信号として振幅変調信号である受信信号の利得調整を行う受信利得調整装置とこれを含んで構成される受信装置等を例に説明するが、本発明は、受信利得調整装置や受信装置等に限定されることなく、入力信号の利得を調整するものに適用することができる。
【0044】
〔第1の実施形態〕
図1に、本発明に係る第1の実施形態における電子キーシステムの構成の概要を示す。図1では、電子キーシステムが、車両と電子キーとにより構成される例を説明するが、第1の実施形態における電子キーシステムの構成要素は、図1に示すものに限定されるものではない。
【0045】
電子キーシステム100は、自動車等の車両200と、携帯機器としての電子キー(広義には、電子機器)300とを備えている。車両200は、電子キー300に送信するデータ等を重畳させた第1の周波数の振幅変調信号202を周期的に送信し、電子キー300からの応答を待つ。この振幅変調信号202は、信号の振幅成分に送信データを重畳させたASK信号である。電子キー300は、車両200からの振幅変調信号202を受信すると、車両200に対して第2の周波数の信号204で応答する。その後、車両200と電子キー300との間で信号のやりとりを行い、電子キー300が認証されると、車両200のドアのロックや解除、エンジンの始動や停止等の所定の制御が許可されるようになっている。
【0046】
電子キー300は、内蔵するバッテリーで動作するようになっており、車両200からの呼びかけに対応するため、低消費電力で動作する必要がある。そのため、電子キー300が受信する振幅変調信号202の第1の周波数は、低い周波数に設定される。また、電子キー300は、車両200が搭載するエンジンやその他の電子部品等の外乱ノイズへの影響をできるだけ小さくするように、信号受信を行う際には高い周波数選択性を備える。従って、受信信号の歪みが大きくなり、復調可能な振幅情報を残したまま復調側へ送るように、電子キー300では、受信信号の利得調整を行う。
【0047】
図2に、図1の電子キー300の機能ブロックの一例の図を示す。図2において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0048】
電子キー300は、受信部(受信装置)310と、通信処理部320と、送信部330とを備えている。受信部310は、同調回路(広義には、受信器)312と、受信利得調整部(利得調整装置、受信利得調整装置。広義には、増幅部)314と、復調器316とを備えている。同調回路312は、コイル340と、コンデンサー342とが並列に接続された並列共振回路により構成される。受信利得調整部314には、同調回路312において受信された振幅変調信号、復調器316の復調結果、及び該復調結果を用いて通信処理部320において行われた処理結果が供給される。通信処理部320は、利得調整処理部322を備えている。送信部330は、変調器332と、送信器334と、送信アンテナ336とを備えている。
【0049】
車両200からの振幅変調信号202は、同調回路312においてその共振周波数で共振させることにより受信部310で受信される。受信利得調整部314は、利得の調整が可能に構成されており、同調回路312により受信された受信信号としての振幅変調信号を、調整された利得で増幅する。受信利得調整部314は、後述するように、必要に応じて復調器316の復調結果や通信処理部320の処理結果を用いて、切り替え可能な速度(調整速度)で、受信信号の利得を調整することができるようになっている。復調器316は、受信利得調整部314において増幅された増幅信号に対して、送信側で行われた変調処理に対応した所与の復調処理を行い、復調結果を受信利得調整部314及び通信処理部320に対して供給する。受信利得調整部314は、復調器316の復調結果を用いて、有信号状態であるか無信号状態であるかを判別することができる。
【0050】
通信処理部320は、受信部310によって受信信号の復調結果に対して所与の通信処理を行い、送信部330を介して車両200に対して応答を送信する処理を行う。通信処理部320の利得調整処理部322は、復調器316の復調結果を用いた所与の利得調整処理を行い、利得調整処理結果を受信利得調整部314に対して供給することができるようになっている。この利得調整処理としては、車両200からの通信データの先頭に対応した開始パターン信号の検出処理、車両200からの通信の正常終了又は異常終了の検出処理等がある。
【0051】
このような通信処理部320の機能は、ハードウェア回路により実現されたり、ソフトウェア処理により実現されたりする。通信処理部320の機能がソフトウェア処理により実現される場合、通信処理部320は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPU)及び記憶部を備えている。そして、この記憶部に記憶されたプログラムをCPUが読み出し、該CPUがプログラムに対応した処理を実行することで、ソフトウェア処理が実現される。
【0052】
変調器332は、通信処理部320に対して行われた通信処理結果を変調する。送信器334は、変調器332によって変調された変調結果に対応した送信信号を、送信アンテナ336を介して送信する。
【0053】
図3に、図2の受信利得調整部314の構成例のブロック図を示す。図3では、図2の復調器316、及び利得調整処理部322をあわせて図示している。
【0054】
受信利得調整部314は、増幅器(増幅回路)400と、利得制御回路410と、減衰回路420とを備えている。利得制御回路410は、比較回路412と、利得調整回路414と、時定数設定回路416とを備えている。なお、時定数設定回路416は、受信利得調整部314の外部に設けられていてもよい。
【0055】
増幅器400は、受信信号としての振幅変調信号を所定の利得で増幅し、増幅信号を復調器316に対して出力する固定ゲインアンプである。この増幅信号は、利得制御回路410にも供給される。利得制御回路410は、増幅器400による増幅信号、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の処理結果に基づいて、制御信号Contを生成する。減衰回路420は、利得制御回路410からの制御信号Contに対応した減衰度で、増幅器400に入力される振幅変調信号を減衰させる。
【0056】
利得制御回路410において、比較回路412には、基準電圧(広義には、基準信号)が入力されている。比較回路412は、増幅信号と基準電圧とを比較し、比較結果信号を利得調整回路414に出力する。利得調整回路414は、比較回路412からの比較結果信号に基づいて、受信利得調整部314の利得を調整する。このとき、利得調整回路414は、時定数設定回路416により設定された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314の利得を調整する。時定数設定回路416は、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の処理結果に基づいて、利得調整回路414による利得を調整する速度に対応した時定数を設定する。こうして、利得調整回路414は、時定数を切り替えながら、切り替えられた時定数に応じた速度で変化する制御信号Contを出力することができる。利得調整回路414が出力する制御信号Contは、減衰回路420に対して出力される。
【0057】
利得調整回路414において、基準時定数に対してより大きい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより遅い速度で減衰回路420の減衰度が調整される。そのため、遅い調整速度で、受信利得調整部314の利得が変化するようになる。一方、基準時定数に対してより小さい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより速い速度で減衰回路420の減衰度が調整される。そのため、速い調整速度で、受信利得調整部314の利得が変化するようになる。
【0058】
以上のように、利得調整回路414は、比較回路412の比較結果を用いて時定数を調整する。より具体的には、利得調整回路414は、時定数設定回路416によって調整された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314の受信利得を調整する。
【0059】
図4に、図3の受信利得調整部314の構成例の回路図を示す。図4において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図4では、利得調整回路414が、3種類の時定数のいずれか1つを切り替えながら、受信利得を調整するものとする。
【0060】
減衰回路420は、抵抗素子R1と可変抵抗VRとを備えている。抵抗素子R1は、受信信号が入力される端子と増幅器400の入力端子との間に挿入される。可変抵抗VRは、増幅器400の入力端子と接地端との間に挿入される。可変抵抗VRには、制御信号Contが入力され。制御信号Contに基づいて抵抗値の変更が可能に構成される。図4では、制御信号Contの電位が高くなるほど、可変抵抗VRの抵抗値が小さくなり、減衰度が大きくなるものとする。このような減衰回路420は、受信信号が入力されたとき、該受信信号を抵抗素子R1と可変抵抗VRとにより抵抗分割した電圧を出力する。この電圧が、増幅器400に入力される。
【0061】
比較回路412は、コンパレーターを有し、増幅器400の出力と基準電圧Vref1との比較結果を出力する。
【0062】
利得調整回路414は、電位保持回路450と、充放電回路452と、充放電電流制御回路454とを備えている。電位保持回路450は、所定のノードNDの電位を保持する。このような電位保持回路450は、一端に接地電圧が供給され他端にノードNDが接続されるコンデンサーCAを備えている。このノードNDの電位が、制御信号Contとして出力される。そのため、ノードNDの電位に応じて、減衰回路420の減衰度が変化し、受信利得調整部314の利得を変化させることができる。
【0063】
充放電回路452は、時定数に対応して1又は複数組の充電用電流源及び放電用電流源を備えており、ノードNDの電荷を充放電させる電流を切り替える。各組の充電用電流源及び放電用電流源において、充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きい。こうすることで、ノードNDの電荷を放電しながら、受信信号が受信されたときにノードNDの電位が上昇し、減衰回路420の減衰度が非常に大きくなりすぎることにより利得調整を継続できなくなるという事態を回避することができる。
【0064】
図4では、充放電回路452は、第1の時定数τ1、第2の時定数τ2、及び第3の時定数τ3の各々に対応して充電用電流源Ic1〜Ic3及び放電用電流源Id1〜Id3を備えている。ここで、時定数については、τ1<τ2、τ1<τ3の関係を有する。τ2=τ3であってもよい。
【0065】
具体的には、充放電回路452には、第1の時定数τ1に対応して、充電用電流源Ic1、放電用電流源Id1、スイッチ素子SWp1,SWn1が設けられる。スイッチ素子SWp1は、充電用電流源Ic1とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn1は、放電用電流源Id1とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic1の電流値は、放電用電流源Id1の電流値より大きい。
【0066】
また、充放電回路452には、第2の時定数τ2に対応して、充電用電流源Ic2、放電用電流源Id2、スイッチ素子SWp2,SWn2が設けられる。スイッチ素子SWp2は、充電用電流源Ic2とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn2は、放電用電流源Id2とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic2の電流値は、放電用電流源Id2の電流値より大きい。また、時定数は((コンデンサーCAの容量値)/電流値)に比例するため、充電用電流源Ic2の電流値は、充電用電流源Ic1の電流値より小さい。
【0067】
更に、充放電回路452には、第3の時定数τ3に対応して、充電用電流源Ic3、放電用電流源Id3、スイッチ素子SWp3,SWn3が設けられる。スイッチ素子SWp3は、充電用電流源Ic3とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn3は、放電用電流源Id3とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic3の電流値は、放電用電流源Id3の電流値より大きい。また、充電用電流源Ic3の電流値は、充電用電流源Ic2の電流値より小さい。
【0068】
充放電電流制御回路454は、充放電回路452によりノードNDの電荷を充放電させる電流を切り替える制御を行う。具体的には、充放電電流制御回路454は、充放電回路452のスイッチ素子SWp1〜SWp3、SWn1〜SWn3のスイッチ制御を行うスイッチ制御信号を生成する。充放電電流制御回路454は、時定数設定回路416の出力に基づいて切り替え対象の時定数を決定し、決定した時定数に対応した組の充電用電流源及び放電用電流源とノードNDとを接続するスイッチ素子をオンする制御を行う。この結果、ノードNDの電荷の充放電特性に対応した時定数に従ってノードNDの電位が変化し、制御信号Contを変化させることができる。
【0069】
以上のように、充放電回路452は、充放電電流制御回路454の制御により、所定のノードNDを充放電する電流値を比較回路412の比較結果を用いて制御することができる。このような充放電回路452を有する利得調整回路414は、比較回路412の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、充電用電流源及び放電用電流源により所定のノードNDを充放電する電流値により調整することができる。複数組の充電用電流源及び放電用電流源を備えるとき、この利得調整回路414は、切り替え対象の時定数に応じて選択される1組の充電用電流源及び放電用電流源により、比較回路412の比較結果に基づく利得制御の調整速度を調整する。
【0070】
図5に、第1の実施形態において車両200から送られてくる振幅変調信号202の説明図を示す。図5は、説明の便宜上、振幅変調信号202の包絡線を矩形波で表す。
図6に、図5の開始パターン信号の第1の説明図を示す。
図7に、図5の開始パターン信号の第2の説明図を示す。
【0071】
車両200から電子キー300への通信データの送信に先立って、受信信号としてバースト信号B2が受信される。この受信信号は、バースト信号B2の後、無信号状態であるスペースSP1が設けられた後に、予め決められた開始パターン信号TPを含んで構成される。
【0072】
開始パターン信号TPは、図6に示すように有信号状態及び無信号状態の組み合わせに対応したパターンとすることができる。或いは、開始パターン信号TPは、図7に示すように有信号状態及び無信号状態の少なくとも一方の長さにより規定されるパターンとしてもよい。なお、図7では、開始パターン信号TPは、有信号状態の長さt1により規定される例を表している。このような開始パターン信号TPは、利得調整後の増幅信号を復調した復調器316の復調結果に対して、通信処理として開始パターン信号の検出処理を行った利得調整処理部322によって検出される。
【0073】
図5に示す受信信号は、開始パターン信号TPの後、無信号状態であるスペースSP2が設けられた後に、車両200から電子キー300へ送る通信データC2を含んで構成される。通信データC2は、エッジ間の長さに対応したデータ“0”又はデータ“1”により構成される。
【0074】
このような受信信号を受信した受信利得調整部314は、バースト信号や開始パターン信号に応じて時定数を切り替える。具体的には、時定数を切り替えることで、受信利得調整部314は、バースト信号B2により受信利得を調整すると、その後のスペースSP1において、調整後の利得をできるだけ維持するようにする。そして、受信利得調整部314は、開始パターン信号TPの検出を条件に、受信利得を固定、又はできるだけ維持する用に調整する。こうすることで、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという事態を回避する。
【0075】
図8に、図3の受信利得調整部314の動作例のフロー図を示す。
【0076】
まず、受信利得調整部314では、利得調整回路414において、時定数設定回路416により初期値として第1の時定数τ1が設定される(ステップS10)。即ち、受信利得調整部314は、動作開始直後は第1の時定数τ1に応じた速度で、受信信号の利得が調整される。
【0077】
次に、受信利得調整部314は、受信信号の有無を監視する(ステップS12:N)。受信利得調整部314は、復調器316の復調結果を用いて有信号状態であるか無信号状態であるかを判断することで、受信信号の有無を監視することができる。受信信号が検出されたとき、バースト信号(第1の有信号状態)であると判断する。
【0078】
ステップS12において受信信号が検出されたとき(ステップS12:Y)、受信利得調整部314は、そのまま第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS14)。即ち、ステップS14では、第1の受信利得調整ステップとして、第1の時定数τ1に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。
【0079】
続いて、受信利得調整部314は、無信号状態であるか否かを検出する(ステップS16)。即ち、ステップS16では、受信利得調整部314は、バースト信号の後のスペースであるか否かを検出する。スペースが設けられたことが検出されると(ステップS16:Y)、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第1の時定数τ1より大きい第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS18)。即ち、ステップS18では、第2の受信利得調整ステップとして、第2の時定数τ2に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。これにより、ステップS18では、ステップS14と比較して緩やかに受信信号の利得が調整されるようになる。
【0080】
ステップS18において、第2の時定数τ2は、無限大であることが望ましい。第2の時定数τ2が無限大のとき、受信利得調整部314の受信利得が固定される。
【0081】
一方、ステップS16において、スペースが設けられていないことが検出される(ステップS16:N)と、受信利得調整部314は、通信処理部320(利得調整処理部322)からの処理結果に基づき、通信の異常終了であるかを判定する(ステップS20)。異常終了ではないと判定されたとき(ステップS20:N)、受信利得調整部314は、ステップS14に戻る。ステップS20において異常終了であると判定されたとき(ステップS20:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0082】
ステップS18に続いて、受信利得調整部314は、有信号状態であるか否かを検出する(ステップS22)。即ち、ステップS22では、バースト信号後のスペースを設けた後の開始パターン信号の入力の有無を検出する。有信号状態であることが検出されたとき(ステップS22:Y)、受信利得調整部314は、ステップS22で検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致するか否かを検出する(ステップS24、開始パターン信号検出ステップ)。
【0083】
一方、有信号状態ではないことが検出されたとき(ステップS22:N)、受信利得調整部314は、例えば通信処理部320(又は利得調整処理部322)からの処理結果に基づき、通信の異常終了であるかを判定する(ステップS26)。異常終了ではないと判定されたとき(ステップS26:N)、受信利得調整部314は、ステップS18に戻る。ステップS26において異常終了であると判定されたとき(ステップS26:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0084】
なお、ステップS26において、第2の時定数τ2に応じた速度で利得調整が行われている期間を監視し、該期間が所定の期間以上のとき、異常終了として判定するようにしてもよい。このとき、ステップS10に戻り、受信利得調整部314の状態が初期化され、再び、バースト信号を待つようにすることで、異常時の復帰動作を実現することができるようになる。
【0085】
検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致することが検出されたとき(ステップS24:Y)、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS28)。これにより、開始パターン信号の後の所定時間経過後に信号データが送られてくるタイミングを認識することがわかる。ステップS28では、第4の受信利得調整ステップとして、第3の時定数τ3に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。
【0086】
ステップS28において、第3の時定数τ3は、第1の時定数τ1より大きい。これにより、ステップS28では、ステップS14と比較して緩やかに受信信号の利得が調整されるようになる。より具体的には、第3の時定数τ3は、第2の時定数τ2と等しいことが望ましい。また、第3の時定数τ3は、無限大であることが望ましい。第3の時定数τ3が無限大のとき、受信利得調整部314の受信利得が固定される。
【0087】
ステップS24において、ステップS22で検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致しないことが検出されたとき(ステップS24:N)、受信利得調整部314は、ステップS14に戻る。即ち、ステップS14では、第3の受信利得調整ステップとして、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0088】
ステップS28に続き、受信利得調整部314は、通信処理部320からの処理結果に基づいて、正常終了又は異常終了であるか否かを検出する(ステップS30)。ステップS30において、正常終了又は異常終了ではないと検出されたとき(ステップS30:N)、受信利得調整部314は、引き続き、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0089】
ステップS30において、正常終了又は異常終了であると検出されたとき(ステップS30:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0090】
以上のように、受信利得調整部314は、時定数設定回路416において、受信利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数τ1に切り替えると共に、無信号状態において第2の時定数τ2に切り替え、受信利得の調整後は、第3の時定数τ3に切り替える。この結果、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができるようになる。
【0091】
図9に、第1の実施形態における受信利得調整部314の動作例を示す。図9は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、受信波形、制御信号Cont、復調器316の出力である復調信号を表す。ここでは、説明の便宜上、制御信号Contの電位が高くなるほど、受信利得調整部314の利得が小さくなるものとする。
【0092】
車両200との間での通信に先立って、受信利得調整部314は、時定数として、初期値である第1の時定数τ1を設定する(T1)。その後、受信信号として第1の有信号状態であるバースト信号B3が検出されると、受信利得調整部314は、引き続き、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0093】
バースト信号B3に続き、無信号状態であるスペースSP3が検出されると、受信利得調整部314は、第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。第2の時定数τ2は第1の時定数τ1より大きいため、バースト信号B3で調整した受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻る事態を回避することができる。これにより、スペースSP3の後の開始パターン信号TP1の受信開始時に、ほぼバースト信号B3で調整した利得で開始パターン信号TP1の受信利得の調整を行うことができるようになる。
【0094】
開始パターン信号TP1が検出されると、受信利得調整部314は、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。このように、スペースSP3後の開始パターン信号TP2を検出したときに、受信利得調整部314は、再び、第1の時定数τ1に切り替えるようにしたので、開始パターン信号TP1の受信時に素早く最適な利得に調整することができるようになる。
【0095】
予め決められている開始パターン信号TP1が検出されると、通信データC3の受信開始タイミングを特定することができる。そこで、受信利得調整部314は、開始パターン信号TP1後に、無信号状態であるスペースSP4が検出されると、一度、第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。このとき、第2の時定数τ2は第1の時定数τ1より大きいため、開始パターン信号TP1で調整した受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻る事態を回避することができる。そして、スペースSP4後の第3の有信号状態である通信データC3が検出されると、受信利得調整部314は、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0096】
第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とすることで、スペースSP3,SP4の受信時には、それぞれ直前の有信号状態で調整した利得を維持することができる。これにより、車両200からの送信状況にかかわらず受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻ることがなくなる。従って、できるだけ短い期間で車両200から電子キー300に通信するためにバースト信号等が短くなったとしても、復調可能な振幅情報を保持しながら振幅変調信号の受信利得を調整することができる。
【0097】
このような受信信号を受信した受信利得調整部314は、バースト信号や開始パターン信号に応じて時定数を切り替える。このとき、短いバースト信号であっても、精度よく受信利得を調整できるように、バースト信号の受信期間においても時定数を切り替える。具体的には、受信利得調整部314は、バースト信号B2の受信開始時には、目標値の付近まで高速に受信利得を変化させた後、低速で、且つ高精度に受信利得を変化させるように時定数を切り替える。受信利得調整部314は、バースト信号B2により受信利得を調整すると、その後のスペースSP1において、調整後の利得をできるだけ維持するようにする。そして、受信利得調整部314は、開始パターン信号TPの検出を条件に、受信利得を固定、又はできるだけ維持しながら調整する。
【0098】
こうすることで、短いバースト信号であっても、高速で、且つ、精度よく受信利得を調整することができる。更に、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという事態を回避することができる。
【0099】
ところで、上記のように、第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とすることが望ましい。この場合、図4の利得調整回路414は、次のような構成を採用することができる。
【0100】
図10に、第1の実施形態の変形例における利得調整回路の構成例の回路図を示す。図10において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0101】
第1の実施形態の変形例における利得調整回路414aは、図4の受信利得調整部314において利得調整回路414に代えて設けることができる。利得調整回路414aは、電位保持回路450と、充放電回路452aと、充放電電流制御回路454aとを備えている。利得調整回路414aが図4の利得調整回路414と異なる点は、充放電回路452aの充電用電流源Ic2,Ic3及び放電用電流源Id2,Id3が省略され、充放電電流制御回路454aがスイッチ素子SWp1,SWn1のオンオフ制御を行うようにした点である。即ち、第2の時定数τ2又は第3の時定数τ3に切り替えるとき、利得調整回路414aは、スイッチ素子SWp1,SWn1をオフする制御を行ってノードNDの電荷の充放電を停止させることで、制御信号Contの電位を固定(ロック)させる。
【0102】
このように利得調整回路414,414aでは、ノードNDの電荷を充放電するための電流値を切り替えることで、制御信号Contによる減衰度を変化させるようにしたので、非常に簡素な構成で、受信利得を調整することができるようになる。
【0103】
次に、第1の実施形態又はその変形例における受信利得調整部による効果を具体的に説明する。そのため、まず、従来の図16の受信回路10において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合について説明する。
【0104】
図11に、図16の受信回路10において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合の動作例の説明図を示す。図11は、包絡線を矩形波で示す受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0105】
図16の受信回路10では、バースト信号B4を受信したときに調整された利得が、スペースSP5の期間で元に戻り、開始パターン信号TP2を受信したときに、利得が再び調整される(図11のP0)。そのため、開始パターン信号TP2を受信するときには、受信回路10では、増幅器12の利得が最大に設定された状態から、再び開始パターン信号TP2に対して受信利得の調整が行われることになる。従って、開始パターン信号TP2を設けたとしても、図16の受信回路10では、受信が不安定となる。特に、バースト信号B4とスペースSP5とが同じ長さになると、調整した利得が元に戻ってしまい、開始パターン信号TP2で、再び受信利得の調整が始まり、開始パターン信号TP2の復調が困難になる。これは、同時に、通信データC4の復調についても困難になることを意味する。
【0106】
これに対して、第1の実施形態又はその変形例では、図9に示すように、バースト信号後に、このバースト信号と同じ長さのスペースが設けられたとしても、受信利得調整部314では、より遅く利得を調整する。そのため、該スペース後の開始パターン信号を受信したときに、利得を再び調整することがなくなり、開始パターン信号の復調が可能となる。
【0107】
また、第1の実施形態又はその変形例によれば、次のようなノイズに対する耐性も改善される。
【0108】
図12に、図16の受信回路10において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図を示す。図12は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0109】
図16の受信回路10は、バースト信号が受信されると、次に通信データの受信を開始する。このため、図12に示すようなノイズN1があると、例えばタイミングP1で通信データの受信を開始してしまう。そうすると、ノイズN1より正規の信号の方が、振幅が大きい場合であっても、正規の信号を受信することができなくなる。これは、受信回路10の増幅器12が、ノイズN1に追従して利得を上げた状態で固定してしまうからである。そのため、ノイズN1後の正規の信号についても、増幅器12は出力を飽和させてしまう。
【0110】
図13に、第1の実施形態又はその変形例において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図を示す。図13は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0111】
第1の実施形態又はその変形例では、開始パターン信号を設けているため、ノイズN2が受信信号に含まれていたとしても、図16の受信回路10のように増幅器の利得を固定させてしまうことなく、開始パターン信号の受信後(図13のP2)に、利得をできるだけ維持又は固定させることができるようになる。従って、ノイズN2後の正規の信号についても、増幅器は出力を飽和させることなく、正しく復調することができるようになり、ノイズに対する耐性を強化することができる。
【0112】
以上説明したように、第1の実施形態又はその変形例においては、第1の有信号状態であるバースト信号後に、開始パターン信号を設け、より大きな時定数に切り替えて振幅変調信号の受信利得を調整するようにしている。これにより、第1の有信号状態と開始パターン信号との間の無信号状態の期間で、受信利得が調整前の利得に戻ることなく、開始パターン信号後の通信データについて、例えば受信利得を固定させることで、安定した受信を実現することができるようになる。
【0113】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態又はその変形例では、受信利得調整部314において、増幅器400の入力の減衰度を制御することで、受信利得調整部314の利得を調整していたが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0114】
図14に、本発明に係る第2の実施形態における受信利得調整部の構成例のブロック図を示す。図14において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図14では、図2の復調器316及び利得調整処理部322をあわせて図示している。
【0115】
第2の実施形態における受信利得調整部(利得調整装置、受信利得調整装置。広義には、増幅部)314bは、図2の受信利得調整部314に代えて、図2の受信部310に適用することができる。
【0116】
このような受信利得調整部314bは、増幅器(増幅回路)400bと、利得制御回路410bとを備えている。利得制御回路410bは、比較回路412と、利得調整回路414bと、時定数設定回路416とを備えている。
【0117】
増幅器400bは、入力信号である受信信号としての振幅変調信号を、変更可能な利得で増幅し、増幅信号を復調器316に対して出力する可変ゲインアンプである。この増幅信号は、利得制御回路410bにも供給される。利得制御回路410bは、増幅器400bによる増幅信号、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の利得調整処理結果に基づいて、制御信号Contを生成する。
【0118】
利得制御回路410bにおいて、比較回路412には、基準電圧が入力されている。比較回路412は、増幅信号と基準電圧とを比較し、比較結果信号を利得調整回路414bに出力する。利得調整回路414bは、比較回路412からの比較結果信号に基づいて、受信利得調整部314bの利得を調整する。このとき、利得調整回路414bは、時定数設定回路416により設定された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314bの利得を調整する。即ち、利得調整回路414bは、時定数を切り替えながら、切り替えられた時定数に応じた速度で、比較回路412の比較結果に対応した制御信号Contとして出力する。利得調整回路414bが出力する制御信号Contは、増幅器400bに対して出力される。
【0119】
利得調整回路414bにおいて、基準時定数に対してより大きい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより遅い速度で増幅器400bの利得が調整される。そのため、遅い調整速度で、受信利得調整部314bの利得が変化するようになる。一方、基準時定数に対してより小さい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより速い速度で増幅器400bの利得が調整される。そのため、速い調整速度で、受信利得調整部314bの利得が変化するようになる。
【0120】
図15に、第2の実施形態における受信利得調整部314bの構成例の回路図を示す。図15において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0121】
第2の実施形態における受信利得調整部314bの構成が図4に示す受信利得調整部314の構成と異なる点は、電位保持回路450の出力が増幅器400bの利得制御に用いられる点である。第2の実施形態では、電位保持回路450の出力である制御信号Contの電位が高くなるほど、増幅器400bの利得が小さくなるものとする。
【0122】
なお、第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とした場合、利得調整回路の構成として、図10に示す構成を採用することができる。即ち、図15に示す構成に対して、充電用電流源Ic2,Ic3及び放電用電流源Id2,Id3が省略され、充放電電流制御回路がスイッチ素子SWp1,SWn1のオンオフ制御を行う。従って、第2の時定数τ2又は第3の時定数τ3に切り替えるとき、利得調整回路は、スイッチ素子SWp1,SWn1をオフする制御を行ってノードNDの電荷の充放電を停止させることで、制御信号Contの電位を固定(ロック)させる。
【0123】
このような受信利得調整部314bの動作は、図8に示す受信利得調整部314の動作と同様であるため、説明は省略する。
【0124】
以上説明したように、第2の実施形態では、第1の実施形態又はその変形例と同様に、第1の有信号状態と開始パターン信号との間の無信号状態の期間で、受信利得が調整前の利得に戻ることがない。そのため、開始パターン信号後の通信データについて、例えば受信利得を固定させることで、安定した受信を実現することができるようになる。
【0125】
以上、本発明に係る利得調整装置、及び受信装置等を上記のいずれかの実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明は上記のいずれかの実施形態又はその変形例に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0126】
(1)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
(2)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵され、該受信部が送信部と混載される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示す受信部の機能を有する受信装置に、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整部が内蔵されていてもよい。
【0128】
(3)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵され、該受信部が携帯機器としての電子キーに内蔵される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整部が、電子キー以外の別の携帯機器(電子機器)に内蔵されていてもよい。
【0129】
(4)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図1に示す電子キーシステムに適用される例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の通信システムに適用することができる。
【0130】
(5)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、振幅変調信号としてASK信号を例に説明したが、本発明はASK信号に限定されるものではなく、振幅情報を信号に重畳させるものに適用することができる。
【0131】
(6)上記のいずれかの実施形態又はその変形例において、カウンターを設けて、通信データのパターンのビット数をカウントするようにしてもよい。このカウンターにより所定のカウント数を超えた異常パターンが検出されたときには、受信利得調整部の調整を初期化して、再び、第1の時定数τ1に切り替えてバースト信号の受信を待つようにしてもよい。このようなカウンターは、通信処理部320(利得調整処理部322)や受信部310に設けることができる。こうすることで、通信データの異常時に、受信利得調整部を初期化して、再び、バースト信号の受信を待つことができるようになる。
【0132】
(7)第1の実施形態又はその変形例において、減衰回路は、直列に抵抗素子R1を挿入した構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、減衰回路において抵抗素子R1に代えてコンデンサーを挿入することによりハイパスフィルター回路を構成し、ハイパスフィルター回路のカットオフ周波数をずらすことで、受信信号を減衰させるようにしてもよい。
【0133】
(8)上記のいずれかの実施形態又はその変形例において、本発明を、利得調整装置、及び受信装置等として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整方法を実現するプログラム、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。また、例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信装置の受信方法、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信装置を含む携帯機器(電子機器)等であってもよい。
【符号の説明】
【0134】
10…受信回路、 12…増幅器、 14,414,414a,414b…利得調整回路、 16,420…減衰回路、 100…電子キーシステム、 200…車両、
202…振幅変調信号、 204…信号、 300…電子キー、
310…受信部(受信装置)、 312…同調回路(受信器)、
314,314b…受信利得調整部(受信利得調整装置)、 316…復調器、
320…通信処理部、 322…利得調整処理部、 330…送信部、
332…変調器、 334…送信器、 336…送信アンテナ、 340…コイル、
342…コンデンサー、 400,400b…増幅器(増幅回路)、
410,410b…利得制御回路、 412…比較回路、 416…時定数設定回路、
450…電位保持回路、 452,452a…充放電回路、
454,454a…充放電電流制御回路、
B1,B2,B3,B4…バースト信号(第1の有信号状態)、
C1,C2,C3,C4…通信データ、 CA…コンデンサー、 Cont…制御信号、
Ic1〜Ic3…充電用電流源、 Id1〜Id3…放電用電流源、 ND…ノード、
R1…抵抗素子、 SP1,SP2,SP3,SP4,SP5…スペース(無信号状態)、 SWn1〜SWn3,SWp1〜SWp3…スイッチ素子、
TP,TP1,TP2…開始パターン信号、 VR…可変抵抗、 τ1…第1の時定数、
τ2…第2の時定数、 τ3…第3の時定数
【技術分野】
【0001】
本発明は、利得調整装置、及びこれを含んで構成される受信装置等に関し、特に入力信号の利得を調整する利得調整装置、及びこれを含んで構成される受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子キーが送信する鍵データを認証することで、自動車等の車両のドアのロックや解除、エンジンの始動や停止等を許可する制御を行う電子キーシステムが実用化されている。この種の電子キーは、送信回路及び受信回路を備え、高い周波数選択性を有する受信回路により、外乱ノイズがある環境下においても車両からの信号を正しく受信し、送信回路により車両に対して応答信号を送信する。
【0003】
一般的に、車両からの送信信号(電子キーの受信信号)は、振幅遷移変調(Amplitude Shift Keying:以下、ASK)信号(広義には、振幅変調信号)であり、信号の振幅成分に送信データを重畳させた信号である。電子キーは、この振幅成分を残して復調側に送るために、増幅器の出力を飽和させることなく受信信号を増幅させる必要があり、受信信号の利得調整が重要になっている。
【0004】
図16に、電子キーが備える一般的な受信回路の構成例のブロック図を示す。
図17に、図16の受信回路の動作説明図を示す。図17において、受信信号の包絡線を模式的に矩形波で表している。
【0005】
電子キーが備える受信回路10は、増幅器12と、増幅器12により増幅された信号に基づいて増幅器12の利得を調整する利得調整回路14と、利得調整回路14の制御により該受信信号を減衰させる減衰回路16とを備えている。この受信回路10では、増幅器12が増幅した増幅信号の振幅に基づいて、利得調整回路14が、減衰回路16の減衰度を制御する制御信号Contを生成する。図17では、制御信号Contの電位が上がるほど、受信回路10の利得が小さくなるようになっている。利得調整回路14からの制御信号Contを受けた減衰回路16は、制御信号Contに基づいて、受信信号の減衰度を調整する。制御信号Contに応じた減衰度で減衰回路16により減衰させた受信信号は、増幅器12に入力される。こうして、受信回路10において受信される受信信号の利得が調整され、増幅信号の振幅が、所望の振幅となるように制御される。
【0006】
このような受信回路10では、受信信号としてバースト信号B1が受信される期間において、受信信号の利得が決定される。その後、復調対象となる通信データC1が送られてくる。通信データC1は、エッジ間の長さに対応してデータ“0”又はデータ“1”を表している。通信データC1の受信期間では、バースト信号B1を用いて決定した利得に固定(ロック)して受信信号を増幅することで、車両からの送信信号の強度にかかわらず、ほぼ同じ振幅の増幅信号を復調器側に渡すことができる。以上のように、受信回路10は、通信の冒頭のバースト信号の受信中に受信信号の利得を決定することで、受信信号の利得を調整している。
【0007】
このような電子キーシステムを構成する電子キーにおける受信信号の利得調整については、例えば特許文献1〜特許文献5に開示されている。
【0008】
特許文献1には、増幅された中間周波数信号を受けた受信信号強度指示器から出力されるレベルが最大となるように調整電圧を生成し、該調整電圧を整合回路部に供給するようにしたリモートキーレスエントリーシステムが開示されている。特許文献2には、電子キーの照合結果に基づいて受信感度を低下させ、エンジンが停止された際に該受信感度を元に戻すようにした車両用電子キー装置が開示されている。特許文献3には、携帯機側の受信感度切替スイッチの操作に基づいて、受信回路の受信感度を切り替えるようにした車両用電子キーシステムが開示されている。特許文献4には、高感度回路と耐妨害回路とを切り替える受信部を備えるキーレスエントリー装置が開示されている。特許文献5には、背景ノイズが検出されたときに受信感度を下げるようにしたパッシブエントリーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−18664号公報
【特許文献2】特開2005−207083号公報
【特許文献3】特開2006−306161号公報
【特許文献4】特開2007−39989号公報
【特許文献5】特開2010−216142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この種の電子キーシステムでは、低消費電力化を図るため、できるだけ短い期間に、図17のバースト信号を含む信号を送信することが求められる。そのため、電子キーでは、バースト信号を含む受信信号の利得調整をできるだけ速く収束させることが求められる。
【0011】
その一方、送信側は、バースト信号の後にスペースと呼ばれる無信号状態に設定した後に通信データを送る場合がある。この場合、受信信号の利得調整をできるだけ速く収束させようとすると、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまう。
【0012】
この点、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、受信中は有信号状態及び無信号状態にかかわらず受信信号の利得調整を行う。従って、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、有信号状態では利得を下げ、無信号状態では利得を上げる調整を行う。そのため、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという問題が残る。その結果、振幅成分に重畳された情報を抽出しにくくなり、復調側で復調できない場合が生ずる。
【0013】
このように、特許文献1〜特許文献5に開示された技術では、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができない場合がある。
【0014】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができる利得調整装置、及び受信装置等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の第1の態様は、入力信号の利得を調整する利得調整装置が、記入力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路と、前記比較回路の比較結果を用いて前記利得を調整する利得調整回路と、前記利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路とを含み、前記利得調整回路が、前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記利得を調整する。
【0016】
本態様においては、入力信号を増幅する増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路の比較結果を用いて利得を調整する際に、時定数設定回路により設定される時定数に応じた速度で、入力信号の利得を調整するようにしている。こうすることで、入力信号に振幅情報が重畳された場合に、有信号状態の後に無信号状態が設けられ、有信号状態において調整した利得が調整前の利得に戻り、上記の振幅情報が失われるという事態を回避することができるようになる。即ち、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置を提供することができるようになる。
【0017】
(2)本発明の第2の態様に係る利得調整装置では、第1の態様において、前記利得調整回路は、所定のノードの電位を保持する電位保持回路と、前記所定のノードを充放電する電流値を前記比較回路の比較結果を用いて制御する充放電回路とを含み、前記所定のノードの電位に応じて前記利得を調整する。
【0018】
本態様においては、利得調整回路が、電位保持回路と、電位保持回路の所定のノードを充放電する電流値を制御する充放電回路とを設け、このノードの電位に応じて利得を調整するようにしている。これにより、非常に簡素な構成で、ノードの電荷の充放電特性に対応した時定数に応じた速度で、利得を調整することができるようになる。
【0019】
(3)本発明の第3の態様に係る利得調整装置では、第2の態様において、前記充放電回路は、充電用電流源と、放電用電流源とを含み、前記利得調整回路は、前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値を調整する。
【0020】
本態様においては、充電用電流源及び放電用電流源により所定のノードを充放電するようにしている。これにより、例えばノードの電荷を放電しながら、入力信号が入力されたときにノードの電位が上昇し、例えば減衰度が非常に大きくなりすぎることにより利得調整を継続できなくなるという事態を回避することができる。
【0021】
(4)本発明の第4の態様に係る利得調整装置では、第3の態様において、前記充電用電流源の電流値は、前記放電用電流源の電流値より大きい。
【0022】
本態様によれば、上記の効果に加えて、所定のノードの電荷の充電を行って、利得調整を確実に行うことができるようになる。
【0023】
(5)本発明の第5の態様に係る利得調整装置では、第2の態様において、前記充放電回路は、1又は複数の充電用電流源と、各々が充電用電流源回路に対応して設けられる1又は複数の放電用電流源とを含み、前記利得調整回路は、前記比較回路の比較結果を用いて選択される1組の前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値を調整する。
【0024】
本態様によれば、放電用電流源及び充電用電流源の組を切り替えることで、非常に簡素な構成で、時定数と切り替えることができるようになる。
【0025】
(6)本発明の第6の態様に係る利得調整装置では、第5の態様において、各充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きい。
【0026】
本態様によれば、上記の効果に加えて、所定のノードの電荷の充電を行って、利得調整を確実に行うことができるようになる。
【0027】
(7)本発明の第7の態様に係る利得調整装置は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記入力信号を減衰させる減衰回路を含み、前記増幅回路は、固定ゲインアンプであり、前記減衰回路は、前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記入力信号を減衰させる。
【0028】
本態様によれば、固定ゲインアンプで構成される増幅回路の入力側に減衰回路を備える構成としたので、減衰回路により、時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で入力信号を減衰させることで利得を調整することができるようになる。従って、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置の構成を簡素化することができる。
【0029】
(8)本発明の第8の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記増幅回路は、可変ゲインアンプであり、前記時定数設定回路によって調整された時定数に応じた速度で、前記増幅回路の利得を変化させる。
【0030】
本態様によれば、増幅回路を可変ゲインアンプにより構成したので、時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、増幅回路の利得を変化させることで利得調整装置の利得を調整することができるようになる。従って、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置の構成を簡素化することができる。
【0031】
(9)本発明の第9の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第8の態様のいずれかにおいて、前記入力信号は、振幅変調信号であり、前記時定数設定回路は、前記増幅信号の復調結果に応じて、時定数を調整する。
【0032】
ここで、振幅変調信号は、振幅成分に、送信データを重畳させた信号である。このような振幅変調信号として、例えばASK信号がある。
本態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、振幅変調信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に設けられる復調器に利得調整後の増幅信号を送る利得調整装置を提供することができるようになる。これにより、無信号状態の前に設けられる有信号状態が短い期間であっても、復調可能な振幅情報を保持するように受信利得を調整することができるようになる。
【0033】
(10)本発明の第10の態様に係る利得調整装置では、第1の態様乃至第9の態様のいずれかにおいて、前記時定数設定回路は、前記利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数に切り替えると共に無信号状態において第2の時定数に切り替え、前記利得の調整後は、第3の時定数に切り替える。
【0034】
本態様においては、利得の調整中は、有信号状態又は受信号状態に応じて時定数を切り替え、利得の調整後も時定数を切り替えるようにしている。これにより、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができるようになる。
【0035】
(11)本発明の第11の態様に係る利得調整装置では、第10の態様において、前記第1の時定数は、前記第2の時定数より大きく、且つ、前記第3の時定数より大きい。
【0036】
本態様においては、有信号状態において第1の時定数に応じた速度で入力信号の利得を調整し、該有信号状態に続く無信号状態において第2の時定数に応じた速度で利得を調整するようにしている。第2の時定数は第1の時定数より大きいため、有信号状態で調整した利得は、無信号状態ではゆっくり元に戻るようになる。そのため、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を回避することができる。同様に、利得調整後には、第1の時定数より大きい第3の時定数に応じた速度で利得を調整するようにしたので、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を回避することができる。
【0037】
(12)本発明の第12の態様に係る利得調整装置では、第10の態様又は第11の態様において、前記時定数設定回路は、前記第2の時定数及び前記第3の時定数が無限大となるように時定数を調整する。
【0038】
本態様によれば、無信号状態において利得を固定し、且つ、利得調整後においても利得を固定するようにしたので、有信号状態で調整した利得が、無信号状態後の有信号状態の受信利得調整開始時に元に戻ってしまう事態を確実に回避することができる。
【0039】
(13)本発明の第13の態様は、受信装置が、前記振幅変調信号を受信する受信器と、前記受信器によって受信された前記振幅変調信号の受信利得を調整する上記のいずれか記載の利得調整装置と、前記利得調整装置によって調整された受信利得で増幅された信号に基づいて復調する復調器とを含む。
【0040】
本態様によれば、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができる利得調整装置が適用された受信装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成の概要を示す図。
【図2】図1の電子キーの機能ブロックの一例を示す図。
【図3】図2の受信利得調整部の構成例のブロック図。
【図4】図3の受信利得調整部の構成例の回路図。
【図5】第1の実施形態において車両から送られてくる振幅変調信号の説明図。
【図6】図5の開始パターン信号の第1の説明図。
【図7】図5の開始パターン信号の第2の説明図。
【図8】図3の受信利得調整部の動作例のフロー図。
【図9】第1の実施形態における受信利得調整部の動作例を示す図。
【図10】第1の実施形態の変形例における利得調整回路の構成例の回路図。
【図11】図16の受信回路において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合の動作例の説明図。
【図12】図16の受信回路において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図。
【図13】第1の実施形態において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図。
【図14】第2の実施形態における受信利得調整部の構成例のブロック図。
【図15】第2の実施形態における受信利得調整部の構成例の回路図。
【図16】電子キーが備える一般的な受信回路の構成例のブロック図。
【図17】図16の受信回路の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0043】
なお、以下の実施形態では、入力信号として振幅変調信号である受信信号の利得調整を行う受信利得調整装置とこれを含んで構成される受信装置等を例に説明するが、本発明は、受信利得調整装置や受信装置等に限定されることなく、入力信号の利得を調整するものに適用することができる。
【0044】
〔第1の実施形態〕
図1に、本発明に係る第1の実施形態における電子キーシステムの構成の概要を示す。図1では、電子キーシステムが、車両と電子キーとにより構成される例を説明するが、第1の実施形態における電子キーシステムの構成要素は、図1に示すものに限定されるものではない。
【0045】
電子キーシステム100は、自動車等の車両200と、携帯機器としての電子キー(広義には、電子機器)300とを備えている。車両200は、電子キー300に送信するデータ等を重畳させた第1の周波数の振幅変調信号202を周期的に送信し、電子キー300からの応答を待つ。この振幅変調信号202は、信号の振幅成分に送信データを重畳させたASK信号である。電子キー300は、車両200からの振幅変調信号202を受信すると、車両200に対して第2の周波数の信号204で応答する。その後、車両200と電子キー300との間で信号のやりとりを行い、電子キー300が認証されると、車両200のドアのロックや解除、エンジンの始動や停止等の所定の制御が許可されるようになっている。
【0046】
電子キー300は、内蔵するバッテリーで動作するようになっており、車両200からの呼びかけに対応するため、低消費電力で動作する必要がある。そのため、電子キー300が受信する振幅変調信号202の第1の周波数は、低い周波数に設定される。また、電子キー300は、車両200が搭載するエンジンやその他の電子部品等の外乱ノイズへの影響をできるだけ小さくするように、信号受信を行う際には高い周波数選択性を備える。従って、受信信号の歪みが大きくなり、復調可能な振幅情報を残したまま復調側へ送るように、電子キー300では、受信信号の利得調整を行う。
【0047】
図2に、図1の電子キー300の機能ブロックの一例の図を示す。図2において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0048】
電子キー300は、受信部(受信装置)310と、通信処理部320と、送信部330とを備えている。受信部310は、同調回路(広義には、受信器)312と、受信利得調整部(利得調整装置、受信利得調整装置。広義には、増幅部)314と、復調器316とを備えている。同調回路312は、コイル340と、コンデンサー342とが並列に接続された並列共振回路により構成される。受信利得調整部314には、同調回路312において受信された振幅変調信号、復調器316の復調結果、及び該復調結果を用いて通信処理部320において行われた処理結果が供給される。通信処理部320は、利得調整処理部322を備えている。送信部330は、変調器332と、送信器334と、送信アンテナ336とを備えている。
【0049】
車両200からの振幅変調信号202は、同調回路312においてその共振周波数で共振させることにより受信部310で受信される。受信利得調整部314は、利得の調整が可能に構成されており、同調回路312により受信された受信信号としての振幅変調信号を、調整された利得で増幅する。受信利得調整部314は、後述するように、必要に応じて復調器316の復調結果や通信処理部320の処理結果を用いて、切り替え可能な速度(調整速度)で、受信信号の利得を調整することができるようになっている。復調器316は、受信利得調整部314において増幅された増幅信号に対して、送信側で行われた変調処理に対応した所与の復調処理を行い、復調結果を受信利得調整部314及び通信処理部320に対して供給する。受信利得調整部314は、復調器316の復調結果を用いて、有信号状態であるか無信号状態であるかを判別することができる。
【0050】
通信処理部320は、受信部310によって受信信号の復調結果に対して所与の通信処理を行い、送信部330を介して車両200に対して応答を送信する処理を行う。通信処理部320の利得調整処理部322は、復調器316の復調結果を用いた所与の利得調整処理を行い、利得調整処理結果を受信利得調整部314に対して供給することができるようになっている。この利得調整処理としては、車両200からの通信データの先頭に対応した開始パターン信号の検出処理、車両200からの通信の正常終了又は異常終了の検出処理等がある。
【0051】
このような通信処理部320の機能は、ハードウェア回路により実現されたり、ソフトウェア処理により実現されたりする。通信処理部320の機能がソフトウェア処理により実現される場合、通信処理部320は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPU)及び記憶部を備えている。そして、この記憶部に記憶されたプログラムをCPUが読み出し、該CPUがプログラムに対応した処理を実行することで、ソフトウェア処理が実現される。
【0052】
変調器332は、通信処理部320に対して行われた通信処理結果を変調する。送信器334は、変調器332によって変調された変調結果に対応した送信信号を、送信アンテナ336を介して送信する。
【0053】
図3に、図2の受信利得調整部314の構成例のブロック図を示す。図3では、図2の復調器316、及び利得調整処理部322をあわせて図示している。
【0054】
受信利得調整部314は、増幅器(増幅回路)400と、利得制御回路410と、減衰回路420とを備えている。利得制御回路410は、比較回路412と、利得調整回路414と、時定数設定回路416とを備えている。なお、時定数設定回路416は、受信利得調整部314の外部に設けられていてもよい。
【0055】
増幅器400は、受信信号としての振幅変調信号を所定の利得で増幅し、増幅信号を復調器316に対して出力する固定ゲインアンプである。この増幅信号は、利得制御回路410にも供給される。利得制御回路410は、増幅器400による増幅信号、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の処理結果に基づいて、制御信号Contを生成する。減衰回路420は、利得制御回路410からの制御信号Contに対応した減衰度で、増幅器400に入力される振幅変調信号を減衰させる。
【0056】
利得制御回路410において、比較回路412には、基準電圧(広義には、基準信号)が入力されている。比較回路412は、増幅信号と基準電圧とを比較し、比較結果信号を利得調整回路414に出力する。利得調整回路414は、比較回路412からの比較結果信号に基づいて、受信利得調整部314の利得を調整する。このとき、利得調整回路414は、時定数設定回路416により設定された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314の利得を調整する。時定数設定回路416は、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の処理結果に基づいて、利得調整回路414による利得を調整する速度に対応した時定数を設定する。こうして、利得調整回路414は、時定数を切り替えながら、切り替えられた時定数に応じた速度で変化する制御信号Contを出力することができる。利得調整回路414が出力する制御信号Contは、減衰回路420に対して出力される。
【0057】
利得調整回路414において、基準時定数に対してより大きい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより遅い速度で減衰回路420の減衰度が調整される。そのため、遅い調整速度で、受信利得調整部314の利得が変化するようになる。一方、基準時定数に対してより小さい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより速い速度で減衰回路420の減衰度が調整される。そのため、速い調整速度で、受信利得調整部314の利得が変化するようになる。
【0058】
以上のように、利得調整回路414は、比較回路412の比較結果を用いて時定数を調整する。より具体的には、利得調整回路414は、時定数設定回路416によって調整された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314の受信利得を調整する。
【0059】
図4に、図3の受信利得調整部314の構成例の回路図を示す。図4において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図4では、利得調整回路414が、3種類の時定数のいずれか1つを切り替えながら、受信利得を調整するものとする。
【0060】
減衰回路420は、抵抗素子R1と可変抵抗VRとを備えている。抵抗素子R1は、受信信号が入力される端子と増幅器400の入力端子との間に挿入される。可変抵抗VRは、増幅器400の入力端子と接地端との間に挿入される。可変抵抗VRには、制御信号Contが入力され。制御信号Contに基づいて抵抗値の変更が可能に構成される。図4では、制御信号Contの電位が高くなるほど、可変抵抗VRの抵抗値が小さくなり、減衰度が大きくなるものとする。このような減衰回路420は、受信信号が入力されたとき、該受信信号を抵抗素子R1と可変抵抗VRとにより抵抗分割した電圧を出力する。この電圧が、増幅器400に入力される。
【0061】
比較回路412は、コンパレーターを有し、増幅器400の出力と基準電圧Vref1との比較結果を出力する。
【0062】
利得調整回路414は、電位保持回路450と、充放電回路452と、充放電電流制御回路454とを備えている。電位保持回路450は、所定のノードNDの電位を保持する。このような電位保持回路450は、一端に接地電圧が供給され他端にノードNDが接続されるコンデンサーCAを備えている。このノードNDの電位が、制御信号Contとして出力される。そのため、ノードNDの電位に応じて、減衰回路420の減衰度が変化し、受信利得調整部314の利得を変化させることができる。
【0063】
充放電回路452は、時定数に対応して1又は複数組の充電用電流源及び放電用電流源を備えており、ノードNDの電荷を充放電させる電流を切り替える。各組の充電用電流源及び放電用電流源において、充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きい。こうすることで、ノードNDの電荷を放電しながら、受信信号が受信されたときにノードNDの電位が上昇し、減衰回路420の減衰度が非常に大きくなりすぎることにより利得調整を継続できなくなるという事態を回避することができる。
【0064】
図4では、充放電回路452は、第1の時定数τ1、第2の時定数τ2、及び第3の時定数τ3の各々に対応して充電用電流源Ic1〜Ic3及び放電用電流源Id1〜Id3を備えている。ここで、時定数については、τ1<τ2、τ1<τ3の関係を有する。τ2=τ3であってもよい。
【0065】
具体的には、充放電回路452には、第1の時定数τ1に対応して、充電用電流源Ic1、放電用電流源Id1、スイッチ素子SWp1,SWn1が設けられる。スイッチ素子SWp1は、充電用電流源Ic1とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn1は、放電用電流源Id1とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic1の電流値は、放電用電流源Id1の電流値より大きい。
【0066】
また、充放電回路452には、第2の時定数τ2に対応して、充電用電流源Ic2、放電用電流源Id2、スイッチ素子SWp2,SWn2が設けられる。スイッチ素子SWp2は、充電用電流源Ic2とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn2は、放電用電流源Id2とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic2の電流値は、放電用電流源Id2の電流値より大きい。また、時定数は((コンデンサーCAの容量値)/電流値)に比例するため、充電用電流源Ic2の電流値は、充電用電流源Ic1の電流値より小さい。
【0067】
更に、充放電回路452には、第3の時定数τ3に対応して、充電用電流源Ic3、放電用電流源Id3、スイッチ素子SWp3,SWn3が設けられる。スイッチ素子SWp3は、充電用電流源Ic3とノードNDとの間に設けられ、スイッチ素子SWn3は、放電用電流源Id3とノードNDとの間に設けられる。充電用電流源Ic3の電流値は、放電用電流源Id3の電流値より大きい。また、充電用電流源Ic3の電流値は、充電用電流源Ic2の電流値より小さい。
【0068】
充放電電流制御回路454は、充放電回路452によりノードNDの電荷を充放電させる電流を切り替える制御を行う。具体的には、充放電電流制御回路454は、充放電回路452のスイッチ素子SWp1〜SWp3、SWn1〜SWn3のスイッチ制御を行うスイッチ制御信号を生成する。充放電電流制御回路454は、時定数設定回路416の出力に基づいて切り替え対象の時定数を決定し、決定した時定数に対応した組の充電用電流源及び放電用電流源とノードNDとを接続するスイッチ素子をオンする制御を行う。この結果、ノードNDの電荷の充放電特性に対応した時定数に従ってノードNDの電位が変化し、制御信号Contを変化させることができる。
【0069】
以上のように、充放電回路452は、充放電電流制御回路454の制御により、所定のノードNDを充放電する電流値を比較回路412の比較結果を用いて制御することができる。このような充放電回路452を有する利得調整回路414は、比較回路412の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、充電用電流源及び放電用電流源により所定のノードNDを充放電する電流値により調整することができる。複数組の充電用電流源及び放電用電流源を備えるとき、この利得調整回路414は、切り替え対象の時定数に応じて選択される1組の充電用電流源及び放電用電流源により、比較回路412の比較結果に基づく利得制御の調整速度を調整する。
【0070】
図5に、第1の実施形態において車両200から送られてくる振幅変調信号202の説明図を示す。図5は、説明の便宜上、振幅変調信号202の包絡線を矩形波で表す。
図6に、図5の開始パターン信号の第1の説明図を示す。
図7に、図5の開始パターン信号の第2の説明図を示す。
【0071】
車両200から電子キー300への通信データの送信に先立って、受信信号としてバースト信号B2が受信される。この受信信号は、バースト信号B2の後、無信号状態であるスペースSP1が設けられた後に、予め決められた開始パターン信号TPを含んで構成される。
【0072】
開始パターン信号TPは、図6に示すように有信号状態及び無信号状態の組み合わせに対応したパターンとすることができる。或いは、開始パターン信号TPは、図7に示すように有信号状態及び無信号状態の少なくとも一方の長さにより規定されるパターンとしてもよい。なお、図7では、開始パターン信号TPは、有信号状態の長さt1により規定される例を表している。このような開始パターン信号TPは、利得調整後の増幅信号を復調した復調器316の復調結果に対して、通信処理として開始パターン信号の検出処理を行った利得調整処理部322によって検出される。
【0073】
図5に示す受信信号は、開始パターン信号TPの後、無信号状態であるスペースSP2が設けられた後に、車両200から電子キー300へ送る通信データC2を含んで構成される。通信データC2は、エッジ間の長さに対応したデータ“0”又はデータ“1”により構成される。
【0074】
このような受信信号を受信した受信利得調整部314は、バースト信号や開始パターン信号に応じて時定数を切り替える。具体的には、時定数を切り替えることで、受信利得調整部314は、バースト信号B2により受信利得を調整すると、その後のスペースSP1において、調整後の利得をできるだけ維持するようにする。そして、受信利得調整部314は、開始パターン信号TPの検出を条件に、受信利得を固定、又はできるだけ維持する用に調整する。こうすることで、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという事態を回避する。
【0075】
図8に、図3の受信利得調整部314の動作例のフロー図を示す。
【0076】
まず、受信利得調整部314では、利得調整回路414において、時定数設定回路416により初期値として第1の時定数τ1が設定される(ステップS10)。即ち、受信利得調整部314は、動作開始直後は第1の時定数τ1に応じた速度で、受信信号の利得が調整される。
【0077】
次に、受信利得調整部314は、受信信号の有無を監視する(ステップS12:N)。受信利得調整部314は、復調器316の復調結果を用いて有信号状態であるか無信号状態であるかを判断することで、受信信号の有無を監視することができる。受信信号が検出されたとき、バースト信号(第1の有信号状態)であると判断する。
【0078】
ステップS12において受信信号が検出されたとき(ステップS12:Y)、受信利得調整部314は、そのまま第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS14)。即ち、ステップS14では、第1の受信利得調整ステップとして、第1の時定数τ1に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。
【0079】
続いて、受信利得調整部314は、無信号状態であるか否かを検出する(ステップS16)。即ち、ステップS16では、受信利得調整部314は、バースト信号の後のスペースであるか否かを検出する。スペースが設けられたことが検出されると(ステップS16:Y)、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第1の時定数τ1より大きい第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS18)。即ち、ステップS18では、第2の受信利得調整ステップとして、第2の時定数τ2に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。これにより、ステップS18では、ステップS14と比較して緩やかに受信信号の利得が調整されるようになる。
【0080】
ステップS18において、第2の時定数τ2は、無限大であることが望ましい。第2の時定数τ2が無限大のとき、受信利得調整部314の受信利得が固定される。
【0081】
一方、ステップS16において、スペースが設けられていないことが検出される(ステップS16:N)と、受信利得調整部314は、通信処理部320(利得調整処理部322)からの処理結果に基づき、通信の異常終了であるかを判定する(ステップS20)。異常終了ではないと判定されたとき(ステップS20:N)、受信利得調整部314は、ステップS14に戻る。ステップS20において異常終了であると判定されたとき(ステップS20:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0082】
ステップS18に続いて、受信利得調整部314は、有信号状態であるか否かを検出する(ステップS22)。即ち、ステップS22では、バースト信号後のスペースを設けた後の開始パターン信号の入力の有無を検出する。有信号状態であることが検出されたとき(ステップS22:Y)、受信利得調整部314は、ステップS22で検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致するか否かを検出する(ステップS24、開始パターン信号検出ステップ)。
【0083】
一方、有信号状態ではないことが検出されたとき(ステップS22:N)、受信利得調整部314は、例えば通信処理部320(又は利得調整処理部322)からの処理結果に基づき、通信の異常終了であるかを判定する(ステップS26)。異常終了ではないと判定されたとき(ステップS26:N)、受信利得調整部314は、ステップS18に戻る。ステップS26において異常終了であると判定されたとき(ステップS26:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0084】
なお、ステップS26において、第2の時定数τ2に応じた速度で利得調整が行われている期間を監視し、該期間が所定の期間以上のとき、異常終了として判定するようにしてもよい。このとき、ステップS10に戻り、受信利得調整部314の状態が初期化され、再び、バースト信号を待つようにすることで、異常時の復帰動作を実現することができるようになる。
【0085】
検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致することが検出されたとき(ステップS24:Y)、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う(ステップS28)。これにより、開始パターン信号の後の所定時間経過後に信号データが送られてくるタイミングを認識することがわかる。ステップS28では、第4の受信利得調整ステップとして、第3の時定数τ3に応じた速度で、減衰回路420の減衰度を変化させることで増幅器400に入力される受信信号を減衰させて、受信利得調整部314の利得を変化させる。
【0086】
ステップS28において、第3の時定数τ3は、第1の時定数τ1より大きい。これにより、ステップS28では、ステップS14と比較して緩やかに受信信号の利得が調整されるようになる。より具体的には、第3の時定数τ3は、第2の時定数τ2と等しいことが望ましい。また、第3の時定数τ3は、無限大であることが望ましい。第3の時定数τ3が無限大のとき、受信利得調整部314の受信利得が固定される。
【0087】
ステップS24において、ステップS22で検出された有信号状態の信号が開始パターン信号と一致しないことが検出されたとき(ステップS24:N)、受信利得調整部314は、ステップS14に戻る。即ち、ステップS14では、第3の受信利得調整ステップとして、受信利得調整部314は、利得調整回路414において時定数設定回路416により時定数を切り替え、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0088】
ステップS28に続き、受信利得調整部314は、通信処理部320からの処理結果に基づいて、正常終了又は異常終了であるか否かを検出する(ステップS30)。ステップS30において、正常終了又は異常終了ではないと検出されたとき(ステップS30:N)、受信利得調整部314は、引き続き、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0089】
ステップS30において、正常終了又は異常終了であると検出されたとき(ステップS30:Y)、受信利得調整部314は、ステップS10に戻り(リターン)、再び、車両200からの通信の先頭で送られるバースト信号を待つ。
【0090】
以上のように、受信利得調整部314は、時定数設定回路416において、受信利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数τ1に切り替えると共に、無信号状態において第2の時定数τ2に切り替え、受信利得の調整後は、第3の時定数τ3に切り替える。この結果、有信号状態の後に無信号状態が設けられる場合でも、入力信号に重畳された振幅情報を残したまま、最適な利得調整を行って、後段側に利得調整後の増幅信号を送ることができるようになる。
【0091】
図9に、第1の実施形態における受信利得調整部314の動作例を示す。図9は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、受信波形、制御信号Cont、復調器316の出力である復調信号を表す。ここでは、説明の便宜上、制御信号Contの電位が高くなるほど、受信利得調整部314の利得が小さくなるものとする。
【0092】
車両200との間での通信に先立って、受信利得調整部314は、時定数として、初期値である第1の時定数τ1を設定する(T1)。その後、受信信号として第1の有信号状態であるバースト信号B3が検出されると、受信利得調整部314は、引き続き、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0093】
バースト信号B3に続き、無信号状態であるスペースSP3が検出されると、受信利得調整部314は、第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。第2の時定数τ2は第1の時定数τ1より大きいため、バースト信号B3で調整した受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻る事態を回避することができる。これにより、スペースSP3の後の開始パターン信号TP1の受信開始時に、ほぼバースト信号B3で調整した利得で開始パターン信号TP1の受信利得の調整を行うことができるようになる。
【0094】
開始パターン信号TP1が検出されると、受信利得調整部314は、第1の時定数τ1に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。このように、スペースSP3後の開始パターン信号TP2を検出したときに、受信利得調整部314は、再び、第1の時定数τ1に切り替えるようにしたので、開始パターン信号TP1の受信時に素早く最適な利得に調整することができるようになる。
【0095】
予め決められている開始パターン信号TP1が検出されると、通信データC3の受信開始タイミングを特定することができる。そこで、受信利得調整部314は、開始パターン信号TP1後に、無信号状態であるスペースSP4が検出されると、一度、第2の時定数τ2に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。このとき、第2の時定数τ2は第1の時定数τ1より大きいため、開始パターン信号TP1で調整した受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻る事態を回避することができる。そして、スペースSP4後の第3の有信号状態である通信データC3が検出されると、受信利得調整部314は、第3の時定数τ3に応じた速度で受信信号の利得調整を行う。
【0096】
第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とすることで、スペースSP3,SP4の受信時には、それぞれ直前の有信号状態で調整した利得を維持することができる。これにより、車両200からの送信状況にかかわらず受信利得調整部314の利得が調整前の利得に戻ることがなくなる。従って、できるだけ短い期間で車両200から電子キー300に通信するためにバースト信号等が短くなったとしても、復調可能な振幅情報を保持しながら振幅変調信号の受信利得を調整することができる。
【0097】
このような受信信号を受信した受信利得調整部314は、バースト信号や開始パターン信号に応じて時定数を切り替える。このとき、短いバースト信号であっても、精度よく受信利得を調整できるように、バースト信号の受信期間においても時定数を切り替える。具体的には、受信利得調整部314は、バースト信号B2の受信開始時には、目標値の付近まで高速に受信利得を変化させた後、低速で、且つ高精度に受信利得を変化させるように時定数を切り替える。受信利得調整部314は、バースト信号B2により受信利得を調整すると、その後のスペースSP1において、調整後の利得をできるだけ維持するようにする。そして、受信利得調整部314は、開始パターン信号TPの検出を条件に、受信利得を固定、又はできるだけ維持しながら調整する。
【0098】
こうすることで、短いバースト信号であっても、高速で、且つ、精度よく受信利得を調整することができる。更に、バースト信号に基づいて受信信号の利得調整を行っても、無信号状態を検知した後に直ぐに調整前の利得に戻してしまうという事態を回避することができる。
【0099】
ところで、上記のように、第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とすることが望ましい。この場合、図4の利得調整回路414は、次のような構成を採用することができる。
【0100】
図10に、第1の実施形態の変形例における利得調整回路の構成例の回路図を示す。図10において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0101】
第1の実施形態の変形例における利得調整回路414aは、図4の受信利得調整部314において利得調整回路414に代えて設けることができる。利得調整回路414aは、電位保持回路450と、充放電回路452aと、充放電電流制御回路454aとを備えている。利得調整回路414aが図4の利得調整回路414と異なる点は、充放電回路452aの充電用電流源Ic2,Ic3及び放電用電流源Id2,Id3が省略され、充放電電流制御回路454aがスイッチ素子SWp1,SWn1のオンオフ制御を行うようにした点である。即ち、第2の時定数τ2又は第3の時定数τ3に切り替えるとき、利得調整回路414aは、スイッチ素子SWp1,SWn1をオフする制御を行ってノードNDの電荷の充放電を停止させることで、制御信号Contの電位を固定(ロック)させる。
【0102】
このように利得調整回路414,414aでは、ノードNDの電荷を充放電するための電流値を切り替えることで、制御信号Contによる減衰度を変化させるようにしたので、非常に簡素な構成で、受信利得を調整することができるようになる。
【0103】
次に、第1の実施形態又はその変形例における受信利得調整部による効果を具体的に説明する。そのため、まず、従来の図16の受信回路10において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合について説明する。
【0104】
図11に、図16の受信回路10において、バースト信号後にスペースを設けて、開始パターン信号が受信される場合の動作例の説明図を示す。図11は、包絡線を矩形波で示す受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0105】
図16の受信回路10では、バースト信号B4を受信したときに調整された利得が、スペースSP5の期間で元に戻り、開始パターン信号TP2を受信したときに、利得が再び調整される(図11のP0)。そのため、開始パターン信号TP2を受信するときには、受信回路10では、増幅器12の利得が最大に設定された状態から、再び開始パターン信号TP2に対して受信利得の調整が行われることになる。従って、開始パターン信号TP2を設けたとしても、図16の受信回路10では、受信が不安定となる。特に、バースト信号B4とスペースSP5とが同じ長さになると、調整した利得が元に戻ってしまい、開始パターン信号TP2で、再び受信利得の調整が始まり、開始パターン信号TP2の復調が困難になる。これは、同時に、通信データC4の復調についても困難になることを意味する。
【0106】
これに対して、第1の実施形態又はその変形例では、図9に示すように、バースト信号後に、このバースト信号と同じ長さのスペースが設けられたとしても、受信利得調整部314では、より遅く利得を調整する。そのため、該スペース後の開始パターン信号を受信したときに、利得を再び調整することがなくなり、開始パターン信号の復調が可能となる。
【0107】
また、第1の実施形態又はその変形例によれば、次のようなノイズに対する耐性も改善される。
【0108】
図12に、図16の受信回路10において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図を示す。図12は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0109】
図16の受信回路10は、バースト信号が受信されると、次に通信データの受信を開始する。このため、図12に示すようなノイズN1があると、例えばタイミングP1で通信データの受信を開始してしまう。そうすると、ノイズN1より正規の信号の方が、振幅が大きい場合であっても、正規の信号を受信することができなくなる。これは、受信回路10の増幅器12が、ノイズN1に追従して利得を上げた状態で固定してしまうからである。そのため、ノイズN1後の正規の信号についても、増幅器12は出力を飽和させてしまう。
【0110】
図13に、第1の実施形態又はその変形例において、受信信号にノイズが含まれる場合の動作例の説明図を示す。図13は、包絡線を矩形波で表した受信信号(振幅変調信号)、制御信号Cont、増幅信号を表す。
【0111】
第1の実施形態又はその変形例では、開始パターン信号を設けているため、ノイズN2が受信信号に含まれていたとしても、図16の受信回路10のように増幅器の利得を固定させてしまうことなく、開始パターン信号の受信後(図13のP2)に、利得をできるだけ維持又は固定させることができるようになる。従って、ノイズN2後の正規の信号についても、増幅器は出力を飽和させることなく、正しく復調することができるようになり、ノイズに対する耐性を強化することができる。
【0112】
以上説明したように、第1の実施形態又はその変形例においては、第1の有信号状態であるバースト信号後に、開始パターン信号を設け、より大きな時定数に切り替えて振幅変調信号の受信利得を調整するようにしている。これにより、第1の有信号状態と開始パターン信号との間の無信号状態の期間で、受信利得が調整前の利得に戻ることなく、開始パターン信号後の通信データについて、例えば受信利得を固定させることで、安定した受信を実現することができるようになる。
【0113】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態又はその変形例では、受信利得調整部314において、増幅器400の入力の減衰度を制御することで、受信利得調整部314の利得を調整していたが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0114】
図14に、本発明に係る第2の実施形態における受信利得調整部の構成例のブロック図を示す。図14において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図14では、図2の復調器316及び利得調整処理部322をあわせて図示している。
【0115】
第2の実施形態における受信利得調整部(利得調整装置、受信利得調整装置。広義には、増幅部)314bは、図2の受信利得調整部314に代えて、図2の受信部310に適用することができる。
【0116】
このような受信利得調整部314bは、増幅器(増幅回路)400bと、利得制御回路410bとを備えている。利得制御回路410bは、比較回路412と、利得調整回路414bと、時定数設定回路416とを備えている。
【0117】
増幅器400bは、入力信号である受信信号としての振幅変調信号を、変更可能な利得で増幅し、増幅信号を復調器316に対して出力する可変ゲインアンプである。この増幅信号は、利得制御回路410bにも供給される。利得制御回路410bは、増幅器400bによる増幅信号、復調器316の復調結果、及び利得調整処理部322の利得調整処理結果に基づいて、制御信号Contを生成する。
【0118】
利得制御回路410bにおいて、比較回路412には、基準電圧が入力されている。比較回路412は、増幅信号と基準電圧とを比較し、比較結果信号を利得調整回路414bに出力する。利得調整回路414bは、比較回路412からの比較結果信号に基づいて、受信利得調整部314bの利得を調整する。このとき、利得調整回路414bは、時定数設定回路416により設定された時定数に応じた速度で、受信利得調整部314bの利得を調整する。即ち、利得調整回路414bは、時定数を切り替えながら、切り替えられた時定数に応じた速度で、比較回路412の比較結果に対応した制御信号Contとして出力する。利得調整回路414bが出力する制御信号Contは、増幅器400bに対して出力される。
【0119】
利得調整回路414bにおいて、基準時定数に対してより大きい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより遅い速度で増幅器400bの利得が調整される。そのため、遅い調整速度で、受信利得調整部314bの利得が変化するようになる。一方、基準時定数に対してより小さい時定数に切り替えられたときは、基準時定数に応じた速度に対してより速い速度で増幅器400bの利得が調整される。そのため、速い調整速度で、受信利得調整部314bの利得が変化するようになる。
【0120】
図15に、第2の実施形態における受信利得調整部314bの構成例の回路図を示す。図15において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0121】
第2の実施形態における受信利得調整部314bの構成が図4に示す受信利得調整部314の構成と異なる点は、電位保持回路450の出力が増幅器400bの利得制御に用いられる点である。第2の実施形態では、電位保持回路450の出力である制御信号Contの電位が高くなるほど、増幅器400bの利得が小さくなるものとする。
【0122】
なお、第2の時定数τ2及び第3の時定数τ3を無限大とした場合、利得調整回路の構成として、図10に示す構成を採用することができる。即ち、図15に示す構成に対して、充電用電流源Ic2,Ic3及び放電用電流源Id2,Id3が省略され、充放電電流制御回路がスイッチ素子SWp1,SWn1のオンオフ制御を行う。従って、第2の時定数τ2又は第3の時定数τ3に切り替えるとき、利得調整回路は、スイッチ素子SWp1,SWn1をオフする制御を行ってノードNDの電荷の充放電を停止させることで、制御信号Contの電位を固定(ロック)させる。
【0123】
このような受信利得調整部314bの動作は、図8に示す受信利得調整部314の動作と同様であるため、説明は省略する。
【0124】
以上説明したように、第2の実施形態では、第1の実施形態又はその変形例と同様に、第1の有信号状態と開始パターン信号との間の無信号状態の期間で、受信利得が調整前の利得に戻ることがない。そのため、開始パターン信号後の通信データについて、例えば受信利得を固定させることで、安定した受信を実現することができるようになる。
【0125】
以上、本発明に係る利得調整装置、及び受信装置等を上記のいずれかの実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明は上記のいずれかの実施形態又はその変形例に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0126】
(1)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
(2)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵され、該受信部が送信部と混載される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示す受信部の機能を有する受信装置に、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整部が内蔵されていてもよい。
【0128】
(3)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図2に示す受信部に内蔵され、該受信部が携帯機器としての電子キーに内蔵される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整部が、電子キー以外の別の携帯機器(電子機器)に内蔵されていてもよい。
【0129】
(4)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、受信利得調整部が、図1に示す電子キーシステムに適用される例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の通信システムに適用することができる。
【0130】
(5)上記のいずれかの実施形態又はその変形例では、振幅変調信号としてASK信号を例に説明したが、本発明はASK信号に限定されるものではなく、振幅情報を信号に重畳させるものに適用することができる。
【0131】
(6)上記のいずれかの実施形態又はその変形例において、カウンターを設けて、通信データのパターンのビット数をカウントするようにしてもよい。このカウンターにより所定のカウント数を超えた異常パターンが検出されたときには、受信利得調整部の調整を初期化して、再び、第1の時定数τ1に切り替えてバースト信号の受信を待つようにしてもよい。このようなカウンターは、通信処理部320(利得調整処理部322)や受信部310に設けることができる。こうすることで、通信データの異常時に、受信利得調整部を初期化して、再び、バースト信号の受信を待つことができるようになる。
【0132】
(7)第1の実施形態又はその変形例において、減衰回路は、直列に抵抗素子R1を挿入した構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、減衰回路において抵抗素子R1に代えてコンデンサーを挿入することによりハイパスフィルター回路を構成し、ハイパスフィルター回路のカットオフ周波数をずらすことで、受信信号を減衰させるようにしてもよい。
【0133】
(8)上記のいずれかの実施形態又はその変形例において、本発明を、利得調整装置、及び受信装置等として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信利得調整方法を実現するプログラム、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。また、例えば、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信装置の受信方法、上記のいずれかの実施形態又はその変形例における受信装置を含む携帯機器(電子機器)等であってもよい。
【符号の説明】
【0134】
10…受信回路、 12…増幅器、 14,414,414a,414b…利得調整回路、 16,420…減衰回路、 100…電子キーシステム、 200…車両、
202…振幅変調信号、 204…信号、 300…電子キー、
310…受信部(受信装置)、 312…同調回路(受信器)、
314,314b…受信利得調整部(受信利得調整装置)、 316…復調器、
320…通信処理部、 322…利得調整処理部、 330…送信部、
332…変調器、 334…送信器、 336…送信アンテナ、 340…コイル、
342…コンデンサー、 400,400b…増幅器(増幅回路)、
410,410b…利得制御回路、 412…比較回路、 416…時定数設定回路、
450…電位保持回路、 452,452a…充放電回路、
454,454a…充放電電流制御回路、
B1,B2,B3,B4…バースト信号(第1の有信号状態)、
C1,C2,C3,C4…通信データ、 CA…コンデンサー、 Cont…制御信号、
Ic1〜Ic3…充電用電流源、 Id1〜Id3…放電用電流源、 ND…ノード、
R1…抵抗素子、 SP1,SP2,SP3,SP4,SP5…スペース(無信号状態)、 SWn1〜SWn3,SWp1〜SWp3…スイッチ素子、
TP,TP1,TP2…開始パターン信号、 VR…可変抵抗、 τ1…第1の時定数、
τ2…第2の時定数、 τ3…第3の時定数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の利得を調整する利得調整装置であって、
前記入力信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路と、
前記比較回路の比較結果を用いて前記利得を調整する利得調整回路と、
前記利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路とを含み、
前記利得調整回路が、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記利得を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記利得調整回路は、
所定のノードの電位を保持する電位保持回路と、
前記所定のノードを充放電する電流値を前記比較回路の比較結果を用いて制御する充放電回路とを含み、
前記所定のノードの電位に応じて前記利得を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記充放電回路は、
充電用電流源と、
放電用電流源とを含み、
前記利得調整回路は、
前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値により調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記充電用電流源の電流値は、前記放電用電流源の電流値より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記充放電回路は、
1又は複数の充電用電流源と、
各々が充電用電流源回路に対応して設けられる1又は複数の放電用電流源とを含み、
前記利得調整回路は、
切り替え対象の時定数に応じて選択される1組の充電用電流源及び放電用電流源により、前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項6】
請求項5において、
各充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記入力信号を減衰させる減衰回路を含み、
前記増幅回路は、固定ゲインアンプであり、
前記減衰回路は、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記入力信号を減衰させることを特徴とする利得調整装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記増幅回路は、可変ゲインアンプであり、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記増幅回路の利得を変化させることを特徴とする利得調整装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記入力信号は、振幅変調信号であり、
前記時定数設定回路は、
前記増幅信号の復調結果に応じて、時定数を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記時定数設定回路は、
前記利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数に切り替えると共に無信号状態において第2の時定数に切り替え、前記利得の調整後は、第3の時定数に切り替えることを特徴とする利得調整装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1の時定数は、前記第2の時定数より大きく、且つ、前記第3の時定数より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記時定数設定回路は、
前記第2の時定数及び前記第3の時定数が無限大となるように時定数を設定することを特徴とする利得調整装置。
【請求項13】
前記振幅変調信号を受信する受信器と、
前記受信器によって受信された前記振幅変調信号の受信利得を調整する請求項1乃至12のいずれか記載の利得調整装置と、
前記利得調整装置によって調整された受信利得で増幅された信号に基づいて復調する復調器とを含むことを特徴とする受信装置。
【請求項1】
入力信号の利得を調整する利得調整装置であって、
前記入力信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路による増幅信号と基準信号とを比較する比較回路と、
前記比較回路の比較結果を用いて前記利得を調整する利得調整回路と、
前記利得を調整する速度に対応した時定数を設定する時定数設定回路とを含み、
前記利得調整回路が、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記利得を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記利得調整回路は、
所定のノードの電位を保持する電位保持回路と、
前記所定のノードを充放電する電流値を前記比較回路の比較結果を用いて制御する充放電回路とを含み、
前記所定のノードの電位に応じて前記利得を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記充放電回路は、
充電用電流源と、
放電用電流源とを含み、
前記利得調整回路は、
前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を、前記充電用電流源及び前記放電用電流源により前記所定のノードを充放電する電流値により調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記充電用電流源の電流値は、前記放電用電流源の電流値より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記充放電回路は、
1又は複数の充電用電流源と、
各々が充電用電流源回路に対応して設けられる1又は複数の放電用電流源とを含み、
前記利得調整回路は、
切り替え対象の時定数に応じて選択される1組の充電用電流源及び放電用電流源により、前記比較回路の比較結果に基づく利得制御の調整速度を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項6】
請求項5において、
各充電用電流源の電流値は、対応する放電用電流源の電流値より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記入力信号を減衰させる減衰回路を含み、
前記増幅回路は、固定ゲインアンプであり、
前記減衰回路は、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記入力信号を減衰させることを特徴とする利得調整装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記増幅回路は、可変ゲインアンプであり、
前記時定数設定回路によって設定された時定数に応じた速度で、前記増幅回路の利得を変化させることを特徴とする利得調整装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記入力信号は、振幅変調信号であり、
前記時定数設定回路は、
前記増幅信号の復調結果に応じて、時定数を調整することを特徴とする利得調整装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記時定数設定回路は、
前記利得の調整中は、有信号状態において第1の時定数に切り替えると共に無信号状態において第2の時定数に切り替え、前記利得の調整後は、第3の時定数に切り替えることを特徴とする利得調整装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1の時定数は、前記第2の時定数より大きく、且つ、前記第3の時定数より大きいことを特徴とする利得調整装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記時定数設定回路は、
前記第2の時定数及び前記第3の時定数が無限大となるように時定数を設定することを特徴とする利得調整装置。
【請求項13】
前記振幅変調信号を受信する受信器と、
前記受信器によって受信された前記振幅変調信号の受信利得を調整する請求項1乃至12のいずれか記載の利得調整装置と、
前記利得調整装置によって調整された受信利得で増幅された信号に基づいて復調する復調器とを含むことを特徴とする受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−182703(P2012−182703A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44781(P2011−44781)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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