説明

制震装置、制震ブレース、付帯設備支持構造、及び制震装置を備える建物

【課題】弾性体と、この弾性体と直列結合された振動低減手段とを備え、小振幅振動から大振幅振動までの広帯域に渡る振動を低減し、且つ、振動低減手段が作動するまでの弾性体の振幅範囲を調整可能な制震装置、付帯設備支持構造、及び制震装置を有する建物を提供することを目的とする。
【解決手段】連結手段としての長ボルト70には、ネジ部70Aが設けられている。このネジ部70Aにはナット75が取り付けられ、このナット75の締め付け量によって、筒体50の周壁50Bが第1連結部材36に当接するまでの距離、即ち、第1弾性体52の突出長cが調整される共に、筒体58の周壁58Bが第2連結部材38に当接するまでの距離、即ち、第2弾性体60の突出長cが調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物の振動を低減する制震装置、制震ブレース、付帯設備支持構造、及び制震装置を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高層建物等の施工では、建材の揚重にタワークレーンが使用されている。例えば、図21に示すように、建物202に併設されたタワークレーン200は、建物202とクレーン本体204を支持するマスト206とを支持部材208で連結することで支持さている。
【0003】
ここで、地震等によって建物202が揺れると、建物202に生じる加速度によってマスト206に慣性力Fが作用し、また、地震等によってタワークレーン200自体に生じる加速度によって建物202に慣性力Pが作用する。この場合、支持部材208による支持間隔が大きいと、慣性力F及び慣性力Pによってマスト206の変形が過大となり、マスト206が破損、損傷する恐れがある。
【0004】
この問題を解決する手段として、支持部材208にオイルダンパー、摩擦ダンパー等を設置し、建物202の振動、即ちマスト206に作用する慣性力F及び慣性力Pを吸収することが考えられる。この際、オイルダンパー等によって建物202とマスト206とを一体的に結合し、地震の発生と同時にオイルダンパー等を作動させるように構成すると、ブームの旋回時やクレーン本体204の昇降時に発生する機械振動(小振幅振動)が支持部材208を介して建物202に伝達され、建物202における作業者に不快感を与える恐れがある。
【0005】
一方、特許文献1には、架構の構面に設置される複合型ダンパーが開示されている。この複合型ダンパーは、粘弾性体からなる小振幅用ダンパーと鋼材系の大振幅用ダンパーとをストッパ手段を介して直列結合して構成され、風等による小振幅振動に対しては、小振幅用ダンパー(粘弾性体)の減衰性能によって振動を低減し、大地震等の大振幅振動に対しては、ストッパ手段により小振幅用ダンパーから大振幅振動ダンパーに切り換えが行われ、大振幅用ダンパーの履歴減衰によって振動が低減される。従って、小振幅振動から大振幅振動までの広帯域に渡る振動を低減することができる。このような複合型ダンパーでは、大振幅振動ダンパーが作動するまでのギャップを小さくして、大地震等の発生時に早期に大振幅用ダンパーを作動させることが好ましい。しかしながら、特許文献1のストッパ手段は、使用する部位・場所によっては、構造が複雑であるため大振幅振動ダンパーが作動するまでのギャップの調整に手間がかかり、またストッパ手段の加工、組立等にコストが必要となる可能性がある。
【0006】
特許文献2には、建設機械等の下に配置され、機械振動(小振幅振動)を低減する防振ゴムが開示されている。この防振ゴムは、その変形量が所定値に達するとストッパ手段によって変形が制限されるため、防振ゴムに過大な圧縮力又は引張力が作用しても、防振ゴムが破損、損傷しない。
【0007】
しかしながら、この防振ゴムは、機械振動等の小振幅振動のみを低減するものであって、大振幅振動を低減することができない。また、防振ゴムの上には、建設機械等が載置されるため、ストッパ手段が作動するまでのギャップを調整するには、建設機械等の荷重による防振ゴムの縮み量を考慮しなければならず、調整が複雑化する。
【特許文献1】特開平10−280727号公報
【特許文献2】特開2006−207709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の事実を考慮し、小振幅振動から大振幅振動までの広帯域に渡る振動を低減し、且つ、振動低減手段が作動するまでの弾性体の振幅範囲を調整可能とする制震装置、制震ブレース、付帯設備支持構造、及び制震装置を有する建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の制震装置は、第1連結部材と第2連結部材とを相対変位可能に連結する連結手段と、前記第1連結部材と前記第2連結部材とに挟み込まれた第1弾性体と、前記第1連結部材と前記第2連結部材との間に設けられ、前記第1連結部材及び前記第2連結部材の少なくとも一方に当接して前記第1連結部材と前記第2連結部材との相対変位を制限する第1ストッパ手段と、前記連結手段に設けられ、前記第1連結部材と第2連結部材との距離を調整する調整機構と、前記第2連結部材に結合され、前記第1ストッパ手段が前記相対変位を制限した後に作動する振動低減手段と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、振動により第1連結部材と第2連結部材とが接近する方向に相対変位すると、第1連結部材と第2連結部材とで挟み込まれた第1弾性体が圧縮され、振動が低減される。また、第1弾性体が所定値以上変形して、第1連結部材と第2連結部材とが近づくと、第1連結部材と第2連結部材との間に設けられた第1ストッパ手段が、第1連結部材及び第2連結部材の少なくとも一方に当接して当該相対変位を制限し、第2連結部材に結合された振動低減手段が作動して振動が低減される。
【0011】
このように、請求項1に記載の制震装置は、風や機械振動等の小振幅振動を第1弾性体で低減することができ、第1ストッパ手段が機能する地震等の大振幅振動を振動低減手段で低減することができる。
【0012】
また、連結手段には、第1連結部材と第2連結部材との距離を調整する調整機構が設けられている。この調整機構により、第1ストッパ手段が第1連結部材及び第2連結部材の少なくとも一方に当接するまでの距離、即ち、振動低減手段が作動するまでの第1弾性体の振幅範囲を調整することができる。従って、第1ストッパ手段等の加工誤差や組立誤差を吸収することが可能となり、第1ストッパ手段等の製作性が向上する。更に、制震装置の施工性が向上し、工期の短縮化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の制震装置は、請求項1に記載の制震装置において、前記第2連結部材と、前記第2連結部材の前記第1連結部材と反対側に設けられ前記第2連結部材に対して相対変位可能とされた第3連結部材と、に挟み込まれた第2弾性体と、前記第2連結部材と前記第3連結部材との間に設けられ、前記第2連結部材及び前記第3連結部材の少なくとも一方に当接して前記第2連結部材と前記第3連結部材との相対変位を制限する第2ストッパ手段と、を備え、前記連結手段が、前記第2連結部材を貫通して前記第1連結部材と前記第3連結部材とを連結し、前記調整機構が、更に前記第2連結部材と前記第3連結部材との距離を調整する。
【0014】
上記の構成によれば、振動により第1連結部材と第2連結部材とが離間する方向に相対変位すると、連結手段によって第1連結部材に連結された第3連結部材が第2連結部材に対して接近する方向に相対変位して第2弾性体が圧縮され、振動が低減される。また、第2弾性体が所定値以上変形して、第2連結部材と第3連結部材とが近づくと、第2連結部材と第3連結部材との間に設けられた第2ストッパ手段が、第2連結部材及び第3連結部材の少なくとも一方に当接して当該相対変位を制限し、第2連結部材に結合された振動低減手段が作動して振動が低減される。
【0015】
このように、請求項2に記載に制震装置は、第1連結部材と第2連結部材とを接近させる方向に相対変位を生じさせる風や機械振動等の小振幅振動を、第1弾性体によって低減することができ、且つ、第1連結部材と第2連結部材とを離間させる方向に相対変位を生じさせる風や機械振動等の小振幅振動を、第2弾性体によって低減することができる。従って、風や機械振動等の小振幅振動の低減効果が向上する。
【0016】
更に、連結手段に設けられた調整機構によって、第2連結部材と第3連結部材との間の距離が調整可能とされている。従って、振動低減手段が作動するまでの第1弾性体の振幅範囲及び第2弾性体の振幅範囲を同時に調整することができるため施工性が向上する。
【0017】
請求項3に記載の制震装置は、請求項2に記載の制震装置において、前記調整機構が、前記連結手段に設けられたネジ部に取り付けられたナットの締め付け量によって前記第1連結部材と前記第2連結部材との間の距離、及び前記第2連結部材と前記第3連結部材との間の距離を変える。
【0018】
上記の構成によれば、連結手段のネジ部に取り付けられたナットの締め付け量によって、第1連結部材と第2連結部材との間の距離及び第2連結部材と第3連結部材との間の距離を同時に変更することができる。即ち、第1連結部材と第2連結部材との間の距離を変えることで、第1弾性体の振幅範囲及び第2弾性体の振幅範囲が変更される。
【0019】
このように簡易な構成で、第1弾性体の振幅範囲及び第2弾性体の振幅範囲を同時に調整することができるため制震装置の施工性が向上し、また制震装置の製造コストを削減できる。
【0020】
請求項4に記載の制震装置は、請求項2又は請求項3に記載の制震装置において、前記第1ストッパ手段が、前記第1弾性体が収納され該第1弾性体の端部を突出させる筒体であり、前記第2ストッパ手段が、前記第2弾性体が収納され該第2弾性体の端部を突出させる筒体である。
【0021】
上記の構成によれば、第1弾性体を第1ストッパ手段に収納し、第2弾性体を第2ストッパ手段に収納することで、第1弾性体及び第2弾性体の劣化が防止され、耐久性が向上する。
【0022】
請求項5に記載の制震ブレースは、請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を、架構に設けられたブレースに設置して構成されている。
【0023】
上記の構成によれば、架構に設けられたブレースに制震装置を設置することで、風等による小振幅振動から地震等の大振幅振動までの広帯域に渡る振動を効率良く低減することができる。
【0024】
また、一般的に、建物に作用する風や地震等の水平力は建物の層ごとに異なるため、制震ブレースに求められる制震性能も層ごとに異なる。これに対して請求項5に記載の制震ブレースは、調整機構により、振動低減手段を作動させるまでの第1弾性体等の振幅範囲を層ごとに調整できるため、各層に求められる制震性能を発揮させることができる。
【0025】
請求項6に記載の付帯設備支持構造は、建物と、該建物に併設された振動発生源を備える付帯設備と、の間に前記建物の高さ方向に間隔を置いて配置され前記建物と前記付帯設備と連結する複数の支持部材を備え、前記支持部材の少なくとも一つに請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を設置している。
【0026】
上記の構成によれば、建物と付帯設備とを連結する支持部材に、請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を設置することで、振動源から発生される振動(例えば、機械振動など小振幅振動)を第1弾性体で低減することができ、また、地震等の大振幅振動を振動低減手段で低減することができる。更に、調整機構を備えることで、振動低減手段が作動するまでの第1弾性体等の振幅範囲を調整できるため、施工性が向上する。
【0027】
また、付帯設備は、建物の高さ方向に間隔を置いて配置された支持部材によって建物に連結されている。この場合、地震の大振幅振動により建物が揺れると、建物に生じる加速度によって付帯設備に慣性力が作用する。特に、隣接する支持部材間の距離が大きいと、支持部材を支点として付帯設備が弓なりに変形し、付帯設備の変形が大きくなる。この支点となる支持部材に制震装置を配置することで、振動の低減効率が向上し、付帯設備の破損、損傷等を防止することができる。
【0028】
請求項7に記載の建物は、請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を有している。
【0029】
上記の構成によれば、請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を有することにより、居住性、耐久性が向上した建物を構築することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上記の構成としたので、小振幅振動から大振幅振動までの広帯域に渡る振動を低減し、且つ、振動低減手段が作動するまでの弾性体の振幅範囲を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る制震装置、制震ブレース、付帯設備支持構造、建物について説明する。
【0032】
先ず、第1の実施形態に係る制震装置、及びこの制震装置を備える付帯設備支持構造の全体構成について説明する。
【0033】
図1(A)又は図1(B)に示すように、第1の実施形態に係る制震装置10は、支持部材16に設置されて実施される。図1(A)に示す支持部材16は、建設中の建物12と、建物12に併設されたタワークレーン14との間に、建物12の高さ方向に沿って所定の間隔を置いて複数架け渡されている。また、図1(B)に示すように、制震装置10は、建設中の建物12と、建物12の内部に設置されるタワークレーン14と、の間に架け渡された支持部材16にも設置可能である。なお、制震装置10は、複数の支持部材16のうち、少なくとも一つに設置されていれば良い。
【0034】
これらのタワークレーン14は、建材を吊り上げるブーム18と、ブーム18を支持すると共に回転駆動するクレーン本体20と、クレーン本体20を支持するマスト22と、マスト22を地面(基礎)に固定する基台24と、を備えており、建物12とマスト22との間に架け渡された複数の支持部材16によって、倒れないように建物12に連結支持されている。
【0035】
支持部材16は、図2に示すように、横向きに配置された鋼製の繋ぎ材28と、この繋ぎ材28の建物12側端部に結合された制震装置10とから構成されている。繋ぎ材28は、この繋ぎ材28のマスト22側端部に溶接されたリング状の固定金物30にマスト22を貫通させ、ボルト(不図示)で締め付けることでマスト22に固定されている。また、繋ぎ材28の建物12側の端部は、高力ボルト32によって後述するオイルダンパー34と接合されている。
【0036】
図2〜図4に示すように、制震装置10は、鋼製の板部材からなる第1連結部材36及び第2連結部材38を備えている。第1連結部材36には、十字状のリブ40が溶接されており、このリブ40を介して第1連結部材36と固定板42とが一体化されている。この固定板42を高力ボルト44によって建物12の壁面12Aに固定することで、第1連結部材36が建物12に固定されている。
【0037】
また、第2連結部材38には、十字状のリブ72が溶接され、このリブ72を介して第2連結部材38と取付フランジ74とが一体化されている。この取付フランジ74には、取付フランジ76が対向して配置されている。各取付フランジ74、76にはボルト孔78、80が形成され、これらのボルト孔78、80に貫通されたボルト82とナット83によって、取付フランジ74、76が接合されている。この取付フランジ76は、取付台84が溶接固定されており、高力ボルト79をよって、取付台84とオイルダンパー34とが応力を伝達可能に結合されている。これにより、後述する第1弾性体52、第2弾性体60と、オイルダンパー34とが力学的に直列結合されている。
【0038】
図6(A)又は図6(B)に示すように、第1連結部材36と第2連結部材38とが対向して配置されている。第1連結部材36に表面には円筒形の台座46が突設され、この台座46の内部には貫通孔48が形成されている。第2連結部材38には、貫通孔68が形成されている。これらの貫通孔68及び貫通孔48には長ボルト70が貫通され、長ボルト70に設けられたネジ部70Aにナット75(連結手段)を取り付けて締め付けることで、第1連結部材36と第2連結部材38とが相対変位可能に連結されている。なお、長ボルト70とナット75とは、ワッシャ69、71を介して長ボルト70に取り付けられている。
【0039】
また、第1連結部材36と第2連結部材38との間には、筒体50に収納された円柱形の第1弾性体52が4つ配置されている。筒体50は、図5(A)又は図5(B)に示すように、円盤状の底壁50Aと、この底壁50Aの外周に沿って立設されると共に第1弾性体52の周面を覆う周壁50B(第1ストッパ手段)と、を一体成形し、筒状に構成されている。
【0040】
周壁50Bの高さa(図6(A)参照)は、変形前の第1弾性体52の高さbよも低くされ、第1弾性体52を筒体50に収納した状態で、周壁50Bの縁から第1弾性体52の端部が突出(突出長c=b−a)するように構成されている。これにより、第1連結部材36と第2連結部材38とが接近する方向に相対変位したときに、第1弾性体52が突出長cの範囲内(振幅範囲)で圧縮変形可能とされている。また、第1弾性体52の圧縮変形量が突出長cに達すると、周壁50Bの縁が第2連結部材38に当接して第1連結部材36と第2連結部材38との相対変位が制限される。
【0041】
第1弾性体52は天然ゴムで構成されている。この第1弾性体52及び底壁50Aには、それぞれ貫通孔54、56が形成されており、これらの貫通孔54、56には長ボルト70が貫通されている。
【0042】
第2連結部材38を間に挟んで第1連結部材36の反対側には、4つの第2弾性体60が第1弾性体52に対応して配置されている。各第2弾性体60は筒体58に収納されている。この筒体58は、筒体50と基本的構成が同じであり、底壁58A(第3連結部材)と、この底壁58Aの外周に沿って立設されると共に第2弾性体60の周面を覆う周壁58B(第2ストッパ手段)と、を一体成形し、筒状に構成されている。また、筒体58の表面には、円筒形の台座62が形成されており、この台座62の内部には貫通孔64が形成されている。この貫通孔64及び第2連結部材38の貫通孔68に貫通される長ボルト70によって、第2連結部材38と第3連結部材としての底壁58Aとが相対変位可能に連結されている。
【0043】
筒体58の周壁58Bの高さa(図6(A)参照)は、変形前の第2弾性体60の高さbよも低くされており、これにより第2弾性体60を筒体58に収納した状態で、周壁58Bの縁から第2弾性体60の端部が突出(突出長c=b−a)するように構成されている。これにより、第2連結部材38と底壁58Aとが接近する方向に相対変位したときに、第2弾性体60が突出長cの範囲内(振幅範囲)で圧縮変形可能とされている。また、第2弾性体60の圧縮変形量が突出長cに達すると、周壁58Bの縁が第2連結部材38に当接して第2連結部材38と底壁58Aとの相対変位が制限される。
【0044】
第1弾性体52と同様に、第2弾性体60は天然ゴムで構成されている。この第2弾性体60には、長ボルト70を貫通するための貫通孔66が形成されている。
【0045】
次に、連結手段に設けられた調整機構について説明する。
【0046】
図6(A)又は図6(B)に示すように、連結手段は、長ボルト70及びナット75を備えている。長ボルト70には、雄ネジが切られたネジ部70Aを備えており、ナット75に捻じ込み可能とされている。このナット75の締め付け量によって、第1連結部材36と第2連結部材38との間の距離Lが調整されると同時に、第2連結部材38と筒体58の底壁58Aとの間の距離b(第2弾性体60の高さ)が調整される。
【0047】
具体的には、先ず、各貫通孔48、54、56、68、66、64に長ボルト70を貫通させ、台座46側からネジ部70Aにナット75を取り付ける。次に、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長cが所望の長さ(突出長c)になるまでナット75を締め付ける。これにより、第1弾性体52及び第2弾性体60が圧縮され、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長c、即ち、第1弾性体52及び第2弾性体60の振幅範囲が調整される。
【0048】
なお、突出長cは制震装置10に求められる性能に応じて適宜設定すれば良いが、突出長cを小さくすることで、オイルダンパー34が作動するまでのギャップを小さくすることができる。大地震等に対して早期にオイルダンパー34を作動させるためには、突出長c(ギャップ)を可能な限り小さくすることが好ましく、本実施形態では施工性等を考慮して突出長cを1mmに設定している。
【0049】
次に、第1の実施形態に係る制震装置、及びこの制震装置を備える付帯設備支持構造の作用について説明する。
【0050】
図8に示すように、先ず、タワークレーン14のブーム18の旋回やクレーン本体20の昇降動作によって機械振動が発生すると、マスト22から支持部材16へ微振動が伝達される。同様に、風や小規模の地震等により建物12に微振動(小振幅振動)が発生すると、建物12から支持部材16へ微振動が伝達される。これにより、図9(B)又は図9(C)に示すように、第1連結部材36と第2連結部材38とが相対変位する。なお、図9(B)又は図9(C)では、第1連結部材36を固定し、第1連結部材36に対して第2連結部材38が相対変位した状態を示している。
【0051】
図9(B)に示すように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が接近する方向に相対変位すると、第1連結部材36と第2連結部材38とで挟み込まれた第1弾性体52が圧縮(圧縮変形)される。また、図9(C)に示すように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が離間する方向に相対変位すると、底壁58Aに対して第2連結部材38が接近して第2弾性体60が圧縮(圧縮変形)される。
【0052】
これにより、第1弾性体52若しくは第2弾性体60において振動が低減され、又は振動数が変化されて第1連結部材36と第2連結部材38との共振が防止される。従って、ブーム18の旋回やクレーン本体20の昇降動作による機械振動等が建物12に伝達されず、建物12の作業者等へ与える不快感を抑えることができる。同様に、建物12からタワークレーン14へ伝達される微振動が低減されるため、タワークレーン14の操作者等に与える不快感等を抑えることができる。
【0053】
一方、大地震等により建物12が振動(大振幅振動)すると、支持部材16に慣性力Fが作用し、タワークレーン14に振動が伝達される。また、地震等によってタワークレーン14自体に生じる加速度によって建物12に慣性力Pが作用する。この場合、図10(B)又は図10(C)に示すように、第1連結部材36と第2連結部材38とが相対変位する。なお、図10(B)又は図10(C)では第1連結部材36を固定し、第1連結部材36に対して第2連結部材38が相対変位した状態を示している。また、図中の矢印は、応力(振動)の伝達イメージを示している。
【0054】
図10(B)に示すように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が接近する方向に相対し、第1弾性体52が所定値(突出長c)以上圧縮変形すると、筒体50の周壁50Bが第2連結部材38の側面に当接して第1連結部材36と第2連結部材38との相対変位が制限される。これにより第2連結部材38が第1連結部材36(建物12)に固定され、オイルダンパー34に応力G(図2参照)が作用して、オイルダンパー34が作動する。
【0055】
また、図10(C)に示すように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が離間する方向に相対変位し、第2弾性体60が所定値(突出長c)以上圧縮変形すると、筒体58の周壁58Bが第2連結部材38の側面に当接して第2連結部材38と底壁58Aとの相対変位が制限される。これにより長ボルト70を介して第2連結部材38が第1連結部材36(建物12)に固定され、オイルダンパー34に応力G(図2参照)が作用して、オイルダンパー34が作動する。
【0056】
このように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が接近する方向及び離間する方向の何れの方向に相対変位が生じても、オイルダンパー34を作動させることができ、地震等による振動(大振幅振動)をオイルダンパー34で低減することができる。また、筒体50及び筒体58によって、第1弾性体52又は第2弾性体60の変形量が所定値以内に制限されるため、第1弾性体52及び第2弾性体60の破損、損傷が防止される。
【0057】
更に、地震等によって建物12が揺れると、建物12に生じる加速度により、支持部材16を作用点とした慣性力Fがマスト22に作用し、また、地震等によりタワークレーン14自体に生じる加速度によって建物12に慣性力Pが作用する。特に、支持部材16による支持間隔H(図8参照)が大きい場合、マスト22が弓なりに湾曲変形(図8における点線)して、支持部材16の長手方向に作用する応力が大きくなり、第1連結部材36と第2連結部材38との相対変位量が大きくなる。従って、地震等による振動(大振幅振動)を効率良く低減することができ、また、慣性力Fを小さくしてマスト22の破損、損傷を防止することができる。更に、タワークレーン14から建物12に伝達される振動(慣性力P)によっても、第1連結部材36と第2連結部材38との間に相対変位が生じて、振動が低減される。
【0058】
更にまた、長ボルト70のネジ部70Aに取り付けられたナット75の締め付け量を変えるだけで、第1弾性体52の突出長c及び第2弾性体60の突出長cを同時に調整できる。従って、施工性が向上し、また、このような調整機構を備えることで、第1連結部材36、第2連結部材38、筒体50、58等の加工誤差や組立誤差を吸収することが可能となり、制震装置10の製作性が向上する。
【0059】
なお、第1弾性体52又は第2弾性体60の引張変形による振動低減効果を期待する場合には、以下のように構成しても良い。具体的には、図7(A)又は図7(B)に示すように、第3連結部材としての底壁58Aに台座62を設けると共に、第1連結部材36に台座46を設ける。
【0060】
図7(A)に示すように、台座62の周壁には、一対のネジ孔61が形成され、このネジ孔61に捻じ込まれたイモネジ63によって、貫通孔64に貫通された長ボルト70のネジ部70Aが押圧され、長ボルト70が筒体58の底壁58Aに固定可能とされている。また、図7(B)に示すように、台座46の周壁には、一対のネジ孔45が形成されており、このネジ孔45に捻じ込まれたイモネジ47によって、長ボルト70のネジ部70Aが押圧され、長ボルト70が第1連結部材36に固定可能とされている。
【0061】
これらのイモネジ47、63によって、長ボルト70を第1連結部材36及び筒体58の底壁58A及びに固定することで、第1連結部材36と第2連結部材38とが接近する方向に相対変位したときに、第2連結部材38に対して底壁58Aが離間する方向に相対変位する。この場合、第2弾性体60を、筒体58の底壁58A及び第2連結部材38の表面に接着剤等で固定しておくことで、第2弾性体60に引張力が作用する。従って、第1弾性体52だけでなく、第2弾性体60においても振動が低減され、振動低減効果を向上させることができる。
【0062】
また、筒体50の底壁50Aを第1連結部材36に溶接等によって固定すると共に、第1弾性体52を、筒体50の底壁50A及び第2連結部材38の表面に接着剤等によって固定することで、第1連結部材36と第2連結部材38とが離間する方向に相対変位したときに、第1弾性体52に引張力が作用する。従って、第2弾性体60だけでなく、第1弾性体52においても振動が低減され、振動低減効果を向上させることができる。
【0063】
次に、第2の実施形態に係る制震装置90の構成について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0064】
制震装置90は、図11に示すように、第1の実施形態に替えて筒体58(第2ストッパ手段、第3連結部材)及び第2弾性体60を省略している。また、第1の実施形態では、第1連結部材36の表面に台座46を突設したが、制震装置90ではこれを備えていない。
【0065】
図12は、上記のように構成された制震装置90において、地震等によって第1連結部材36と第2連結部材38とが相対変形した状態を示している。なお、図12(B)及び図12(C)では、第1連結部材36を固定し、第1連結部材36に対する第2連結部材38が相対変位した状態を示している。
【0066】
図12(B)に示すように、風や小規模の地震又はタワークレーン14の機械振動等により建物12(図8参照)に微振動(小振幅振動)が発生し、第1連結部材36に対して第2連結部材38が接近する方向に相対変位すると、第1連結部材36と第2連結部材38とで挟み込まれた第1弾性体52が圧縮(圧縮変形)される。これにより第1弾性体52において振動が低減され、又は振動数が変化して第1連結部材36と第2連結部材38との共振が防止される。
【0067】
また、図12(C)に示すように、大地震等により建物12に振動(大振幅振動)が発生し、第1弾性体52が所定値(突出長c)以上圧縮変形すると、筒体50の周壁50Bが第2連結部材38の側面に当接して第1連結部材36と第2連結部材38との相対変位が制限される。これにより第2連結部材38が第1連結部材36(建物12)に固定され、オイルダンパー34に応力G(図2参照)が作用して、オイルダンパー34が作動する。従って、地震等による振動(大振幅振動)をオイルダンパー34で低減することができる。
【0068】
なお、図示を省略するが、大地震等により建物12に振動(大振幅振動)が発生し、第1連結部材36に対して第2連結部材38が離間する方向に相対変位した場合は、長ボルト70を介して第2連結部材38が第1連結部材36(建物12)に固定され、オイルダンパー34に応力G(図2参照)が作用して、オイルダンパー34が作動する。
【0069】
このように、第1連結部材36に対して第2連結部材38が接近する方向及び離間する方向の何れの方向に対しても、オイルダンパー34を作動させることができ、地震等による振動(大振幅振動)をオイルダンパー34で効率良く低減することができる。
【0070】
従って、第1の実施形態に替えて筒体58及び第2弾性体60を省略しても、風や機械振動等の小振幅振動から大地震等の大振幅振動までの広帯域に渡る振動を低減することができる。更に、筒体58及び第2弾性体60等を省略することで、調整機構の構造が更に単純化され、制震装置90の製造コストを削減できると共に、施工性が向上する。
【0071】
次に、連結手段、調整機構、及びストッパ手段の変形例について説明する。
【0072】
図13に示すように、第1連結部材36の表面には、ネジ孔86が形成されている。このネジ孔86に捻じ込まれる長ボルト70によって、第1連結部材36と第2連結部材38、及び第2連結部材38と底壁58Aがそれぞれ相対変位可能に連結されている。また、長ボルト70の頭と底壁58Aとの間には、複数の調整用ワッシャ85が介在しており、この調整用ワッシャ85の重ね合わせ枚数によって、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長c(図6参照)が調整される。
【0073】
このように第1連結部材36にネジ孔86を形成することで、第1連結部材36側(図2における建物12側)からの施工作業が不要となるため施工性が向上する。また、調整用ワッシャ85の重ね合わせ枚数を変えるだけで、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長cを調整することができる。
【0074】
次に、図14に示す構成では、第1連結部材36の表面に鋼製の連結ピン87が突設されている。この連結ピン87の先端部にはネジ部87Aが設けられている。また、第3連結部材としての底壁58Aには、ネジ孔88が形成されている。このネジ孔88に連結ピン87のネジ部87Aを捻じ込むことにより、第1連結部材36と第2連結部材38、及び第2連結部材38と底壁58Aがそれぞれ相対変位可能に連結されている。また、筒体58自体を回転させて、ネジ孔88の締め付け量を変えることで、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長c(図6参照)が調整される。
【0075】
このように第3連結部材としての底壁58Aにネジ孔88を形成することで、第1連結部材36側(図2における建物12側)からの施工作業が不要となるため施工性が向上する。また、筒体58の回転量(ネジ孔88の締め付け量)によって、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長cを調整することができる。
【0076】
次に、図15に示す構成では、第2連結部材38を間に挟んで、第1連結部材と反対側に鋼製の板部材からなる連結板89(第3連結部材)が配置され、第2連結部材38と連結板89との間に、筒体58及び第2弾性体60が配置されている。第1連結部材36、第2連結部材38、及び連結板89には、貫通孔48、68、91がそれぞれ形成され、これらの貫通孔48、68、91に貫通される長ボルト70によって、連結部材36と第2連結部材38、及び第2連結部材38と連結板89とが相対変位可能に連結される。また、長ボルト70にはネジ部70Aが設けられており、ネジ部70Aに取り付けられたナット75の締め付け量によって、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長cがそれぞれ調整される。なお、長ボルト70は、第1弾性体52及び第2弾性体60を貫通せず、第1弾性体52及び第2弾性体60の両側に配置されている。
【0077】
このように連結手段としての長ボルト70を第1弾性体52及び第2弾性体60の両側に配置することで、第1弾性体52及び第2弾性体60に貫通孔を形成する必要がなく、第1弾性体52及び第2弾性体60の製造コストを削減することができる。また、複数の長ボルト70を用いることで、第1連結部材36、第2連結部材38等を確実に連結することができる。
【0078】
次に、図16に示す構成では、第1ストッパ手段としての筒体50を中空の管状に形成し、これに第1弾性体52を収納させ、また、第2ストッパ手段としての筒体58を中空の管状に形成し、これに第2弾性体60を収納させている。この場合、第1弾性体52が所定値以上圧縮変形したときに、筒体50が第1連結部材36及び第2連結部材38に当接して第1連結部材36及び第2連結部材38との相対変位を制限する。また、第2弾性体60が所定値以上圧縮変形したときに、筒体58が第2連結部材38及び連結板89に当接して第2連結部材38と連結板89との相対変位を制限する。
【0079】
また、図17(A)及び図17(B)に示す構成では、第1連結部材36及び連結板89(第3連結部材)にストッパ手段としてのストッパ板93、95をそれぞれ突設している。このストッパ板93、95は、第1弾性体52又は第2弾性体60の周囲に設けられ、第1弾性体52が所定値以上圧縮変形したときに、ストッパ板93の端部が第2連結部材38に当接して第1連結部材36及び第2連結部材38との相対変位を制限する。また、第2弾性体60が所定値以上圧縮変形したときに、ストッパ板95が第2連結部材38に当接して第2連結部材38と連結板89との相対変位を制限する。なお、ストッパ板93、95は、第2連結部材38に突設しても良い。
【0080】
このように、ストッパ手段は、第1連結部材36と第2連結部材38との間、又は第2連結部材38と連結板89との間に介在し、第1連結部材36と第2連結部材38、又は第2連結部材38と連結板89との相対変位を制限できれば良い。なお、筒体50、58のように、第1弾性体52又は第2弾性体60を収納可能に構成することで、第1弾性体52又は第2弾性体60に傷等が付き難くなり、第1弾性体52、第2弾性体60の耐久性が向上する。
【0081】
なお、上記第1、第2の実施形態では、支持部材16に制震装置10又は制震装置90を設置したが、図18に示す模式図のように、架構92に設けられた制震ブレース94に制震装置10又は制震装置90を設置しても良い。なお、図18では、制震ブレース94に制震装置10を設置した場合の例を示している。
【0082】
具体的には、鉄筋コンクリート造の柱96と鉄筋コンクリート造の梁98とから構成された架構92の構面には、制震ブレース94が斜めに架け渡されている。架構92の対角上にある2つの角部には、鋼製のガゼットプレート100が柱96と梁98とにまたがるように埋め込み固定されており、このガゼットプレート100に制震ブレース94の軸方向両端部がピン102によってそれぞれ接合されている。
【0083】
制震ブレース94は、鋼製のブレース104及び制震装置10を備え、ブレース104の一端にオイルダンパー34の一端を結合することで、ブレース104と制震装置10とが力学的に直列結合されている。
【0084】
このように架構92に制震ブレース94を配置することで、風等による振動(小振幅振動)から地震等の振動(大振幅振動)までの広帯域に渡る振動を効率良く低減することができる。即ち、風等による振動を第1弾性体52、第2弾性体60(図3参照)で低減することができ、地震等の振動(大振幅振動)をオイルダンパー34で低減することができる。従って、制震ブレース94が配置された架構92及び建物の居住性を向上させることができる。
【0085】
また、一般的に、建物に作用する風や地震等の水平力は建物の層ごとに異なり、制震ブレース94に求められる制震性能も層(架構)ごとに異なる。しかしながら、制震装置10が備える長ボルト70(図2参照)等の調整機構によって、第1弾性体52及び第2弾性体60の突出長c(振幅範囲)を層ごとに調整できるため、各層に求められる制震性能を発揮させることができる。
【0086】
なお、架構92に配置された制震ブレース94は、架構92から水平力が伝達されるように架構92に接合されていれば良く、様々な接合方法をもって架構92に配置可能である。また、架構92は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造や、鉄骨造であっても良い。
【0087】
更に、制震装置10又は制震装置90は、図19に示すように、建物12に設置された観覧車106を支持する支持部材108に設置しても良い。この場合、制震装置10、90において、観覧車106の回転等によって発生する機械振動(小振幅振動)を低減できると共に、地震等によって建物12から支持部材108に作用する慣性力をオイルダンパー34で低減することができる。
【0088】
更にまた、第1の実施形態におけるタワークレーン14(図1参照)は、建物12から独立した基台24によって地面(基礎)に支持されているが、図20に示すように、建物12と、この建物12にのみ支持されるレール110と、を連結支持する支持部材112に制震装置10又は制震装置90を設置しても良い。このレール110は、建物12の高さ方向に延設され、所定の間隔を置いて配置された複数の支持部材112によって支持されている。レール110上には、昇降動作する乗り物114が設置され、展望用や遊戯用の付帯設備として建物12に併設されている。この場合、乗り物114の昇降動作によって発生する機械振動(小振幅振動)が制震装置10又は制震装置90において低減され、建物12の居住性等が向上する。なお、図中の支持部材112Aは、建物12とレール110との間に斜めに架け渡されているが、このような斜材にも当然ながら制震装置10又は制震装置90を設置することができる。
【0089】
このように制震装置10、90は、タワークレーン14や制震ブレース94、観覧車106、レール110のみならず、例えば、機械式のからくり時計、宣伝用キャラクターの手足を動作させる機械式の大看板、施工用の仮設エレベータなどのように機械振動等(小振幅振動)を発生する付帯設備を建物に支持させる支持部材に設置することで好適に実施される。勿論、機械振動等を発生しない付帯設備を支持する支持部材に設置することも可能である。
【0090】
また、第1、第2の実施形態では、第1弾性体52及び第2弾性体60を天然ゴムで構成したがこれに限らず、粘弾性体、高減衰ゴムで構成しても良い。天然ゴム等は、主に共振を回避するのに役立つが、粘弾性体で建物等に減衰を付与することで、振動エネルギーが吸収され、風、機械振動等による微振動(小振幅振動)を効率的に低減することができる。ただし、粘弾性体は、天然ゴム等に比べて一般的に高価であることから、機械振動等のように予め振動数が想定できる場合には、安価な天然ゴムを用いることがコスト削減の観点から好ましい。なお、粘弾性体の材料としては、例えば、ジエン系ゴム、ブチル系ゴム、アクリル系、ウレタンアスファルト系ゴム等が用いられる。また、第1弾性体52及び第2弾性体60の形状等は、適宜設計すれば良く上記した円柱形に限らない。例えば、立方体でも良いし、シート状に形成しても良い。
【0091】
また、第1、第2の実施形態では、振動低減手段としてオイルダンパーを用いたがこれに限らず、例えば、摩擦ダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、塑性ダンパー、弾塑性ダンパー等を用いることができる。
【0092】
更に、第1弾性体52及び第2弾性体60と、オイルダンパー34とは、力学的に直列結合されていれば良く、種々の結合方法を用いることができる。
【0093】
以上、本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2の実施形態を組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(A)、(B)は、本発明の第1の実施形態に係る制震装置、及び付帯設備支持構造が適用された建物の概略を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る制震装置、及び付帯設備支持構造が適用された支持部材を概略の示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の要部を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の要部を示す右側面図である。
【図5】(A)、(B)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性体を示す斜視図である。
【図6】(A)、(B)は、本発明の第1の実施形態に係る調整機構の要部を示す説明図である。
【図7】(A)、(B)は、本発明の第1の実施形態に係る調整機構を示す拡大説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る制震装置、及び付帯設備支持構造が適用された建物の概略を示す正面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の動作を示す説明図であり、(A)は停止状態を示す正面図であり、(B)、(C)は、動作した後の状態を示す正面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の動作を示す説明図であり、(A)は停止状態を示す正面図であり、(B)、(C)は、動作した後の状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る制震装置の要部を示す正面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る制震装置の動作を示す説明図であり、(A)は停止状態を示す正面図であり、(B)、(C)は、動作した後の状態を示す正面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の変形例を示す正面図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の変形例を示す正面図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の変形例を示す正面図である。
【図16】本発明の第1の実施形態に係る制震装置の変形例を示す正面図である。
【図17】(A)は、本発明の第1の実施形態に係る制震装置の変形例を示す正面図であり、(B)は、図17(A)の9−9線断面図である。
【図18】本発明の第1の実施形態に係る制震装置が適用された制震ダンパーを示す正面図である。
【図19】本発明の第1の実施形態に係る制震装置が適用された付帯設備を示す正面図である。
【図20】本発明の第1の実施形態に係る制震装置が適用された付帯設備を示す正面図である。
【図21】従来技術を示す正面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 制震装置
12 建物
14 タワークレーン(付帯設備)
16 支持部材
34 オイルダンパー(振動低減手段)
36 第1連結部材
38 第2連結部材
50B 周壁(第1ストッパ手段)
52 第1弾性体
58A 底壁(第3連結部材)
58B 周壁(第2ストッパ手段)
60 第2弾性体
70 長ボルト(連結手段、調整機構)
70A ネジ部(連結手段、調整機構)
75 ナット(連結手段、調整機構)
85 調整用ワッシャ(調整機構)
86 ネジ孔(連結手段)
87 連結ピン(連結手段、調整機構)
87A ネジ部(連結手段、調整機構)
88 ネジ孔(連結手段、調整機構)
89 連結板(第3連結部材)
90 制震装置
93 ストッパ板(第1ストッパ手段)
94 制震ブレース
95 ストッパ板(第1ストッパ手段)
104 ブレース(制震ブレース)
106 観覧車(付帯設備)
108 支持部材
112 支持部材
112A 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連結部材と第2連結部材とを相対変位可能に連結する連結手段と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とに挟み込まれた第1弾性体と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材との間に設けられ、前記第1連結部材及び前記第2連結部材の少なくとも一方に当接して前記第1連結部材と前記第2連結部材との相対変位を制限する第1ストッパ手段と、
前記連結手段に設けられ、前記第1連結部材と第2連結部材との距離を調整する調整機構と、
前記第2連結部材に結合され、前記第1ストッパ手段が前記相対変位を制限した後に作動する振動低減手段と、
を備える制震装置。
【請求項2】
前記第2連結部材と、前記第2連結部材の前記第1連結部材と反対側に設けられ前記第2連結部材に対して相対変位可能とされた第3連結部材と、に挟み込まれた第2弾性体と、
前記第2連結部材と前記第3連結部材との間に設けられ、前記第2連結部材及び前記第3連結部材の少なくとも一方に当接して前記第2連結部材と前記第3連結部材との相対変位を制限する第2ストッパ手段と、
を備え、
前記連結手段が、前記第2連結部材を貫通して前記第1連結部材と前記第3連結部材とを連結し、
前記調整機構が、更に前記第2連結部材と前記第3連結部材との距離を調整する請求項1に記載の制震装置。
【請求項3】
前記調整機構が、前記連結手段に設けられたネジ部に取り付けられたナットの締め付け量によって前記第1連結部材と前記第2連結部材との間の距離、及び前記第2連結部材と前記第3連結部材との間の距離を変える請求項2に記載の制震装置。
【請求項4】
前記第1ストッパ手段が、前記第1弾性体が収納され該第1弾性体の端部を突出させる筒体であり、
前記第2ストッパ手段が、前記第2弾性体が収納され該第2弾性体の端部を突出させる筒体である請求項2又は請求項3に記載の制震装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を、架構に設けられたブレースに設置して構成された制震ブレース。
【請求項6】
建物と、該建物に併設された振動発生源を備える付帯設備と、の間に前記建物の高さ方向に間隔を置いて配置され前記建物と前記付帯設備と連結する複数の支持部材を備え、
前記支持部材の少なくとも一つに請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を設置した付帯設備支持構造。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の制震装置を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−37906(P2010−37906A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205467(P2008−205467)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】