刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、および刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体
【課題】連続的に緩やかに色が変化する部分についても自然な縫目を形成するための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置を提供する。
【解決手段】刺繍模様の元となる元画像が、画像を構成する周波数成分または画像中の各画素の角度特徴の強度に基づいて、色の変化が比較的緩やかな第1領域と、色の変化が比較的激しい第2領域に分割される。第1領域は、複数の色別領域に分割され(S13)、各色別領域の代表角度が算出される(S15)。各色別領域に、代表角度に従って、第1領域内に形成される縫目に対応する第1線分が配置される(S16)。色別領域の色に基づいて各第1線分に対応する第1線分色が決定され(S21)、決定された第1線分色毎に第1線分が接続されて第1データとされる(S22)。第2領域に形成される縫目に対応する第2データは第1データとは異なる方法で作成され、第1データと合成されて刺繍データとなる。
【解決手段】刺繍模様の元となる元画像が、画像を構成する周波数成分または画像中の各画素の角度特徴の強度に基づいて、色の変化が比較的緩やかな第1領域と、色の変化が比較的激しい第2領域に分割される。第1領域は、複数の色別領域に分割され(S13)、各色別領域の代表角度が算出される(S15)。各色別領域に、代表角度に従って、第1領域内に形成される縫目に対応する第1線分が配置される(S16)。色別領域の色に基づいて各第1線分に対応する第1線分色が決定され(S21)、決定された第1線分色毎に第1線分が接続されて第1データとされる(S22)。第2領域に形成される縫目に対応する第2データは第1データとは異なる方法で作成され、第1データと合成されて刺繍データとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍縫製可能なミシンによって刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、および刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫製可能なミシンによって写真等の画像データに基づく図柄を刺繍縫製するための刺繍データ作成装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている刺繍データ作成装置によれば、イメージスキャナ装置で読み込まれた画像から取得された画像データに基づいて、画像内の各部の角度特徴とその強度が算出され、算出された角度特徴とその強度に従って線分が配置される。角度特徴とは、色の連続性の高い方向を示す情報であり、その強度は、色の変化の大きさを示す情報である。そして、元の画像の色を反映しながら限られた数の糸色で各線分が配色され、同じ色の線分が接続された後、縫目を示すデータに変換されることで、刺繍データが作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−259268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の刺繍データ作成装置では、線分が配置される際、線分の方向が不規則になって刺繍データ作成上の不都合が生じるのを防ぐために、強度が強い角度特徴が優先され、角度特徴の強度が弱い部分には、強い部分の角度特徴が反映される。角度特徴の強度が強い部分というのは、色の変化が激しい部分であり、弱い部分というのは、色の変化が緩やかな部分である。よって、例えば、グラデーションのように、連続的に緩やかに色が変化する部分については、その角度特徴が縫目に反映されず、不自然な縫目が形成されてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、連続的に緩やかに色が変化する部分についても自然な縫目を形成するための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、および刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る刺繍データ作成装置は、複数の画素の集合体である画像の画像データに基づいて、ミシンにより刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置であって、前記画像を構成する周波数成分、または、前記画像中の色の連続性の高い方向を示す情報である角度特徴に基づいて、前記画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分を含む領域、または、前記色の変化の大きさを示す強度が所定値以上の前記角度特徴を有する領域である第2領域と、前記全体領域のうち前記第2領域以外の領域である第1領域とに分割する第1分割手段と、前記第1領域に形成される縫目である第1縫目を示すデータである第1データを作成する第1データ作成手段と、前記第2領域に形成される縫目である第2縫目を示すデータである第2データを、前記第1データとは異なる方法で作成する第2データ作成手段と、前記第1データ作成手段によって作成された前記第1データと前記第2データ作成手段によって作成された前記第2データとを合成して、前記画像を表す刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備え、前記第1データ作成手段は、前記第1領域を色別に分割するための数を決定する色数決定手段と、前記第1領域を構成する複数の画素の色に応じて前記第1領域を決定された前記数の色に減色し、前記第1領域を複数の色別領域に分割する第2分割手段と、前記複数の色別領域の各々の代表的な前記角度特徴である代表角度を算出する代表角度算出手段と、前記複数の色別領域毎に、前記代表角度算出手段によって算出された前記代表角度に従って、前記第1縫目に対応する線分である第1線分を配置する第1線分配置手段と、前記ミシンで使用可能な複数の糸色から、前記第1線分の各々に使用される糸色である第1線分色を決定する第1線分色決定手段と、前記第1線分色決定手段により決定された前記第1線分色毎に前記第1線分を接続して前記第1データを作成する第1線分接続手段とを含むことを特徴とする。
【0007】
所定値以上の周波数成分を含む、または、角度特徴の強度が所定値以上である第2領域は、色の変化が相対的に激しい領域である。一方、第1領域は、第2領域に比べて色の変化が緩やかな領域である。第1領域は、その画素の色に応じて複数の色別領域に分割され、色別領域毎に、代表角度に従って第1線分が配置される。つまり、第1線分は、第2領域の特徴に左右されることなく、各色別領域内で色の連続性が高い方向に配列される。したがって、色別領域毎に、相対的に弱い角度特徴を適切に反映した第1縫目を形成できる。これにより、連続的に緩やかに色が変化する部分についても、自然な風合いの刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成することができる。
【0008】
また、各色別領域内の第1線分はすべて、その色別領域の代表角度に従って互いに平行に配置されるので、第1線分色毎に第1線分を接続して第1縫目を示す第1データを作成することが容易である。その結果、第1データに基づいて形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。
【0009】
前記第1線分色決定手段は、前記第2分割手段によって前記複数の色別領域の各々に付与された前記色に基づいて、前記第1線分色を決定してもよい。この場合、複数の色別領域毎に配置された第1線分に対して、各色別領域の色に基づいて第1線分色が決定され、同じ第1線分色の第1線分が接続される。したがって、元の画像で近い色を有する領域内の第1縫目を同じ糸色で連続して形成することができ、縫製品質を向上させることができる。
【0010】
前記第1データ作成手段は、少なくとも、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に同一の前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを互いに接続可能な領域群として設定する領域群設定手段を更に含んでいてもよい。そして、前記第1線分色決定手段は、前記複数の色別領域の各々について、前記ミシンで使用可能な前記複数の糸色のうち、前記第2分割手段によって付与された前記色を表現するのに使用可能な糸色を、使用可能糸色として決定する第1決定手段と、前記領域群について前記第1決定手段により決定された前記使用可能糸色の各々が前記領域群に使用されうる頻度に基づいて決定される、前記領域群全体の色を表現可能な最小数の前記使用可能糸色と、前記複数の色別領域のうち前記領域群以外の色別領域の色を表現可能な前記使用可能糸色とを、実際に使用される糸色として決定する第2決定手段と、前記画像データに基づいて、前記第1線分の各々の前記第1線分色を、前記第2決定手段により決定された前記実際に使用される前記糸色のうちいずれか1つに決定する第3決定手段とを含んでいてもよい。
【0011】
この場合、同じ代表角度を有する複数の色別領域が、代表角度の法線方向に互いに隣接している場合、これらが接続可能な領域群として扱われる。そして、領域群に対応する使用可能糸色の各々が領域群に使用されうる頻度に基づいて、領域群全体の色を表現可能な最小数の使用可能糸色が、実際に使用される糸色として決定される。つまり、例えば領域群中の3つの色別領域のうち1つを混色表現することで、3つの色別領域を含む領域群全体を2つの使用可能糸色で表現できる場合、実際に使用される糸色は二色である。したがって、接続可能な領域群を最小数の糸色で縫製することができ、元の画像に対応する刺繍模様をなるべく少ない数の糸で表現することができる。
【0012】
また、領域群に含まれる色別領域の代表角度はすべて同じであるから、領域群内に配置される第1縫目はすべて互いに平行となる。その結果、第1線分色毎に線分を接続する際、広い範囲で接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0013】
前記第1線分配置手段は、前記領域群設定手段によって設定された前記領域群がある場合、前記領域群を1つの色別領域とみなして前記第1線分を配置してもよい。同じ代表角度を有する複数の色別領域が代表角度の法線方向に互いに隣接していても、例えばその境界線が代表角度に平行ではない場合、色別領域毎に第1線分を配置すると、境界線近くの第1線分が短くなりすぎる可能性がある。第1線分が短すぎると、対応する縫目である第1縫目の縫製が困難になる。したがって、接続可能な領域群を1つの色別領域とみなして第1線分を配置することで、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性を低減できる。
【0014】
前記領域群設定手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを、互いに接続可能な前記領域群として設定し、前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に基づいて算出される角度特徴に従って、前記1つの色別領域とみなされた前記領域群に前記第1線分を配置してもよい。
【0015】
この場合、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの領域群を1つの色別領域とみなして第1線分が配置される。このように条件を緩和して、より多くの色別領域を接続可能な領域群とみなすことで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0016】
前記第1データ作成手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域との間に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に応じた境界線を有し、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度との間にある角度特徴を前記代表角度として有する中間領域を設定する中間領域設定手段を更に含んでもよい。そして、前記領域群設定手段は、前記中間領域設定手段によって前記中間領域が設定された場合、前記複数の色別領域のいずれかと前記中間領域と前記他の色別領域とを、接続可能な前記領域群として設定し、前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域および前記中間領域の各々に、前記代表角度に従って前記第1線分を配置してもよい。
【0017】
この場合、隣接する2つの色別領域の代表角度が異なるが近似していれば、これらの色別領域の間に、これらの色別領域の代表角度の間にある角度特徴を代表角度として有する中間領域が設定される。そして、中間領域を含む接続可能な領域群が設定される。このように条件を緩和してより多くの色別領域を接続可能な領域群とすることで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。また、中間領域の代表角度は、元々隣接していた2つの色別領域の代表角度の中間的な角度であるため、元の画像の角度特徴をより適切に反映した自然な縫目を形成することができる。
【0018】
前記第2データ作成手段は、前記第2領域を構成する複数の画素の各々について算出された前記角度特徴と前記角度特徴の前記強度に基づいて、前記第2縫目に対応する線分である第2線分を前記第2領域内に配置する第2線分配置手段と、前記画像データに基づいて、前記第2線分の各々に使用される糸色である第2線分色を、前記ミシンで使用可能な複数の糸色のうちいずれか1つに決定する第2線分色決定手段と、前記第2線分色決定手段により決定された前記第2線分色毎に前記第2線分を接続して、前記第2データを作成する第2線分接続手段とを含んでもよい。
【0019】
この場合、色の変化が相対的に激しい第2領域については、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第2線分が配置され、第2データが作成される。元の画像の色の変化を適切に反映した第2縫目を形成することができるので、第1データと第2データが合成されて作成される刺繍データによれば、色の変化が激しい部分も緩やかな部分も元の画像の特徴を反映した自然な風合いの刺繍模様を縫製することができる。
【0020】
前記最終刺繍データ作成手段は、前記第1縫目の縫い順よりも前記第2縫目の縫い順の方が後になるように前記第1データと前記第2データとを合成してもよい。この場合、色の変化が緩やかな第1領域の第1縫目より、色の変化が相対的に激しい第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるので、領域の区切りが明確になり、人間が目で見た時の印象に近い風合いの刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成することができる。
【0021】
本発明の第2の態様に係る刺繍データ作成プログラムは、前記第1の態様に係る刺繍データ作成装置の各種処理手段として、刺繍データ作成装置のコンピュータを機能させるためのプログラムである。したがって、刺繍データ作成プログラムがコンピュータによって実行されることにより、第1の態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。
【0022】
本発明の第3の態様に係るコンピュータ読取り可能な媒体は、前記第2の態様に係る刺繍データ作成プログラムを記憶している。したがって、媒体に記憶された刺繍データ作成プログラムがコンピュータによって実行されることにより、第1の態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】刺繍データ作成装置1の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】ミシン3の外観図である。
【図4】第1実施形態に係る刺繍データ作成処理のフローチャートである。
【図5】刺繍データ作成処理で行われる第1データ作成処理のフローチャートである。
【図6】刺繍データ作成処理で行われる第2データ作成処理のフローチャートである。
【図7】画素毎に算出された角度特徴と角度特徴の強度の例を示す図である。
【図8】元画像の一例を示す図である。
【図9】図8の元画像の第1領域が16の色別領域に分割された状態を示す図である。
【図10】第1実施形態の刺繍データ作成処理で作成された刺繍データに基づく第1縫目部分の縫製結果を示す図である。
【図11】従来の刺繍データ作成処理で作成された刺繍データに基づく縫製結果を示す図である。
【図12】第2実施形態に係る第1データ作成処理のフローチャートである。
【図13】第1データ作成処理で行われる領域接続処理のフローチャートである。
【図14】第1データ作成処理で行われる糸色決定処理のフローチャートである。
【図15】糸色決定処理で行われる使用可能糸色決定処理のフローチャートである。
【図16】使用可能糸色決定処理で行われる単色判断処理のフローチャートである。
【図17】使用可能糸色決定処理で行われる混色判断処理のフローチャートである。
【図18】糸色決定処理で行われる使用糸色決定処理のフローチャートである。
【図19】色別に分割された領域1〜3の例を示す図である。
【図20】図19の領域1〜3に配置された第1線分の例を示す図である。
【図21】図20の第1線分に対応して決定された第1線分色の例を示す図である。
【図22】図21の第1線分が第1線分色毎に接続された例を示す図である。
【図23】領域1と領域2にそれぞれ第1線分が配置された例を示す図である。
【図24】第3実施形態に係る第1データ作成処理のフローチャートである。
【図25】第3実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【図26】領域1と領域2とを1つの色別領域とみなして第1線分が配置された例を示す図である。
【図27】第4実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【図28】第5実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、単なる説明例である。
【0025】
<第1実施形態>
図1〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。まず、第1実施形態に係る刺繍データ作成装置1の構成について、図1および図2を参照して説明する。刺繍データ作成装置1は、後述のミシン3(図3参照)によって刺繍模様を縫製するのに使用される刺繍データを作成する装置である。本実施形態の刺繍データ作成装置1は、写真等の画像に基づく図柄を刺繍縫製するための刺繍データを作成することができる。図1に示すように、刺繍データ作成装置1は、例えば、所謂パーソナルコンピュータ等の汎用型の装置である。図1に例示されている刺繍データ作成装置1は、装置本体10と、装置本体10に接続されたキーボード21、マウス22、ディスプレイ24およびイメージスキャナ装置25を備えている。本実施形態で刺繍データ作成の元となる画像は、例えばこのイメージスキャナ装置25を介して刺繍データ作成装置1に読み込まれる。
【0026】
図2を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図2に示すように、刺繍データ作成装置1は、刺繍データ作成装置1の制御を司るコントローラであるCPU11を備えている。CPU11には、各種のデータを一時的に記憶するRAM12と、BIOS等を記憶したROM13と、データの受け渡しの仲介を行う入出力(I/O)インタフェイス14とが接続されている。I/Oインタフェイス14には、ハードディスク装置(HDD)15、入力機器であるマウス22、ビデオコントローラ16、キーコントローラ17、CD−ROMドライブ18、メモリカードコネクタ23、およびイメージスキャナ装置25が接続されている。また、図2には図示されていないが、刺繍データ作成装置1は、外部機器やネットワークとの接続のための外部インタフェイスを備えていてもよい。
【0027】
HDD15は、画像データ記憶エリア151、刺繍データ記憶エリア152、プログラム記憶エリア153、および設定値記憶エリア154を含む複数の記憶エリアを有する。画像データ記憶エリア151には、刺繍データ作成の元となる画像等、各種画像の画像データが記憶される。刺繍データ記憶エリア152には、本実施形態の刺繍データ作成処理によって作成された刺繍データが記憶される。プログラム記憶エリア153には、後述する刺繍データ作成プログラム等、刺繍データ作成装置1で行われる各種処理のためのプログラムが記憶される。設定値記憶エリア154には、各種処理で使用される各種設定値が記憶される。
【0028】
ビデオコントローラ16には、情報を表示する表示機器であるディスプレイ24が接続されている。キーコントローラ17には、入力機器であるキーボード21が接続されている。CD−ROMドライブ18には、CD−ROM114を挿入することができる。例えば、刺繍データ作成プログラムのセットアップ時には、刺繍データ作成プログラムを記憶するCD−ROM114がCD−ROMドライブ18に挿入される。そして、刺繍データ作成プログラムが読み込まれ、HDD15のプログラム記憶エリア153に記憶される。メモリカードコネクタ23には、メモリカード55を接続して、情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0029】
図3を参照して、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データに基づいて刺繍模様を縫製することが可能なミシン3について、簡単に説明する。
【0030】
図3に示すように、ミシン3は、ベッド部30、脚柱部36、アーム部38、および頭部39を有する。ベッド部30は、縫製者に対して左右方向に長い、ミシン3の土台部である。脚柱部36は、ベッド部30の右端部から上方へ延びる。アーム部38は、ベッド部30に対向して脚柱部36の上端から左方へ延びる。頭部39は、アーム部38の左端に連結する部位である。ベッド部30の上方には、刺繍が施される加工布を保持する刺繍枠41を配置可能である。
【0031】
刺繍縫製時には、刺繍枠41は、ベッド部30上に配置されるY方向駆動部42、および本体ケース43内に収容されたX方向駆動機構(図示せず)によって、ミシン3に固有のX・Y座標系で示される針落ち点に移動される。刺繍枠41が移動されるのと合わせて、縫針44が装着された針棒35及び釜機構(図示せず)が駆動されることにより、加工布上に刺繍模様が形成される。なお、Y方向駆動部42、X方向駆動機構、針棒35等は、刺繍データに基づき、ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等を含む制御装置(図示せず)によって制御される。
【0032】
ミシン3の脚柱部36の側面には、メモリカード55を着脱可能なメモリカードスロット37が搭載されている。例えば、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データは、メモリカードコネクタ23を介してメモリカード55に記憶される。その後、メモリカード55がミシン3のメモリカードスロット37に装着され、記憶された刺繍データが読み出されて、ミシン3に刺繍データが記憶される。ミシン3の制御装置(図示せず)は、メモリカード55から読み出された刺繍データに基づいて、上記の要素による刺繍模様の縫製動作を制御する。このようにして、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データに基づき、ミシン3を用いて刺繍模様を縫製することができる。
【0033】
以下に、図4〜図7を参照して、第1実施形態の刺繍データ作成装置1で行われる刺繍データ作成処理について説明する。刺繍データ作成処理は、HDD15のプログラム記憶エリア153に記憶された刺繍データ作成プログラムが起動されることで開始され、CPU11がこのプログラムを実行することにより行われる。
【0034】
図4に示すように、まず、刺繍データ作成の元となる画像(以下、元画像という)の画像データが刺繍データ作成装置1に入力される(S1)。画像データの入力方法は特に限定されないが、例えば、イメージスキャナ装置25によって写真や図柄が読み込まれ、取得された画像データが用いられる。その他、予めHDD15の画像データ記憶エリア151に記憶された画像データや、CD−ROM114、メモリカード55、CD−R等の外部記憶媒体に記憶された画像データが入力されてもよい。
【0035】
次に、入力された画像データに基づき、元画像の全体領域が第1領域と第2領域とに分割される(S2)。本実施形態では、第2領域とは、元画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分(以下、高周波成分ともいう)を含む領域をいい、第1領域とは、元画像の全体領域のうち、第2領域を除いた領域をいう。元画像に含まれる周波数成分とは、元画像における色に関する属性値の違いを周波数成分で表したものである。元画像を構成する複数の画素のうち、隣接する画素との属性値の違いが大きい画素ほど、より高い周波成分を有することになる。ここでいう色に関する属性値とは、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの値によって画素を表現可能な値(以下、RGB値という)である。この場合、属性値の違いは、(R、G、B)で示されるRGB空間座標上の空間距離(以下、単に距離ともいう)に相当する。
【0036】
ステップS2では、例えば、ラプラシアンフィルタ等のハイパスフィルタを用いる公知の方法により、元画像を構成する複数の画素のうち、隣接する画素との色に関する属性値の違いが所定値以上の画素で構成される領域が、高周波成分を含む第2領域として抽出される。そして、全体領域のうち第2領域を除いた領域が、第1領域として特定される。このように、隣接する画素との属性値の違いの大きさに基づいて元画像の全体領域が分割された結果、色の変化が比較的緩やかな第1領域と、色の変化が比較的激しい第2領域とが得られる。第1領域に含まれる画素と第2領域に含まれる画素をそれぞれ示すデータは、RAM12に記憶される。
【0037】
続いて、刺繍縫製によって第1領域に形成される縫目(以下、第1縫目という)を示すデータである第1データを作成する第1データ作成処理(S3)が行われる。以下、図5を参照して、第1データ作成処理の詳細について説明する。図5に示すように、まず、第1領域を構成する画素の各々について、その角度特徴と角度特徴の強度が算出される(S11)。角度特徴は、画像中の色の連続性の高い方向を示す情報であり、角度特徴の強度は、色の変化の大きさを示す情報である。
【0038】
角度特徴およびその強度は、例えば、特開2001−259268に詳述されている方法を用いて算出することができる。よって、ここでは詳細な説明は省略し、概略のみを説明する。第1領域を構成する画素の1つを注目画素として、注目画素とその周囲の所定数の画素を注目領域とする。注目領域内の各画素の色に関する属性値(例えば、輝度値)に基づいて、注目領域内における色の連続性の高い方向が特定され、注目画素の角度特徴とされる。また、注目領域内における色の変化の大きさを示す値が算出されて、注目画素の角度特徴の強度とされる。このように角度特徴およびその強度を算出する処理が、第1領域を構成する画素の全てについて、順に行われる。各画素の角度特徴とその強度を示すデータは、RAM12の所定の記憶エリアに記憶される。なお、角度特徴およびその強度は、上記の方法以外に、PrewittのオペレータやSobelのオペレータを用いて算出されてもよい。
【0039】
角度特徴およびその強度が算出された後、分割数mが決定される(S12)。分割数mは、第1領域を減色して、複数の色別領域に分割するのに用いられる2以上の整数であり、原則、刺繍縫製に使用される糸の色数には依存しない。しかしながら、現実的には、使用される糸の色数と分割数mの差が著しく大きいと、使用される糸の色と色別領域の色とがかけ離れてしまう場合が生じうるため、使用される糸の色数と分割数mとの差は小さい方が望ましい。分割数mは、例えば、ディスプレイ24に入力用画を表示させ、キーボード21等からユーザによって入力された数が使用されてもよいし、使用される糸の色数に応じて算出される数が使用されてもよい。
【0040】
続いて、第1領域が、決定された分割数mに応じてm色に減色され、互いに異なる色を有するm個の色別領域に分割される(S13)。例えば、メディアンカット法等を用いて第1領域の代表色m色が決定され、第1領域に含まれる複数の画素の各々の属性値を最も近い代表色の属性値に置換えることで、m個の色別領域が得られる。各色別領域には1からmまでの番号が付され、各色別領域に対応する代表色と、その色別領域に含まれる画素を示すデータと共に、RAM12に記憶される。
【0041】
得られたm個の色別領域の各々について、順に、その代表角度が算出され、第1線分を配置する処理が行われる(S14〜S17)。第1線分は、第1領域に形成される第1縫目に対応する線分である。まず、処理対象の色別領域である注目領域iが設定される(S14)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目領域として、番号1が付された色別領域が設定される。続いて、ステップS11で算出された角度特徴とその強度に基づいて、注目領域iの代表的な角度特徴が示す角度である代表角度θiが算出される(S15)。算出された代表角度θiは、色別領域の番号iと対応づけてRAM12に記憶される。代表角度θiは、例えば、注目領域i内で強度が最も大きい角度特徴をそのまま使用してもよいし、注目領域i内の全画素の角度特徴を強度で重み付けした後、平均値を求めてそれを使用してもよい。
【0042】
例えば、ステップS11で、注目領域iを構成する画素の各々について、図7に示す角度特徴とその強度が算出されたとする。なお、図中、矩形の領域は画素を示し、上段の数値はその画素の角度特徴を、下段のカッコ書きの数値は角度特徴の強度を示している。この例では、強度が最も大きい角度特徴を使用する場合、9つの画素のうち、中心にある画素の角度特徴の強度「35」が最も大きいので、代表角度θiは、この画素の角度特徴「50」が示す50度となる。なお、角度特徴が示す角度、代表角度等の角度は、図7の右方向を0度とし、反時計回り方向にプラス、時計回り方向にマイナスで示される。他の図でも同様である。
【0043】
強度で重み付けした後の平均値を使用する場合は、代表角度θiは以下のように算出される。まず、各画素の角度特徴の余弦値に強度を乗じた数値の総和dX、および各画素の角度特徴の正弦値に強度を乗じた数値の総和dYが求められる。図7の例では、以下の式のように、dXおよびdYとして、それぞれ128および147が得られる。
dX=cos(45)×10+cos(45)×20+cos(50)×30+cos(45)×20+cos(50)×35+cos(50)×20+cos(50)×30+cos(50)×20+cos(55)×10≒128
dY=sin(45)×10+sin(45)×20+sin(50)×30+sin(45)×20+sin(50)×35+sin(50)×20+sin(50)×30+sin(50)×20+sin(55)×10≒147
dY/dXの値のアークタンジェントを求め、代表角度θiとする。図7の例では、以下の式のように、代表角度θiとして49度が得られる。
atan(dY/dX)≒49(度)
【0044】
なお、ある画素に隣接する画素が同一色の場合、その画素の角度特徴の強さはゼロになる。この場合、単純に角度特徴を強度で重み付けした値を算出すると、ゼロ度として算出されてしまう。しかし実際には、その部分の角度特徴はゼロ度ではなく、角度を持たないだけである。よって、角度特徴の強度がゼロの場合、上記の平均値の計算からは除外する。注目領域i中の全ての画素が角度特徴を持たない場合は、その注目領域iの代表角度θiは、ゼロ度ではなく「なし」とする。代表角度θiが「なし」とされた場合、予め設定された値またはユーザの入力により設定された値を代表角度θiとして使用すればよい。
【0045】
上述のように注目領域iの代表角度θiが算出された後、代表角度θiに従って、注目領域i内に第1線分を配置する処理が行われる(S16)。より詳細には、代表角度θiが示す方向に伸びる第1線分が、予め設定された糸密度に応じた等間隔で、互いに平行に注目領域i内に配置される。第1線分に対応する第1縫目が形成された時に、注目領域iが第1縫目で埋まるように、各第1線分の両端点は、注目領域iの境界線上に設定される。各第1線分の端点の位置(座標)を示すデータは、RAM12に記憶される。このように、ある色別領域内の全画素について単一の代表角度θiに従って第1線分を配置するのは、そもそも第1領域は、周波数成分に基づいて抽出された色の変化が比較的緩やかな領域であり、角度特徴の強度が弱い領域と特定されているので、色別領域内を単一の角度特徴で統一しても問題はないとの考え方に基づいている。
【0046】
第1領域中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S17)。具体的には、色別領域は分割数mに分割されているので、変数iが分割数mに達しているか否かが判断される。変数iが分割数m未満であり、まだ注目領域iとして設定されていない色別領域がある場合は(S17:NO)、処理はステップS14に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。
【0047】
全ての色別領域の処理が完了すると(S17:YES)、第1線分色を決定する処理が行われる(S21)。なお、第1線分色とは、各色別領域に配置された第1線分の各々に対応する第1縫目を縫製するのに使用される糸の色である。第1線分色の決定方法は、いかなる公知の方法を用いてもよい。例えば、各色別領域内に配置された全ての第1線分の第1線分色を、ミシン3での刺繍縫製に使用可能な複数の糸色のうち、その色別領域の代表色に最も近い色に決定すればよい。これにより、同じ色別領域にある第1線分は、同じ色の糸で縫製されることになる。
【0048】
具体的には、各糸色のRGB値と色別領域の代表色のRGB値とのRGB空間での空間距離を求め、その距離が最小となる糸色を、その色別領域に配置された全第1線分の第1線分色とすればよい。なお、ある糸色のRGB値を(Rt、Gt、Bt)とし、ある色別領域の代表色のRGB値を(Ra、Ga、Ba)とした場合、その空間距離dは、以下の式で求められる。
d=√{(Rt−Ra)2+(Gt−Ga)2+(Bt−Ba)2}
第1線分および対応する第1線分色を示すデータは、RAM12に記憶される。
【0049】
続いて、第1線分色毎に第1線分を順に接続して、第1データを作成する処理が行われる(S22)。例えば、まず、ある色別領域の最も左端に近い第1線分を接続順が1番目の第1線分として、その2つの端点のうち一方が始点とされ、他方が終点とされる。次に、同じ第1線分色の他の第1線分のうち、1番目の第1線分の終点に最も近い位置にある端点を有する第1線分が、接続先である2番目の第1線分とされる。同様にして、順に、すでに接続された第1線分の終点に、同じ第1線分色の第1線分の最も近い位置にある端点を接続していく。その後、第1線分色毎に接続された第1線分群を、近い端点同士で接続することにより、全ての第1線分が接続される。そして、接続された全ての第1線分の端点の位置(座標)、接続順、および第1線分色を示すデータである第1データが作成される。
【0050】
前述したように、本実施形態では、同じ色別領域内の第1線分は、等間隔で互いに平行に並んでおり、各第1線分の端点は、色別領域の境界線上にある。しかも、同じ色別領域内の第1線分は、全て同じ色であるから、同じ色別領域内に配置された第1線分の端点を並び順に従って接続していくだけで、容易に第1データを作成することができる。このようにして第1データが作成されると、図5に示す第1データ作成処理は終了して、図4に示す刺繍データ作成処理に戻る。
【0051】
図4に示すように、続いて、ミシン3での刺繍縫製によって第2領域に形成される縫目(以下、第2縫目という)を示すデータである第2データを作成する第2データ作成処理(S4)が行われる。なお、第2データは、前述の第1データの作成方法とは異なる方法で作成される。以下、図6を参照して、第2データ作成処理の詳細について説明する。図6に示すように、まず、第2領域を構成する画素の各々について、その角度特徴と角度特徴の強度が算出される(S41)。角度特徴およびその強度の算出方法は、第1データ作成処理(図5参照)のステップS11の処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
続いて、第2領域内に第2線分を配置する処理が行われる(S42)。第2線分は、第2領域に形成される第2縫目に対応する線分である。そして、第2線分の各々に使用される糸の色(以下、第2線分色という)が決定され(S43)、第2線分色毎に第2線分を順に接続して、第2データを作成する処理が行われる(S44)。本実施形態では、ステップS42〜S44の処理は、特開2001−259268に詳述されている方法を用いて行われる。よって、ここでは詳細な説明は省略し、概略のみを説明する。
【0053】
まず、ステップS42では、第2領域を構成する各画素を中心として、予め設定された長さを有し、ステップS41で算出された角度特徴が示す方向に伸びる第2線分が配置される。ただし、第2線分は、第2領域を構成する複数の画素のうち、ステップS41で算出された角度特徴の強度が所定の閾値よりも大きい画素についてのみ作成される。一方、角度特徴の強度が閾値以下だった画素については、周囲の画素の角度特徴を加味して算出された新たな角度特徴に基づいて第2線分が配置される。ただし、前述したように、第2領域は色の変化が相対的に激しい領域、すなわち、角度特徴が強い領域であるから、ほとんどの画素について最初から第2線分が作成されることになると考えられる。
【0054】
ステップS43では、第2領域を構成する複数の画素を順に注目画素として、次の処理が行われる。まず、元画像において、注目画素を中心とする所定の範囲が、元画像の色を参照する範囲(参照領域)として設定される。そして、元画像の参照領域内の色の平均値と、注目画素を中心とする参照領域と同じサイズの領域に配置された線分に対してすでに決定された色の平均値が等しくなるように、注目画素に対応する第2線分の色が決定される。つまり、元画像の色とすでに決定された線分の色とに基づいて、第2線分の各々の色が決定されていく。
【0055】
さらに、決定された第2線分の色に基づいて、第2線分に対応する第2縫目の縫製に使用される糸の色、すなわち第2線分色が決定される。第2線分色は、例えば、刺繍縫製に使用可能な複数の糸色のうち、決定された第2線分の色に最も近い色に決定すればよい。具体的には、各糸色のRGB値と決定された第2線分の色のRGB値とのRGB空間での空間距離を求め、その距離が最小となる糸色を、その第2線分色とすればよい。距離の算出方法は、第1線分色の決定に関して前述した通りである。
【0056】
ステップS44では、第2線分色毎に第2線分を順に接続して、第2データを作成する処理が行われる。第2線分も、第1線分と同様、順に、すでに接続された第2線分の終点に、同じ第2線分色の第2線分の最も近い位置にある端点を接続していく。その後、第2線分色毎に接続された第2線分群を、近い端点同士で接続することにより、全ての第2線分が接続される。そして、接続された全ての第2線分の端点の位置(座標)、接続順、および第2線分色を示すデータである第2データが作成される。このようにして第2データが作成されると、図6に示す第2データ作成処理は終了し、図4に示す刺繍データ作成処理に戻る。
【0057】
図4に示すように、刺繍データ作成処理では、続いて、第1データと第2データとを合成して、元画像を表す刺繍模様を縫製するための最終的な刺繍データが作成される(S5)。まず、本実施形態では、第1領域内の第1縫目よりも、第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるように、第1データのデータ列の後に第2データのデータ列が結合される。そして、第1線分および第2線分の端点の座標がミシン3に固有の座標系の座標に変換され、針落ち点、縫い順、および糸色を示す刺繍データとされる。刺繍データの作成が終了すると、図4に示す刺繍データ作成処理は終了する。
【0058】
ここで、図8〜図11に、本実施形態の刺繍データ作成処理を適用した場合の効果を例示する。図8は、グラデーションで彩色された円の元画像(実際にはカラー画像)を示している。この元画像の第1領域が、16色の色別領域に分割されると、図9に示すようになる。その後、色別領域毎に第1線分が配置され、第1線分色毎に接続されて、第1データが作成される。この第1データに基づいて作成された刺繍データに基づく縫製結果は、図10に示すようになる(ただし、第1縫目のみ図示)。一方、例えば、特開2001−259268号公報に示す従来の刺繍データ作成処理に基づき、第1領域と第2領域を区別することなく作成された刺繍データに基づく縫製結果は、図11のようになる。図10と図11の比較から明らかなように、本実施形態の刺繍データによれば、連続的に緩やかに色が変化する円内の領域が第1領域として処理され、自然な風合いの刺繍模様が得られている。
【0059】
以上に説明したように、第1実施形態の刺繍データ作成装置1によれば、第2領域に比べて変化が緩やかな第1領域は、その画素の色に応じて複数の色別領域に分割され、色別領域毎に代表角度に従って第1線分が配置される。第1領域の第1線分の第1線分色は、色別領域の色に最も近い糸の色に決定され、同色の第1線分が接続されることで、第1データが作成される。一方、所定値以上の周波数成分を含み、第1領域に比べて色の変化が激しい領域である第2領域に対応する第2データは、第1データとは異なる方法で作成される。具体的には、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第2線分が配置され、元画像の色に基づいて第2線分色が決定され、同色の第2線分が接続されることで、第2データが作成される。そして、第1データの後に第2データが結合され、ミシン3で元画像に対応する刺繍模様を縫製するための刺繍データが作成される。
【0060】
このように、第1線分および第2線分は、いずれも他の領域の特徴に左右されることなく、それぞれが配置された領域の角度特徴を適切に反映して配置される。したがって、作成された刺繍データに基づいて刺繍縫製が行われると、色の変化が激しい部分も、連続的に緩やかに色が変化する部分も、自然な風合いの刺繍模様を得ることができる。特に、第1データの作成において、各色別領域内の第1線分はすべて、その色別領域の代表角度に従って互いに平行に配置され、且つ、同じ色が第1線分色とされるので、第1線分色毎に第1線分を接続して、第1データを作成することが非常に容易である。その結果、第1データに基づいて形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。また、色の変化が緩やかな第1領域の第1縫目より、色の変化が相対的に激しい第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるので、領域の区切りが明確になり、人間が目で見た時の印象に近い風合いの刺繍模様を得ることができる。
【0061】
なお、前述した例では、元画像の全体領域を第1領域と第2領域とに分割する処理(図4のS2)で、画像を構成する周波数成分を用いる方法を説明した。前述したように、第1領域は、元画像中の色の変化が比較的緩やかな領域であり、第2領域は、元画像中の色の変化が比較的激しい領域である。したがって、全体領域を第1領域と第2領域とに分割するのに、周波数成分に代えて角度特徴の強度を用いてもよい。
【0062】
具体的には、まず、元画像を構成する全ての画素の各々について、角度特徴およびその強度を算出する。その算出方法は、第1データ作成処理のステップS11(図5)および第2データ作成処理のステップS41(図6)に関して説明した通りである。そして、強度が閾値未満の角度特徴が比較的弱い領域を第1領域とし、強度が閾値以上の角度特徴が比較的強い領域を第2領域とすればよい。なお、強度の閾値は、予め設定され、設定値記憶エリア154に記憶された値か、ユーザが入力した値を用いればよい。そして、第1領域と第2領域とが分割された後は、前述の周波数成分を用いて領域分割する例と同様に、領域毎に第1データと第2データが作成されればよい。
【0063】
角度特徴が比較的強い部分は、色の変化が激しい部分なので、画素毎に点のように抽出される。このため、画像中の広い領域が角度特徴の比較的弱い第1領域として処理されて第1縫目が形成され、その上に付加される形で、角度特徴の強い部分に第2縫目が形成される。このように、角度特徴の強度を用いた場合も、色の変化の激しい部分と緩やかな部分を分割できるので、周波数成分に基づいて領域分割を行った場合と同等の効果が得られる。
【0064】
第1実施形態では、図4のステップS2で元画像を第1領域と第2領域に分割する処理を行うCPU11が、本発明の「第1分割手段」に相当する。ステップS3で第1データ作成処理を行うCPU11が、「第1データ作成手段」に相当し、ステップS4で第2データ作成処理を行うCPU11が、「第2データ作成手段」に相当し、ステップS5で刺繍データ作成処理を行うCPU11が、「刺繍データ作成手段」に相当する。図5のステップS12で、分割数mを決定するCPU11が、「色数決定手段」に相当する。ステップS13で、第1領域を色別領域に分割するCPU11が、「第2分割手段」に相当する。ステップS15で代表角度を算出するCPU11が、「代表角度算出手段」に相当する。ステップS16で第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。ステップS21で第1線分色を決定するCPU11が、「第1線分色決定手段」に相当する。ステップS22で第1線分を接続するCPU11が、「第1線分接続手段」に相当する。
【0065】
図6のステップS42で第2線分を配置するCPU11が、「第2線分配置手段」に相当する。ステップS43で第2線分色を決定するCPU11が、「第2線分色決定手段」に相当する。ステップS44で第2線分を接続するCPU11が、「第2線分接続手段」に相当する。
【0066】
<第2実施形態>
以下に、図12〜図22を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態および後述する第3〜第5実施形態に係る刺繍データ作成装置1およびミシン3の構成は、第1実施形態と同一であるため、以下ではその説明は省略する。第2実施形態の刺繍データ作成装置における刺繍データ作成処理は、図4〜図6に示す第1実施形態の処理とは第1データ作成処理(図4のS3、図5)の内容において異なるのみである。したがって、以下では、第1実施形態の処理と同一部分については同一のステップ番号を付して説明を省略または簡略化し、第1実施形態とは異なる第1データ作成処理の詳細について説明する。
【0067】
第1実施形態の刺繍データ作成処理では、色別領域毎に独立して第1線分が配置され、第1線分色が決定されているが、第2実施形態の刺繍データ作成処理では、隣接する複数の色別領域の関係が所定の条件を満たす場合、第1線分に対応する第1縫目の刺繍縫製に使用される糸色の決定が、これらの色別領域全体で、第1縫目をなるべく少ない糸色で縫製することを優先して行われるのが特徴である。ここでいう所定の条件とは、隣接する色別領域の代表角度が同一であり、且つ、いずれか一方の色別領域の代表角度の法線方向に他方の色別領域が隣接していることである。以下では、所定の条件を満たす隣接する複数の色別領域を、それぞれ、接続可能領域という。
【0068】
上記の処理を行うため、図12に示すように、第2実施形態に係る第1データ作成処理では、第1線分を配置する処理(S14〜S17)と、第1線分色を決定する処理(S21)との間に、領域接続処理(S18)および糸色決定処理(S19)が行われる。領域接続処理は、隣接する複数の色別領域の関係が所定の条件を満たす場合に、これらの色別領域を接続可能領域として設定する処理である。糸色決定処理は、ユーザがミシン3で使用するために準備した糸色(以下、準備糸色という)から、各色別領域で使用可能な糸色(以下、使用可能糸色という)を決定し、使用可能な糸色から、なるべく色数が少なくなるように、実際に使用する糸色を決定する処理である。以下、図13〜図18を参照して、領域接続処理(S18)と糸色決定処理(S19)の詳細について、順に説明する。
【0069】
図13に示すように、領域接続処理では、まず、処理対象の色別領域である注目領域iが設定される(S101)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目領域として、番号1が付された色別領域が設定される。続いて、注目領域iの比較対象とされる色別領域である比較領域jが設定される(S102)。jは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、比較領域として、番号1が付された色別領域が設定される。
【0070】
このとき、RAM12には、注目領域iと比較領域jの比較結果を記憶するために、例えば、行が注目領域i、列が比較領域jに対応するm行m列のマトリクスが用意される。全要素の初期値はゼロとされ、比較領域jは注目領域iの接続可能領域ではないことを示す。後述するステップS103〜S107の判断処理の結果、比較領域jを注目領域iの接続可能領域に設定することが決定されると、行i、列jに対応する要素の値が1に更新される。
【0071】
注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みであるか否かが判断される(S103)。具体的には、前述のマトリクスが参照され、行j、列iに対応する要素が1であれば、注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みと判断される(S103:YES)。この場合、注目領域iと比較領域jとは接続可能な関係であると決定されているので、マトリクスの行i、列jに対応する要素が1に更新され、比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。一方、行j、列iに対応する要素が0であれば、注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みではない(S103:NO)。この場合、iとjとが同じ値か否かが判断される(S104)。iとjが同じ値であれば(S104:YES)、注目領域iと比較領域jとは同じ色別領域なので、比較はできない。よって、処理はそのままステップS109に進む。
【0072】
iとjが同じ値ではなく(S104:NO)、注目領域iと比較領域jとは異なる色別領域の場合、ステップS15で算出された色別領域の代表角度が参照され、注目領域iの代表角度θiと、比較領域jの代表角度θjとが同一か否かが判断される(S105)。2つの代表角度が同一でなければ(S105:NO)、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たさないので、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値はゼロのままで、処理はステップS109に進む。2つの代表角度が同一であれば(S105:YES)、比較領域jは、注目領域iの代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接しているか否かが判断される(S107)。
【0073】
ステップS107では、例えば、以下の方法で判断が行われればよい。まず、注目領域i内の画素の1つを注目画素とし、注目画素から代表角度θiの法線方向(θi±90度の方向)に順に画素を辿る。辿った先に、比較領域jに含まれる画素が存在すれば、比較領域jは、代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接していると判断される(S107:YES)。この場合、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たす。よって、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値が1に更新されることにより、比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。
【0074】
一方、注目画素から代表角度θiの法線方向に画素を辿っても、その先に比較領域jに含まれる画素が存在しなければ、注目画素を変更し、同様の処理を繰り返す。注目領域i内の全ての画素について処理を行っても比較領域jに含まれる画素に辿り着かない場合は、比較領域jは、代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接していないと判断される(S107:NO)。この場合、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たさないので、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値はゼロのままで、処理はステップS109に進む。
【0075】
ステップS108で比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定された後、または、ステップS104、S105、またはS107で、否定判定がされた後、注目領域iに対する全ての比較領域jの比較処理が完了したか否かが判断される(S109)。変数jの値が色別領域の数(分割数)mに達していなければ、全ての比較領域jの処理が完了していないので(S109:NO)、処理はステップS102に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の比較領域jに設定され、前述と同様の処理が行われる。
【0076】
変数jの値がmに達し、全ての比較領域jの比較処理が完了した場合(S109:YES)。全ての注目領域iについて処理が完了したか否かが判断される(S110)。変数iの値が色別領域の数(分割数)mに達していなければ、全ての注目領域iの処理が完了していないので(S110:NO)、処理はステップS101に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数iの値がmに達し、全ての比較領域jの比較処理が完了した場合(S110:YES)、図13に示す領域接続処理は完了し、処理は図12に示す第1データ作成処理に戻る。
【0077】
図12に示すように、領域接続処理に続いて糸色決定処理が行われる(S19、図14)。図14に示すように、糸色決定処理では、まず、使用可能糸色を設定するための閾値r1が設定される(S121)。本実施形態では、閾値r1は、RGB空間における距離により特定される。閾値r1は、予め定められ、設定値記憶エリア154に記憶された値が使用されてもよいし、ユーザによって入力された値が使用されてもよい。
【0078】
ユーザがミシン3で使用するために準備したn色の糸について、各々の糸の色である準備糸色Tが特定される(S122)。本実施形態では、n色の準備糸色T1〜Tnとして、(Rt1、Gt1、Bt1)〜(Rtn、Gtn、Btn)のn個のRGB値が特定される。さらに、n色の準備糸色Tのうち異なる2色(TxおよびTyとする)の混色Mが特定される(S123)。この場合、混色Mの色数は、全部でnC2色、つまり、n!/(n−2)!2!色となる。本実施形態では、混色M1〜MnC2として、(Rm1、Gm1、Bm1)〜(RmnC2、GmnC2、BmnC2)のnC2個のRGB値が特定される。
【0079】
例えば、準備糸色T1とT2との混色M1のRGB値を(Rm1、Gm1、Bm1)とすると、Rm1、Gm1、Bm1は、それぞれ以下のように算出することができる。
Rm1=|Rt1+Rt2|÷2
Gm1=|Gt1+Gt2|÷2
Bm1=|Bt1+Bt2|÷2
同様にして、混色M1〜MnC2の全てのRGB値が求められる。
【0080】
続いて、色別領域毎に使用可能糸色を決定する使用可能糸色決定処理が行われる(S124、図15)。図15に示すように、使用可能糸色決定処理では、まず、注目領域iが設定される(S201)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。注目領域iの代表色Aiが取得される(S202)。代表色は、第1実施形態で前述したように、第1領域を色別領域に分割する処理(図12のステップS15)で決定され、RAM12に記憶されている。準備糸色Tおよび混色Mと代表色AiとのRGB空間における距離の最小値を特定するための変数rdminが無限大に設定され、距離が最小となる1つの糸色または2つの糸色の組合せを特定するための変数Tminが−1に設定される(S203)。続いて、準備糸色Tの各々について、代表色AiとのRGB空間における距離が閾値r1より短い場合は使用可能糸色に設定する単色判断処理が行われる(S204、図16)。
【0081】
図16に示すように、単色判断処理では、まず、処理対象の準備糸色が、注目糸色Tjとして設定される(S301)。jは、1からnまで準備糸色Tを順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目糸色として、番号1が付された準備糸色T1が設定される。注目領域iの代表色Aiと注目糸色TjとのRGB空間での距離rdijが算出される(S302)。具体的には、注目糸色TjのRGB値を(Rtj、Gtj、Btj)、代表色AiのRGB値を(Rai、Gai、Bai)とした場合、距離rdijは、以下の式で求められる。
rdij=√{(Rtj−Rai)2+(Gtj−Gai)2+(Btj−Bai)2}
【0082】
算出された距離rdijが、変数rdminよりも小さいか否かが判断される(S303)。距離rdijが変数rdminよりも小さければ(S303:YES)、変数rdminが距離rdijで更新され、変数Tminが注目糸色Tj、すなわち、準備糸色Tjで更新される(S304)。処理はステップS305に進む。距離rdijが変数rdmin以上の場合(S303:NO)、処理はそのままステップS305に進む。距離rdijが閾値r1よりも小さいか否かが判断される(S305)。距離rdijが閾値r1よりも小さい場合(305:YES)、注目糸色Tj(準備糸色Tj)と代表色Aiとはある程度似た範囲内にあるので、注目糸色Tj(準備糸色Tj)が注目領域iの使用可能糸色として設定され、注目領域iと対応づけてRAM12に記憶される(S306)。処理はステップS307に進む。
【0083】
距離rdijが閾値r1以上の場合(305:NO)、注目糸色Tjと代表色Aiとはそれほど似た色ではない。よって、注目糸色Tjは使用可能糸色とはされずに、処理はステップS307に進む。全ての準備糸色Tに対する処理が完了したか否かが判断される(S307)。変数jの値が準備糸色Tの数nに達していなければ、処理が完了していないので(S307:NO)、処理はステップS301に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された準備糸色Tが次の注目糸色Tjに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数jの値がnに達し、全ての準備糸色Tの処理が完了すると(S307:YES)、図16に示す単色判断処理は終了し、図15の使用可能糸色決定処理に戻る。
【0084】
図15に示すように、単色判断処理(S204)に続いて、準備糸色TxとTyとの混色Mの各々について、代表色AiとのRGB空間における距離が閾値r1より短い場合は使用可能糸色に設定する混色判断処理が行われる(S205、図17)。図17に示すように、混色判断処理では、まず、処理対象の混色Mが、注目糸色Tjとして設定される(S311)。jは、1からnC2まで混色Mを順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目糸色Tjとして、番号1が付された混色M1が設定される。注目領域iの代表色Aiと混色MjとのRGB空間での距離rdijが算出される(S312)。算出方法は、単色判断処理のステップS302で用いる方法と同じである。
【0085】
算出された距離rdijが、変数rdminよりも小さいか否かが判断される(S313)。距離rdijが変数rdminよりも小さければ(S313:YES)、変数rdminが距離rdijで更新され、変数Tminが注目糸色Tj、すなわち、混色Mjを表現するための2色の準備糸色TxおよびTyで更新される(S314)。処理はステップS315に進む。距離rdijが変数rdmin以上の場合(S313:NO)、処理はそのままステップS315に進む。距離rdijが閾値r1よりも小さいか否かが判断される(S315)。距離rdijが閾値r1よりも小さい場合(315:YES)、注目糸色Tj(混色Mj)と代表色Aiとはある程度似た範囲内にあるので、注目糸色Tj(混色Mj)を表現するための2色の準備糸色TxおよびTyが注目領域iの使用可能糸色として設定され、注目領域iと対応づけてRAM12に記憶される(S316)。処理はステップS317に進む。
【0086】
距離rdijが閾値r1以上の場合(315:NO)、注目糸色Tjと代表色Aiとはそれほど似た色ではない。よって、注目糸色Tjは使用可能糸色とはされずに、処理はステップS317に進む。全ての混色Mに対する処理が完了したか否かが判断される(S317)。変数jの値が混色Mの数nC2に達していなければ、処理が完了していないので(S317:NO)、処理はステップS311に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された混色Mが次の注目糸色Tjに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数jの値がnC2に達し、全ての混色Mの処理が完了すると(S317:YES)、処理はステップS208に進む。
【0087】
図15に示すように、使用可能糸決定処理では、続いて、単色判断処理および混色判断処理で設定された使用可能糸色があるか否かが判断される(S206)。単色判断処理で設定された使用可能糸色は、それだけで、注目領域iの代表色Aiにある程度似た色を表現できる1つの色であり、混色判断処理で設定された使用可能糸色は、混色することで、注目領域iの代表色Aiにある程度似た色を表現できる2つの色の組合せである。設定された使用可能糸色があれば(S206:YES)、使用可能糸色決定処理は終了し、処理は図14に示す糸色決定処理に戻る。
【0088】
設定された使用可能糸色がない場合(S206:NO)、そのままでは注目領域iで使用可能な糸色がないことになり不都合であるから、変数Tminとして記憶されている糸色が使用可能糸色として設定され、RAM12に記憶される(S207)。糸色Tminは、距離rdijが閾値r1以上で最小となる場合の準備糸色T、または混色Mに対応する、1つの準備糸色Tjまたは2つの準備糸色TxおよびTyの組合せである。全ての色別領域について、使用可能色の設定が完了したか否かが判断される(S208)。変数iが色別領域の数mに達しておらず、未処理の色別領域があれば(S208:NO)、処理はステップS201に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数iの値がmに達し、全ての色別領域の処理が完了すると(S208:YES)、使用可能糸色決定処理は終了し、処理は図14に示す糸色決定処理に戻る。
【0089】
図14に示すように、使用可能糸色決定処理(S124)に続いて、使用頻度に基づき、設定された使用可能糸色から実際の刺繍縫製に使用される糸色である使用糸色を決定する使用糸色決定処理が行われる(S125、図18)。図18に示すように、使用糸色決定処理では、まず、使用可能糸色決定処理(図15参照)で設定された全使用可能糸色の使用頻度fが初期値のゼロに設定され、RAM12に記憶される(S251)。また、全ての色別領域について、使用頻度と使用糸色を調査済みか否かを示す調査フラグが、未調査を示す値FALSEに設定され、RAM12に記憶される。続いて、注目領域iが設定される(S252)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。
【0090】
注目領域iがすでに使用頻度の調査済みとされているか否かが判断される(S253)。注目領域iに対応する調査フラグがFALSEであれば、注目領域iは調査済みではないと判断される(S253:NO)。領域接続処理(図13参照)で作成されRAM12に記憶されているマトリクスが参照され、他の色別領域が注目領域iに対する接続可能領域として設定されていれば、注目領域iとその接続可能領域の全てが接続可能領域群とされる。この場合、接続可能領域群が1つの調査対象グループとして特定されて番号が付され、グループ中の各色別領域の調査フラグが、調査済みを示すTRUEに更新される(S254)。なお、注目領域i(例えば、色別領域1)の接続可能領域として別の色別領域(例えば、色別領域2)が設定されており、その色別領域にさらに別の色別領域(例えば、色別領域3)が接続可能領域として設定されているような場合、これら3つの色別領域が接続可能領域群とされ、1つの調査対象グループとなる。
【0091】
調査対象グループ中の色別領域を順に調査対象領域jとして設定し、使用頻度を決定する処理が行われる(S255〜S257)。まず、調査対象グループ中の色別領域の1つが調査対象領域jとして設定される(S255)。jは、調査対象グループ中の色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定され、1から調査対象グループ中の色別領域の数までカウントする。調査対象領域jに対応して設定された使用可能糸色の使用頻度fに1が加算される(S256)。続いて、調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S257)。変数jが調査対象グループ中の色別領域の数に達しておらず、未処理の色別領域があれば(S257:NO)、処理はステップS255に戻る。変数jに1が加算され、次の色別領域が調査対象領域jに設定され、同様の処理が繰り返される。
【0092】
調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了すると(S257:YES)、全ての使用可能糸色が、使用頻度fでソートされる(S258)。全ての使用可能糸色について、実際に使用する使用糸色とするか否かを示す使用フラグが、使用しないことを示す初期値のFALSEに設定される(S259)。使用可能糸色のうち、ソート順がkの使用可能糸色が選択され、使用フラグが、使用することを示すTRUEに更新される(S260)。つまり、使用糸色として設定される。kは、使用可能糸色を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定され、1から使用可能糸色の数までカウントする。
【0093】
変数jが初期値の1とされることで調査対象領域jが初期化され(S261)、再び調査対象グループ中で1番目の色別領域が、調査対象領域jとして設定される(S262)。使用フラグがTRUEとされている使用糸色で、調査対象領域jの代表色Aiを表現可能か否かが判断される(S263)。最初の処理では使用糸色は1色である。前述の使用可能糸色決定処理(図15参照)において、注目領域iに対して1色または2色の使用可能糸色が設定され、RAM12に記憶されている。よって、注目領域iの使用可能糸色の1色が使用糸色と一致すれば、代表色iは、使用糸色で表現可能と判断される(S263:YES)。調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S264)。未処理の色別領域があれば(S264:NO)、処理はステップS262に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が調査対象領域jとされる、同様にその後の処理が行われる。
【0094】
一方、使用糸色が1色で、その色が注目領域iの使用可能糸色としてRAM12に記憶されていない場合、代表色iは、使用糸色1色では表現できない(S263:NO)。この場合、処理はステップS260に戻り、変数kに1が加算され、ソート順が次の使用可能糸色が選択され、使用糸色に設定される。つまり、調査対象領域がすでに使用糸色として決定された色だけでは表現できない場合、使用頻度の高い使用可能糸色から順に使用糸色が増やされていく。そして、設定された複数の使用糸色のうち1色または2色で、調査対象領域jの代表色Aiは表現可能か否かが判断される(S263)。注目領域iに対して設定された1色または2色の使用可能糸色のうち1色が使用糸色の1色と一致する場合、または、注目領域iの使用可能糸色2色が使用糸色のうち2色と一致する場合、代表色iは、使用糸色で表現可能と判断される(S263:YES)。
【0095】
このようにして、使用可能糸色が使用頻度の高い順に使用糸色として追加され、全ての調査対象領域が表現可能な数の使用糸色が設定されると(S264:YES)、RAM12に記憶されている調査フラグが参照され、全ての色別領域について調査フラグがTRUEとされ、調査が完了しているか否かが判断される(S265)。未調査の色別領域がある場合(S265:NO)、処理はステップS251に戻り、再び全ての使用可能糸色の使用頻度fがゼロに初期化される。そして、変数iに1が加算され、次の番号の色別領域が注目領域iとして設定される(S252)。前述のように、すでに注目領域iとされた色別領域およびその接続可能領域は、調査フラグがTRUEとされ、調査済みであるから(S253:YES)、処理はそのままステップS265に進む。注目領域iが未調査の色別領域であれば(S253:NO)、前述と同様の処理が行われる。
【0096】
処理の結果、全ての色別領域について調査フラグがTRUEとされ、調査が完了すると(S265:YES)、使用糸色決定処理は終了し、図14の糸色決定処理に戻る。図14に示すように、使用糸色決定処理(S125)の後、糸色決定処理は終了し、処理は図12に示す第1データ作成処理に戻る。図12に示すように、続いて、第1線分色決定処理が行われる(S21)。第1実施形態では、同じ色別領域に配置された全ての第1線分に、その色別領域の代表色に最も近い色が一律で第1線分色として決定された。第2実施形態では、第1線分の各々について、色別領域の代表色Aiに基づいて前述のように決定された複数の使用糸色から、元の画像の色を反映した1色が選択され、第1線分色として決定される。
【0097】
例えば、第1実施形態の第2データ作成処理(図6参照)における第2線分色の決定方法と同じ方法で、第1線分色を決定すればよい。つまり、特開2001−259268に詳述されている方法に従って、第1領域を構成する複数の画素を順に注目画素として、元画像の参照領域内の色の平均値と、注目画素を中心とする参照領域と同じサイズの領域に配置された線分に対してすでに決定された色の平均値が等しくなるように、注目画素に対応する第1線分の色が決定されればよい。つまり、元画像の色とすでに決定された線分の色とに基づいて、第1線分の各々の色が決定される。第1線分色が決定された後、第1実施形態と同じ方法で、第1線分色毎に第1線分が接続され(S22)、第1データ作成処理は終了する。
【0098】
ここで、以上に説明した第2実施形態における第1データ作成処理(図12〜図18)の具体例について、図19〜図22も参照して説明する。この具体例では、図12に示す第1データ作成処理のステップS12〜S13において、図19に示すように、第1領域R1が、分割数m=3に基づいて色別領域1〜3(以下、単に領域1〜3という)に分割されたものとする。領域1〜3の代表色(RGB値)は、それぞれ赤(255,0,0)、紫(128,0,128)、青(0,0,255)、である。さらに、ステップS14〜S17において、領域1〜3の代表角度が、それぞれ90度、90度、90度として算出され、図20に示すように、領域1〜3の各々に、90度の方向に互いに平行に伸び、各領域の境界線上に両端点を有する第1線分が等間隔で配置されたものとする。配置された線分には、図中左側から順番が付与される。
【0099】
第1データ作成処理におけるその後の処理(図12のS18〜S22)は、具体的には以下のようになる。領域接続処理(S18および図13)では、領域1が注目領域の場合、領域1は、領域2と代表角度が90度で同一であり(図13のS105:YES)、その法線方向0度の方向で領域2と隣接している(S107:YES)。よって、領域2は、領域1の接続可能領域として設定される(S108)。領域1は、領域3とも代表角度は90度で同一であるが(S105:YES)、領域3とは隣接していないので(S107:NO)、領域3は領域1の接続可能領域とはされない。
【0100】
領域2が注目領域の場合、領域2はすでに領域1の接続可能領域として設定されているので(S103:YES)、領域1は領域2の接続可能領域に設定される(S108)。領域2は、領域3と代表角度が90度で同一であり(S105:YES)、その法線方向0度の方向で領域3と隣接している(S107:YES)。よって、領域3は、領域2の接続可能領域として設定される(S108)。領域3が注目領域の場合、領域3は、領域1とは隣接していないので(S107:NO)、領域1は領域3の接続可能領域とはされない。領域3は、領域2の接続可能領域として設定されているので(S103:YES)、領域2は、領域3の接続可能領域に設定され(S108)、領域接続処理は終了する。
【0101】
ユーザがミシン3で使用するために準備した準備糸色は、赤(255,0,0)、紫(128,0,128)、青(0,0,255)、黄(255,255,0)の4色であるものとする。糸色決定処理(S19)では、図14に示すように、閾値r1として、例えば16が設定された後(S121)、前述の4色の準備糸色の各々のRGB値と、4色のうち異なる2色の混色4C2色、つまり6色の混色の各々のRGB値が特定される(S122、S123)。
【0102】
続く使用可能糸色決定処理(図14のS124)では、領域1が注目領域の場合、領域1の代表色の赤(255,0,0)と準備糸色の赤(255,0,0)の距離はゼロであるため、単色判断処理(図15のS204、図16)で、赤が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域1の代表色の赤との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理(図15のS205、図17)では、6色の混色は、いずれも領域1の代表色の赤との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域1の使用可能糸色として、赤1色が設定される。
【0103】
領域2が注目領域の場合、領域2の代表色の紫(128,0,128)と準備糸色の紫(128,0,128)の距離はゼロであるから、単色判断処理で、紫が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域2の代表色の紫との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理では、6色の混色のうち、赤(255,0,0)と青(0,0,255)の混色と領域2の代表色の紫との距離は、閾値r1より小さい。よって、赤と青の準備糸色が、使用可能糸色とされる。他の5色の混色は、いずれも領域2の代表色の紫との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域2の使用可能糸色として、単色の紫と、混色の元である赤と青の3色が設定される。
【0104】
領域3が注目領域の場合、領域3の代表色の青(0,0,255)と準備糸色の青(0,0,255)の距離はゼロであるから、単色判断処理で、青が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域3の代表色の青との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理では、6色の混色は、いずれも領域3の代表色の青との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域3の使用可能糸色として、青1色が設定される。
【0105】
続く使用糸色決定処理(図14のS125)では、領域1〜3に設定された全ての使用可能糸色、つまり、赤、紫、青の3色の使用頻度fに基づき、使用糸色が決定される。領域1が注目領域とされると、領域1の接続可能領域として領域2が設定されており、さらに、領域2の接続可能領域として領域3が設定されているので、領域1〜3が接続可能領域群として特定され、調査対象グループとされる(図18のS254)。領域1〜3を順に調査対象領域として、使用可能糸の使用頻度が算出されると、赤の使用頻度として2、紫の使用頻度として1、青の使用頻度として2が得られる(S255〜S257)。3色の使用可能糸色を使用頻度でソートすると、赤(2)、青(2)、紫(1)の順になる(S258)。
【0106】
まず、ソート順が1番目の使用可能糸色である赤が使用糸色とされる。赤は領域1の使用可能糸色として設定されているので、領域1の代表色である赤を表現可能である。赤は、青との組合せで領域2の使用可能糸色として設定されており、赤だけでは領域2の代表色である紫を表現できない。よって、ソート順が2番目の使用可能糸色である青が、さらに使用糸色とされる。つまり、使用糸色は、赤と青の2色となる。その結果、これら2色の混色により、領域2の代表色の紫を表現できる。さらに、領域3の代表色の青も、使用糸色の青1色で表現可能である(S260〜S264)。したがって、赤、紫、青の3色の領域1〜3に対して、赤、紫、青の3色の使用可能糸色のうち、赤と青の2色が使用糸色として決定され、糸色決定処理は終了する。
【0107】
その後、前述のように、元画像の色とすでに決定された第1線分色を参照して、各第1線分について、使用糸色である赤と青の2色のうちいずれかが第1線分色として決定される(図12のS21)。領域1に対応する元画像の色は赤に近いので、図21に示すように、領域1に配置された第1線分については、最初の第1線分(最も左の線分)の第1線分色は赤(図中、実線で示す)とされる。領域1に配置された残りの第1線分は、元画像の赤に近い色と、すでに決定された第1線分色の赤が参照されるので、赤が第1線分色とされる。領域2に対応する元画像の色は紫に近いので、元画像の色とすでに決定された第1線分の色を参照して、例えば図21に示すように、交互に赤と青(図中、点線で示す)が第1線分色とされる。領域3に対応する元画像の色は青に近いので、領域3に配置された第1線分については、元画像の色とすでに決定された第1線分の色を参照して、青が第1線分色とされる。
【0108】
このように決定された第1線分色毎に第1線分が接続されると(図12のS22)、図22に示すように、領域1から領域2にかけて、赤の第1線分が配置時に付与された順番が早い方から接続され、領域2から領域3にかけて、青の第1線分が配置時に付与された順番が早い方から接続される。つまり、領域1と領域2、領域2と領域3のように、接続可能領域群として特定された複数の色別領域内で、連続的に第1線分の接続をコントロールすることができる。
【0109】
以上に説明したように、第2実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度を有する複数の色別領域が、代表角度の法線方向に互いに隣接している場合、これらがまとめて接続可能領域群として扱われる。そして、領域群中の色別領域の代表色に応じて決定された使用可能糸色の各々が、領域群中で使用されうる頻度に基づいて、領域群全体の色を表現可能な最小数の使用可能糸色が、実際に使用される使用糸色として決定される。
【0110】
したがって、例えば、前述の具体例のように、接続可能領域群中の3つの色別領域のうち1つを混色表現することで、3つの色別領域を含む領域群全体を2つの使用可能糸色で表現できる場合、実際に使用される糸色は二色となる。このように、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるので、元画像に対応する刺繍模様をなるべく少ない数の糸で表現することができる。また、接続可能領域群に含まれる色別領域の代表角度はすべて同じであるから、領域群内に配置される第1線分はすべて互いに平行となる。その結果、第1線分色毎に線分を接続する際、広い範囲で接続をコントロールできるため、結果として最終的に形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。
【0111】
第2実施形態では、図12の第1データ作成処理を行うCPU11が、「第1データ作成手段」に相当する。ステップS18および図13に示す領域接続処理を行うCPU11が、「領域群設定手段」に相当する。糸色決定処理(S19および図14)において、図14のステップS124および図15に示す使用可能糸色決定処理を行うCPU11が、「第1決定手段」に相当し、図14のステップS125および図18に示す使用糸色決定処理を行うCPU11が、「第2決定手段」に相当し、図12のステップS22で第1線分色を決定する処理を行うCPU11が、「第3決定手段」に相当する。
【0112】
<第3実施形態>
第2実施形態の第1データ作成処理(図12参照)では、色別領域毎に第1線分が配置されている(S16)。この処理に従えば、前述の具体例の図20〜図22に示すように、互いに接続可能とされた複数の色別領域間の境界線が代表角度に平行な場合、境界線に干渉されることなく、第1線分を複数の色別領域にまたがって接続することができる。一方、例えば、図23に示すように、互いに接続可能な2つの領域1と領域2の代表角度は共に45度であり、その間の境界線Lは90度方向に伸び、代表角度45度には平行でない場合、境界線L上に、領域1に配置された第1線分の端点および領域2に配置された第1線分の端点が設定されることになる。この場合、例えば、領域1の右下角や領域2の左上角の第1線分が短くなりすぎ、第1縫目を形成するのが困難な場合が生じうる。
【0113】
そこで、第3実施形態では、色別領域毎に第1線分を配置するのではなく、互いに接続可能とされた複数の色別領域を1つの色別領域と同様に扱って第1線分を配置する処理が行われる。以下、図24および図25を参照して、第3実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第3実施形態の第1データ作成処理は、図12および図13を参照して説明した第2実施形態の第1データ作成処理および領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0114】
図24に示すように、第3実施形態では、第2実施形態で色別領域毎に行われた第1線分配置処理(図12のS16)は行われない。その代わり、図25に示すように、全ての色別領域について、所定の条件を満たす色別領域を接続可能領域として設定する処理が行われた後(S101〜S110)、色別領域および接続可能領域群毎に第1線分を配置する処理が行われる(S115)。具体的には、RAM12に記憶されているマトリクスが参照され、接続可能領域が設定されていない色別領域については、前述の第2実施形態と同様、その色別領域に第1線分が配置される。また、接続可能領域が設定されている色別領域については、接続可能な全ての色別領域、つまり、接続可能領域群を1つの色別領域とみなして第1線分が配置される。
【0115】
したがって、例えば、図26に示すように、領域1と領域2の間の境界線に第1線分の端点が設定されることがないので、領域1と領域2のいずれかの角に短すぎる第1線分が配置されるのを防止できる。このように、第3実施形態の第1データ作成処理によれば、接続可能領域群を1つの色別領域とみなして第1線分を配置することで、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性を低減できる。
【0116】
第3実施形態では、図25のステップS101〜S110で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS115において第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0117】
<第4実施形態>
第3実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、代表角度が同一の他の色別領域が隣接している場合のみ、これらの色別領域が接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱われている。つまり、ある色別領域の代表角度の法線方向に、代表角度が近い他の色別領域が隣接していても、これらの色別領域は、接続可能領域群とはされない。その結果、これらの色別領域の境界線近くの第1線分が短くなりすぎる可能性がある。
【0118】
そこで、第4実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、その色別領域の代表角度と同一ではないが所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域を接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱い、第1線分を配置する処理が行われる。以下、図27を参照して、第4実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第4実施形態の第1データ作成処理は、図25を参照して説明した第3実施形態の領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0119】
図25に示す第3実施形態の処理では、注目領域iの代表角度θiと比較領域jの代表角度θjとが同一か否かが判断される(S105)のに対し、図27に示すように、第4実施形態では、代表角度θjが代表角度θiから所定の範囲内にあるか否かが判断される(S106)。具体的には、代表角度θiと代表角度θjとの差が、所定の閾値(例えば、5度)以下であるか否かが判断される。所定の閾値は、予め設定され、HDD15の設定値記憶エリア154に記憶された値が使用されてもよいし、ユーザによって入力された値が使用されてもよい。そして、代表角度の差が閾値より大きければ(S106:NO)、比較領域jは注目領域iの接続可能領域として設定されないが、閾値以下の場合には(S106:YES)、代表角度θiの法線方向に隣接する比較領域jは、注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。
【0120】
全ての色別領域を注目領域として、接続可能領域を設定する処理が完了すると(S110:YES)、設定された接続可能領域群毎に、接続可能領域群内で第1線分を配置する角度(以下、第1線分配置角度という)が設定される(S112)。具体的には、RAM12に記憶されているマトリクスが参照され、接続可能領域群が特定され、そこに含まれる複数の色別領域の代表角度に基づいて、第1線分配置角度が設定される。これらの色別領域の代表角度が同一であれば、その角度が第1線分配置角度とされる。代表角度が異なる場合は、例えば、これらの色別領域の代表角度の平均値を第1線分配置角度としてもよい。または、これらの色別領域のうち、最も多くの画素を含む(最も面積が広い)色別領域の代表角度を、第1線分配置角度としてもよい。なお、ステップS101〜S110の処理で、接続可能領域がまったく設定されなかった場合は、ステップS112の処理は省略されればよい。
【0121】
続いて、第3実施形態と同様、色別領域および接続可能領域群毎に第1線分を配置する処理が行われる(S115)。よって、接続可能領域群として設定された、代表角度の法線方向に互いに隣接し、同一ではないが近似した代表角度を有する複数の色別領域についても、1つの色別領域とみなして第1線分を配置する処理が行われる。第1線分が配置された後、領域接続処理は終了する。続く糸色決定処理で、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるように使用糸色が決定された後、元画像の色を参照して第1線分色が決定され、第1線分色毎に第1線分が接続される(図24のS19、S21、S22)。
【0122】
第4実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域を1つの色別領域とみなし、これらの代表角度に基づいて設定される第1線分配置角度に従って第1線分が配置される。したがって、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性をさらに低減できる。また、接続可能領域を設定する条件を緩和して、より多くの色別領域を接続可能領域群とすることで、領域接続処理の後に行われる処理において、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0123】
第4実施形態では、図27のステップS101〜S110で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS115において第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0124】
<第5実施形態>
第4実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、その色別領域の代表角度と同一ではないが所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域が接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱われる。第5実施形態では、このような場合、隣接する色別領域の間に中間領域を設定し、中間領域も含めて接続領域群として第1線分を配置する処理が行われる。以下、図28を参照して、第5実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第5実施形態の第1データ作成処理は、図27を参照して説明した第4実施形態の領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0125】
図28に示すように、第5実施形態でも、代表角度θiと代表角度θjとの差が、所定の閾値(例えば、5度)以下の場合には(S106:YES)、代表角度θiの法線方向に隣接する比較領域jは、注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。全ての色別領域を注目領域として、接続可能領域を設定する処理が完了すると(S110:YES)、接続可能領域群中の隣接する2つの色別領域の代表角度が異なる場合には、2つの色別領域の間に中間領域を設定する処理が行われる(S113)。互いに接続可能な2つの色別領域が領域1と領域2、それぞれの代表角度がθ1とθ2である場合、中間領域1−2は、角度θ1の直線と角度θ2の直線を境界線として有し、θ1とθ2の間にある角度を代表角度とする領域として設定される。
【0126】
領域2が領域1の代表角度θ1の法線方向である(θ1−90)度方向に隣接しているとすると、中間領域1−2は、例えば次のような方法で設定することができる。まず、領域1の任意の画素を通る角度θ1の仮想線L1を引く。L1が領域2を通過する場合、L1を、(θ1−90+180)度方向に1画素分ずらす。L1が領域2を通過しなくなるまで、同じ処理を繰り返す。領域2を通過しなくなった時点のL1が、領域1と中間領域1−2との境界線として設定される。一方、仮想線L1が、領域2を通過しない場合は、L1を(θ1−90)度方向に1画素分ずらす。領域2を通過するまで、同じ処理を繰り返す。領域2を通過するようになる直前の、領域2を通過しないL1が、領域1と中間領域1−2との境界線として設定される。
【0127】
同様に、領域2の任意の画素を通る角度θ2の仮想線L2を引く。L2が領域1を通過する場合、L1を、(θ2+90−180)度方向に1画素分ずらす。L2が領域1を通過しなくなるまで、同じ処理を繰り返す。領域1を通過しなくなった時点のL2が、領域2と中間領域1−2との境界線として設定される。一方、仮想線L2が、領域1を通過しない場合は、L2を(θ1+90)度方向に1画素分ずらす。領域1を通過するまで、同じ処理を繰り返す。領域1を通過するようになる直前の、領域1を通過しないL2が、領域2と中間領域1−2との境界線として設定される。このように、領域1および領域2のうち、L1とL2で区切られた領域が、中間領域1−2として設定される。中間領域1−2の代表角度θMは、例えば、領域1の代表角度θ1と領域2の代表角度θ2の方向にそれぞれ同じ大きさのベクトルがあると考え、これら2つのベクトルの和のなす角とすればよい。
【0128】
このようにして中間領域1−2が設定されると、領域1、中間領域1−2、領域2の3つの領域が、接続可能領域群として設定される(S114)。例えば、注目領域iと比較領域jのマトリクスに中間領域1−2を示す行と列を追加し、中間領域1−2を、領域1と領域2に該当する色別領域の接続可能領域として設定すればよい。なお、ステップS101〜S110の処理で、接続可能領域がまったく設定されなかった場合は、ステップS113〜S114の処理は省略されればよい。
【0129】
続いて、色別領域および中間領域に、それぞれの領域の代表角度に従って第1線分が配置される(S116)。例えば、中間領域を含む接続可能領域群である領域1、中間領域1−2、領域2には、それぞれ代表角度θ1、θM、θ2の方向に伸び、各領域の境界線上に端点を有する第1線分が配置される。第1線分が配置された後、領域接続処理は終了する。続く糸色決定処理で、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるように使用糸色が決定された後、元画像の色を参照して第1線分色が決定され、第1線分色毎に第1線分が接続される(図24のS19、S21、S22)。
【0130】
第5実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域の間に、これらの色別領域の代表角度の間にある角度特徴を代表角度として有する中間領域が設定される。そして、中間領域を含む接続可能領域群が設定される。第4実施形態と同様、このように条件を緩和してより多くの色別領域を接続可能領域群とすることで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。また、中間領域の代表角度は、元々隣接していた2つの色別領域の代表角度の中間的な角度であるため、元の画像の角度特徴をより適切に反映した自然な縫目を形成することができる。
【0131】
第5実施形態では、図28のステップS113で中間領域を設定するCPU11が、「中間領域設定手段」に相当し、ステップS101〜S110およびステップS114で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS116で第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0132】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第2領域の第2データの作成方法は、第1データの作成方法と異なっていればよく、実施形態のように、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第1線分を配置する方法に限られない。例えば、第2領域が図形の輪郭線に相当する形状であれば、輪郭線に沿った少なくとも1本の線上を走り縫いやジグザグ縫い等で縫製するための第2データが作成されればよい。また、第2線分の色も、必ずしも、画素毎に元画像の色やすでに決定された第2線分色を参照して決定する必要はない。第2領域は、色の変化の相対的に激しい領域であり、人間が目で見た時にはっきりと認識できる領域の区切り(エッジ)部分であると考えられる。よって、例えば、全ての第2線分について、第2線分色は黒1色に決定してしまってもよい。この場合、より領域の区切りがはっきりした刺繍模様を得ることができる。
【0133】
実施形態では、第2線分が第1線分よりも後で縫製されるように、第1データの後に第2データが結合されているが、必ずしもこの順番で合成される必要はなく、第2データの後に第1データが結合されてもよい。
【0134】
第1実施形態において、第1線分色は、色別領域の色に最も近い色としたが、第2実施形態等と同様、元画像の色とすでに決定された第1線分色を参照して決定する方法を用いてもよい。
【0135】
第2〜第5実施形態で例示した以外に、ある色別領域が、代表角度をもたない別の色別領域に隣接している場合、代表角度をもたない色別領域の代表角度を、隣接する色別領域の代表角度と同一の角度として、これらの色別領域を接続可能領域群としてもよい。また、代表角度をもたない色別領域が、代表角度を持つ複数の色別領域と隣接している場合には、これらのうち、代表角度をもたない色別領域が接している部分が最も大きい色別領域の代表角度を採用すればよい。
【0136】
実施形態では、使用可能糸色を決定する際、単色または2色の混色のみが候補とされたが、3色以上の混色が候補とされてもよい。また、2色の混色については、各色を1対1の割合で混色し、色別領域の代表色を表現することが前提とされているが、例えば、2対3のように使用比率を変更してもよい。この場合、使用比率で重み付けした上で混色のRGB値を算出し、色別領域の代表色を表現することが可能か否かが判断されればよい。
【0137】
実施形態では、各使用可能糸の使用頻度の計算では、色別領域の面積を考慮していないが、面積が異なる場合には、面積比率で重み付けして計算を行ってもよい。さらに、色別領域の代表色と候補の色とのRGB空間での距離を重み付けとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 刺繍データ作成装置
3 ミシン
11 CPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍縫製可能なミシンによって刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、および刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫製可能なミシンによって写真等の画像データに基づく図柄を刺繍縫製するための刺繍データ作成装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている刺繍データ作成装置によれば、イメージスキャナ装置で読み込まれた画像から取得された画像データに基づいて、画像内の各部の角度特徴とその強度が算出され、算出された角度特徴とその強度に従って線分が配置される。角度特徴とは、色の連続性の高い方向を示す情報であり、その強度は、色の変化の大きさを示す情報である。そして、元の画像の色を反映しながら限られた数の糸色で各線分が配色され、同じ色の線分が接続された後、縫目を示すデータに変換されることで、刺繍データが作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−259268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の刺繍データ作成装置では、線分が配置される際、線分の方向が不規則になって刺繍データ作成上の不都合が生じるのを防ぐために、強度が強い角度特徴が優先され、角度特徴の強度が弱い部分には、強い部分の角度特徴が反映される。角度特徴の強度が強い部分というのは、色の変化が激しい部分であり、弱い部分というのは、色の変化が緩やかな部分である。よって、例えば、グラデーションのように、連続的に緩やかに色が変化する部分については、その角度特徴が縫目に反映されず、不自然な縫目が形成されてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、連続的に緩やかに色が変化する部分についても自然な縫目を形成するための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、および刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る刺繍データ作成装置は、複数の画素の集合体である画像の画像データに基づいて、ミシンにより刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置であって、前記画像を構成する周波数成分、または、前記画像中の色の連続性の高い方向を示す情報である角度特徴に基づいて、前記画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分を含む領域、または、前記色の変化の大きさを示す強度が所定値以上の前記角度特徴を有する領域である第2領域と、前記全体領域のうち前記第2領域以外の領域である第1領域とに分割する第1分割手段と、前記第1領域に形成される縫目である第1縫目を示すデータである第1データを作成する第1データ作成手段と、前記第2領域に形成される縫目である第2縫目を示すデータである第2データを、前記第1データとは異なる方法で作成する第2データ作成手段と、前記第1データ作成手段によって作成された前記第1データと前記第2データ作成手段によって作成された前記第2データとを合成して、前記画像を表す刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備え、前記第1データ作成手段は、前記第1領域を色別に分割するための数を決定する色数決定手段と、前記第1領域を構成する複数の画素の色に応じて前記第1領域を決定された前記数の色に減色し、前記第1領域を複数の色別領域に分割する第2分割手段と、前記複数の色別領域の各々の代表的な前記角度特徴である代表角度を算出する代表角度算出手段と、前記複数の色別領域毎に、前記代表角度算出手段によって算出された前記代表角度に従って、前記第1縫目に対応する線分である第1線分を配置する第1線分配置手段と、前記ミシンで使用可能な複数の糸色から、前記第1線分の各々に使用される糸色である第1線分色を決定する第1線分色決定手段と、前記第1線分色決定手段により決定された前記第1線分色毎に前記第1線分を接続して前記第1データを作成する第1線分接続手段とを含むことを特徴とする。
【0007】
所定値以上の周波数成分を含む、または、角度特徴の強度が所定値以上である第2領域は、色の変化が相対的に激しい領域である。一方、第1領域は、第2領域に比べて色の変化が緩やかな領域である。第1領域は、その画素の色に応じて複数の色別領域に分割され、色別領域毎に、代表角度に従って第1線分が配置される。つまり、第1線分は、第2領域の特徴に左右されることなく、各色別領域内で色の連続性が高い方向に配列される。したがって、色別領域毎に、相対的に弱い角度特徴を適切に反映した第1縫目を形成できる。これにより、連続的に緩やかに色が変化する部分についても、自然な風合いの刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成することができる。
【0008】
また、各色別領域内の第1線分はすべて、その色別領域の代表角度に従って互いに平行に配置されるので、第1線分色毎に第1線分を接続して第1縫目を示す第1データを作成することが容易である。その結果、第1データに基づいて形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。
【0009】
前記第1線分色決定手段は、前記第2分割手段によって前記複数の色別領域の各々に付与された前記色に基づいて、前記第1線分色を決定してもよい。この場合、複数の色別領域毎に配置された第1線分に対して、各色別領域の色に基づいて第1線分色が決定され、同じ第1線分色の第1線分が接続される。したがって、元の画像で近い色を有する領域内の第1縫目を同じ糸色で連続して形成することができ、縫製品質を向上させることができる。
【0010】
前記第1データ作成手段は、少なくとも、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に同一の前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを互いに接続可能な領域群として設定する領域群設定手段を更に含んでいてもよい。そして、前記第1線分色決定手段は、前記複数の色別領域の各々について、前記ミシンで使用可能な前記複数の糸色のうち、前記第2分割手段によって付与された前記色を表現するのに使用可能な糸色を、使用可能糸色として決定する第1決定手段と、前記領域群について前記第1決定手段により決定された前記使用可能糸色の各々が前記領域群に使用されうる頻度に基づいて決定される、前記領域群全体の色を表現可能な最小数の前記使用可能糸色と、前記複数の色別領域のうち前記領域群以外の色別領域の色を表現可能な前記使用可能糸色とを、実際に使用される糸色として決定する第2決定手段と、前記画像データに基づいて、前記第1線分の各々の前記第1線分色を、前記第2決定手段により決定された前記実際に使用される前記糸色のうちいずれか1つに決定する第3決定手段とを含んでいてもよい。
【0011】
この場合、同じ代表角度を有する複数の色別領域が、代表角度の法線方向に互いに隣接している場合、これらが接続可能な領域群として扱われる。そして、領域群に対応する使用可能糸色の各々が領域群に使用されうる頻度に基づいて、領域群全体の色を表現可能な最小数の使用可能糸色が、実際に使用される糸色として決定される。つまり、例えば領域群中の3つの色別領域のうち1つを混色表現することで、3つの色別領域を含む領域群全体を2つの使用可能糸色で表現できる場合、実際に使用される糸色は二色である。したがって、接続可能な領域群を最小数の糸色で縫製することができ、元の画像に対応する刺繍模様をなるべく少ない数の糸で表現することができる。
【0012】
また、領域群に含まれる色別領域の代表角度はすべて同じであるから、領域群内に配置される第1縫目はすべて互いに平行となる。その結果、第1線分色毎に線分を接続する際、広い範囲で接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0013】
前記第1線分配置手段は、前記領域群設定手段によって設定された前記領域群がある場合、前記領域群を1つの色別領域とみなして前記第1線分を配置してもよい。同じ代表角度を有する複数の色別領域が代表角度の法線方向に互いに隣接していても、例えばその境界線が代表角度に平行ではない場合、色別領域毎に第1線分を配置すると、境界線近くの第1線分が短くなりすぎる可能性がある。第1線分が短すぎると、対応する縫目である第1縫目の縫製が困難になる。したがって、接続可能な領域群を1つの色別領域とみなして第1線分を配置することで、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性を低減できる。
【0014】
前記領域群設定手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを、互いに接続可能な前記領域群として設定し、前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に基づいて算出される角度特徴に従って、前記1つの色別領域とみなされた前記領域群に前記第1線分を配置してもよい。
【0015】
この場合、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの領域群を1つの色別領域とみなして第1線分が配置される。このように条件を緩和して、より多くの色別領域を接続可能な領域群とみなすことで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0016】
前記第1データ作成手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域との間に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に応じた境界線を有し、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度との間にある角度特徴を前記代表角度として有する中間領域を設定する中間領域設定手段を更に含んでもよい。そして、前記領域群設定手段は、前記中間領域設定手段によって前記中間領域が設定された場合、前記複数の色別領域のいずれかと前記中間領域と前記他の色別領域とを、接続可能な前記領域群として設定し、前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域および前記中間領域の各々に、前記代表角度に従って前記第1線分を配置してもよい。
【0017】
この場合、隣接する2つの色別領域の代表角度が異なるが近似していれば、これらの色別領域の間に、これらの色別領域の代表角度の間にある角度特徴を代表角度として有する中間領域が設定される。そして、中間領域を含む接続可能な領域群が設定される。このように条件を緩和してより多くの色別領域を接続可能な領域群とすることで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。また、中間領域の代表角度は、元々隣接していた2つの色別領域の代表角度の中間的な角度であるため、元の画像の角度特徴をより適切に反映した自然な縫目を形成することができる。
【0018】
前記第2データ作成手段は、前記第2領域を構成する複数の画素の各々について算出された前記角度特徴と前記角度特徴の前記強度に基づいて、前記第2縫目に対応する線分である第2線分を前記第2領域内に配置する第2線分配置手段と、前記画像データに基づいて、前記第2線分の各々に使用される糸色である第2線分色を、前記ミシンで使用可能な複数の糸色のうちいずれか1つに決定する第2線分色決定手段と、前記第2線分色決定手段により決定された前記第2線分色毎に前記第2線分を接続して、前記第2データを作成する第2線分接続手段とを含んでもよい。
【0019】
この場合、色の変化が相対的に激しい第2領域については、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第2線分が配置され、第2データが作成される。元の画像の色の変化を適切に反映した第2縫目を形成することができるので、第1データと第2データが合成されて作成される刺繍データによれば、色の変化が激しい部分も緩やかな部分も元の画像の特徴を反映した自然な風合いの刺繍模様を縫製することができる。
【0020】
前記最終刺繍データ作成手段は、前記第1縫目の縫い順よりも前記第2縫目の縫い順の方が後になるように前記第1データと前記第2データとを合成してもよい。この場合、色の変化が緩やかな第1領域の第1縫目より、色の変化が相対的に激しい第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるので、領域の区切りが明確になり、人間が目で見た時の印象に近い風合いの刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成することができる。
【0021】
本発明の第2の態様に係る刺繍データ作成プログラムは、前記第1の態様に係る刺繍データ作成装置の各種処理手段として、刺繍データ作成装置のコンピュータを機能させるためのプログラムである。したがって、刺繍データ作成プログラムがコンピュータによって実行されることにより、第1の態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。
【0022】
本発明の第3の態様に係るコンピュータ読取り可能な媒体は、前記第2の態様に係る刺繍データ作成プログラムを記憶している。したがって、媒体に記憶された刺繍データ作成プログラムがコンピュータによって実行されることにより、第1の態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】刺繍データ作成装置1の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】ミシン3の外観図である。
【図4】第1実施形態に係る刺繍データ作成処理のフローチャートである。
【図5】刺繍データ作成処理で行われる第1データ作成処理のフローチャートである。
【図6】刺繍データ作成処理で行われる第2データ作成処理のフローチャートである。
【図7】画素毎に算出された角度特徴と角度特徴の強度の例を示す図である。
【図8】元画像の一例を示す図である。
【図9】図8の元画像の第1領域が16の色別領域に分割された状態を示す図である。
【図10】第1実施形態の刺繍データ作成処理で作成された刺繍データに基づく第1縫目部分の縫製結果を示す図である。
【図11】従来の刺繍データ作成処理で作成された刺繍データに基づく縫製結果を示す図である。
【図12】第2実施形態に係る第1データ作成処理のフローチャートである。
【図13】第1データ作成処理で行われる領域接続処理のフローチャートである。
【図14】第1データ作成処理で行われる糸色決定処理のフローチャートである。
【図15】糸色決定処理で行われる使用可能糸色決定処理のフローチャートである。
【図16】使用可能糸色決定処理で行われる単色判断処理のフローチャートである。
【図17】使用可能糸色決定処理で行われる混色判断処理のフローチャートである。
【図18】糸色決定処理で行われる使用糸色決定処理のフローチャートである。
【図19】色別に分割された領域1〜3の例を示す図である。
【図20】図19の領域1〜3に配置された第1線分の例を示す図である。
【図21】図20の第1線分に対応して決定された第1線分色の例を示す図である。
【図22】図21の第1線分が第1線分色毎に接続された例を示す図である。
【図23】領域1と領域2にそれぞれ第1線分が配置された例を示す図である。
【図24】第3実施形態に係る第1データ作成処理のフローチャートである。
【図25】第3実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【図26】領域1と領域2とを1つの色別領域とみなして第1線分が配置された例を示す図である。
【図27】第4実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【図28】第5実施形態に係る領域接続処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、単なる説明例である。
【0025】
<第1実施形態>
図1〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。まず、第1実施形態に係る刺繍データ作成装置1の構成について、図1および図2を参照して説明する。刺繍データ作成装置1は、後述のミシン3(図3参照)によって刺繍模様を縫製するのに使用される刺繍データを作成する装置である。本実施形態の刺繍データ作成装置1は、写真等の画像に基づく図柄を刺繍縫製するための刺繍データを作成することができる。図1に示すように、刺繍データ作成装置1は、例えば、所謂パーソナルコンピュータ等の汎用型の装置である。図1に例示されている刺繍データ作成装置1は、装置本体10と、装置本体10に接続されたキーボード21、マウス22、ディスプレイ24およびイメージスキャナ装置25を備えている。本実施形態で刺繍データ作成の元となる画像は、例えばこのイメージスキャナ装置25を介して刺繍データ作成装置1に読み込まれる。
【0026】
図2を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図2に示すように、刺繍データ作成装置1は、刺繍データ作成装置1の制御を司るコントローラであるCPU11を備えている。CPU11には、各種のデータを一時的に記憶するRAM12と、BIOS等を記憶したROM13と、データの受け渡しの仲介を行う入出力(I/O)インタフェイス14とが接続されている。I/Oインタフェイス14には、ハードディスク装置(HDD)15、入力機器であるマウス22、ビデオコントローラ16、キーコントローラ17、CD−ROMドライブ18、メモリカードコネクタ23、およびイメージスキャナ装置25が接続されている。また、図2には図示されていないが、刺繍データ作成装置1は、外部機器やネットワークとの接続のための外部インタフェイスを備えていてもよい。
【0027】
HDD15は、画像データ記憶エリア151、刺繍データ記憶エリア152、プログラム記憶エリア153、および設定値記憶エリア154を含む複数の記憶エリアを有する。画像データ記憶エリア151には、刺繍データ作成の元となる画像等、各種画像の画像データが記憶される。刺繍データ記憶エリア152には、本実施形態の刺繍データ作成処理によって作成された刺繍データが記憶される。プログラム記憶エリア153には、後述する刺繍データ作成プログラム等、刺繍データ作成装置1で行われる各種処理のためのプログラムが記憶される。設定値記憶エリア154には、各種処理で使用される各種設定値が記憶される。
【0028】
ビデオコントローラ16には、情報を表示する表示機器であるディスプレイ24が接続されている。キーコントローラ17には、入力機器であるキーボード21が接続されている。CD−ROMドライブ18には、CD−ROM114を挿入することができる。例えば、刺繍データ作成プログラムのセットアップ時には、刺繍データ作成プログラムを記憶するCD−ROM114がCD−ROMドライブ18に挿入される。そして、刺繍データ作成プログラムが読み込まれ、HDD15のプログラム記憶エリア153に記憶される。メモリカードコネクタ23には、メモリカード55を接続して、情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0029】
図3を参照して、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データに基づいて刺繍模様を縫製することが可能なミシン3について、簡単に説明する。
【0030】
図3に示すように、ミシン3は、ベッド部30、脚柱部36、アーム部38、および頭部39を有する。ベッド部30は、縫製者に対して左右方向に長い、ミシン3の土台部である。脚柱部36は、ベッド部30の右端部から上方へ延びる。アーム部38は、ベッド部30に対向して脚柱部36の上端から左方へ延びる。頭部39は、アーム部38の左端に連結する部位である。ベッド部30の上方には、刺繍が施される加工布を保持する刺繍枠41を配置可能である。
【0031】
刺繍縫製時には、刺繍枠41は、ベッド部30上に配置されるY方向駆動部42、および本体ケース43内に収容されたX方向駆動機構(図示せず)によって、ミシン3に固有のX・Y座標系で示される針落ち点に移動される。刺繍枠41が移動されるのと合わせて、縫針44が装着された針棒35及び釜機構(図示せず)が駆動されることにより、加工布上に刺繍模様が形成される。なお、Y方向駆動部42、X方向駆動機構、針棒35等は、刺繍データに基づき、ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等を含む制御装置(図示せず)によって制御される。
【0032】
ミシン3の脚柱部36の側面には、メモリカード55を着脱可能なメモリカードスロット37が搭載されている。例えば、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データは、メモリカードコネクタ23を介してメモリカード55に記憶される。その後、メモリカード55がミシン3のメモリカードスロット37に装着され、記憶された刺繍データが読み出されて、ミシン3に刺繍データが記憶される。ミシン3の制御装置(図示せず)は、メモリカード55から読み出された刺繍データに基づいて、上記の要素による刺繍模様の縫製動作を制御する。このようにして、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データに基づき、ミシン3を用いて刺繍模様を縫製することができる。
【0033】
以下に、図4〜図7を参照して、第1実施形態の刺繍データ作成装置1で行われる刺繍データ作成処理について説明する。刺繍データ作成処理は、HDD15のプログラム記憶エリア153に記憶された刺繍データ作成プログラムが起動されることで開始され、CPU11がこのプログラムを実行することにより行われる。
【0034】
図4に示すように、まず、刺繍データ作成の元となる画像(以下、元画像という)の画像データが刺繍データ作成装置1に入力される(S1)。画像データの入力方法は特に限定されないが、例えば、イメージスキャナ装置25によって写真や図柄が読み込まれ、取得された画像データが用いられる。その他、予めHDD15の画像データ記憶エリア151に記憶された画像データや、CD−ROM114、メモリカード55、CD−R等の外部記憶媒体に記憶された画像データが入力されてもよい。
【0035】
次に、入力された画像データに基づき、元画像の全体領域が第1領域と第2領域とに分割される(S2)。本実施形態では、第2領域とは、元画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分(以下、高周波成分ともいう)を含む領域をいい、第1領域とは、元画像の全体領域のうち、第2領域を除いた領域をいう。元画像に含まれる周波数成分とは、元画像における色に関する属性値の違いを周波数成分で表したものである。元画像を構成する複数の画素のうち、隣接する画素との属性値の違いが大きい画素ほど、より高い周波成分を有することになる。ここでいう色に関する属性値とは、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの値によって画素を表現可能な値(以下、RGB値という)である。この場合、属性値の違いは、(R、G、B)で示されるRGB空間座標上の空間距離(以下、単に距離ともいう)に相当する。
【0036】
ステップS2では、例えば、ラプラシアンフィルタ等のハイパスフィルタを用いる公知の方法により、元画像を構成する複数の画素のうち、隣接する画素との色に関する属性値の違いが所定値以上の画素で構成される領域が、高周波成分を含む第2領域として抽出される。そして、全体領域のうち第2領域を除いた領域が、第1領域として特定される。このように、隣接する画素との属性値の違いの大きさに基づいて元画像の全体領域が分割された結果、色の変化が比較的緩やかな第1領域と、色の変化が比較的激しい第2領域とが得られる。第1領域に含まれる画素と第2領域に含まれる画素をそれぞれ示すデータは、RAM12に記憶される。
【0037】
続いて、刺繍縫製によって第1領域に形成される縫目(以下、第1縫目という)を示すデータである第1データを作成する第1データ作成処理(S3)が行われる。以下、図5を参照して、第1データ作成処理の詳細について説明する。図5に示すように、まず、第1領域を構成する画素の各々について、その角度特徴と角度特徴の強度が算出される(S11)。角度特徴は、画像中の色の連続性の高い方向を示す情報であり、角度特徴の強度は、色の変化の大きさを示す情報である。
【0038】
角度特徴およびその強度は、例えば、特開2001−259268に詳述されている方法を用いて算出することができる。よって、ここでは詳細な説明は省略し、概略のみを説明する。第1領域を構成する画素の1つを注目画素として、注目画素とその周囲の所定数の画素を注目領域とする。注目領域内の各画素の色に関する属性値(例えば、輝度値)に基づいて、注目領域内における色の連続性の高い方向が特定され、注目画素の角度特徴とされる。また、注目領域内における色の変化の大きさを示す値が算出されて、注目画素の角度特徴の強度とされる。このように角度特徴およびその強度を算出する処理が、第1領域を構成する画素の全てについて、順に行われる。各画素の角度特徴とその強度を示すデータは、RAM12の所定の記憶エリアに記憶される。なお、角度特徴およびその強度は、上記の方法以外に、PrewittのオペレータやSobelのオペレータを用いて算出されてもよい。
【0039】
角度特徴およびその強度が算出された後、分割数mが決定される(S12)。分割数mは、第1領域を減色して、複数の色別領域に分割するのに用いられる2以上の整数であり、原則、刺繍縫製に使用される糸の色数には依存しない。しかしながら、現実的には、使用される糸の色数と分割数mの差が著しく大きいと、使用される糸の色と色別領域の色とがかけ離れてしまう場合が生じうるため、使用される糸の色数と分割数mとの差は小さい方が望ましい。分割数mは、例えば、ディスプレイ24に入力用画を表示させ、キーボード21等からユーザによって入力された数が使用されてもよいし、使用される糸の色数に応じて算出される数が使用されてもよい。
【0040】
続いて、第1領域が、決定された分割数mに応じてm色に減色され、互いに異なる色を有するm個の色別領域に分割される(S13)。例えば、メディアンカット法等を用いて第1領域の代表色m色が決定され、第1領域に含まれる複数の画素の各々の属性値を最も近い代表色の属性値に置換えることで、m個の色別領域が得られる。各色別領域には1からmまでの番号が付され、各色別領域に対応する代表色と、その色別領域に含まれる画素を示すデータと共に、RAM12に記憶される。
【0041】
得られたm個の色別領域の各々について、順に、その代表角度が算出され、第1線分を配置する処理が行われる(S14〜S17)。第1線分は、第1領域に形成される第1縫目に対応する線分である。まず、処理対象の色別領域である注目領域iが設定される(S14)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目領域として、番号1が付された色別領域が設定される。続いて、ステップS11で算出された角度特徴とその強度に基づいて、注目領域iの代表的な角度特徴が示す角度である代表角度θiが算出される(S15)。算出された代表角度θiは、色別領域の番号iと対応づけてRAM12に記憶される。代表角度θiは、例えば、注目領域i内で強度が最も大きい角度特徴をそのまま使用してもよいし、注目領域i内の全画素の角度特徴を強度で重み付けした後、平均値を求めてそれを使用してもよい。
【0042】
例えば、ステップS11で、注目領域iを構成する画素の各々について、図7に示す角度特徴とその強度が算出されたとする。なお、図中、矩形の領域は画素を示し、上段の数値はその画素の角度特徴を、下段のカッコ書きの数値は角度特徴の強度を示している。この例では、強度が最も大きい角度特徴を使用する場合、9つの画素のうち、中心にある画素の角度特徴の強度「35」が最も大きいので、代表角度θiは、この画素の角度特徴「50」が示す50度となる。なお、角度特徴が示す角度、代表角度等の角度は、図7の右方向を0度とし、反時計回り方向にプラス、時計回り方向にマイナスで示される。他の図でも同様である。
【0043】
強度で重み付けした後の平均値を使用する場合は、代表角度θiは以下のように算出される。まず、各画素の角度特徴の余弦値に強度を乗じた数値の総和dX、および各画素の角度特徴の正弦値に強度を乗じた数値の総和dYが求められる。図7の例では、以下の式のように、dXおよびdYとして、それぞれ128および147が得られる。
dX=cos(45)×10+cos(45)×20+cos(50)×30+cos(45)×20+cos(50)×35+cos(50)×20+cos(50)×30+cos(50)×20+cos(55)×10≒128
dY=sin(45)×10+sin(45)×20+sin(50)×30+sin(45)×20+sin(50)×35+sin(50)×20+sin(50)×30+sin(50)×20+sin(55)×10≒147
dY/dXの値のアークタンジェントを求め、代表角度θiとする。図7の例では、以下の式のように、代表角度θiとして49度が得られる。
atan(dY/dX)≒49(度)
【0044】
なお、ある画素に隣接する画素が同一色の場合、その画素の角度特徴の強さはゼロになる。この場合、単純に角度特徴を強度で重み付けした値を算出すると、ゼロ度として算出されてしまう。しかし実際には、その部分の角度特徴はゼロ度ではなく、角度を持たないだけである。よって、角度特徴の強度がゼロの場合、上記の平均値の計算からは除外する。注目領域i中の全ての画素が角度特徴を持たない場合は、その注目領域iの代表角度θiは、ゼロ度ではなく「なし」とする。代表角度θiが「なし」とされた場合、予め設定された値またはユーザの入力により設定された値を代表角度θiとして使用すればよい。
【0045】
上述のように注目領域iの代表角度θiが算出された後、代表角度θiに従って、注目領域i内に第1線分を配置する処理が行われる(S16)。より詳細には、代表角度θiが示す方向に伸びる第1線分が、予め設定された糸密度に応じた等間隔で、互いに平行に注目領域i内に配置される。第1線分に対応する第1縫目が形成された時に、注目領域iが第1縫目で埋まるように、各第1線分の両端点は、注目領域iの境界線上に設定される。各第1線分の端点の位置(座標)を示すデータは、RAM12に記憶される。このように、ある色別領域内の全画素について単一の代表角度θiに従って第1線分を配置するのは、そもそも第1領域は、周波数成分に基づいて抽出された色の変化が比較的緩やかな領域であり、角度特徴の強度が弱い領域と特定されているので、色別領域内を単一の角度特徴で統一しても問題はないとの考え方に基づいている。
【0046】
第1領域中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S17)。具体的には、色別領域は分割数mに分割されているので、変数iが分割数mに達しているか否かが判断される。変数iが分割数m未満であり、まだ注目領域iとして設定されていない色別領域がある場合は(S17:NO)、処理はステップS14に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。
【0047】
全ての色別領域の処理が完了すると(S17:YES)、第1線分色を決定する処理が行われる(S21)。なお、第1線分色とは、各色別領域に配置された第1線分の各々に対応する第1縫目を縫製するのに使用される糸の色である。第1線分色の決定方法は、いかなる公知の方法を用いてもよい。例えば、各色別領域内に配置された全ての第1線分の第1線分色を、ミシン3での刺繍縫製に使用可能な複数の糸色のうち、その色別領域の代表色に最も近い色に決定すればよい。これにより、同じ色別領域にある第1線分は、同じ色の糸で縫製されることになる。
【0048】
具体的には、各糸色のRGB値と色別領域の代表色のRGB値とのRGB空間での空間距離を求め、その距離が最小となる糸色を、その色別領域に配置された全第1線分の第1線分色とすればよい。なお、ある糸色のRGB値を(Rt、Gt、Bt)とし、ある色別領域の代表色のRGB値を(Ra、Ga、Ba)とした場合、その空間距離dは、以下の式で求められる。
d=√{(Rt−Ra)2+(Gt−Ga)2+(Bt−Ba)2}
第1線分および対応する第1線分色を示すデータは、RAM12に記憶される。
【0049】
続いて、第1線分色毎に第1線分を順に接続して、第1データを作成する処理が行われる(S22)。例えば、まず、ある色別領域の最も左端に近い第1線分を接続順が1番目の第1線分として、その2つの端点のうち一方が始点とされ、他方が終点とされる。次に、同じ第1線分色の他の第1線分のうち、1番目の第1線分の終点に最も近い位置にある端点を有する第1線分が、接続先である2番目の第1線分とされる。同様にして、順に、すでに接続された第1線分の終点に、同じ第1線分色の第1線分の最も近い位置にある端点を接続していく。その後、第1線分色毎に接続された第1線分群を、近い端点同士で接続することにより、全ての第1線分が接続される。そして、接続された全ての第1線分の端点の位置(座標)、接続順、および第1線分色を示すデータである第1データが作成される。
【0050】
前述したように、本実施形態では、同じ色別領域内の第1線分は、等間隔で互いに平行に並んでおり、各第1線分の端点は、色別領域の境界線上にある。しかも、同じ色別領域内の第1線分は、全て同じ色であるから、同じ色別領域内に配置された第1線分の端点を並び順に従って接続していくだけで、容易に第1データを作成することができる。このようにして第1データが作成されると、図5に示す第1データ作成処理は終了して、図4に示す刺繍データ作成処理に戻る。
【0051】
図4に示すように、続いて、ミシン3での刺繍縫製によって第2領域に形成される縫目(以下、第2縫目という)を示すデータである第2データを作成する第2データ作成処理(S4)が行われる。なお、第2データは、前述の第1データの作成方法とは異なる方法で作成される。以下、図6を参照して、第2データ作成処理の詳細について説明する。図6に示すように、まず、第2領域を構成する画素の各々について、その角度特徴と角度特徴の強度が算出される(S41)。角度特徴およびその強度の算出方法は、第1データ作成処理(図5参照)のステップS11の処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
続いて、第2領域内に第2線分を配置する処理が行われる(S42)。第2線分は、第2領域に形成される第2縫目に対応する線分である。そして、第2線分の各々に使用される糸の色(以下、第2線分色という)が決定され(S43)、第2線分色毎に第2線分を順に接続して、第2データを作成する処理が行われる(S44)。本実施形態では、ステップS42〜S44の処理は、特開2001−259268に詳述されている方法を用いて行われる。よって、ここでは詳細な説明は省略し、概略のみを説明する。
【0053】
まず、ステップS42では、第2領域を構成する各画素を中心として、予め設定された長さを有し、ステップS41で算出された角度特徴が示す方向に伸びる第2線分が配置される。ただし、第2線分は、第2領域を構成する複数の画素のうち、ステップS41で算出された角度特徴の強度が所定の閾値よりも大きい画素についてのみ作成される。一方、角度特徴の強度が閾値以下だった画素については、周囲の画素の角度特徴を加味して算出された新たな角度特徴に基づいて第2線分が配置される。ただし、前述したように、第2領域は色の変化が相対的に激しい領域、すなわち、角度特徴が強い領域であるから、ほとんどの画素について最初から第2線分が作成されることになると考えられる。
【0054】
ステップS43では、第2領域を構成する複数の画素を順に注目画素として、次の処理が行われる。まず、元画像において、注目画素を中心とする所定の範囲が、元画像の色を参照する範囲(参照領域)として設定される。そして、元画像の参照領域内の色の平均値と、注目画素を中心とする参照領域と同じサイズの領域に配置された線分に対してすでに決定された色の平均値が等しくなるように、注目画素に対応する第2線分の色が決定される。つまり、元画像の色とすでに決定された線分の色とに基づいて、第2線分の各々の色が決定されていく。
【0055】
さらに、決定された第2線分の色に基づいて、第2線分に対応する第2縫目の縫製に使用される糸の色、すなわち第2線分色が決定される。第2線分色は、例えば、刺繍縫製に使用可能な複数の糸色のうち、決定された第2線分の色に最も近い色に決定すればよい。具体的には、各糸色のRGB値と決定された第2線分の色のRGB値とのRGB空間での空間距離を求め、その距離が最小となる糸色を、その第2線分色とすればよい。距離の算出方法は、第1線分色の決定に関して前述した通りである。
【0056】
ステップS44では、第2線分色毎に第2線分を順に接続して、第2データを作成する処理が行われる。第2線分も、第1線分と同様、順に、すでに接続された第2線分の終点に、同じ第2線分色の第2線分の最も近い位置にある端点を接続していく。その後、第2線分色毎に接続された第2線分群を、近い端点同士で接続することにより、全ての第2線分が接続される。そして、接続された全ての第2線分の端点の位置(座標)、接続順、および第2線分色を示すデータである第2データが作成される。このようにして第2データが作成されると、図6に示す第2データ作成処理は終了し、図4に示す刺繍データ作成処理に戻る。
【0057】
図4に示すように、刺繍データ作成処理では、続いて、第1データと第2データとを合成して、元画像を表す刺繍模様を縫製するための最終的な刺繍データが作成される(S5)。まず、本実施形態では、第1領域内の第1縫目よりも、第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるように、第1データのデータ列の後に第2データのデータ列が結合される。そして、第1線分および第2線分の端点の座標がミシン3に固有の座標系の座標に変換され、針落ち点、縫い順、および糸色を示す刺繍データとされる。刺繍データの作成が終了すると、図4に示す刺繍データ作成処理は終了する。
【0058】
ここで、図8〜図11に、本実施形態の刺繍データ作成処理を適用した場合の効果を例示する。図8は、グラデーションで彩色された円の元画像(実際にはカラー画像)を示している。この元画像の第1領域が、16色の色別領域に分割されると、図9に示すようになる。その後、色別領域毎に第1線分が配置され、第1線分色毎に接続されて、第1データが作成される。この第1データに基づいて作成された刺繍データに基づく縫製結果は、図10に示すようになる(ただし、第1縫目のみ図示)。一方、例えば、特開2001−259268号公報に示す従来の刺繍データ作成処理に基づき、第1領域と第2領域を区別することなく作成された刺繍データに基づく縫製結果は、図11のようになる。図10と図11の比較から明らかなように、本実施形態の刺繍データによれば、連続的に緩やかに色が変化する円内の領域が第1領域として処理され、自然な風合いの刺繍模様が得られている。
【0059】
以上に説明したように、第1実施形態の刺繍データ作成装置1によれば、第2領域に比べて変化が緩やかな第1領域は、その画素の色に応じて複数の色別領域に分割され、色別領域毎に代表角度に従って第1線分が配置される。第1領域の第1線分の第1線分色は、色別領域の色に最も近い糸の色に決定され、同色の第1線分が接続されることで、第1データが作成される。一方、所定値以上の周波数成分を含み、第1領域に比べて色の変化が激しい領域である第2領域に対応する第2データは、第1データとは異なる方法で作成される。具体的には、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第2線分が配置され、元画像の色に基づいて第2線分色が決定され、同色の第2線分が接続されることで、第2データが作成される。そして、第1データの後に第2データが結合され、ミシン3で元画像に対応する刺繍模様を縫製するための刺繍データが作成される。
【0060】
このように、第1線分および第2線分は、いずれも他の領域の特徴に左右されることなく、それぞれが配置された領域の角度特徴を適切に反映して配置される。したがって、作成された刺繍データに基づいて刺繍縫製が行われると、色の変化が激しい部分も、連続的に緩やかに色が変化する部分も、自然な風合いの刺繍模様を得ることができる。特に、第1データの作成において、各色別領域内の第1線分はすべて、その色別領域の代表角度に従って互いに平行に配置され、且つ、同じ色が第1線分色とされるので、第1線分色毎に第1線分を接続して、第1データを作成することが非常に容易である。その結果、第1データに基づいて形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。また、色の変化が緩やかな第1領域の第1縫目より、色の変化が相対的に激しい第2領域の第2縫目の方が後で縫製されるので、領域の区切りが明確になり、人間が目で見た時の印象に近い風合いの刺繍模様を得ることができる。
【0061】
なお、前述した例では、元画像の全体領域を第1領域と第2領域とに分割する処理(図4のS2)で、画像を構成する周波数成分を用いる方法を説明した。前述したように、第1領域は、元画像中の色の変化が比較的緩やかな領域であり、第2領域は、元画像中の色の変化が比較的激しい領域である。したがって、全体領域を第1領域と第2領域とに分割するのに、周波数成分に代えて角度特徴の強度を用いてもよい。
【0062】
具体的には、まず、元画像を構成する全ての画素の各々について、角度特徴およびその強度を算出する。その算出方法は、第1データ作成処理のステップS11(図5)および第2データ作成処理のステップS41(図6)に関して説明した通りである。そして、強度が閾値未満の角度特徴が比較的弱い領域を第1領域とし、強度が閾値以上の角度特徴が比較的強い領域を第2領域とすればよい。なお、強度の閾値は、予め設定され、設定値記憶エリア154に記憶された値か、ユーザが入力した値を用いればよい。そして、第1領域と第2領域とが分割された後は、前述の周波数成分を用いて領域分割する例と同様に、領域毎に第1データと第2データが作成されればよい。
【0063】
角度特徴が比較的強い部分は、色の変化が激しい部分なので、画素毎に点のように抽出される。このため、画像中の広い領域が角度特徴の比較的弱い第1領域として処理されて第1縫目が形成され、その上に付加される形で、角度特徴の強い部分に第2縫目が形成される。このように、角度特徴の強度を用いた場合も、色の変化の激しい部分と緩やかな部分を分割できるので、周波数成分に基づいて領域分割を行った場合と同等の効果が得られる。
【0064】
第1実施形態では、図4のステップS2で元画像を第1領域と第2領域に分割する処理を行うCPU11が、本発明の「第1分割手段」に相当する。ステップS3で第1データ作成処理を行うCPU11が、「第1データ作成手段」に相当し、ステップS4で第2データ作成処理を行うCPU11が、「第2データ作成手段」に相当し、ステップS5で刺繍データ作成処理を行うCPU11が、「刺繍データ作成手段」に相当する。図5のステップS12で、分割数mを決定するCPU11が、「色数決定手段」に相当する。ステップS13で、第1領域を色別領域に分割するCPU11が、「第2分割手段」に相当する。ステップS15で代表角度を算出するCPU11が、「代表角度算出手段」に相当する。ステップS16で第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。ステップS21で第1線分色を決定するCPU11が、「第1線分色決定手段」に相当する。ステップS22で第1線分を接続するCPU11が、「第1線分接続手段」に相当する。
【0065】
図6のステップS42で第2線分を配置するCPU11が、「第2線分配置手段」に相当する。ステップS43で第2線分色を決定するCPU11が、「第2線分色決定手段」に相当する。ステップS44で第2線分を接続するCPU11が、「第2線分接続手段」に相当する。
【0066】
<第2実施形態>
以下に、図12〜図22を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態および後述する第3〜第5実施形態に係る刺繍データ作成装置1およびミシン3の構成は、第1実施形態と同一であるため、以下ではその説明は省略する。第2実施形態の刺繍データ作成装置における刺繍データ作成処理は、図4〜図6に示す第1実施形態の処理とは第1データ作成処理(図4のS3、図5)の内容において異なるのみである。したがって、以下では、第1実施形態の処理と同一部分については同一のステップ番号を付して説明を省略または簡略化し、第1実施形態とは異なる第1データ作成処理の詳細について説明する。
【0067】
第1実施形態の刺繍データ作成処理では、色別領域毎に独立して第1線分が配置され、第1線分色が決定されているが、第2実施形態の刺繍データ作成処理では、隣接する複数の色別領域の関係が所定の条件を満たす場合、第1線分に対応する第1縫目の刺繍縫製に使用される糸色の決定が、これらの色別領域全体で、第1縫目をなるべく少ない糸色で縫製することを優先して行われるのが特徴である。ここでいう所定の条件とは、隣接する色別領域の代表角度が同一であり、且つ、いずれか一方の色別領域の代表角度の法線方向に他方の色別領域が隣接していることである。以下では、所定の条件を満たす隣接する複数の色別領域を、それぞれ、接続可能領域という。
【0068】
上記の処理を行うため、図12に示すように、第2実施形態に係る第1データ作成処理では、第1線分を配置する処理(S14〜S17)と、第1線分色を決定する処理(S21)との間に、領域接続処理(S18)および糸色決定処理(S19)が行われる。領域接続処理は、隣接する複数の色別領域の関係が所定の条件を満たす場合に、これらの色別領域を接続可能領域として設定する処理である。糸色決定処理は、ユーザがミシン3で使用するために準備した糸色(以下、準備糸色という)から、各色別領域で使用可能な糸色(以下、使用可能糸色という)を決定し、使用可能な糸色から、なるべく色数が少なくなるように、実際に使用する糸色を決定する処理である。以下、図13〜図18を参照して、領域接続処理(S18)と糸色決定処理(S19)の詳細について、順に説明する。
【0069】
図13に示すように、領域接続処理では、まず、処理対象の色別領域である注目領域iが設定される(S101)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目領域として、番号1が付された色別領域が設定される。続いて、注目領域iの比較対象とされる色別領域である比較領域jが設定される(S102)。jは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、比較領域として、番号1が付された色別領域が設定される。
【0070】
このとき、RAM12には、注目領域iと比較領域jの比較結果を記憶するために、例えば、行が注目領域i、列が比較領域jに対応するm行m列のマトリクスが用意される。全要素の初期値はゼロとされ、比較領域jは注目領域iの接続可能領域ではないことを示す。後述するステップS103〜S107の判断処理の結果、比較領域jを注目領域iの接続可能領域に設定することが決定されると、行i、列jに対応する要素の値が1に更新される。
【0071】
注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みであるか否かが判断される(S103)。具体的には、前述のマトリクスが参照され、行j、列iに対応する要素が1であれば、注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みと判断される(S103:YES)。この場合、注目領域iと比較領域jとは接続可能な関係であると決定されているので、マトリクスの行i、列jに対応する要素が1に更新され、比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。一方、行j、列iに対応する要素が0であれば、注目領域iは、比較領域jの接続可能領域に設定済みではない(S103:NO)。この場合、iとjとが同じ値か否かが判断される(S104)。iとjが同じ値であれば(S104:YES)、注目領域iと比較領域jとは同じ色別領域なので、比較はできない。よって、処理はそのままステップS109に進む。
【0072】
iとjが同じ値ではなく(S104:NO)、注目領域iと比較領域jとは異なる色別領域の場合、ステップS15で算出された色別領域の代表角度が参照され、注目領域iの代表角度θiと、比較領域jの代表角度θjとが同一か否かが判断される(S105)。2つの代表角度が同一でなければ(S105:NO)、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たさないので、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値はゼロのままで、処理はステップS109に進む。2つの代表角度が同一であれば(S105:YES)、比較領域jは、注目領域iの代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接しているか否かが判断される(S107)。
【0073】
ステップS107では、例えば、以下の方法で判断が行われればよい。まず、注目領域i内の画素の1つを注目画素とし、注目画素から代表角度θiの法線方向(θi±90度の方向)に順に画素を辿る。辿った先に、比較領域jに含まれる画素が存在すれば、比較領域jは、代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接していると判断される(S107:YES)。この場合、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たす。よって、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値が1に更新されることにより、比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。
【0074】
一方、注目画素から代表角度θiの法線方向に画素を辿っても、その先に比較領域jに含まれる画素が存在しなければ、注目画素を変更し、同様の処理を繰り返す。注目領域i内の全ての画素について処理を行っても比較領域jに含まれる画素に辿り着かない場合は、比較領域jは、代表角度θiの法線方向において注目領域iに隣接していないと判断される(S107:NO)。この場合、注目領域iと比較領域jとの関係は前述の所定の条件を満たさないので、マトリクスの行i、列jに対応する要素の値はゼロのままで、処理はステップS109に進む。
【0075】
ステップS108で比較領域jが注目領域iの接続可能領域として設定された後、または、ステップS104、S105、またはS107で、否定判定がされた後、注目領域iに対する全ての比較領域jの比較処理が完了したか否かが判断される(S109)。変数jの値が色別領域の数(分割数)mに達していなければ、全ての比較領域jの処理が完了していないので(S109:NO)、処理はステップS102に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の比較領域jに設定され、前述と同様の処理が行われる。
【0076】
変数jの値がmに達し、全ての比較領域jの比較処理が完了した場合(S109:YES)。全ての注目領域iについて処理が完了したか否かが判断される(S110)。変数iの値が色別領域の数(分割数)mに達していなければ、全ての注目領域iの処理が完了していないので(S110:NO)、処理はステップS101に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数iの値がmに達し、全ての比較領域jの比較処理が完了した場合(S110:YES)、図13に示す領域接続処理は完了し、処理は図12に示す第1データ作成処理に戻る。
【0077】
図12に示すように、領域接続処理に続いて糸色決定処理が行われる(S19、図14)。図14に示すように、糸色決定処理では、まず、使用可能糸色を設定するための閾値r1が設定される(S121)。本実施形態では、閾値r1は、RGB空間における距離により特定される。閾値r1は、予め定められ、設定値記憶エリア154に記憶された値が使用されてもよいし、ユーザによって入力された値が使用されてもよい。
【0078】
ユーザがミシン3で使用するために準備したn色の糸について、各々の糸の色である準備糸色Tが特定される(S122)。本実施形態では、n色の準備糸色T1〜Tnとして、(Rt1、Gt1、Bt1)〜(Rtn、Gtn、Btn)のn個のRGB値が特定される。さらに、n色の準備糸色Tのうち異なる2色(TxおよびTyとする)の混色Mが特定される(S123)。この場合、混色Mの色数は、全部でnC2色、つまり、n!/(n−2)!2!色となる。本実施形態では、混色M1〜MnC2として、(Rm1、Gm1、Bm1)〜(RmnC2、GmnC2、BmnC2)のnC2個のRGB値が特定される。
【0079】
例えば、準備糸色T1とT2との混色M1のRGB値を(Rm1、Gm1、Bm1)とすると、Rm1、Gm1、Bm1は、それぞれ以下のように算出することができる。
Rm1=|Rt1+Rt2|÷2
Gm1=|Gt1+Gt2|÷2
Bm1=|Bt1+Bt2|÷2
同様にして、混色M1〜MnC2の全てのRGB値が求められる。
【0080】
続いて、色別領域毎に使用可能糸色を決定する使用可能糸色決定処理が行われる(S124、図15)。図15に示すように、使用可能糸色決定処理では、まず、注目領域iが設定される(S201)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。注目領域iの代表色Aiが取得される(S202)。代表色は、第1実施形態で前述したように、第1領域を色別領域に分割する処理(図12のステップS15)で決定され、RAM12に記憶されている。準備糸色Tおよび混色Mと代表色AiとのRGB空間における距離の最小値を特定するための変数rdminが無限大に設定され、距離が最小となる1つの糸色または2つの糸色の組合せを特定するための変数Tminが−1に設定される(S203)。続いて、準備糸色Tの各々について、代表色AiとのRGB空間における距離が閾値r1より短い場合は使用可能糸色に設定する単色判断処理が行われる(S204、図16)。
【0081】
図16に示すように、単色判断処理では、まず、処理対象の準備糸色が、注目糸色Tjとして設定される(S301)。jは、1からnまで準備糸色Tを順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目糸色として、番号1が付された準備糸色T1が設定される。注目領域iの代表色Aiと注目糸色TjとのRGB空間での距離rdijが算出される(S302)。具体的には、注目糸色TjのRGB値を(Rtj、Gtj、Btj)、代表色AiのRGB値を(Rai、Gai、Bai)とした場合、距離rdijは、以下の式で求められる。
rdij=√{(Rtj−Rai)2+(Gtj−Gai)2+(Btj−Bai)2}
【0082】
算出された距離rdijが、変数rdminよりも小さいか否かが判断される(S303)。距離rdijが変数rdminよりも小さければ(S303:YES)、変数rdminが距離rdijで更新され、変数Tminが注目糸色Tj、すなわち、準備糸色Tjで更新される(S304)。処理はステップS305に進む。距離rdijが変数rdmin以上の場合(S303:NO)、処理はそのままステップS305に進む。距離rdijが閾値r1よりも小さいか否かが判断される(S305)。距離rdijが閾値r1よりも小さい場合(305:YES)、注目糸色Tj(準備糸色Tj)と代表色Aiとはある程度似た範囲内にあるので、注目糸色Tj(準備糸色Tj)が注目領域iの使用可能糸色として設定され、注目領域iと対応づけてRAM12に記憶される(S306)。処理はステップS307に進む。
【0083】
距離rdijが閾値r1以上の場合(305:NO)、注目糸色Tjと代表色Aiとはそれほど似た色ではない。よって、注目糸色Tjは使用可能糸色とはされずに、処理はステップS307に進む。全ての準備糸色Tに対する処理が完了したか否かが判断される(S307)。変数jの値が準備糸色Tの数nに達していなければ、処理が完了していないので(S307:NO)、処理はステップS301に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された準備糸色Tが次の注目糸色Tjに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数jの値がnに達し、全ての準備糸色Tの処理が完了すると(S307:YES)、図16に示す単色判断処理は終了し、図15の使用可能糸色決定処理に戻る。
【0084】
図15に示すように、単色判断処理(S204)に続いて、準備糸色TxとTyとの混色Mの各々について、代表色AiとのRGB空間における距離が閾値r1より短い場合は使用可能糸色に設定する混色判断処理が行われる(S205、図17)。図17に示すように、混色判断処理では、まず、処理対象の混色Mが、注目糸色Tjとして設定される(S311)。jは、1からnC2まで混色Mを順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。最初に、注目糸色Tjとして、番号1が付された混色M1が設定される。注目領域iの代表色Aiと混色MjとのRGB空間での距離rdijが算出される(S312)。算出方法は、単色判断処理のステップS302で用いる方法と同じである。
【0085】
算出された距離rdijが、変数rdminよりも小さいか否かが判断される(S313)。距離rdijが変数rdminよりも小さければ(S313:YES)、変数rdminが距離rdijで更新され、変数Tminが注目糸色Tj、すなわち、混色Mjを表現するための2色の準備糸色TxおよびTyで更新される(S314)。処理はステップS315に進む。距離rdijが変数rdmin以上の場合(S313:NO)、処理はそのままステップS315に進む。距離rdijが閾値r1よりも小さいか否かが判断される(S315)。距離rdijが閾値r1よりも小さい場合(315:YES)、注目糸色Tj(混色Mj)と代表色Aiとはある程度似た範囲内にあるので、注目糸色Tj(混色Mj)を表現するための2色の準備糸色TxおよびTyが注目領域iの使用可能糸色として設定され、注目領域iと対応づけてRAM12に記憶される(S316)。処理はステップS317に進む。
【0086】
距離rdijが閾値r1以上の場合(315:NO)、注目糸色Tjと代表色Aiとはそれほど似た色ではない。よって、注目糸色Tjは使用可能糸色とはされずに、処理はステップS317に進む。全ての混色Mに対する処理が完了したか否かが判断される(S317)。変数jの値が混色Mの数nC2に達していなければ、処理が完了していないので(S317:NO)、処理はステップS311に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された混色Mが次の注目糸色Tjに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数jの値がnC2に達し、全ての混色Mの処理が完了すると(S317:YES)、処理はステップS208に進む。
【0087】
図15に示すように、使用可能糸決定処理では、続いて、単色判断処理および混色判断処理で設定された使用可能糸色があるか否かが判断される(S206)。単色判断処理で設定された使用可能糸色は、それだけで、注目領域iの代表色Aiにある程度似た色を表現できる1つの色であり、混色判断処理で設定された使用可能糸色は、混色することで、注目領域iの代表色Aiにある程度似た色を表現できる2つの色の組合せである。設定された使用可能糸色があれば(S206:YES)、使用可能糸色決定処理は終了し、処理は図14に示す糸色決定処理に戻る。
【0088】
設定された使用可能糸色がない場合(S206:NO)、そのままでは注目領域iで使用可能な糸色がないことになり不都合であるから、変数Tminとして記憶されている糸色が使用可能糸色として設定され、RAM12に記憶される(S207)。糸色Tminは、距離rdijが閾値r1以上で最小となる場合の準備糸色T、または混色Mに対応する、1つの準備糸色Tjまたは2つの準備糸色TxおよびTyの組合せである。全ての色別領域について、使用可能色の設定が完了したか否かが判断される(S208)。変数iが色別領域の数mに達しておらず、未処理の色別領域があれば(S208:NO)、処理はステップS201に戻り、変数iに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が次の注目領域iに設定され、前述と同様の処理が行われる。変数iの値がmに達し、全ての色別領域の処理が完了すると(S208:YES)、使用可能糸色決定処理は終了し、処理は図14に示す糸色決定処理に戻る。
【0089】
図14に示すように、使用可能糸色決定処理(S124)に続いて、使用頻度に基づき、設定された使用可能糸色から実際の刺繍縫製に使用される糸色である使用糸色を決定する使用糸色決定処理が行われる(S125、図18)。図18に示すように、使用糸色決定処理では、まず、使用可能糸色決定処理(図15参照)で設定された全使用可能糸色の使用頻度fが初期値のゼロに設定され、RAM12に記憶される(S251)。また、全ての色別領域について、使用頻度と使用糸色を調査済みか否かを示す調査フラグが、未調査を示す値FALSEに設定され、RAM12に記憶される。続いて、注目領域iが設定される(S252)。iは、1からmまで色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定される。
【0090】
注目領域iがすでに使用頻度の調査済みとされているか否かが判断される(S253)。注目領域iに対応する調査フラグがFALSEであれば、注目領域iは調査済みではないと判断される(S253:NO)。領域接続処理(図13参照)で作成されRAM12に記憶されているマトリクスが参照され、他の色別領域が注目領域iに対する接続可能領域として設定されていれば、注目領域iとその接続可能領域の全てが接続可能領域群とされる。この場合、接続可能領域群が1つの調査対象グループとして特定されて番号が付され、グループ中の各色別領域の調査フラグが、調査済みを示すTRUEに更新される(S254)。なお、注目領域i(例えば、色別領域1)の接続可能領域として別の色別領域(例えば、色別領域2)が設定されており、その色別領域にさらに別の色別領域(例えば、色別領域3)が接続可能領域として設定されているような場合、これら3つの色別領域が接続可能領域群とされ、1つの調査対象グループとなる。
【0091】
調査対象グループ中の色別領域を順に調査対象領域jとして設定し、使用頻度を決定する処理が行われる(S255〜S257)。まず、調査対象グループ中の色別領域の1つが調査対象領域jとして設定される(S255)。jは、調査対象グループ中の色別領域を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定され、1から調査対象グループ中の色別領域の数までカウントする。調査対象領域jに対応して設定された使用可能糸色の使用頻度fに1が加算される(S256)。続いて、調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S257)。変数jが調査対象グループ中の色別領域の数に達しておらず、未処理の色別領域があれば(S257:NO)、処理はステップS255に戻る。変数jに1が加算され、次の色別領域が調査対象領域jに設定され、同様の処理が繰り返される。
【0092】
調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了すると(S257:YES)、全ての使用可能糸色が、使用頻度fでソートされる(S258)。全ての使用可能糸色について、実際に使用する使用糸色とするか否かを示す使用フラグが、使用しないことを示す初期値のFALSEに設定される(S259)。使用可能糸色のうち、ソート順がkの使用可能糸色が選択され、使用フラグが、使用することを示すTRUEに更新される(S260)。つまり、使用糸色として設定される。kは、使用可能糸色を順に処理するためにRAM12に記憶される変数であり、最初の処理では初期値1が設定され、1から使用可能糸色の数までカウントする。
【0093】
変数jが初期値の1とされることで調査対象領域jが初期化され(S261)、再び調査対象グループ中で1番目の色別領域が、調査対象領域jとして設定される(S262)。使用フラグがTRUEとされている使用糸色で、調査対象領域jの代表色Aiを表現可能か否かが判断される(S263)。最初の処理では使用糸色は1色である。前述の使用可能糸色決定処理(図15参照)において、注目領域iに対して1色または2色の使用可能糸色が設定され、RAM12に記憶されている。よって、注目領域iの使用可能糸色の1色が使用糸色と一致すれば、代表色iは、使用糸色で表現可能と判断される(S263:YES)。調査対象グループ中の全ての色別領域の処理が完了したか否かが判断される(S264)。未処理の色別領域があれば(S264:NO)、処理はステップS262に戻り、変数jに1が加算されて、次の番号が付された色別領域が調査対象領域jとされる、同様にその後の処理が行われる。
【0094】
一方、使用糸色が1色で、その色が注目領域iの使用可能糸色としてRAM12に記憶されていない場合、代表色iは、使用糸色1色では表現できない(S263:NO)。この場合、処理はステップS260に戻り、変数kに1が加算され、ソート順が次の使用可能糸色が選択され、使用糸色に設定される。つまり、調査対象領域がすでに使用糸色として決定された色だけでは表現できない場合、使用頻度の高い使用可能糸色から順に使用糸色が増やされていく。そして、設定された複数の使用糸色のうち1色または2色で、調査対象領域jの代表色Aiは表現可能か否かが判断される(S263)。注目領域iに対して設定された1色または2色の使用可能糸色のうち1色が使用糸色の1色と一致する場合、または、注目領域iの使用可能糸色2色が使用糸色のうち2色と一致する場合、代表色iは、使用糸色で表現可能と判断される(S263:YES)。
【0095】
このようにして、使用可能糸色が使用頻度の高い順に使用糸色として追加され、全ての調査対象領域が表現可能な数の使用糸色が設定されると(S264:YES)、RAM12に記憶されている調査フラグが参照され、全ての色別領域について調査フラグがTRUEとされ、調査が完了しているか否かが判断される(S265)。未調査の色別領域がある場合(S265:NO)、処理はステップS251に戻り、再び全ての使用可能糸色の使用頻度fがゼロに初期化される。そして、変数iに1が加算され、次の番号の色別領域が注目領域iとして設定される(S252)。前述のように、すでに注目領域iとされた色別領域およびその接続可能領域は、調査フラグがTRUEとされ、調査済みであるから(S253:YES)、処理はそのままステップS265に進む。注目領域iが未調査の色別領域であれば(S253:NO)、前述と同様の処理が行われる。
【0096】
処理の結果、全ての色別領域について調査フラグがTRUEとされ、調査が完了すると(S265:YES)、使用糸色決定処理は終了し、図14の糸色決定処理に戻る。図14に示すように、使用糸色決定処理(S125)の後、糸色決定処理は終了し、処理は図12に示す第1データ作成処理に戻る。図12に示すように、続いて、第1線分色決定処理が行われる(S21)。第1実施形態では、同じ色別領域に配置された全ての第1線分に、その色別領域の代表色に最も近い色が一律で第1線分色として決定された。第2実施形態では、第1線分の各々について、色別領域の代表色Aiに基づいて前述のように決定された複数の使用糸色から、元の画像の色を反映した1色が選択され、第1線分色として決定される。
【0097】
例えば、第1実施形態の第2データ作成処理(図6参照)における第2線分色の決定方法と同じ方法で、第1線分色を決定すればよい。つまり、特開2001−259268に詳述されている方法に従って、第1領域を構成する複数の画素を順に注目画素として、元画像の参照領域内の色の平均値と、注目画素を中心とする参照領域と同じサイズの領域に配置された線分に対してすでに決定された色の平均値が等しくなるように、注目画素に対応する第1線分の色が決定されればよい。つまり、元画像の色とすでに決定された線分の色とに基づいて、第1線分の各々の色が決定される。第1線分色が決定された後、第1実施形態と同じ方法で、第1線分色毎に第1線分が接続され(S22)、第1データ作成処理は終了する。
【0098】
ここで、以上に説明した第2実施形態における第1データ作成処理(図12〜図18)の具体例について、図19〜図22も参照して説明する。この具体例では、図12に示す第1データ作成処理のステップS12〜S13において、図19に示すように、第1領域R1が、分割数m=3に基づいて色別領域1〜3(以下、単に領域1〜3という)に分割されたものとする。領域1〜3の代表色(RGB値)は、それぞれ赤(255,0,0)、紫(128,0,128)、青(0,0,255)、である。さらに、ステップS14〜S17において、領域1〜3の代表角度が、それぞれ90度、90度、90度として算出され、図20に示すように、領域1〜3の各々に、90度の方向に互いに平行に伸び、各領域の境界線上に両端点を有する第1線分が等間隔で配置されたものとする。配置された線分には、図中左側から順番が付与される。
【0099】
第1データ作成処理におけるその後の処理(図12のS18〜S22)は、具体的には以下のようになる。領域接続処理(S18および図13)では、領域1が注目領域の場合、領域1は、領域2と代表角度が90度で同一であり(図13のS105:YES)、その法線方向0度の方向で領域2と隣接している(S107:YES)。よって、領域2は、領域1の接続可能領域として設定される(S108)。領域1は、領域3とも代表角度は90度で同一であるが(S105:YES)、領域3とは隣接していないので(S107:NO)、領域3は領域1の接続可能領域とはされない。
【0100】
領域2が注目領域の場合、領域2はすでに領域1の接続可能領域として設定されているので(S103:YES)、領域1は領域2の接続可能領域に設定される(S108)。領域2は、領域3と代表角度が90度で同一であり(S105:YES)、その法線方向0度の方向で領域3と隣接している(S107:YES)。よって、領域3は、領域2の接続可能領域として設定される(S108)。領域3が注目領域の場合、領域3は、領域1とは隣接していないので(S107:NO)、領域1は領域3の接続可能領域とはされない。領域3は、領域2の接続可能領域として設定されているので(S103:YES)、領域2は、領域3の接続可能領域に設定され(S108)、領域接続処理は終了する。
【0101】
ユーザがミシン3で使用するために準備した準備糸色は、赤(255,0,0)、紫(128,0,128)、青(0,0,255)、黄(255,255,0)の4色であるものとする。糸色決定処理(S19)では、図14に示すように、閾値r1として、例えば16が設定された後(S121)、前述の4色の準備糸色の各々のRGB値と、4色のうち異なる2色の混色4C2色、つまり6色の混色の各々のRGB値が特定される(S122、S123)。
【0102】
続く使用可能糸色決定処理(図14のS124)では、領域1が注目領域の場合、領域1の代表色の赤(255,0,0)と準備糸色の赤(255,0,0)の距離はゼロであるため、単色判断処理(図15のS204、図16)で、赤が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域1の代表色の赤との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理(図15のS205、図17)では、6色の混色は、いずれも領域1の代表色の赤との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域1の使用可能糸色として、赤1色が設定される。
【0103】
領域2が注目領域の場合、領域2の代表色の紫(128,0,128)と準備糸色の紫(128,0,128)の距離はゼロであるから、単色判断処理で、紫が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域2の代表色の紫との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理では、6色の混色のうち、赤(255,0,0)と青(0,0,255)の混色と領域2の代表色の紫との距離は、閾値r1より小さい。よって、赤と青の準備糸色が、使用可能糸色とされる。他の5色の混色は、いずれも領域2の代表色の紫との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域2の使用可能糸色として、単色の紫と、混色の元である赤と青の3色が設定される。
【0104】
領域3が注目領域の場合、領域3の代表色の青(0,0,255)と準備糸色の青(0,0,255)の距離はゼロであるから、単色判断処理で、青が使用可能糸色として設定される。他の準備糸色は、領域3の代表色の青との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。混色判断処理では、6色の混色は、いずれも領域3の代表色の青との距離が閾値r1以上なので、使用可能糸色とはされない。よって、領域3の使用可能糸色として、青1色が設定される。
【0105】
続く使用糸色決定処理(図14のS125)では、領域1〜3に設定された全ての使用可能糸色、つまり、赤、紫、青の3色の使用頻度fに基づき、使用糸色が決定される。領域1が注目領域とされると、領域1の接続可能領域として領域2が設定されており、さらに、領域2の接続可能領域として領域3が設定されているので、領域1〜3が接続可能領域群として特定され、調査対象グループとされる(図18のS254)。領域1〜3を順に調査対象領域として、使用可能糸の使用頻度が算出されると、赤の使用頻度として2、紫の使用頻度として1、青の使用頻度として2が得られる(S255〜S257)。3色の使用可能糸色を使用頻度でソートすると、赤(2)、青(2)、紫(1)の順になる(S258)。
【0106】
まず、ソート順が1番目の使用可能糸色である赤が使用糸色とされる。赤は領域1の使用可能糸色として設定されているので、領域1の代表色である赤を表現可能である。赤は、青との組合せで領域2の使用可能糸色として設定されており、赤だけでは領域2の代表色である紫を表現できない。よって、ソート順が2番目の使用可能糸色である青が、さらに使用糸色とされる。つまり、使用糸色は、赤と青の2色となる。その結果、これら2色の混色により、領域2の代表色の紫を表現できる。さらに、領域3の代表色の青も、使用糸色の青1色で表現可能である(S260〜S264)。したがって、赤、紫、青の3色の領域1〜3に対して、赤、紫、青の3色の使用可能糸色のうち、赤と青の2色が使用糸色として決定され、糸色決定処理は終了する。
【0107】
その後、前述のように、元画像の色とすでに決定された第1線分色を参照して、各第1線分について、使用糸色である赤と青の2色のうちいずれかが第1線分色として決定される(図12のS21)。領域1に対応する元画像の色は赤に近いので、図21に示すように、領域1に配置された第1線分については、最初の第1線分(最も左の線分)の第1線分色は赤(図中、実線で示す)とされる。領域1に配置された残りの第1線分は、元画像の赤に近い色と、すでに決定された第1線分色の赤が参照されるので、赤が第1線分色とされる。領域2に対応する元画像の色は紫に近いので、元画像の色とすでに決定された第1線分の色を参照して、例えば図21に示すように、交互に赤と青(図中、点線で示す)が第1線分色とされる。領域3に対応する元画像の色は青に近いので、領域3に配置された第1線分については、元画像の色とすでに決定された第1線分の色を参照して、青が第1線分色とされる。
【0108】
このように決定された第1線分色毎に第1線分が接続されると(図12のS22)、図22に示すように、領域1から領域2にかけて、赤の第1線分が配置時に付与された順番が早い方から接続され、領域2から領域3にかけて、青の第1線分が配置時に付与された順番が早い方から接続される。つまり、領域1と領域2、領域2と領域3のように、接続可能領域群として特定された複数の色別領域内で、連続的に第1線分の接続をコントロールすることができる。
【0109】
以上に説明したように、第2実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度を有する複数の色別領域が、代表角度の法線方向に互いに隣接している場合、これらがまとめて接続可能領域群として扱われる。そして、領域群中の色別領域の代表色に応じて決定された使用可能糸色の各々が、領域群中で使用されうる頻度に基づいて、領域群全体の色を表現可能な最小数の使用可能糸色が、実際に使用される使用糸色として決定される。
【0110】
したがって、例えば、前述の具体例のように、接続可能領域群中の3つの色別領域のうち1つを混色表現することで、3つの色別領域を含む領域群全体を2つの使用可能糸色で表現できる場合、実際に使用される糸色は二色となる。このように、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるので、元画像に対応する刺繍模様をなるべく少ない数の糸で表現することができる。また、接続可能領域群に含まれる色別領域の代表角度はすべて同じであるから、領域群内に配置される第1線分はすべて互いに平行となる。その結果、第1線分色毎に線分を接続する際、広い範囲で接続をコントロールできるため、結果として最終的に形成される第1縫目の縫製品質を向上させることができる。
【0111】
第2実施形態では、図12の第1データ作成処理を行うCPU11が、「第1データ作成手段」に相当する。ステップS18および図13に示す領域接続処理を行うCPU11が、「領域群設定手段」に相当する。糸色決定処理(S19および図14)において、図14のステップS124および図15に示す使用可能糸色決定処理を行うCPU11が、「第1決定手段」に相当し、図14のステップS125および図18に示す使用糸色決定処理を行うCPU11が、「第2決定手段」に相当し、図12のステップS22で第1線分色を決定する処理を行うCPU11が、「第3決定手段」に相当する。
【0112】
<第3実施形態>
第2実施形態の第1データ作成処理(図12参照)では、色別領域毎に第1線分が配置されている(S16)。この処理に従えば、前述の具体例の図20〜図22に示すように、互いに接続可能とされた複数の色別領域間の境界線が代表角度に平行な場合、境界線に干渉されることなく、第1線分を複数の色別領域にまたがって接続することができる。一方、例えば、図23に示すように、互いに接続可能な2つの領域1と領域2の代表角度は共に45度であり、その間の境界線Lは90度方向に伸び、代表角度45度には平行でない場合、境界線L上に、領域1に配置された第1線分の端点および領域2に配置された第1線分の端点が設定されることになる。この場合、例えば、領域1の右下角や領域2の左上角の第1線分が短くなりすぎ、第1縫目を形成するのが困難な場合が生じうる。
【0113】
そこで、第3実施形態では、色別領域毎に第1線分を配置するのではなく、互いに接続可能とされた複数の色別領域を1つの色別領域と同様に扱って第1線分を配置する処理が行われる。以下、図24および図25を参照して、第3実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第3実施形態の第1データ作成処理は、図12および図13を参照して説明した第2実施形態の第1データ作成処理および領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0114】
図24に示すように、第3実施形態では、第2実施形態で色別領域毎に行われた第1線分配置処理(図12のS16)は行われない。その代わり、図25に示すように、全ての色別領域について、所定の条件を満たす色別領域を接続可能領域として設定する処理が行われた後(S101〜S110)、色別領域および接続可能領域群毎に第1線分を配置する処理が行われる(S115)。具体的には、RAM12に記憶されているマトリクスが参照され、接続可能領域が設定されていない色別領域については、前述の第2実施形態と同様、その色別領域に第1線分が配置される。また、接続可能領域が設定されている色別領域については、接続可能な全ての色別領域、つまり、接続可能領域群を1つの色別領域とみなして第1線分が配置される。
【0115】
したがって、例えば、図26に示すように、領域1と領域2の間の境界線に第1線分の端点が設定されることがないので、領域1と領域2のいずれかの角に短すぎる第1線分が配置されるのを防止できる。このように、第3実施形態の第1データ作成処理によれば、接続可能領域群を1つの色別領域とみなして第1線分を配置することで、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性を低減できる。
【0116】
第3実施形態では、図25のステップS101〜S110で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS115において第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0117】
<第4実施形態>
第3実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、代表角度が同一の他の色別領域が隣接している場合のみ、これらの色別領域が接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱われている。つまり、ある色別領域の代表角度の法線方向に、代表角度が近い他の色別領域が隣接していても、これらの色別領域は、接続可能領域群とはされない。その結果、これらの色別領域の境界線近くの第1線分が短くなりすぎる可能性がある。
【0118】
そこで、第4実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、その色別領域の代表角度と同一ではないが所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域を接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱い、第1線分を配置する処理が行われる。以下、図27を参照して、第4実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第4実施形態の第1データ作成処理は、図25を参照して説明した第3実施形態の領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0119】
図25に示す第3実施形態の処理では、注目領域iの代表角度θiと比較領域jの代表角度θjとが同一か否かが判断される(S105)のに対し、図27に示すように、第4実施形態では、代表角度θjが代表角度θiから所定の範囲内にあるか否かが判断される(S106)。具体的には、代表角度θiと代表角度θjとの差が、所定の閾値(例えば、5度)以下であるか否かが判断される。所定の閾値は、予め設定され、HDD15の設定値記憶エリア154に記憶された値が使用されてもよいし、ユーザによって入力された値が使用されてもよい。そして、代表角度の差が閾値より大きければ(S106:NO)、比較領域jは注目領域iの接続可能領域として設定されないが、閾値以下の場合には(S106:YES)、代表角度θiの法線方向に隣接する比較領域jは、注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。
【0120】
全ての色別領域を注目領域として、接続可能領域を設定する処理が完了すると(S110:YES)、設定された接続可能領域群毎に、接続可能領域群内で第1線分を配置する角度(以下、第1線分配置角度という)が設定される(S112)。具体的には、RAM12に記憶されているマトリクスが参照され、接続可能領域群が特定され、そこに含まれる複数の色別領域の代表角度に基づいて、第1線分配置角度が設定される。これらの色別領域の代表角度が同一であれば、その角度が第1線分配置角度とされる。代表角度が異なる場合は、例えば、これらの色別領域の代表角度の平均値を第1線分配置角度としてもよい。または、これらの色別領域のうち、最も多くの画素を含む(最も面積が広い)色別領域の代表角度を、第1線分配置角度としてもよい。なお、ステップS101〜S110の処理で、接続可能領域がまったく設定されなかった場合は、ステップS112の処理は省略されればよい。
【0121】
続いて、第3実施形態と同様、色別領域および接続可能領域群毎に第1線分を配置する処理が行われる(S115)。よって、接続可能領域群として設定された、代表角度の法線方向に互いに隣接し、同一ではないが近似した代表角度を有する複数の色別領域についても、1つの色別領域とみなして第1線分を配置する処理が行われる。第1線分が配置された後、領域接続処理は終了する。続く糸色決定処理で、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるように使用糸色が決定された後、元画像の色を参照して第1線分色が決定され、第1線分色毎に第1線分が接続される(図24のS19、S21、S22)。
【0122】
第4実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域を1つの色別領域とみなし、これらの代表角度に基づいて設定される第1線分配置角度に従って第1線分が配置される。したがって、色別領域の形状によって第1線分が短くなりすぎて、縫製品質を損なう可能性をさらに低減できる。また、接続可能領域を設定する条件を緩和して、より多くの色別領域を接続可能領域群とすることで、領域接続処理の後に行われる処理において、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。
【0123】
第4実施形態では、図27のステップS101〜S110で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS115において第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0124】
<第5実施形態>
第4実施形態では、ある色別領域の代表角度の法線方向に、その色別領域の代表角度と同一ではないが所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域が接続可能領域群として1つの色別領域と同等に扱われる。第5実施形態では、このような場合、隣接する色別領域の間に中間領域を設定し、中間領域も含めて接続領域群として第1線分を配置する処理が行われる。以下、図28を参照して、第5実施形態に係る第1データ作成処理について説明する。なお、第5実施形態の第1データ作成処理は、図27を参照して説明した第4実施形態の領域接続処理の一部のみを変更したものである。よって、同一の処理には同一のステップ番号を付して説明は省略し、変更部分についてのみ説明する。
【0125】
図28に示すように、第5実施形態でも、代表角度θiと代表角度θjとの差が、所定の閾値(例えば、5度)以下の場合には(S106:YES)、代表角度θiの法線方向に隣接する比較領域jは、注目領域iの接続可能領域として設定される(S108)。全ての色別領域を注目領域として、接続可能領域を設定する処理が完了すると(S110:YES)、接続可能領域群中の隣接する2つの色別領域の代表角度が異なる場合には、2つの色別領域の間に中間領域を設定する処理が行われる(S113)。互いに接続可能な2つの色別領域が領域1と領域2、それぞれの代表角度がθ1とθ2である場合、中間領域1−2は、角度θ1の直線と角度θ2の直線を境界線として有し、θ1とθ2の間にある角度を代表角度とする領域として設定される。
【0126】
領域2が領域1の代表角度θ1の法線方向である(θ1−90)度方向に隣接しているとすると、中間領域1−2は、例えば次のような方法で設定することができる。まず、領域1の任意の画素を通る角度θ1の仮想線L1を引く。L1が領域2を通過する場合、L1を、(θ1−90+180)度方向に1画素分ずらす。L1が領域2を通過しなくなるまで、同じ処理を繰り返す。領域2を通過しなくなった時点のL1が、領域1と中間領域1−2との境界線として設定される。一方、仮想線L1が、領域2を通過しない場合は、L1を(θ1−90)度方向に1画素分ずらす。領域2を通過するまで、同じ処理を繰り返す。領域2を通過するようになる直前の、領域2を通過しないL1が、領域1と中間領域1−2との境界線として設定される。
【0127】
同様に、領域2の任意の画素を通る角度θ2の仮想線L2を引く。L2が領域1を通過する場合、L1を、(θ2+90−180)度方向に1画素分ずらす。L2が領域1を通過しなくなるまで、同じ処理を繰り返す。領域1を通過しなくなった時点のL2が、領域2と中間領域1−2との境界線として設定される。一方、仮想線L2が、領域1を通過しない場合は、L2を(θ1+90)度方向に1画素分ずらす。領域1を通過するまで、同じ処理を繰り返す。領域1を通過するようになる直前の、領域1を通過しないL2が、領域2と中間領域1−2との境界線として設定される。このように、領域1および領域2のうち、L1とL2で区切られた領域が、中間領域1−2として設定される。中間領域1−2の代表角度θMは、例えば、領域1の代表角度θ1と領域2の代表角度θ2の方向にそれぞれ同じ大きさのベクトルがあると考え、これら2つのベクトルの和のなす角とすればよい。
【0128】
このようにして中間領域1−2が設定されると、領域1、中間領域1−2、領域2の3つの領域が、接続可能領域群として設定される(S114)。例えば、注目領域iと比較領域jのマトリクスに中間領域1−2を示す行と列を追加し、中間領域1−2を、領域1と領域2に該当する色別領域の接続可能領域として設定すればよい。なお、ステップS101〜S110の処理で、接続可能領域がまったく設定されなかった場合は、ステップS113〜S114の処理は省略されればよい。
【0129】
続いて、色別領域および中間領域に、それぞれの領域の代表角度に従って第1線分が配置される(S116)。例えば、中間領域を含む接続可能領域群である領域1、中間領域1−2、領域2には、それぞれ代表角度θ1、θM、θ2の方向に伸び、各領域の境界線上に端点を有する第1線分が配置される。第1線分が配置された後、領域接続処理は終了する。続く糸色決定処理で、接続可能領域群を最小数の糸色で縫製することができるように使用糸色が決定された後、元画像の色を参照して第1線分色が決定され、第1線分色毎に第1線分が接続される(図24のS19、S21、S22)。
【0130】
第5実施形態の第1データ作成処理によれば、同じ代表角度でなくても、ある色別領域の代表角度から所定の範囲内にある近似した代表角度を有する他の色別領域が隣接していれば、これらの色別領域の間に、これらの色別領域の代表角度の間にある角度特徴を代表角度として有する中間領域が設定される。そして、中間領域を含む接続可能領域群が設定される。第4実施形態と同様、このように条件を緩和してより多くの色別領域を接続可能領域群とすることで、より広い範囲で第1線分色毎の第1線分の接続をコントロールできるため、結果として縫製品質を向上させることができる。また、中間領域の代表角度は、元々隣接していた2つの色別領域の代表角度の中間的な角度であるため、元の画像の角度特徴をより適切に反映した自然な縫目を形成することができる。
【0131】
第5実施形態では、図28のステップS113で中間領域を設定するCPU11が、「中間領域設定手段」に相当し、ステップS101〜S110およびステップS114で接続可能領域を設定するCPU11が「領域群設定手段」に相当し、ステップS116で第1線分を配置するCPU11が、「第1線分配置手段」に相当する。
【0132】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第2領域の第2データの作成方法は、第1データの作成方法と異なっていればよく、実施形態のように、各画素の角度特徴とその強度に基づいて第1線分を配置する方法に限られない。例えば、第2領域が図形の輪郭線に相当する形状であれば、輪郭線に沿った少なくとも1本の線上を走り縫いやジグザグ縫い等で縫製するための第2データが作成されればよい。また、第2線分の色も、必ずしも、画素毎に元画像の色やすでに決定された第2線分色を参照して決定する必要はない。第2領域は、色の変化の相対的に激しい領域であり、人間が目で見た時にはっきりと認識できる領域の区切り(エッジ)部分であると考えられる。よって、例えば、全ての第2線分について、第2線分色は黒1色に決定してしまってもよい。この場合、より領域の区切りがはっきりした刺繍模様を得ることができる。
【0133】
実施形態では、第2線分が第1線分よりも後で縫製されるように、第1データの後に第2データが結合されているが、必ずしもこの順番で合成される必要はなく、第2データの後に第1データが結合されてもよい。
【0134】
第1実施形態において、第1線分色は、色別領域の色に最も近い色としたが、第2実施形態等と同様、元画像の色とすでに決定された第1線分色を参照して決定する方法を用いてもよい。
【0135】
第2〜第5実施形態で例示した以外に、ある色別領域が、代表角度をもたない別の色別領域に隣接している場合、代表角度をもたない色別領域の代表角度を、隣接する色別領域の代表角度と同一の角度として、これらの色別領域を接続可能領域群としてもよい。また、代表角度をもたない色別領域が、代表角度を持つ複数の色別領域と隣接している場合には、これらのうち、代表角度をもたない色別領域が接している部分が最も大きい色別領域の代表角度を採用すればよい。
【0136】
実施形態では、使用可能糸色を決定する際、単色または2色の混色のみが候補とされたが、3色以上の混色が候補とされてもよい。また、2色の混色については、各色を1対1の割合で混色し、色別領域の代表色を表現することが前提とされているが、例えば、2対3のように使用比率を変更してもよい。この場合、使用比率で重み付けした上で混色のRGB値を算出し、色別領域の代表色を表現することが可能か否かが判断されればよい。
【0137】
実施形態では、各使用可能糸の使用頻度の計算では、色別領域の面積を考慮していないが、面積が異なる場合には、面積比率で重み付けして計算を行ってもよい。さらに、色別領域の代表色と候補の色とのRGB空間での距離を重み付けとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 刺繍データ作成装置
3 ミシン
11 CPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素の集合体である画像の画像データに基づいて、ミシンにより刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置であって、
前記画像を構成する周波数成分、または、前記画像中の色の連続性の高い方向を示す情報である角度特徴に基づいて、前記画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分を含む領域、または、前記色の変化の大きさを示す強度が所定値以上の前記角度特徴を有する領域である第2領域と、前記全体領域のうち前記第2領域以外の領域である第1領域とに分割する第1分割手段と、
前記第1領域に形成される縫目である第1縫目を示すデータである第1データを作成する第1データ作成手段と、
前記第2領域に形成される縫目である第2縫目を示すデータである第2データを、前記第1データとは異なる方法で作成する第2データ作成手段と、
前記第1データ作成手段によって作成された前記第1データと前記第2データ作成手段によって作成された前記第2データとを合成して、前記画像を表す刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備え、
前記第1データ作成手段は、
前記第1領域を色別に分割するための数を決定する色数決定手段と、
前記第1領域を構成する複数の画素の色に応じて前記第1領域を決定された前記数の色に減色し、前記第1領域を複数の色別領域に分割する第2分割手段と、
前記複数の色別領域の各々の代表的な前記角度特徴である代表角度を算出する代表角度算出手段と、
前記複数の色別領域毎に、前記代表角度算出手段によって算出された前記代表角度に従って、前記第1縫目に対応する線分である第1線分を配置する第1線分配置手段と、
前記ミシンで使用可能な複数の糸色から、前記第1線分の各々に使用される糸色である第1線分色を決定する第1線分色決定手段と、
前記第1線分色決定手段により決定された前記第1線分色毎に前記第1線分を接続して前記第1データを作成する第1線分接続手段とを含むことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項2】
前記第1線分色決定手段は、
前記第2分割手段によって前記複数の色別領域の各々に付与された前記色に基づいて、前記第1線分色を決定することを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項3】
前記第1データ作成手段は、
少なくとも、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に同一の前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを互いに接続可能な領域群として設定する領域群設定手段を更に含み、
前記第1線分色決定手段は、
前記複数の色別領域の各々について、前記ミシンで使用可能な前記複数の糸色のうち、前記第2分割手段によって付与された前記色を表現するのに使用可能な糸色を、使用可能糸色として決定する第1決定手段と、
前記領域群について前記第1決定手段により決定された前記使用可能糸色の各々が前記領域群に使用されうる頻度に基づいて決定される、前記領域群全体の色を表現可能な最小数の前記使用可能糸色と、前記複数の色別領域のうち前記領域群以外の色別領域の色を表現可能な前記使用可能糸色とを、実際に使用される糸色として決定する第2決定手段と、
前記画像データに基づいて、前記第1線分の各々の前記第1線分色を、前記第2決定手段により決定された前記実際に使用される前記糸色のうちいずれか1つに決定する第3決定手段とを含むことを特徴とする請求項2に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項4】
前記第1線分配置手段は、前記領域群設定手段によって設定された前記領域群がある場合、前記領域群を1つの色別領域とみなして前記第1線分を配置することを特徴とする請求項3に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項5】
前記領域群設定手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを、互いに接続可能な前記領域群として設定し、
前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に基づいて算出される角度特徴に従って、前記1つの色別領域とみなされた前記領域群に前記第1線分を配置することを特徴とする請求項4に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項6】
前記第1データ作成手段は、
前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域との間に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に応じた境界線を有し、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度との間にある角度特徴を前記代表角度として有する中間領域を設定する中間領域設定手段を更に含み、
前記領域群設定手段は、前記中間領域設定手段によって前記中間領域が設定された場合、前記複数の色別領域のいずれかと前記中間領域と前記他の色別領域とを、接続可能な前記領域群として設定し、
前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域および前記中間領域の各々に、前記代表角度に従って前記第1線分を配置することを特徴とする請求項3に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項7】
前記第2データ作成手段は、
前記第2領域を構成する複数の画素の各々について算出された前記角度特徴と前記角度特徴の前記強度に基づいて、前記第2縫目に対応する線分である第2線分を前記第2領域内に配置する第2線分配置手段と、
前記画像データに基づいて、前記第2線分の各々に使用される糸色である第2線分色を、前記ミシンで使用可能な複数の糸色のうちいずれか1つに決定する第2線分色決定手段と、
前記第2線分色決定手段により決定された前記第2線分色毎に前記第2線分を接続して、前記第2データを作成する第2線分接続手段とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項8】
前記最終刺繍データ作成手段は、前記第1縫目の縫い順よりも前記第2縫目の縫い順の方が後になるように前記第1データと前記第2データとを合成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段として、刺繍データ作成装置のコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体。
【請求項1】
複数の画素の集合体である画像の画像データに基づいて、ミシンにより刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置であって、
前記画像を構成する周波数成分、または、前記画像中の色の連続性の高い方向を示す情報である角度特徴に基づいて、前記画像の全体領域のうち、所定値以上の周波数成分を含む領域、または、前記色の変化の大きさを示す強度が所定値以上の前記角度特徴を有する領域である第2領域と、前記全体領域のうち前記第2領域以外の領域である第1領域とに分割する第1分割手段と、
前記第1領域に形成される縫目である第1縫目を示すデータである第1データを作成する第1データ作成手段と、
前記第2領域に形成される縫目である第2縫目を示すデータである第2データを、前記第1データとは異なる方法で作成する第2データ作成手段と、
前記第1データ作成手段によって作成された前記第1データと前記第2データ作成手段によって作成された前記第2データとを合成して、前記画像を表す刺繍模様を縫製するための刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備え、
前記第1データ作成手段は、
前記第1領域を色別に分割するための数を決定する色数決定手段と、
前記第1領域を構成する複数の画素の色に応じて前記第1領域を決定された前記数の色に減色し、前記第1領域を複数の色別領域に分割する第2分割手段と、
前記複数の色別領域の各々の代表的な前記角度特徴である代表角度を算出する代表角度算出手段と、
前記複数の色別領域毎に、前記代表角度算出手段によって算出された前記代表角度に従って、前記第1縫目に対応する線分である第1線分を配置する第1線分配置手段と、
前記ミシンで使用可能な複数の糸色から、前記第1線分の各々に使用される糸色である第1線分色を決定する第1線分色決定手段と、
前記第1線分色決定手段により決定された前記第1線分色毎に前記第1線分を接続して前記第1データを作成する第1線分接続手段とを含むことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項2】
前記第1線分色決定手段は、
前記第2分割手段によって前記複数の色別領域の各々に付与された前記色に基づいて、前記第1線分色を決定することを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項3】
前記第1データ作成手段は、
少なくとも、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に同一の前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを互いに接続可能な領域群として設定する領域群設定手段を更に含み、
前記第1線分色決定手段は、
前記複数の色別領域の各々について、前記ミシンで使用可能な前記複数の糸色のうち、前記第2分割手段によって付与された前記色を表現するのに使用可能な糸色を、使用可能糸色として決定する第1決定手段と、
前記領域群について前記第1決定手段により決定された前記使用可能糸色の各々が前記領域群に使用されうる頻度に基づいて決定される、前記領域群全体の色を表現可能な最小数の前記使用可能糸色と、前記複数の色別領域のうち前記領域群以外の色別領域の色を表現可能な前記使用可能糸色とを、実際に使用される糸色として決定する第2決定手段と、
前記画像データに基づいて、前記第1線分の各々の前記第1線分色を、前記第2決定手段により決定された前記実際に使用される前記糸色のうちいずれか1つに決定する第3決定手段とを含むことを特徴とする請求項2に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項4】
前記第1線分配置手段は、前記領域群設定手段によって設定された前記領域群がある場合、前記領域群を1つの色別領域とみなして前記第1線分を配置することを特徴とする請求項3に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項5】
前記領域群設定手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域とを、互いに接続可能な前記領域群として設定し、
前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に基づいて算出される角度特徴に従って、前記1つの色別領域とみなされた前記領域群に前記第1線分を配置することを特徴とする請求項4に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項6】
前記第1データ作成手段は、
前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度の法線方向に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度から所定の範囲内にある前記代表角度を有する他の色別領域が隣接している場合に、前記複数の色別領域のいずれかと前記他の色別領域との間に、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度に応じた境界線を有し、前記複数の色別領域のいずれかの前記代表角度と前記他の色別領域の前記代表角度との間にある角度特徴を前記代表角度として有する中間領域を設定する中間領域設定手段を更に含み、
前記領域群設定手段は、前記中間領域設定手段によって前記中間領域が設定された場合、前記複数の色別領域のいずれかと前記中間領域と前記他の色別領域とを、接続可能な前記領域群として設定し、
前記第1線分配置手段は、前記複数の色別領域および前記中間領域の各々に、前記代表角度に従って前記第1線分を配置することを特徴とする請求項3に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項7】
前記第2データ作成手段は、
前記第2領域を構成する複数の画素の各々について算出された前記角度特徴と前記角度特徴の前記強度に基づいて、前記第2縫目に対応する線分である第2線分を前記第2領域内に配置する第2線分配置手段と、
前記画像データに基づいて、前記第2線分の各々に使用される糸色である第2線分色を、前記ミシンで使用可能な複数の糸色のうちいずれか1つに決定する第2線分色決定手段と、
前記第2線分色決定手段により決定された前記第2線分色毎に前記第2線分を接続して、前記第2データを作成する第2線分接続手段とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項8】
前記最終刺繍データ作成手段は、前記第1縫目の縫い順よりも前記第2縫目の縫い順の方が後になるように前記第1データと前記第2データとを合成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段として、刺繍データ作成装置のコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
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【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−100842(P2012−100842A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251374(P2010−251374)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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