説明

前眼房内での製剤の制御放出

【課題】眼科学的手術中に前眼房構造の完全性を維持し、それにより、前区を形成し補強する組織を潜在的傷害から防護し、同時に縮瞳剤、散瞳剤または麻酔剤を含む製剤の持続的送達をもたらす組成物の提供。
【解決手段】弾性ポリマー、麻酔剤および薬物を含んでなる、眼科学的手術で用いる組成物であって、該粘弾性ポリマーと該麻酔剤と該薬物とがイオン性の粘弾性ポリマー−麻酔剤−薬物複合体を形成し、該薬物が縮瞳剤および散瞳剤からなる群から選ばれる前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科学的手術中に前眼房構造の完全性を維持し、それにより、前区を形成し補強する組織を潜在的傷害から防護し、同時に縮瞳剤または散瞳剤の持続的送達をもたらす、粘弾性ポリマーと縮瞳剤または散瞳剤とを含んでなる組成物に関する。また本発明は、縮瞳剤または散瞳剤の持続的放出がマイクロカプセルまたはコポリマーミセルにより媒介される組成物を提供する。本発明はさらに、非浸潤麻酔の持続的送達をもたらすと同時に前眼房の完全性を維持する粘弾性ポリマー−麻酔薬複合体を含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の解剖学的成分の完全性を維持すると、小さな領域内で行われる眼科学的手術の微細な操作が容易となる。
【0003】
制御し得る1つの成分は前眼房である。図1に示すとおり、前房は角膜と虹彩との間に位置する。虹彩の直ぐ後方には水晶体があり、これは、前房と、硝子体液で満たされているより大きな硝子体腔との間に介在する。前房の完全性を維持すると、その内皮および/または虹彩が手術中に傷つけられる危険性が最小限に抑えられる。ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどの粘弾性物質を前房内へ導入することにより、該房が手術中に崩壊(collapsing)するのが防げる。
【0004】
制御し得る別の成分は瞳孔の大きさである。白内障の手術中は、水晶体への接近を容易にし後房インプラントの挿入が容易になるように瞳孔を拡大させるのが望ましい。これについては、アトロピン(コリン作用性遮断薬)、フェニレフリン(アドレナリン作用性興奮薬)、プロスタグランジン阻害薬などの種々の散瞳薬が使用されており、これまでは主として外的適用により投与されている。
【0005】
これに対して、屈折性インプラントおよび二次的無水晶体(secondary aphakic)インプラントでは、虹彩の外傷を減少させ、虹彩前癒着を防ぎ、虹彩のタッキング(tucking)を妨げ、そしてインプラントの適当な配置を容易にするために、より小さな(「縮瞳した」)瞳孔が望ましい。この目的には、ピロカルピンおよびカルバコール(コリン作用性興奮薬)、およびフィソスチグミン、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェート、イソフルロフェート(コリンエステラーゼ阻害剤)の外的適用が用いられている。
【0006】
しかし、手術中や開いた眼では、局所投薬の効能は低減する。希釈および流出(runoff)により、連続的な高用量の有効な投薬を不可能にする。塩化アセチルコリン、カルバコールなどの縮瞳剤を直接導入する場合であっても、長期にわたる作用は得られず、しばしば、開いた眼への頻繁な繰返し投与が必要となる。
【0007】
有効な薬物レベルを長期にわたり維持するためのこれまでの試みでは、全身もしくは経皮投与、または生分解性(bioerodible)薬物送達装置を眼の外部に配置することを用いることによる持続性薬物送達技術を利用している。そのような方法は、主に、緑内障患者の眼内圧を制御するために用いられている。しかし、本発明以前には、持続的な散瞳剤または縮瞳薬送達と、前房構造の完全性の維持とを組み合わせる方法は創案されていなかった。
【0008】
局所麻酔は眼の手術の最も大事な部分である。角膜および結膜の麻酔には局所剤が用いられており、眼の手術に必要な知覚麻酔および運動性無動を引き起こすために浸潤麻酔法が用いられている。筋肉網膜錐体(muscle cone)に注射すると、これらの薬剤は毛様体神経節、求心性神経および外眼筋に対する運動性神経支配を麻痺させる。しかし、筋肉または血管の外傷により引き起こされる球後出血は、この形態の麻酔の潜在的合併症であり、これは手術処置を実施する上で妨げとなることがある。非常に稀ではあるが、眼球視神経損傷の穿孔、さらには全体的な視力喪失までもが起こる場合がある。さらに、麻酔薬が全身に吸収されると発作や呼吸に関する問題が引き起こされ、ついには死に至ることもある。
【0009】
これらの潜在的合併症を防止するために、腱下(subtenons)注射剤、結膜下注射剤および1以上の外眼筋の直接浸潤を用いる浸潤麻酔法が行われている。このアプローチは、多少扱いにくいものではあるものの、潜在的な麻酔薬関連の合併症を低減してきた。しかし、このアプローチには、特に毛様体および虹彩の処置の際の、結膜水腫、結膜下もしくは腱下での出血、ならびに不完全な知覚的および運動性麻痺などのそれ自体の危険性もある。
【0010】
主要なアプローチとしての嚢外白内障の手術の出現に伴い、麻酔についての別の要件がいくつか生じた。眼球(globe)を固定するために手術処置の際に利用される器械(器具)が利用可能になったため、運動性麻痺の必要性が低減した。取付けに痛みが伴うことがある制御糸の必要は実質的になくなった。残るものは、痛み、特に虹彩の処置によって引き起こされる痛みを防止するという要件である。このような事情で、前房に直接入れる房内(intracameral)麻酔薬が用いられている。
【0011】
房内麻酔薬の使用は有効であり得るが、特に外科医が他のステップに携わっていてさらなる物質を安全に添加することができない場合には、麻酔薬の頻繁な滴注が必要となることがある。さらに、従来の麻酔剤溶液は通常、手術部位、流出チャンネル、並びに虹彩および毛様体の表面を経て眼からすぐに排出されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第96/32951号
【特許文献2】特開昭61−236732号公報
【特許文献3】特開昭52−54014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
望ましいであろうことは、麻酔薬の存在を維持し、同時に房内での存在(placement)の急激な一時的上昇効果(surge effect)および上記の経路を経ることによる即時的損失を低下させる持続的放出系である。さらに望ましいであろうことは、麻酔薬放出の持続、麻酔薬のより均一な経時的放出、および麻酔薬のイオンと眼液中に既に存在するイオンとの間で形成される平衡に関係する浸透圧の制御を達成する薬物送達系である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前眼房構造の完全性を維持し、縮瞳剤もしくは散瞳剤および/または麻酔化合物の持続性放出をもたらすために使用し得る組成物に関する。本発明の種々の実施形態において、本発明の組成物は粘弾性ポリマーを含んでなり、縮瞳剤、散瞳剤および/または麻酔剤の持続性放出がイオン性相互作用により媒介されることを特徴とする。本発明のさらに別の実施形態では、縮瞳剤、散瞳剤および/または麻酔剤の持続性放出は、マイクロカプセルまたはコポリマーミセルにより媒介される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、縮瞳剤、散瞳剤および/または麻酔剤の迅速放出およびより遅い持続性放出の両方をもたらすために使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Clemente, 1978, “Anatomy", LeaおよびFibiger, Philadelphia,図501。
【図2】粘弾性ポリマー−薬物複合体の存在下または不存在下での、眼房水の正常なターンオーバー速度(turnover rate)により生じる前眼房内での縮瞳剤または散瞳剤の希釈作用。曲線Aは、生理食塩水中の未結合型薬物=0.0500モル/リットルを示し;曲線Bは、生理食塩水中の未結合型薬物=0.025モル/リットル+粘弾性ポリマー−薬物複合体=0.0500当量/リットルを示し;曲線Cは、生理食塩水中の粘弾性ポリマー−薬物複合体=0.100当量/リットルを示す。
【図3】麻酔剤−粘弾性ポリマー複合体の存在下または不存在下での、眼房水の正常なターンオーバー速度により生じる前眼房内での麻酔剤リドカインの希釈作用。曲線Aは、生理食塩水中の未結合型麻酔剤=0.0085モル/リットルを示し;曲線Bは、生理食塩水中の未結合型麻酔剤=0.0049モル/リットル+麻酔剤−粘弾性ポリマー複合体=0.150当量/リットルを示し;曲線Cは、生理食塩水中の麻酔剤−粘弾性ポリマー複合体=0.348当量/リットルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
説明を明瞭にするために、発明の詳細な記載を以下の節に分けるが、これは限定的なものではない:
(1)粘弾性ポリマー、
(2)縮瞳剤、
(3)散瞳剤、
(4)麻酔剤、
(5)本発明組成物、および
(6)本発明組成物の使用方法。
【0017】
5.1.粘弾性ポリマー
本発明は、粘弾性ポリマーを含んでなる組成物を提供する。該粘弾性ポリマーとしては、粘弾性ポリマーのアニオン性塩および遊離酸の形態であるヒアルロン酸(ヒアルロネート)、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、カルボキシメチルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、カルボキシメチルヒドロキシエチルグアー、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、ベランガム(welan gum)、ラムサンガム(rhamsan gum)、アガロース、アルギネート、ファーセララン(furcellaran)、ペクチン、アラビアゴム、トラガカンスゴム(gum tragacanth)、カラゲナン、スターチホスフェート、スターチスクシネート、グリコアミノグリカン、多糖、ポリペプチド、アニオン性多糖、アニオン性タンパク質、およびポリペプチド、アニオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリ−N−ビニルピロリドン、アニオン性ポリジメチルアクリルアミド、並びに、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸および2-メタクリロイルオキシエチルスルホン酸のポリマーおよびコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記化合物は、イオン化されていない遊離酸の形態では酸性ポリマーとして機能し、イオン化された形態ではポリマー性アニオンとして機能し得る。
【0018】
本発明の粘弾性ポリマーの分子量は、眼科用の使用に認められている市販のポリマーの、選択するポリマーに応じて、50,000〜8,000,000ダルトンの範囲である。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムの場合には、1,000,000〜5,000,000ダルトンの平均分子量が一般に用いられるが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合には、80,000ダルトンを越える平均分子量が通常用いられる。例えば、眼科学的手術においてヒアルロン酸ナトリウムの場合に通常用いられる分子量は5,000,000ダルトンである。粘弾性ポリマーの濃度は、1mg/ml〜60mg/ml、好ましくは5mg/ml〜30mg/mlの種々の値をとり得る。粘弾性ポリマーの粘度は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースでは1000センチストークス〜60,000センチストークス、好ましくは2,500センチストークス〜5,500センチストークス、ヒアルロン酸ナトリウムでは20,000センチストークス〜40,000センチストークスの種々の値をとり得る。そのような粘度は、該ポリマーを注射または排出(extrusion)により眼内へ導入するのを可能にするだけでなく、前房内に残留させ(言い換えれば、容易に流出させない)、その構造の完全性を維持し、そして容易な回収を許容するに十分な粘性でもある。さらに、本発明の粘弾性ポリマーは水溶性であり、経時的に溶出させることができる。
【0019】
5.2.縮瞳剤
本発明は、縮瞳剤を含んでなる組成物を提供する。該縮瞳剤としては、ピロカルピン、イソピロカルピン、塩酸ピロカルピン、硝酸ピロカルピン、塩酸イソピロカルピン、硝酸イソピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン、硫酸フィゾスチグミン、亜硫酸フィゾスチグミン、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェート、塩化アセチルコリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい剤は、ピロカルピンおよびイソピロカルピン・ファミリーの化合物のメンバーである。
【0020】
本発明の縮瞳剤は、組成物が達成しようとする持続性薬物送達の性質に応じて、中性または荷電カチオン性の形態で使用してもよい。前記で列挙したもののうち、塩基性と考えられる剤としては、ピロカルピン、イソピロカルピンおよびフィゾスチグミンが含まれ;疎水性と考えられる剤としては、ピロカルピン、イソピロカルピンおよびフィゾスチグミンが含まれ;カチオン性と考えられる剤としては、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェート、塩酸ピロカルピン、硝酸ピロカルピン、塩酸イソピロカルピン、硝酸イソピロカルピン、カルバコール、硫酸フィゾスチグミン、塩化アセチルコリンおよび亜硫酸フィゾスチグミンが含まれる。
【0021】
5.3.散瞳剤
本発明は、散瞳剤を含んでなる組成物を提供する。該散瞳剤としては、アトロピン、硫酸アトロピン、塩酸アトロピン、臭化メチルアトロピン、硝酸メチルアトロピン、アトロピンハイパードューリック(atropine hyperduric)、アトロピンN−オキシド、フェニレフリン、塩酸フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、臭化水素酸ヒドロキシアンフェタミン、塩酸ヒドロキシアンフェタミン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、塩酸シクロペントレート、ホマトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、塩酸ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、スコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、塩酸スコポラミン、臭化メチルスコポラミン、硝酸メチルスコポラミン、スコポラミンN−オキシド、トロピカミド、臭化水素酸トロピカミド、塩酸トロピカミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい剤は、アトロピンファミリーおよびフェニレフリン・ファミリーの化合物のメンバーである。
【0022】
本発明の散瞳剤は、組成物が達成しようとする持続性薬物送達の性質に応じて、中性または荷電カチオン性の形態で使用してもよい。前記で列挙したもののうち、塩基性と考えられる剤としては、アトロピン、フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミドが含まれ;疎水性と考えられる剤としては、アトロピン、フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミドが含まれ;カチオン性と考えられる剤としては、硫酸アトロピン、塩酸アトロピン、臭化メチルアトロピン、硝酸メチルアトロピン、アトロピンハイパードューリック(atropine hyperduric)、アトロピンN−オキシド、塩酸フェニレフリン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、臭化水素酸ヒドロキシアンフェタミン、塩酸シクロペントレート、臭化水素酸ホマトロピン、塩酸ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、臭化水素酸スコポラミン、塩酸スコポラミン、臭化メチルスコポラミン、硝酸メチルスコポラミン、スコポラミンN−オキシド、トロピカミド、臭化水素酸トロピカミドが含まれる。
【0023】
5.4.麻酔剤
本発明は、電荷がカチオン性(カチオン性アミン塩)かまたは電荷が潜在的にカチオン性(非帯電アミノ基)である麻酔剤を含んでなる組成物を提供する。そのような剤としては、リドカイン、プロパラカイン、テトラカイン、フェナカイン、ナエパイン(naepaine)、リドカイン、コカイン、ベトキシカイン(betoxycaine)、ブピバカイン、ブタカイン、ブタニリカイン(butanilicaine)、ブトキシカイン、カルチカイン(carticaine)、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、エチドカイン、ホルムカイン(formcaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine)、ヒドロキシテトラカイン(hydroxytetracaine)、ロイシノカイン(leucinocaine)、メピバカイン、メプリルカイン(meprylcaine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、ミルテカイン(myrtecaine)、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン、オキセサジン(oxethazine)、パレトキシカイン(parethoxycaine)、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、プフィロカイン(pfilocaine)、プロカイン、プロパノカイン(propanocaine)、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン(propoxycaine)、シュードカイン(pseudocaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、トリルカイン(tolylcaine)、トリカイン(tricaine)およびトリメカイン(trimecaine)が含まれる。好ましい剤はリドカイン、プロパラカインおよびテトラカインである。
【0024】
本発明の麻酔剤は、組成物によって達成しようとする持続的薬物送達の方法に応じて、中性で非荷電の形態、または荷電カチオン性の形態で用い得る。上記に列挙したもののうち、中性の化合物は全て、第1級アミノ基、第2級アミノ基および/または第3級アミノ基を含み、荷電カチオン性基は、それらアミノ基の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸(mesylate)塩、酪酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩を含み、これらは、それぞれの酸によるそれら第1級、第2級または第3級アミノ基のプロトン付加によって得られるものである。中性アミノ系麻酔剤としては、リドカイン、テトラカイン、プロパラカイン、ナエパイン、コカイン、フェナカイン、ベトキシカイン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタニリカイン、ブトキシカイン、カルチカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメトカイン、エチドカイン、ホルムカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、ロイシノカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサジン、パレトキシカイン、ピペロカイン、ピリドカイン、ピリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードカイン、ピロカイン、ロピバカイン、トリルカイン、トリカインおよびトリメカインが含まれる。荷電カチオン性麻酔剤は、上記のものから、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メチルスルホン酸、酪酸、酢酸、クエン酸および酒石酸などの酸によるプロトン付加によって調製される。
【0025】
5.5.本発明の組成物
本発明は、前記のような縮瞳剤、散瞳剤および/または麻酔剤の持続性放出をもたらす組成物であって、該剤の放出が、(1)イオン性(酸−塩基を含む)相互作用、(2)マイクロカプセル、または(3)コポリマーミセルにより媒介される該組成物を提供する。該組成物はまた、前眼房構造の完全性を維持するための手段を提供する。
【0026】
第1の組の非限定的実施形態において、本発明は、縮瞳剤または散瞳剤の持続性放出が、該剤と粘弾性ポリマーとのイオン性相互作用により達成される組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物は、アニオン性の粘弾性ポリマーとカチオン性の縮瞳剤または散瞳剤とを含んでなるものとすることができ、この場合、組成物のカチオン性の剤は、眼内に入ると、内因性のナトリウムもしくはカリウムイオンまたは他の天然に存在するカチオンで置き換えられることにより放出され得る。1つの具体的な非限定的実施形態では、アニオン性粘弾性ポリマーはヒアルロン酸ナトリウムとすることができ、カチオン性の剤は散瞳剤である硫酸アトロピンとすることができる。この場合、組成物の調製において、過剰の硫酸アトロピンをより少量のヒアルロン酸ナトリウムの存在下で使用し、次いで透析することにより、硫酸ナトリウム(および重硫酸塩)を除去する。高純度のアトロピンヒアルロネートを得るために、この工程を何度か繰り返してもよい。別の具体的な非限定的実施形態では、アニオン性粘弾性ポリマーはコンドロイチン硫酸とすることができ、カチオン性の剤は縮瞳剤であるピロカルピンとすることができ、これらは、コンドロイチン硫酸ナトリウムと塩酸ピロカルピンとを相互作用させることにより結合させてもよい。さらに別の具体的な非限定的実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムと塩酸フェニレフリンとのイオン交換相互作用を行ってフェニレフリンヒアルロナートを得ることができる。
【0027】
第2の関連した組の非限定的実施形態において、本発明は、縮瞳剤または散瞳剤の持続性放出が、該剤と粘弾性ポリマーとのイオン性の酸−塩基相互作用により達成される組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物は、酸性粘弾性ポリマーと塩基性縮瞳剤または散瞳剤とを含んでなるものとすることができ、この場合、該組成物は、ほぼpH中性の眼環境におかれると、既に存在するカチオンが薬物とイオン的に置き換わることにより、該縮瞳剤または散瞳剤の比較的遅い放出をもたらす。1つの具体的な非限定的実施形態では、酸性粘弾性ポリマー酸はヒアルロン酸とすることができ、塩基性の剤は散瞳剤であるアトロピンとすることができる。組成物中でこれらの2つの化合物を結合させる場合には、ポリマー性塩であるアトロピンヒアルロネートが生成し得る。別の具体的な非限定的実施形態では、ヒアルロン酸と塩基性縮瞳薬であるピロカルピンとを、水中で5〜50℃の温度範囲で相互作用させ(ここで、ピロカルピンは多価酸によりプロトン付加され、粘弾性ポリマーの塩になる)、次いで透析または限外濾過により未反応のピロカルピンを除去することができる。あるいはまた、得られたピロカルピンヒアルロネート組成物は次いで、滅菌し、使用に適切なpHおよびオスモル濃度(osmolality)に調整してもよいし(例えば、pH範囲は約6.8〜7.8、好ましくは7.2〜7.4、オスモル濃度は285±55mOsm/kg、好ましくは290〜320mOsm/kgであるが、これらに限定されるものではない)、あるいは、減圧乾燥または凍結乾燥することにより回収してもよい。本発明のさらに別の具体的な非限定的実施形態では、過剰のフェニレフリンを使用することにより、水溶液中でヒアルロン酸を散瞳剤であるフェニレフリンと相互作用させ、次いで透析してフェニレフリンヒアルロナートを得ることができる。
【0028】
前眼房からの縮瞳剤または散瞳剤の持続性放出に関する非限定的具体例において、図2は、眼房水容量310マイクロリットルおよび眼房水ターンオーバー速度1.5マイクロリットル/分を用いる3つの代表的な状態を示す(Schoenwald, 1993, “Pharmacokinetics in Ocular Drug Delivery" (第10章), Biopharmaceuticals of Ocular Drug Delivery, CRC Press, Inc., Boca Raton, F1.)。未結合型薬物についての単位はモル/リットルで示し、粘弾性ポリマーについての単位は当量/リットルの単位で示し、これにより、任意の縮瞳または散瞳薬を含む任意の粘弾性ポリマーが説明される。
【0029】
図2では、曲線Aは未結合型薬物を示す。この場合、初期濃度0.0500モル/リットルは、眼房水のターンオーバー速度により生じた6時間の眼内希釈後に0.0084モル/リットルにまで減少する。
【0030】
図2の曲線Bは、未結合型薬物(粘弾性ポリマーは存在しない)とイオン複合化(結合型)薬物−粘弾性ポリマーとの組み合わせを示す。この曲線では、粘弾性ポリマー−薬物複合体の推定協同的結合定数は5×10-2である(Hayakawaら, 1983, Macromolecules 16:1642 )。この値は、ドデシルトリメチルアンモニウムイオンの親水性カチオンに対してカルボキシメチルセルロース(モデル的アニオン性粘弾性ポリマーとして)に関して求められた。曲線Bから、未結合型薬物の初期濃度が0.0500モル/リットルの場合、眼房水ターンオーバーの6時間の時点で、0.0340モル/リットルの薬物が前房中に残存することがわかる。この最終濃度は、6時間後に観察された未結合型薬物の最終濃度の4倍を上回る。
【0031】
図2の曲線Cは、イオン複合化(結合型)薬物−粘弾性ポリマーを示し、この場合、初期濃度の0.100当量/リットル(これは、未結合型薬物の0.500モル/リットルの平衡初期濃度を与える)は、眼内で6時間後には、眼房水のターンオーバーにより0.0354モル/リットルに減少する。この最終濃度は、未結合型薬物の最終濃度の4倍を越え、曲線Bのものより少し大きい。この曲線では、粘弾性ポリマー−薬物複合体の推定協同的結合定数は5×10-2である(Hayakawaら,1983,Macromolecules 16:1642 )。
【0032】
したがって、図2から、2つの状態のイオン複合化縮瞳または散瞳薬/ポリマー複合体は、未結合型薬物と比べて、前眼房内での経時的な薬物の持続性放出効果を明らかに実証していることがわかる。
【0033】
第3の組の非限定的実施形態では、本発明は、水性媒体中で可溶性または膨潤性、好ましくは生分解性であり、それ自体が縮瞳剤または散瞳剤を含むマイクロカプセルを含んでなる組成物であって、該マイクロカプセルが徐々に溶解し、分解しまたは膨潤するにつれて該剤が経時的に溶出され得る組成物を提供する。典型的には、そのようなマイクロカプセルは、望ましくは、光散乱および視覚障害を防ぐため、光の波長より小さい。この方法では、マイクロカプセルの形成中に、選択した剤をマイクロカプセル内に取り込ませる。通常マイクロカプセルの粘度は低いため、前房を維持するために粘弾性ポリマーを加えてもよい。
【0034】
可溶性マイクロカプセルは、ポリ−DL−ラクチド、ポリ−DL−ラクチド−コ−グリコリドなどの本質的に生分解性のポリマーに由来するものであってもよく、その乾燥形態において、適当な剤を含有するマイクロカプセルにしてもよい(Clarkeら,1994,Polymer Preprints 35 (2):73)。あるいはまた、可溶性マイクロカプセルは、pH感受性ポリマーに由来するものであってもよく、この場合、pH変化によりマイクロカプセルの膨張が生じさせることができ、これは持続性放出性薬物送達系につながるものである。そのようなpH感受性ポリマーの一例は、ポリ(L) −リシン−アルト−テレフタル酸であり、これは6を越えるpH値で膨張する(Makinoら,1994,Polymer Preprints 35:54)。縮瞳剤または散瞳剤を含有する生分解性マイクロカプセルは、一定期間後に分解するポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリドなどのポリマーを用いて製造し得る。
【0035】
第4の組の非限定的実施形態では、本発明は、縮瞳剤または散瞳剤を含む可溶性コポリマーミセルを含んでなり、該ミセルが親水性および疎水性部分を含み、該剤(その非荷電形態で)が該コポリマーミセルの疎水性部分に吸収される(Arcaら, 1994, Polymer Preprints 35:71)ことを特徴とする組成物を提供する。平衡時には、フェニレフリンなどの疎水性薬物はコポリマーミセルの内部および外部の両方に残留することが予想され得る。調製物が前眼房内に入ると、外部の剤が除かれるにつれて、内部剤が徐々に放出され得る。そのようなコポリマーミセルは、好ましくは、親水性−疎水性または親水性−疎水性−親水性の性質を有するものであってもよい。好ましくは、親水性ブロックは、エチレンオキシドに由来し、疎水性ブロックはプロピレンオキシドに由来する(エチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーは、PluronicまたはPloxamerの商品名で販売されている)。前房構造の完全性を維持するために、コポリマーミセルを含んでなる組成物を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの粘弾性ポリマーと混合してもよい。
【0036】
本発明はさらに、複数の縮瞳剤、散瞳剤および/または麻酔剤を任意の組合せで含んでなる組成物を提供する。
【0037】
組成物中に存在する縮瞳剤または散瞳剤の量は、所望の治療効果(すなわち、所望の時間にわたり所望の瞳孔の大きさ)を与える量とすることができる。そのような量は剤によって種々異なるが、当業者に公知の用量−反応関係を用いれば容易に決定し得る。縮瞳剤または散瞳剤の濃度は、0.001mg/ml〜20mg/ml、好ましくは0.025mg/ml〜10mg/mlの種々の値を取り得る。1つの具体的な非限定的具体例では、縮瞳薬が塩化アセチルコリンであり、アセチルコリンヒアルロナートを含む塩化アセチルコリンの溶液を用いてポリマー/薬物複合体製剤を調製することができ、この場合、アセチルコリン濃度は10mg/mlであってもよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。別の具体的な非限定的具体例では、縮瞳剤が塩酸ピロカルピンであり、ピロカルピンヒアルロナートを含む塩酸ピロカルピンの溶液を用いてポリマー/薬物複合体製剤を調製することができ、この場合、ピロカルピン濃度は1mg/mlであってもよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。さらに別の具体的な非限定的具体例では、散瞳薬である硫酸アトロピンが用いられ、硫酸アトロピンを含有するアトロピンヒアルロネートの溶液を調製することができ、この場合、アトロピン濃度は0.3mg/mlとしてもよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。この段落の上記の各例では、カチオン性薬物を、滅菌水中でポリマー−薬物複合体と混合してもよく、次いで中性の剤であるマンニトールによりオスモル濃度を調整してもよい。
【0038】
本発明は、上記のような麻酔剤の持続性放出をもたらす組成物を提供するものであり、ここで、該剤の放出は、粘弾性ポリマーと麻酔薬とのイオン性相互作用によって媒介される。この組成物は、前眼房構造の完全性を維持するための手段も提供する。
【0039】
第5の組の非限定的実施形態において、本発明は、麻酔剤の持続性放出が該麻酔剤と粘弾性ポリマーとのイオン性相互作用によって達成される組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物はアニオン性粘弾性ポリマーおよびカチオン性麻酔剤を含むものとすることができ、ここで、該組成物の該カチオン性の剤は、眼内に入ると、内因性のナトリウムもしくはカリウムイオンまたは他の天然に存在するカチオンとの置き換えによって放出され得る。1つの具体的な非限定的実施形態において、該アニオン性粘弾性ポリマーはヒアルロン酸ナトリウムとすることができ、該カチオン性の剤は塩酸リドカインとすることができ、この場合、組成物の調製において、より少量のヒアルロン酸ナトリウムの存在下で過剰の塩酸リドカインを用い、続いて透析することにより塩化ナトリウムは除去される。高純度のリドカインヒアルロネートのイオン性複合体を得るために、この方法を何度か繰り返してもよい。別の具体的な非限定的実施形態において、該アニオン性粘弾性ポリマーはコンドロイチン硫酸ナトリウムとすることができ、該カチオン性の剤は麻酔薬である塩酸テトラカインとすることができ、これらはコンドロイチン硫酸ナトリウムと塩酸テトラカインとを相互作用させることによって結合させて、テトラカインコンドロイチン硫酸のイオン性複合体を得てもよい。さらに別の具体的な非限定的実施形態において、ヒアルロン酸ナトリウムと塩酸プロパラカインとのイオン交換相互作用を行って、プロパラカインヒアルロネートのイオン性複合体を得ることができる。
【0040】
第6の関連する組の非限定的実施形態において、本発明は、麻酔剤の持続性放出が該剤と粘弾性ポリマーとのイオン性酸−塩基相互作用によって達成される組成物を提供する。特定の実施形態において、組成物は、酸性の粘弾性ポリマー(その遊離酸の形態)および塩基性の麻酔剤(その中性アミノの形態)を含むものとすることができ、この組成物の場合、眼に入ると、既に存在するカチオンから該薬物がイオン的に置き換わることによって該麻酔剤の比較的遅い放出をもたらす。1つの具体的な非限定的実施形態では、該酸性の粘弾性ポリマーはヒアルロン酸とすることができ、該塩基性の剤は中性の麻酔剤リドカインとすることができる。これら2つの化合物を組成物中で酸−塩基相互作用によって結合する場合、ポリマー性複合体であるリドカインヒアルロネートが形成され得る。別の具体的な非限定的実施形態において、ヒアルロン酸と塩基性麻酔剤プロパラカインとを水中で5〜50℃の温度範囲で相互作用させて(ここで、該プロパラカインは該多価酸によりプロトン付加され、該粘弾性ポリマーの塩となる)、続いて透析、濾過または限外濾過して未反応のリドカインを除去することができる。あるいはまた、こうして得られたリドカインヒアルロネート組成物は次いで、滅菌し、使用に適切なpHおよびオスモル濃度(例えば、この場合、pH範囲は約6.8〜7.8、好ましくは7.2〜7.4であり、オスモル濃度は285±55mOsm/kg、好ましくは290〜320mOsm/kgであるが、それらに限定されない)に調整してもよいし、あるいは減圧乾燥もしくは凍結乾燥によって回収してもよい。本発明のさらに別の具体的な非限定的実施形態では、ヒアルロン酸と麻酔剤プロパラカインとを水系溶液中で過剰なプロパラカインを用いて相互作用させ、続いて濾過および透析して、イオン性ポリマー性複合体であるプロパラカインヒアルロネートを得ることができる。
【0041】
麻酔剤の持続性放出に関連する非限定的な例において、図3に、1.5マイクロリットル/分の眼房水ターンオーバー速度を用いた3つの代表的な状態を示す(Schoenwald, 1993, “Pharmacokinetics in Ocular Drug Delivery” (第10章), Biopharmaceuticals of Ocular Drug Delivery, CRC Press, Inc., Boca Raton FL)。未結合型の麻酔剤についての単位はモル/リットルで示し、粘弾性ポリマーについての単位は当量/リットルで示し、これらにより、任意の粘弾性ポリマーと任意の麻酔薬との組合せが説明される。麻酔剤(例としてリドカインを用いた)の総初期濃度は0.0085モル/リットルである。
【0042】
リドカインは、60〜80%のタンパク質結合型リドカインを用いた場合に1〜4μg/mlの濃度で血漿と結合することが報告されている[ASTRA Pharmaceutical Co., 製品案内書、Xylocaine(塩酸リドカイン)]。この結合が本質的に血漿中でのカチオン性リドカインとアニオン性基とのイオン性のものであると仮定すれば、リドカインとアニオン性ポリマーとの結合についての理論上の平衡定数は0.433である。
【0043】
図3において、曲線Aは未結合型麻酔剤を示し、初期濃度0.00850モル/リットルは、眼房水のターンオーバー速度によって生じる前眼房(全容量は0.8ml)内での6時間の希釈後には0.00143モル/リットルにまで低減する。これは、83%のリドカイン濃度の低下である。
【0044】
図3の曲線Bは、未結合型リドカイン(粘弾性ポリマーは存在せず)とイオン複合化(結合型)麻酔剤−粘弾性ポリマー複合体との組合せを示す。この曲線において、麻酔剤−粘弾性ポリマー複合体の理論上の平衡定数は0.433である。曲線Bから、未結合型麻酔剤の初期濃度が0.0490モル/リットルであり、かつ結合型麻酔剤の濃度が0.150当量/リットル(未結合型リドカインの初期濃度0.00850モル/リットルをもたらす)の場合には、眼房水(aqueous)ターンオーバーが6時間の時点で、前房中に0.00512モル/リットルのリドカインが残存することがわかる。これは40%のリドカイン濃度の低下である。しかし、この最終濃度は、6時間後に観察された未結合型薬物の最終濃度の3.6倍を上回る。
【0045】
図3の曲線Cは、平衡定数0.433を用いたイオン複合化(結合型)麻酔剤−粘弾性ポリマーを示し、ここで、初期濃度0.348当量/リットル(未結合型リドカインの初期濃度0.0085モル/リットルをもたらす)は、眼房水のターンオーバー速度によって、眼内で6時間後に、リドカイン0.00621モル/リットルにまで低減する。この最終濃度は、その初期濃度から27%という最も穏やかなリドカイン濃度低下を表わしている。さらに、麻酔剤−ポリマー複合体から得たこの最終リドカイン濃度は、未結合型麻酔剤の最終濃度の4.3倍を上回り、麻酔剤−ポリマー複合体の存在下での未結合型麻酔剤の最終濃度(曲線B)よりも約17%高いものである。
【0046】
このように、図3から、2つの状態の粘弾性ポリマーとのイオン複合化麻酔剤が、未結合型麻酔剤と比較した場合の前眼房内での麻酔剤の経時的持続性放出の効果を明らかに実証していることがわかる。
【0047】
本発明はさらに、複数の麻酔剤および/または複数の粘弾性ポリマーを含んでなる組成物を提供する。
【0048】
組成物中に存在する麻酔剤の量は、所望の治療効果(つまり所望の麻酔レベル)を生じる量の範囲内である。そのような量は剤によって様々であるが、当業者に公知の用量−作用関係を用いれば容易に決定し得る。麻酔剤の濃度は1mg/ml〜50mg/ml、好ましくは5mg/ml〜20mg/mlで様々な値をとり得る。1つの具体的な非限定的例では、麻酔剤は塩酸リドカインであり、リドカインヒアルロネートを含む塩酸リドカインの溶液を用いて麻酔剤−ポリマー複合体製剤が調製でき、この場合、リドカイン濃度は20mg/mlであってよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。さらに別の具体的な非限定的例では、麻酔剤である塩酸テトラカインを用い、塩酸テトラカインを含むテトラカインヒアルロネートの溶液を用いて麻酔剤−ポリマー複合体製剤が調製でき、この場合、テトラカイン濃度は5〜20mg/mlとしてもよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。さらに別の具体的な非限定的例では、麻酔剤プロパラカインを用い、塩酸プロパラカインを含むプロパラカインヒアルロネートの溶液を調製することができ、この場合、プロパラカイン濃度は5〜20mg/mlとしてもよく、オスモル濃度はマンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。この段落の上記の例の各々において、カチオン性麻酔剤をポリマー−麻酔剤複合体と滅菌水中で混合してもよく、次いでオスモル濃度を中性の剤マンニトールにより調整してもよい。さらに別の具体的な非限定的例では、麻酔剤−ポリマー複合体をさらなる粘弾性ポリマー溶液と混合することができ、オスモル濃度は中性の剤マンニトールにより305mOsm/kgに調整してもよい。
【0049】
本発明はさらに、縮瞳剤または散瞳剤と組合せた麻酔剤の持続性放出をもたらす組成物を提供する。具体的には、本発明は、粘弾性ポリマー−麻酔剤−縮瞳薬複合体および粘弾性ポリマー−麻酔剤−散瞳薬を包含するものであり、ここで、麻酔剤および薬物の放出は、粘弾性ポリマーと麻酔剤と縮瞳剤もしくは散瞳剤とのイオン性相互作用によって媒介される。そのような組成物はまた、前眼房構造の完全性を維持するための手段も提供する。
【0050】
眼科学的手術中には前眼房のオスモル濃度を維持することが重要であるため、本発明の組成物は、それらの眼内への導入により前房のオスモル濃度が不利に変化しないようなオスモル濃度を示すのが好ましい。前房の天然含有物のオスモル濃度は、301〜305mOsm/kgと報告されている(Geigy Scientific Tables,第1巻, C. Lentner 編, 第8版,1981, Basle, Switzerland)。粘弾性ポリマー薬物イオン複合体のオスモル濃度は、塩形態の過剰な薬物により(例えば、塩化フェニレフリンの3.0%溶液は、0.9重量%NaCl溶液と等張である)、あるいはグリセリン(その2.6重量%溶液が0.9重量%NaCl溶液と等張である)又はマンニトール(その5.07%溶液が0.9重量%NaCl溶液と等張である)などの中性の剤の溶液によりまたはそれと組み合わせることにより維持し得る。ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを含有していてもよい通常の等張溶液を用いると、そのようなイオンがイオン複合化薬物と早く置換しすぎて、それを溶液中に放出させることがあり、ポリマー−薬物平衡を再調整するためには、過剰のカチオン性薬物を加えることが必要かもしれない。本発明の好ましい実施形態では、組成物のオスモル濃度は約280〜340mOsm/kg、好ましくは約280〜340mOsm/kgであり得る。
【0051】
前眼房構造の完全性を維持するためには、本発明の組成物は、外科的処置中に該房の崩壊を防ぐのに十分な程度に粘性でなければならない。しかしながら、組成物はまた、それを注射または排出(extrusion)により前房内へ導入し、そして外科的処置の終了時にそれを除去する(例えば、洗浄により)のが十分可能な程度に流動性であるべきでもある。したがって、本発明の組成物の粘度は、1,000〜60,000 センチストークス、好ましくは2,500〜40,000センチストークスである。粘弾性ポリマーを用いる場合には、粘弾性ポリマーの濃度は、好ましくは、水溶液(好ましくは等張溶液)中で約10mg/ml〜30mg/mlである。
【0052】
5.6.本発明組成物の使用方法
本発明の組成物は、嚢内および嚢外手術および瘻管形成処置を含む瞳孔を拡張させながら行うのが望ましい処置、並びに硝子体/角膜癒着の外科的分離、虹彩/角膜癒着の分離、有水晶体屈折(phakic refractive)インプラントおよび二次的無水晶体(secondary aphakic)インプラントの配置などの前区手術を含む瞳孔を縮瞳させながら行うのが望ましい処置など、種々の眼科学的外科処置中に使用する場合に特に有用である。
【0053】
例えば、本発明の散瞳剤を含んでなる組成物は、局所または球後麻酔下で行う標準的な嚢外白内障手術で使用し得るが、これらに限定されるものではない。球後麻酔は、虹彩を拡張または収縮点眼剤に対してある程度より感受性にする傾向がある(スターリングの法則)ことに注意すべきである。次いで、適当な嚢切開の前および/または後に、本発明の散瞳組成物を前房内へ注射してもよい。次いで、白内障の洗浄、吸引、圧出または水晶体超音波吸引を行ってもよい。次いで、インプラントを挿入してもよいし、残留する散瞳粘性物質を眼から洗い出してもよい。そのような処置において、本発明の組成物は、水晶体の摘出およびインプラント配置に有用と考えられる。
【0054】
別の非限定的例では、本発明の縮瞳組成物は、標準的な近視性屈折インプラント配置処置において使用してもよい。穿刺術を行った後、縮瞳組成物を前房内へ注射してもよい。次いで、侵入切開を行ってもよく、インプラントを配置してもよく、創傷を縫合してもよく、そして粘稠な縮瞳組成物を眼から洗い出してもよい。
【0055】
本発明の組成物を用いることにより、いくつかの利点が得られる。まず第1に、本発明は、眼科学的手術において有用な機械的活性および薬学的活性の両方を同時にもたらし得る組成物を提供する。第2に、本発明の組成物を使用することにより、手術中に縮瞳剤または散瞳剤の持続性放出性をもたらす手段に関して長い間切望されていた課題が満足され得る。第3に、本発明の組成物は、縮瞳剤を含まない粘弾性溶液の使用に伴う眼内圧の上昇を予防または抑制し得る。第4に、本発明の組成物を用いることにより、手術直後の段階で瞳孔の拡張を維持して、虹彩後または虹彩前癒着を予防し得る。
【0056】
さらに、房の喪失および低張を伴う通常の手術中には、虹彩の正常状態および機能の喪失が生じる。本発明の粘性組成物は、房およびある程度の眼内圧を維持し、長時間にわたって虹彩と接触しているため、房の維持、虹彩の正常状態および反応の強化、および薬物送達が同時に達成されるように貯蔵効果(reservoir effect)が確立される。さらに、縮瞳が望まれる場合には特に、縮瞳剤の長期効果により、粘弾性物質の潜在的昇圧能が減弱し得る。
【0057】
さらなる非限定的実施形態において、本発明の粘弾性ポリマー−麻酔剤を含む組成物は、白内障手術、緑内障手術および他の眼内手術で用いる場合に特に有用である。例えば、角膜および結膜の麻酔には局所麻酔が用いられる。次いで穿刺術を行って前房をゆっくり排液させ、穿刺部位から粘弾性ポリマー−麻酔剤複合組合せと置き換える。該房を所望のレベルの深さにして、手術処置を開始する。
【0058】
本明細書には種々の刊行物を引用しているが、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性ポリマーと有効量の麻酔剤とを含んでなる、眼科学的手術で用いる組成物。
【請求項2】
前記粘弾性ポリマーが酸性であり、かつ前記麻酔剤が塩基性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粘弾性ポリマーがアニオン性であり、かつ前記麻酔剤がカチオン性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粘弾性ポリマーと前記麻酔剤とが粘弾性ポリマー−麻酔剤複合体を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
弾性ポリマー、麻酔剤および薬物を含んでなる、眼科学的手術で用いる組成物であって、該粘弾性ポリマーと該麻酔剤と該薬物とがイオン性の粘弾性ポリマー−麻酔剤−薬物複合体を形成し、該薬物が縮瞳剤および散瞳剤からなる群から選ばれる前記組成物。
【請求項6】
前記縮瞳剤および散瞳剤が、アトロピン、ピロカルピン、フェニレフリン、イソピロカルピン、アセチルコリン、硫酸アトロピン、塩酸ピロカルピン、塩酸フェニレフリン、塩化アセチルコリン、塩酸ピロカルピンおよび塩酸イソピロカルピンからなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記粘弾性ポリマーが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、カルボキシメチルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、ベランガム(welan gum)、ラムサンガム(rhamsan gum)、アガロース、アルギネート、ファーセララン(furcellaran)、ペクチン、アラビアゴム、トラガカンスゴム(gum tragacanth)、カラゲナン、スターチホスフェート、スターチスクシネート、グリコアミノグリカン、多糖、ポリペプチド、並びにアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸および2-メタクリロイルオキシエチルスルホン酸のポリマーおよびコポリマーの1種以上からなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記粘弾性ポリマーが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、カルボキシメチルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、ゲランガム、ベランガム、ラムサンガム、アガロース、アルギネート、ファーセララン、ペクチン、アラビアゴム、トラガカンスゴム、カラゲナン、スターチホスフェート、スターチスクシネート、グリコアミノグリカン、多糖、ポリペプチド、並びにアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸および2-メタクリロイルオキシエチルスルホン酸のポリマーおよびコポリマーの1種以上からなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記麻酔剤が、リドカイン、プロパラカイン、テトラカイン、フェナカイン、ナエパイン(naepaine)、コカイン、ベトキシカイン(betoxycaine)、ブピバカイン、ブタカイン、ブタニリカイン(butanilicaine)、ブトキシカイン、カルチカイン(carticaine)、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、エチドカイン、ホルムカイン(formcaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine)、ヒドロキシテトラカイン(hydroxytetracaine)、ロイシノカイン(leucinocaine)、メピバカイン、メプリルカイン(meprylcaine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、ミルテカイン(myrtecaine)、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン、オキセサジン(oxethazine)、パレトキシカイン(parethoxycaine)、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、ピリロカイン(pirilocaine)、プロカイン、プロパノカイン(propanocaine)、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン(propoxycaine)、シュードカイン(pseudocaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、トリルカイン(tolylcaine)、トリカイン(tricaine)およびトリメカイン(trimecaine)からなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記麻酔剤が、リドカイン、プロパラカイン、テトラカイン、フェナカイン、ナエパイン、コカイン、ベトキシカイン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタニリカイン、ブトキシカイン、カルチカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメトカイン、エチドカイン、ホルムカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、ロイシノカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサジン、パレトキシカイン、ピペロカイン、ピリドカイン、ピリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードカイン、ピロカイン、ロピバカイン、トリルカイン、トリカインおよびトリメカインからなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がリドカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がリドカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がテトラカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がテトラカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がプロパラカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がプロパラカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がフェナカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がフェナカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がコカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がコカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項21】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がナエパインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸であり、かつ前記麻酔剤がナエパインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項23】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸リドカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸リドカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項25】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸プロパラカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸プロパラカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項27】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸フェナカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸フェナカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項29】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸コカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸コカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項31】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸ナエパインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記粘弾性ポリマーがヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記麻酔剤が塩酸ナエパインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記複合体が、アトロピン−リドカイン−ヒアルロネート、アトロピン−プロパラカイン−ヒアルロネート、アトロピン−テトラカイン−ヒアルロネート、アトロピン−フェナカイン−ヒアルロネート、アトロピン−コカイン−ヒアルロネート、アトロピン−ナエパイン−ヒアルロネート、アトロピン−リドカイン−コンドロイチン硫酸、アトロピン−プロパラカイン−コンドロイチン硫酸、アトロピン−テトラカイン−コンドロイチン硫酸、アトロピン−フェナカイン−コンドロイチン硫酸およびアトロピン−ナエパイン−コンドロイチン硫酸からなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項34】
前記複合体が、アセチルコリン−リドカイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−プロパラカイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−テトラカイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−フェナカイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−コカイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−ナエパイン−ヒアルロネート、アセチルコリン−リドカイン−コンドロイチン硫酸、アセチルコリン−プロパラカイン−コンドロイチン硫酸、アセチルコリン−テトラカイン−コンドロイチン硫酸、アセチルコリン−フェナカイン−コンドロイチン硫酸およびアセチルコリン−ナエパイン−コンドロイチン硫酸からなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項35】
前記複合体が、ピロカルピン−リドカイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−プロパラカイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−テトラカイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−フェナカイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−コカイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−ナエパイン−ヒアルロネート、ピロカルピン−リドカイン−コンドロイチン硫酸、ピロカルピン−プロパラカイン−コンドロイチン硫酸、ピロカルピン−テトラカイン−コンドロイチン硫酸、ピロカルピン−フェナカイン−コンドロイチン硫酸およびピロカルピン−ナエパイン−コンドロイチン硫酸からなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−269155(P2010−269155A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151871(P2010−151871)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願平10−540762の分割
【原出願日】平成10年3月18日(1998.3.18)
【出願人】(502041266)
【出願人】(502041277)
【出願人】(502041288)
【Fターム(参考)】