説明

前輪駆動自転車

【課題】既存の前輪駆動自転車では、前輪を駆動するチェーン等で運転者が怪我をする可能性が高く、また、あえて前輪を駆動するメリットが無い。
【解決手段】前輪駆動の自転車において、以下の様に装置する。
1、後輪を備えるフレームを、前部フレームの後端に、着脱交換自在に取付ける。
2、後輪は、1軸2輪または、2軸4輪とする。
3、フレームに、前輪を駆動するチェーンのカバーを取付ける。
4、ブレーキワイヤーは、チェーンを避けて配置し、後部にジョイントを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置を前輪側に集約する事で、後輪部分を着脱交換可能に装置した、極めて利便性の高い自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪を駆動する自転車については、例えば特開平09−104385などが周知であるが、あえて前輪を駆動する目的や効果が希薄であり、また、駆動チェーンによって運転者が怪我をする可能性もあり、実現可能性の低い考案であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既存の前輪駆動自転車では、前輪を駆動する為のチェーンで、運転者が怪我をする可能性が高く、また、前輪を駆動するメリットが無い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前輪駆動自転車において、以下の様に装置する。
1、後輪を備えるフレームを、前部フレームの後端に、着脱交換自在に取付ける。
2、後輪は、1軸2輪または、2軸4輪とする。
3、フレームに、前輪を駆動する為のチェーンの、カバーを取付ける。
4、ブレーキワイヤーは、チェーンを避けて配置し、中間部に接続ジョイントを設ける。
【発明の効果】
【0005】
本発明品によれば、ペダル軸より前側の駆動装置のみを共通使用し、後輪を1輪とすれば、通常の自転車として使用可能で、また、後輪を2輪または4輪とすれば、大きな荷物を積載して運搬する事が可能となる。
また、チェーンにカバーを設けた事により、運転者が足に怪我をする心配も無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
後輪を備えたフレームを着脱自在とし、前輪を駆動する為のチェーンには、カバーを装置する。
【実施例】
【0007】
図1は、本発明品の上面図を表し、図2は、本発明品の正面図を表す。尚、図2の正面図は、本発明品の前輪駆動自転車を、進行方向の左側から見た視図である。
サドル15に着座した運転者が、足でペダル25を踏む事で、その回転がペダル軸5に伝わり、この回転はチェーン12を介して、ハンドルポスト24に設けられた回転軸4に伝達される。この回転軸4には、ハンドル16を左右に操舵しても、確実に回転を伝える為のユニバーサルジョイント26が設けられ、その反対側に装置されたチェーン13を介して前輪軸3を駆動する。
以上の機構により、ペダル25を踏む事で、前輪1が回転し、前進する事が可能となる。
【0008】
しかし前述の構成では、前輪駆動にするメリットが全く無い。そこで、後輪2を含む後部フレーム8を着脱・交換可能とし、利便性を飛躍的に高めた構成が、請求項1に記載の本発明品の実施例である。
後部フレーム8の着脱は、連結固定装置11で行うが、この部分には大きな強度が必要となる。そこで、前部フレーム7側にパイプ状の突起を設け、後部フレーム8側に設けた棒状部材を差込み、その状態で、上からピンやボルトナットを貫通させて固定する構成などが望ましい。以上が、請求項2に記載の本発明品の実施例である。
【0009】
通常は前後1輪ずつの自転車であるが、本発明品では、後部を着脱可能に構成する事で、数々のメリットが発生する。図1及び図2の通り、後輪軸6に対して左右一対の後輪2を設ける。後輪と後輪の間には、荷台9を取付ける事により、大きな荷物などを運搬可能となる。またこの時、図2の通り、後輪2の直径を前輪1よりも小さくする事で、荷台9の位置が低くなり、荷物の積み下ろしが非常にやり易くなる。以上が、請求項3に記載の本発明品の実施例である。
【0010】
本発明によれば、通常の一人乗り自転車と、荷物運搬用の自転車と、2台購入する必要が無くなり、費用負担が軽減される。さらに、連結固定部11を完全に固定せず、回転自在にピン結合し、後部フレーム8が水平方向に揺動可能に構成すれば、極めて小さな回転半径で曲がる事が可能となり、狭い場所での荷物運搬等に効果を発揮する。
また、前部フレーム7と後部フレーム8とをスプリングで連結し、無負荷時は、前後輪が同方向を向く様に装置しておけば、不用意に後輪が振れる事も無くなり、走行安定性が向上する。以上が、請求項4に記載の本発明品の実施例である。
【0011】
本発明品は前述の通り、前輪駆動自転車として極めて利便性が高いが、ペダルより前側に回転部分やチェーンが存在する為、運転者が足を痛める可能性が考えられる。
そこで本発明では、前側フレーム7にチェーンカバー14を取り付け、運転者が不用意に足や手をチェーンに巻き込まれない様に配慮した。
また、もう一つの手段として、ペダル軸5とハンドルポストの回転軸4とをドライブシャフトで連結すれば、潤滑油等で服が汚れる事も無く、チェーンよりも安全性が高まる。以上が請求項5に記載された本発明品の実施例である。
尚、カバーは、金属製のカバーを溶接などによってフレーム7に取付けても良いが、フレーム7は自転車の意匠面でも有る為、見栄えが悪くなる。そこで、半透明の樹脂製カバーや、パイプ状部品の中をチェーンやシャフトを通す構成が望ましい。
【0012】
ハンドル16の右側には、前ブレーキレバー17が取付けられ、ブレーキワイヤー19を介して前ブレーキ22を操作する。また、ハンドル16の左側には、後ブレーキレバー18が取り付けられ、ブレーキワイヤー20を介して後ブレーキ23を操作する。しかし本発明品は前輪駆動の為、特に後ブレーキワイヤー20が、前輪を駆動するチェーン12と干渉する恐れがある。そこで本発明では、ブレーキワイヤー20をフレーム7の反対側に装置する事で、問題を解決している。
尚、本発明品は後輪2を含む後部フレーム8が着脱交換可能となっている為、通常のブレーキワイヤーでは後輪に制動力を伝える事ができない。そこで本発明では、ペダル軸5の後側に、ブレーキワイヤー20を分割する為のジョイント21を装置した。この結果、後部フレーム8を取り外した際に、ブレーキワイヤー20も同時に分割可能となり、スムーズな着脱交換が可能となる。以上が、請求項6に記載された本発明品の実施例である。
テールライトやブレーキランプを自転車の後部に取付ける場合も同様に、配線の分割カプラーをジョイント21の近傍に装置すれば良い。
【0013】
本発明品が、通常の後輪駆動自転車と同様の操作性を得る為には、駆動系の一部に一方向クラッチが必要となる。チェーンで直結しただけでは、惰性で走行する場合に、車輪からペダルに駆動力が逆流してしまうからである。そこで本発明では、ペダル軸5または、前輪軸3または、ハンドルポストに設けた回転軸4のいずれかに一方向クラッチを装置し、前輪からの駆動力がペダル5に逆流する事を防止した。
また、回転軸4には、ハンドル16を左右に振って操舵する際でも確実に駆動力を伝達する為に、ユニバーサルジョイント26を設けた。しかしこの構成では、ハンドル16の切れ角が大きい場合、即ち小回りをする際、ユニバーサルジョイントの特性上、駆動に必要なトルクが変動し、足でペダルをこぐ荷重は、大きくなったり小さくなったりする等の問題が発生する。そこで本発明品では、ユニバーサルジョイント26を2個直列に連結して使用する事で、トルクの変動を打ち消した。以上が請求項7に記載された本発明品の実施例である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、1台の自転車の後部を交換するだけで、通常の走行も荷物の運搬も、両方が可能となる。また、既存の前輪駆動自転車の問題点を全て改善した事で、即座に生産展開が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明品の、上面図を表す。
【図2】本発明品の、正面図を表す。
【0016】
1、前輪
2、後輪
3、前輪軸
4、ハンドルポストの回転軸
5、ペダル軸
6、後輪軸
7、ペダル軸とハンドルポストを連結するフレーム
8、後輪を備える後部フレーム
9、荷台
10、ペダル軸とサドル取付け部を連結するフレーム
11、前部フレームと後部フレームの連結固定装置
12、チェーン
13、チェーン
14、チェーンカバー
15、サドル
16、ハンドル
17、前輪用ブレーキレバー
18、後輪用ブレーキレバー
19、前輪用ブレーキワイヤー
20、後輪用ブレーキワイヤー
21、後輪用ブレーキワイヤー中間部のジョイント
22、前輪用ディスクブレーキ
23、後輪用ディスクブレーキ
24、ハンドルポスト
25、ペダル
26、ユニバーサルジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足で駆動する一対のペダルを備えたペダル軸と、前輪を操舵自在に保持するハンドルポストと、運転者着座用サドルを有し、少なくともペダル軸近傍とハンドルポスト近傍を連結するフレームを備えた前輪駆動自転車において、ペダル軸より後側の、後輪を含むフレームを、着脱可能に構成した事を特徴とする、前輪駆動自転車。
【請求項2】
後輪を含むフレームは、ペダル軸近傍または、サドル取り付け部近傍または、ペダル軸とサドル取付け部を連結するフレーム周辺の、1か所から3か所で前側フレームに着脱自在に連結され、その構造は、下記のいずれかである事を特徴とする、請求項1に記載の前輪駆動自転車。
1、一方をパイプ形状、他方をパイプに嵌合する棒形状またはパイプ形状とし、パイプ内に棒を挿入した上で、貫通する孔にピンを挿入する構造または、ボルト・ナットまたは、これらに類する構成で固定する。尚、パイプや棒の断面形状は、円形・長円形・多角形または、嵌合に適したH型などの所定の形状とする。
2、一方を板形状または凹形状とし、他方を板形状または凸形状とし、貫通孔にピンを挿入する構造または、ボルト・ナットまたは、これらに類する構成で固定する。
3、双方のフレームまたは、フレームに取り付けられた部材を、嵌合、突合せにより接触させ、または所定の隙間を開けて装置した上で、固定用部材を双方に接触させ、ねじ、またはピン、またはリベット、または締め付け用バンド等で固定する。
【請求項3】
後輪を1輪とした、または1軸で左右1対の2輪とした、または2軸で左右1対の4輪とし、下記のいずれかの特徴を有する、請求項1または2に記載の前輪駆動自転車。
1、後輪の最大直径を、前輪の最大直径以下とした。
2、後輪が1軸または2軸の場合は、左右1対の車輪の間に、荷物積載装置を設けた。尚、荷物積載装置とは、平板を取付けた構成や、網目状または格子状の枠を取付けた構造などを指し、荷物の落下を防ぐ為に、周囲にリブを設けた構成や、滑り止めのゴムなどを貼った構成や、荷物固定用のロープを掛ける為の突起などを備えた構成も含む。
【請求項4】
後輪を含むフレームを前側フレームに取付ける部分を、ピン結合または、ユニバーサルジョイントなどとし、後輪を含むフレーム部分が前側フレームに対して、略水平方向に揺動可能に装置した事を特徴とする、請求項1から3に記載の前輪駆動自転車。
尚、前側フレームと後輪を含む後部フレームとの間に弾性部材を介在させ、無負荷時は、弾性部材の復元力によって、前輪と後輪が略同方向を向く様に装置された構成も含む。
【請求項5】
下記のいずれかの構成により、ペダルの回転による駆動力を前輪に伝える事を特徴とする、請求項1から4に記載の前輪駆動自転車。
1、ハンドルポストに回転軸を設け、この回転軸とペダル軸とをチェーンまたはベルトで連結し、前輪は、ハンドルポストに設けた回転軸からさらに別のチェーンまたはベルトで連結し、ペダル軸とハンドルポストの回転軸を連結するチェーンまたはベルトには、少なくとも上面または側面を覆う、金属製または樹脂製のカバーを取付ける。尚、カバーはフレームに溶接、リベット止め、またはネジ止めにて取付けられ、パイプ状のカバーの中にチェーンやベルトを通す構成や、透明または半透明の樹脂製カバーを使用する構成も含む。
2、ペダル軸とハンドルポストとを連結するフレームの内部、または側面、または上面、または下面に沿って、シャフトを回転自在に装置し、このシャフトとペダル軸及びハンドルポストに設けた回転軸を、ベベルギア等の回転方向を略直角に変換するギアを介して連結し、前輪は、ハンドルポストに設けた回転軸から、さらに別のシャフト、またはチェーン、またはベルトで連結し、ペダル軸とハンドルポストの回転軸を連結するシャフトには、一部または全部を覆うカバーを取付ける。尚、カバーはフレームに溶接、リベット止め、またはネジ止めにて取付けられ、パイ状のカバーの中にシャフトを通す構成なども含む。
【請求項6】
前輪及び後輪の車軸近傍に、ドラムブレーキ、またはディスクブレーキ、または前輪及び後輪のリムに摩擦抵抗を加えて制動するブレーキを取付け、ハンドルに取り付けたブレーキレバーとブレーキとをワイヤーで連結し、運転者が、手でブレーキレバーを操作して制動するブレーキ装置を備えた自転車において、下記のいずれかの特徴を有する、請求項1から5に記載の前輪駆動自転車。
1、サドル近傍とハンドルポスト近傍を連結するフレームを備え、後輪制動用のワイヤーは、このフレームに沿って取付けた、または、このフレーム内にワイヤーを通した。
2、ペダル軸とハンドルポストとを連結するフレームに沿って後輪制動用のワイヤーを取り付け、その位置は、チェーン・ベルト・シャフトと、フレームに対して略反対側、またはフレームの上下面、またはフレームの内部空間とした。
3、前側フレームの後端またはその近傍に、ワイヤーのジョイントを設け、後輪を含むフレームを取り外す際、後輪制動用のワイヤーも切り離し可能に構成した。
4、ワイヤーを含む前輪制動装置の一部または全部を、前輪を駆動するチェーン、ベルト、またはシャフトの反対側に装置した。
【請求項7】
下記のいずれかの特徴を有する、請求項1から6に記載の前輪駆動自転車。
1、ペダル軸、またはハンドルポストに設けた回転軸、または前輪軸のいずれかに、一方向クラッチを備え、ペダルからの駆動力が、前進方向の回転だけに加わる様に装置した。
2、ハンドルポストに設けた回転軸には、ユニバーサルジョイントを2個直列で設ける、または等速ジョイントを使用し、左右に操舵した場合でも、ペダルからの駆動力や回転速度が、変動せずに、滑らかに前輪に伝わる様に装置した。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−137835(P2010−137835A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336005(P2008−336005)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(506156573)有限会社デザインオフィス・バン (4)
【出願人】(591144464)株式会社ナガノ (8)
【Fターム(参考)】