説明

前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、当該酵素を使用した治療方法、ならびに当該酵素の生産および精製方法

本発明は、高度に精製された組換えヒト前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、その生物活性変異体、フラグメント、およびアナログならびに高度に精製された組換えヒト前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む薬学的処方物を提供する。本発明はまた、ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの欠損の全部または一部に起因する疾患(MPS VIが含まれる)の治療方法ならびに組換え前駆体酵素の生産方法および高度に精製された形態への精製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年11月7日提出の米国特許出願番号10/290,908号(その全体が本明細書中で参考として組み込まれる)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、臨床医学分野、生化学分野、および分子生物学分野に属する。本発明は、VI型ムコ多糖体症の治療薬および治療方法ならびにこのような治療薬の生産および生産のための精製手順を特徴とする。
【背景技術】
【0003】
MPS VI(マロトー−ラミー症候群)は、罹患患者が酵素N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)を欠くリソソーム蓄積症である。この酵素は、グリコサミノグリカン(GAG)デルマタン硫酸の硫酸塩部分を代謝する(Neufeld,et al.,「The mucopolysaccharidoses」The Metabolic Basis of Inherited Disease,eds.Scriver et al.,New York:McGraw-Hill,1989,p.1565-1587)。酵素の非存在下では、デルマタン硫酸の段階的分解が遮断され、広範な組織のリソソーム細胞内に基質が蓄積する。蓄積により複数の器官および組織で疾患が進行し、これは、乳児が正常に誕生するようであるが、通常思春期前に死亡することに関連する。通常、6〜24月齢で児童の成長遅延の進行、肝臓および脾臓の肥大、骨の奇形、粗大化顔貌(coarse facial features)、上気道閉塞、および関節奇形を示す場合、MPS VIと診断される。MPS VI児童は、進行性の角膜混濁、交通性水頭症、または心疾患を発症し得る。通常、呼吸器感染または心疾患で死亡する。MPS Iと異なり、MPS VIは、典型的に、精神状態の進行性障害と関連しないが、物理的制約が学習および発達に影響を与え得る。ほとんどのMPS VI患者は、通常は十代までに死亡する重症形態を有するが、数十年間生存することができる疾患の重症度の低い形態を有する罹患患者が説明されている。
【0004】
いくつかの刊行物では、MPS VIの発症率を推測している。Lowry et al(Lowry,et al.,Human Genet 85:389-390(1990))が発表した1990年に行われたブリティッシュコロンビア州で1952年と1986年との間に誕生した全新生児の調査での発症率はちょうど1/1,300,000と推定された。オーストラリアでの1980年〜1996年の出生時の調査(Meikle et al.,JAMA 281(3):249-54)では18人の患者が認められ、発症率は1/248,000であった。北アイルランドでの調査(Nelson,et al.,Hum.Genet.101:355-358(1997))では、発症率は1/840,000と推定された。最後に、オランダにおける1970年〜1996年の調査では、出生率は、100,000人に対し0.24人と算出された(Poorthuis,et al.,Hum.Genet.105:151-156(1999))。これらの調査に基づいて、米国における全てのこの症候群型と診断された患者は50人から300人の間と推定される。
【0005】
MPS VIの満足の行く治療は存在しないが、少数の患者では骨髄移植(BMT:bone marrow transplantation)が有益であった(Krivit,et al.,N.Engl.J.Med.311(25):1606-11(1984);Krivit,et al.,Int.Pediat.7:47-52(1992))。BMTは、適切なドナーの不足によって普遍的に利用できず、これが実質的な罹患率および死亡率に関連する。The European Group for Bone Marrow Transplantationの報告では、リソソーム障害における63の移植症例の移植関連死亡率は10%(HLA同一)〜20〜25%(HLAミスマッチ)であった(Hoogerbrugge,et al.,Lancet 345:1398-1402(1995))。BMT以外のほとんどの患者はその唯一の治療形態として特定の問題についての対症療法を受ける。本発明の目的は、組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を使用した酵素代償療法を提供することにある。rhASBによるヒトの治療は試みられていない。同様に、許容可能な臨床投薬量または医学的処方物は提供されていない。ネコMPS VIモデルにおけるいくつかの酵素置換試験を行った。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、前駆体形態の高度に精製されたN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む組成物の生産、精製、および使用を含む。前駆体形態のDNAおよびコードされたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1および2に記載する。配列番号2のシグナル配列は、配列番号2のアミノ酸1〜38と推定され、組換え生産により配列番号2のアミノ酸残基39または40のいずれかから開始される産物が得られた。
【0007】
第1の態様では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の欠損に全部または一部起因する疾患の新規の治療法を特徴とする。本方法は、有効量の薬学的組成物をこのような治療を必要とする被験体に投与するステップを含む。好ましい実施形態では、薬学的組成物は、前駆体形態の高度に精製されたN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを単独または薬学的に適切なキャリアと組み合わせて含む。被験体は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ欠損に全部または一部起因する疾患を罹患している。他の実施形態では、本方法は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)またはその生物活性変異体もしくはアナログの全部または一部をコードする核酸のインビボでの1つまたは複数の宿主細胞への導入を特徴とする。好ましい実施形態は、治療すべき生物(好ましくは哺乳動物またはヒト)に必要な投薬量を病徴を有効に改善するように至適化することを含む。好ましい実施形態では、疾患はVI型ムコ多糖体症(MPS V1)またはマロトー−ラミー症候群である。
【0008】
本発明の第1の態様は、特に、治療有効量のヒトASB、好ましくは組換えヒトASBの投与による、ASB活性の欠損に全部または一部起因する疾患を罹患したヒトの治療方法を提供する。したがって、本発明は、ASB活性欠損症の治療のための薬物の調製におけるヒトASBの使用およびASB活性の欠損症の治療で使用するためのヒトASBを含む薬学的組成物を意図する。ASB活性の欠損は、例えば、正常なASB活性レベルと比較して50%または以下、25%またはそれ以下、または10%またはそれ以下の活性レベルとして認められ、ムコ多糖体症(例えば、VI型ムコ多糖体症(MPS VI)またはマロトー−ラミー症候群)として現れ得る。治療有効量は、ヒト患者が有利な結果を得るのに十分な量であり、好ましくは、以下の任意の1つが改善する。関節可動性、痛み、または関節の堅さ(主観的または客観的のいずれか);運動耐容能(exercise tolerance)または運動耐久力(exercise endurance)(例えば、歩行能力または上り能力によって測定);肺機能(例えば、FVC、FEV1、またはFETによって測定);視力;または日常生活動作(例えば、座っている状態から立ち上がる能力、衣類の出し入れ、または小物の拾い上げによって測定)。ヒトASBを、好ましくは、本明細書中に記載の高度に精製された組換え調製物として投与する。好ましい調製物は、逆相HPLCで測定したところ、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%を越える純度のrhASBを含む。好ましい調製物はまた、純度の高い前駆体形態のASBを含み、その結果クーマシー染色SDS−PAGEでプロセシング形態のASBは検出されない。より好ましくは、前駆体形態のASBの純度は、サイズ排除クロマトグラフィ((SEC)−HPLC)で測定したところ、95%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%を越える。ヒトASBは、好ましくはまた、本明細書中に記載の界面活性剤または非イオン性界面活性剤を使用して処方される(必要に応じて任意に、0.001%のポリオキシエチレンソルビタン20および80使用した処方物を除外する)。
【0009】
1mg/kg/週未満(例えば、0.2mg/kg/週)の用量のrhASBの投与は、有利な効果が得られることを見いだされた。本発明は、少なくとも0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、または1.5mg/kg/週の用量を意図し、2mg/kg、4mg/kg、5mg/kg/週またはそれ以上の範囲であり得る。好ましい用量は、1mg/kg/週である。このような用量を1週間に1回送達させることが好ましいが、選択的により頻繁な(1週間に2回または毎日など)送達のために等分することができる。等しい投薬量を送達させる種々の非経口または経口投与経路(経口、経皮、経粘膜、肺内(エアゾール化が含まれる)、筋肉内、皮下、または静脈内が含まれる)が意図される。関節またはCSFへのボーラス注射または直接的注入による投与が特に意図される(鞘内、大脳内、脳室内、腰椎穿刺経由、または大槽など)。このような鞘内投与達成のための種々の手段が当分野で公知である(ポンプ、リザーバ、シャント、または移植片が含まれる)。好ましくは、用量を、1、2、または4時間、最も好ましくは4時間継続する静脈内注入を介して送達させるが、静脈内ボーラスによって導入させることもできる。
【0010】
ヒト被験体の他のASB活性増加手段(患者の外因性または内因性ASB発現を一過性または恒久的に増大させる遺伝子治療が含まれる)も意図される。当分野で公知の種々の手段(ウイルスベクター、相同組換え、または直接DNA注入が含まれる)によって、外因性hASB遺伝子または内因性hASB遺伝子の発現を増大させるプロモーターの送達が可能である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の欠損に全部または一部起因する疾患の治療に有用なN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを含む新規の薬学的組成物を特徴とする。好ましい実施形態では、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼは前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼである。このような組成物は、非経口、局所、鼻腔内、吸入、または経口投与などの多数の方法における投与に適切であり得る。N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)欠損の影響を受ける細胞にインビボで投与することができるN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の全部または一部をコードする核酸配列を特徴とする実施形態は態様の範囲内である。
【0012】
第3の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量でのN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの生産方法を特徴とする。広範な実施形態では、本方法は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)またはその生物活性変異体もしくはアナログの全部または一部をコードするcDNAでその発現に適切な細胞をトランスフェクトするステップを含む。好ましい実施形態では、不変の培養または連続培養、または灌流培養で細胞を成長させる。別の実施形態では、G418を欠く培地で細胞を成長させる。いくつかの実施形態では、完全なN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、好ましくはヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)をコードするcDNAを使用する。しかし、他の実施形態では、その生物活性フラグメントまたは変異体をコードするcDNAを使用することができる。詳細には、酵素の生物活性を保持または強化しながら1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができる。別の好ましい実施形態では、発現ベクターを使用して、cDNAをその発現に適切な細胞または細胞系統に移行する。1つの特に好ましい実施形態では、cDNAを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO−K1細胞系統など)にトランスフェクトする。さらに他の好ましい実施形態では、生産手順は、以下のステップを含む。(a)ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルフェートの全部または生物活性フラグメントもしくは変異体をコードするDNAでトランスフェクトした細胞を適切な成長培地中で適切な密度まで成長させるステップと、(b)トランスフェクトした細胞をバイオリアクターに導入するステップと、(c)前記バイオリアクターに適切な成長培地を供給するステップと、(d)酵素を含む培地からトランスフェクトされた細胞を分離するステップ。
【0013】
第4の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)を生産する能力を特徴とするトランスフェクトした細胞系統を提供する。好ましい実施形態では、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼは、前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼである。好ましい実施形態では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを安定且つ確実に生産するCHO−K1細胞系統などの組換えCHO細胞系統を特徴とする。CSL4S−342と呼ばれるトランスジェニックCHO−K1細胞系統が特に好ましい。いくつかの好ましい実施形態では、トランスジェニック細胞系統は、1つまたは複数の発現構築物のコピーを含む。好ましくは、トランスジェニック細胞系統は、約10またはそれ以上の発現構築物のコピーを含む。さらにより好ましい実施形態では、細胞系統は、少なくとも約20〜40μg/107細胞/日の量で組換えN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを発現する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの生産に適切な新規のベクターを提供する。
【0015】
第6の態様では、本発明は、本発明の方法にしたがって生産され、それにより酵素治療で使用することができる量で存在する、新規のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを提供する。本発明のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の比活性は、好ましくは20〜90単位/mgタンパク質、より好ましくは約50単位/mgタンパク質を越える範囲である。好ましい実施形態では、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼは、高度に精製された前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼである。
【0016】
第7の実施形態では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの新規の精製方法を特徴とする。第1の実施形態によれば、トランスフェクトした細胞塊を成長させ、これを除去し、組換え酵素を放出させる。カラム汚染を防止するために、外因性物質を、通常、粗バルクから分離すべきである。好ましくは、組換え酵素を含む成長培地に対して限外濾過ステップを行う。別の好ましい実施形態では、前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの精製方法は、(a)前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む流動物を得るステップと、(b)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを切断することができる前記流動物中のプロテアーゼのタンパク質分解活性を減少させるステップであって、前記減少が前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼに悪影響を与えない、ステップと、(c)前記流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、(d)前記流動物を銅キレート化クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、(e)前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、(f)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを回収するステップとを含む。好ましくは、ステップ(c)、(d)、および(e)を連続的に実施することができる。当業者は、1つまたは複数のクロマトグラフィステップを省略または置換することができること、また、クロマトグラフィステップの順序を本発明の範囲内で変化させることができることを容易に認識する。他の好ましい実施形態では、最後のクロマトグラフィカラム由来の溶離物に対して限外濾過/ダイアフィルトレーションを行い、任意の残存ウイルスを除去するための適切なステップを行う。最後に、所望ならば、適切な滅菌ステップを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、前駆体形態の高度に精製されたN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む組成物の生産、精製、および使用を含む。前駆体形態のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度は、逆相HPLC法によって決定したところ、総タンパク質の少なくとも95、96、97、または98%またはそれ以上である。好ましくは、純度は、少なくとも99%またはそれ以上である。より好ましくは、純度は、少なくとも99.1、99.2、99.3、または99.4%またはそれ以上である。さらにより好ましくは、純度は、少なくとも99.5、99.6、99.7、または99.8%またはそれ以上である。なおさらにより好ましくは、純度は、少なくとも99.9%またはそれ以上である。前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度は、逆相HPLC法を使用して測定される(実施例9を参照のこと)。前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度は、逆相HPLC法によって検出可能な本質的にいかなる夾雑細胞タンパク質または分解、成熟、またはプロセシングされたN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼも含まない組成物によるものである。全ての純度は、逆相HPLC法によって決定された総タンパク質に基づく。本明細書中に開示の精製プロセスを使用して得ることができる連続的に反復可能な高い純度により、治療毎(例えば、毎週)に投与される高純度rhASB調製物での長期慢性治療を必要とするこれらの患者を治療することが可能である。したがって、本発明は、長期間にわたる(例えば、12週間、24週間、48週間、96週間、またはそれ以上)このような高純度の前駆体rhASBの投与を意図する。
【0018】
第1の態様では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の欠損に全部または一部起因する疾患の新規の治療方法を特徴とする。1つの実施形態では、本方法は、組換えN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの単独または薬学的に適切なキャリアとの組み合わせの投与を特徴とする。他の実施形態では、本方法は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)またはその生物活性変異体の全部または一部をコードする核酸のインビボでの1つまたは複数の宿主細胞への導入を特徴とする。好ましい実施形態は、治療すべき生物(好ましくは哺乳動物またはヒト)に必要な投薬量を、病徴を有効に改善するように至適化することを含む。好ましい実施形態では、疾患はVI型ムコ多糖体症(MPS VI)、マロトー−ラミー症候群である。
【0019】
前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度は、組成物が前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを投与された被験体によって免疫反応またはアレルギー反応を生じ得るいかなる夾雑細胞タンパク質も本質的に含まないことによるものである。被験体に投与された場合に組成物がいかなる免疫反応またはアレルギー反応も生じない場合、組成物は本質的にこのような夾雑宿主細胞タンパク質を含まない。前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼが高純度であることは、薬学的組成物中に存在する夾雑物に対する被験体による免疫反応またはアレルギー反応の回避に重要である。これは、前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼが精製される細胞のタンパク質で特に真である。組換え前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼがチャイニーズハムスター卵巣細胞から発現および精製される場合、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質は、被験体の免疫反応またはアレルギー反応(例えば、蕁麻疹)を生じさせ得る。この反応型の唯一の回避手段は、前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼがこのような反応を引き起こすのに十分な量の夾雑チャイニーズハムスター卵巣タンパク質を含まないように確実に十分に純粋であることである。被験体にはMPS VIを罹患している患者が含まれ、それによりすでに免疫力が低下しているので、薬学的組成物の純度は特に重要である。
【0020】
組成物中でプロセシング形態または分解形態が微量であるような前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の純度も好ましい。宿主細胞中に存在するプロテアーゼは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをより低分子量の形態に分解する。これらいくつかの形態は酵素的に活性でもあり得る一方で、前駆体形態は細胞取り込みおよびリソソームターゲティングに好ましいので、最終調製物中により大量の非プロセシング前駆体ASBを含むことが望ましい。さらに、製剤中の分解形態のASBはまたASB自体の抗体の発生数または量をより多くし得るので、患者が長期治療を必要とする場合などに全く望ましくない。本明細書中に記載の灌流精製プロセスにより、SDS−PAGEと、RPHPLCと、SEC−HPLCとの組合わせによってアッセイしたところ、本質的に夾雑宿主細胞タンパク質またはプロセシング/分解形態のASBを含まない高純度の調製物が得られる。ヒトに投与した場合、本プロセスによって生産された産物の半減期はより長いようである。
【0021】
マロトー−ラミー症候群としても公知のMPS VIの治療のために組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を示す。好ましい実施形態によれば、1mg/kg(約50U/kg)の初回投与量を、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの欠損症を罹患している患者に投与する。好ましくは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを、注射によって毎週投与する。他の好ましい実施形態によれば、少なくとも50%の尿中グリコサミノグリカン排出量の減少を示さない患者には、初回投与の約3ヶ月以内に投薬量を2mg/kg(約100単位/kg)に変更する。好ましくは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを、好ましくは有意な疾患の臨床症状が持続する限り、1週間に1回約4時間にわたり静脈内に投与する。また、好ましくは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を、最初に約30cc/時間の生理食塩水注入から開始する橈側皮静脈または他の適切な静脈に留置した静脈内カテーテルによって投与する。さらに、好ましくは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を、通常の生理食塩水で約250ccに希釈する。
【0022】
第2の態様では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの欠損症の治療に有用なヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを含む新規の薬学的組成物を特徴とする。上記の好ましい実施形態に加えて、組換え酵素を多数の方法(非経口、局所、鼻腔内、吸入、または経口投与など)で投与することができる。本発明の別の態様は、固体、半固体、もしくは液体、または摂取可能なカプセル(ingestable capsule)であり得る薬学的に許容可能なキャリアを使用した酵素の処方による酵素の投与を提供することである。薬学的組成物の例には、錠剤、鼻腔用ドロップなどのドロップ、軟膏、ゼリー、クリーム、および懸濁液などの局所投与用組成物、吸入用エアゾール、鼻腔内スプレー、リポソームが含まれる。通常、組成物に対して0.05重量%と99重量%との間または0.5重量%と99重量%との間(例えば、注射を意図する組成物に対して0.5重量%と20重量%との間および経口投与を意図する組成物に対して0.1重量%と50重量%との間)の組換え酵素を含む。
【0023】
治療酵素を含む経口投与用のこの単位投与形態中に薬学的組成物を生産するために、酵素を、固体粉末キャリア(例えば、乳糖、サッカーロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、アミロペクチンなどのデンプン)、コンブ粉末もしくは柑橘類パルプ粉末、セルロース誘導体、またはゼラチンと混合することができ、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤またはCarbowaxもしくは他のポリエチレングリコールワックスも含まれ、打錠して錠剤または糖剤のコアを形成することができる。糖剤が必要な場合、コアを、例えば、アラビアガム、タルク、および/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液または揮発性有機溶媒もしくは有機溶媒混合物に溶解した被膜剤でコートすることができる。例えば、活性物質の異なる内容物を区別するためにこれらのコーティングに色素を添加することができる。ゼラチンおよび例えば可塑剤としてのグリセロールからなる軟ゼラチンカプセルまたは類似の密封カプセルの組成物のために、活性物質を、Carbowaxまたは適切なオイル(例えば、ゴマ油、オリーブ油、またはラッカセイ油)と混合することができる。硬ゼラチンカプセルは、乳糖、サッカーロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(ジャガイモデンプン、コーンスターチ、またはアミロペクチンなど)、セルロース誘導体、またはゼラチンなどのなどの固体粉末キャリアを含む活性物質の顆粒を含むことができ、潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸も含み得る。
【0024】
本発明の治療酵素を、1回の注射もしくはポンプ注入のいずれかによる皮下、筋肉内、または静脈内注射または徐放性皮下移植片などによって非経口投与することもでき、治療酵素を吸入によって投与することができる。皮下、筋肉内、および静脈内注射では、治療酵素(有効成分)を、液体キャリア賦形剤に溶解または分散させることができる。非経口投与のために、活性材料を、許容可能な賦形剤(好ましくは、ピーナッツ油、綿実油などの種々の植物油)と適切に混合することができる。ソルケタール(solketal)、グリセロール、ホルマル、および水性非経口処方物を使用した有機組成物などの他の非経口賦形剤も使用することができる。
【0025】
注射による非経口適用のために、組成物は、本発明の活性な酸の水溶性の薬学的に許容可能な塩の水溶液を、望ましくは0.5〜10%の濃度で含むことができ、必要に応じて任意に、水溶液中に安定剤および/または緩衝液も含み得る。溶液の投薬単位をアンプルに密封することが有利であり得る。
【0026】
治療酵素を皮下移植片の形態で投与する場合、化合物を当業者に公知のゆっくりと分散する物質に懸濁または溶解するか、浸透圧ポンプなどの一定駆動力の使用によって活性材料を徐放するデバイスで投与する。このような場合、長期投与が可能である。
【0027】
局所適用のために、薬学的組成物は、軟膏、細胞、懸濁液、またはクリームなどの形態が適切である。活性物質の量は、例えば、活性物質の0.05重量%と20重量%との間で変化し得る。このような局所投与用薬学的組成物を、公知の様式における活性物質とイソプロパノール、グリセロール、パラフィン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールなどの公知のキャリア材料との混合によって調製することができる。薬学的に許容可能なキャリアには、公知の化学吸収促進剤も含まれ得る。吸収促進剤の例は、例えば、ジメチルアセトアミド(米国特許第3,472,931号)、トリクロロエタノール、もしくはトリフルオロエタノール(米国特許第3,891,757号)、一定のアルコール、およびその混合物(英国特許第1,001,949号)である。非損傷皮膚への局所投与のためのキャリア材料は、40〜70%(v/v)のイソプロパノールおよび0〜60%(v/v)のグリセロール(存在する場合、希釈剤の不活性成分を総溶媒体積の40%を越えないようにバランスをとる)を含む溶媒からなるキャリア材料を開示する、英国特許出願第1,464,975号にも記載されている。
【0028】
薬学的組成物を含む治療酵素を投与する投薬量は広範囲で変化させることができ、例えば、疾患の重症度、患者の年齢などの種々の要因に依存し、個別に調整しなければならない。1日に投与することができる治療酵素量のおおよその範囲は、約0.1mg〜約2000mgまたは約1mg〜約2000mgであり得る。
【0029】
治療酵素を含む薬学的組成物を、単回投与単位または複数回の投与単位のいずれかとしてこれらの範囲内で用量が得られるように適切に処方することができる。治療酵素の含有に加えて、本発明の処方物は、組成物中の治療酵素によって触媒される反応のための1つまたは複数の基質または補因子を含み得る。治療酵素を含む薬学的組成物は、1つを超える治療酵素も含み得る。同様に、治療酵素は、別の部分(例えば、PEG)に結合した抱合体形態(conjugate form)であり得る。さらに、治療酵素は、目的の組織、器官、またはオルガネラへの送達を補助するための1つまたは複数のターゲティング部分または輸送ペプチドを含み得る。
【0030】
本発明の方法で使用される組換え酵素および組成物を、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログをコードする核酸での患者細胞の形質転換によって投与することもできる。このようなコードする核酸配列を、治療すべき患者の細胞への形質転換のためのベクターに組み込むことができる。このようなベクターの好ましい実施形態を本明細書中に記載する。被験体の染色体に組み込むか(例えば、レトロウイルスベクター)、宿主細胞中で自律複製するようにベクターをデザインすることができる。酵素の持続的または調節された発現が得られるようにコードするN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼのヌクレオチド配列を含むベクターをデザインすることができる。さらに、細胞ゲノムに安定に組み込まれるか一過性にのみ存在するように酵素をコードする遺伝子ベクターをデザインすることができる。従来の一般的な遺伝子治療の方法を、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをコードするポリヌクレオチド配列に適用することができる。従来の遺伝子治療技術の概説を、Friedman,Science 244:1275-1281(1989);Ledley,J.Inherit.Aletab.Dis.13:587-616(1990);and,Tososhev,et al.,Curr.Opinions Biotech.1:55-61(1990)に見いだすことができる。
【0031】
組換え酵素の特に好ましい投与方法は、静脈内である。特に好ましい組成物は、組換えN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、通常の生理食塩水、pHを約5〜7に維持するためのリン酸緩衝液、およびヒトアルブミンを含む。組成物は、さらに、安定性を改善し、保存期間を延長するためのポリソルベート20または80(Tween-20またはTween-80)などのポリオキシエチレンソルビタンを含み得る。あるいは、組成物は、当分野で公知の任意の界面活性剤または非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン40または60;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート;ポロクサマー18またはポロクサマー407などのポロクサマー;オクトキシノール−9またはオクトキシノール40が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0032】
好ましくは、界面活性剤または非イオン性界面活性剤は、少なくとも0.0001%、少なくとも0.0005%、少なくとも0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、または0.005%(w/v)の濃度で存在する。好ましくは、濃度は、所望の安定性を達成するために必要な最低濃度であるが、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、または0.02%(w/v)までであり得る。最も好ましくは、組成物は、0.005%±0.003%(例えば、0.002%〜0.008%)の濃度のポリソルベートを含む。これらの組成物の成分を、好ましくは以下の量で提供することができる。
【0033】
N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ
1〜5mg/mlまたは50〜250単位/ml
塩化ナトリウム溶液 (lVバッグ中に150mM、総体積50〜250cc)
リン酸ナトリウム緩衝液 10〜100mM(pH5.8)(好ましくは10mM)
ヒトアルブミン(選択的) 1mg/mL
Tween-20またはTween-80 0.001%〜0.005%(w/v)
【0034】
好ましい実施形態では、ASBを、150mMのNaCl、10mMのNaPO4(pH 5.8)、0.005%ポリソルベート80中に1mg/mLで処方する。
【0035】
第3の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量でのN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの生産方法を特徴とする。広範な実施形態では、本方法は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)またはその生物活性変異体もしくはアナログの全部または一部をコードするcDNAでその発現に適切な細胞をトランスフェクトするステップを含む。いくつかの実施形態では、完全なN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、好ましくはヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)をコードするcDNAを使用する。しかし、他の実施形態では、その生物活性フラグメントまたは変異体をコードするcDNAを使用することができる。詳細には、酵素の生物活性を保持または強化しながら1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができる。
【0036】
他の好ましい実施形態では、発現ベクターを使用して、cDNAをその発現に適切な細胞または細胞系統に導入する。1つの特に好ましい実施形態では、cDNAを、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1細胞系統など)にトランスフェクトする。さらに他の好ましい実施形態では、生産手順は、以下のステップを含む。(a)ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルフェートの全部または生物活性フラグメントもしくは変異体をコードするDNAでトランスフェクトした細胞を適切な成長培地中で適切な密度まで成長させるステップと、(b)トランスフェクトした細胞をバイオリアクターに導入するステップと、(c)前記バイオリアクターに適切な成長培地を供給するステップと、(d)組換え酵素を含む培地を回収するステップと、(e)回収培地からトランスフェクトした細胞を実質的に除去するステップ。
【0037】
トランスフェクトした細胞の成長に適切な培地は、L−グルタミン、グルコース、ヒポキサンチン/チミジンを補足し、選択的にG418を含むか含まないJRH Excell 302培地である。好ましい培地では、JRH Excell 302培地に、葉酸、セリン、アスパラギンをさらに補足するが、培地中にG418は存在しない。G418を補足しているが、葉酸、セリン、およびアスパラギンを補足していない培地の使用と比較して、細胞の培養のためのこの好ましい培地の使用により、より純度の高い前駆体rhASBが得られる(図6のレーン2を参照のこと)。10〜40mg/mlの活性酵素が得られる約1×107細胞/mlの細胞密度を達成するためにこのような培地中で細胞を培養することが好ましい。さらに、トランスフェクトされた細胞をバイオリアクター中で約5〜15日間成長させることが好ましい。より好ましくは、約9日間である。好ましくは、トランスフェクトした細胞を、最大35日継続する回収しながらの(with collections)灌流ベースのプロセスを使用してバイオリアクター中で成長させる。より好ましくは、トランスフェクトした細胞を、最大(up to)45日継続する回収しながらの灌流ベースのプロセスを使用してバイオリアクター中で成長させる。さらにより好ましくは、トランスフェクトした細胞を、最大60日継続する回収しながらの灌流ベースのプロセスを使用してバイオリアクター中で成長させる。なおさらにより好ましくは、トランスフェクトした細胞を、最大90日継続する回収しながらの灌流ベースのプロセスを使用してバイオリアクター中で成長させる。
【0038】
好ましい実施形態によれば、トランスフェクトした細胞を、10μmのメンブレン、1μmのメンブレン、およびその後の0.2μmのメンブレンなどの連続的メンブレンによる濾過によってバイオリアクター上清から実質的に除去することができる。任意の残存回収培地を、濾過前に破棄することができる。
【0039】
チャイニーズハムスター卵巣細胞中で組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを生産することができる(Peters,et al.J.Biol.Chem.265:3374-3381)。その取り込みは、全てではないがほとんどの細胞で発現する高親和性マンノース−6−リン酸受容体によって媒介される(Neufeld et al.,「The mucopolysaccharidoses」The Metabolic Basis of Inherited Disease,eds.Scriver,et al.New York:McGraw-Hill(1989)p.1565-1587)。一旦マンノース−6−リン酸受容体に結合すると、酵素は被覆小窩によってエンドサイトーシスを受け、リソソームに輸送される。リソソームのpHで、酵素は活性であり、蓄積された硫酸デルマタンから硫酸残基を除去し始める。MPS VI線維芽細胞では、貯蔵物のクリアランスは急速であり、酵素暴露から92時間以内に容易に示される(Anson,et al.,J.Clin.Invest.99:651-662(1997))。図1に概説する流れ図によるプロセスにしたがって、110L(作業体積約90L)の発酵規模で組換え酵素を生産することができる。
【0040】
表1A〜Cに記載の以下の方法を使用して組換え酵素を生産することができる。
【0041】
【表1】

【0042】
1つの実施形態では、トランスフェクトした細胞を、1つの110Lバイオリアクターから1日あたり約400Lの回収速度で最大35日間またはそれ以上連続して回収しながらの灌流ベースのプロセスである細胞培養プロセスで成長させる。好ましくは、回収速度は、1つの110Lバイオリアクターから1日あたり約800Lである。灌流細胞培養プロセスとバッチ細胞培養プロセスとを比較したプロセスの流れ図を表1Bに示す。フェッドバッチプロセスとの比較および灌流ベースの細胞培養プロセスのために実施した特定の変更の詳細を表1Cに示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3A】

【表3B】

【0045】
スケールアッププロセスのための接種調製物は、フェッドバッチプロセスおよび灌流プロセスのそれと同一である。1つの実施形態では、ワーキングセルバンク由来の1つのバイアルの解凍およびその内容物(約1mL)の約25mLのEX-CELL 302培地(L−グルタミンで修正、フェノールレッドなし)を含むT75cm2細胞培養フラスコへの移行によって、rhASB細胞培養を開始する。各拡大ステップでは、約0.8×106細胞/mLの生細胞数に達するまで細胞培養物を接種する。細胞成長(細胞密度)および生存率(トリパンブルー排除経由)について各細胞拡大ステップをモニタリングする。全EX-CELL 302培地(L−グルタミンで修正、フェノールレッドなし)の添加および細胞導入を層流フード中で個別に行う。細胞培養物を、T75cm2フラスコから250mLスピナーフラスコ、2つの250mLスピナーフラスコ、2つの3Lスピナーフラスコ、最後に2つの8Lスピナーフラスコに連続的に拡大する。全スケールアッププロセスを約14日間継続する。2つの8Lスピナーフラスコの密度が少なくとも1.0×106細胞/mLである場合、フラスコを使用して1つの110Lバイオリアクターに播種する。
【0046】
rhASBの発現または生産もしくは製造のためのバイオリアクターの操作は、灌流ベースの細胞培養プロセスを使用することが好ましい。好ましくは、灌流プロセスを使用するバイオリアクターは、フェッドバッチプロセスを使用した400〜500万細胞/mLと比較して3700万細胞/mLもの細胞密度に制御することができる。
【0047】
フェッドバッチプロセス(11〜12日間)よりも長期間(35日間)灌流ベースのプロセスを行い、フェッドバッチプロセス(190L/運転)と比較してより大量の回収細胞培養流動物(1日あたり5容器体積の灌流速度で約400L/日)が生産される。好ましくは、約8400Lの総上清回収のために35日まで回収を行う。
【0048】
ICHガイドラインに従って、遺伝的安定性、同一性、滅菌、および偶発的因子汚染について、産生終了細胞(EPC:End of Production Cell)を評価する。好ましくは、cGMP条件下で産生された35日間の長期バイオリアクター運転から得られたEPCの結果物(AC60108)は、成長しないか負の結果が得られるか、細菌、真菌、マイコプラズマ、偶発的ウイルス夾雑物、マウスウイルス、または類似の夾雑物もしくは粒子は検出されない。
【0049】
第4の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを産生する能力を特徴とするトランスフェクトした細胞を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)を安定且つ確実に産生するCHO−K1細胞系統などの組換えチャイニーズハムスター卵巣細胞系統を特徴とする。CSL4S−342と呼ばれるCHO−K1細胞系統が特に好ましい。いくつかの好ましい実施形態では、細胞系統は、1つまたは複数の発現構築物を含む。より好ましくは、細胞系統は、約10またはそれ以上の発現構築物のコピーを含む。さらにより好ましい実施形態では、細胞系統は、少なくとも約20〜80または40〜80μg/107細胞/日の量で組換えN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)を発現する。
【0050】
組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を、CSL4S−342と命名された安定にトランスフェクトされたCHO−K1(チャイニーズハムスター卵巣)細胞系統から生産することができる。細胞系統は、文献(Crawley,J.Clin.Invest.99:651-662(1997))に記載されている。マスターセルバンク(MCB)およびワーキングセルバンク(WBC)を、Tektagen Inc.(Malvern,PA)で調製した。セルバンクを、組換え哺乳動物細胞系統についてのICH推奨ガイドラインによって特徴づけた。
【0051】
第5の態様では、本発明は、酵素治療で使用することができる量のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの生産に適切な新規のベクターを提供する。
【0052】
第6の態様では、本発明は、本発明の方法にしたがって生産され、それにより酵素治療で使用することができる量で存在する、新規のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログを提供する。本発明のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の好ましい比活性は、約20〜90単位/mgタンパク質、より好ましくは約50単位/mgタンパク質を越える範囲である。好ましくは、脱グリコシル化酵素の分子量は、約55〜56kDa、最も好ましくは約55.7kDaである。好ましくは、グリコシル化酵素の分子量は、約63〜68kDa、最も好ましくは約64〜66kDaである。本発明には、生物活性フラグメント(天然に存在するヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの短縮分子、アナログ、および変異体が含まれる)も含まれる。
【0053】
N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼのヒトcDNAから41アミノ酸のシグナルペプチドを含む533アミノ酸のタンパク質が予想される(Peters,et al.J.Biol.Chem.265:3374-3381)。シグナルペプチド切断後の推定分子量は約55.9kDaである。SDS−PAGEによる炭水化物修飾に起因する組換え酵素の見かけ上の分子量は64kDaである。推定タンパク質配列は、6つの潜在的なN結合オリゴサッカリド修飾部位を含み、2,000kDaの平均分子量および推定分子量と見かけ上の分子量との間の8,000kDaの分子量の相違に基づくと、そのうちの4つが、使用されていると考えられる。成熟形態の細胞内タンパク質は、システイン結合によって結合した3つのペプチドを有する。最も巨大なペプチドの分子量は47kDaであり、他の2つの平均分子量はそれぞれ6kDaおよび7kDaである。
【0054】
本発明の方法にしたがって製造および精製された製剤の説明を表2に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
第7の態様では、本発明は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)、またはその生物活性フラグメント、変異体、もしくはアナログの新規の精製方法を特徴とする。第1の実施形態によれば、トランスフェクトした細胞塊を成長させ、これを除去し、組換え酵素を放出させる。カラム汚染を防止するために、外因性物質を、通常、粗バルクから分離すべきである。好ましくは、組換え酵素を含む成長培地に対して限外濾過およびダイアフィルトレーションを行う。1つの方法では、濾過溶液を、DEAE Sepharoseクロマトグラフィカラム、その後Blue Sepharoseクロマトグラフィカラム、その後Cu++Chelating Sepharoseクロマトグラフィカラム、その後Phenyl Sepharoseクロマトグラフィカラムに通過させる。DEAE Sepharose、Blue Sepharose、Cu++Chelating Sepharose、およびPhenyl Sepharoseクロマトグラフィカラムの連続的使用を含むこのような4ステップカラムクロマトグラフィにより、特に高度に精製された組換え酵素が得られる。当業者は、1つまたは複数のクロマトグラフィステップを省略または置換することができるか、クロマトグラフィステップの順序を本発明の範囲内で変化させることができることを認識する。他の好ましい実施形態では、最後のクロマトグラフィカラム由来の溶離物に対して限外濾過/ダイアフィルトレーションを行い、任意の残存ウイルスを除去するための適切なステップを行う。最後に、所望ならば、適切な滅菌ステップを行うことができる。図2に概説したプロセスにしたがって組換え酵素を精製することができる。組換え酵素の性質は、患者への鍵となる。本方法によって生産されたrhASBは実質的に純粋である(95%超)。
【0057】
好ましい実施形態では、約10mMのリン酸ナトリウム溶液および約100mMの塩化ナトリウム溶液(約pH7.3)を使用して限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行う。別の実施形態では、溶離液を適切な緩衝液、好ましくは塩化ナトリウム−リン酸ナトリウム緩衝液を使用して調整する、約pH7.3でのDEAE Sepharoseクロマトグラフィステップを行う。さらに好ましい実施形態では、溶離液を適切な緩衝液、好ましくは塩化ナトリウム−酢酸ナトリウム緩衝液を使用して調整する、約pH5.5でのBlue Sepharoseクロマトグラフィステップを行う。また、好ましい実施形態では、溶離緩衝液(塩化ナトリウム−酢酸ナトリウム緩衝液が含まれる)を使用してCu++Chelating Sepharoseクロマトグラフィステップを行う。特に好ましい実施形態では、組換え酵素を約pH5.5〜6.0、最も好ましくはpH5.8の塩化ナトリウム−リン酸ナトリウムなどの組成から成る緩衝液中に約1mg/mlの濃度に濃縮する、クロマトグラフィ由来の溶離液に対して第2の限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行う。リン酸緩衝液は酵素の重大な分解を防止し、且つ安定性を改善するので、リン酸緩衝液がプロセスで使用する好ましい緩衝液である。
【0058】
本発明の範囲内の特に好ましい精製方法のより詳細な説明を表3に示す。
【0059】
【表5A】

【表5B】

【0060】
処方したバルク製剤物質を、クラス100層流フード中の0.04ミクロン、好ましくは2μmのフィルターにてType1ガラスバイアルに濾過滅菌することができる。半自動式液体充填装置を使用して、バイアルに約5mLの最終濃度まで充填することができる。次いで、バイアルを手作業で栓をし、密封し、ラベルを付けることができる。
【0061】
前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼのより好ましい精製方法は、(a)前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む流動物を得るステップと、(b)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを切断することができる前記流動物中のプロテアーゼのタンパク質分解活性を減少させるステップであって、前記減少が前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼに悪影響を与えない、ステップと、(c)前記流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、(d)前記流動物を銅キレート化クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、(e)前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触指せるステップと、(f)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを回収するステップとを含む。好ましくは、ステップ(c)、(d)、および(e)を連続的に行う。この方法は、3つのクロマトグラフィのステップまたはカラムしか必要ない。高度に精製された前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを得るために、さらなるクロマトグラフィのステップおよびカラムは必要ない。この方法は、DEAE Sepharose樹脂を含む流動物を含まない。回収された前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度は、少なくとも99%またはそれ以上である。総回収収率は、少なくとも40〜60%であり得る。
【0062】
好ましくは、前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む流動物を得るステップは、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをコードする遺伝子、好ましくはヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをコードする遺伝子で形質転換された細胞培養物を成長させるステップを含む。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞である。より好ましくは、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。得るステップは、細胞培養物から流動物を回収するステップをさらに含み得る。得るステップは、流動物を約20倍に濃縮するステップをさらに含み得る。
【0063】
この方法の特徴は、プロテアーゼ活性と前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼとの初期の分離である。この分離は、(1)プロテアーゼ活性の減少、阻害、もしくは相互作用、または(2)前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼからのプロテアーゼの物理的分離のいずれかを含み得る。好ましくは、この分離は、精製プロセスの間にできるだけ早く行う。目的は、成熟もしくはプロセシング形態および/または他の分解形態に分割される前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの分子数を最小に維持することである。標的組織により容易に取り込まれてその後リポソームにターゲティングされるので、成熟またはプロセシング形態と対照的にN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの前駆体形態は好ましい形態である。前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼからプロテアーゼ活性をより早く分離する。前駆体形態の分子数が少ないほど成熟形態またはプロセシング形態に分割される。
【0064】
流動物のpH値の約4.8〜8.0への調整によってプロテアーゼ活性を減少または阻害する。好ましくは、pH値は、約4.8〜5.5である。より好ましくは、pH値は、約4.8と5.2との間である。減少が望ましいプロテアーゼの比活性は、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの前駆体形態を成熟形態またはプロセシング形態に特異的に切断するプロテアーゼ活性である。プロテアーゼ活性は、1つまたは複数のシステインプロテアーゼで見いだされる。前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを特異的に切断するシステインプロテアーゼはカテプシンLである。不活性形態のカテプシンLの分子量は約36kDaであり、5.0未満のpHへの暴露の際にサイズが21〜29kDaの活性形態に変換される(図9Cを参照のこと)。pHを、プロテアーゼはその不活性形態から活性形態に変換されず、且つ所望の前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性は悪影響を受けないか不可逆的に悪影響を受けない任意の値に調整することができる。
【0065】
好ましくは、ステップ(c)は、流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィカラムに通過させることを含む。より好ましくは、Cibracon blue dye相互作用クロマトグラフィカラムは、Blue Sepharose 6 Fast Flowカラムである。好ましくは、ステップ(d)は、流動物を銅キレート化クロマトグラフィカラムに通過させることを含む。より好ましくは、銅キレート化クロマトグラフィカラムは、Chelating Sepharose Fast Flowカラムである。好ましくは、ステップ(e)は、前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィカラムに通過させることを含む。より好ましくは、フェニル疎水性相互作用クロマトグラフィカラムは、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow High Subカラムである。好ましくは、ステップ(c)、(d)、および(e)の時間的な順序は、ステップ(c)、ステップ(d)、およびステップ(e)である。
【0066】
回収ステップは、流動物の限外濾過/ダイアフィルトレーションを含み得る。回収ステップは、DNA除去のための流動物の濾過および/またはウイルス除去のための流動物の濾過を含み得る。ウイルス除去のための濾過は、流動物の0.02μmフィルターへの通過を含み得る。
【0067】
この方法を使用して、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体を精製することもできる。
【0068】
rhASBの純度を、疎水性の相違に基づいてタンパク質を分離する逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC:reverse-phase high performance liquid chromatography)を使用して測定または決定する。このアッセイは、固定相としてC4カラム(Phenomenex Jupiter)を、移動相として水:アセトニトリルを使用する。タンパク質サンプルを最初に水を含むカラムに注入し、これらの条件下で、全てのタンパク質がカラムに結合する。次いで、漸増濃度のアセトニトリルを、カラムに注入する。このアセトニトリル勾配により、各タンパク質が移動相中で溶解するようになり、カラムから溶離する点まで移動相の疎水性が増加する。これらの溶離時間は、混合物中の各タンパク質で正確に再現可能である。210nmでの紫外線吸収によってクロマトグラフィ上のピークとしてタンパク質を検出する。各ピーク領域を計算し、サンプルの純度をクロマトグラム中のrhASBピークと総ピーク領域との比として計算することができる。RP−HPLCは、高分解能で再現可能な実績のあるrhASBの純度の決定方法である。
【0069】
本願以前の研究で、夾雑タンパク質ELISAの実施によってASBの純度が決定されることが示されている。この夾雑タンパク質ELISAの使用方法(その詳細は開示されていない)は、おそらくタンパク質宿主−細胞夾雑タンパク質の混合物に対して惹起された抗体を使用している。抗体を作製するために使用した潜在的夾雑タンパク質の同一の混合物の検量線を使用して、ELISAを行った可能性が高い。試験サンプルを、夾雑レベルについて標準的な混合物と比較して定量した可能性が高い。これらのアッセイはタンパク質精製で有益なツールであるが、以下の理由で生産物の純度の決定についてRP−HPLCよりも精度が低い。
【0070】
(1)RP−HPLCでは、rhASBと夾雑物との比率を、同一の測定(UV吸収)で両方決定する。ELISAでは、抗体結合によって夾雑濃度を決定するのに対して、標的タンパク質の含有量を別のアッセイ方法(通常、UV吸収またはBradford法)で決定する。「純度」値を、同一の方法によって実験的に決定された同一の単位を使用した2つの量の比として計算すべきである。
【0071】
(2)ELISAを十分に機能させるために、抗体によって検出されたサンプルは標準と同一のタンパク質組成を有さなければならない。これは、夾雑タンパク質ELISAの場合、可能性は極めて低い。このアッセイ型のアッセイ標準は、抗体が産生された多数の各タンパク質の混合物である。しかし、夾雑物タンパク質は、精製rhASB生産物中に小集団でしか存在しないはずである。したがって、抗体試薬は、ここでは異なるタンパク質混合物を検出し、反応対標準はおそらくほとんど非直線形である。これが起こる場合、アッセイにより、各サンプル希釈について正味の値が異なるので、希釈物(存在する場合)は正確な値が得られるかわからない。
【0072】
(3)さらに、全ての潜在的夾雑物タンパク質が、免疫原性を示すか、抗体作製に使用されるウサギなどの動物と同程度の免疫原性を示すわけではない。したがって、ELISAによって決定された夾雑物レベルは、精製生産物中に存在する夾雑物の小集団にのみを反映し得る。全く検出できない生産物中の1つまたは複数の夾雑物を有することは十分可能である。対照的に、RP−HPLCは、UV吸収はタンパク質分子の普遍的性質であるので、全てのタンパク質を検出する。
【0073】
(4)最後に、精製製剤中に以下の2つの夾雑物型が存在する。生産物非関連夾雑物(上記考察の宿主細胞タンパク質)および生産物関連夾雑物(プロセシング形態および凝集物を含む分解生産物)。夾雑物ELISAによって後者を検出することができないが、RP−HPLCによって容易に検出することができる。
【0074】
したがって、夾雑タンパク質ELISAから得た実際の数には疑いの余地があり、RP−HPLCはより確かな基礎に基づく。
【0075】
さらに、SDS−PAGE分析により、宿主細胞夾雑物と所望の薬物タンパク質生産物のプロセシング形態または分解形態との両方を検出可能である。ウェスタンブロットと組み合わせて使用した場合、宿主細胞汚染物由来の生産物非関連夾雑物を、生産物関連夾雑物と区別することができる。最後に、異なる分子量の夾雑物(低分子量のタンパク質のプロセシング形態または分解形態ならびに単量体、二量体、および他の多量体が含まれる)を検出することができるので、SEC−HPLCにより、生産物関連夾雑物レベルを定量可能である。
【0076】
この精製方法の実施形態を表4に示す。
【0077】
【表6A】

【表6B】

【0078】
このようにして得られた製剤の構成要素を表5に示す。本発明の範囲内の製剤組成物の構成要素を表6に示す。
【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
記載の本発明の以下の実施例は例示のみを目的として提供しており、本発明を決して制限しない。
〔実施例1〕
【0082】
[組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを使用した臨床評価]
〔まとめ〕
マロトー−ラミー症候群としても公知のMPS VIの治療のために組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を示す。本発明者らは、代理および定義された臨床評価項目の安全性、薬物動態学、および初期応答について毎週の注入によって評価される初期の非盲検臨床試験からなるrhASBの臨床開発プログラムを提案する。5人の評価可能な患者についての十分な安全性の情報を収集するために、最低3ヶ月間試験を行う。この時、1mg/kgの初期用量で過剰な尿中グリコサミノグリカンは産生されないか、有意な直接的な臨床上の利点を得ることができるはずであり、安全性を確立し、且つさらなる有効性を評価するために、さらに3ヶ月間用量を倍増するか維持する。
【0083】
〔目的〕
本発明者らの主な目的は、最低3ヶ月間MPS VI患者におけるrhASBの毎週の注入の安全性を証明することである。安全性の測定には、副作用、免疫応答およびアレルギー反応(補体活性化、組換え酵素に対する抗体形成)、完全な臨床化学パネル(腎機能および肝機能)、尿検査、および差分CBC(CBC with differential)が含まれる。
【0084】
1つの二次的目的は、MPS VIに影響を受けることが公知のいくつかのパラメーターの変化のモニタリングによって有効性を評価することである。これらには、6分間歩行試験(運動耐容能の基準として)、全肺機能(PFT)評価、尿中グリコサミノグリカンレベルおよび肝腫脹レベル(腎臓および肝臓がGAG貯蔵の基準として)、発育速度、関節の可動範囲、児童健康評価質問表(Children's Health Assessment Questionnaire)(CHAQ)、視力、心機能、睡眠検査、および2つの異なる全体的評価(一方は研究者、他方は患者/介護者によって実施される)が含まれる。第2の二次的目的は、循環における注入薬物の薬物動態パラメーター、ならびに組織源として白血球および口腔組織を使用した細胞内の酵素の全般的分布および半減期を決定することである。これらの測定は、細胞のリソソームに送達された酵素レベルに基づいた臨床反応と用量との関連を補助すると予想される。
【0085】
〔方法〕
本発明者らは、MPS VI患者のrhASBを用いた治療の安全性を証明して臨床パラメーターを評価するために単一施設での非盲検試験を行う。2週間のベースライン評価(病歴および身体検査、心理検査、耐久力試験(トレッドミル)、標準的な臨床試験(CBC、パネル20、CH50、UA)、身体のMRIもしくはCATスキャン(肝臓および脾臓の適定、骨および骨髄の評価、ならびにリンパ節および扁桃のサイズ)、心臓学的評価(心エコー図、EKG、CXR)、気道評価(肺機能試験)、睡眠中の閉塞性事象を研究するための睡眠検査、関節制限分析(肘および指骨間関節の可動範囲を測定する)、CNP圧でのPL、および生化学研究(2つの原因における口腔N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ活性、2つの原因における白血球N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ活性、3つの原因二おける尿中GAG、抗rhASB抗体のELISAについての血清作製、および24時間の尿中クレアチニンクリアランス)が含まれる)のために患者を入院させる。上記評価に加えて、いくつかの身体の運動(頭上への挙手および歩行など)を行った各患者を撮影およびビデオ録画する。酵素注入前に抗ヒスタミンでの前治療を有効に使用することができるように、患者への抗ヒスタミンを増量する。ヒト推奨用量(1mg/kg)(50単位/kg)を、4時間にわたる静脈内注入によって毎週投与する。患者は、最初の2週間は病院に滞在し、その後の4週間は短期滞在する。最後の6週間の治療を、患者の自宅近くの施設で行う。3ヶ月後に、完全な評価のために患者を病院に戻す。用量を2mg/kgに漸増する必要がある場合、患者を最初の12週間は上記と同一のスケジュールに従わせる。いずれかのシナリオにおいて、試験開始から6ヶ月間完全な評価も行う。試験を通して、安全性をモニタリングする。試験を終了した患者は、安全および有効性の条件がBLA承認まで証明される限り、延長プロトコール後も治療を継続する。
【0086】
〔患者数および登録〕
試験開始時に1人の患者を登録し、1ヶ月後に2人のさらなる患者を登録し、治療に関連する任意の予期せぬ合併症を罹患しているさらなる2人の患者を2週間後に登録した。任意の登録患者が重症になるか、患児が生命を脅かすか有害な病態のために緊急の臨床手順が必要である場合、さらなる患者を許可すべきである。
【0087】
〔診断および対象/除外基準〕
患者は、測定可能な臨床的徴候およびMPS VIの徴候によって確認され、線維芽細胞の減少または白血球ASB酵素活性レベルによって支持されたMPS VIの診断書を有する5歳またはそれ以上の男子または女子であり得る。出産能力を有する女性患者は、各投薬直前に妊娠検査(尿中β−hCG)が陰性でなければならず、且つ研究を通して医学的に許容された避妊法を使用することを忠告しなければならない。患者が以前に骨髄移植を受けている場合、妊娠もしくは授乳している場合、研究登録前30日以内に治験薬を受けている場合、または疾患、重篤な介入疾患、もしくは研究遵守を有意に減少し得る他の酌量すべき事情を有する場合、本研究から患者を除外する。
【0088】
〔用量、経路、および投与計画〕
患者に1mg(約50単位/kg)の用量のrhASBを本研究の最初の3ヶ月間投与する。過剰な尿中GAGが妥当な量に減少せず、且つ臨床上の利点が認められない事象では、用量を倍増する。5人の患者全員が3ヶ月間の治療を受けた後にのみ、用量を増大させる。このrhASBの投薬形態を、最低12週間連続して毎週1回約4時間にわたり静脈内投与する。末梢静脈カテーテルを、橈側皮静脈または他の適切な静脈に留置し、30cc/時間で生理食塩水の注入を開始する。試験前に完了した漸増試験に基づいて、患者に1.25mg/kgまでのジフェニルヒドラミンを静脈内に前投薬する。rhASBを、1mg/mlヒトアルブミンを補足した100ccの通常の生理食塩水で希釈する。心肺およびパルス酸素濃度計でモニタリングしながら、1mg/kg(約50単位/kg)の希釈酵素を注入する。患者を臨床的および注入に対する任意の副作用についてモニタリングする。任意の異常な症状(倦怠感、息切れ、低酸素症、低血圧、頻脈、吐気、悪寒、熱、および腹痛が含まれるが、これらに限定されない)が認められる場合、直ちに注入を中止する。臨床症状および徴候に基づいて、さらなるジフェニルヒドラミンの投与、マスクによる酸素、静脈内への流動物のボーラス、またはステロイド治療などの他の適切な臨床介入を行うことができる。急性反応が生じた場合、血清中の補体消費を評価する。薬物動態学的分析に必要なサンプリングのために第2の静脈内部位を使用する。
【0089】
〔評価可能な患者〕
12週間の治療中に2回しか非連続注入を逃していない任意の所与の患者由来のデータを評価可能と見なす。初期評価、中間点評価、および最終評価を完了させなければならない。
【0090】
〔安全性〕
酵素の投与速度の変更または抗ヒスタミンもしくはステロイド使用の急性投与によって防止することができない有意な急性反応が生じない場合、酵素療法は安全であると決定する。臨床試験、臨床検査、または他の研究で有意な異常が認められない場合、酵素の長期投与は安全と決定する。抗体の存在または補体活性化自体が危険と見なされるが、このような抗体はELISAおよび免疫複合体病の可能性の臨床評価によるモニタリングが必要である。
【0091】
〔有効性〕
本研究の1つの目的は、主試験のデザインのために潜在的評価項目を評価することである。代理および臨床評価項目の改良は、酵素の送達および体内からのグリコサミノグリカン貯蔵の除去の結果として予想される。平均の過剰尿中グリコサミノグリカンレベルが3ヶ月を超えて妥当な量が減少せず、且つ3ヶ月間有意な臨床上の利点が認められない場合に用量を増大させる。改善は、最近終了したMPS第1相臨床試験で認められたものに匹敵すると予想され、気道指数または睡眠時無呼吸の解決、関節可動性の改善、および耐久力の増大が含まれる。
〔実施例2〕
【0092】
MPS VIネコについての利用可能な情報ならびに関連する薬理学適研究および毒物学研究の包括的再検討を以下に示す。ゴーシェ病、ファブリー病、およびムコ多糖体症Iなどの種々の遺伝性代謝障害のための有望な治療として酵素代償療法を確立した。これらの障害のいくつかにおいて、天然の動物モデルにより前臨床研究時のヒト治療の臨床的有効性を予想することができる。MPSI(イヌモデル)においてこれは真であることが見いだされた。この点を考慮して、この疾患についてのヒト研究の開始前にMPS VIネコを用いて研究を行った。ヒトMPS VI患者における臨床試験を進めるにあたり、十分な安全性および有効性データが存在する。
【0093】
rhASBを用いたMPS VIネコの研究は、薬物投与の結果として死亡したネコは存在しないことを示す。予想するように、MPS VIネコにおける研究でも、rhASB取り込みがマンノース6リン酸修飾炭水化物側鎖の存在に依存することを示す。MPS VIネコにおけるrhASBでも、種々の主要な器官から貯蔵物を除去し、骨密度を中程度に変化させることが示された。長期投与量範囲有効性研究により、有意な臨床上の利点が認められる最も低い濃度は1mg/kg/週の用量であることが示唆される。ボーラスおよび低速(2時間)注入後の酵素分布、組織グリコサミノグリカン貯蔵のクリアランス、および尿中グリコサミノグリカンレベルの減少を比較するための研究も行った。MPS VIを罹患したネコにおける1mg/kgのrhASBの予測臨床用量の毎週の注入の安全性を評価するために研究を進行し続ける。
【0094】
いくつかのシャムネコファミリーのMPS VIの自発的形態は1970年代に同定され(Jezyk,Science 198:834-36(1977))、これらの動物の病理学的変化の詳細なレポートが発表されている(Haskins,et al.,Am.J.Pathol.101:657-674(1980);Haskins,et al.,J.Am.Vet.Med.Assoc.182:983-985(1983);Konde,et al.,Vet.Radiol.28:223-228(1987))。これらのネコの臨床所見は幾らか異なるが、これらの変化は全て文献で報告されている一般的変化を示す。(Jezyk,et al.,Science 198:834-36(1977);Konde,et al.,Vet.Radiol.28:223-228(1987);Crawley,「Enzyme replacement therapy in a feline model of mucopolysaccharidosis type VI」PhD thesis,University of Adelaide,Adelaide,S.Australia,(1998))。表6を、非処置MPS VIネコで見いだされると予想される「平均的」変化が得られるようにこれらの源から構築した。
【0095】
【表9】

【0096】
他の生化学的/形態的決定因子は、35日目までに非処置ネコの器官の組織中のグリコサミノグリカンの貯蔵が最大となることを示す(Crawley,et al.,J.Clin.Invest.99:651-662(1997))。尿中グリコサミノグリカンレベルを正常なネコおよびMPS VIネコの出生時に評価したが、約40日後、正常なネコのレベルは減少した。MPS VIネコの尿中グリコサミノグリカンは、上昇したままであるか、約5ヶ月後の定常状態に達するまで増加し続ける。
【0097】
罹患同腹子において臨床所見の変化が認められる。特定の異常の発生のタイミングのいくつかの変動性に加えて、いくつかの臨床的および病理学的変化の進行の経時変化も変化し得る。さらに、典型的には、骨病変が進行するが(Konde et al.,Vet.Radiol.28:223-228(1987))、角膜混濁は進行しない。さらに、いくつかの麻痺したネコは、経時的に重篤な不全麻痺が改善することが認められた。各ネコにおける疾患の進行を詳述した研究は、臨床(またはX線写真の)所見に制限されない。これらのいくつかは、神経学的欠陥および胸腰領域における骨組織の増殖に続く髄圧迫などの明確な病理学的相関を示す(Haskins,et al.,J.Am.Vet.Med.Assoc.182:983-985(1983))。
【0098】
6ヶ月の有効性研究では、新生児MPS VIネコにおける組換えネコASBを使用した代償療法を行った。これは、いくつかの処置されたMPS VIネコがヒト酵素に対する抗体を産生したという所見によって促された(6.5節を参照のこと)。これらの抗体は、酵素の取り込みおよび安定性を変化させることができる(Brooks,et al.,Biochim.Biophys.Acta 1361:203-216(1997))。1mg/kgのネコ酵素を毎週注入した。研究の主な結論は、尿中GAG、体重/成長、骨の形態学、およびいくつかの組織からの貯蔵物質のクリアランスが以前の研究で使用された同用量のヒト組換え酵素と比較して改善されること、正常なネコで見いだされる範囲を超えた抗体が検出されること、および直接比較において疾患の逆転について1mg/kgのネコ酵素用量が5mg/kgのヒト酵素用量に匹敵することであった(Bielicki,et al.,J.Biol.Chem.,274:36335-43(1999))。これらの研究は、ネコ由来の酵素をネコに投与した場合に評価項目および免疫原性の改善を増大させることが可能であることを示す。これにより、1mg/kg/週のヒト酵素でのヒト患者の投与に対するさらなる支持が得られる。この研究結果を、表7に示す。
【0099】
【表10】

【0100】
表9は、MPS VIネコモデルにおける組換えヒトASBを使用して実施した全ての研究のまとめを提供する。
【0101】
【表11】

〔実施例3〕
【0102】
[分布および実行可能性]
酵素の取り込みおよび分布を報告し、さらなる有効性研究のための潜在的評価項目のパイロット研究として役立たせるために最初の研究を行った(Crawley,et al.,J.Clin.Invest.97:1864-1873(1996))。ボーラス注射によって罹患ネコに週1回または2週間毎に1回0.5mg/kgから1.5mg/kgまでの組換えヒトASBを投与した。値の比較により非処置MPS VIネコ(Cat D)および正常ネコを評価した。非処置ネコ由来のデータは、38頭の非処置ネコの病歴の評価によってさらに支持された。正常なネコ酵素の存在下でヒトASBの検出可能な免疫アッセイ技術を使用して、正常なネコにおける急激な取り込みおよび分布の研究を行った。
【0103】
これらの研究により、主に、MPS動物モデルにおける他の酵素代償研究で認められるように、広範に酵素が取り込まれ、肝臓および脾臓で主に取り込まれることが予想されると結論づけられた。取り込み効率は、酵素上のマンノース6リン酸修飾炭水化物側鎖の存在に依存していた。酵素の半減期は、2〜4日間であると決定された。治療的には、酵素は種々の主要器官から蓄積を除去せず、骨密度を中程度に変化させる。高齢のMPS VIネコでは、角膜、骨形態学、および軟骨欠損症は有効に治療されなかった。研究結果を表10にまとめる。
【0104】
【表12】

〔実施例4〕
【0105】
[MPS VIネコにおける出生時からの処置の有効性]
MPS VIネコの出生時から開始する長期の種々の用量による有効性の研究を行い(Crawley,et al.,J.Clin.Invest.99:651-662(1997))、表10にまとめる。MPS VIネコを、出生時から0.2、1、および5mg/kgのrhASBによる静脈内ボーラスで毎週処置した。全部で9頭のネコを5、6、または11ヶ月間処置した。さらに、非処置コントロールとして12頭のMPS VIネコおよび正常なネコを含んでいた。0.2mg/kgの用量は研究した1頭のネコでは疾患の進行が変化せず、唯一の報告された臨床上の利点は肝臓クップファー細胞中の蓄積の減少であることに主に結論づけられる。尿中GAGレベルは、より高い用量群における試験時にほぼ正常値まで減少した。主要器官の改善に加えて、出生時からのより高用量の治療により脊椎の骨の奇形および多数の骨の異常な形態を防止または改善することができた。1mg/kg〜5mg/kgの用量でL−5椎骨無機質量、骨梁の厚さ、および骨表面密度の改善に用量依存性効果を示すが、5〜6ヶ月間のERTでの骨形成速度の改善は共に等価であった(Byers,et al.,Bone 21:425-431(1997))。僧帽弁および大動脈は用量に依存し、1mg/kgでは完全ではないが、5mg/kgでほぼ完全であった。いかなる用量においても軟骨および角膜の蓄積は改善されなかった。本研究により、1mg/kg/週の用量は有意な臨床上の利点を得るのに最も低い濃度であることが示唆される。研究結果を、表11に示す。
【0106】
【表13】

〔実施例5〕
【0107】
[新生MPS VIネコにおける組換えヒトASBの1週間に2回の注入の有効性]
1週間に2回0.5mg/kgの注入を評価するために、新生ネコにおいて6ヶ月間の研究を行った。さらに、本研究で使用した酵素は、排他的にCSL-4S-342細胞系統に由来する。本研究では、主に、前に報告した毎週1mg/kgの用量と比較した結果、本研究により、物理的、生化学的、神経学的、および放射線学的パラメーターが同様に改善されると結論づけられる。最も顕著な相違は、頚椎可動性のわずかな悪化ならびに心臓弁および大動脈などのより緻密な結合組織中のリソソーム蓄積のクリアランスの低さであった。結果を、表12にまとめる。
【0108】
【表14】

〔実施例6〕
【0109】
[MPS VIネコにおける酵素注入速度の関数としての酵素取り込みおよび分布の評価]
本研究の主な目的は、ボーラス注入および同一の1mg/kgの用量の低速(2時間)注入後の酵素分布、組織GAG蓄積、および尿中GAGレベルの減少を比較することである。低速投与の提案は、MPS1処置のためのα−L−イズロニダーゼの前臨床研究および臨床研究由来の経験に基づく。さらに、本研究により、細胞系統CSL-4S-342からBioMarin社で産生された酵素が生物学的に活性であり、且つ安全であるという第1のデータが得られた。本研究により、主に、本研究で処置された4頭全てのネコ(2頭/群)が低速または高速注入のいずれかに対して急性副作用を示さず、且つ酵素の反復注入による有害な影響はないと結論づけられる。しかし、ボーラス注入により、肝臓への取り込みが多くなり、これは好ましくない。低速注入により、組織に良好に分布され、それにより臨床試験に好ましい方法である。
【0110】
本研究で得られたrhASBの組織分布により、2時間の注入により、肝臓から離れた他の器官の酵素レベルが増加する(脳内の活性増加が含まれる)ことが示唆された。第1および第2の注入の直後に非処置MPS VIネコで認められた範囲未満の尿中GAGの減少が認められた。細網内皮細胞でリソソーム蓄積の相関が認められ、5回の注入後にいくつかの線維芽細胞(心臓弁)および平滑筋細胞(大動脈)で非常に軽度に認められた。注入に対する他の有意な臨床反応がいずれかの群でも認められないが、研究機関の短さおよび有意な疾患がすでに発症した後から開始したことによりこれは意外なことではない。2時間の注入の延長は安全であり、前の研究で使用したより短いプロトコールと比較しても十分に許容される。2時間の注入により、酵素組織分布について評価可能な1頭のネコに基づいて酵素分布を改善することができる。
〔実施例7〕
【0111】
[MPS VI罹患ネコにおける組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの6ヶ月の安全評価]
本発明の製造プロセスによって生産された酵素を使用して、MPS VIネコにおける2回の6ヶ月研究を開始した。これらの研究の目的は、MPS VIを罹患したネコにおける計画されたヒト臨床用量のrhASBの毎週の注入の安全性および有効性を評価することである。研究6は、最初に3〜5月齢の子ネコへの投与を含む。研究7は、出生時から子ネコに毎週計画されたヒト臨床用量のrhASBの注入を含む。本研究は、潜在的な毒性の評価を意図する。免疫応答の可能性を評価するために、組換え酵素の注入中の挙動の変化についてネコを観察する。補体枯渇および組換え酵素に指向する抗体の形成について血清をモニタリングする。完全な臨床化学パネル(腎機能および肝機能)、尿検査、および完全血球算定(CBC)の相違によって全体的な器官機能をモニタリングする。酵素注入に対する設定測定点で尿中グリコサミノグリカンレベルを毎週モニタリングする。疾患の臨床上の改善の証明を報告する。これらのデータにより、処置の潜在的有効性をさらに評価し、インビボでの酵素の活性および取り込みを立証する。本研究を、できる限りGLP規則の原理および業務に一致する様式で行い、以後も行う。
【0112】
第1の研究の予備段階の結果は、rhASBの投与により、いかなる動物に対してもいかなる有害な影響を与えず、体重および臨床化学は一般に基準範囲内で維持されることを示す。しかし、抗体力価が有意に増大した両方のネコは注入時に異常な臨床的徴候を示したが、一旦酵素注入を中止すると、両動物は正常に挙動し、長期間罹患しないようであった。長期間注入(4時間)および前投薬抗ヒスタミンの増量により、ネコにおいていかなる異常な臨床的徴候も示すことなく治療を継続することが可能である。尿中GAGレベルのわずかな減少により、組織または循環における蓄積グリコサミノグリカンの減少において治療が幾らか有効であるか示唆されるが、長期的にはこれらのレベルは変動し、解釈が困難である。5頭のネコはERTに対する応答に明確な臨床的改善が認められないが、以前の研究に基づいて23、これには少なくとも6ヶ月の処置が必要である。5頭のネコのうち4頭で抗体力価が発生し、力価の顕著な増加は、ERTの2ヶ月後に認められた。これらのネコのうちの2頭の力価は2または3ヶ月後に有意に増加した。
〔実施例8〕
【0113】
[rhASBで処置したMPS VIネコの安全プロフィール]
生後24時間以内に処置した登録罹患ネコに対して研究を開始した。rhASBを用いて41頭のMPS VIネコを処置した。有益な罹患動物の治療への暴露前に新規のバッチの急性安全性を確認するために、2頭のネコのうちの1頭に対して正常なネコへの酵素の投与を制限した。まとめると、薬物投与の結果としてMPS VIネコは死亡しなかったが、4頭のネコはウイルス感染または潜在的な先天性異常の結果として死亡した。本発明の生産方法にしたがって、研究用酵素を生産した。予備データを表13に示す。
【0114】
【表15】

〔実施例8A〕
【0115】
[低速注入での組織分布]
長時間注入(2時間)または短時間注入(10〜15分間)プロトコール(ASB−PC−004)を使用して、幼若MPS VIネコ(開始時10週齢未満)におけるrhASBの取り込み速度および組織分布を比較するために、個別の研究を行った。7頭の正常なネコ(12〜24月齢)を落ち着かせ、採血するために大腿動脈カニューレを移植した。橈側皮静脈に7mLの体積の1.0mg/kgまたは7.3mg/kgの用量のrhASBを40秒間注入した。投与から約2、4、6、8、10、20、30、40、60、および120分後に連続ヘパリン添加動脈血サンプルを得た。遠心分離によって血漿を回収し、分析まで凍結した。4時間後、動物を安楽死させ、組織を回収し、秤量し、分析まで凍結した。
【0116】
個別の研究では、3頭の正常なネコ(8〜66月齢)に、7mLの体積の1.0mg/kgの用量のrhASBを静脈内ボーラスで投与した。投与から2、4、または7日後に測定点あたり1頭のネコを安楽死させた。選択組織を回収し、秤量し、分析まで凍結した。分析を比較するための組織中のネコASBレベルを得るために、rhASBに暴露していない1頭のさらなる正常なネコを安楽死させた。ELISAアッセイ技術を使用して、血漿中および組織中のrhASBまたはネコASBを定量した。サンプル中のrhASBを固定化抗rhASBモノクローナル抗体に吸着させ、ネコASBをネコASBと交差反応するポリクローナル抗rhASB抗体に吸着させた。次いで、蛍光基質を使用して吸着したASBを定量した。
【0117】
血漿濃度分析は、1.0mg/kgの用量のrhASBの半減期は13.7±3.2分間であり、7.3mg/kgの用量では約45分間であることを示した。1.0mg/kgの投与後の組織の半減期は、肝臓、脾臓、肺、腎臓、および心臓で2.4〜4.2日の範囲であった。投与から7日後までにこれらの組織(心臓以外)で低レベルであるが検出可能なレベルが認められた。1.0mg/kgのASBの投与から4時間後、肝臓に送達された大部分の用量は、軟骨および角膜以外の全組織で検出され、肝臓が大部分を占めた。大脳および小脳以外で、非処置コントロールネコ中のネコASBレベルよりも4倍(大動脈)〜495倍(肝臓)高かった。本研究で決定された組織半減期(1.0mg/kgで2.4〜4.2日間)は、毎週の臨床投与頻度を支持する。
【0118】
本研究の主な目的は、酵素分布、組織GAG蓄積のクリアランス、および尿中GAGレベルの減少における注入速度を評価することであった。10週齢のMPS VIネコ群(n=2/群)に、1.0mg/kgのrhASBを週1回5週間にわたり短時間(10〜15分間)または長時間(2時間)静脈内注入した。最後の注入から2日後に動物を安楽死させ、ASB活性の決定および組織病理学的評価のために、選択組織(肝臓、脾臓、心臓、肺、腎臓、皮膚、大動脈、大脳、小脳、軟骨、角膜、およびリンパ節)を回収した。分析まで組織を凍結して保存した。研究では、組織ASBレベルを決定するために上記と同一の免疫アッセイ(ASB−PC−001)を使用した。2時間注入群中の1頭のネコは、他の処置ネコと比較して組織酵素レベルが減少した。最後の投与後にカテーテル挿入部位付近で高レベルの酵素が検出される一方で、対側肢では低レベルで認められた。これらの所見により、早期にカテーテルを取り外したことがこの動物由来の組織中で認められたASBの組織レベルの低さに寄与することが示唆される。残りの3頭のネコにおける酵素活性の比較により、10分間の注入動物と比較した2時間の注入ネコの肝臓、肺、腎臓、大脳、および小脳での酵素活性が増加し、腸間膜リンパ節での活性が減少することを示された。皮膚、軟骨、および角膜で酵素は見出されなかった。本研究由来のデータは限られているが、本研究由来の所見により、2時間の注入により、10分間の注入と比較して組織(肝臓以外)中の酵素レベルを増大することができることが示唆され、長期注入によってより良好な組織分布が得られることを示す。
〔実施例9〕
【0119】
[製造および精製方法(灌流プロセス)]
フェッドバッチのための精製プロセスと灌流ベースの細胞培養プロセスとを比較したプロセスの流れ図を表14に示す。フェッドバッチ精製プロセスとの比較および灌流精製プロセスのために実施された材料の特定の変更の詳細を表15にまとめる。表16は、灌流ベースの細胞培養で使用した精製方法を示す。
【0120】
【表16】

【0121】
【表17A】

【表17B】

【表17C】

【表17D】

【0122】
【表18A】

【表18B】

【0123】
表15および16に示すように、全ての精製カラムを使用前に再生し、使用後に浄化し、適切な緩衝液中で保存する。
【0124】
[精製原料]
全ての材料を、認定ベンダーから入手する。
【0125】
【表19】

【0126】
使用すべきグリセリンは、合成プロセスに由来する。使用した全ての原料は、高温高圧条件や、牛海綿状脳症(BSE)因子に最終的に有害であることが公知の化学反応を含む厳密なプロセスによって製造されるグリセロールおよび脂肪酸などの獣脂誘導体が、感染性である可能性は低いと考えられる「Minimising the Risk of Transmitting Animal Spongiform Encephalopathy Agents Via Human and Veterinary Medicinal Products」というタイトルのガイダンスについてのCPMP/CVMP注記の最新バージョンに従うべきである。したがって、グリセリン由来のBSE伝播リスクは低いと見なされる。
【0127】
ベンダーの選択および資格、原料の試験、細胞バンクの特徴づけ研究、rhASB精製プロセスのウイルス除去研究および不活化能力、ならびに日常的なロット許可試験の組み合わせによってrhASBのウイルス安全性を確認する。rhASBのウイルス安全性を確実にするために、関連する米国、欧州、およびICHの規則およびガイドラインを参照した。
【0128】
[カラムクロマトグラフィ、DNA除去、およびウイルス濾過]
ここでは一連のクロマトグラフィおよび濾過ステップを使用してrhASBを精製する。回収した流動物を限外濾過によって20倍に濃縮し、pHを調整し、濾過し、Blue Sepharose Fast Flowクロマトグラフィカラム(45cm×16cm)にロードする。Blue Sepharose Fast Flow流動物を濾過し、その後Copper Chelating Sepharoseカラムにロードする。Copper溶離物を濾過し、その後Phenyl Sepharose Fast Flow High Subカラムにロードする。3つ全てのカラムクロマトグラフィ精製ステップを、結合および溶離モードで運転する。Phenyl Sepharoseカラム溶離物を、陰イオン交換フィルターおよびウイルス減少フィルターに通し、その後濃縮し、限外濾過によって緩衝液を交換する。
【0129】
[ウイルス除去/不活化研究]
修正rhASB精製プロセスのウイルス減少能力を評価するために、2つの研究を行った。2つのモデルウイルス系(キセノトロピックマウス白血病ウイルス(XMuLV)およびマウス微小ウイルス(MMV)(Murine Minute Virus))を使用したBioReliance(Rockvile,MD)で研究を行った。XMuLVは、物理化学的相互作用に対する耐性が低い包膜一本鎖RNAレトロウイルスである。MMVは、物理化学的因子に高い耐性を示す小さな非包膜一本鎖DNAウイルス。
【0130】
これらの研究は、2つのクロマトグラフィステップ(Copper Chelating Sepharose FFおよびPhenyl Sepharose FF High Sub)を評価し、rhASB精製プロセスでウイルスフィルター(0.02μm)を使用した。プロセスステップの縮小バージョンを使用して、スパイクおよび回収研究を行った。維持された重要なパラメーターは、保持時間およびマトリクス−溶液相互作用であった。緩衝液の置換、線形流速、およびカラムの高さ(しかしカラム直径を調整)によってこれを行った。本研究で使用した材料(生産物および緩衝液)を、実際の実寸大の生産から回収した。
【0131】
クロマトグラフィカラム(Copper Chelating SeharoseおよびPhenyl Sepharose)を封入し、典型的なrhASBロード(ブランク)またはBioRelianceへの輸送前にウイルス緩衝液を使用してスパイクしたロードのいずれかを使用して予備運転を行った。ウイルス緩衝液の存在下でのクロマトグラムおよび生産物の収率は、ブランク運転と類似していた。クロマトグラフィの直前にXMuLVまたはMMVを使用して、同一のカラムロードをスパイクした。それぞれの評価されたステップについてのウイルス減少量を、カラムロードおよび溶離物中のウイルス負荷の比較によって決定した。本研究結果のまとめを表18に示す。
【0132】
【表20】

【0133】
[プロセス中の試験]
プロセスを通してプロセス中の試験を行い、図3に例示する。回収細胞培養流動物および精製中間体のプロセス中の試験を、表19および20に記載する。
【0134】
【表21】

【0135】
【表22】

【0136】
[前駆体rhASBの灌流精製方法の結果]
表21は、表15および16に記載の精製方法を使用して得たrhASBの純度についてのデータを示す。「RP−HPLC」カラムによる純度は、rhASBの前駆体と成熟形態の両方の組み合わせた量について得た純度を示す。
【0137】
【表23】

【0138】
図4A〜4Cは、灌流精製方法の3つのクロマトグラフィステップの代表的クロマトグラムを示す(表16)。表22は、3つの各クロマトグラフィステップの前駆体rhASBの平均回収率を示す。図5は、各クロマトグラフィステップのプロセス中のサンプルおよび精製最終生産物の純度分析についてのデータを示す(前駆体rhASB)。
【0139】
【表24】

【0140】
バッチプロセスおよび灌流プロセスを使用して得た精製生産物を比較した場合、灌流プロセスは明確により純度の高い前駆体rhASBを生産する。異なる洗浄画分の選択または条件の変更によってバッチプロセスをさらに至適化する試みでさえ、灌流プロセスによって得ることができる純粋な生産物は一貫して得られなかった。灌流プロセスは、99%またはそれ以上の純度の前駆体rhASBを一貫して生産することができる一方で、バッチプロセスはできない(表21)。図6は、細胞培養物をG418を補足し、且つ葉酸、セリン、およびアスパラギンを補足しない培地を使用して培養する古いバッチ方法を使用して得た生産物(レーン2)と灌流プロセスを使用して精製した精製生産物(レーン3〜9)との比較を示す。rhASBサンプルを還元剤を含むSDS中で変性させ、4〜20%PAGEを含むSDSランニング緩衝液による電気泳動に供した。バッチプロセス精製生産物は、灌流プロセス精製生産物よりも明らかに遥かに大量の夾雑物(特に、48kDaサイズ付近)を含む。バッチプロセスのrhASBは、検出可能な量のプロセシング形態を含むようである(1〜15%と評価)(レーン2)。灌流プロセス精製ロットは互いに非常に類似し、バッチプロセス精製rhASB標準よりも複合体が有意に少なく、灌流プロセス物質の純度がより高いことを示す。
【0141】
表23は、灌流プロセス精製方法を使用して精製した前駆体rhASBの純度を示す。
【0142】
【表25】

【0143】
表24は、純度をRP−HPLCおよびSEC−HPLC(プロセシング形態または多量体などの異なる分子量の夾雑物を定量可能である)によって評価した、灌流プロセス精製方法を使用して精製した前駆体rhASBロットの純度を示す。
【0144】
【表26】

【0145】
[灌流プロセスにおけるプロテアーゼ除去]
180Lのバッチスケールでは、ロットあたり2つの比較的巨大な24LのDEAE Sepharose運転が必要である。灌流プロセスにより回収体積が10倍になるが、実際的な大規模精製のために厳しい実際的でないDEAE Sepharoseカラムサイズおよび緩衝液体積が課される。したがって、新規の灌流精製ステップを合理化する目的で、特に支持できないDEAE Sepharose列(train)の排除を評価した。結果として、3つのカラム列(表16に記載)により、この大規模生産における障害が克服される。
【0146】
主に総タンパク質(プロテアーゼが含まれる)およびpH指示薬(フェノールレッド)を除去するために、バッチプロセスにおけるDEAE Sepharoseクロマトグラフィステップ(表15に記載の)を使用した。302培地組成からのフェノールレッドの除去により、新規のプロセスにおける後者の問題に取り組む。DEAE Sepharoseステップによる総タンパク質の除去により、pH5.5でより高いBlue Sepharose能力が得られた。新しいプロセスでは、Blue Sepharose条件はバランスのとれた高rhASB能力を有する一方でプロテアーゼ活性が限定されることが必要である。能力およびタンパク質分解は共に低pHで増大する。さらに、バッチプロセスにおいてプロテアーゼ(カテプシン)のクリアランスに問題がある場合、プロテアーゼのクリアランスは、その後のCopperクロマトグラフィステップの堅牢性の改良を証明することができるべきである。0.8mg rhASB/ml樹脂のロードが許容可能な、低pHでローディングが実施される条件が見出される一方で、洗浄および溶離条件はより高いpH(プロテアーゼ(カテプシン)を有効に除去する条件)である所望の結果が得られる条件が見出された。プロテアーゼ活性(例えば、カテプシン)の除去は、図8のクロマトグラムにおいて証明される。
【0147】
新しいプロセス(DEAE FTクロマトグラフィを使用しない)または古いバッチ精製プロセス(PS溶離物)(OP)のいずれかを使用した灌流運転から精製されたrhASB(102PD0055)の比較は、銀染色および抗ASB抗体によって検出可能なさらなるバンドによって証明されるように、(バッチ法を使用して)同一のリアクター運転から精製された古いプロセスの材料(レーンPS溶離物(OP))は有用なより高いタンパク質分解性を有することを示す(図9参照のこと)。新しいプロセスは、バッチ標準と比較してさらにより純度が高い。Blueクロマトグラフィによってカテプシンプロテアーゼを除去する。新規のプロセスを使用したBlue Strip画分中で抗カテプシン交差反応性材料が認められる。
【0148】
以下の実施例11に記載の薬物動態学の結果は、より純度の高いrhASB調製物により以前のバッチ標準よりも半減期が長いことを示す。
〔実施例10〕
【0149】
[粒子形成における界面活性剤の効果]
新規の灌流細胞培養プロセスを使用して作製したrhASBバイアルにおける粒子作製に対するポリソルベート80の効果を決定するために、実験プロトコールを行った。目視アッセイおよび粒子計数アッセイを使用して、粒子作製範囲を決定した。さらに、未処理コントロールと比較したポリソルベート80の存在下および/または震盪における生産物の質を確認するために、活性試験、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、免疫ブロッティング、およびサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を行った。rhASBバッチプロセスのために使用したバイアルおよびストッパー(古い、Wheaton 5ml、2905-B24B/West S-127(4401/45))も、灌流由来の材料のための使用が推奨されているバイアルおよびストッパー(新しい、Wheaton 5ml、2905-B8BA/West S-127(4432/50))と比較した。
【0150】
10mlの使い捨てピペットを使用してrhASBを0.2μmフィルターに通過させた後にバイアルに充填した。各rhASB汚染試験のために、2つのバイアルに充填した。両方を目視アッセイに使用し、これは一方を粒子計数に供し、他方を残りのアッセイのために保存した。1つの緩衝液コントロールバイアル/試験のみに充填した。準備、サンプル操作、濾過、または充填によって、粒子はほとんど移入しなかった。目視分析および粒子計数分析から(以下の表25A〜Cおよび26A〜Cに示した結果)、0、1、および14日目に、緩衝液のみのコントロールと比較して配合薬の非震盪バイアルにおいて有意な粒子の形成は検出されなかった。
【0151】
4℃で18時間の震盪後、ポリソルベートを含まない組成から成る緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム(pH5.8))のみにおいてrhASBと共に両バイアル形状で粒子の高い増加が認められた。細かいフレークが明らかに認められた。
【0152】
HIAC/ROYCO Model 9703 Particle Counterを使用して、粒子を計数した。液体粒子カウンターは、2.0μm〜150μmの範囲の粒子のサイズを測定し、計数することができる。それぞれ5mL未満の3つのアリコートを、光不明瞭化センサー(light obscuration sensor)に入れる。運転2および3由来の平均粒子数をmLあたりの粒子数として報告する。粒子サイズ10μmのHIAC-Royko定量に基づいて、古いおよび新しいバイアル形状それぞれにおけるmLあたりの粒子数が2069および1190の粒子を計数した。0.001%ポリソルベート80の存在下で、mlあたりの粒子数は21および49と顕著に減少した。0.005%ポリソルベート80では、震盪および非震盪バイアルの両方で本質的に有意な相違を検出することができなかった。
【0153】
ポリソルベート80を使用しない古いバイアル/シールでは、mlあたりの粒子数が震盪1〜14日後に2069個から268個に予想外に減少した。ウイルスアッセイにより、より少数が認められた同一の14日目のバイアルでより巨大なフレークが認められ、より巨大な粒子がHIAC−Roykoアッセイを妨害するか、古いバイアル形状がより巨大であるが少数の粒子への最終的な合体および凝集を伴う粒子形成の増大に寄与する可能性がある。
【0154】
震盪後のタンパク質の完全性を確認するためにさらなる試験を行った。比活性は変わらなかった。サイズ排除クロマトグラフィ(機械的振動に影響をうけ得るタンパク質凝集の変化を検出することができる方法)では、より巨大な分子量種の増加は認められなかった。破壊生産物を検出するために、rhASBのSDS−PAGEゲルを銀染色するか、ニトロセルロースに移して抗rhASB抗体でブロッティングした。いかなるサンプルにおいてもさらなるバンドは検出されなかった。
【0155】
【表27】

【0156】
【表28】

【0157】
【表29】

【0158】
【表30】

【0159】
【表31】

【0160】
【表32】

【0161】
結果は、手作業の充填手順により配合に無関係の粒子はほとんどないことを示した。180rpmで一定且つ激しい震盪後、ポリソルベート80を使用しないで配合したrhASBを含むバイアル粒子は明確に認められた。
【0162】
ポリソルベート80の存在は、機械的に誘導された粒子形態の阻害に非常に有効であった。0.001%および0.005%のポリソルベート80では、震盪バイアルにおける粒子数は本質的にバックグラウンドレベルに維持されながら、保護は著しかった。0.005%のポリソルベート80濃度により、0.001%のポリソルベート80濃度よりも粒子数の減少においてわずかな改善が認められた。
【0163】
活性、タンパク質濃度、純度、または凝集率によって評価したところ、震盪または処方では決して生産物は不安定にならなかった。
〔実施例11〕
【0164】
[ヒトの臨床試験]
本明細書中に記載のバッチプロセスにしたがって生産された製剤を使用して、VI型ムコ多糖体症(MPS VI)(マロトー−ラミー症候群)患者組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)の第1/2相の無作為な二重盲検臨床試験を行った。9mMリン酸二水素ナトリウム・1H2O、1mM第二リン酸ナトリウム・7H2O、150mM塩化ナトリウムでrhASBを1mg/mLの濃度(pH5.8)に配合した。患者に投与する場合、室温で通常の生理食塩水を含む静脈内(IV)バッグ中での適量の薬物溶液の希釈によってrhASBを調製した。注入関連反応の可能性を減少させるために、注入前に全患者に抗ヒスタミンを前投薬した。
【0165】
本研究の目的は、MPS VI患者のERTとして2つの用量のrhASBの安全性、有効性、および薬物動態学プロフィールを評価することであった。患者に二重盲検様式で2つの投与群(0.2および1.0mg/kg)の1つに無作為に選択した。4時間のIV注入として、1週間に1回薬物を投与した。安全性の基準は、完全な化学パネル、尿検査、完全血球算定(CBC)の相違、およびAE追跡を含んでいた。全患者について免疫応答および注入関連反応、補体活性化、ならびに抗体形成を評価する。有効性パラメーターは、運動耐容能/耐久力(6分間歩行試験)、呼吸器の能力(肺機能試験)、関節運動範囲(JROM)、機能的状態(Childhood Health Assessment Questionaire(CHAQ))、尿中GAGレベル、肝腫脹の変化、視力、心機能、および睡眠時無呼吸を含んでいた。
【0166】
注入時および注入後の抗原(酵素)レベルを測定するために、1、2、12、24週間の注入後、およびその後定期的に薬物動態学的評価を行った。患者が、84週間後から開始する0.005%ポリソルベート80を使用して配合した新規の灌流プロセス精製rhASBに切り替えた場合、83、84、および96週間後の非盲検期間において薬物動態学的評価を行った。
【0167】
7人全ての患者を登録し、急速に進行するか中程度に進行する疾患と一致する特徴範囲を有する患者を含んでいた。個人的理由により1人の患者は3週目で研究を停止し、交換した。残りの6人の患者について、24週間の処置完了後に事前に指定していた中間分析を行った。24週目の中間分析由来のデータは、rhASBが十分に許容され、1.0mg/kgの用量でより高い臨床上の利点が得られ、且つ0.2mg/kgの用量に匹敵する安全プロフィールを有することを示した。
【0168】
低用量群の患者に、1.0mg/kgの用量レベルの処置を継続した。48週間後に間隔をおいて(59週および69週)2人の患者により高い用量レベルの処置を開始した。96週まで患者に計画した大多数のrhASB注入を行った。この期間中に全部で2回を超えて注入しそこなった患者は存在しなかった。
【0169】
最初に処置から24週後、その後48週後に実施した安全性評価は、0.2または1.0mg/kgのrhASBでの毎週の処置は十分に許容され、2つの用量群で有意差はなないことを示した。より長期(96週)の毎週1.0mg/kgでの処置も十分に許容された。
【0170】
[抗rhASB抗体の生産および補体レベル]
6人の全患者は30週目にrhASBに対する抗体を生産した。6人の患者のうち4人は比較的低いレベルのままであり、60週までにピークレベルから減少した。他の4人の患者よりも高レベルで抗体を生生した2人の患者のうちの一方の患者の抗体レベルは24週でピークレベルから減少、他方の患者のレベルは60週でピークレベルから急速に低下した。96週の処置においてCH50、C3、またはC4補体レベルの一貫した変化は認められなかった。患者によってはCH50レベルは断続的に適度に減少したが、補体消費またはこれらの低レベルと注入関連症状との間の相関の証拠は認められなかった。図10は、96週間にわたる処置における抗体レベルを示す。
【0171】
[尿中グリコサミノグリカン]
尿中GAGレベルは、MPS罹患個体におけるリソソームの蓄積度の生化学的マーカーである。24週までに、低用量群で55%であるのに対し高用量群で平均70%の尿中GAGが減少した。DS(MPS VIの主な蓄積産物)の比率は、同様にそれぞれ44%および18%減少した。処置に対する週の関数としてのGAGの尿中排出量の変化の経時変化の試験により、高用量群で6週までに総尿中GAGがより明白に減少した。これらのデータは、より高い用量の方が尿中GAGおよびDSの両方の変化が大きいことを確認する。本研究で残った両方の処置群の患者において96週まで尿中GAGは減少し続けた。図11は、96週間にわたる総尿中GAGレベルの減少を示し、図12は、96週の年相応の正常レベルとの比較を示す。本研究で残った0.2mg/kgの用量群の2人の患者(患者41および45)を、69週および59週それぞれでの1.0mg/kgの用量に供することに留意のこと。96週で、スクリーニングにより、これら2人の患者のGAGは85%および63%減少した。これらは、96週にわたり1.0mg/kgの投与した患者で見出された減少と類似していた。患者42、43、および44は、スクリーニングによりそれぞれ64%、77%、および86%減少した。両群では、より高いベースラインGAGレベルの患者は、正常範囲付近のGAGレベルの患者より減少率が高かった(正常範囲の上限の5倍超(すなわち、平均+2SD))。
【0172】
[耐久力]
耐久力の主な臨床基準を6分間歩行試験とした。1.0mg/kgの研究薬物を投与するために無作為に選択したベースラインで100mを超えて歩行できない2人の患者(番号43および番号44)は、24週までに全歩行距離が非常に改善された。C1〜C2頚椎圧迫を発症した番号44を除く全患者は、48週および96週までに歩行距離が改善された。図13は、96週にわたる処置による6分間歩行試験の結果の改善を示す。
【0173】
[有効性のさらなる基準]
96週の研究薬物処置の間に多数の他の有効性パラメーターの適度な改善が認められた。肩のROM(特に屈曲)は、24週の評価で6人の患者のうち5人で改善された。96週で評価した4人の患者のうちの3人(番号41、43、および45)は、肩の屈曲が増加し続けた。96週で4人の患者のうちの3人で、気道機能、強制肺活量(FVC)、および1秒間努力呼気容量(FEV1)の測定においてわずかな改善も認められた。登録した6人の患者のうち4人で測定可能な視力はこれらの4人の患者の3人において1つまたは複数のラインによって改善されたが、1人の患者はこの期間中に処方レンズを変更した。特にベースラインでより大きな肝臓を有する患者において、CTスキャンによって測定された肝腫脹(この疾患の顕著な特徴ではない)も適度に減少した。
【0174】
残りの有効性パラメーター(ECGによる心機能、握力およびピンチ力、CHAQ質問表、身長および体重、骨ミネラル密度、ならびに睡眠検査が含まれる)でわずかな変化が認められた。96週間にわたりこれらのいかなるパラメーターにおいても有意な悪化は認められなかった。
【0175】
[薬物動態学]
1、2、12、および24週の二重盲検ならびに83、84、および96週の非盲検延長の間に薬物動態学的評価を行った。84週から開始し、患者に実施例9に記載の灌流プロセスによって製造されたrhASBを投与し始めた。
【0176】
0、15、30、60、90、および180分の注入時、240分の注入終了時、ならびに注入から5、10、15、30、45、60、90、120、および240分後に血液サンプルを採取した。非コンパートメント法(non-compartmental method)rhASBの薬物動態学パラメーターを計算した。無限性および最初の瞬間に対する血漿濃度曲線下領域を、定量限度を超える濃度を含む最後の測定点に対して線形台形法を使用して計算した。
【0177】
0.2mg/kg/週投与した患者について、AUC0-1の平均値は、1週から24週で比較的一貫していた(1週で10,009±5,107、2週で11,232±3,914、12週で13,812±9,230、および24週で13,812±9,230)。1.0mg/kg/週のコホートについて、AUCの平均値は、1週で94,476±13,785、2週で180,909±46,377、12週で157,890±45,386、および24週で251,907±201,747であった。この1.0mg/kg/週群について、AUC0-1およびAUC∞の値の増加ならびに大きな標準偏差は、群内の他の2人の患者よりもAUCが約2倍の1人の患者に起因した。
【0178】
0.2mg/kg/週コホートと1.0mg/kg/週コホートとの間のAUC0-1の平均値は、5倍を超える非常に過剰な用量で増加し、rhASBの薬物動態学はこの投与範囲で線形ではないことを示す。
【0179】
以下の表27に83、84、および96週の薬物動態学パラメーターを示す。
【0180】
【表33】

【0181】
83週のパラメーターは、2〜24週から得たものに類似し(1人の高AUC患者を除く)、約18ヶ月の毎週の曝露後のrhASBの薬物動態学の一貫性を示す。83週から84週までの平均AUC値は約25%上昇する傾向がある一方で、総体内クリアランスは約25%低下する傾向があった。83週から84週までの半減期は約8.5分間から17〜19分間に増加した。96週のパラメーターは、84週のそれに類似していた。この薬物動態学データは少数の患者に由来するが、各値は実質的に重複しており、これらの結果は、実施例9に記載の修正プロセスから得たASB調製物の半減期は元のrhASB調製物より長いことを示した。
〔実施例12〕
【0182】
[さらなるヒトの臨床研究]
実施例9に記載の新しい灌流プロセスにしたがって生産された製剤を使用して、VI型ムコ多糖体症(MPS VI)(マロトー−ラミー症候群)患者における組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)の第2相非盲検臨床試験を行った。9mMリン酸二水素ナトリウム・1H2O、1mM第二リン酸ナトリウム・7H2O、150mM塩化ナトリウム、0.005%ポリソルベート80でrhASBを1mg/mLの濃度(pH5.8)に配合した。
【0183】
本研究の目的は、1.0mg/kgのrhASBの毎週のIV注入の安全性、有効性、および薬物動態学を評価することであった。本研究のために、比較的均一な耐久力障害患者組が含まれるように対象基準を修正した。患者は少なくとも1m歩行することができなければならないが、ベースラインでの12分間歩行試験の最初の6分間で250mしか歩行できなかった。他の対象基準および除外基準は、患者は少なくとも5歳であり、生化学的または遺伝的診断が報告されているという点で、第1/2相臨床研究の基準と類似していた。歩行試験に加えて、本研究ではMPS患者で前に研究されていない多数の測定点を含んでいた。
【0184】
安全性の基準は、臨床検査評価、尿検査、CBCの相違、ECG、およびAEの追跡を含んでいた。全患者について注入関連反応ならびに補体消費および抗体断片化を評価する。有効性パラメーターは、耐久性および可動性の測定(12分間歩行試験が含まれる)、長期間立ち上がり前進試験(Expanded Timed Get Up and Go Test)、3分間の階段上り試験、および身体活動を含んでいた。主観的効果(関節の痛みおよび関節の硬さなど)を問診票で評価し、デンバー式発達スケール(Denver Developmental scale)における他の測定(靴紐を結ぶ時間、頭頂に触れる時間、セーターを着る時間、コインを拾い上げてこれらをカップに入れる時間など)も評価した。さらなる有効性の基準は、視力の測定、骨密度の研究、握力およびピンチ力の評価、肩のROM、機能の状態、尿中GAG排出、目視試験、心機能、ならびに睡眠中の酸素飽和度を含んでいた。注入時および注入後の抗原(酵素)レベルを測定するために、1、2、12、24週間の注入後に薬物動態学的評価を行った。10人の患者を登録した(米国人5人およびオーストラリア人5人)。全ての患者に24週の処置を完了させた。死亡者や中断者は存在しなかった。全患者は全24回の研究薬物注入を受けたので、全患者を安全性および有効性分析に含めた。
【0185】
第1/2相研究として、第2相研究で登録されたMPS VI患者間で疾患の重症度が広範に異っていた。数人の患者は、疾患の神経学的特徴(交通性水頭症、頚椎の不安定、および椎間板疾患が含まれる)も有していた。
【0186】
[臨床検査評価]
24週間にわたりこれらの患者で臨床的に有意な検査所見の異常は認められなかった。
【0187】
[抗rhASB抗体および補体研究]
24週までに10人の患者のうち8人がrhASBに対する抗体を産生した。他の患者より高いレベルで抗体を産生した3人の患者のうち、2人の患者の抗体レベルが24週後に上昇し続けたが、48週までに安定化するようであった。これら2人の患者は、「ヌル」遺伝子型であるかASBの推定主要抗原部位が変異していた。他の患者と比較して、これら2人の患者の尿中GAGの減少は低かった。図14は、48週にわたる処置における抗体レベルを示す。
【0188】
24週で、1人の患者12週注入前後のC4値およびCH50値が減少し、これは研究者によって臨床的に有意であると見なされた。C4およびCH50は、注入前にわずかに正常値の下限未満であり、注入後にさらに減少した。これらの結果により、補体消費の可能性が示唆されるが、このような消費と一致する臨床的徴候および臨床症状は認められなかった。本研究におけるいかなる他の患者においても臨床的に有意な補体レベルの異常は認められなかった。
【0189】
[尿中グリコサミノグリカン]
尿中GAGレベルの平均減少は急速であり、6週で最下点に達し、6週から24週まで比較的一定なままであった。24週までに尿中GAGは平均71%減少し、48週までに尿中GAGは平均76%減少した。10人全ての患者は、処置24週後に正常範囲に近づく尿中GAGレベルに減少した。これらのデータは、1/2相研究における7人の患者で認められた結果と一致する。図15は、48週間にわたる総尿中GAGレベルの減少を示し、図16は、48週でのレベルと年相応の正常レベルとの比較を示す。
【0190】
[耐久性の基準]
ベースラインおよびその後6週間毎の全ての患者についての12分間歩行試験において歩行距離を評価した。各評価で2つの異なる基準の平均として距離を記録し、6分間および12分間の両方で決定した。
【0191】
ベースラインでは、6分間および12分間の平均歩行距離は、それぞれ152.4(±75.0)および264.0(±161.7)であった。24週での6分間の平均歩行距離は57.3(±59.0)メートル改善される一方で(患者あたり62%)、12分間の平均歩行距離は平均155メートル改善された(患者あたり98%)。全ての患者で12分間の歩行距離が改善され、1人を除く全ての患者で歩行の最初の6分間で改善された。48週で、12分間の歩行距離における平均改善は212メートルであった(患者あたり138%)。図17は、48週にわたる12分間の歩行距離の結果の改善を示す。
【0192】
3分間の階段上りは、耐久力の第2の試験基準であった。ベースラインで、患者は平均50.3(±29.5)段上ることができた。24週までの平均階段上り数は、98.1(±6.25)段に増加し、48段改善し、患者あたり110%(±116%)であった。48週までの平均階段上り数は合計で111段で61段増加し、患者あたり147%の改善であった。図18は、48週間にわたる3分間の階段上り結果の改善を示す。患者は、階段上り数に関して非常にばらつきがあり、ベースラインでのパフォーマンスは24週での改善度と必ずしも相関しなかった。
【0193】
[さらなる有効性基準]
本研究の最初の24週で多数のさらなる有効性パラメーターを評価した。全体的な機能的能力の基準として長期間立ち上がり前進試験を使用した。全体的に、ベースラインと24週との間のこの試験に必要な全時間の有意な減少は認められなかったが、48週で適度に改善した。図19は、48週間にわたる処置における長期間立ち上がり前進試験の結果を示す。
【0194】
肺機能を評価するために、努力呼気時間(FET)、FVC、およびFEV1を行った。以下の表28は、ベースライン、24週、および48週での肺機能値を示し、48週では身長および肝臓肥大症の改善も示す。24週間にわたりこれらのパラメーターの有意な変化は認められなかった。48週では、10人中5人の患者のFVCおよびFEV1が改善し、この5人のうちの3人は成長における変化が2%未満にもかかわらず改善を示した。48週では、努力呼気時間(1秒超)も平均43%改善した。
【0195】
【表34】

【0196】
【表35】

【0197】
能動的および受動的な肩のROM(屈曲、伸展、回転)を評価した。群全体で、能動的および受動的ROMの両方で増加率が適度に増加したが、患者によっては24週での測定で減少した。48週で、いくつかの外れ値に起因する結果の大きなばらつきが認められるが、特にベースラインでの90°の屈曲未満の患者で認められる肩ROMが改善し続けた。上の表29は、ベースライン、24週、および48週における肩の運動範囲を示す。
【0198】
問診票を使用して痛みおよび硬さを評価した。2人の患者は痛みのスコアが変化しなかったが、7人の患者は24週で痛みの改善が認められた(1人の患者はベースライン評価を行っていなかった)。評価した9人全ての患者において24時間で硬さが改善された。問診票を使用して評価した痛みおよび硬さは、48週まで改善し続けた。48週間にわたる関節の痛みの問診票および関節の硬さの問診票の結果を、それぞれ図20および21に示す。
【0199】
患者群全体で有意な握力の改善が認められた。7人の患者は、片手または両手の握力が改善した。24週にわたるピンチ試験では、変化はほとんど認められなかった。48週を除いて他の生活の質の評価で有意な変化はほとんど認められず、器用さおよび感覚(コインの拾い上げによって測定)は適度に改善した。
【0200】
ベルトを取りつけたActiTrac(登録商標)デバイスを使用して活動レベルを評価した。活動レベルの有意な変化は認められなかった。
【0201】
心機能評価(ECG)または身長および仰臥位の長さに有意な変化は認められなかった。患者の小集団で行った睡眠検査で臨床的に有意な変化は認められなかった。
【0202】
本発明を現在好ましい実施形態を参照して記載しているが、本発明の精神を逸脱することなく種々の修正形態を実施することができると理解すべきである。したがって、本発明は、特許請求の範囲のみによって制限される。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明のヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の生産方法の流れ図である。
【図2】バッチプロセス法によるヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の精製方法の流れ図である(表14)。
【図3】灌流プロセス法によるヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(ASB)の精製方法の流れ図である(表14および15)。
【図4】Blue Sepharoseカラム(図4A)、Copper Chelating Sepharoseカラム(図4B)、およびPhenyl Sepharoseカラム(図4C)のクロマトグラムの結果を示す図である。
【図5】灌流プロセス精製方法の銀染色SDS−PAGEの結果を示す4〜20%ポリアクリルアミド勾配ゲルを示す図である(表14および15)。
【図6】以下のサンプルの4〜20%ポリアクリルアミド勾配SDSゲルの結果を示す図である。レーン1、NEBブロードレンジ予備染色分子量スタンダード(分子量をkDaで示す);レーン2、5μgのロットAS60001由来のASB(オールドバッチプロセス);レーン3、5μgのロットAP60109 UF4由来のASB(灌流プロセス);レーン4、5μgのロットAP60109 UF10由来のASB(灌流プロセス);レーン5、5μgのロットAP60109 UF15由来のASB(灌流プロセス);レーン6、5μgのロットAP60109 AUF18由来のASB(灌流プロセス);レーン7、5μgのロットAP60109 AUF22由来のASB(灌流プロセス);レーン8、5μgのロットAP60109 AUF25由来のASB(灌流プロセス);およびレーン9、5μgのロットAP60109 AUF27由来のASB(灌流プロセス)。ゲルを、クーマシーR−250で染色するか、銀染色する。
【図7】図7Aは、銀染色4〜20%ポリアクリルアミド勾配SDSゲルの結果を示す図である。図7Bは、クーマシー染色4〜20%ポリアクリルアミド勾配SDSゲルの結果を示す図である。レーン1、ロットAP60202 UF4;レーン2、ロットAP60202 UF10;レーン3、ロットAP60202 UF18;レーン4、ロットAP60202(BMK);レーン5、ロット102PD0139x B3;レーン6、ロット102PD0139x B5;レーン7、灌流参照標準rhASB-202-002;レーン8,、ロット102PD0139 P1;レーン9、ロット102PD0139 P2;およびレーン10、Mark 12標準(分子量をkDaで示す)。
【図8】Blue Sepharoseカラム(図8A)、Copper Chelating Sepharoseカラム(図8B)、およびPhenyl Sepharoseカラム(図8C)から得たプロフィールを示す図である。図8Bでは、赤色の線でカテプシン活性を示す。
【図9】図9Aは、銀染色4〜20%ポリアクリルアミド勾配SDSゲルの結果を示す図である。図9Bは、ニトロセルロースに移し、抗rhASB抗体で探索した図9Aのゲルから移したタンパク質の結果を示す。図9Cは、ニトロセルロースに移し、抗カテプシン抗体で探索した図9Aのゲルから移したタンパク質の結果を示す。BioLabPreStainは分子量標準を示す(分子量をkDaで示す)。
【図10】ヒトの第1相/第2相臨床試験における96週間にわたるrhASBでの処置による血清抗ASB抗体レベルを示す図である。
【図11】ヒトの第1相/第2相臨床試験における96週間にわたるrhASBでの処置による総尿GAGレベルの減少を示す図である。
【図12】rhASBで処置したヒトにおける96週目の尿中GACレベルと年相応の正常レベルとの比較を示す図である。
【図13】ヒトの第1相/第2相臨床試験における96週間にわたるrhASBでの処置による6分間の歩行試験の結果の改善を示す図である。
【図14】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる処置による血清抗ASB抗体レベルを示す図である。
【図15】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる処置による総尿中GAGレベルの減少を示す図である。
【図16】rhASBで処置したヒトにおける48週目のレベルと年相応の正常レベルとの比較を示す図である。
【図17】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる12分間の歩行試験の結果の改善を示す図である。
【図18】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる3分間の階段上り試験の結果の改善を示す図である。
【図19】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる処置による長期間立ち上がり前進試験(Expanded Timed Get Up and Go Test)の結果を示す図である。
【図20】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる処置による関節の痛みの質問結果を示す図である。
【図21】ヒトの第2相臨床試験における48週間にわたる処置による関節の堅さの質問結果を示す図である。
【配列表】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む組成物であって、前記前駆体ヒN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度が、総タンパク質に基づいて少なくとも99%またはそれ以上であり、前記純度が逆相HPLC(RP−HPLC)法を使用して測定されたものである、組成物。
【請求項2】
前記前駆体ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度が、総タンパク質に基づいて少なくとも99.2%またはそれ以上であり、前記純度が逆相HPLC法を使用して測定されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記前駆体ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼが、グリコシル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記純度が99.8%またはそれ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記純度が99.9%またはそれ以上である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記前駆体ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼが、組換え前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度が、総タンパク質に基づいて少なくとも99%またはそれ以上であり、前記純度がサイズ排除クロマトグラフィ−HPLC(SEC−HPLC)法を使用して測定されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記SEC−HPLCによる純度が、99.5%またはそれ以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記RP−HPLCによる純度が99%またはそれ以上であり、前記SEC−HPLCによる純度が99.5%またはそれ以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物と薬学的に許容可能なキャリアとを含む薬学的組成物。
【請求項11】
塩化ナトリウム溶液と非イオン性界面活性剤とをさらに含む、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼが、約1〜5mg/mLまたは約50〜約250単位/mLの濃度で存在する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
緩衝液が約10〜50mMの濃度のリン酸ナトリウム緩衝液である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記溶液のpHが約5.8に維持されている、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
ポリオキシエチレンソルビタンをさらに含む、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記ポリオキシエチレンソルビタンが、ポリオキシエチレンソルビタン20または80であり、前記ポリオキシエチレンソルビタン20または80の濃度が、約0.005%(重量/体積)である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの欠損に全部または一部起因する疾患の治療方法であって、治療を必要とする被験体に有効量の請求項1〜16のいずれかに記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
前記疾患がムコ多糖体症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患がMPS VIである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患がマロトー−ラミー症候群である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
患者のN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ活性が、通常の約10%またはそれ以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも約50単位/kgまたは少なくとも約1mg/kgの前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを前記患者に毎週投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも約100単位または2.0mg/kgの前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを前記患者に毎週投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
組換え前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ酵素の生産方法であって、
(a)ヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ酵素の全てまたはその生物活性フラグメントもしくは変異体をコードするDNAでトランスフェクトした細胞を成長させるステップと、
(b)前記トランスフェクトした細胞をバイオリアクターに導入するステップと、
(c)前記バイオリアクターに成長培地を供給するステップと、
(d)前記酵素を含む培地を回収するステップと、
(e)前記回収培地から前記トランスフェクトした細胞を実質的に除去するステップと
を含む方法。
【請求項25】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記トランスフェクトした細胞を、L−グルタミン、グルコース、ヒポキサンチン/チミジン、セリン、アスパラギンおよび葉酸からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を補足したJRH Excell 302培地を含む成長培地で成長させる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記成長培地がG418を含まない、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記トランスフェクトした細胞を、最大約45日間バイオリアクター中で成長させる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記トランスフェクトした細胞を、最大約90日間バイオリアクターで成長させる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記トランスフェクトした細胞が、連続的なメンブレンによって前記酵素を含む培地から実質的に分離される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記連続メンブレンが、公称4.0〜0.75μm、0.45μmおよび0.2μmである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
組換えN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ酵素またはその生物活性フラグメント、アナログもしくは変異体を産生可能なDNAでトランスフェクトされた細胞系統であって、前記酵素が前記細胞系統によって分泌される、または前記細胞系統中に残存する、細胞系統。
【請求項34】
前記トランスフェクトした細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項33に記載の細胞系統。
【請求項35】
前記チャイニーズハムスター卵巣細胞がCHO−K1細胞である、請求項34に記載の細胞系統。
【請求項36】
前記トランスフェクトした細胞がCSL4S−342細胞である、請求項35に記載の細胞系統。
【請求項37】
前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの精製方法であって、
(a)前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む流動物を得るステップと、
(b)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを切断することができる前記流動物中のプロテアーゼのタンパク質分解活性を減少させるステップであって、前記減少が前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼに悪影響を与えない、ステップと、
(c)前記流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、
(d)前記流動物を銅キレート化クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、
(e)前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、
(f)前記前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを回収するステップと
を含む、方法。
【請求項38】
前記得るステップが、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをコードする遺伝子で形質転換した細胞培養物を成長させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記遺伝子がヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼをコードする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記得るステップが、前記細胞培養物から流動物を回収するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記得るステップが、前記流動物を約20倍に濃縮するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記減少ステップが、流動物のpHを8.0またはそれ以下に調整するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記減少ステップが、流動物のpHを約4.8〜5.5に調整するステップを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記減少ステップが、流動物のpHを約4.8〜5.2に調整するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(c)が、前記流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィカラムに通過させるステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記Cibracon blue dye相互作用クロマトグラフィカラムが、Blue Sepharose 6 Fast Flowカラムである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(d)が、前記流動物を銅キレート化クロマトグラフィカラムに通過させるステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記銅キレート化クロマトグラフィカラムが、Chelating Sepharose Fast Flowカラムである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(e)が、前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィカラムに通過させるステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
前記フェニル疎水性相互作用クロマトグラフィカラムが、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow High Subカラムである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(c)、(d)および(e)の時間的な順序が、ステップ(c)、ステップ(d)、およびステップ(e)である、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
前記回収ステップが前記流動物のダイアフィルトレーションを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項55】
前記回収ステップが、DNAを除去するための前記流動物の濾過を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項56】
前記回収ステップが、ウイルスを除去するための前記流動物の濾過を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項57】
前記濾過が、前記流動物を0.2μmフィルターに通過させるステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
回収された前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼの純度が、少なくとも99%またはそれ以上である、請求項36に記載の方法。
【請求項59】
前記純度が逆相HPLC法によりを使用して測定されたものである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記流動物がDEAE Sepharose樹脂と接触しない、請求項36に記載の方法。
【請求項61】
請求項36に記載の方法を使用して精製された、純度が少なくとも99%またはそれ以上の前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼを含む組成物。
【請求項62】
N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体の精製方法であって、
(a)前記N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体を含む流動物を得るステップと、
(b)前記N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体を切断することができる前記流動物中の任意のプロテアーゼのタンパク質分解活性を減少させるステップであって、前記減少が前記N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体に悪影響を与えない、ステップと、
(c)前記流動物をCibracon blue dye相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、
(d)前記流動物を銅キレート化クロマトグラフィ樹脂と接触させるステップと、
(e)前記流動物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィ樹脂と接触指せるステップと、
(f)前記N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼまたはその生物活性フラグメント、アナログ、もしくは変異体を回収するステップと
を含み、ステップ(c)、(d)および(e)が任意の時間的な順序で行うことができる、方法。
【請求項63】
前駆体N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼと、約0.002%〜約0.008%(重量/体積)の範囲の濃度のポリオキシエチレンソルビタンとを含む薬学的組成物。
【請求項64】
前記ポリオキシエチレンソルビタンが、0.005%の濃度(重量/体積)のポリオキシエチレンソルビタン80である、請求項63に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ活性の欠損に全部または一部起因する疾患の治療方法であって、治療を必要とするヒト被験体に有効量の組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項66】
前記rhASBの量が、関節可動性、関節の痛み、関節の堅さ、運動耐容能、運動耐久力、肺機能、視力、および日常生活動作からなる群から選択される1つまたは複数の有利な効果を得るのに有効である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
VI型ムコ多糖体症(MPS VI)の治療方法であって、治療を必要とするヒト被験体に有効量の組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項68】
前記rhASBの量が、関節可動性、関節の痛み、関節の堅さ、運動耐容能、運動耐久力、肺機能、視力、および日常生活動作からなる群から選択される1つまたは複数の有利な効果を得るのに有効である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
rhASBを少なくとも0.2mg/kg/週の用量で投与する、請求項65または67に記載の方法。
【請求項70】
rhASBを少なくとも1mg/kg/週の用量で投与する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
rhASBを週1回2〜4時間にわたる注入によって投与する、請求項65または67に記載の方法。
【請求項72】
rhASBを週1回4時間にわたる注入によって投与する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ASB活性の欠損症を罹患したヒトを治療するための薬物の調製における組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)の使用。
【請求項74】
VI型ムコ多糖体症を罹患したヒトを治療するための薬物の調製における組換えヒトN−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A−6D】
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【図6E−6F】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2006−510356(P2006−510356A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551853(P2004−551853)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035510
【国際公開番号】WO2004/043373
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(502170153)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】