説明

剥離剤

【課題】ポリマー性物質を基体から効率的に除去し、かつ銅、特に酸化銅の制御された除去を提供する除去剤、特にプラズマエッチング後ポリマー除去剤に対する継続的な必要性が存在する。
【解決手段】ポリマー性物質および酸化銅を、基体、例えば、電子デバイスから除去する上で有用な組成物およびプロセスが提供される。これらの組成物およびプロセスは、プラズマエッチングプロセスの後にポリマー性残滓を電子デバイスから除去するのに特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、基体からポリマー性物質の除去の分野に関する。特に、本発明は、エッチング後残滓を電子装置から除去するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーを含有する多くの物質が電子装置、例えば、フォトレジスト、ソルダーマスク、反射防止コーティング、および基層の製造において用いられる。例えば、ポジ型フォトレジストが基体上に堆積される。レジストはパターン化された化学線で露光される。露光された領域は好適な現像液による溶解に処される。そのようにしてレジストにおいてパターンが規定された後、例えばプラズマエッチングにより、それが基体に移される。このエッチング工程の間、プラズマエッチング残滓がエッチングされたフィーチャー(featur)の壁に沿って、およびレジストフィーチャーの壁に沿って形成され得る。このエッチング工程の後、次の操作もしくは処理工程に悪影響を及ぼし、またはそれを妨害することを回避するために、レジストおよびエッチング残滓は、典型的には基体から完全に除去される。さらにパターン化しようとする領域におけるレジストの部分的な残留でさえ望ましいものではない。その上、パターン化されたフィーチャー間の望ましくない残滓は、続く膜堆積処理、例えば金属化、に対する有害な作用を有し得、または装置性能の低下につながる望ましくない表面状態および荷電を生じる可能性がある。
【0003】
エッチング工程、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングもしくはイオンミリングの間、レジストはその除去を困難にする状態に付される。プラズマエッチング処理の間、プラズマガス中のフルオロカーボンが、エッチングされている様々なフィーチャーの側壁上に並びにレジストパターンそれ自体上に、除去困難なポリマー残滓を形成する。有機金属ポリマー残滓を含み得るこのポリマー残滓は、エッチングチャンバ内の高真空および高温条件のため、広範に架橋し、かつ、典型的には、金属を含有する。既知の清浄処理は、かかるポリマー残滓を満足できるようには除去しない。
【0004】
フッ化物系の除去剤がかかるプラズマエッチング後残滓の除去に従来用いられている。米国特許第6,896,826号(Wojtczakら)は、フッ化物源、有機アミン、窒素含有カルボン酸および水を含む組成物を開示する。この特許における窒素含有カルボン酸は銅表面に付着し、その組成物中の他の成分による銅表面の腐食を防ぐ保護層を形成する。
【特許文献1】米国特許第6,896,826号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば銅表面からの酸化銅の除去において、特定量の銅の除去が強制される集積回路製造プロセスが存在する。従来のフッ化物系除去剤は様々なポリマー残滓の除去においては有効であるが、かかる除去剤は、銅の過剰のエッチングを生じることのない銅の制御された除去においては有効ではなく、基体上の誘電層の過剰エッチングを生じることがあり、その製造プロセスに望ましいプロセスウィンドウを外れる温度で稼働することがあり、十分な処理時間を可能とするための十分に長い浴寿命および/もしくは費用効率が高いプロセスのためのスループットを有していないことがあり、または全てのタイプのプラズマエッチング後残滓の除去で有効ではないことがある。
【0006】
ポリマー性物質を基体から効率的に除去し、かつ銅、特に酸化銅の制御された除去を提供する除去剤、特にプラズマエッチング後ポリマー除去剤に対する継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリマー性物質を基体から除去するための組成物であって:(a)0.05〜5重量%のフッ化物源;(b)40〜95重量%の有機溶媒;(c)5〜50重量%の水;および(d)アルコールに可溶であり、かつ25℃で水100gあたり25g以上の水可溶性を有する窒素含有カルボン酸を含む組成物を提供する。一態様において、有機溶媒は多価アルコールとエーテルの混合液である。かかる組成物は、典型的には、3〜8のpHを有する。別の態様においては、pHは4〜7である。
【0008】
さらに、本発明は、ポリマー残滓を基体から除去する方法であって、ポリマー残滓を含む基体を上記組成物と、ポリマー残滓の除去に十分な期間接触させる工程を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書を通して用いられる場合、以下の略語は以下の意味を有する:nm=ナノメートル;g=グラム;g/L=1リットル当りのグラム;μm=ミクロン=マイクロメートル;ppm=百万分率;℃=摂氏度;%wt=重量パーセント;Å=オングストローム;cm=センチメートル;min=分;AF=フッ化アンモニウム;ABF=フッ化水素アンモニウム;TMAF=テトラメチルアンモニウムフルオリド;IZ=イミダゾール;TEOA=トリエタノールアミン;DPM=ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;PGP=プロピレングリコールn−プロピルエーテル;PGM=プロピレングリコールモノメチルエーテル;MPD=2−メチル−1,3−プロパンジオール;PDO=1,3−プロパンジオール;PG=プロピレングリコール;EG=エチレングリコール;DAP=1,3−ジアミノプロパン;およびDBU=1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン。
【0010】
「剥離」および「除去」という用語は本明細書を通して交換可能に用いられる。同様に、「剥離剤」および「除去剤」という用語は交換可能に用いられる。「アルキル」は直鎖、分岐鎖および環状アルキルを指す。「置換アルキル」という用語は、その水素の1以上が別の置換基、例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)アルコキシ、メルカプト、(C−C)アルキルチオ等で置換されているアルキル基を指す。「部分」という用語は化合物の一部を指す。
【0011】
全ての範囲は境界値を含み、そのような数値範囲が合計100%までに制限されることが明らかである場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0012】
本発明において有用な組成物は、(a)0.05〜5重量%のフッ化物源;(b)40〜95重量%の有機溶媒;(c)5〜50重量%の水;および(d)アルコールに可溶であり、かつ25℃で水100gあたり25g以上の水可溶性を有する窒素含有カルボン酸を含む。
【0013】
様々なフッ化物源を本発明において用いることができる。一態様において、フッ化物源は一般式Rを有し、式中、R、R、RおよびRは水素、(C−C10)アルキル、および置換(C−C10)アルキルから独立に選択される。他の好適なフッ化物源には、フッ化水素アンモニウム、アンモニウム−テトラアルキルアンモニウムビフルオリド、ホウフッ化アンモニウム、およびフルオロホウ酸が含まれる。フッ化物源の混合物、例えば、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムの混合物を用いることができることを当業者は理解する。一態様において、フッ化物源はフッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムフルオリド、アンモニウム−テトラアルキルアンモニウムビフルオリド、およびそれらの混合物から選択される。例示的なテトラアルキルアンモニウムフルオリドには、これらに限定されることはないが、テトラメチルアンモニウムフルオリドおよびテトラブチルアンモニウムフルオリドが含まれる。特定の態様においては、フッ化物源はフッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウムおよびそれらの混合物から選択される。
【0014】
フッ化物源は、典型的には、本発明の組成物中に、組成物の総重量を基準にして0.05〜5重量%、好ましくは、0.1〜5重量%、最も好ましくは、0.5〜3.5重量%の量で存在する。当業者は、より高レベルのフッ化物源、例えば、10重量%まで、もしくはそれを上回ってさえも、本組成物において用いることができることを理解する。フッ化物源は、一般には、商業的に入手可能であり、さらに精製することなく用いることができる。
【0015】
様々な有機溶媒を本発明の組成物において用いることができる。かかる有機溶媒は水混和性であり、加水分解に対して安定であり、および本発明の組成物を不安定化しない。例示的な有機溶媒には、これらに限定されることはないが:多価アルコールをはじめとするアルコール;エステル;グリコールエーテルをはじめとするエーテル;ケトン;アルデヒド;極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン(すなわち、スルホラン)、およびジメチルサルファジオキシド;アミノアルコール、例えば、アミノエチルアミノエタノール;N−(C−C10)アルキルピロリドン、例えば、N−メチルピロリドン;アミド、例えば、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;並びにアミンが含まれる。一態様において、本発明の組成物は極性非プロトン性溶媒を含まない。別の態様においては、本発明の組成物はアミド溶媒を含まない。
【0016】
有機溶媒の混合液を用いることができる。一態様において、有機溶媒はアルコールとエーテルの混合液である。より詳細には、有機溶媒は多価アルコールとエーテルの混合液である。
【0017】
本発明において有用な多価アルコールは、水と混和性であり、かつ組成物を不安定化しな任意のものであり得る。「多価アルコール」という用語は2以上のヒドロキシル基を有するアルコールを指す。好適な多価アルコールには、脂肪族多価アルコール、例えば、(C−C20)アルカンジオール、置換(C−C20)アルカンジオール、(C−C20)アルカントリオール、および置換(C−C20)アルカントリオールが含まれる。1より多くの多価アルコールを本発明において用いることができることを当業者は理解する。好適な脂肪族多価アルコールには、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、ジヒドロキシプロパン、例えば、1,3−プロパンジオールおよびプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、並びにグリセロールが含まれる。一態様において、多価アルコールは1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、およびペンタンジオールから選択される。多価アルコールは、一般には、例えばAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から、商業的に入手可能であり、さらに精製することなく用いることができる。
【0018】
本発明において有用なエーテルは水混和性であり、多価アルコールに相溶性、かつ組成物を不安定化しない任意のものであり得る。様々なエーテル溶媒を本組成物において用いることができる。好適なエーテル溶媒は少なくとも1つのエーテル結合を含み、1以上の他の基、例えば、ヒドロキシル、アミノ、アミド、ケト、およびハロを含むことができる。好適なエーテルには、これらに限定されることはないが、グリコールモノ(C−C)アルキルエーテルおよびグリコールジ(C−C)アルキルエーテル、例えば、(C−C20)アルカンジオール(C−C)アルキルエーテルおよび(C−C20)アルカンジオールジ(C−C)アルキルエーテルが含まれる。例示的なエーテルには、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが含まれる。一態様において、エーテルはジプロピレングリコールモノメチルエーテルもしくはジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。エーテルの混合液を本発明において用いることができることを当業者は理解する。好適なエーテル溶媒は、一般には、例えばAldrichから、商業的に入手可能であり、さらに精製することなく用いることができる。
【0019】
典型的には、有機溶媒は組成物の総重量を基準にして40〜95重量%の量で存在する。一態様において、有機溶媒は45〜85重量%、より典型的には、60〜85重量%の量で存在する。有機溶媒の混合液が用いられるとき、溶媒の重量比は広範囲にわたって変化し得る。例えば、溶媒混合物における多価アルコールとエーテルの重量比は、例えば、1:8〜8:1、より典型的には、1:4〜4:1に変化し得る。多価アルコールのエーテルに対する特に有用な重量比は2.5:1、2:1、1.5:1、1:1、1:1.5、および1:2である。
【0020】
任意の好適な種類の水、例えば、脱イオン水および蒸留水を本発明において用いることができ、脱イオン水が典型的に用いられる。水は、典型的には、組成物の総重量を基準にして5〜50重量%の量で存在するが、より多量および少量を用いることもできる。より典型的には、水は組成物の総重量を基準にして15〜50重量%、さらにより典型的には、15〜35重量%、さらにより典型的には、15〜30重量%の量で存在する。
【0021】
様々な窒素含有カルボン酸を本発明の組成物において用いることができる。かかる窒素含有カルボン酸はアルコールに可溶であり、かつ25℃で水100gあたり25g以上の水可溶性を有する。典型的には、窒素含有カルボン酸は25℃で水100gあたり、28g以上、より典型的には30g以上、さらにより典型的には35g以上の水可溶性を有する。窒素含有カルボン酸は、本発明の組成物(水および有機溶媒の混合液)にも水および有機溶媒の総重量を基準にして1重量%まで、もしくはそれを上回る量で可溶である。典型的には、窒素含有カルボン酸は、水および有機溶媒の総重量を基準にして2重量%まで、もしくはそれを上回る量、より典型的には、5重量%まで、もしくはそれを上回る量で可溶である。
【0022】
窒素含有カルボン酸は1、2もしくはそれ以上のカルボン酸基を含むことができる。かかる化合物は1以上の窒素を含むこともでき、かつ、任意に、1以上の他のヘテロ原子、例えば、これらに限定されるものではないが、イオウおよび酸素を含んでいてもよい。一態様において、窒素含有カルボン酸は複素環部分を有する。別の態様においては、その複素環部分は芳香族である。有用な複素環部分は、典型的には、環内に5〜8の構成要素を有し、及び1〜4個のヘテロ原子を含むことができる。そのようなヘテロ原子の各々は同じであっても異なっていてもよく、窒素、酸素、およびイオウから選択することができるが他のヘテロ原子が存在することもできる。窒素含有カルボン酸は複素環部分を含むことが好ましい。典型的には、複素環部分は窒素含有環、例えば、ピリジン、ピペリジン、ピロール、ピペラジン、およびモルホリンである。本発明の窒素含有カルボン酸は任意に置換されていてもよい。「置換されている」が意味するところは、窒素含有カルボン酸の1以上の水素が、1以上の置換基、例えば、これらに限定されるものではないが、ハロ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ケト、アミド、およびアミノによって置換されていることである。
【0023】
例示的な、本発明の組成物において有用な窒素含有カルボン酸には、これらに限定されることはないが、ピコリン酸、ピペコリン酸、ピペラジン−2−カルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、ニペコチン酸およびイソニペコチン酸が含まれる。
【0024】
窒素含有カルボン酸は本発明の組成物において広範囲の量で用いることができる。窒素含有カルボン酸は組成物の総重量を基準にして0.001重量%以上の量で存在する。より典型的には、窒素含有カルボン酸は0.01重量%以上、さらにより典型的には、0.05重量%以上、さらにより典型的には0.1重量%以上の量で用いられる。一般には、窒素含有カルボン酸は組成物中に、組成物の総重量を基準にして10重量%までの量で存在するが、より多量を用いることもできる。より典型的には、窒素含有カルボン酸は5重量%まで、さらにより典型的には、4重量%までの量で存在する。窒素含有カルボン酸の量の特に有用な範囲は0.01〜10重量%、特に、0.05〜5重量%である。
【0025】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の5%水溶液を基準にして3〜8の範囲のpHを有するが、より高いpHおよびより低いpHを用いることもできる。一態様において、pHは4〜8の範囲である。別の態様においては、pHは4〜7である。任意に、組成物のpHを、例えばpH調整剤の使用により、必要に応じて調整することができる。かかる任意のpH調整剤のいずれの選択も当業者の能力の範囲内にある。一態様において、pH調整剤はカルボン酸もしくはその塩、例えば、これに限定されるものではないが、炭酸アンモニウムである。別の態様においては、pH調整剤は緩衝剤である。
【0026】
任意の緩衝剤には好適なモル比の酸と塩基が含まれる。一態様においては、窒素含有カルボン酸が緩衝系における酸として機能し得る。別の態様においては、任意の緩衝系は窒素含有カルボン酸とは異なる酸を含む。緩衝系における酸は無機であっても有機であってもよい。例示的な緩衝系には、これらに限定されることはないが、リン酸緩衝剤および酢酸緩衝剤、例えば、アンモニア/酢酸(酢酸アンモニウム)が含まれる。様々な他の緩衝系を用いることができる。かかる緩衝系は、典型的には、それらが組成物を3〜8のpH範囲で緩衝するように選択される。一態様において、緩衝系の酸はポリカルボン酸、例えば、これらに限定されるものではないが、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、L−グルタミン酸、シス−アコニット酸、アガリン酸、トランス−アコニット酸、トリメリト酸、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(「HEPES」)、およびトリメシン酸である。「ポリカルボン酸」は2以上のカルボン酸基を有する任意のカルボン酸を指す。別の態様においては、緩衝系の塩基はアミン、例えば、これらに限定されるものではないが、アルキルジアミン、イミン、環状アミンおよびアルカノールアミンである。例示的なアミンには、これらに限定されることはないが、1,2−ジアミノプロパン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(「ビス−トリス」)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸、L−ヒスチジン、4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸、4−モルホリンプロパンスルホン酸、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、2−(2−アミノエトキシ)−エタノール、および2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールが含まれる。そのような緩衝系において、ポリカルボン酸と塩基のモル比は、典型的には、1:1〜1:15である。
【0027】
本発明の組成物は、任意に、1以上の添加剤を含むことができる。好適な任意の添加剤には、これらに限定されるものではないが、腐食防止剤、界面活性剤、キレート剤および還元剤が含まれる。
【0028】
任意の好適な腐食防止剤を本発明の組成物において用いることができる。かかる腐食防止剤の選択は、腐食からの保護が必要なもの、例えば、特定の金属もしくは誘電体に部分的に依存する。かかる腐食防止剤の選択は当業者の能力の範囲内にある。例示的な腐食防止剤には、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシベンゼン、例えば、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコールおよびtert−ブチルカテコール;ベンゾトリアゾール;イミダゾール;ベンズイミダゾール;ベンズイミダゾールカルボン酸;イミダゾール−2−カルボン酸;イミダゾール−4−カルボン酸;イミダゾール−2−カルボキサルデヒド;イミダゾール−4−カルボキサルデヒド;4−イミダゾールジチオカルボン酸;イミダゾ[1,2−a]ピリジン;ヒドロキシアニソール;没食子酸;没食子酸エステル、例えば、没食子酸メチルおよび没食子酸プロピル;並びにテトラ(C−C)アルキルアンモニウムシリケート、例えば、テトラメチルアンモニウムシリケートが含まれる。かかる腐食防止剤は、一般には、様々な供給源、例えば、Aldrichから商業的に入手可能であり、且つさらに精製することなしに用いることができる。かかる腐食防止剤が本発明の組成物において用いられるとき、それらは、典型的には、組成物の総重量を基準にして0.01〜10重量%の量で存在する。
【0029】
非イオン性、アニオン性およびカチオン性界面活性剤を本発明の組成物において用いることができる。非イオン性界面活性剤が好ましい。そのような界面活性剤は、一般には、様々な供給源から商業的に入手可能である。界面活性剤は、典型的には、組成物の総重量を基準にして0〜1重量%、より典型的には、0.005〜0.5重量%の量で存在する。
【0030】
任意の好適なキレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、およびアミノ酸を本発明の組成物において用いることができる。そのようなキレート剤は様々な量で、例えば、組成物の総重量を基準にして10重量%まで、より典型的には、5重量%までを用いることができる。かかるキレート剤の使用は、当業者の能力の範囲内にある。
【0031】
様々な還元剤を本発明の組成物において用いることができる。例示的な還元剤には、これらに限定されることはないが:還元糖、例えば、ソルビトール、アラビトール、マンニトール、スクロース、デキストロース、マルトース、およびラクトース;ヒドロキノン、例えば、クロロヒドロキノン、2,3−ジクロロヒドロキノン、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,6−ジクロロヒドロキノン、およびメチルヒドロキノン;グリオキサール;サリチルアルデヒド;アスコルビン酸;ノナナール;ピルブアルデヒド;2−メトキシベンズアルデヒド;バニリン;イミダゾール−2−カルボキサルデヒド;およびイミダゾール−2−カルボキサルデヒドが含まれる。そのような還元剤は組成物の総重量を基準にして0〜15重量%の量で用いることができる。より典型的には、そのような還元剤は0.1〜10重量%、さらにより典型的には、0.5〜5重量%存在する。
【0032】
本発明の組成物は任意の順序で上記成分を組み合わせることによって調製することができる。好ましくは、フッ化物源を、そのフッ化物源の溶解に必要な最少量の水に溶解した後、得られた溶液に残りの成分を任意の順序で添加する。
【0033】
本発明の組成物は基体からのプラズマエッチング後ポリマー性物質の除去に好適である。苛酷なプロセス条件、例えば、プラズマエッチング、自動プラズマアッシング(auto−plasma ashing)、イオン注入もしくはイオンミリング法に処されている任意のポリマー性物質、例えば、これらに限定されるものではないが、フォトレジスト、ソルダーマスク、反射防止コーティング、基層等を、本発明により基体から効率的に除去することができる。上述の苛酷な処理プロセスに処されている任意のポリマー性物質を、本明細書を通して、「プラズマエッチング後ポリマー性物質」と呼ぶ。本発明の組成物および方法は、フォトレジスト、伝導性金属層および絶縁性誘電層をはじめとする物質のドライプラズマエッチング、反応性イオンエッチングおよびイオンミリングの後に存在する有機金属ポリマー性残滓の除去において特に有用である。
【0034】
基体上のポリマー性残滓は、その基体を本発明の組成物と接触させることによって除去することができる。基体は任意の公知の手段、例えば、本発明の組成物を収容する浴、例えば、湿式化学ベンチにおける基体の浸漬(そのような浴は室温であるか、もしくは加熱される)により、本発明の組成物を望ましい温度で基体の表面上に噴霧することにより、または組成物を基体上にシングルウェハ清浄ツールで被着させることにより、本発明の組成物と接触させることができる。ポリマー性残滓を除去するのに十分な時間本発明の組成物と接触させた後、典型的には、基体を、例えば、脱イオン水もしくはイソプロパノールですすぎ、次いで、例えば、スピン乾燥によって乾燥させる。本発明の組成物が基体上に噴霧される場合、そのような噴霧操作は、典型的には、噴霧チャンバ、例えば、Semitool,Inc.(モンタナ州カリスペル)から入手可能な溶媒清浄噴霧装置内で行う。基体を本発明の組成物と接触させる時間は、組成物中のフッ化物イオンの濃度、組成物中の水の量、組成物の温度、および除去されるポリマー性残滓の種類に部分的に依存して変化する。典型的な接触時間は、5秒〜60分の範囲であるが、より短時間もしくは長時間を用いることができる。
【0035】
本発明のポリマー性残滓除去プロセスは様々な温度、例えば、周囲温度もしくは他の任意の好適な温度、例えば、15〜65℃、好ましくは、20〜50℃で行うことができる。
【0036】
本発明の組成物の利点は、1以上の誘電層を含む基体から誘電性物質を実質的にエッチングすることなくポリマー性物質を除去するのにそれらを有効に用いることできることである。典型的には、本発明の組成物は誘電性物質を20℃で50Å/分以下の速度、好ましくは、20Å/分以下の速度、より好ましくは、10Å/分以下の速度でエッチングする。したがって、本発明の組成物は様々な誘電性物質、特には、低誘電率(「低−k」)物質、例えば、これらに限定されるものではないが、シロキサン、二酸化ケイ素、シルセスキオキサン、例えば、水素シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサンおよびそれらの混合物、ベンゾシクロブテン、ポリアリーレンエーテル、多芳香族炭化水素、並びにフッ化シリコンガラスと適合する。
【0037】
本発明の別の利点は、酸化銅を除去するそれらの能力である。本発明の組成物は酸化銅を銅膜から15Å/分以上の速度、より典型的には、20Å/分以上の速度で除去することができる。
【0038】
以下の例は本発明の様々な側面を説明するものと期待される。
【実施例】
【0039】
実施例1
下記表中の組成物を、下記表中に列挙される量の成分を組み合わせることによって調製した。全ての量は重量%で報告される。
【0040】
【表1】

【0041】
酸化銅を含む銅膜を上記組成物の各々と接触させた。各々の場合において、酸化銅が除去された。
【0042】
実施例2
下記表中に列挙される成分および量を用いることを除いて、実施例1を繰返す。これらの試料は実施例1におけるものと同様に機能するものと期待される。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3(比較)
下記表中に列挙される配合物試料を調製した。対照配合物はいかなる窒素含有カルボン酸をも含んでいなかった。試料8はピコリン酸を含んでいた。試料C−1〜C−5は比較物であった。1000Å物理的蒸着銅層を含むブランケットウェハ試料を150℃で3分間加熱し、銅膜上に酸化銅(「CuO」)層を形成した。CuO膜厚は、0.16cm径のガスケットを用いて1平方センチメートルあたり90マイクロアンペアで作動するECI Technology QC−100 Sequential Electrochemical Reduction Analyzerを用いて決定した。次に、各々のウェハ試料を下記表中の配合物試料のうちの1つと室温(20〜22℃)で30秒間接触させ、DI水ですすいだ後、窒素を用いて乾燥させた。乾燥の後、ウェハ試料を再度分析してCuO膜厚を決定し、次いで除去速度を算出した。
【0045】
【表3】

【0046】
上記データは、本発明の組成物が酸化銅膜の除去において非常に有効であることを明瞭に示す。
【0047】
実施例4
様々な量の窒素含有カルボン酸を、それらが可溶であるかどうかを決定するため、水(20重量%)、DPM(40重量%)およびPDO(40重量%)の溶液を用いて評価した。これらの結果は25℃で決定され、下記表に報告される。
【0048】
【表4】

【0049】
ピコリン酸、2−アミノ安息香酸およびグリシンはDI水中、25℃でのそれらの溶解度を決定する評価もした。結果は下記表に水100グラムあたりの化合物のグラムで示される。これらの化合物はそれらが有機溶媒(アルコール)に可溶であるかどうかを決定する評価もした。
【0050】
【表5】

【0051】
実施例5
下記表に列挙される成分および量を用いることを除いて、実施例1を繰返す。これらの試料は実施例1におけるものと同様に機能するものと期待される。
【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー性物質を基体から除去するための組成物であって:(a)0.05〜5重量%のフッ化物源;(b)40〜95重量%の有機溶媒;(c)5〜50重量%の水;および(d)アルコールに可溶であり、かつ25℃で水100gあたり25g以上の水可溶性を有する窒素含有カルボン酸、を含む組成物。
【請求項2】
フッ化物源がフッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムフルオリド、アンモニウム−テトラアルキルアンモニウムビフルオリド、およびそれらの混合物から選択される請求項1の組成物。
【請求項3】
有機溶媒が、多価アルコールとエーテルの混合物を含む請求項1の組成物。
【請求項4】
窒素含有カルボン酸が複素環部分を有する請求項1の組成物。
【請求項5】
複素環部分が芳香族である請求項4の組成物。
【請求項6】
塩基をさらに含む請求項1の組成物。
【請求項7】
塩基がアミンである請求項6の組成物。
【請求項8】
pHが3〜8である請求項1の組成物。
【請求項9】
腐食防止剤、界面活性剤、共溶媒、キレート剤、還元剤およびそれらの混合物から選択される添加剤をさらに含む請求項1の組成物。
【請求項10】
ポリマー性残滓を基体から除去する方法であって、ポリマー性残滓を含む基体を請求項1の組成物と、ポリマー性残滓の除去に十分な時間接触させる工程を含む方法。

【公開番号】特開2007−100086(P2007−100086A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−267106(P2006−267106)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】