説明

剥離可能な透明補強シート付き機能性シート

【課題】粘着層によって強固に貼り付かず、弱い力で容易に補強シートが剥離することができ、すべて透明である、剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを提供することである。
【解決手段】機能性シートは基材シート表面に機能性層を形成しており、補強シートは基材シート表面に粘着層を形成しており、これら2つの基材シートは合成樹脂であり、補強シートは透明であって、機能性シートの基材シート背面に補強シートの粘着層面を貼り合わせて積層しており、機能性シートと補強シートを剥離することができ、補強シートを機能性シートに対して180度の方向に速度5cm/秒で剥離させる時の剥離強度が、機能性シートに補強シートを貼り合わせて1日後と50℃保存で7日後において、0.05〜0.80N/10cmの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シート上に機能性層を有する機能性シートに関するものであり、それに剥離可能な透明補強シートが積層されている機能性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材シート上に機能性層を有する機能性シートがある。機能性層とは、広い意味で何かしらの機能を有する層のことである。特開2010−138260号公報には、様々な機能性層が記載されているが、その中のいくつかをここでは例示する。
【0003】
画像を印刷しやすくするための受像層、回路を形成するための導電層、表面が傷つかないためのハードコート層、反射防止層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層などがある。ここで受像層は、画像印刷方法によって異なり、インクジェット記録用(特許第3830092号公報、特許第4127531号公報)やグラビア印刷用などがある。
【0004】
機能性層を加工する場合、シートがカールしていると加工がうまくできない。また、加工後にカールが発生すると、要求する機能を発揮することが難しくなる。なお、機能性層を加工するとは、基材シート表面に機能性層を形成すること、もしくは、すでに形成した機能性層に新たな加工を施すことを意味する。
【0005】
そこで、カールを防ぐために、機能性シートに補強シートを積層して、剥離可能にしているシート積層体が提案されている。ここで補強シートは、基材となるシートに粘着層を形成したものである。その剥離可能な補強シート付き機能性シートを用いて、機能性層を加工している。
【0006】
特開平07−314877号公報や特開2005−014528号公報では、印刷加工に対して補強する印刷用シートが提案されている。また、特開2003−101166号公報や特開2007−320058号公報では、フレキシブルプリント回路(FPC)薄膜を補強するフィルム(シート)が提案されている。
【0007】
機能性シートに補強シートを積層してカールを防いで、機能性層を加工して補強シートを剥離することで、粘着層なしの機能性シート単体として活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−138260号公報
【特許文献2】特許第3830092号公報
【特許文献3】特許第4127531号公報
【特許文献4】特開平07−314877号公報
【特許文献5】特開2005−014528号公報
【特許文献6】特開2003−101166号公報
【特許文献7】特開2007−320058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、補強シートに粘着層があるため、基材シートの種類や粘着剤の種類によって、または保存状態によっては、強固に貼り付いてしまい、剥離することが困難になる場合がある。補強シートはあくまで補強のためだけであり、弱い力で容易に粘着剤が残らずに機能性シートと剥離することが求められている。
【0010】
また、機能性シートが透明であり、補強シートが不透明であると、補強シートを剥離する前と後とでの見た目の違いが大きく、加工の仕上がりに違和感があった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、粘着層によって強固に貼り付かず、弱い力で容易に補強シートが剥離することができ、補強シートが透明である、剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートは、機能性シートは基材シート表面に機能性層を形成しており、補強シートは基材シート表面に粘着層を形成しており、これら2つの基材シートは合成樹脂であり、補強シートは透明であって、機能性シートの基材シート背面に補強シートの粘着層面を貼り合わせて積層しており、機能性シートと補強シートを剥離することができ、補強シートを機能性シートに対して180度の方向に速度5cm/秒で剥離させる時の剥離強度が、機能性シートに補強シートを貼り合わせて1日後と50℃保存で7日後において、0.05〜0.80N/10cmの範囲であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、粘着層によって強固に貼り付かず、弱い力で容易に補強シートが剥離することができる剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを提供することができるようになった。また、補強シートが透明であるので、剥離する前と後とでの見た目の違いがほとんどなく、加工の仕上がりに違和感がなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートは、機能性シート5に補強シート6を積層したものである。図1にそれを断面図として示している。機能性シート5は少なくとも、基材シート2表面に機能性層1を形成している。補強シート6は少なくとも、基材シート4表面に粘着層3を形成している。つまり、少なくとも、機能性層1、基材シート2、粘着層3、基材シート4の順に積層しているものである。機能性層1、基材シート2、粘着層3、基材シート4だけからなる場合も含むものである。
【0016】
これら2つの基材シートは合成樹脂である。保存安定性を考えた場合、2つの基材シートに挟まれた粘着層と基材シートの合成樹脂との界面における経時変化が考えられ、同じ合成樹脂である方が好ましい。異なる合成樹脂であると、界面における経時変化の違いが出てきて、剥離のしやすさに影響が出てくる場合がある。
【0017】
粘着層と接する基材シート面に何かしらの加工を施してもよいが、界面における保存安定性を考えると、これら2つの基材シートの粘着層と接する面が、同じ経時変化となる同一加工である方が好ましい。さらには、加工による経時変化が起こらない未加工である方が好ましい。
【0018】
補強シートは透明である。基材シートや粘着層などが透明なものである。2つの基材シートが同じ合成樹脂であれば、同じ透明なものである。
【0019】
補強シートの粘着層は、液体の粘着層用塗工液を基材シート表面に塗工して粘着層を形成する。その粘着層を形成した後に、粘着層面を機能性シートの基材シート背面に貼り合わせて積層して、補強シート付き機能性シートにするものである。2つの基材シート同士の間に液体の粘着層用塗工液を挟み合わせて、塗工液を紫外線や熱で硬化させて、粘着層にする方法ではない。紫外線や熱を与えて積層にするのではなく、貼り合わせて積層にするものである。
【0020】
補強シートにおける基材シートと粘着層との界面は、液体の粘着層用塗工液にて形成したものである。機能性シートにおける基材シートと粘着層との界面は、形成した粘着層面を貼り合わせたものである。これらの界面の違いによって、剥離の違いが出ているものである。
【0021】
液体の粘着層用塗工液にて粘着層を形成した基材シート面の方が、形成した粘着層面を貼り合わせた基材シート面よりも、粘着層が強く貼り付いている。この逆で、形成した粘着層面の粘着が強いと、粘着層面を貼り合わせるときに、粘着層を形成した基材シート面から粘着層が剥がれることがあるので、好ましくない。
【0022】
これにより、機能性シートと補強シートを剥離することができるものである。機能性シートと補強シートを剥離することで、粘着層なしの機能性シート単体として活用することができる。
【0023】
製造工程の容易さから、これら2つの基材シートが同じ合成樹脂であり、これら2つの基材シートの粘着層と接する面が未加工である方が、より好ましいものである。同じ合成樹脂であるので、同じ透明なものである。これら2つの基材シートが同じ合成樹脂であっても、また、これら2つの基材シートの粘着層と接する面が未加工であっても、剥離することができるものである。
【0024】
機能性層を形成した後の機能性シートの基材シート背面に、粘着層を形成した補強シートを貼り合わせるのがよいが、補強シートを貼り合わせた後の基材シート表面に、機能性層を形成してもよい。
【0025】
補強シートはあくまで補強のためだけであり、弱い力で容易に機能性シートと剥離することが求められている。その弱い力に相当する剥離強度の上限値は、以下の測定方法にて、実際の作業者の意見を反映させて設定している。
【0026】
測定方法は、補強シート付き機能性シートを幅10cm、長さ15cmにカットして、長さ方向へ補強シートを機能性シートに対して180度、速度5cm/秒で剥離させ、株式会社大場計器製作所製の丸型バネ式テンションゲージ(最小目盛5gf、最大200gf)を用いて、この時の最大強度を剥離強度として、測定している。
【0027】
実際の作業者の意見を反映させて、容易に補強シートが機能性シートと剥離することができる剥離強度の上限値を80gf/10cmと決めた。一方、剥離強度の下限値は、補強シート付き機能性シートを必要なサイズにカットするときに、補強シートが剥離しない値として5gf/10cmと決めた。これらより、剥離強度の範囲は、5〜80gf/10cmである。
【0028】
ここで、測定単位は「gf」なので、これを国際単位系(SI)の「N」に換算するのに、1kgf=9.8Nを用いている。最小目盛は5gfであるので、換算すると最小目盛は四捨五入して0.05Nとなる。これが換算最小目盛となるので、剥離強度の範囲は、5〜80gf/10cmから0.05〜0.80N/10cmへと換算している。
【0029】
機能性層として、画像を印刷しやすくするための受像層、特に、インクジェット記録用の受像層を例にして説明する。この場合、機能性層がインクジェット受像層であり、機能性シートがインクジェット記録用シートである。
【0030】
機能性シートと補強シートそれぞれの2つの基材シートは同じ透明な合成樹脂である。ここで合成樹脂はPET(ポリエチレンテレフタレート)であり、基材シートは透明PETシートである。
【0031】
これら2つの基材シートにおいて粘着層と接する面は両面とも未加工である。剥離層を形成しておらず、コロナ処理などで接着性を高めてもいない。どちらかの面に剥離性や密着性の違いを出していない。両面とも、剥離性や密着性を上げる加工はしていない未加工である。
【0032】
粘着層として、熱可塑性エラストマーを用いている。熱可塑性エラストマーを粘着層用塗工液にして、その粘着層用塗工液にて基材シート上に透明な粘着層を形成している。ここではスチレン系熱可塑性エラストマーを用いており、各種添加剤を混合して性能を調整している。
【実施例1】
【0033】
インクジェット受像層は、厚さ100μmの透明PETシート表面に、インクジェット受像層用塗工液をリバースロールコーターにて乾燥後の厚さ30μmになるように塗工して加熱乾燥させることで形成した。この面とは反対のPETシート背面は何も加工しておらず、未加工状態である。インクジェット受像層用塗工液は、次の原料と固形分重量比からなり、これらをイオン交換水にて溶解攪拌して作製した。
【0034】
ポリエーテル系ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社スーパーフレックス600固形分25%)72重量部と、アクリル・スチレン共重合体(中央理化工業株式会社リカボンドFK−820固形分39%)24重量部と、オキサゾリン基を有する水溶性ポリマー(固形分40%)0.5重量部と、メタクリル酸・アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル・スチレン共重合体とポリエチレンイミンのグラフト化物の塩化水素中和物(固形分49%)3.5重量部である。これは特許第4127531号公報に記載されているものであり、透明インクジェット受像層である。
【0035】
粘着層は、厚さ38μmの透明PETシート表面に、粘着層用塗工液をリバースロールコーターにて乾燥後の厚さ約2μmになるように塗工して加熱乾燥させることで形成した。このPETシート表面は何も加工しておらず、未加工状態である。粘着層用塗工液は、次の原料と固形分重量比からなり、これらをトルエンにて溶解攪拌して作製した。
【0036】
スチレン系熱可塑性エラストマーのうち、より好ましいスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社クインタック3433N)99.0重量部、帯電防止剤(日本油脂株式会社エレガン264WAX)1.0重量部である。これは、透明粘着層である。
【0037】
この粘着層面を機能性シートの基材シート背面に貼り合わせて、実施例1の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【実施例2】
【0038】
実施例1の粘着層用塗工液において、異なるスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社クインタック3421)に変更して、他は実施例1と同じにようにして、実施例2の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0039】
(比較例1)
実施例1の粘着層用塗工液において、異なる固形分重量比にした。スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社クインタック3433N)96.0重量部、帯電防止剤(日本油脂株式会社エレガン264WAX)4.0重量部に変更して、これらをトルエンにて溶解攪拌して、粘着層用塗工液を作製した。他は実施例1と同じにようにして、比較例1の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0040】
(比較例2)
実施例1の粘着層用塗工液において、異なる帯電防止剤と固形分重量比にした。スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社クインタック3433N)97.4重量部、帯電防止剤(三洋化成工業株式会社ケミスタット2500)2.6重量部に変更して、これらをトルエンにて溶解攪拌して、粘着層用塗工液を作製した。他は実施例1と同じにようにして、比較例2の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0041】
(比較例3)
実施例1の粘着層用塗工液において、異なる帯電防止剤と固形分重量比にした。スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社クインタック3433N)94.0重量部、帯電防止剤(三洋化成工業株式会社ケミスタット2500)6.0重量部に変更して、これらをトルエンにて溶解攪拌して、粘着層用塗工液を作製した。他は実施例1と同じにようにして、比較例3の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0042】
(比較例4)
補強シートの基材シートにおいて、粘着層と接する面をコロナ処理の加工を施したものに変更して、他は実施例1と同じにようにして、比較例4の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0043】
(比較例5)
補強シートの基材シートを、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)シートに変更して、他は実施例1と同じにようにして、比較例5の剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを作製した。
【0044】
これら実施例と比較例を次のように評価した。評価結果をまとめたのが、表1である。
【0045】
<カール性>
剥離可能な透明補強シート付き機能性シートを150mm×610mmにカットして、平滑な面の上に機能性層(インクジェット受像層)を下にして置いて、平滑な面からの高さをシートの4角および辺の中点部分において測定して評価した。高さが36mm以下であれば○、それより大きければ×とした。なお、この36mm以下という高さはインクジェットプリンタにて問題なく印刷できる高さである。
【0046】
<剥離性>
機能性シートと補強シートを剥離して、粘着層が機能性シートときれいに剥離できるかどうかを評価した。機能性シートの基材シート背面に粘着層が、目視にてまったく残っていなければ○、残っていたり剥離することができなかったりしたら×とした。粘着層がまったく残らないと、補強シートを剥離する前と後とでの見た目の違いがほとんどない。
【0047】
<剥離強度>
機能性シートに補強シートを貼り合わせて1日後と50℃保存で7日後において、上記の測定方法にて剥離強度を測定して、5回の平均値で評価した。1kgf=9.8Nを用いて換算して、0.05〜0.80N/10cmの範囲であれば○、範囲からはずれていれば×とした。
【0048】
なお、実施例1と実施例2ともに剥離強度は、1日後が0.05N/10cm、50℃保存で7日後が0.65N/10cmであった。機能性シートに補強シートを貼り合わせて1日後と50℃保存で7日後において、0.05〜0.80N/10cmの範囲である。そして、0.05〜0.70N/10cmの範囲が好ましい。比較例ではすべて、50℃保存で7日後が上限値より大きくなった。また、比較例4と5では、機能性シートの基材シート背面に粘着層が残っていた。経時変化による影響かもしれないが、理由は明確ではない。これより、実施例では弱い力で容易に補強シートを剥離することができるものとなった。
【0049】
【表1】

【符号の説明】
【0050】
1 機能性層
2 機能性シートの基材シート
3 粘着層
4 補強シートの基材シート
5 機能性シート
6 補強シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性シートは基材シート表面に機能性層を形成しており、補強シートは基材シート表面に粘着層を形成しており、これら2つの基材シートは合成樹脂であり、補強シートは透明であって、機能性シートの基材シート背面に補強シートの粘着層面を貼り合わせて積層しており、機能性シートと補強シートを剥離することができ、補強シートを機能性シートに対して180度の方向に速度5cm/秒で剥離させる時の剥離強度が、機能性シートに補強シートを貼り合わせて1日後と50℃保存で7日後において、0.05〜0.80N/10cmの範囲であることを特徴とする剥離可能な透明補強シート付き機能性シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−245617(P2012−245617A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116452(P2011−116452)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)
【Fターム(参考)】