説明

剥離性保護フィルム

【課題】剥離性保護フィルムを提供する。
【解決手段】酸素勾配を示す、表面、特に金属表面剥離性高分子保護フィルム、およびこの保護フィルムの製造方法。前記フィルムは、表面を一時的に保護するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面用、特に金属表面用の酸素勾配を示す剥離性高分子保護フィルム、及びその保護フィルムの製造方法に関する。このフィルムは表面を一時的に保護するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
剥離性フィルムは一般に公知である。「剥離性フィルム」という用語は、表面から手で全体又は大部分が剥離可能なポリマーフィルムとして使用される。したがって、表面を傷つける恐れのあるへら等の工具を用いることなくフィルムの剥離が可能である。剥離性フィルムは、例えば輸送や保管中に環境の影響から表面を一時的に保護するために使用可能である。その後、フィルムを剥離することで、光学的に高品質な表面を再現することが可能である。剥離性フィルムは、金属表面上の酸化物表面層の特定の化学組成を維持する機能を有する。これにより、フィルムの剥離後、前処理をせずに塗装及び他の塗布手段によって、表面をさらに処理することができる。剥離性フィルムは、すでに作製した物の状態で基材上に載せてもよいし、基材上に液体塗料を用いてフィルムを形成してもよい。
【0003】
一時的な表面保護用のフィルムは一般に公知である。
【0004】
特許文献1は、エチレン含有量が75〜92質量%であるエチレン−アクリル酸コポリマーを含む金属表面保護フィルムを開示している。カルボキシル基の中和の程度は50〜100mol%である。このフィルムは、水溶液の噴霧により塗布できる。しかし、このフィルムは剥離性でなく、熱水を用いて除去される。
【0005】
特許文献2には、金属表面の腐食防止に水性ポリマー分散液を用いることが開示されている。この分散液は、オレフィンのポリマー、酸性官能基を持つモノマー、及び必要に応じて他のモノマーを含有し、さらに、その中に溶解された腐食防止剤及び/又は色素、また必要に応じてUV安定化剤を含む。このポリマーは、好ましくは50〜98質量%のオレフィンを含有する。
【0006】
特許文献3は、スプレー室で熱的に着脱可能なコーティング用水溶液を開示している。この水溶液は、水とともに、10〜40質量%の顔料、5%〜15質量%の酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、添加剤、クエン酸からなる発泡剤、及びNaHCO3を含んでいる。この塗膜は、熱水で除去可能である。
【0007】
特許文献4は、ポリビニルアルコール、ポリアルキルアクリレート、添加剤、及び助剤を含む剥離性フィルムを開示している。
【0008】
特許文献5は、自動車ボディーに粘着シートを貼り付ける装置を開示している。
【0009】
特許文献6は、ガラス転移温度が0〜40℃であるフィルム形成ポリマーと等電点がpH3〜8である両性化合物とを含む剥離性コーティング形成用組成物を開示している。この両性化合物には、例えばアミノカルボン酸が含まれる。
【0010】
特許文献7は、表面に、例えば自動車ボディーの表面上に剥離性フィルムを形成する方法を開示している。この方法では、その表面上のいろいろな部分に、異なる硬化性組成物が吹付けられている。この明細書には、この塗膜の性状の説明については言及していない。
【0011】
上記明細書のいずれにも、酸素勾配を示す剥離性保護フィルム、特に金属表面用の剥離性保護フィルムについての記載はない。
【0012】
【特許文献1】US4,693,909
【特許文献2】WO98/10023
【特許文献3】US5,010,131
【特許文献4】US5,604,282
【特許文献5】US6,360,801
【特許文献6】US6,555,615
【特許文献7】US6,811,807
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、水溶液を塗布することにより製造でき、金属表面及び非金属表面から水や溶媒を使用せずに容易に剥離できる剥離性フィルムを提供することである。剥離性フィルムは、さらに金属表面に好適な腐食防止性を付与することを要す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第一は、層の全成分の総量に対して少なくとも70質量%のポリマーを含む剥離性保護フィルムであって、
前記ポリマーが、少なくとも65質量%のエテンをそれぞれ含む少なくとも二種の異なるポリマーを含み、
前記保護フィルムが、炭素に結合した酸素をさらに含み、
保護フィルムの酸素の含有量が、表面からの距離の増加につれて、増加することを特徴とする剥離性保護フィルムである。
【0015】
本発明の第二は、剥離性保護フィルムを表面に塗布する方法であって、
n個の水溶液Fi(nは2以上の自然数であり、iは1〜nの自然数である)で続けて表面を処理する工程を有し、
n個の水溶液Fiのそれぞれが、少なくとも65質量%のエテン及び炭素に結合した炭素を含む少なくとも一種のポリマーを含み、
前記酸素が、ポリマー又は水溶液の他の成分と結合することができ、
指数iが増加するにつれて、水溶液Fiの炭素に結合した酸素の含有量が増加することを特徴とする方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の剥離性フィルムは、表面に載置される。その表面の形状や材料は、本発明において重要ではない。しかしながら、表面が、特に、シート状、曲面状又は不規則形状の成形物又は工作物の表面であってもよい。材料については、表面が、例えばプラスチック製、金属製又はガラス製であってもよい。また表面が塗装されていてもよい。好ましくは、金属表面であり、その例としては、例えばシート、箔又は短冊状の形状の鉄、鋼、亜鉛、亜鉛メッキ鋼又はアルミニウムの表面や、成形後又は打ち抜き後の自動車ボディー、車体部品、建築外装部品又は家庭電化製品外装などの加工金属部品が挙げられる。当然、異なる材料を組み立てたものも含まれる。その例として、フレームと窓ガラスが本発明の剥離性フィルムで保護されているウィンドウがあげられる。
【0018】
本発明の剥離性フィルムは、層の全成分の総量に対して少なくとも70質量%のポリマーを含有している。ポリマー含有量は、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95質量%である。このフィルムは、ポリマーのみから構成されていてもよい。
【0019】
本発明によれば、前記剥離性フィルムは、化学的に炭素に結合した酸素を含む。すなわち、物理的に吸着された分子状の酸素(O2)や他の形態で結合した酸素は概念に含まれない。この酸素は、好ましくは剥離性フィルムに含まれるポリマーの炭素原子に結合している。しかし、界面活性剤などの他の炭素含有成分に結合していてもよい。また、両方に結合していてもよい。ある好ましい実施様態においては、この酸素は、全量又は少なくともほぼ全量がカルボニル基>C=Oとして、さらに好ましくは、全量又は少なくともほぼ全量がカルボキシレート基−COOH及び/又はその塩として結合している。なお、「ほぼ全量」とは、剥離性フィルム中の炭素に結合した酸素の全量当たり、少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95質量%が、この形態で存在することを意味している。
【0020】
本発明において、剥離性フィルム中の酸素含有量は、表面からの距離の増加につれて増加する。この酸素含有量の増加は連続的であっても不連続的であってもよい。剥離性フィルムの酸素含有量は、必要なら表面よりポリマーフィルムを剥離した後に、ESCAや斜視角でのIR測定などの既知の表面分析方法を用いて決定することができる。深度方向の傾斜の形成は、同様に既知の方法、例えばスパッタリングで行うことができる。これらの試験においては局所的な濃度変動は考慮しておらず、酸素含有量は、一般に既知の方法で、フィルムの代表的な表面元素の積分値として求められている。
【0021】
保護フィルムの接触面と対向する面の酸素含有量が6質量%未満であり、接触面から離れた面の酸素含有量が6質量%を超えるのが特に好ましい。
【0022】
本発明によれば、ポリマーは、少なくとも二種の異なるポリマーからなる。好ましくは、これらが、炭素に結合した酸素の量の異なるポリマーである。酸素勾配は、層中でのこれらのポリマーが不均一な分布、具体的には低酸素量ポリマーの層の底面での増加と高酸素量ポリマーの層の上面での増加により引き起こされる。
【0023】
本発明においては、使用するポリマーは少なくとも65質量%のエテン単位を含有している。これらポリマーは、さらに他のエテンと共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。酸素含有ポリマーは、炭素−酸素結合を有するモノマー、例えば(メタ)アクリル酸又はアクリル酸エステル類を用いて製造することで得られる。
【0024】
しかしながら、この酸素含有ポリマーは、少なくとも65質量%のエテンを含むポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリエチレンコポリマーを、一般に既知の方法で酸化することでも得ることができる。このようにして、−COOH基、−OH基や>C=O基などの酸素含有基がポリオレフィンに導入される。
【0025】
本発明の剥離性フィルムを製造するには、
65〜99質量%のエテン、
1〜35質量%の、エテンと共重合可能であり、炭素に結合した酸素を含むモノマー、及び必要に応じて、
0〜30質量%の、(A)や(B)と共重合可能な他のモノマー、
を含むポリマーを使用することが好ましい。これらの量は、いずれも、コポリマーの全成分の総量に対する量である。
【0026】
モノマー(B)は、エテン及び必要に応じて存在するモノマー(C)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーである。これらは、好ましくはモノエチレン性不飽和モノマーである。ただし、必要に応じて、少量の二種以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが含まれていてもよい。モノマー(B)は炭素−酸素結合を含んでいる。この酸素は、好ましくはカルボニル基>C=Oの形で、さらに好ましくはカルボキシル基の形で結合している。モノマー(B)は、例えば(メタ)アクリルエステル又は酢酸ビニルであってもよい。重合してビニルアルコール単位を形成後、この酢酸ビニルを完全にあるいは部分的に加水分解させてもよい。このモノマー(B)は、好ましくはカルボキシル含有モノマー又はその塩である。ポリマー中に存在する酸基の0.5〜50mol%が中和されていることが好ましい。このようなモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸やモノエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1〜C4モノエステルが挙げられる。当然、異なるモノマー(B)の混合物も使用可能である。特に好ましいモノマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸である。
【0027】
モノマー(C)は、モノマー(A)及びモノマー(B)とは異なる、これらと共重合可能なモノマーである。当然、二つ以上の異なるモノマー(C)を用いてもよい。このモノマー(C)は、他のオレフィンであってもよい。オレフィンの例としては、プロペンや、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが挙げられる。これらのモノマーは、さらに酸性モノマーであってもよいが、炭素−酸素結合は含んでいない。その例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、及びビニルホスホン酸が挙げられる。
【0028】
前記剥離性フィルムを形成するに当たり、表面を連続してn個の水溶液Fiで処理する。ここでiは、1〜nの連続番号で、処理工程の順序を示す。したがって第一工程では水溶液F1が使用され、第二工程では水溶液F2が使用され、第n工程では水溶液Fnが使用される。少なくとも二つの処理工程で処理されるため、nは2以上の自然数である。一般に、nは2〜5であり、好ましくは2又は3、さらに好ましくは2である。
【0029】
この溶液は水溶液である。この場合、使用する溶媒は好ましくは水のみである。しかし、これらの水溶液は少量の水混和性有機溶剤を含んでいてもよい。しかし、全溶媒量に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも85質量%の水が存在することが好ましい。このような水混和性溶媒の例としては、メタノールや、エタノール、プロパノールなどのモノアルコール類、エチレングリコールやポリエーテルポリオールなどの高級アルコール類、及びブチルグリコールやメトキシプロパノールなどのエーテルアルコール類が挙げられる。
【0030】
n個の水溶液Fiのそれぞれが、それぞれ少なくとも65質量%のエテン単位を有する上記のポリマーを少なくとも一種含んでいる。当然、これら水溶液はそれぞれ異なる単位を含んでいてもよい。各水溶液はさらに炭素に結合した酸素を含み、この酸素はポリマーに結合していてもよいし、水溶液中の他の成分に結合していてもよい。このようなものの例として、炭素−酸素結合を含む界面活性剤やカルボキシレート基を中和するのに用いることのできるカチオンを挙げることができる。このようなカチオンの例としては、モノ−、ジ−、又はトリ−エタノールアミンのCOOH基を中和した時に得られるモノ−、ジ−、又はトリ−エタノールアンモニウムイオンが挙げられる。好ましくは酸素が前記ポリマーに結合している。
【0031】
水溶液Fiの組成は、水溶液Fn中の炭素に結合する酸素の含有量が指数nの増加に伴って高くなるように決められる。ただし、この値は、水溶液中の全固体成分の総量に対する。したがって、表面に、まず酸素量の少ない水溶液を塗布し、最後に酸素量の最も多い水溶液を塗布する。
【0032】
本発明のある好ましい実施様態においては、水溶液F1を用いる第一処理段階において、
(A)90〜99質量%、好ましくは92〜98質量%のエテン、
(B)1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%の(メタ)アクリル酸、及び必要に応じて、
(C)0〜9質量%の他のモノマー、
を含むポリマーを使用する。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施様態において、水溶液Fnを用いる最後の処理段階において、次の成分を含むポリマーを使用する。
【0034】
(A)65〜90質量%、好ましくは70〜80質量%のエテン、
(B)10〜35質量%、好ましくは20〜30質量%の(メタ)アクリル酸、及び必要に応じて、
(C)0〜9質量%の他のモノマー。
【0035】
当然、アクリル酸とメタクリル酸の混合物をモノマーとして用いることも可能である。
【0036】
これらの水溶液は、ポリマー以外に、他の助剤及び/又は添加剤を含んでいてもよい。このような助剤としては、流れ調整剤、腐食防止剤、顔料、離型剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、アミン、アルカリ金属水酸化物又は二亜硫酸ナトリウムが挙げられる。顔料は、例えば、着色などの目的に使用される。これらは、本来、金属性であっても非金属性であってもよい。腐食防止剤には、揮発性の腐食防止剤、すなわち、気相に移り非被覆部分、例えば、空隙にも影響を与える阻害剤も含まれる。
【0037】
これらのポリマー水溶液は、好ましくは熱水中でコポリマーを乳化させて調製する。この乳化操作を、加圧下で温度が100〜200℃に達する条件で行ってもよい。乳化操作を促進するため、アルカリ、水酸化物、及び界面活性剤を助剤として使用してもよい。好ましいアミンはエタノールアミン類で、好ましい界面活性剤は脂肪族アルコール及びオキソ合成アルコールアルコキシレートで、特に好ましいのは、エテンオキサイド系、及び場合によりプロペンオキサイド系のアルコキシレートである。しかし、他の非イオン性やイオン性界面活性剤も適当である。
【0038】
水溶液の濃度は、所望の塗布条件や剥離性フィルムの所望の量に応じて、当業者により決定される。好ましい濃度は、固形分として水溶液全成分の総量に対して、0.1〜50質量%である。固体分量は、好ましくは0.25〜40質量%、さらに好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜25質量%である。
【0039】
特に好ましい実施様態においては、使用する水溶液中の固形分濃度が、指数iの増加と共に増加する。この意味で、第一の水溶液F1の特に好ましい濃度は、0.1〜20質量%、好ましくは0.25〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。最終の水溶液Fnの特に好ましい濃度は、1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%である。
【0040】
剥離性フィルムを形成するために上記の水溶液で処理するのに、被塗装物を水溶液中に浸漬して、ドリップドライ(drip dry)させる方法をとってもよい。あるいは、この水溶液を噴霧やブラッシング等で塗布してもよい。溶媒は、室温又は高温で、特に30〜100℃で気化させて除去する。n回の処理工程の後それぞれ、乾燥を行ってもよい。あるいはこれらの層を重ね塗りしてもよい。この場合、当然これらの層のある程度の混合が起こるが、完全乾燥の場合には個々の層の混合は最小限となる。当然、これらの複合型も可能である。例えば、いずれの場合も、個々の層を当初温和な条件下で前乾燥し、剥離性フィルム全体を後からさらに高い温度で後乾燥してもよい。
【0041】
この剥離性フィルムは、二種の水溶液を続けて塗布して製造することが好ましい。特に好ましくは、上記の好ましい水溶液F1と水溶液Fnとをこの目的に使用することである。いずれの場合も、乾燥は約70〜90℃で実施される。
【0042】
前記剥離性保護フィルムの厚さは、所望の特性に応じて当業者により選択される。特に適当とされる厚さは、1〜200μmであり、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜50μm、特に好ましくは20〜50μmである。
【0043】
本発明の方法により、表面、特に金属表面から容易に剥離可能であるとともに腐食防止に優れる剥離性フィルムを製造することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例を参照しながら説明する。
【0045】
実施例1
S235JR鋼板(DIN EN ISO 10025)を、20℃で、水溶液1(水中に、ポリマー1(94質量%のエテン、3質量%のアクリル酸、3質量%のメタクリル酸)を含む、3.5%強度の溶液)に浸漬し、80℃で1時間乾燥させた。
【0046】
次に、この鋼板を、水溶液2(水中に、ポリマー2(74質量%のエテン、26質量%のメタクリル酸、部分的に中和)を含む、20%強度の溶液)に浸漬し、80℃で1時間乾燥させた。
【0047】
このようにして得られたフィルムは、一体的に手で剥離可能であり、DIN50021の塩水噴霧試験で、50時間を超える耐腐食性を示した。
【0048】
結果を表1に示す。
【0049】
実施例2〜5;比較例
異なる水溶液を用いて上記の試験を繰り返した。使用した水溶液の詳細及び試験結果を表1に記載する。
【0050】
実施例において記載したポリエチレンオキシデートの水溶液は、水中、150℃(撹拌オートクレーブ)で、22mgKOH/gの酸価を有するポリエチレンオキシデート28質量%、界面活性剤(1molのアルコールと7molのエテンオキサイドからなるC10オキソ合成アルコールエトキシレート)7質量%、及び水酸化カリウム0.6質量%を乳化させた後、希釈することにより調製した。酸価22の固体ポリエチレンオキシデートは、1.3質量%の酸素を含有する。非希釈の界面活性剤は、11質量%の酸素を含む。
【0051】
【表1】

【0052】
この結果より、層中の酸素含有量が外側に向かって増加している層のみが、表面から剥離可能であることが分かる。
【0053】
単一の水溶液で塗布するか、若しくは同一のポリマーを二回塗布するかに関係なく、濃度勾配のない層は剥離不能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層の全成分の総量に対して少なくとも70質量%のポリマーを含む表面用剥離性保護フィルムであって、
前記ポリマーが、少なくとも65質量%のエテンをそれぞれ含む少なくとも二種の異なるポリマーを含み、
前記保護フィルムが、炭素に結合した酸素をさらに含み、
前記保護フィルムの酸素の含有量が、表面からの距離が増加するにつれて、増加することを特徴とする剥離性保護フィルム。
【請求項2】
前記ポリマーが、いずれの場合もポリマーの全成分の総量に対して、
(A)65〜99質量%のエテン、
(B)1〜35質量%の、エテンと共重合可能であり、炭素に結合した酸素を含むモノマー、及び
(C)0〜30質量%の、(A)及び(B)と共重合可能な他のモノマー、
をそれぞれ含む請求項1に記載の剥離性保護フィルム。
【請求項3】
表面が金属表面である請求項1または2に記載の表面用剥離性保護フィルム。
【請求項4】
前記保護フィルムが1〜200μmの厚さである請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離性保護フィルム。
【請求項5】
前記酸素が、実質的にカルボキシル基−COOH及び/又はその塩としてポリマーに結合している請求項2〜4のいずれか1項に記載の剥離性保護フィルム。
【請求項6】
前記保護フィルムの接触面と対向する面の酸素含有量が6質量%未満であり、接触面から離れた面の酸素含有量が6質量%を超える請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離性保護フィルム。
【請求項7】
ポリマー水溶液で表面を処理する、剥離性保護フィルムを表面に塗布する方法であって、
n個の水溶液Fi(nは2以上の自然数であり、iは1〜nの自然数である)で続けて表面を処理する工程を有し、
n個の水溶液Fiのそれぞれが、少なくとも65質量%のエテン及び炭素に結合した炭素を含む少なくとも一種のポリマーを含み、
前記酸素が、ポリマー又は水溶液の他の成分と結合することができ、
水溶液Fiの炭素に結合した酸素の含有量が、指数iが増加するにつれて、増加することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、いずれの場合もポリマーの全成分の総量に対して、
(A)65〜99質量%のエテン、
(B)1〜35質量%の、エテンと共重合可能であり、炭素に結合した酸素を含むモノマー、及び
(C)0〜30質量%の、(A)及び(B)と共重合可能な他のモノマー、
をそれぞれ含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
nが2である請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が金属表面である請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記保護フィルムが1〜200μmの厚さである請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸素が、実質的にカルボキシル基−COOH及び/又はその塩としてポリマーに結合している請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマー(B)が(メタ)アクリル酸である請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
表面の処理に使用される第一水溶液F1中のポリマーが、
(A)90〜99質量%のエテン、
(B)1〜10質量%の(メタ)アクリル酸、及び必要に応じて
(C)0〜9質量%の、(A)及び(B)と共重合可能な他のモノマー、
を含むポリマーである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
表面の処理に使用される最後の水溶液Fn中の前記ポリマーが
(A)65〜90質量%のエテン、
(B)10〜35質量%の(メタ)アクリル酸、及び必要に応じて
(C)0〜9質量%の(A)及び(B)と共重合可能な他のモノマー、
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水溶液Fi中のポリマーの濃度が、指数iが増加するにつれて、増加する請求項7〜15のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−535939(P2008−535939A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556620(P2007−556620)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060274
【国際公開番号】WO2006/089955
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】