説明

創傷被覆材

【課題】吸水性、保水性、フィット感、生分解性および生体適合性に優れた創傷被覆材を提供すること。
【解決手段】ポリグルタミン酸架橋体を含有するシートを用いて創傷被覆材とする。ポリグルタミン酸の含有量は、シートに対して10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。ポリグルタミン酸架橋体は、静電紡糸法により得られた繊維および繊維集合体を架橋させて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤療法に用いられる創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷被覆材としては、綿などのガーゼが使用されてきたが、吸収した血液が凝固して止血するため、瘡蓋となり治癒が遅く、ガーゼをはがすときに痛みを伴ったり、傷跡が残ったりするという問題があった。
最近では、湿潤療法という方法が提案され、体内からの浸出液を保持することで皮膚の再生が早まり、外部からの細菌や水の浸入を防ぐ創傷被覆材が好ましいとされている。そこで、ガーゼと透湿性フィルムを組み合わせた創傷被覆材などが考えられるが、ゴワゴワ感があり、フィット感が悪いなど改善が求められている。
【0003】
創傷被覆材としては、例えば、特許文献1に、創傷治癒効果促進効果の向上のために特定の高分子化合物を用いた創傷被覆材が記載されている。
また、特許文献2には、エラスチンを含むシートの表面にポリグルタミン酸を含むシートが積層された創傷被覆材が開示されている。
さらに、特許文献3には、コラーゲンを主成分とした高分子を用いた医療用材料が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−38633
【特許文献2】特開2005−46228
【特許文献3】特開2004−321484
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では治癒効果のある高分子化合物を製造したものを利用しているのでその製造が複雑である。また、材料の形状がスポンジ状であるために保水性が不十分で、湿潤療法には適していない、フィット感に欠ける、という問題があった。
また、特許文献2では、シートがフィルム状に形成されており、吸水性および保水性が不十分であった。さらに、フィット感にも欠けるため、湿潤療法には適していない。
そして、特許文献3に記載の繊維は、コラーゲンを主成分としているため、吸水性および保水性が十分でなく、湿潤療法に用いるには不適当であった。
【0006】
本発明の目的は、吸水性、保水性、フィット感、生分解性および生体適合性に優れた創傷被覆材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の創傷被覆材は、ポリグルタミン酸架橋体を含有するシートを用いたことを特徴とする。
ポリグルタミン酸は納豆の糸として古くから知られており、近年、工業的にポリグルタミン酸を製造することが可能となり、生分解性、生体適合性、高吸水性の樹脂として注目されている。
ポリグルタミン酸としては、公知の方法で得られたもの、天然物由来のもの、のいずれも用いることができる。ポリグルタミン酸は保水性が高いので水分を吸収させると湿潤性が高まり、また、長時間にわたってこの湿潤性を持続させることができる。
したがって、ポリグルタミン酸架橋体を含有するシートを創傷被覆材として用いると、傷を早く治すことができるとともに、傷跡が残らないという優れた効果を奏することができる。
【0008】
また、ポリグルタミン酸は生体適合性、生分解性を有するので、例えば、開腹手術時にガーゼなどを取り忘れて縫合するなどの事故防止に役立てることができる。さらには、外科手術用の癒着防止シートなどへも応用することができる。
【0009】
本発明の創傷被覆材において、前記シートは、前記ポリグルタミン酸架橋体を10質量%以上100質量%以下の割合で含有していることが好ましい。
ポリグルタミン酸架橋体の含有量がシート全量基準で10質量%未満であると、吸水性および保水性などのポリグルタミン酸としての機能が十分に発揮できない。なお、ポリグルタミン酸架橋体の含有量は、目的に応じたバインダーの配合量に応じて適宜調整することができる。
この発明によれば、ポリグルタミン酸架橋体を10質量%以上100質量%以下の割合で含有したシートを用いるので、吸水性と保水性に優れ、湿潤療法に適した創傷被覆材を提供することができる。
【0010】
本発明の創傷被覆材において、前記ポリグルタミン酸架橋体は、前記ポリグルタミン酸架橋体は、ポリグルタミン酸を原料として用いた繊維が架橋されてなるものであることが好ましい。また、前記繊維は、繊維集合体を構成していることが好ましい。
この発明によれば、ポリグルタミン酸を原料として製造された繊維が積層されて繊維集合体となり、繊維および繊維集合体のうち少なくともいずれか一方が架橋されてポリグルタミン酸架橋体を形成する。繊維が積層されることにより、繊維間に多数の細孔が形成され、この細孔に大量の水分が吸収される。このように吸水性に優れているため、傷口に対する封止効果が非常に高い。
【0011】
本発明の創傷被覆材において、前記繊維および前記繊維集合体は、静電紡糸法により紡糸されたことが好ましい。
この発明によれば、繊維および繊維集合体が静電紡糸法により製造されるので、極細の繊維を得ることができる。このような極細の繊維はその表面積が広く、傷口への密着性が高い。したがって、より早く傷を治すことができる。また、極細の繊維で形成されることにより、吸水性により優れる。したがって、創傷被覆材としての封止効果もより向上する。
【0012】
本発明の創傷被覆材において、前記繊維の径寸法は、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。さらには、前記繊維の径寸法が、0.05μm以上1.8μm以下であることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態では、ポリグルタミン酸を含む溶液を静電紡糸法により紡糸して繊維および繊維集合体を形成し、この繊維集合体に架橋処理を実施して、ポリグルタミン酸架橋体を形成し、創傷被覆材用のシートとする。
【0014】
(1.溶液の調整)
(1−1.ポリグルタミン酸)
ポリグルタミン酸は、公知の製法で得られたもの、天然物由来のもの、また、ナトリウム塩を使用することができる。また、静電紡糸する際に繊維状に紡糸しやすいという点および分子量が大きいほど吸水性および保水性に優れているという点から、分子量が20万以上のポリグルタミン酸を用いることが好ましい。
【0015】
ポリグルタミン酸の含有量は、バインダーの配合により適宜設定することができるが、シート全量基準で10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上100質量%以下である。
ポリグルタミン酸の含有量が10質量%未満であると、吸水性および保水性といった湿潤性を付与する性能が十分でない。
【0016】
本実施形態では、必要に応じてバインダーを配合することもできる。ここで用いられるバインダーとしては公知のものが使用可能で、例えば、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリプロリレンオキサイド、ポリエチレンイミド、ポリアニリン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、シリコーン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンサルファイド、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレンテルフタレート、など溶媒に溶解可能な合成高分子が挙げられる。また、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、セリシン、フィブロイン、核酸、ヒアルロン酸、エラスチン、ヘパリン、カテキンなどの天然高分子も使用することが出来る。さらに、オルガノシリカやオルガノチタンなどのゾル溶液も挙げられる。
【0017】
(1−2.溶媒)
また、ポリグルタミン酸を溶解せしめる溶媒には、水と水溶性有機溶媒が用いられる。ポリグルタミン酸は水に可溶であるが、静電紡糸する際に、水だけでは紡糸が困難であるため、水溶性有機溶媒と併用する。
水溶性有機溶媒としてはポリグルタミン酸を溶解しうるものが適宜選択される。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類以外にも、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。この中でも、肌への刺激が小さく生体への影響が小さいことから、特に、炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールであるメタノール、エタノール、プロパノールを用いることが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
(1−3.各種添加剤)
さらに、必要に応じて、界面活性剤、金属塩、増粘剤、色剤、防腐剤、各種安定剤を適宜使用することができる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤といった公知の界面活性剤を使用することができ、具体的には、p−ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシリン酸二ナトリウム等のアニオン界面活性剤や、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド等のカチオン界面活性剤や、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル等のノニオン界面活性剤や、ラウリルジメチルペタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらの一種を単独で、または、二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
金属塩としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などの金属塩が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、各種ガム類やペクチン、アルギン酸ソーダ、デキストリン、寒天、ゼラチン等の天然高分子増粘剤が挙げられる。
【0020】
(2.製造方法)
(2−1.製造装置)
次に、本発明の一実施形態にかかる繊維の製造装置を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる繊維の製造装置の概略を示す斜視図、図2は図1の概略断面図である。
図1および図2において、繊維の製造装置は静電紡糸装置であって、ポリグルタミン酸を収納した溶解液浸漬槽10の中に電圧印加ロール20が設置されている。
電圧印加ロール20は溶解液浸漬槽10の中で回転可能に支持され、少なくとも周面部は金属製である。溶解液浸漬槽10には高電圧発生装置21が接続されており、高電圧発生装置21の電源21から電圧が加えられ、ポリグルタミン酸溶液はプラスに帯電し、電圧印加ロール20で電荷が集中するようになっている。電圧印加ロール20は図示しない回転駆動機構と連結されている。
【0021】
電圧印加ロール20と対向する位置に集積コンベア30が集積面30Aを電圧印加ロール20側に向けて配置されている。また、集積コンベア30を挟んで電圧印加ロール20と対向する位置には金属製ブロック31が配置され、この金属製ブロック31は高電圧発生装置21に接続され、マイナスに帯電している。
集積コンベア30は導電性のある素材、例えば、アルミニウム等から形成された帯状部材、または金属製ブロック31の導電性を妨げない紙もしくは合成繊維から成る不織布であり、図示しない繰り出しロールから繰り出されるとともに図示しない巻き取りロールで巻き取られる構成である。
金属製ブロック31の集積コンベア30の流れ方向の前後にはガイドロール32がそれぞれ配置されている。
電圧印加ロール20と集積コンベア30の集積面30Aとの距離は、溶媒が気化するように、糸の堆積状態をみながら自由に選択すればよく、特に限定するものではない。印加電圧は、溶液の性状、堆積量によって変えればよく、電圧が高いほど多量の繊維が得やすい。従って、電圧印加ロール20と金属製ブロック31が電極となって、その間に静電場が形成され、電圧印加ロール20に付着した液体表面に電荷が蓄積され、液体の表面張力以上に電荷が高まると、電圧印加ロール20の表面から金属製ブロック31に向かって糸状に引き出され、集積面30Aに堆積する。
【0022】
(2−2.製造方法)
次に、繊維の製造方法について説明する。本実施形態の繊維の製造方法は図1および図2で示される静電紡糸装置を用いた静電紡糸法(エレクトロスピニング法)である。
まず、溶解液浸漬槽10の内部にポリグルタミン酸溶液を収納しておき、集積コンベア30を駆動する。集積コンベア30には高電圧発生装置21に接続された金属製ブロック31が近接配置されているため、この状態で、高電圧をかけると、溶液表面に電荷が誘発、蓄積される。この静電引力はポリグルタミン酸溶液の表面張力に対抗する。電場力が臨界値を超えると、静電引力が表面張力を超え、荷電した溶液のジェットが噴射される。噴射されたジェットは体積に対して表面積が大きいため、溶媒が効率よく蒸発し、また体積の減少により電荷密度が高くなるため、さらに細いジェットになる。溶液のジェット噴射により金属製ブロック31側に自発的に牽引されることで紡糸がなされる。
紡糸されたポリグルタミン酸の繊維は集積コンベア30の集積面30Aに堆積されるが、集積コンベア30は巻き取られるため、集積面30Aに堆積されたポリグルタミン酸の繊維はコンベアの長さ方向に亘って所定厚さとなる。集積されたポリグルタミン酸の繊維は繊維集合体となり、図示しない装置によって集積コンベア30から剥離される。
【0023】
(2−3.架橋方法)
静電紡糸法によって得られた繊維集合体は、熱架橋、電子線架橋、紫外線架橋、放射線架橋、グルタルアルデヒド架橋などの従来公知の架橋処理を実施することができる。架橋剤を用いることで処理を確実に行えるが、残留成分などの人体への影響を考慮すると、創傷被覆材としては電子線架橋がポリグルタミン酸のゲル化処理にも一般に用いられており、好ましい。
このようにして、繊維架橋体を得ることができる。
【0024】
(3.実施形態の効果)
したがって、本実施形態によれば次の作用効果を奏することができる。
(1)ポリグルタミン酸は保水性が高いので浸出液を保持することができる。特に、本実施形態では、分子量20万以上のポリグルタミン酸を用いたので、極細繊維を紡糸することができた。
したがって、創傷被覆材として湿潤性が高まることにより、傷を早く治すことができるとともに、傷跡も残らずきれいに治すことができる。
【0025】
(2)本実施形態のポリグルタミン酸架橋体を構成する繊維は、径寸法が3μm以下であるので、繊維の表面積が広く、傷口への密着性が高い。したがって、傷口の治癒効果が非常に高い。
また、このような極細の繊維が積層されてなる繊維集合体は、その繊維間に多量の体液を吸収膨潤することができるので、吸水性および保水性に優れている。すなわち、封止効果に優れている。
【0026】
(3)本実施形態では、ポリグルタミン酸架橋体を形成する繊維を静電紡糸法により紡糸した。静電紡糸法によると、電荷の高まりが糸の細化を促進し、細化に伴い溶媒の揮散が進むため、極細繊維を得ることができる。したがって、前述の効果を奏することのできる繊維および繊維集合体を製造することができる。
【0027】
(4.実施形態の変形例)
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、静電紡糸装置の静電場は、電圧印加ロール20と金属製ブロック31とで一対の電極を形成しているが、本発明ではこれを増やして、複数の電極間、溶解液浸漬槽で形成するものでもよい。この場合、複数の電圧印加ロール20は、異なる電圧値であってもよい。
また、前記実施形態では、ロール式の静電紡糸装置を使用したが、ノズル式の静電紡糸装置を用いてもよい。
さらに、極細繊維が得られるのであれば、他の紡糸方法であってもよい。例えば、湿式紡糸、メルトブロー、フラッシュ紡糸などの方法が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例により確認する。なお、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
ポリグルタミン酸として、分子量150万の和光純薬工業株式会社製ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム(平均分子量150万〜250万)を使用した。
なお、分子量の測定は、ポリグルタミン酸5mlを水1mlに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフ測定(島津製作所製「LC−10ADvpシステム」、カラム:昭和電工製「SHODEX ASAHIPAK GS−710+GS−310 7G」、室温、移動相:(50mmol/lリン酸緩衝液)+(0.3mol/lNaCl水溶液)、0.7ml/min、検出器:示差屈折率検出器)により行った。
【0030】
水/エタノール/ポリグルタミン酸=60質量%/25質量%/15質量%の配合比で混合し、攪拌溶解した。
この溶液を、エレクトロスピニング装置(エルマルコ社製、製品名「NS−LAB200S」)を用い、電圧65〜78kV、電極間距離100〜110mm、電荷ロール8〜4rpmで紡糸した。ライン速度4〜10cm/分で、ポリプロピレン製不織布に繰り返し堆積させ、正味目付け1.0g/mの繊維集合体を得た。
得られた繊維集合体を、気密性のあるナイロンフィルム袋(旭化成パックス(株)製、商品名「飛竜(登録商標)N−9」、延伸ナイロン15μm/ポリエチレン60μmの積層体)に入れ、密閉した(特開2005−314489参照)。
これを、コッククロフトウォルトン型電子線照射装置にて、照射距離10cm、2.0kGy/secにて照射合計量が140kGyになるように照射した。
この照射物を、サンユー電子社製「SC−701 GUICKCOATER」で金蒸着し、キーエンス社製の3Dリアルサーフェイスビュー顕微鏡「VE−8800」にて繊維径を観察した。図3に実施例1の繊維集合体の拡大写真を示す。
【0031】
[比較例1]
J&J社製の「傷パワーパット」(商品名)を用いた。
【0032】
[比較例2]
白十字社製のガーゼ(商品名「大学ガーゼ」)を用いた。
【0033】
<評価>
上記の実施例1および比較例1,2で得られたサンプルを用いて、湿潤療法適性とフィット感について評価を行った。
【0034】
[湿潤療法適性]
湿潤療法用素材としての適性は、吸水性と保水性があることで評価される。
吸水性は、5cm角のシートを水に10分間浸し、引き上げたあとの自重に対する重量増加率を測定した。
【0035】
保水性は、水に浸した上記シート23℃50RHの環境下に放置し、24時間後に乾燥状態を目視により判定した。判定内容は以下の通りである。
○:寒天状となり、保水性がある。
×:乾燥した。
【0036】
[フィット感の評価]
凹凸表面状の生肉の上にサンプルを載せ、シートの密着状態および血のにじみがあるかを目視により評価した。
以上より得られた結果を以下の表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1は、比較例1および2と比較しても、吸水性に優れていることがわかる。また、水分を吸収して寒天状になることから、水分を蒸発させにくく、保水性にも優れている。さらに、フィット感も良好で、創傷被覆材として適している。
比較例1および2は、吸水性が悪く、吸水後もすぐに乾燥してしまい、保水性が劣っている。また、比較例1は隙間があるためにフィット感が良好でない。比較例2はにじみがあるためにフィット感が良好でない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、絆創膏ガーゼ、手術用の止血ガーゼ、火傷、凍傷、潰瘍、新鮮外傷などに用いる創傷被覆材、さらには、癒着防止シートなどの医療材料に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態にかかる繊維の製造方法に用いられる製造装置の概略を示す斜視図。
【図2】図1の断面図。
【図3】実施例1で製造した繊維集合体の拡大写真。
【符号の説明】
【0041】
10…溶解液浸漬槽
20…電圧印加ロール
30…集積コンベア
30A…集積面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグルタミン酸架橋体を含有するシートを用いた
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷被覆材において、
前記シートは、前記ポリグルタミン酸架橋体を10質量%以上100質量%以下の割合で含有する
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の創傷被覆材において、
前記ポリグルタミン酸架橋体は、ポリグルタミン酸を原料として用いた繊維が架橋されてなるものである
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項4】
請求項3に記載の創傷被覆材において、
前記繊維は、繊維集合体を構成している
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の創傷被覆材において、
前記繊維は、静電紡糸法により紡糸された
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載の創傷被覆材において、
前記繊維の径寸法は、0.01μm以上3μm以下である
ことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項7】
請求項6に記載の創傷被覆材において、
前記繊維の径寸法は、0.05μm以上1.8μm以下である
ことを特徴とする創傷被覆材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−89837(P2009−89837A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262310(P2007−262310)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】