説明

加圧サンプルのX線分析のための可動透過性障壁

サンプルを分析するために、X線、中性子線、ガンマ線、または粒子ビーム放射を使用して、分析エンジンの放射境界面にサンプルを呈示する技法が開示される。保護障壁は、放射に対して透過性であり、かつサンプルをエンジンから分離し、障壁移動システムを使用して、放射境界面に対して可動である。一実施形態の障壁は、サンプルが配置される空洞にわたって可動であり、空洞にわたって膜のほぼ連続的な供給を提供および回収するリールシステムで可動である膜である。空洞は、サンプルが通って可動であるサンプル経路の一部を形成することが可能である。サンプル経路が加圧される場合、膜は、分析エンジンによるサンプルの分析中に圧力を維持する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願と同じ譲受人に譲渡されている以下の出願の主題に関する主題を包含する。以下に列挙される出願は、その全てが参照によって完全に本明細書に組み込まれている。
【0002】
「XRF SYSTEM INCLUDING FOCUSING OPTIC ON EXCITATION SIDE AND MONOCHROMATIC COLLECTION」、チェン(Chen)ら、米国特許出願第60/299,371号、2001年6月19日出願(代理人整理番号0444.042)
「X-RAY TUBE AND METHOD AND APPARATUS FOR ANALYZING FLUID STREAMS USING X-RAYS」、ラッドリー(Radley)ら、米国特許出願第60/336,584号、2001年12月4日出願(代理人整理番号0444.045P)
[A METHOD AND APPARATUS FOR DIRECTING X-RAYS]、ラッドリーら、米国特許出願第60/383,990号、2002年5月29日出願(代理人整理番号0444.055P)
「X-RAY SOURCE ASSEMBLY HAVING ENHANCHED OUTPUT STABILITY」、ラッドリーら、米国特許出願第60/398,965号、2002年7月26日出願(代理人整理番号0444.056P)
「METHOD AND DEVICE FOR COOLING AND ELECTRICALLY INSULATING A HIGH-VOLTAGE, HEAT-GENERATING COMPONENT」、ラッドリー、米国特許出願第60/398,968号、2002年6月26日出願(代理人整理番号0444.057P)
「AN ELECTRICAL CONNECTOR, A CABLE SLEEVE, AND A METHOD FOR FABRICATING AN ELECTRICAL CONNECTION」、ラッドリー、米国特許出願第10/206,531号、2002年7月26日出願(代理人整理番号0444.058)
「DIAGNOSING SYSTEM FOR AN X-RAY SOURCE ASSEMBLY」、ラッドリーら、米国特許出願第60/398,966号、2002年7月26日出願(代理人整理番号0444.065P)
「MOVEABLE TRANSPARENT BARRIER FOR X-RAY ANALYSIS OF A PRESSURIZED SAMPLE」、ギャラガー(Gallagher)、米国特許出願第60/479,035号、2003年6月17日出願(代理人整理番号0444.069P)
【0003】
本発明は、一般的には、サンプル材料のX線分析に使用される装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、X線源/検出器アセンブリとサンプル材料との間において可動保護X線透過性障壁を提供する。
【背景技術】
【0004】
上記の組み込まれている米国特許出願において解説されているように、X線分析方法は、20世紀および21世紀の科学および技術における最も重要な開発のいくつかを提供する。X線蛍光、X線回折、X線分光法、X線撮像、および他のX線分析技法を使用することにより、ほぼすべての科学分野において知識が甚大に増大した。
【0005】
X線蛍光(XRF)は、たとえばある成分の存在を判定するために、物質がX線のビームに暴露される分析技法である。XRFでは、X線に暴露された物質の化学成分の少なくともいくらかは、X線光子を吸収して、特徴的な2次蛍光を生成することができる。これらの2次X線は、物質の化学成分の特性である。適切な検出および分析の際に、これらの2次X線は、化学成分の1つまたは複数を特徴付けるために使用することができる。XRF技法は、とりわけ、医療分析、半導体チップ評価、および法医学を含めて、多くの化学および材料科学の分野において広範な応用分野を有する。
【0006】
そのような測定技法の1つの新興応用分野は、燃料の硫黄の検出である。輸送燃料の硫黄は、SO2またはSO3として放出され、通常、大気において硫酸を形成し、いくらかは、硫酸アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムを形成する。これらの硫黄化合物は、PM2.5汚染の主な原因となる。人に基づく他の硫黄源が存在するが、輸送燃料が主な原因であった。ニューヨーク市では、大気汚染の硫黄の半分以上が、輸送源による。燃料の硫黄は触媒コンバータ(converters)を汚染し、燃料の硫黄レベルを低減することにより、輸送源からの他の汚染物質も低減される。これらの問題に対処するために、米国環境保護局(EPA)は、2006年までに道路上のディーゼル燃料の硫黄を500ppmの現行レベルから15ppmに低減することを最近規定した。EPAは、この規則により、米国において8000を超える早死に、ならびに数万症例の気管支炎および喘息を1年で防止することになると推定する。欧州および日本は、ほぼ同期間において同様の変化を示している。
【0007】
石油産業は、高速道路燃料から硫黄を除去する能力を実証している。しかし、燃料の生産および分配の制御には、処理および分配中の燃料の硫黄レベルをオンライン測定する堅牢な方法がないために、問題がある。15ppmの規定レベルを満たすために、約7〜8ppmが、輸送中の汚染を相殺するために、精油所において測定されなければならない。良好な統計制御を達成して、平均より低い硫黄レベルで供給原料を監視するために、検出の限界は、1ppm未満であることを必要とする可能性がある。
【0008】
XRF技法は、この応用分野(application)について使用することができる(上記において、および上記の組み込まれた出願にわたって解説されたように)。基本的な技法は、燃料サンプルをX線で励起して、放出される蛍光を調査することを含む。各元素は、固有のスペクトルサインを放出する。次いで、検出器は、放出されたX線の波長を測定し、ソフトウエアは、この測定スペクトルをサンプルの硫黄の加重組成にすることができる。
【0009】
XRF流体試験は、オフラインで、すなわち、サンプルを分析するためにベンチトップ実験室タイプの機器を使用して、行うことができる。材料は、その源から除去され(たとえば、燃料では、精油所または輸送パイプラインから)、次いで、サンプル室に配置される。オフライン機器は、あらゆる例外的な動作/圧力/環境/サイズ/重量/空間/安全上の制約を満たす必要はなく、単に、手動配置サンプルに必要な測定精度を提供すればよい。さらに、オフライン機器は、測定間において容易に保全することができる。
【0010】
オンライン分析は、製造プロセスの様々な時点においてサンプル組成を「実時間」測定する可能性を提供する。たとえば、すべての燃料産物は、パイプラインにおける燃料の精製および輸送中にオンライン監視の様々な変形形態を必要とする、上で解説されたEPA規則に支配される。しかし、精油所およびパイプラインにおける燃料のオンラン分析は、オフライン実験室の設定では一般に存在しない多くの動作事項を考慮することが必要である。手作業による介在または保全がほとんどまたは全くない、完全自動燃料サンプル取扱いシステムが必要である。また、流体は、通常、パイプラインにおいて加圧下にあるので、あらゆるサンプル取扱いシステムは、圧力差を相殺しなければならない。これは、特に重要であるが、その理由は、XRFX線「エンジン」のある部分(以下においてさらに解説される)は、真空において動作することがあるからである。また、機器の電子機器は、サンプル取扱いシステムとは別の防爆性ハウジングにおいて実装されることを必要とする。
【0011】
したがって、この応用分野では、最も重要な成分の構成要素の1つは、X線の光子が流体の硫黄原子を励起して、原子から放出される光子がエンジンの検出器において数えられ、一方、X線エンジンの真空または雰囲気、ならびに流体の圧力を維持するサンプル障壁である。本発明の発明者は、X線刺激が、時間の経過に伴いこの境界面において、および、あるタイプの障壁材料上において、硫黄のイオン化および吸着(望ましくない硫黄残留物および障壁のX線透過性の低下をもたらす)を創出することを発見した。より一般的には、多くのXRF応用分野は、サンプル材料および/または測定環境による任意の数の有害な境界面効果からエンジンを保護するために、障壁を必要とする。
【0012】
したがって、オンラインシステムのあらゆる障壁システムは、ある基準を満たすべきである:透過性−すなわち、X線吸収が最少量であるX線の透過;強度−障壁は、たとえばパイプラインにおける連続流からの20〜100psi(137895〜689476パスカル)以上の流体サンプル圧力を支持するように十分強くなければならない;最後に汚染−この技法は、サンプル材料および/または測定環境からの障壁の汚染に対処しなければならない。
【0013】
いくつかの文献に上述のような従来の技術に関連した技術内容が開示されている(例えば、特許文献1〜10参照)。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,317,483号明細書
【特許文献2】米国特許第6,285,506号明細書
【特許文献3】米国特許第5,747,821号明細書
【特許文献4】米国特許第5,745,547号明細書
【特許文献5】米国特許第5,604,353号明細書
【特許文献6】米国特許第5,570,408号明細書
【特許文献7】米国特許第5,553,105号明細書
【特許文献8】米国特許第5,497,008号明細書
【特許文献9】米国特許第5,192,869号明細書
【特許文献10】米国特許第5,175,755号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、有害なサンプルおよび環境効果からX線エンジンを保護し、一方、精密な測定のために境界面からサンプルへの一体性および透過性を維持する、オンラインX線分析システムのための障壁技法および装置が必要である。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、加圧サンプルのX線分析のための可動透過性障壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、これらの問題に共に対処する方法および装置を含めて、技法を提供する。サンプルを分析するために、X線、中性子線、ガンマ線、または粒子ビーム放射を使用して、分析エンジンの放射境界面にサンプルを呈示させる技法が開示される。放射に対して透過性であり、かつサンプルをエンジンから分離する障壁は、障壁移動システムを使用して、放射境界面に対して可動である。一実施形態の障壁は、サンプルが配置される空洞にわたって可動であり、また、空洞にわたって膜のほぼ連続的な供給を提供および回収する(retreive)リールシステムで可動な膜である。
【0018】
空洞は、サンプルが通って可動であるサンプル経路の一部を形成することが可能である。サンプル経路が加圧される場合、膜は、分析エンジンによるサンプルの分析中に圧力を維持する。
【0019】
上で解説されたように、サンプルが液体であるとき、サンプル経路は、液体が通って流れる加圧パイプラインの少なくとも一部を備え、分析エンジンは、流体が流れている間、流体の組成分析を実施する。一実施形態では、サンプル空洞が中へ形成される表面を有するサンプル室アセンブリが提供されることが可能であり、プレートが、サンプル空洞内外への放射の通過を可能にする開口を有するサンプル空洞に対向する。膜は、サンプル室の表面とプレートとの間に配置され、サンプル室は、膜に対する圧力を増減するように、プレートに対して可動である。装置は、膜が移動しているとき、oリングに対して一貫した圧力を加えるように、ばねまたは他の加圧デバイスを備えることが可能であり、プレートは、プレートと膜との間の摩擦を低減するために、コーティングを備えることが可能であり、サンプル空洞は、背景散乱を低減するようにサイズ決めされることが可能である。
【0020】
本発明のこれらおよび他の実施形態ならびに態様は、添付の図面、以下の記述、および添付の請求項を考慮することでより明らかになるであろう。
【0021】
本発明に関する主題は、本明細書の結論部分において具体的に指摘され、明瞭に主張される。しかし、本発明は、実施の構成および方法の両方、ならびに他の主題および利点に関して、好適実施形態の以下の詳細な記述および添付の図面を参照することによって、最適に理解されることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、物質の特性を判定するために検出および分析することができる蛍光放射を生成するために、物質をX線放射に暴露させるために使用される代表的なシステム10の概略的なブロック図である。このシステムは、通常、X線源12、第1X線集束デバイス14、サンプル励起室16、第2X線集束デバイス18、およびX線検出器20を含む。X線源12は、たとえばX線管であり、X線のビーム22を生成する。X線は、本明細書にわたって使用されるが、本発明は、中性子、粒子ビーム、またはガンマ線の放射に適用される。X線ビーム22は、通常、発散ビームであるので、ビーム22は、1つまたは複数のX線集束デバイス14によって回折または集束される。X線集束デバイス14は、1つまたは複数の両面湾曲結晶であり、たとえば、開示が参照によって本明細書に組み込まれている、係属中の米国特許出願第09/667966号、2000年9月22日出願(代理人整理番号0444.035)において開示されている結晶など、本質的に平行な原子面を有する両面湾曲結晶である。X線集束デバイスは、1つまたは複数の毛細管タイプのX線光学機器、あるいは湾曲結晶光学機器または多層光学機器とすることが可能であり、たとえば、光学機器の1つが開示されており(たとえば、特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10参照)、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。X線集束デバイスは、サンプル励起室16に向けられる集束ビーム24を生成する。
【0023】
励起室16において試験されているサンプルは、特性が所望される任意の望ましい物質とすることが可能である。サンプルが静止している場合(たとえば、オフラインシステムにおいて)、サンプルは、たとえばX線反射平坦表面または光反射表面など、比較的平坦な表面上に通常ある。サンプルは、固体、液体、または気体である場合、たとえばX線ビームが通過することができるX線透過性開口を有する封止容器などの閉鎖容器または室において包含されることも可能である。サンプルは、粒子状の固体(たとえば、粉末)、液体、または気体とすることも可能であり、室において、または室において加圧下で移動する、あるいは室内においてある他の潜在的な破壊力または効果を及ぼす。ビーム24によって照射されるとき、室16のサンプルの成分の少なくとも1つは、通常、成分のX線が蛍光を発する、すなわち、X線24による励起により2次X線源26を生成するように励起される。再び、X線ビーム26は、通常、X線の発散ビームであるので、ビーム26は、X線検出器20に向けられるX線の集束ビーム28を生成するように、たとえばデバイス14と同様のデバイスなど、2次X線集束デバイス18によって集束される。当業者には、本発明のこの態様および他の態様は、X線蛍光の応用分野に関して記述されるが、X線回折、粒子ビーム、中性子、またはガンマ線の応用分野において使用されることも可能であることが明らかになるであろう。
【0024】
X線検出器20は、比例計数管タイプまたは半導体タイプのX線検出器とすることが可能である。通常、X線検出器20は、電気信号30を生成し、これは、分析、プリントアウト、または他の表示のために分析装置32に送られる検出X線の少なくともある特性を包含する。
【0025】
図2は、上記で組み込まれている、係属中の米国特許出願第60/336,584号、2001年12月4日出願(代理人整理番号0444.045P)、名称「X-RAY TUBE AND METHOD AND APPARATUS FOR ANALYZING FLUID STREAMS USING X-RAYS」、ラッドリー(Radley)ら、によるX線蛍光アセンブリ110を示す。これは、燃料分析システムの硫黄の例であり、上記で組み込まれている、係属中の米国特許出願第60/299,371号、2001年6月19日出願(代理人整理番号0444.042)、名称「XRF SYSTEM INCLUDING FOCUSING OPTIC ON EXCITATION SIDE AND MONOCHROMATIC COLLECTION」、チェン(Chen)ら、に記述されているような、単色X線励起および収集の原理をやはり使用する(たとえば、特許文献13参照)。X線蛍光アセンブリ110(ハウジングが取り除かれて示されている)は、X線源アセンブリ112、従来のサンプル励起室アセンブリ116、およびX線検出器アセンブリ120を備える。湾曲結晶集束光学機器114は、収集経路の他の湾曲結晶集束光学機器118と共に、励起経路において示されている。図1に示されるシステム10と同様の方式で、X線源アセンブリ112は、X線ビーム122を生成し、これは、励起室アセンブリ116において試験されているサンプル上において集束ビーム124を生成するように、X線集束光学機器114によって集束される。サンプル励起室アセンブリ116においてサンプルのX線照射によって創出されるX線蛍光は、X線蛍光ビーム126を生成する。ビーム126はX線集束デバイス118によって集束され、X線検出器アセンブリ120に向けられる集束X線ビーム128を提供する。源アセンブリ112、ホルダアセンブリ116、および検出器アセンブリは、それぞれ、各アセンブリをハウジング(図示せず)に取り付けるために、それぞれ、取付けフランジ113、117および121を含む。
【0026】
より高い濃度レベルでは、XRFは、硫黄が30〜100ppmより高い濃度にある場合に燃料の硫黄を測定することを含めて、異なる機器の手法に応じて組成を測定する有用な技法とすることができる。しかし、入射X線のある程度は散乱して、不可避な背景を生成する。したがって、従来のXRFは、燃料の硫黄量の追跡に使用されるために、ある改良を必要とする。これらの従来のXRF方法では(再び、たとえば、D2622方法)、サンプルの励起は、多色X線を使用して実施される。とりわけ、多色X線励起の使用は、多色励起に固有のエラーを補正するために、少なくとも2つのX線波長の使用を必要とする。X線集束および単色化デバイス114による励起は、単色X線を生成する。単色励起の使用により、多色励起を使用するときに通常必要である検出エラーを補正する必要が回避される。たとえば、制動放射照明がないので、背景放射レベルは低減される。その結果、そのようなシステムは、多色励起を使用する従来の技術の方法より高い信号対雑音比を提供する。
【0027】
エネルギー分散XRF(EDXRF)は、波長感応検出器を使用する。これらの検出器は、入射X線の波長を判定することができる。しかし、検出器は、十分な分解能を有するために、液体窒素によっていくらか冷却されなければならない。波長分散XRF(WDXRF)は、通常平坦または片側湾曲(singly curved)である収集モノクロメータ118を使用する。モノクロメータは、単一波長を収集し、通過させる。したがって、検出器は、X線カウンタであればよい。検出器は、モノクロメータによって実施される波長の区別をする必要はない。WDXRFは、サンプルの元素が、EDXRFの分解能が分離するのに十分ではないほど近接した特徴的な線を有する場合、有用である。これは、硫黄の特徴的な線を妨害する鉛など、他の元素が燃料に存在する場合とすることができる。
【0028】
たとえばD2622方法においてなど、従来の技術のXRF検出方法では、サンプルの励起経路および検出経路は、たとえばヘリウム雰囲気においてなど、不活性気体雰囲気において維持される。しかし、特に遠隔位置における不活性気体の入手可能性により、これらの従来の技術のプロセスの実施は不都合になる。対照的に、本発明ではサンプルの励起経路および検出経路は、真空下において維持されることが可能であり、不活性気体は必要ではない。たとえば、図2に示されるシステム110の放射経路は、たとえば少なくとも約15トル(2000パスカル)など、真空下において保持されることが可能である。真空は、移動部分を有さないベンチュリポンプによって提供することができる。しかし、必要で、入手可能なら、たとえば加圧下において、窒素またはヘリウムなどの不活性気体をハウジングに導入して維持することができる。
【0029】
X線エンジンを封入する真空の使用(たとえば、源、励起経路、収集経路、および検出器)により、サンプル境界面において(ビーム124および126のそれぞれの焦点において)ある問題が生じる。図2において、サンプル室116に対するエンジンの境界面は、直接的には示されていないが、強く、かつ必要なX線透過性を有するベリリウム(または他の材料)のウィンドウからなることが可能である。しかし、サンプル室およびその動作環境が、特にオンラインシステムにおいて、上で解説されたある動作困難を呈示するとき、透過性の追加レベルが必要である。
【0030】
本発明によれば、図3〜5を参照すると(同じ符号が同じ要素を指すために使用される)、改良されたサンプル取扱い装置210が示されており、オンラインシステムのある有害な条件特性に対処するように具体的に適合されている。装置は、加圧下においてシステム中を移動し、測定を必要とするたとえば粒子、液体、または気体などのための入力222および出力224のサンプルポートを有するサンプル室220を含む。装置は、供給リール242および取上げリール244の回りに巻かれた可動障壁膜240を含む。膜は、以下でさらに解説されるように、室220の底面(入力ポートおよび出力ポートと流体連絡する)において空洞のサンプル開口を通り過ぎて延び、以上で解説されたようにサンプル室とX線エンジン110との間においてX線透過性障壁を提供する。したがって、改良されたサンプル取扱い装置は、上で解説された装置の従来のサンプル室116と置き換わるように設計される。障壁は、サンプルが引き出される(たとえば、加圧されて)元である環境との共存可能性を維持し、一方、X線エンジンの一体性、可能であれば真空下においてそれ自体を維持する。
【0031】
示される実施形態では、取上げリールは、室の底面においてサンプル開口を通り過ぎて膜を移動させるように、遠隔制御モータ250によって駆動することができる。トリガホイール252および光電気センサ254は、コンピュータネットワーク(図示せず)への標準的な接続を使用して、遠隔的に移動量を感知および報告するために使用することができる。この例示的な実施形態では、障壁の移動は、サンプル測定中の連続移動としては考慮されず、むしろ、X線エンジン110およびサンプル取扱い装置の両方の動作環境を維持しながら、有害条件によって磨耗された障壁の領域を部分的または完全に「リフレッシュする」または「置き換える」ために考慮される。
【0032】
図6および7の断面図を参照すると(同じ参照符号が、同じ構成要素を指すために使用され、図6Bは、以下でさらに解説される本発明のある改善された実施形態を開示する)、供給リール242は、ガイドローラ248およびサンプルウィンドウプレート260の上面262に沿って延びる障壁膜の供給源である(プレート260の底面264は、上で解説されたX線エンジンに面する)。膜は、張力下において、上面262の全長に沿って、サンプル室220の下において、第2ガイドローラ246に向かって、取上げリール244まで延びる。膜は、ガイドローラ246および248の構成を使用して経路にわたる適切な張力、取上げリール244に対する適切な圧力、およびたとえばスリップクラッチ(図示せず)などによって供給リール242に課される抵抗圧力において維持される。
【0033】
膜240の障壁効果を必要とする最も重要な領域は、放射境界面270である。これは、入射X線エネルギー272が室220のサンプルの小さいスポットに向けて集束される領域であり、この領域から、蛍光274が捕獲される。この場合、小さい供給スルー開口266は、励起および蛍光放射が室220を通過するのを可能にするように、プレート260を通って形成される。この開口は、一実施形態では直径が約2mmであり、競合する設計概念の影響を受ける。測定に使用される放射エネルギーの流れを容易にするために、より大きな直径が好ましいが、サンプルの圧力を維持するために、はるかにより小さい直径が好ましい。開口は、X線エンジンのベリリウムウィンドウ(図示せず)に対してより緊密な境界面を可能にするプレート262の底部の中へ形成されるより大きい凹み268内にある。
【0034】
サンプルは、室220内において底面221に向けられる。底面において、サンプル空洞226は、入力ポート222および出力ポート224と流体連絡して形成され、かつプレートの開口266とも位置合わせされる。この空洞は、プレートの開口266を通してX線エネルギーに暴露される領域を形成する。これは、障壁膜が必要とされる重要な点である。空洞は、室を通るサンプル経路の一部であり、したがって、オンライン環境における共存可能性のために、たとえば20〜100psi(138795〜689476パスカル)以上など、サンプルと同じ圧力に維持されるべきである。X線エンジンの真空環境は、この圧力に対応することができず、また、エンジンと装置210との間の小さい空気境界面270に対応することもできない。したがって、本発明によれば、サンプル空洞226の底部は、膜240によって完全に覆われ、膜240は、プレート260の上面262と室220の底面221との間において本質的に「スクイーズ」される。
【0035】
したがって、障壁膜は、X線エンジンとサンプル空洞226との間において、X線透過性境界を提供する。サンプル空洞は、精油所またはパイプラインの応用分野において加圧下にあることが可能であり、または、この境界面を腐食する傾向がある苛性(caustic)材料または腐食性(corrosive)材料(粒子状物質など)に単に対処することが可能である。また、上で解説されたように、X線に長期間暴露することにより、あらゆるウィンドウ上において硫黄が吸着され、ウィンドウのX線透過性を低下させる残留物を残す可能性がある。
【0036】
したがって、本発明の他の態様によれば、障壁膜は、空洞226と開口266との間に(移動前に)配置された部分を部分的または完全にリフレッシュするように可動である。この完全または部分リフレッシュにより、「清浄」で、したがって完全にX線透過性である膜の部分が、この臨界境界面において磨耗部分と置き換わることが可能になる。この移動は、上で解説されたリール/モータシステムを使用して実施される。
【0037】
この障壁膜移動は、サンプル測定中に行われることは一般には考慮されないが、それにもかかわらず、サンプルが加圧下において空洞に残留している間、またはサンプルの圧力が軽減されるとき(可能であれば制御可能空圧バルブを遠隔的に使用して)、行われることが可能である。本発明によれば、連続溝228は、空洞226の回りの室の底面221において形成されることが可能である。この溝は、圧力を解放し、また再び加えることができる元であるoリング280またはある他のタイプの弾性材料を保持するようにサイズ決めされ、サンプル室全体は、装置210において可動式に取り付けることができる。oリングは、ヴァイトン(Viton)などの任意の適切な材料で形成することができる。室220全体は、oリングに圧力を加え、また圧力を軽減するように、ねじ込み式ピストン/ばねアセンブリ229を使用して垂直に上下に移動することが可能である。上で解説されたモータおよびセンサの場合のように、この移動は、遠隔的に制御されることも可能である。サンプル測定中(しかし、障壁膜移動中ではない)、ばねを使用して、完全下方圧力を室220に加え、oリングを圧縮し、空洞226の圧力に対抗する最大圧力を維持し、また空洞226と開口266との間の適切な動作位置において膜240をスクイーズして、保持することができる。この圧力を維持することにより、サンプルがシステムの中に不必要に漏れることが防止される。
【0038】
障壁膜の移動が望ましいとき(たとえば、スケジュールされた間隔において、または測定が腐食または残留物の可能性を示唆するとき)、サンプル室220は、わずかに上方に移動されて、障壁膜が、モータおよび取上げリール244に関して適切な距離移動することが可能であるように、oリングに対する十分な圧力を解放することができる。ある応用分野では、サンプルの圧力は、この膜移動を容易にするように、遠隔的に解放されることが可能であり、すべてではないにしても、ほとんどの下方圧力をoリングから除去することができる。代替方法として、サンプルの圧力が維持されなければならない応用分野では、oリングは、空洞226において必要な圧力下においてサンプルを維持し、一方、膜の移動を依然として可能にするのに必要であるどのような圧力においても維持される。
【0039】
図8は、アセンブリの底面図であり、プレート260の凹み268および開口266を示す。
【0040】
図9は、上で解説された移動経路に沿って構成される本発明の可動障壁膜のみの等角図である。一実施形態では、可動膜は、カプトン(Kapton)で形成され、カプトンは、この応用分野に必要なX線透過性、柔軟性、および張力強度(ならびに、上で解説された燃料応用分野では燃料に対する弾性)を提供する。マイラ(mylar)など、他のタイプの膜が可能である。
【0041】
境界面270における空間バジェットは、空洞におけるサンプルの有効なX線励起および収集を見込み、一方、エンジンにおける適切な真空または雰囲気、およびサンプルの圧力、ならびにX線の透過性をも維持するように、慎重に制御されなければならない。したがって、プレート260は、エンジンのベリリウムウィンドウ(たとえば、12.5ミクロン)および障壁膜(たとえば、7.5ミクロン)のように、強いがある程度薄くある(たとえば、0.080インチ(0.2032センチ))べきである。エンジンのウィンドウとサンプル取扱い装置との間の空間は、2mm未満とすることが可能である。この空間バジェットは、励起および収集の焦点、ならびに加圧下においてそれぞれの環境を維持するのに必要な構造および材料質量の量の慎重な考慮を伴う。
【0042】
本発明は、上で解説された組合わせ励起/収集ウィンドウ、または複数のそのようなウィンドウに適用されることが理解されるであろう。また、サンプルのX線境界面と障壁との間のあらゆる相対運動は、そうでない場合は静止している膜の新しい部分の中に移動する開口を含めて、本発明によって包含される。
【0043】
本発明は、オンライン遠隔制御機器について上記で述べられた目的を達成する:透過性、これにより、最少量のX線吸収でX線を透過させることが可能になる;強度、障壁材料は、たとえばパイプラインの連続流から20〜100psi(138795〜689476パスカル)以上の流体サンプル圧力を支持するように十分強い;最後に、汚染制御、サンプルのX線境界面に対する障壁の運動は、サンプル材料および/または測定環境からの障壁の潜在的な周期的汚染に対処する。
【0044】
本発明のある改善された実施形態が、図6Bを参照してここで記述される(同じ符号が、図6Aからの同じ要素を指すために使用される)。上で解説されたリフレッシュサイクル中にこのプレートを横断して障壁が移動するのを容易にするために、プレート260の表面262上において減摩コーティングを使用することができる。空洞226は、壁から蛍光を発するあらゆる背景放射を低減するようにサイズ決めすることができ、たとえば、図示されたサイズより大きくサイズ決めすることができる。他の実施形態では、oリング280および障壁240に対して、一定で予測可能な下方圧力を確立するために、コイルばね330(または、たとえばリーフばね、空気圧、水圧、フォームなど、同様の加圧技法)を追加することができる。ガイド320によって保持されるばね330は、装置210の外部(静止)本体に固定される固定プレート310から室ハウジング220に下方圧力を加える。室220が、上で解説されたように「アップ」/解放位置にあるとき、ばね330(必要な圧力に応じてサイズ決めされる)は、oリングおよび障壁の両方に一貫した圧力レベルを提供する。この所定の圧力レベルは、別のばねによって提供されるので、室移動機構は、膜の移動を依然として可能にしながら、oリング封止を維持するのに必要な精確な圧力レベルを提供するように、制御される必要はない。この一貫した下方圧力により、装置、特にoリングおよび障壁の動作の予測性および全体的な信頼性が向上する。
【0045】
本発明は、好適実施形態を参照して具体的に図示および記述されたが、当業者なら、特許請求の範囲において記述される本発明の精神および範囲から逸脱せずに、形態および詳細について様々な変更を実施することが可能であることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】X線蛍光システムの概略的なブロック図である。
【図2】例示的なサンプル室を有する例示的なX線蛍光源/検出「エンジン」の等角図である。
【図3】本発明によるサンプル室装置の等角立体図である。
【図4】図3の装置の線図である。
【図5】図4の装置の上面図である。
【図6A】セクションAAに沿って取られた図3〜5の装置の断面図である。
【図6B】セクションAAに沿って取られた図3〜5の装置の断面図である。
【図7】セクションBBに沿って取られた図3〜5の装置の断面図である。
【図8】図3〜5の装置の等角底面図である。
【図9】図3〜5に示されたロールおよび移動経路に沿って構成されて示される本発明の例示的な可動X線透過性障壁膜の等角図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを分析するために、X線、中性子線、ガンマ線、または粒子ビーム放射を使用して、分析エンジンの放射境界面にサンプルを呈示する装置であって、
前記放射に対して透過性であり、前記サンプルを前記エンジンから分離し、前記放射境界面に対して可動である障壁と、
前記障壁の移動を実施する障壁移動システムと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記障壁は、前記サンプルが配置される空洞にわたって可動である膜を備え、前記障壁移動システムは、
前記空洞にわたって膜のほぼ連続的な供給を提供および回収するリールシステム
を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記空洞は、前記サンプルが通って可動であるサンプル経路の一部を形成することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サンプル経路は、加圧され、前記膜は、前記分析エンジンによる前記サンプルの分析中に圧力を維持することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプルは液体であり、前記サンプル経路は、前記液体が通って流れる加圧パイプラインの少なくとも一部を備え、前記分析エンジンは、前記流体が流れている間、前記流体の組成分析を実施することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
サンプル空洞が中へ形成される表面を有するサンプル室と、
サンプル空洞内外に前記放射が通過するのを可能にする開口を有する前記サンプル空洞と対面するプレートとを備え、
前記膜は、前記サンプル室の表面と前記プレートとの間に配置され、
前記サンプル室は、前記膜に対する圧力を増減するために、前記プレートに対して可動であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記膜の移動を可能にするために、前記膜に対する圧力を減少させることができることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記サンプル経路において適切な圧力を維持するために、前記サンプル室と前記プレートとの間、および前記サンプル空洞の周りに配置される拡張可能リングをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記膜が移動されているとき、oリングに対して一貫した圧力を提供するために、ばねまたは他の加圧デバイスをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プレートは、前記プレートと前記膜との間の摩擦を低減するために、コーティングを備えたことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項11】
サンプルを分析するために、X線、中性子線、ガンマ線、または粒子ビーム放射を使用して、分析エンジンの放射境界面にサンプルを呈示する方法であって、
前記境界面に対して障壁を移動させ、前記障壁は、前記放射に対して透過性であり、かつ前記サンプルを前記エンジンから分離し、それにより、前記境界面において前記障壁の異なる部分を提供する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記移動は、前記サンプルが中に配置されるサンプル空洞にわたって膜障壁からほぼ連続的な供給を提供および回収することを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル空洞を通して前記サンプルを流すことをさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル空洞は、前記サンプルが通って流れるサンプル経路の一部を形成することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記流すことは、
前記サンプル経路を加圧することを備え、前記膜は、前記分析エンジンによる前記サンプルの分析中、前記圧力を維持する
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルは液体であり、前記サンプル経路は、前記液体が通って流れる加圧パイプラインの少なくとも一部を備え、
前記流体が流れている間、前記流体の組成分析を実施することをさらに備える
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル空洞が中に形成される表面を有するサンプル室を提供することと、
前記サンプル空洞の内外に前記放射が通過することを可能にする開口を有する前記サンプル空洞に対面するプレートを提供することと、
前記サンプル室の前記表面と前記プレートとの間に前記膜を配置することと、
前記膜に対する圧力を増減するために、前記サンプル室を前記プレートに対して移動させることと
を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプル室を前記移動させることは、
前記膜の移動中に、前記膜に対する圧力を減少させることを備えることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ばねまたは他の加圧デバイスを使用して、前記膜が移動しているとき、前記oリングに対して一貫した圧力をさらに加えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プレートは、前記プレートと前記膜との間の摩擦を低減するために、コーティングを備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524074(P2007−524074A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517327(P2006−517327)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/019256
【国際公開番号】WO2004/113894
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500577987)エックス−レイ オプティカル システムズ インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】