説明

加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】590MPa以上のTSを有し、かつ延性および伸びフランジ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】成分組成は、質量%でC:0.05〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.5%、P:0.003〜0.100%以下、S:0.02%以下、Al:0.010〜1.5%を含有し、SiとAlの添加量の合計が0.5〜2.5%であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる。組織は、面積率で、20%以上のフェライト相と10%以下(0%を含む)のマルテンサイト相と10%以上60%以下の焼戻しマルテンサイトを有し、体積率で、3%以上10%以下の残留オーステナイト相を有し、かつ、残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.0μm以下である。さらに、好ましくは、前記残留オーステナイト中の平均固溶C濃度が1%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車、電気等の産業分野で使用される部材として好適な加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。これに伴い、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発となってきている。しかしながら、鋼板の高強度化は延性の低下、即ち成形加工性の低下を招く。このため、高強度と高加工性を併せ持つ材料の開発が望まれているのが現状である。
さらには、最近の自動車への耐食性向上の要求の高まりも加味して、溶融亜鉛めっきを施した高張力鋼板の開発が多く行われてきている。
【0003】
このような要求に対して、これまでにフェライト、マルテンサイト二相鋼(DP鋼)や残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用したTRIP鋼など、種々の複合組織型高強度溶融亜鉛めっき鋼板が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3〜1.5%、Mn:1.5〜2.8%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.0060%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに(Mn%)/(C%)≧15かつ(Si%)/(C%)≧4を満たし、フェライト相中に体積率で3〜20%のマルテンサイト相と残留オーステナイト相を含む成形性の良い高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。すなわち、特許文献1は、多量のSiを添加することにより残留γを確保し高延性を達成する加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ようとする技術である。
しかし、これらDP鋼やTRIP鋼は伸び特性には優れるものの穴拡げ性が劣るという問題がある。穴拡げ性は加工穴部を拡張してフランジ成形させるときの加工性を示す指標で、伸び特性と共に高強度鋼板に要求される重要な特性である。
【0004】
特許文献2には、伸びフランジ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法として、焼鈍均熱後、溶融亜鉛めっき浴までの間にMs点以下まで強冷却して生成したマルテンサイトを再加熱し焼き戻しマルテンサイトとして穴拡げ性を向上させる技術が開示されている。しかし、マルテンサイトを焼戻しマルテンサイトにすることにより穴拡げ性は向上するが、ELが低いことが問題となる。
さらに、深絞り性と伸びフランジ性に優れる高張力溶融亜鉛めっき鋼板として、特許文献3には、CとVおよびNbの含有量と焼鈍温度を規制し、再結晶焼鈍前の固溶C量を低減させて{111}再結晶集合組織を発達させて高r値化を達成し、焼鈍時にVおよびNb系炭化物を溶解させてオーステナイト中にCを濃化させ、その後の冷却過程でマルテンサイト相を生成させる技術が開示されている。しかし、引張強度は600MPa程度であり、引張強度と伸びのバランス(TS×EL)は19000MPa・%程度と、十分な強度および延性が得られているとは言えない。
【特許文献1】特開平11−279691号公報
【特許文献2】特開平6−93340号公報
【特許文献3】特開2004-2409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1〜3に記載された溶融亜鉛めっき鋼板では、延性および伸びフランジ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板は得られていない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、590MPa以上のTSを有し、かつ、延性および伸びフランジ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題を達成し、延性および伸びフランジ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造するため、鋼板の組成およびミクロ組織の観点から鋭意研究を重ねた。
その結果、合金元素を適正に調整して、焼鈍過程における均熱温度からの冷却時に、鋼の線膨張係数から求められるオーステナイトからのマルテンサイト変態開始温度(以下、Ms点もしくは単にMSと称することもある)を用いて、(Ms−100℃)〜(Ms−200℃)の温度域まで強冷却しオーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させる部分焼入れを行った後、再加熱してめっき処理を施すことで、面積率で、20%以上のフェライト相と10%以下(0%を含む)のマルテンサイト相と10%以上60%以下の焼戻しマルテンサイトを有し、体積率で、3%以上10%以下の残留オーステナイト相を有し、かつ、残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.0μm以下とすることができ、このような組織とすることで高い延性および伸びフランジ性が可能となることが分った。
一般的に残留オーステナイトが存在すると残留オーステナイトのTRIP効果により延性が向上する。しかし、歪の付加により残留オーステナイトが変態して生成するマルテンサイトは非常に硬質なものとなり、その結果、主相であるフェライトとの硬度差が大きくなり伸びフランジ性が低下することも知られている。
これに対して、本発明では、成分および組織構成を規定することで、高い延性と高い伸びフランジ性が両立可能となり、残留オーステナイトが存在しても高い伸びフランジ性を得ることが可能となる。残留オーステナイトが存在しても高い伸びフランジ性を得ることが可能となる理由についての詳細は不明であるが、残留オーステナイトの微細化と焼き戻しマルテンサイトとの複合組織となっていることが理由として考えられる。
さらに、上記知見に加え、残留オーステナイト中の平均固溶C量を1%と以上と安定な残留オーステナイトとすることで、延性だけでなく深絞り性も向上することを知見した。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.5%、P:0.003〜0.100%以下、S:0.02%以下、Al:0.010〜1.5%を含有し、SiとAlの添加量の合計が0.5〜2.5%であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、組織は、面積率で、20%以上のフェライト相と10%以下(0%を含む)のマルテンサイト相と10%以上60%以下の焼戻しマルテンサイト相を有し、体積率で、3%以上10%以下の残留オーステナイト相を有し、かつ、残留オーステナイト相の平均結晶粒径が2.0μm以下であることを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[2]前記[1]において、前記残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度が1%以上であることを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]前記[1]または[2]において、さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.005〜2.00%、Mo:0.005〜2.00%、V:0.005〜2.00%、Ni:0.005〜2.00%、Cu:0.005〜2.00%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、さらに、成分組成として、質量%で、B:0.0002〜0.005%を含有することを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、亜鉛めっきが合金化亜鉛めっきであることを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[8]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延を施し、次いで連続焼鈍を施すに際し、500℃〜A1変態点の温度域の平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度域まで冷却し、350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持した後、亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[9]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで連続焼鈍を施すに際し、500℃〜A1変態点の温度域の平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度域まで冷却し、350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持した後、亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[10]前記[8]または[9]において、前記350〜600℃まで再加熱後の保持時間は、下記式(1)により求められる時間t〜600秒の範囲であることを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
t(秒)=2.5×10-5/Exp(-80400/8.31/(T+273))---(1)
ただし、T:再加熱温度(℃)である。
[11]前記[8]〜[10]のいずれかにおいて、溶融亜鉛めっきを施した後、さらに、亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明において、「高強度溶融亜鉛めっき鋼板」とは、引張強度TSが590MPa以上である溶融亜鉛めっき鋼板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、590MPa以上のTSを有し、かつ、延性、伸びフランジ性および深絞り性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を例えば自動車構造部材に適用することにより、自動車の軽量化と衝突安全性向上との両立を可能とし、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の詳細を説明する。
【0011】
1)成分組成
C:0.05〜0.3%
Cはオーステナイトを安定化させフェライト以外の相を生成しやすくするため、鋼板強度を上昇させるとともに、組織を複合化してTSとELのバランスを向上させるために必要な元素である。C量が0.05%未満では製造条件の最適化を図ったとしてもフェライト以外の相の確保が難しく、TSとELのバランスが低下する。一方、C量が0.3%を超えると、溶接部および熱影響部の硬化が著しく、溶接部の機械的特性が劣化する。以上より、C量は0.05%以上0.3%以下とする。好ましくは0.08%以上0.15%以下である。
【0012】
Si:0.01〜2.5%
Siは鋼の強化に有効な元素である。また、フェライト生成元素であり、オーステナイト相中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイトの生成を促進する働きを有する。このような効果を得るためには、Si量は0.01%以上必要である。ただし、過剰な添加は、延性や表面性状、溶接性を劣化させるので、上限は2.5%以下とする。好ましくは0.7%以上2.0%以下である。
【0013】
Mn:0.5〜3.5%
Mnは鋼の強化に有効な元素であり、焼戻しマルテンサイト相等の低温変態相の生成を促進する。このような作用は、Mn量が0.5%以上で認められる。ただし、Mn量が3.5%を超えて過剰に添加すると、第二相分率の過剰な増加や固溶強化によるフェライトの延性劣化が著しくなり成形性が低下する。従って、Mn量は0.5%以上3.5%以下とする。好ましくは1.5%以上3.0%以下である。
【0014】
P:0.003〜0.100%
Pは鋼の強化に有効な元素であり、この効果は0.003%以上で得られる。しかし、0.100%を超えて過剰に添加すると粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。従って、P量は0.003%以上0.100%以下とする。
【0015】
S:0.02%以下
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃特性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因になるので極力低い方が良いが、製造コストの面から0.02%以下とする。
【0016】
Al:0.010〜1.5%、Si+Al:0.5〜2.5%
Alは脱酸剤として作用し、鋼の清浄度に有効な元素であり、脱酸工程で添加することが好ましい。このような効果を得るためには、Al量は0.010%以上必要である。一方、多量に添加すると連続鋳造時の鋼片割れ発生の危険性が高まり製造性を低下させる。従ってAl量の上限は1.5%とする。
また、AlはSiと同様にフェライト相生成元素であり、オーステナイト相中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイト相の生成を促進する働きがある。このような効果はAlとSiの添加量の合計が0.5%未満では不十分で十分な延性が得られない。一方、AlとSiの添加量の合計が2.5%を超えると鋼板中の介在物が増加し、延性を劣化させる。従って、AlとSiの添加量の合計は2.5%以下とする。
本発明では、Nは加工性等の作用効果を阻害しない範囲として、0.01%以下の含有は許容できる。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
ただし、これらの成分元素に加えて、以下の合金元素を必要に応じて添加することができる。
【0017】
Cr:0.005〜2.00%、Mo:0.005〜2.00%、V:0.005〜2.00%、Ni:0.005〜2.00%、Cu:0.005〜2.00%から選ばれる1種または2種以上
Cr、Mo、V、Ni、Cuは焼鈍温度からの冷却時にパーライト相の生成を抑制し、低温変態相の生成を促進し鋼の強化に有効に働く。この効果は、Cr、Mo、V、Ni、Cu の少なくとも1種を0.005%以上含有させることで得られる。しかし、Cr、Mo、V、Ni、Cu のそれぞれの成分が2.00%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。従って、添加する場合は、Cr、Mo、V、Ni、Cu量はそれぞれ0.005%以上2.00%以下とする。
【0018】
Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種
Ti、Nbは炭窒化物を形成し、鋼を析出強化により高強度化する作用を有する。このような効果はそれぞれ0.01%以上で認められる。一方、Ti、Nbをそれぞれ0.20%を超えて含有しても、過度に高強度化し、延性が低下する。従って、添加する場合は、Ti、Nbはそれぞれ0.01%以上0.20%以下とする。
【0019】
B:0.0002〜0.005%
Bはオーステナイト相粒界からのフェライトの生成を抑制し強度を上昇させる作用を有する。その効果は0.0002%以上で得られる。一方、B量が0.005%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。従って、添加する場合は、B量は0.0002%以上0.005%以下とする。
【0020】
Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種
Ca、REMはいずれも硫化物の形態制御により加工性を改善する効果を有しており、必要に応じてCa、REMの1種または2種は0.001%以上含有することができる。しかしながら過剰な添加は清浄度に悪影響を及ぼす恐れがあるため、それぞれ0.005%以下とする。
【0021】
2)ミクロ組織
フェライト相の面積率が20%以上
フェライト相の面積率が20%未満だとTSとELのバランスが低下するため20%以上とする。好ましくは50%以上である。
マルテンサイト相の面積率が0〜10%
マルテンサイト相は鋼の高強度化には有効に働くが、面積率が10%を超えて過剰に存在するとλ(穴拡げ率)が顕著に低下する。従って、マルテンサイト相の面積率は10%以下とする。マルテンサイト相を全く含まず面積率が0%でも本発明の効果には影響を及ぼさず問題ない。
【0022】
焼戻しマルテンサイト相の面積率が10〜60%
焼戻しマルテンサイト相は鋼の強化に有効に働く。また、これらの相はマルテンサイト相に比べて穴拡げ性への悪影響が小さく、著しい穴拡げ性の低下なしに強度を確保することができる有効な相である。焼戻しマルテンサイト相の面積率が10%未満ではこのような強度確保が困難となる。一方、60%を超えるとTSとELのバランスが低下する。よって、焼戻しマルテンサイト相の面積率は10%以上60%以下とする。
【0023】
残留オーステナイト相の体積率が3〜10%、残留オーステナイト相の平均結晶粒径が2.0μm以下、好適には、残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度が1%以上
残留オーステナイト相は鋼の強化に寄与するだけでなく、鋼のTSとELのバランスの向上に有効に働く。このような効果は体積率が3%以上で得られる。また、残留オーステナイト相は加工によりマルテンサイトに変態し、穴拡げ性を低下させるが、その平均結晶粒径を2.0μm以下および体積率を10%以下とすることにより著しい穴拡げ性の低下は抑制される。従って、残留オーステナイト相の体積率は3%以上10%以下とし、残留オーステナイト相の平均結晶粒径は2.0μm以下とする。
また、残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度の増加により深絞り性が向上する。このような効果は残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度が1%以上で顕著となる。
【0024】
なお、フェライト相、マルテンサイト相、焼戻しマルテンサイト相、残留オーステナイト以外相の相としては、パーライト相およびベイナイト相を含むことができるが、上記ミクロ組織の構成が満足されれば本発明の目的を達成できる。ただし、延性および穴拡げ性確保の観点からパーライト相は3%以下とすることが望ましい。
【0025】
なお、本発明におけるフェライト相、マルテンサイト相および焼戻しマルテンサイト相の面積率とは、観察面積に占める各相の面積の割合のことである。上記各面積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、市販の画像処理ソフトを用いて求めることができる。また、残留オーステナイト相の体積率とは、板厚1/4面におけるbcc鉄の(200)、(211)、(220)面のX線回折積分強度に対するfcc鉄の(200)、(220)、(311)面のX線回折積分強度の割合である。
残留オーステナイト相平均粒径とはTEM(透過型電子顕微鏡)により薄膜を観察し、任意に選んだオーステナイトの面積を画像解析により求め、正方形近似したときの1片の長さをその粒の結晶粒径とし、10粒子の平均値のことである。
残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度([Cγ%])は、CoKα線を用いてfcc鉄の回折面(220)からもとめた格子定数a(Å)と、[Mn%]、[Al%]を下記式(2)に代入して計算して求めることができる。
【0026】
a=3.578+0.033[Cγ%]+0.00095[Mn%]+0.0056[Al%]---(2)
ただし、[Cγ%] は残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度であり、[Mn%]、[Al%]はそれぞれMn、Alの含有量(質量%)を示す。
【0027】
3)製造条件
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の成分組成を有するスラブに熱間圧延後そのまま連続焼鈍を施すか、あるいはさらに冷間圧延を施した後に連続焼鈍を施すに際し、500℃〜A1変態点の温度域の平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度域まで冷却し、350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持した後、亜鉛めっきを施す方法によって製造できる。好ましくは、上記前記350〜600℃まで加熱後の保持時間が、下記式(1)により求められる時間t〜600秒の範囲である。
t(秒)=2.5×10-5/Exp(-80400/8.31/(T+273))---(1)
ただし、T:再加熱温度(℃)である。
以下、詳細に説明する。
【0028】
上記の成分組成に調整した鋼を転炉などで溶製し、連続鋳造法等でスラブとする。
使用する鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止するために連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼スラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に挿入する、あるいはわずかの保熱をおこなった後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
【0029】
スラブ加熱温度:1100℃以上(好適条件)
スラブ加熱温度は、低温加熱がエネルギー的には好ましいが、加熱温度が1100℃未満では、炭化物が十分に固溶できなかったり、圧延荷重の増大による熱間圧延時のトラブル発生の危険が増大するなどの問題が生じる。なお、酸化重量の増加にともなうスケールロスの増大などから、スラブ加熱温度は1300℃以下とすることが望ましい。
なお、スラブ加熱温度を低くしても熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーを加熱する、いわゆるシートバーヒーターを活用してもよい。
【0030】
仕上圧延終了温度:A3点以上(好適条件)
仕上げ圧延終了温度がA3点未満では、圧延中にαとγが生成して、鋼板にバンド状組織が生成し易くなり、かかるバンド状組織は冷間圧延後や焼鈍後にも残留し、材料特性に異方性を生じさせたり、加工性を低下させる原因となる場合がある。このため、仕上げ圧延温度はA3変態点以上とすることが望ましい。
【0031】
巻取り温度:450℃〜700℃(好適条件)
巻取り温度が450℃未満だと巻取り温度の制御が難しく温度ムラが生じやすくなり、その結果、冷間圧延性が低下するなどの問題が生じることがある。また巻取り温度が700℃を超えると地鉄表層で脱炭が生じるなどの問題が起こることがある。このため、巻取り温度は450〜700℃の範囲とするのが望ましい。
【0032】
なお、本発明における熱延工程では、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために仕上圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延の際の摩擦係数は0.25〜0.10の範囲とすることが好ましい。また、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすることが好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
【0033】
次いで、熱延板にそのまま連続焼鈍を施すか、あるいはさらに冷間圧延を施した後連続焼鈍を施す。冷延圧延を施す場合、好ましくは熱延鋼板の表面の酸化スケールを酸洗により除去した後、冷間圧延に供して所定の板厚の冷延鋼板とする。ここに酸洗条件や冷間圧延条件は特に制限されるものではなく、常法に従えば良い。冷間圧延の圧下率は40%以上とすることが好ましい。
【0034】
連続焼鈍条件:500℃〜A1変態点の温度域における平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱
本発明の鋼における再結晶温度域である500℃からA1変態点の温度域において平均加熱速度を10℃/s以上とすることで、加熱昇温時の再結晶が抑制され、A1変態点以上で生成するγの微細化、ひいては焼鈍冷却後の残留オーステナイト相の微細化に有効に働く。平均加熱速度が10℃/s未満では、加熱昇温時にαの再結晶の進行が進み、α中に導入された歪が開放され十分な微細化が達成できなくなる。好ましい平均加熱速度は20℃/s以上である。
【0035】
750℃〜900℃で10秒以上保持
保持温度が750℃未満あるいは保持時間が10秒未満では、焼鈍時のオーステナイト相の生成が不十分となり、焼鈍冷却後に十分な量の低温変態相が確保できなくなる。一方、加熱温度が900℃を超えると、加熱時に生成するオーステナイト相が粗大化し、焼鈍後の残留オーステナイト相も粗大となる。保持時間の上限は特に規定しないが、600秒以上の保持は効果が飽和する上、コストアップにつながるので、保持時間は600秒未満が好ましい。
【0036】
10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃の温度域まで冷却
平均冷却速度が10℃/s未満ではパーライトが生成し、TSとELのバランスおよび穴拡げ性が低下する。平均冷却速度の上限は特に規定しないが、平均冷却速度が速すぎると鋼板形状が悪化したり、冷却到達温度の制御が困難となるため、好ましくは200℃/s以下とする。
冷却到達温度条件は本発明において最も重要な条件の一つである。冷却停止時にはオーステナイト相の一部がマルテンサイトに変態し、残りは未変態のオーステナイト相となる。そこから再加熱し、めっき・合金化処理後、室温まで冷却することで、マルテンサイト相は焼戻しマルテンサイト相となり、未変態オーステナイト相は残留オーステナイト相またはマルテンサイト相となる。焼鈍からの冷却到達温度が低くMs点(Ms点:オーステナイトのマルテンサイト変態が開始する温度)からの過冷度が大きいほど、冷却中に生成するマルテンサイト量が増加し、未変態オーステナイト量が減少するため、冷却到達温度の制御により、最終的なマルテンサイト相および残留オーステナイト相と焼戻しマルテンサイト相の面積率が決定されることになる。よって、本発明では、Ms点と冷却停止温度の差である過冷度が重要であり、冷却温度制御の指標としてMs点を用いることとする。冷却到達温度が(Ms点−100℃)より高い温度では、冷却停止時のマルテンサイト変態が不十分で未変態オーステナイト量が多くなり、最終的なマルテンサイト相または残留オーステナイト相が過剰に生成し、穴拡げ性を低下させる。一方、冷却到達温度が(Ms−200℃)より低くなると、冷却中にオーステナイト相がほとんどマルテンサイトに変態し未変態オーステナイト量が減少し、3%以上の残留オーステナイト相が得られない。従って冷却到達温度は(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の範囲とする。
なお、Ms点は、焼鈍からの冷却時の鋼板の体積変化を測定し、その線膨張係数の変化から求めることができる。
【0037】
350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持(好適には、下記式(1)により求められる時間t〜600秒の範囲)した後に溶融亜鉛めっき処理
t(秒)=2.5×10-5/Exp(-80400/8.31/(T+273))---(1)
ただし、T:再加熱温度(℃)である。
(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度範囲までの冷却後、350〜600℃の温度域まで再加熱し10秒以上600秒以下保持することで、前記冷却時に生成したマルテンサイト相が焼戻され焼戻しマルテンサイト相となり、穴拡げ性が向上する。さらに、冷却時にマルテンサイトに変態しなかった未変態オーステナイト相が安定化され、最終的に3%以上の残留オーステナイト相が得られ、延性が向上する。加熱保持による未変態オーステナイト相の安定化のメカニズムについて詳細は不明だが、未変態オーステナイトへのCの濃化が進み、オーステナイト相が安定化されると考えられる。加熱温度が350℃未満ではマルテンサイト相の焼戻しおよびオーステナイト相の安定化が不十分となり穴拡げ性および延性が低下する。一方、加熱温度が600℃を超えると、冷却停止時の未変態オーステナイト相がパーライトに変態し、最終的に3%以上残留オーステナイト相が得られなくなる。従って、再加熱温度は350℃以上600℃以下とする。
保持時間が10秒未満ではオーステナイト相の安定化が不十分となる。一方、また600秒を超えると冷却停止時の未変態オーステナイト相がベイナイトに変態し、最終的に3%以上の残留オーステナイト相が得られなくなる。従って、加熱温度は350℃以上600℃以下とし、その温度域での保持時間は10秒以上600秒以下とする。さらに、保持時間が上記式(1)から求められるt 秒以上とすることにより、平均固溶C濃度が1%以上の残留オーステナイトが得られるようになるため、好ましくは、保持時間はt〜600秒である。
【0038】
めっき処理は溶融亜鉛めっき鋼板(GI)製造は0.12〜0.22%、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)製造時は0.08〜0.18%の溶解Al量のめっき浴に(浴温440〜500℃)鋼板を侵入させて行い、ガスワイピングなどで付着量を調整する。合金化溶融亜鉛めっき鋼板処理は、付着量調整後、450〜600℃まで加熱し、1〜30秒保持する。
なお、溶融亜鉛めっき処理後の鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)には、形状矯正、表面粗度等の調整のため調質圧延を加えてもよい。また、樹脂あるいは油脂コーティング、各種塗装等の処理を施しても何ら不都合はない。
【実施例】
【0039】
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋳片とした。得られた鋳片を板厚3.0mmまで熱間圧延した。熱間圧延の条件は仕上げ温度900℃、圧延後の冷却速度10℃/s、巻取り温度600℃で行った。次いで、熱延鋼板を酸洗した後、板厚1.2mmまで冷間圧延し、冷延鋼板を製造した。また一部、板厚2.3mmまで熱延した鋼板を酸洗したものを焼鈍用に用いた。
次いで、上記により得られた冷延鋼板あるいは熱延板に、連続溶融亜鉛めっきラインにて、表2に示す条件で焼鈍を行い、460℃で溶融亜鉛めっきを施したのち、520℃で合金化処理を行い、平均冷却速度10℃/sで冷却した。また、一部の鋼板については、合金化処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板も製造した。めっき付着量は片面あたり35〜45g/m2であった。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、断面ミクロ組織、引張特性、穴拡げ性および深絞り性を調査した。得られた結果を表3に示す。
なお、鋼板の断面ミクロ組織は3%ナイタール溶液(3%硝酸+エタノール)で組織を現出し、走査型電子顕微鏡で深さ方向板厚1/4位置を観察して、撮影した組織写真を用いて、画像解析処理を行ない、フェライト相の分率を定量化した。(なお、画像解析処理は市販の画像処理ソフトを用いることができる)
マルテンサイト相の面積率、焼戻しマルテンサイト相の面積率は、組織の細かさに応じて1000〜3000倍の適切な倍率のSEM写真を撮影し、画像処理ソフトで定量化した。
残留オーステナイト相の体積率は、鋼板を板厚方向の1/4面まで研磨し、この板厚1/4面の回折X線強度により求めた。入射X線にはMoKα線を使用し、残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面のピークの積分強度の全ての組み合わせについて強度比を求め、これらの平均値を残留オーステナイト相の体積率とした。
残留オーステナイト相の平均結晶粒径は透過型電子顕微鏡を用いて任意に選んだ粒の残留オーステナイトの面積を求め、正方形換算したときの1片の長さをその粒の結晶粒径とし、それを10個の粒について求め、その平均値をその鋼の残留オーステナイト相の平均結晶粒径とした。
残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度([Cγ%])は、CoKα線を用いてfcc鉄の回折面(220)からもとめた格子定数a(Å)と、[Mn%]、[Al%]を下記式(2)に代入して計算して求めることができる。
【0043】
a=3.578+0.033[Cγ%]+0.00095[Mn%]+0.0056[Al%]---(2)
ただし、[Cγ%] は残留オーステナイト中の平均固溶C濃度であり、[Mn%]、[Al%]はそれぞれMn、Alの含有量(質量%)を示す。
また、引張特性は、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるようサンプル採取したJIS5号試験片を用いて、JISZ2241に準拠した引張試験を行ない、YS(降伏応力)、TS(引張強さ)、EL(伸び)を測定し、降伏比(YS/TS)と強度と伸びの積(TS×EL)で表される強度と伸びバランスの値を求めた。
さらに、穴拡げ率(λ)は日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準じた穴拡げ試験を行い、測定した。
深絞り性は、スウィフトカップ試験による限界絞り比(LDR)で評価した。試験には直径33mmφの円筒ポンチを用い、ポンチ肩曲率半径およびダイス肩曲率半径はいずれも5mmの金型を用いた。サンプルは円形ブランクに切削加工したものを用い、しわ押さえ圧力3ton、成形速度1mm/sで試験を行った。めっき状態などにより表面の摺動状態が変わるため、表面の摺動状態が試験に影響しない様、サンプルとダイスの間にテフロンシートを置いて高潤滑条件で試験を行った。ブランク径を1mmピッチで変化させ、破断せず絞りぬけたブランク径Dとポンチ径dの比(D/d)をLDRとした。
【0044】
【表3】

【0045】
表3より、本発明例の鋼板はTSとELのバランス(TS×EL)が21000MPa・%以上、λが70%以上であり、優れた強度、延性および伸びフランジ性を示している。
さらに、残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度が1%以上の鋼ではLDRが2.09以上と優れた深絞り性も示している。
一方、本発明の範囲をはずれる比較例の鋼板はTSとELのバランス(TS×EL)が21000MPa・%未満および(または)λが70%未満となり、強度、延性および伸びフランジ性のいずれかが劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.5%、P:0.003〜0.100%以下、S:0.02%以下、Al:0.010〜1.5%を含有し、SiとAlの添加量の合計が0.5〜2.5%であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、組織は、面積率で、20%以上のフェライト相と10%以下(0%を含む)のマルテンサイト相と10%以上60%以下の焼戻しマルテンサイト相を有し、体積率で、3%以上10%以下の残留オーステナイト相を有し、かつ、残留オーステナイト相の平均結晶粒径が2.0μm以下であることを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記残留オーステナイト相中の平均固溶C濃度が1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.005〜2.00%、Mo:0.005〜2.00%、V:0.005〜2.00%、Ni:0.005〜2.00%、Cu:0.005〜2.00%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
さらに、成分組成として、質量%で、B:0.0002〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
亜鉛めっきが合金化亜鉛めっきであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延を施し、次いで連続焼鈍を施すに際し、500℃〜A1変態点の温度域の平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度域まで冷却し、350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持した後、亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで連続焼鈍を施すに際し、500℃〜A1変態点の温度域の平均加熱速度を10℃/s以上として750〜900℃まで加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から(Ms点−100℃)〜(Ms点−200℃)の温度域まで冷却し、350〜600℃まで再加熱し10〜600秒保持した後、亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記350〜600℃まで再加熱後の保持時間は、下記式(1)により求められる時間t〜600秒の範囲であることを特徴とする請求項8または9に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
t(秒)=2.5×10-5/Exp(-80400/8.31/(T+273))---(1)
ただし、T:再加熱温度(℃)である。
【請求項11】
溶融亜鉛めっきを施した後、さらに、亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2009−203548(P2009−203548A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323223(P2008−323223)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】