説明

加工装置及び加工工具

【課題】 切削加工と研削加工が必要な円筒部分を有する被加工物に対する全工程に掛かる時間を短縮することができる加工装置及びその加工装置に用いられる加工工具を提供する。
【解決手段】 加工装置10Aに取り付けられる加工工具21は、切削加工用の切削刃先部71と研削加工用の研削砥石部72を有し、工具軸をワーク軸に対し所定角度傾斜するように配置し、加工工具と被加工物との相対移動を一度のみ行うことにより円筒部分に対する切削加工に続いて研削加工を行う。1つの加工工具を備えた1台の加工装置で切削加工と研削加工に対応できるため、従来必要であった両加工間の被加工物の付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒部分を有する被加工物を当該円筒軸周りに回転させて加工する加工装置及びその加工装置に用いられる加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
金型部品や電子部品等には高い加工精度が要求されるため、ドリルもしくはエンドミル等の加工工具を用いた切削加工の後に、ダイアモンドホイール等の加工工具を用いた研削加工が必要となる。しかし、このような切削加工と研削加工は、旋盤もしくはフライス盤と研削盤という異なる加工装置により行われるため、切削加工と研削加工の加工時間の間に被加工物の付け替え等の非加工時間が必要となって手間が掛かっていた。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された切削研削両用工具では、先端側に切削部が形成され、後端側のシャンク部と切削部との間に研削部が形成されている。これにより、1つの加工工具及び1台の加工装置で切削加工を行った後、直ちに研削加工を行うことが可能となるため、上記非加工時間が無くなって全工程に掛かる時間を短縮することが可能となる。
【特許文献1】実開平5−88818号公報(段落〔0002〕、〔0012〕、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自動車のエンジンに組み込まれるシャフト部品も高い加工精度が要求されるため、切削加工の後に研削加工が行われている。ところが、特許文献1に記載された切削研削両用工具では、金型部品や電子部品等にあける穴や該部品の側面の加工には対応できるが、ピストンのような円筒の特に外周面の加工には対応できない。このため、円筒部分を有する被加工物に対しては上記非加工時間が必要となって手間が掛かるものとなっている。
【0005】
本発明は、切削加工と研削加工が必要な円筒部分を有する被加工物に対する全工程の工数を低減することができる加工装置及びその加工装置に用いられる加工工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、被加工物を取り付けるワーク軸と加工工具を取り付ける工具軸とを備え、円筒部分を有する前記被加工物をワーク軸周りに回転させ、前記加工工具を工具軸周りに回転させつつワーク軸方向に前記被加工物と相対移動させて該被加工物を加工する加工装置において、前記加工工具は、切削加工用の切削刃先部と研削加工用の研削砥石部を有し、前記工具軸を前記ワーク軸に対し平行、もしくは所定角度傾斜するように配置し、前記円筒部分に対する一度の前記相対移動により切削加工に続いて研削加工を行うことである。
【0007】
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記切削刃先部と前記研削砥石先端部の相対位置関係を調整する調整手段を備えていることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記調整手段は、前記切削刃先部を整形する装置及び前記研削砥石部をツルーイングする装置のうち少なくとも前記研削砥石部をツルーイングする装置であることである。
【0008】
請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記調整手段は、前記ワーク軸と前記工具軸を含む平面内にて前記ワーク軸に対する前記工具軸の相対角度を変更する機構であることである。
請求項5に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記切削刃先部は、高硬度の材料で薄板状に形成された切れ刃部と、前記被加工物との接触による摩耗が前記切れ刃部より多い材質で形成され表面に前記切れ刃部が固着された支持部とを有する切削刃具を、円周上に複数個配置した構成であることである。
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項6に記載の発明の構成上の特徴は、円筒部分を有する被加工物を当該円筒軸周りに回転させ、工具軸周りに回転しつつ前記円筒軸方向に前記被加工物と相対移動して加工する加工工具において、切削加工用の切削刃先部と研削加工用の研削砥石部を有し、前記切削刃先部は、高硬度の材料で薄板状に形成された切れ刃部と、前記被加工物との接触による摩耗が前記切れ刃部より多い材質で形成され表面に前記切れ刃部が固着された支持部とを有する切削刃具を、円周上に複数個配置した構成であり、前記円筒部分に対する一度の前記相対移動により切削加工に続いて研削加工を行うことである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、加工工具は、切削加工用の切削刃先部と研削加工用の研削砥石部が一体化され、工具軸がワーク軸に対し所定角度傾斜するように配置されており、相対移動により連続した切削加工と研削加工が可能であるので、加工装置は、回転する被加工物の円筒部分に対し回転する加工工具の相対移動を一度行うのみで両加工を完了することができる。よって、1つの加工工具を備えた1台の加工装置で切削加工と研削加工に対応できるため、従来必要であった両加工間の被加工物の付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減することができる。また、研削砥石部の研削量が減るため、研削砥石部の長寿命化を図ることができる。また、1台の加工装置で切削加工と研削加工が行えるので省スペース化を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、調整手段は、加工工具の切削刃先部と研削砥石部の相対位置関係を調整できるので、加工後における切削刃先部と研削砥石部の摩耗量が異なるときでも両者の相対位置を再設定することができる。また、両者の相対位置関係を調整して例えば被加工物に対する切削刃先部と研削砥石部の突き出し量を調節することにより、被加工物の加工表面粗さを変化させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、少なくともツルーイングにより研削砥石部の形状を変化させることができるので、切削刃先部と研削砥石部の相対位置関係を調整できる。また請求項4に係る発明によれば、ワーク軸と工具軸を含む平面内にてワーク軸に対する工具軸の角度を変更しているので、切削刃先部と研削砥石部の相対位置関係を調整できる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、回転される加工工具の円周上に備えられる複数個の切削刃具は支持部が切れ刃部よりも摩耗し易い材質で形成されており、摩耗がどれだけ進行しても、摩耗前の逃げ面形状と同じ逃げ面形状が順次表出してくる構成であるため、摩耗後の逃げ面の支持部の幅及び切れ刃部の幅は常に一定となるため、刃具の切れ味が保たれる。一般に、切削刃具と砥石部が一体化した加工工具は、一方の切れ味が十分でも他方の工具の切れ味が不十分となった段階で工具の修正作業を行う必要があるため、修正作業が頻繁になり、作業効率が低下する。しかし、本発明の加工工具は切削刃具の切れ味低下に起因する修正作業が少なくなり、作業効率が向上する。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、切削刃先部の切削刃具は、摩耗がどれだけ進行しても、摩耗前の逃げ面形状と同じ逃げ面形状が順次表出してくる構成であるため、摩耗後の逃げ面の支持部の幅及び切れ刃部の幅は常に一定となる。よって、研削砥石部と一体化しても加工装置に取り付けたままで切削刃先部と研削砥石部を整形及びツルーイングすることができ、加工装置から取り外して切削刃先部と研削砥石先端部の相対位置関係の調整を行う場合に比べ、整形・ツルーイング作業の工数を低減させることができる。また、被加工物と切削刃具の間の接触面積、特に切れ刃部との間の接触面積が増加することはなく、切削抵抗も一定で増加がないため、切れ刃部に過大な応力が及ぼされて欠損が生じることはなく、切削刃具の長寿命化を図ることができる。また、複数個の切削刃具が回転される加工工具の円周上に備えられた切削刃先部は、各切れ刃部が被加工物に押し当てられて被加工物を断続的に切削加工を行なうため、該切削加工によって各切削刃具と被加工物との間に発生する熱は、連続切削で熱がこもり易い旋盤等にて使用される切削刃具の場合に比べ、大気中に放出され易くなる。よって熱による各切削刃具の劣化が軽減されて、切削刃先部の長寿命化が望める。また、支持部は、所定の強度を有し、切れ刃部と固着されているために、切れ刃部に対して滑り又は剥離が発生せず、よって剛体として強度的に切れ刃部を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す第1の実施形態に係る加工装置10Aは、切削刃先部71及び研削砥石部72を有する加工工具21を備えており、切削加工に続いて研削加工を行うことが可能な加工装置である。また、切削刃先部71及び研削砥石部72の整形・ツルーイング装置30を備えており、切削刃先部71の整形に続いて研削砥石部72のツルーイングを行うことが可能な加工装置である。加工装置10Aのベッド11上には、テーブル12が水平なZ軸方向に移動可能に案内支持されている。テーブル12上には、主軸台13と心押台14とが対向して配置されている。主軸台13には、工作物Wの一端を把持するチャック15が設けられ、心押台14には、工作物Wの他端を支持するセンタ16が設けられている。工作物Wは、チャック15とセンタ16とによってZ軸方向と平行な軸線の周りに回転できるように両端を支持され、チャック15によって回転駆動されるようになっている。
【0016】
また、ベッド11上には、工具台20がZ軸方向と直交する水平なX軸方向に移動可能であってZ軸及びX軸と直角なB軸周りで回転可能に案内支持されている。即ち、ベッド11上にはX軸方向に移動可能な移動テーブル23が配置され、この移動テーブル23上にはB軸周りで回転可能な回転テーブル24及びB軸サーボモータ25が配置され、この回転テーブル24上には工具台20及び工具駆動モータ22等が配置されている。B軸サーボモータ25の回転軸にはウォーム26が嵌入されている。回転テーブル24の側縁には、ウォーム26と噛合するウォームホイール27が形成されている。
【0017】
工具台20には、加工工具21が工作物Wのワーク軸WAと所定の傾斜角度θをなす工具軸T周りに回転可能に支持されている。加工工具21は、工具駆動モータ22によってベルト伝動機構を介して工具軸T周りに回転駆動されるようになっている。更に、加工工具21は、B軸サーボモータ25によって回転テーブル24及び工具台20と共にB軸周りに回転駆動され、上記工具軸Tの傾斜角度θが調整されるようになっている。回転テーブル24、B軸サーボモータ25、ウォーム26及びウォームホイール27が、工具軸Tの角度調整機構70を構成している。加工工具21は、詳細は後述するが、切削刃先部71と研削砥石部72を兼ね備えた構成となっている。即ち、1つの加工工具21により切削刃先部71による切削加工に続いて研削砥石部72による研削加工が可能となっている。また、工具台20には、加工工具21と工作物Wもしくは切削刃先修正部34や研削砥石修正部35との接触によって発生する弾性波を検出するAEセンサ33が備えられている。
【0018】
主軸台13には、切削刃先部71及び研削砥石部72の両者を整形及びツルーイングするための整形・ツルーイング装置30が設けられている。整形・ツルーイング装置30は、回転可能なツルア軸31の一端に同軸で取り付けられた切削刃先修正部34及び研削砥石修正部35を備えている。ツルア軸31は、ビルトインモータ等によって回転駆動されるようになっている。切削刃先修正部34の外周面には、刃先修正面34aが設けられており、この刃先修正面34aにより切削刃先部71を整形することができる。研削砥石修正部35の外周面には、砥石修正面35aが設けられており、この砥石修正面35aにより研削砥石部72をツルーイングすることができる。
【0019】
切削刃先部71や研削砥石部72を整形・ツルーイング装置30により整形及びツルーイングすることで、切削刃先部71や研削砥石部72の形状を変化させて両者の相対位置関係を調整できる。また、加工工具21を角度調整機構70により回転することで、ワーク軸WAと工具軸Tを含む平面内にてワーク軸WAに対する工具軸Tの傾斜角度θを変更することによっても切削刃先部71と研削砥石部72の相対位置関係を調整できる。これらの調整により、工作物Wに対する切削刃先部71と研削砥石部72の突き出し量を調節することができるので、切削加工に続いて研削加工を行ったときの工作物Wの研削加工取しろ及び加工表面粗さを変化させることができる。また、加工が繰り返されることにより切削刃先部71と研削砥石部72の摩耗量の違いから両者の相対位置がずれても両者の相対位置を再設定することができる。尚、ワーク軸WA側を旋回可能に構成してワーク軸WAに対する工具軸Tの傾斜角度θを変更するようにしても良い。
【0020】
加工装置10Aを制御する数値制御装置40は、中央処理装置41と、種々の制御値及びプログラムを記憶するメモリ42と、インターフェィス43、44から主に構成されている。メモリ42には、切削加工プログラム、研削加工プログラム、ツルーイングプログラム等、切削加工サイクル、研削加工サイクル及びツルーイングサイクルを実行するに必要な種々のデータが記憶されている。数値制御装置40には、インターフェース43、44を介して種々のデータが入出力されるようになっている。入出力装置45として、データの入力等を行うためのキーボード、データの表示を行うCRT等の表示装置を備えている。また、数値制御装置40には、AEセンサ33からの検出信号が増幅器46を介して入力されるようになっている。
【0021】
数値制御装置40は、X軸モータ駆動ユニット50を介して工具台20をX軸方向へ移動させるX軸サーボモータ51に駆動信号を与えるようになっており、X軸サーボモータ51に取り付けられたエンコーダ52がX軸サーボモータ51の回転位置、即ち移動テーブル23の位置をX軸モータ駆動ユニット50及び数値制御装置40へ送出するように構成されている。また、数値制御装置40は、Z軸モータ駆動ユニット54を介してテーブル12をZ軸方向へ移動させるZ軸サーボモータ55に駆動信号を与えるようになっており、Z軸サーボモータ55に取り付けられたエンコーダ56がZ軸サーボモータ55の回転位置、即ちテーブル12の位置をZ軸モータ駆動ユニット54及び数値制御装置40へ送出するように構成されている。また、数値制御装置40は、B軸モータ駆動ユニット28を介して回転テーブル24をB軸周りに回転させるB軸サーボモータ25に駆動信号を与えるようになっており、B軸サーボモータ25に取り付けられたエンコーダ29がB軸サーボモータ25の回転位置、即ち回転テーブル24の位置(加工工具21の工具軸Tの傾斜角度θ)をB軸モータ駆動ユニット28及び数値制御装置40へ送出するように構成されている。
【0022】
数値制御装置40は、メモリ42に記憶されたNCプログラムの目標位置指令とエンコーダ52,56からの現在位置信号との偏差により、X軸、Z軸サーボモータ51,55をそれぞれ駆動し、テーブル12及び工具台20をそれぞれ目標位置に位置決め制御する。また、目標位置指令とエンコーダ29から現在位置信号との偏差によりB軸サーボモータ25を駆動し、回転テーブル24の位置(加工工具21の工具軸Tの傾斜角度θ)を目標位置(目標角度)に位置(角度)決め制御する。数値制御装置40は、切削刃先部71や研削砥石部72による工作物Wの加工本数をカウントし、加工本数が予め定められた値に達すると切削刃先部71や研削砥石部72のツルーイング動作を指令する。
【0023】
加工工具21は、図2に示すように、複数の切削刃具73を備えた切削刃先部71及び傾斜した研削面74を備えた研削砥石部72が段付き円盤状の金属コア75に設けられた構成となっている。金属コア75は、コア軸75aの端面に大径コア75bが一体化された構成となっている。切削刃先部71は、大径コア75bの外周面に等角度間隔で突設された複数の切削刃具73を備えている。研削砥石部72は、同一底面を持つような円柱形状と円錐台形状を組み合わせた形状で、大径コア75bの端面に該円錐台周面が傾斜した研削面74として形成されている。
【0024】
切削刃具73は、図3に示すように、シャンク部76に切れ刃部77と支持部78がロー付けされた構成となっている。特に切れ刃部77と支持部78は刃先が工作物に押し当られて加工されるとき、滑り、又は剥離がないように、銀ロー材等を主成分とするロー材により固着されている。切れ刃部77は高硬度、例えば炭化タングステンWCにコバルトCo及びニッケルNiが添加された高靭性な高硬度材料にて構成される厚さ0.2mm〜2mmの薄板状の焼結体である。支持部78は切れ刃部77よりも摩耗し易い脆性材料からなり、例えばセラミック粒子である粉末アルミナAlと、粉末銀ローを主成分としたロー材が混錬され、焼成された焼結体である。
【0025】
この場合、支持部78は切れ刃部77よりも摩耗され易く、かつ切れ刃部77が強度的に補強、支持される必要があるため、刃先が工作物Wに押し当てられ加工されるとき、支持部78のセラミック粒子は脱落し易く、しかし切れ刃部77を支持するための強度も有さなくてはならない。そのためセラミック粒子は脱落し過ぎても問題であるため、該切削条件を満足するためには、支持部78のセラミック粒子の粒度は#400〜#1200、気孔率は30%以下とすることが望ましい。ここで、気孔率とは、
(1−(測定比重(g/cm)÷真比重(g/cm)))×100
をいう。尚、粉末アルミナAlは同じ多気孔質セラミックスのカテゴリにある粉末炭化珪素SiC等に置き換えても同様の効果を得られる。
【0026】
複数の切削刃具73を備えた切削刃先部71は以下に示す第1工程〜第4工程により製造される。
第1工程:先ず、プレス成形型の底に焼結体である切れ刃部77を載置する。本焼結体材質は超硬合金等の高靭性な高硬度材料が望ましい。
第2工程:第1工程にて載置された切れ刃部77の上部に支持部78の構成材料である、粉末アルミナAlと、粉末銀ローを主成分としたロー材を混錬し、充填する。
第3工程:第2工程の状態において所定の圧力でプレスし、切れ刃部77と支持部78を一体で成形する。
【0027】
第4工程:その後、所定の温度及び圧力条件にて焼成が行なわれる。このとき、支持部78の主な構成材料である粉末銀ローを主成分とするロー材が溶融し載置された切れ刃部77の上面に流れ、ロー付け接合される。これによって切れ刃部77は支持部78の構成材料の主成分である銀ローと結合されるため、接合面での界面剥離等の問題は起き難い。また同時に支持部78では粉末銀ローが溶融しアルミナAlと接着し、支持部78を形成する。そして、一体物となった切れ刃部77、支持部78は留め具79、ボルト80によってシャンク76に固定され、これで切削刃具73は完成される。そして、複数の切削刃具73は、金属コア75の大径コア75bの外周面に等角度間隔でロー付けもしくはねじ止め等の手段により固定され、これで切削刃先部71は完成される。
【0028】
ここで工作物Wの切削屑が排出されてくる切削刃具73の上面をすくい面73aと呼び、加工工具21の回転により切削刃先77a(ワークWに最初に接触する角部)が描く軌跡円に対して内側に逃げることによって工作物Wとの接触を回避している面を逃げ面73bと呼ぶ。切削刃具73では支持部78は工作物Wよりも硬度が低い脆性材料で構成されているため、刃先が工作物Wに押し当てられて加工を行い切れ刃部77が摩耗すると、切れ刃部77の摩耗につれて支持部78も同時に摩耗され、常に同一高さとなり切れ刃部77を支持する。
【0029】
支持部78は、砥粒が切削抵抗を受けた時、受ける力が所定値を超えると砥粒ごとに脱落する構造となっているため工作物Wに対して加工作用を及ぼさない。これにより、図3に示すように切れ刃部77の逃げ面摩耗幅Vは常に一定となり、工作物Wとの接触面から受ける切削抵抗も一定で増加されることはないため、欠損が生じることはなく切削刃具73(切削刃先部71)の長寿命化が図られる。更に、複数の切削刃具73はそれぞれ、工作物Wに対し断続的に加工を行なうため、加工によって各切削刃具73と工作物との間に発生する熱が大気中に放出され易い。よって連続切削によって熱のこもり易いバイトに比べ、熱による劣化が軽減されて、更に切削刃具73(切削刃先部71)の長寿命化が望める。
【0030】
また、複数の切削刃具73が工作物Wの加工面に対して均一な高さで取付けられることは非常に困難であるが、刃先の摩耗が許容される構成となっているため、工作物Wに対して初めに接触した切削刃具73、即ち加工面から一番近い距離で取り付けられた切削刃具73の切れ刃部77及び支持部78から摩耗が始まり、その後、順次接触した切削刃具73が摩耗していき、最後には全ての切削刃具73が工作物Wに対して同一の高さとなる。このとき、各切削刃具73の逃げ面摩耗幅Vは全て同じであるため、切削刃具73は同量の切削抵抗を受けながら、同量づつ摩耗されていくこととなり、常に工作物Wに対して同一の高さが得られる。これによって精度の高い加工結果を得ることができる。
研削砥石部72は、大径コア75bの端面に超硬質のCBN砥粒をビトリファイドボンドで結合したもので構成されている。そして、砥石外周面が、工具軸Tと所定角度θをなす傾斜した研削面74、即ちワーク軸WAと平行な研削面74となっており、工作物Wの円筒部をトラバース研削するようになっている。
【0031】
以上のような構成の加工工具21と工作物Wをワーク軸WAに平行に相対移動させることにより、工作物Wの円筒部を切削刃先部71により切削加工させ、続いて研削砥石部72により研削加工させることができる。即ち、1台の加工装置10Aに取り付けられた1つの加工工具21を1パスさせるのみで、切削加工に続いて研削加工を完了させることが可能となるため、従来必要であった両加工間の工作物Wの付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減させることができる。また、切削刃先部71の切削刃具73は、摩耗がどれだけ進行しても、摩耗前の逃げ面形状と同じ逃げ面形状が順次表出してくる構成であるため、摩耗後の逃げ面の支持部78の幅及び切れ刃部77の幅は常に一定となる。よって、研削砥石部72と一体化しても加工装置10Aに取り付けたままで切削刃先部71と研削砥石部72を整形及びツルーイングすることができ、ツルーイング作業の工数を低減させることができる。
【0032】
また、例えば図2に示す切削刃先部71の切削刃具73の切削先端77a(ワークWに最初に接触する角部)の位置と研削砥石部72の研削面74の研削先端74a(ワークWに最初に接触する角部)の位置を結ぶ線がワーク軸WAと平行になるように、即ち切削先端77aの位置と研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置に位置調整した場合は、断続切削により工作物Wの外周面に残る波状突部を連続研削によりほぼ取り除くことができる。また、切削刃具73の切削先端77aの位置が研削面74の研削先端74aの位置よりワークW側に突き出るように位置調整した場合は、上記波状突部の先端部分のみを取り除くことができる。また、研削面74の研削先端74aの位置が切削刃具73の切削先端77aの位置よりワークW側に突き出るように位置調整した場合は、上記波状突部を完全に取り除くことができる。更にこの場合であれば、研削先端74aの位置の切削先端77aの位置からの突き出し量を最小にすることで、研削砥石部72の研削量が減るため、複数の加工機で加工を行う場合と比較して研削砥石部72の長寿命化を図ることができる。即ち、切削刃具73の切削先端77aと研削面74の研削先端74aの相対位置関係を調整することにより、工作物Wの外周面の表面粗さを調整することができる。第1の実施形態の加工装置10Aでは、整形・ツルーイング工程において整形・ツルーイング装置30により上記相対位置関係を調整するようになっている。
【0033】
先ず、整形・ツルーイング工程における整形・ツルーイング装置30による切削刃具73の切削先端77aと研削面74の研削先端74aの相対位置関係の調整処理について図4に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、このフローチャートでは、工具軸Tが所定角度θで傾斜した加工工具21の切削先端77aの位置と研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置に位置調整する場合を説明する。
数値制御装置40の中央処理装置41は、ステップ100において、Z軸及びX軸サーボモータ55、51を駆動してテーブル12及び工具台20をZ軸方向及びX軸方向に移動制御し、研削砥石部72の研削面74を研削砥石修正部35の砥石修正面35aに対応する位置に位置決めする。次いで、ステップ102において、加工工具21を回転駆動すると共に切削刃先修正部34及び研削砥石修正部35を高速回転駆動し、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって前進させる。
【0034】
ステップ104において、研削面74の研削先端74aが砥石修正面35aと接触したことを検知すると、ステップ104における判断結果がYESになり、次のステップ106において、X軸サーボモータ51を逆転駆動して工具台20をテーブル12から所定量後退させる。続いて、ステップ108において、Z軸サーボモータ55を駆動してテーブル12及び工具台20をZ軸方向に移動制御し、研削砥石部72を砥石修正開始位置、すなわち研削砥石修正部35が研削砥石部72の砥石幅から外れた位置に位置決めする。次いで、ステップ110において、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって上記所定量前進させる。そして、ステップ112において、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって所定の切込量前進させ、ステップ114において、Z軸サーボモータ55を駆動してテーブル12を所定量トラバースする。これにより、研削砥石部72の研削面74が研削砥石修正部35に対して上記切込量だけ切込まれてツルーイングされる。
【0035】
次に、ステップ116において、研削面74のツルーイング終了時の加工工具21のX方向の位置P01をメモリ42に記憶する。そして、ステップ118において、X軸サーボモータ51を逆転駆動して工具台20をテーブル12から後退させ、ステップ120において、Z軸及びX軸サーボモータ55、51を駆動してテーブル12及び工具台20をZ軸方向及びX軸方向に移動制御し、切削刃先部71の切削刃具73を切削刃先修正部34の刃先修正面34aに対応する位置に位置決めする。次いで、ステップ122において、メモリ42に予め記憶されている、研削砥石部72の研削面74の研削先端74aと切削刃先部71の切削刃具73の切削先端77aのX方向の差分と、研削砥石修正部35の砥石修正面35aと切削刃先修正部34の刃先修正面34aのX方向の差分と、上記ツルーイング終了時の加工工具21のX方向の位置P01とから、刃先修正終了位置のX方向の位置P02を算出する。
【0036】
そして、ステップ124において、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって上記位置P02まで前進させた後、ステップ126において、X軸サーボモータ51を逆転駆動して工具台20をテーブル12から後退させる。これにより、切削刃先部71の切削刃具73が切削刃先修正部34の刃先修正面34aに対して所定量だけ削られて整形される。以上により、切削刃先部71の切削刃具73の整形後の切削先端77aの位置と研削砥石部72の研削面74のツルーイング後の研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置になるので、整形・ツルーイング工程における整形・ツルーイング装置30による切削先端77aと研削先端74aの相対位置関係の調整処理を終了する。
【0037】
以上のように整形・ツルーイング工程において整形・ツルーイング装置30により上記相対位置関係を調整することにより、工作物Wの円筒部を切削刃先部71により切削加工させ、続いて研削砥石部72により研削加工させることができる。即ち、1台の加工装置10Aに取り付けられた1つの加工工具21を1パスさせるのみで、切削加工に続いて研削加工を完了させることが可能となるため、従来必要であった両加工間の工作物Wの付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減させることができる。
【0038】
第1の実施形態の加工装置10Aは、1つの整形・ツルーイング装置30に切削刃先部71及び研削砥石部72を整形及びツルーイングするための2種類の切削刃先修正部34及び研削砥石修正部35を備えたものであるが、1つの整形・ツルーイング装置30に切削刃先部71及び研削砥石部72の両者を整形及びツルーイングできる1つの整形・ツルーイングロール32を備えたものとしても良い。この整形・ツルーイングロール32を備えた整形・ツルーイング装置30による切削刃具73の切削先端77aと研削面74の研削先端74aの相対位置関係の調整処理について図5に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、このフローチャートでは、工具軸Tが所定角度θで傾斜した加工工具21の切削先端77aの位置と研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置に位置調整する場合を説明する。
【0039】
ここで、整形・ツルーイングロール32は、図6(A)に示すように工具軸Tが所定角度θで傾斜した加工工具21の切削刃具73の切削先端77aを挟む先端面及び一側面を同時に整形可能な溝32bが整形・ツルーイング面32aに形成された総型砥石とし、切削先端77aを整形する溝32b内の最小径部32cから所定距離dだけ離れた最大径円筒部分32dにより研削砥石部72の研削面74をツルーイングするものとする。この最小径部32cと最大径円筒部分32dとの距離dは、整形・ツルーイング前にAEセンサ等により測定されてメモリ42に記憶されており、今回は整形・ツルーイングによる変動はないものとする。
【0040】
数値制御装置40の中央処理装置41は、ステップ200において、Z軸及びX軸サーボモータ55、51を駆動してテーブル12及び工具台20をZ軸方向及びX軸方向に移動制御し、図6(A)に示すように、切削刃先部71の切削刃具73を整形・ツルーイングロール32の整形・ツルーイング面32aの溝32bに対応する位置に位置決めする。次いで、ステップ202において、加工工具21を回転駆動すると共に整形・ツルーイングロール32を高速回転駆動し、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって前進させる。ステップ204において、切削刃具73がツルーイング面32aの溝32bと接触したことを検知すると、ステップ204における判断結果がYESになり、次のステップ206において、工具台20を上記接触検知位置から所定の切込量だけ前進させて切削刃先部71の全ての切削刃具73を整形する。
【0041】
次に、ステップ208において、図6(B)に示す切削刃具73の整形終了時の加工工具21のX方向の位置P1をメモリ42に記憶する。そして、ステップ210において、X軸サーボモータ51を逆転駆動して工具台20をテーブル12から後退させ、Z軸及びX軸サーボモータ55、51を駆動してテーブル12及び工具台20をZ軸方向及びX軸方向に移動制御し、研削砥石部72の研削面74の研削先端74aから僅かに離れた位置を整形・ツルーイングロール32の最大径円筒部分32dに対応する位置に位置決めする。次いで、ステップ212において、X軸サーボモータ51を駆動して工具台20をテーブル12側に向かって前進させる。そして、ステップ214において、メモリ42に記憶した上記位置P1からメモリ42に予め記憶されている最小径部32cと最大径円筒部分32dとの半径差dだけ離れたX方向の位置P2を求め、図6(C)に示すように、加工工具21を該位置P2に位置決めする。これにより、研削砥石部72の研削面74はツルーイング開始位置に位置決めされることになる。
【0042】
次いで、ステップ216において、Z軸サーボモータ55を駆動してテーブル12を所定量トラバースする。これにより、研削砥石部72の研削面74が整形・ツルーイングロール32に対して切削先端77aとの距離ΔPだけ切込まれてツルーイングされてトラバースが終了する。尚、上記距離ΔPがツルーイング可能な切込み量を超えているときは、トラバースを複数回繰り返して距離ΔPまで切込んでツルーイングする。以上により、切削刃先部71の切削刃具73の整形後の切削先端77aの位置と研削砥石部72の研削面74のツルーイング後の研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置になるので、整形・ツルーイング工程における整形・ツルーイング装置30による切削先端77aと研削先端74aの相対位置関係の調整処理を終了する。
【0043】
以上のように整形・ツルーイング工程において整形・ツルーイング装置30により上記相対位置関係を調整することにより、工作物Wの円筒部を切削刃先部71により切削加工させ、続いて研削砥石部72により研削加工させることができる。即ち、1台の加工装置10Aに取り付けられた1つの加工工具21を1パスさせるのみで、切削加工に続いて研削加工を完了させることが可能となるため、従来必要であった両加工間の工作物Wの付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減させることができる。
【0044】
上述した第1の実施形態に係る加工装置10Aは、1つの整形・ツルーイング装置30に切削刃先部71及び研削砥石部72を整形及びツルーイングするための2種類の切削刃先修正部34及び研削砥石修正部35を備え、もしくは1つの整形・ツルーイング装置30に切削刃先部71及び研削砥石部72の両者を整形及びツルーイングできる1つの整形・ツルーイングロール32を備えているが、第2の実施形態に係る加工装置10Bとして、切削刃先部71を整形するための切削刃先修正部34を備えた整形装置30Aを主軸台13に設け、研削砥石部72をツルーイングするための研削砥石修正部35を備えたツルーイング装置30Bを心押台14に設けても同様な作用効果を奏する。
以上説明した第1及び第2の実施形態に係る加工装置10A,10Bは、切削刃先部71及び研削砥石部72の整形及びツルーイングを続けて行うことが可能な整形・ツルーイング装置30,30A,30Bを備えているが、以下に説明する第3の実施形態に係る加工装置10Cは、研削砥石部72のみをツルーイング可能なツルーイング装置を備えた加工装置である。また、第4の実施形態に係る加工装置10Dは、切削刃先部71及び研削砥石部72の整形及びツルーイングは外部で行う加工装置である。
【0045】
第3の実施形態に係る加工装置10Cは、ツルーイング装置30Bのツルア軸31の一端に薄幅の研削砥石修正部35が取り付けられており、切削刃先部71の整形を行うことが不可である点を除いて、図1に示す第1の実施形態に係る加工装置10Aと同一構成である。第3の実施形態では、切削刃先部71及び研削砥石部72を整形及びツルーイングする場合、先ず工具台20から加工工具21を取り外して外部に設置された切削刃先部用整形装置により切削刃先部71の切削刃具73を整形する。次に工具台20に加工工具21を取り付け、AEセンサ33を用いて切削刃具73の切削先端77aの位置と研削面74の研削先端74aの位置を測定し、それらの測定結果に基づいて研削先端74aが切削先端77aの位置より切込み量だけ小径側に位置するようにB軸サーボモータ25を駆動して回転テーブル24を工具台20と共にB軸周りに回転させる。次いで、X軸サーボモータ51を駆動して切削刃具73の切削先端77aの位置をツルーイング装置30Bの研削砥石修正部35の外周面の位置と一致させる。その後に、Z軸サーボモータ55を駆動してテーブル12が所定量トラバースされ、研削砥石部72の研削面74が研削砥石修正部35に対して切込み量だけ切込まれてツルーイングされる。以上により、切削刃先部71の切削刃具73の整形後の切削先端77aの位置と研削砥石部72の研削面74のツルーイング後の研削先端74aの位置がX軸方向で一致する位置になるので、ツルーイング工程におけるツルーイング装置30B及び角度調整機構70による切削先端77aと研削先端74aの相対位置関係の調整処理を終了する。
【0046】
このような構成の加工装置10Cであっても、1台の加工装置10Cに取り付けられた1つの加工工具21を1パスさせるのみで、切削加工に続いて研削加工を完了させることが可能となるため、従来必要であった両加工間の工作物Wの付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減させることができる。尚、切削刃先部71の整形は加工装置10C上で自動的に行われないため、第1の実施形態で説明した切削刃先部71を用いずに通常のバイト形状をした切削刃先部を用いても良い。
【0047】
第4の実施形態に係る加工装置10Dは、図1に示す第1の実施形態に係る加工装置10Aと比較して切削刃先部71及び研削砥石部72の整形及びツルーイングを行うことが不可である点を除いて同一構成である。即ち、主軸台13には、整形・ツルーイング装置が設けられていないので、切削刃先部71及び研削砥石部72を整形及びツルーイングする場合は、工具台20から加工工具21を取り外して外部に設置された切削刃先部用整形装置及び研削砥石部用ツルーイング装置により切削刃先部71及び研削砥石部72を夫々整形及びツルーイングする。
即ち、切削刃具73の切削先端77aの位置と研削面74の研削先端74aの位置がX軸方向で一致するように夫々整形及びツルーイングする。この場合、工具台20に加工工具21を取り付けたとき、切削刃具73の切削先端77aの位置と研削面74の研削先端74aの位置に多少の位置ずれが生じていても、工具台20に加工工具21を取り付けた後、切削先端77aの位置及び研削先端74aの位置をAEセンサ33により測定し、それらの測定結果に基づいて角度調整機構70により回転テーブル24を工具台20と共に回転することにより、切削先端77aの位置と研削先端74aの位置をX軸方向でほぼ一致する位置に調整することができる。
【0048】
このような構成の加工装置10Dであっても、1台の加工装置10Dに取り付けられた1つの加工工具21を1パスさせるのみで、切削加工に続いて研削加工を完了させることが可能となるため、従来必要であった両加工間の工作物Wの付け替え等を無くすことができ、全工程の工数を低減させることができる。尚、切削刃先部71及び研削砥石部72の整形及びツルーイングは加工装置10D上で自動的に行われないため、第1の実施形態で説明した切削刃先部71を用いずに通常のバイト形状をした切削刃先部を用いても良く、また、第1の実施形態で説明した多層の研削砥石部72を用いずに電着の研削砥石部を用いても良い。
【0049】
尚、図4及び図5に示すフローチャートは、本発明を実施する上で好適な一例を示すものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係る加工装置の全体を示す上面図である。
【図2】図1の加工工具を示す斜視図である。
【図3】図2の加工工具の切削刃具を示す斜視図である。
【図4】整形・ツルーイング工程における2種類の切削刃先修正部及び研削砥石修正部を備えた整形・ツルーイング装置による切削刃先部の切削刃具の切削先端と研削砥石部の研削面の研削先端の相対位置関係の調整処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】整形・ツルーイング工程における1つの整形・ツルーイングロールを備えた整形・ツルーイング装置による切削刃先部の切削刃具の切削先端と研削砥石部の研削面の研削先端の相対位置関係の調整処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】整形・ツルーイング工程における整形・ツルーイング装置による切削刃先部の切削刃具の切削先端と研削砥石部の研削面の研削先端の相対位置関係の調整処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
10A,10B,10C,10D・・・加工装置、20・・・工具台、21・・・加工工具、30・・・整形・ツルーイング装置、32・・・整形・ツルーイングロール、34・・・切削刃先修正部、35・・・研削砥石修正部、70・・・角度調整機構、71・・・切削刃先部、72・・・研削砥石部、73・・・切削刃具、74・・・研削面、75・・・金属コア、76・・・シャンク部、77・・・切れ刃部、78・・・支持部、T・・・工具軸、W・・・工作物、WA・・・ワーク軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を取り付けるワーク軸と加工工具を取り付ける工具軸とを備え、円筒部分を有する前記被加工物をワーク軸周りに回転させ、前記加工工具を工具軸周りに回転させつつワーク軸方向に前記被加工物と相対移動させて該被加工物を加工する加工装置において、
前記加工工具は、切削加工用の切削刃先部と研削加工用の研削砥石部を有し、前記工具軸を前記ワーク軸に対し平行、もしくは所定角度傾斜するように配置し、前記円筒部分に対する一度の前記相対移動により切削加工に続いて研削加工を行うことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1において、前記切削刃先部と前記研削砥石先端部の相対位置関係を調整する調整手段を備えていることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項2において、前記調整手段は、前記切削刃先部を整形する装置及び前記研削砥石部をツルーイングする装置のうち少なくとも前記研削砥石部をツルーイングする装置であることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項2において、前記調整手段は、前記ワーク軸と前記工具軸を含む平面内にて前記ワーク軸に対する前記工具軸の相対角度を変更する機構であることを特徴とする加工装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記切削刃先部は、高硬度の材料で薄板状に形成された切れ刃部と、前記被加工物との接触による摩耗が前記切れ刃部より多い材質で形成され表面に前記切れ刃部が固着された支持部とを有する切削刃具を、円周上に複数個配置した構成であることを特徴とする加工装置。
【請求項6】
円筒部分を有する被加工物を当該円筒軸周りに回転させ、工具軸周りに回転しつつ前記円筒軸方向に前記被加工物と相対移動して加工する加工工具において、
切削加工用の切削刃先部と研削加工用の研削砥石部を有し、
前記切削刃先部は、高硬度の材料で薄板状に形成された切れ刃部と、前記被加工物との接触による摩耗が前記切れ刃部より多い材質で形成され表面に前記切れ刃部が固着された支持部とを有する切削刃具を、円周上に複数個配置した構成であり、
前記円筒部分に対する一度の前記相対移動により切削加工に続いて研削加工を行うことを特徴とする加工工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12553(P2010−12553A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174538(P2008−174538)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】