説明

加工装置

【課題】操作部を設けた一側面に直交する奥行寸法を犠牲にして、一側面側の幅寸法を小さくすることによって、工場等で横並びに複数配置されたときのオペレータにかかる負担を軽減することができる加工装置を提供すること。
【解決手段】一側面に操作パネル15が設けられた筐体フレーム2と、筐体フレーム2内において、ワークWを保持した保持テーブル5と加工機構4とを、筐体フレーム2の一側面に対して略平行な左右方向及び略直交する前後方向に相対的に移動させる移動機構と、筐体フレーム2内に延出された配線36を保護する配線保護機構41とを備え、配線保護機構41は、移動機構に対して前後方向に並んで配置され、配線36と共に移動機構の前後方向の移動に追従する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークを加工する加工装置に関し、特に、工場等で横並びに配置されてワークの生産ラインを構成する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェーハ等のワークの表面に格子状に分割予定ライン(ストリート)が形成され、分割予定ラインにより区画された領域にIC、LSI等の回路が形成される。そして、ワークは、加工装置により分割予定ラインに沿って個々の半導体チップに分割される。このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用される。
【0003】
このように、ワークの分割予定ラインに沿った分割は、切削ブレードを用いて切断する切削加工の他、レーザー光線を照射して切断するレーザー加工で行われる。従来、ワークを分割予定ラインに沿って分割する加工装置として、加工装置の筐体フレームの一側面に操作パネルを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この加工装置は、オペレータが操作パネルの所定位置にタッチすることで、レーザー加工装置の加工条件等が入力されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−21464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような加工装置を複数備えた工場等では、操作パネルが設けられた一側面を同一方向に向けて加工装置を横並びに配置し、一人のオペレータが複数の加工装置を稼働することが一般的となっている。この場合、オペレータは、複数の加工装置の操作パネルを操作するため、複数の加工装置の並び方向に沿って広い範囲を移動しなければならならず、負担となっていた。
【0006】
このため、工場等に配置される加工装置は、操作パネル等の操作部が設けられた筐体フレームの一側面側の幅寸法を小さく設計することが求められている。この要求に応えるため、加工装置を小型化することで筐体フレームの一側面側の幅寸法を小さくすることが考えられるが、加工装置は多くの部品を複雑に組み合わせて構成されており、単純に小型化することができなかった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、操作部を設けた一側面に直交する奥行寸法を犠牲にして、一側面側の幅寸法を小さくすることによって、工場等で横並びに複数配置されたときのオペレータにかかる負担を軽減することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加工装置は、ワークを保持する保持機構と、前記保持機構に保持されたワークに加工を施す加工機構と、オペレータの操作によって前記保持機構と前記加工機構とを駆動する操作部と、前記保持機構及び前記加工機構が配設される支持基台と、前記保持機構と前記加工機構とを前記操作部が配設された操作面側と平行な左右方向に相対的に移動させる第一の移動機構と、前記保持機構と前記加工機構とを前記操作面側に直交する前後方向に相対的に移動させる第二の移動機構と、を有する加工装置であって、前記支持基台から伸びて前記第二の移動機構に接続される配線を保護する配線保護機構を有し、前記配線保護機構は、前記配線に沿って前記配線を囲繞して保護し、屈曲することによって前記前後方向に伸縮可能に構成された保護手段と、前記保護手段を前記第二の移動機構に固定する第一の固定手段と、前記保護手段を前記支持基台に固定する第二の固定手段と、を有し、前記配線保護機構と前記第二の移動機構とは互いに前記前後方向に並ぶ様に配置され、前記保護手段は、前記第一の固定手段と前記第二の固定手段が前記前後方向において接近して縮んだ際に前記保護手段が前記第二の移動機構の前記左右方向における幅以下に納まるように前記第一の固定手段と前記第二の固定手段によって固定されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、保持機構及び加工機構を操作面側に直交する前後方向に移動させる第二の移動機構と、第二の移動機構に接続される配線を保護する配線保護機構とが前後方向に並んで配置されている。また、配線保護機構は、第二の移動機構の移動に伴って伸縮され、収縮時には保護手段が第二の移動機構の左右方向における幅寸法以下に収められている。したがって、第二の移動機構と配線保護機構とが左右方向に並んで配置される構成と比較して、操作面側と直交する前後方向の奥行寸法が大きくなる一方、操作面側と平行な左右方向の幅寸法を小さくできる。このように、奥行寸法を犠牲にして幅寸法を小さくすることで、複数の加工装置が横並びに配置される工場等でのオペレータの移動範囲を狭めて、オペレータにかかる負担を軽減することができる。
【0010】
また、本発明の加工装置によれば、前記第一の固定手段と前記第二の固定手段の少なくとも一方は、前記保護手段の屈曲可能方向に垂直に交わる方向の回転軸と、前記回転軸を中心として回転し前記保護手段が固定される設置部材と、を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作部を設けた一側面に直交する奥行寸法を犠牲にして、一側面側の幅寸法を小さくすることによって、複数の加工装置が横並びに配置される工場等でのオペレータの移動範囲を狭めて、オペレータにかかる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の斜視図である。
【図2】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、配線保護機構の取り付け構成の説明図である。
【図3】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、配線保護機構の配置構成の説明図である。
【図4】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、保持テーブルの左右方向の移動範囲の説明図である。
【図5】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、環状フレームに支持された半導体ウェーハの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。最初に、本実施の形態に係るレーザー加工装置について説明する前に、加工対象となる半導体ウェーハについて簡単に説明する。図5は、環状フレームに支持された半導体ウェーハの斜視図である。
【0014】
図5に示すように、半導体ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された分割予定ライン71によって複数の領域に区画されている。この区画された各領域には、IC、LSI等のデバイス72が形成されている。また、半導体ウェーハWは、貼着テープ73を介して環状フレーム74に支持され、レーザー加工装置1に搬入及び搬出される。
【0015】
なお、本実施の形態においては、ワークとしてシリコンウェーハ、ガリウムヒソ等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。半導体ウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をワークとしてもよい。
【0016】
次に、図1を参照して、本実施の形態に係るレーザー加工装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。なお、以下の説明では、レーザー加工装置によって半導体ウェーハを分割する構成について説明するが、この構成に限定されるものではない。本発明は、半導体ウェーハに対して加工を施す加工装置であれば、どのような加工装置にも適用可能である。なお、図1においては、説明の便宜上、レーザー加工装置の筐体フレーム及びベース部を一点鎖線で示している。
【0017】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、直方体状の筐体フレーム(支持基台)2を有している。筐体フレーム2内は、ベース部3によって上下に仕切られ、上側に半導体ウェーハWにレーザー加工を施す加工機構4、下側に半導体ウェーハWを保持する保持テーブル(保持機構)5が配設されている。レーザー加工装置1は、この加工機構4と保持テーブル5とを相対移動させることで、半導体ウェーハWを加工するように構成されている。
【0018】
筐体フレーム2の正面部11には、タッチパネル式の操作パネル(操作部)15が設けられている。操作パネル15は、オペレータの操作によって加工機構4及び保持テーブル5を駆動させるものであり、レーザー光線の出力、波長、周波数、加工送り速度等の各種加工条件が設定される。また、筐体フレーム2の正面部11には、操作パネル15に隣接して開閉扉16が設けられ、この開閉扉16を介して筐体フレーム2内に半導体ウェーハWが投入される。
【0019】
ベース部3には、筐体フレーム2内の上下空間を連通する開口部18が形成されている。開口部18は、開閉扉16に対応して形成されており、開閉扉16を介して筐体フレーム2の下側空間、すなわち保持テーブル5に対し半導体ウェーハWを投入可能にしている。また、筐体フレーム2の下部は台座部13となっており、台座部13の上面には、保持テーブル5を操作パネル15が配置された正面部11に略直交する前後方向、及び正面部11に略平行な左右方向に移動させる保持テーブル移動機構6が設けられている。
【0020】
保持テーブル移動機構6は、保持テーブル5を前後方向となるX軸方向に移動するX軸方向移動機構(第二の移動機構)21と、保持テーブル5を左右方向となるY軸方向に移動するY軸方向移動機構(第一の移動機構)22とを備えている。X軸方向移動機構21は、台座部13の上面に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール23と、一対のガイドレール23にスライド可能に支持されたモータ駆動のX軸テーブル24とを有している。
【0021】
Y軸方向移動機構22は、X軸テーブル24の上面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール25と、一対のガイドレール25にスライド可能に支持されたモータ駆動のY軸テーブル26を有している。Y軸テーブル26の上面には、保持テーブル5が設けられている。また、X軸テーブル24、Y軸テーブル26の背面部側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にそれぞれボールネジ31、32が螺合されている。ボールネジ31、32の一端部には、駆動モータ33、34が連結され、この駆動モータ33、34によりボールネジ31、32が回転駆動される。
【0022】
X軸方向移動機構21、Y軸方向移動機構22、保持テーブル5には、筐体フレーム2外の電源から複数の配線36により電力が供給されている。複数の配線36は、筐体フレーム2の背面部12側から筐体フレーム2内に延出し、X軸テーブル24の後面37側からX軸テーブル24内に形成された配線空間に敷設され、X軸方向移動機構21の各部に接続される。また、一部の配線36は、X軸テーブル24の上面38からX軸テーブル24外に延出し、Y軸テーブル26の下面39側からY軸テーブル26内に形成された配線空間に敷設され、Y軸方向移動機構22及び保持テーブル5の各部に接続される。
【0023】
この場合、複数の配線36は、筐体フレーム2の背面部12からX軸テーブル24の後面37にわたって余裕を持った長さで引き出されており、途中部分でU字状に湾曲されている。また、一部の配線36は、X軸テーブル24の上面38からY軸テーブル26の下面39にわたって余裕を持った長さで引き出されており、途中部分でU字状に湾曲されている。配線36のU字状に引き出された余長部分には、配線36の捩れや断線を防止するための配線保護機構41、42が取り付けられている。
【0024】
配線保護機構41、42は、多数の連結体を相互に回動可能に長鎖状に連結した、いわゆるケーブルベア(登録商標)であり、複数の配線36を収容可能に構成されている。配線保護機構41は、X軸方向移動機構21に対して前後方向に隣接し、横向き姿勢でX軸テーブル24の後面37と筐体フレーム2の背面部12との間に配置されている。配線保護機構42は、Y軸方向移動機構22に対して前後方向に隣接し、縦向き姿勢でX軸テーブル24の上面38とY軸テーブル26の下面39との間に配置されている。
【0025】
配線保護機構41は、複数の配線36に沿ってU字状に湾曲(屈曲)され、一端部(移動端部)がX軸テーブル24の後面37に接続され、他端部(固定端部)が筐体フレーム2の背面部12に接続されている。配線保護機構41の一端部及び他端部は、X軸テーブル24の前後方向の移動に伴って前後方向に離間接近される。配線保護機構41は、この一端部及び他端部の離間接近により前後方向に伸縮され、X軸テーブル24の移動に追従可能となっている。なお、配線保護機構41の取り付け構成の詳細については後述する。
【0026】
配線保護機構42は、複数の配線36に沿ってU字状に湾曲(屈曲)され、一端部(移動端部)がY軸テーブル26の下面39に接続され、他端部(固定端部)がX軸テーブル24の上面38に接続されている。配線保護機構42の一端部は、Y軸テーブル26の左右方向への移動に伴って、X軸テーブル24に固定された他端部に対して左右方向に移動される。配線保護機構42は、この他端部に対する一端部の移動によりU字状の湾曲部分が左右方向に移動され、Y軸テーブル26の移動に追従可能となっている。
【0027】
このように、配線保護機構41、42は、それぞれX軸方向移動機構21、Y軸方向移動機構22に対して前後方向に並んで配置され、X軸方向移動機構21、Y軸方向移動機構22の移動に追従されている。このため、レーザー加工装置1は、X軸方向移動機構21、Y軸方向移動機構22に対して配線保護機構41、42を左右方向に並べて配置する構成と比較して、左右方向の幅寸法を小さくしている。
【0028】
保持テーブル5は、Y軸テーブル26の上面においてZ軸回りに回転可能なθテーブル44と、θテーブル44の上部に設けられ、半導体ウェーハWを吸着保持するワーク保持部45とを有している。ワーク保持部45は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面46が形成されている。吸着面46は、負圧により貼着テープ73を介して半導体ウェーハWを吸着する面であり、θテーブル44の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0029】
ワーク保持部45の周囲には、θテーブル44の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部47が設けられている。この4つのクランプ部47は、エアーアクチュエータにより駆動し、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム74を四方から挟持固定する。
【0030】
また、加工機構4は、半導体ウェーハWにレーザー光線を照射する加工ヘッド(加工手段)51と、半導体ウェーハWの上面を撮像する撮像部(撮像手段)52とを有している。加工ヘッド51及び撮像部52は、ベース部3に支持された筐体53下部に前後方向に並んで配置され、ベース部3の図示しない開口部を介して保持テーブル5に保持された半導体ウェーハWに対向される。
【0031】
また、筐体53内には、加工機構4の駆動を統括制御する制御部54と、レーザー光線を発振する発振器55と、図示しないレーザー光学系とが設けられている。制御部54は、操作パネル15に設定された加工条件に基づいて加工ヘッド51によるレーザー加工処理を制御する他、撮像部52によるアライメント処理を制御する。加工ヘッド51は、発振器55から発振されたレーザー光線を集光し、保持テーブル5に保持された半導体ウェーハWに照射する。
【0032】
撮像部52は、CCD等の撮像素子を有しており、撮像素子により半導体ウェーハWを撮像して、半導体ウェーハWに含まれるアライメントターゲットを探索する。撮像部52は、保持テーブル5の移動に伴って半導体ウェーハW上の撮像範囲を移動させて連続的に撮像し、撮像画像を制御部54に出力する。制御部54は、予め記憶部に記憶された基準パターンと撮像画像に含まれるアライメントターゲットとをパターンマッチングさせることにより、アライメントターゲットを探索し、これを基準として分割予定ライン71の割り出し(アライメント処理)を実施する。
【0033】
このように、加工ヘッド51及び撮像部52は、筐体53において前後方向に並んで配置され、加工箇所と撮像箇所とを前後方向に並べてレーザー加工及びアライメント処理を実施する。このため、レーザー加工装置1は、加工ヘッド51の加工箇所と撮像部52の撮像箇所とが左右方向に並ぶ構成と比較して、保持テーブル5の左右方向の移動範囲を小さくし、左右方向の幅寸法を小さくしている。
【0034】
このように構成されたレーザー加工装置1は、工場等において操作パネル15を設けた正面側を一方向に向けて他の加工装置と共に横並びに配置され、少数(例えば、1人)のオペレータによって稼働される。そして、オペレータが、複数の加工装置の並びの方向に沿って移動し、各加工装置に対して操作パネルの操作、半導体ウェーハの投入作業を行うことで、連続的に加工が実施される。
【0035】
ここで、図2を参照して、X軸方向移動テーブルに対して前後方向に並んで配置される配線保護機構の取り付け構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る配線保護機構の取り付け構成の説明図である。なお、図2においては、(a)が本実施の形態に係る配線保護機構の収縮状態を示し、(b)が本実施の形態に係る配線保護機構の伸長状態を示し、(c)が比較例に係る配線保護機構の伸長状態を示している。また、ここでは、Y軸方向移動機構及び保持テーブルを省略して記載している。
【0036】
図2(a)に示すように、配線保護機構41は、多数の連結体からなる機構本体(保護手段)61と、機構本体61の一端部をX軸テーブル24に固定する第一の固定部(第一の固定手段)62と、機構本体61の他端部を筐体フレーム2の背面部12に固定する第二の固定部(第二の固定手段)63とを有している。機構本体61は、X軸テーブル24が後方位置にある場合に、上面視U字状に収縮している。このとき、機構本体61の一端側及び他端側は、湾曲による折り返し部分を挟んでX軸テーブル24の後面37及び筐体フレーム2の背面部12に沿う左右方向に延在する。
【0037】
第一の固定部62は、一対の取り付け板(設置部材)64、65と、一対の取り付け板64、65の側端部を回転可能に連結する回転軸66とを有している。取り付け板64は、X軸テーブル24の後面37に固定され、取り付け板65は、X軸テーブル24の後面37に対向する機構本体61の対向面67に固定される。これにより、機構本体61の一端側は、回転軸66を中心としてX軸テーブル24に対してZ軸回りに(機構本体61の屈曲可能方向に垂直に交わる方向を軸として)回転可能に接続される。
【0038】
第二の固定部63は、平板状に形成されており、筐体フレーム2の背面部12に固定されると共に、背面部12に対向する機構本体61の対向面68に固定される。これにより、配線保護機構41の他端側は、第二の固定部63を挟んで、筐体フレーム2の背面部12に対して回転不能に接続される。
【0039】
図2(b)に示すように、X軸テーブル24が前方に移動されると、機構本体61が一端側から前方に牽引される。このとき、機構本体61の一端部は、第一の固定部62によりX軸テーブル24に対してヒンジ連結されているため、回転軸66を中心として矢印D方向に回転され、X軸テーブル24の後面37に沿う左右方向から前後方向側に向けられる。したがって、本実施の形態に係る配線保護機構41は、図2(c)に示すような、機構本体82の両端部をX軸テーブル24及び筐体フレーム2に対して回転不能に接続した比較例に係る配線保護機構81と比較して、前後方向のストロークを長くとることができる。
【0040】
また、配線保護機構41の前後方向のストロークを長くとることが可能なため、短い配線保護機構41を用いることができる。さらに、X軸テーブル24の後方移動時に、機構本体61の一端部とX軸テーブル24とのヒンジ連結により、比較例に係る配線保護機構81と比較してU字状の湾曲部分の左右方向への膨らみを抑えることができる。このように、本実施の形態に係る配線保護機構41は、短尺に形成することができると共に、湾曲部分の左右方向への膨らみを抑制できるため、収縮時にX軸テーブル24の左右方向の幅寸法以下に収めやすく構成されている。これにより、配線保護機構41の左右方向への膨らみによってレーザー加工装置1の左右方向の幅寸法が大きくなることが防止される。
【0041】
なお、本実施の形態では、機構本体61の一端部がX軸テーブル24にヒンジ連結される構成としたが、この構成に限定されるものではない。機構本体61の他端部が筐体フレーム2にヒンジ連結される構成としてもよいし、機構本体61の両端部がX軸テーブル24及び筐体フレーム2にヒンジ連結される構成としてもよい。機構本体61の両端部がX軸テーブル24及び筐体フレーム2にヒンジ連結される場合には、配線保護機構41の前後方向のストロークをさらに長くとることが可能となる。
【0042】
図3を参照して、配線保護機構の配置構成とレーザー加工装置の左右方向の幅寸法の関係について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る配線保護機構の配置構成の説明図である。なお、図3においては、(a)が比較例に係る配線保護機構の配置構成を示し、(b)が本実施の形態に係る配線保護機構の配置構成を示している。また、ここでは、Y軸方向移動機構及び保持テーブルを省略して記載している。
【0043】
図3(a)に示すように、比較例に係るレーザー加工装置83は、配線保護機構88をX軸方向移動機構85に対して左右方向に並べて、台座部86とX軸テーブル87との間に縦向き姿勢で配置している。配線保護機構88は、X軸テーブル87の下方において、X軸テーブル87の左右方向の一端に沿って前後方向に延在している。X軸テーブル87は、配線保護機構88の配置領域を確保するために、左右方向に大きく形成されている。このため、比較例に係るレーザー加工装置83は、大きな幅寸法で形成されている。
【0044】
このように、比較例に係るレーザー加工装置83は、左右方向の幅寸法を大きく形成して、配線保護機構88をX軸方向移動機構85に対して左右方向に並べて配置している。よって、比較例に係る複数のレーザー加工装置83が横並びに配置された工場等では、加工装置の稼働ためにオペレータが移動する範囲が広くなって、オペレータにかかる負担が大きくなる。
【0045】
図3(b)に示すように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、配線保護機構41をX軸方向移動機構21に対して前後方向に並べて、X軸テーブル24と筐体フレーム2の背面部12との間に横向き姿勢で配置している。配線保護機構41は、X軸テーブル24の後方において、X軸テーブル24の後面37に沿って左右方向に延在している。このため、X軸テーブル24が、配線保護機構41の配置領域を確保するために左右方向に大きく形成されることがない。また、X軸テーブル24の後方移動時には、配線保護機構41の左右方向における延在範囲が、X軸テーブル24の左右方向の幅寸法以下に収められている。
【0046】
このように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、配線保護機構41がX軸方向移動機構21に対して前後方向に並んで配置されると共に、配線保護機構41の左右方向における延在範囲がX軸テーブル24の左右方向の幅寸法以下に収められている。したがって、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、比較例に係るレーザー加工装置83と比較して、配線保護機構41をX軸方向移動機構21に対して前後方向に並べて配置した分だけ奥行寸法が大きくなるが、左右方向の幅寸法を小さくすることが可能となっている。よって、本実施の形態に係る複数のレーザー加工装置1が横並びに配置された工場等では、加工装置の稼働ためにオペレータが移動する範囲を狭くして、オペレータにかかる負担を軽減することができる。
【0047】
図4を参照して、保持テーブルの左右方向の移動範囲とレーザー加工装置の左右方向の幅寸法の関係について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る保持テーブルの左右方向の移動範囲の説明図である。なお、図4においては、(a)が比較例に係る保持テーブルの左右方向の移動範囲を示し、(b)が本実施の形態に係る保持テーブルの左右方向の移動範囲を示している。
【0048】
図4(a)に示すように、比較例に係るレーザー加工装置83は、加工ヘッドの加工箇所A1と撮像部の撮像箇所A2とが左右方向に並ぶように構成されている。この場合、保持テーブル89は、レーザー加工時には加工箇所A1を中心として移動され、アライメント処理時には撮像箇所A2を中心として移動される。よって、保持テーブル89は、レーザー加工時とアライメント処理時とで、前後方向の移動範囲が変わらないものの、左右方向の移動範囲にズレが生じている。このため、比較例に係るレーザー加工装置83は、保持テーブル89の左右方向における最大移動範囲をカバー可能なように、幅寸法を大きく形成されている。
【0049】
このように、比較例に係るレーザー加工装置83は、左右方向の寸法幅を大きく形成して、加工箇所A1と撮像箇所A2とを左右方向に並ぶように配置している。よって、比較例に係る複数のレーザー加工装置83が横並びに配置された工場等では、加工装置の稼働ためにオペレータが移動する範囲が広くなって、オペレータにかかる負担が大きくなる。
【0050】
図4(b)に示すように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、加工ヘッドの加工箇所A1と撮像部の撮像箇所A2とが前後方向に並ぶように構成されている。この場合、加工箇所A1と撮像箇所A2とが前後方向に並ぶように配置されるため、レーザー加工時とアライメント処理時とで、前後方向の移動範囲にズレが生じるものの、左右方向の移動範囲を一致させている。
【0051】
このように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、加工箇所A1と撮像箇所A2とを前後方向に並べて、レーザー加工時とアライメント処理時とで保持テーブル5の左右方向の移動範囲を一致させている。したがって、本実施の形態に係るレーザー加工装置1は、比較例に係るレーザー加工装置1と比較して、加工箇所A1と撮像箇所A2とを前後方向に並べた分だけ奥行寸法が大きくなるが、左右方向の幅寸法を小さくすることが可能となっている。よって、本実施の形態に係る複数のレーザー加工装置1が横並びに配置された工場等では、加工装置の稼働ためにオペレータが移動する範囲を狭くして、オペレータにかかる負担をさらに軽減することができる。
【0052】
ここで、レーザー加工装置1による加工動作について説明する。オペレータによって開閉扉16を介して保持テーブル5に半導体ウェーハWが載置される。次に、保持テーブル5が、加工機構4の下方に移動され、半導体ウェーハWを撮像部52及び加工ヘッド51に対向させる。次に、撮像部52により保持テーブル5上の半導体ウェーハWの表面が撮像され、撮像部52により撮像された撮像画像に基づいてアライメント処理が実施される。
【0053】
次に、加工ヘッド51のレーザー射出口が半導体ウェーハWのX軸方向の分割予定ライン71に位置合わせされ、レーザー光線が半導体ウェーハWに照射される。加工ヘッド51により半導体ウェーハWにレーザー光線が照射されると、保持テーブル5がX軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの1本の分割予定ライン71が加工される。続いて、保持テーブル5がY軸方向に数ピッチ分だけ移動され、加工ヘッド51のレーザー射出口が隣接する分割予定ライン71に位置合わせされる。そして、保持テーブル5がX軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの1本の分割予定ライン71が加工される。この動作が繰り返されて半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン71が加工される。
【0054】
次に、保持テーブル5上の半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン71が加工されると、θテーブル44が90度回転され、半導体ウェーハWのY軸方向の分割予定ライン71の加工が開始される。保持テーブル5上の半導体ウェーハWの全ての分割予定ライン71が加工されると、レーザー加工装置1が停止される。そして、オペレータによって開閉扉16を介して半導体ウェーハWが取り出され、新たな半導体ウェーハWが投入される。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1によれば、X軸方向移動機構21と配線保護機構41とが前後方向に並んで配置されている。また、配線保護機構41は、X軸方向移動機構21の移動に伴って伸縮され、収縮時には配線保護機構41の左右方向における延在範囲が、X軸テーブル24の左右方向の幅寸法以下に収められている。したがって、レーザー加工装置1は、X軸方向移動機構21と配線保護機構41とが左右方向に並んで配置される構成と比較して、奥行寸法が大きくなる一方、左右方向の幅寸法を小さくすることができる。このように、前後方向の寸法を犠牲にして左右方向の寸法を小さくすることで、複数の加工装置が横並びに配置される工場等でのオペレータの移動範囲を狭めて、オペレータにかかる負担を軽減することができる。
【0056】
なお、上記した実施の形態においては、筐体フレームが長方形状に形成される構成としたが、この構成に限定されるものではない。筐体フレームは、内側にレーザー加工機構及び保持テーブルを収容可能な構成であれば、どのような構成でもよい。
【0057】
また、上記した実施の形態においては、レーザー加工装置は、オペレータによって筐体フレーム内にワークが投入される構成としたが、この構成に限定されるものではない。レーザー加工装置が、外部から筐体フレーム内にワークを動的に投入する構成としてもよい。
【0058】
また、上記した実施の形態においては、半導体ウェーハは、レーザー加工装置により分割される構成としたが、この構成に限定されるものではない。加工装置は、半導体ウェーハを分割可能な構成であればよく、例えば、切削ブレードによって半導体ウェーハを切削するダイシング装置であってもよい。
【0059】
また、上記した実施の形態においては、配線保護機構が、複数の連結体を連結した鎖構造を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。配線保護機構は、配線を収容した状態で、X軸方向移動機構及びY軸方向移動機構の移動に追従可能な構成であれば、どのような構成でもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態においては、配線保護機構が、第一、第二の固定部を介して取り付けられる構成としたが、この構成に限定されるものはない。配線保護機構の一端部及び他端部が、取り付け対象に対して直に取り付けられる構成としてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態においては、第一の固定部は、一対の取り付け板を回転軸で回動可能に連結して構成されたが、この構成に限定されるものではない。第一の固定部は、機構本体をX軸方向移動機構にヒンジ連結可能な構成であればよく、例えば、回転軸を介さずに一対の取り付け板を回動可能に連結して構成してもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、保持テーブルが、加工機構に対して移動する構成としたが、この構成に限定されるものではない。本発明は、保持テーブルと加工機構とを相対的に移動させる構成に適用でき、例えば、保持テーブルに対して加工機構を移動させる構成にも適用可能である。この場合、配線保護機構は、加工機構を移動させる移動機構に対して前後方向に並んで配置される。
【0063】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、操作部を設けた一側面に直交する奥行寸法を犠牲にして、一側面側の幅寸法を小さくすることによってオペレータにかかる負担を軽減することができるという効果を有し、特に、工場等において横並びに配置されてワークの生産ラインを構成する加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 レーザー加工装置(加工装置)
2 筐体フレーム(支持基台)
3 ベース部
4 加工機構
5 保持テーブル(保持機構)
6 保持テーブル移動機構
11 正面部
12 背面部
15 操作パネル(操作部)
21 X軸方向移動機構(第二の移動機構)
22 Y軸方向移動機構(第一の移動機構)
24 X軸テーブル
26 Y軸テーブル
36 配線
41、42 配線保護機構
51 加工ヘッド(加工手段)
52 撮像部(撮像手段)
61 機構本体(保護手段)
62 第一の固定部(第一の固定手段)
63 第二の固定部(第二の固定手段)
64、65 取り付け板(設置部材)
66 回転軸
A1 加工箇所
A2 撮像箇所
W 半導体ウェーハ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持機構と、
前記保持機構に保持されたワークに加工を施す加工機構と、
オペレータの操作によって前記保持機構と前記加工機構とを駆動する操作部と、
前記保持機構及び前記加工機構が配設される支持基台と、
前記保持機構と前記加工機構とを前記操作部が配設された操作面側と平行な左右方向に相対的に移動させる第一の移動機構と、
前記保持機構と前記加工機構とを前記操作面側に直交する前後方向に相対的に移動させる第二の移動機構と、を有する加工装置であって、
前記支持基台から伸びて前記第二の移動機構に接続される配線を保護する配線保護機構を有し、
前記配線保護機構は、
前記配線に沿って前記配線を囲繞して保護し、屈曲することによって前記前後方向に伸縮可能に構成された保護手段と、
前記保護手段を前記第二の移動機構に固定する第一の固定手段と、
前記保護手段を前記支持基台に固定する第二の固定手段と、を有し、
前記配線保護機構と前記第二の移動機構とは互いに前記前後方向に並ぶ様に配置され、
前記保護手段は、
前記第一の固定手段と前記第二の固定手段が前記前後方向において接近して縮んだ際に前記保護手段が前記第二の移動機構の前記左右方向における幅以下に納まるように前記第一の固定手段と前記第二の固定手段によって固定されることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記第一の固定手段と前記第二の固定手段の少なくとも一方は、
前記保護手段の屈曲可能方向に垂直に交わる方向の回転軸と、
前記回転軸を中心として回転し前記保護手段が固定される設置部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−183403(P2011−183403A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47975(P2010−47975)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】