説明

加湿器

【課題】電解水で加湿を行えるようにした加湿器において、電解水濃度を容易に制御できるようにする。
【解決手段】加湿器1は、筐体10内に、電解水生成部22内の電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタ17と、加湿フィルタ17を通過する空気流を生成する送風機16を配置している。加湿フィルタ17で加湿及び除菌、脱臭がなされた空気は吹出口12より筐体10の外に吹き出される。電解水生成部22の電極20間に流れる電流は電極ドライブ回路74で制御されるものであり、電極ドライブ回路74は制御部60からのPWM出力で制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿器における加湿メカニズムには様々な形式がある。特許文献1に記載された加湿器では、水槽内の水に下部を浸したベルト状フィルタを回転させ、吸水したベルト状フィルタに空気を通過させることで、加湿空気又は冷風を得ている。
【0003】
また加湿器の中には、加湿するための水を除菌できるようにしたものがある。特許文献2に記載された加湿器はその一例であり、そこでは対をなす電極を水槽に水に浸し、一方をプラス電極、他方をマイナス電極として通電することにより水を電解し、水中の塩素イオンから次亜塩素酸を生成して水の除菌を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−217726号公報(国際特許分類:F24F1/00、F24F6/06)
【特許文献2】特開2006−57995号公報(国際特許分類:F24F6/00)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加湿器は冬場などの乾燥しやすい時期に使用されるのが通例であるが、次亜塩素酸を含む電解水で加湿を行い、加湿と同時に空気の除菌や脱臭を行うようにすれば、時期を問わず生活環境の改善に役立てることができる。本発明は、電解水で加湿を行えるようにした加湿器において、電解水濃度を容易に制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、加湿器は、筐体内に、電解水生成部と、前記電解水生成部で生成された電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタと、前記加湿フィルタを通過する空気流を生成する送風機を配置し、電解水で加湿された空気を前記筐体外に吹き出すものであり、前記電解水生成部の電極間に流れる電流は電極ドライブ回路で制御されるものであり、前記電極ドライブ回路は制御部からのPWM出力で制御される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記制御部は極性切替回路に対しPWM出力を行い、前記極性切替回路が前記電極ドライブ回路を制御する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記電極間に流れる平均電流を監視する平均電流監視回路を備え、前記制御部は前記平均電流監視回路から入力される信号を受けて、前記電極間に流れる電流が設定値になるようにPWM出力を変化させる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記電極間に流れるピーク電流を監視するピーク電流監視回路を備え、前記制御部は前記ピーク電流監視回路から入力される信号が設定値以上になったときはPWM出力を停止させる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、記制御部は、前記電極間に大電流と小電流を一定時間ずつ流すことを繰り返す制御を行う。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記制御部は、前記電極間の電流方向を一定時間毎に逆転させる制御を行う。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の加湿器において、前記制御部は、当該加湿器の制御モードとして、室内の湿度を所定値にすることを主目的とする加湿優先モードと、室内空気の浄化を主目的とする浄化優先モードを備える。
【発明の効果】
【0013】
電解水を生成するにあたり、従来の回路構成では、回路定数で決まった一定の電流しか電極間に流せなかったため、ON/OFFのみの制御しかできなかったが、本発明では、PWM出力を変えることで電極間に流す電流を変えることができるから、状況に応じ適切な電流値にすることができる。これにより、電極の極性切替回数を減らすことができ、電極の寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【図2】図1の加湿器の垂直断面図である。
【図3】図1の加湿器の垂直断面図で、図2と異なる状態を示すものである。
【図4】図1の加湿器の垂直断面図で、図2及び図3と異なる状態を示すものである。
【図5】電極ユニットの斜視図である。
【図6】加湿器のブロック構成図である。
【図7】電極ユニットまわりに限定したブロック構成図である。
【図8】電流制御の例を示すグラフである。
【図9】制御モード選択のフローチャートである。
【図10】電極交換のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に基づき本発明の実施形態に係る加湿器の構造と動作を説明する。
【0016】
加湿器1は、略直方体形状の筐体10を備える。筐体10は、背面に吸気口11、天面に吹出口12を有する。吸気口11は横長の小孔の集合からなる。吹出口12には、背面側の縁を支点として開閉する蓋13と、吹出気流の向きを変えるルーバー14が設けられている。
【0017】
筐体10の内部には、吸気口11から吹出口12に至る通風路15が形成され、その中に送風機16が配置されている。送風機16はクロスフローファンとモータの組み合わせからなり、吸気口11から吸い込まれて吹出口12から吹き出される気流を生成する。
【0018】
通風路15の中には、吸気口11と送風機16の間の位置に、加湿フィルタ17が配置される。加湿フィルタ17は無端ベルト状であり、筐体10内に上下可能に配置されたフィルタ支持体Hの内部に垂直に支持されている。本実施形態では、フィルタ支持体Hはフィルタユニットケース18とその中に保持されるフィルタユニット47により構成される。フィルタユニットケース18とフィルタユニット47の構造、加湿フィルタ17の駆動の仕組みやフィルタユニットケース18の上下の仕組みなどについては後で説明する。
【0019】
フィルタユニットケース18は電極ユニット19を保持する。電極ユニット19は一対の電極20を有する。電極20は下向きに突き出しており、その下端は上面が開口部となった電解水生成槽21の中の水に浸る。電極20と電解水生成槽21が電解水生成部22を構成する。
【0020】
加湿フィルタ17の下端も電解水生成槽21の中の水に浸る。電解水生成槽21の中の水が電解水であれば、加湿フィルタ17は電解水で湿潤状態にされる。ここで送風機16を運転すると、加湿フィルタ17を通過する空気流が電解水で加湿され、また、電解水により空気の除菌と脱臭がなされる。その空気が吹出口12から筐体10の外に吹き出される。以上が加湿器1の基本的な構成である。
【0021】
筐体10の左右側面には運搬用の手掛部23が形成される。筐体10の天面には、前縁と吹出口12の間のスペースに操作/表示部24が配置される。操作/表示部24には各種スイッチの操作キー25が複数個横一列に並び、使用者は必要な操作キー25を押して指令を入力する。
【0022】
筐体10の内部には、下部に給水タンク収納空間26が形成される。給水タンク収納空間26の正面は出入口27となる。出入口27は上下可能なゲート28によって閉ざされる。ゲート28の中央下部には上下操作用の手掛部29が形成されている。
【0023】
給水タンク収納空間26には、トレイ30に保持された給水タンク31が入れられる。トレイ30は、手前側が給水タンク保持部32、奥に張り出した部分が前述の電解水生成槽21となっている。ところで、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端が電解水生成槽21の中の水に浸っていたのでは、トレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことができない。この問題は次のようにして解決される。
【0024】
ゲート28とフィルタユニットケース18は図示しないレバーとコネクティングロッドにより構成される連繋機構で連結される。ゲート28は、給水タンク収納空間26の出入口27を閉ざす閉鎖位置(図2参照)と、出入口27を開放する開放位置(図3参照)の間を昇降する。ゲート28が閉鎖位置に引き下げられたときは、前記連繋機構によってフィルタユニットケース18も下降せしめられ、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端は図2に示す通り電解水生成槽21の中に入り込む。この状態では、トレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことができない。ゲート28が開放位置に引き上げられると、連繋機構によってフィルタユニットケース18も上昇せしめられ、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端は、図3に示す通り電解水生成槽21の外に出る。これにより、加湿フィルタ17の下端と電極20の下端が電解水生成槽21の縁に引っ掛からなくなり、図4に示すようにトレイ30を給水タンク収納空間26から引き出すことが可能になる。
【0025】
トレイ30は給水タンク収納空間26に収まる正面幅を有し、給水タンク31はトレイ30と同程度の正面幅を有する。給水タンク31は概略直方体形状であり、トレイ30の給水タンク保持部32に上方から挿入される。
【0026】
給水タンク31は上面にハンドル33を有し、下面には給水口34が設けられている。給水口34はねじキャップ35で密閉される。ねじキャップ35には、給水タンク31の内部の水を外部に漏出させる漏出バルブ36が設けられる。漏出バルブ36は、図示しないばねにより、常時閉鎖方向に附勢されている。
【0027】
トレイ30には、給水タンク31内の水を電解水生成槽21に流し出す給水路37が形成されている。給水タンク31を給水タンク保持部32に挿入すると、漏出バルブ36が給水路37に面することになる。
【0028】
漏出バルブ36は給水タンク31の内部から外側に突き出したシャフト38を押し込むことにより開放状態となるものであり、シャフト38を押すバルブ開放レバー39が給水路37に設けられている。バルブ開放レバー39はシーソー形式であって、一端は漏出バルブ36に対向する作用点部40となり、他端はトレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んだときにフィルタユニットケース18の下に入り込む力点部41となる。作用点部40と力点部41の間には支点部42がある。バルブ開放レバー39は、支点部42の外面に突き出した図示しない支点軸を、給水路37の内面に形成した図示しない軸受穴に係合させることにより、支点部42を中心として揺動できるように取り付けられている。
【0029】
バルブ開放レバー39は、支点部42と作用点部40の間に重心があり、放置すれば作用点部40が下がり、力点部41が上がって、図3及び図4に示す状態になる。この状態のトレイ30に給水タンク31を保持させてもバルブ開放レバー39は漏出バルブ36を押さず、水の漏出は生じない。この状態のトレイ30を、ゲート28を引き上げた給水タンク収納空間26に押し込み、ゲート28を引き下げると、降下したフィルタユニットケース18がバルブ開放レバー39の力点部41を押す。すると、図2に示すように作用点部40が持ち上がり、シャフト38を押し上げて、漏出バルブ36を開放状態にする。これにより給水タンク31の内部から水が流れ出し、その水は給水路37を伝って電解水生成槽21に流れ込むことになる。
【0030】
電解水生成槽21の中の水は、時間が経つと汚れてくる。汚れた水は捨て、電解水生成槽21の内部を清潔に保つ必要がある。そこで、トレイ30にトレイ運搬ハンドル43を設ける。トレイ運搬ハンドル43はコ字形の合成樹脂成型品であって、根元部をトレイ30の左側面と右側面に連結している。トレイ運搬ハンドル43はトレイ30に対し一定の角度範囲内で角度を変えることができる。
【0031】
トレイ運搬ハンドル43を握って引き上げると、その時給水タンク保持部32に給水タンク31が保持されていなければ、トレイ30をほぼ水平な状態で持ち上げることができる。これにより、中の水をこぼさないようにしてトレイ30を水の廃棄場所へ運ぶことができる。
【0032】
トレイ運搬ハンドル43は、人の手で保持されていないときは、図4に示す姿勢、すなわち給水タンク保持部32の上方から退避して電解水生成槽21の上方に干渉する姿勢をとる。これにより、トレイ運搬ハンドル43に邪魔されることなく給水タンク31を給水タンク保持部32に抜き差しすることができる。
【0033】
一方で、トレイ運搬ハンドル43が電解水生成槽21の上方に干渉する位置にあると、トレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んだとき、筐体10内のファンケースにトレイ運搬ハンドル43が干渉してしまう。そこで、給水タンク収納空間26の内部にトレイ運搬ハンドル43の根元部が当たるガイド部44を形成する。トレイ30を給水タンク収納空間26に押し込んで行くと、トレイ運搬ハンドル43がガイド部44に当たって持ち上げられ、トレイ運搬ハンドル43は図2に示すように電解水生成槽21の上方から退避する。これにより、トレイ運搬ハンドル43は筐体10内のデッドスペースに収まる形になり、筐体10の小型化が可能になる。
【0034】
満水状態にした給水タンク31はかなりの重量があり、それを載置したトレイ30を給水タンク収納空間26に押し込むのは労力を要する作業となる。その労力を軽減するため、トレイ30には次のような工夫が施されている。
【0035】
トレイ30は滑りの良い合成樹脂で成型される。トレイ30の下面には、手前側に車輪45、奥側に接地脚(図示せず)が配置される。車輪45は向きの変わらない固定車輪であって、左右に1個ずつ設けられる。接地脚も左右で対をなすように設けられる。車輪45と接地脚により、トレイ30は、給水タンク収納空間26の内部でも、筐体10を支持する面の上でも、4点支持される。
【0036】
図2に示す通り、給水タンク収納空間26の床面は出入口27に近い箇所が手前側に下がる斜面となっている。このため、給水タンク収納空間26の前に置いたトレイ30の接地脚を、容易に給水タンク収納空間26の床面に乗り上げさせることができる。その後トレイ30を背面側に押し、接地脚を給水タンク収納空間26の床面の上で滑らせるとともに、車輪45も給水タンク収納空間26の床面の上に乗り上げさせる。これにより、トレイ30と給水タンク31は給水タンク収納空間26に収納される。
【0037】
なお、給水タンク収納空間26の床面には車輪45が位置すべき箇所に浅い窪み46が形成されており(図4参照)、トレイ30を給水タンク収納空間26に最後まで押し込むと、車輪45が窪み46にはまり込む。これにより、トレイ30が給水タンク収納空間26の中で動き回ることが阻止される。
【0038】
続いて、フィルタユニットケース18の周辺の構造を説明する。フィルタユニットケース18は前後方向に偏平で、内部にフィルタユニット47を保持している。フィルタユニット47には、それぞれ左右方向に延びる水平な原動軸48と従動軸49が上下に間隔を置いて配置されている。無端ベルト状の加湿フィルタ17は、垂直方向に延びる形で、原動軸48と従動軸49に巻き掛けられ、保持される。加湿フィルタ17は吸水性と通風性を兼ね備えている必要があり、合成繊維からなる糸を網状に編んだものなどが用いられる。加湿フィルタ17をスリップを生じることなく移動させるため、原動軸48と従動軸49には外面に軸線方向の凹凸を有する合成樹脂成型品のシャフトが用いられる。
【0039】
フィルタユニットケース18の背面側と正面側には、加湿フィルタ17に空気を通すための通風口50、51が形成される。通風口50は上方の一部が横長の小孔の集合からなる。通風口51は全体が横長の小孔の集合からなる。
【0040】
加湿フィルタ17は、古くなれば交換の必要が生じる。そのため、フィルタユニット47は、フィルタユニットケース18に対し着脱できるようになっている。フィルタユニットケース18の天面を覆う蓋52がフィルタユニット47を隠す。蓋52は正面側を支点として開閉するものであり、筐体10の外形の一部分を構成する。
【0041】
筐体10の背面の吸気口11は吸気フィルタ53で覆われる。吸気フィルタ53は矩形の格子状枠にポリプロピレンネットを張ったものであり、吸気口11に吸い込まれる空気から繊維等の塵埃を捕集する。
【0042】
吸気口11を吸気フィルタで覆った後、さらにその外側を矩形のガードグリル54で覆う。ガードグリル54は横長の小孔の集合からなる通気口を有し、筐体10の外形の一部を構成する。
【0043】
電極ユニット19は図5に示す構造を備える。19aは合成樹脂の成型品からなるベースで、その下端に板状の電極20が2枚、間隔を置いて取り付けられている。ベース19aの上部にはつまみ部19bが形成されている。電極20は消耗品なので、定期的に電極ユニット19を交換しなければならない。使用者自身が電極ユニット19を容易に交換できるようにするため、加湿器1は次のように構成されている。
【0044】
吸気口11の中に、矩形の凹部55が形成される。背面側から見た凹部55は、電極ユニット19をある程度のゆとりをもって受け入れられるだけの面積を有する。凹部55の底部は開口部56となっており、フィルタユニットケース18には、開口部56の下に張り出す形の電極ユニット取付部57が形成されている。電極ユニット取付部57は、上方から差し込まれた電極ユニット19を適宜の弾性係合手段で保持する。また、図示はしないが、電極ユニット取付部57と電極ユニット19の間にはプラグとソケットのような電力供給手段が設けられている。
【0045】
電極ユニット取付部57に取り付けられた電極ユニット19は、図2のようにフィルタユニットケース18が降下しているときは、それに手を届かせることができない。図3に示すようにフィルタユニットケース18が上昇すると、電極ユニット19のつまみ部19bが開口部56から頭を出す。すなわち、吸気口11内のアクセス可能位置に電極ユニット19のつまみ部19bが姿を現すことになる。ガードグリル54と吸気フィルタ53を取り外せば、つまみ部19bに指をかけて電極ユニット19を引き抜き、新しい電極ユニット19に交換することができる。
【0046】
加湿器1の制御システムは図6に示す構成となっている。加湿器1の制御を司る制御部60はマイクロコンピュータを中核として構成されるものであり、その中にはマイクロコンピュータのCPU(central processing unit)61、メモリ62、不揮発性メモリ63、及び電極交換時間カウント部64が含まれる。
【0047】
制御部60は様々な構成要素から出力信号を受け取り、また様々な構成要素に対し制御信号を出力する。
【0048】
制御部60に信号を出力する構成要素には次のものが含まれる。すなわち操作/表示部24の中の運転入/切スイッチ65、モード切換スイッチ66、運転切換スイッチ67、能力切換スイッチ68、及びリセットスイッチ69と、外部の湿度を検知する湿度センサ70である。湿度センサ70は通風路15の一角に設けられている。
【0049】
制御部110から制御信号を受けて動作を行う構成要素には次のものが含まれる。すなわち電極ユニット19、送風機16、フィルタユニット47の原動軸48を駆動する加湿フィルタ駆動モータ71、ルーバー14をスイングさせるルーバー駆動モータ72、及び操作/表示部24の中に設けられる表示部73である。表示部73は7セグメントディスプレイにより構成される。
【0050】
電極ユニット19の通電制御の仕組みを図7に示す。電極ユニット19の1対の電極20の間に電流を流すのは電極ドライブ回路74である。電極ドライブ回路74に対し極性切替回路75から出力(IN1及びIN2)がなされ、極性切替回路75に対しては制御部60のCPU61から出力がなされる。CPU61からの出力はPWM(pulse-width modulation)出力と極性切替出力である。
【0051】
電極ドライブ回路74とグラウンドとの間には抵抗76が接続されている。抵抗76に流れる電流(=電極20間の電流)による電圧(パルス)を、平均電流監視回路77が増幅し、平均化した電圧をCPU61に入力する。また、抵抗76に流れる電流(=電極20間の電流)による電圧(パルス)を、ピーク電流監視回路78が増幅し、パルスのピーク電圧を保持しCPU61に入力する。
【0052】
続いて加湿器1の動作を説明する。給水タンク31の中に水があるかぎり、電解水生成槽21の内部の水位は一定に保たれているが、給水タンク31が空になると、電解水生成槽21の内部の水位が下がってくる。水位が下がると図示しないセンサが制御部60に信号を出し、制御部60は、表示部73に、給水タンク31への水補給が必要になった旨の表示を出す。送風機16、電極ユニット19、加湿フィルタ駆動モータ71、ルーバー駆動モータ72などが稼働中であれば、制御部60はそれらの動きを止める。
【0053】
水補給を求める表示を見た使用者は、ゲート28を上げてトレイ30を引き出す。そしてトレイ30から給水タンク31を引き抜き、それに水を補給して、トレイ30に再セットする。
【0054】
トレイ30を給水タンク収納空間26に入れ、ゲート28を下ろすと、フィルタユニットケース18が降下し、給水タンク31から電解水生成槽21への給水が開始される。この水は加湿フィルタ17の下端と電極20の下端を浸す。操作/表示部24の中の所定の操作キー25を押して運転入/切スイッチ65をONにすると、加湿器1の運転が開始される。すなわち送風機16が駆動され、吸気口11から吸い込まれて吹出口12から吹き出される気流を生成する。ルーバー駆動モータ72も駆動され、ルーバー14をスイングさせる。加湿フィルタ駆動モータ71も駆動され、加湿フィルタ17を移動させる。また電極ユニット19への通電により、電解水生成部22で水の電解が行われる。電解水生成槽21の中の水に塩素が含まれていれば、次のような電気化学反応が生じる。
<陽極側>
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl←→HClO+H+Cl
<陰極側>
4HO+4e→2H↑+4OH
<電極間>
+OH→H
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)や活性酸素を含む電解水が生まれる。電解水は加湿フィルタ17を湿潤させ、加湿フィルタ17を通過する空気は加湿されると同時に除菌や脱臭も行われる。
【0055】
電解水は、濃度が低すぎれば除菌や脱臭の作用を生じない。電解水濃度が高すぎても、徒に次亜塩素酸を消尽するのみで効率が良くない。電解水の濃度は常に適切な値に保たれる必要があり、そのために図7の回路構成が効果を発揮する。
【0056】
極性切替回路75は、CPU61からの極性切替出力がH(High)の場合、IN1にPWM出力を行い、IN2をL(Low)にする。逆に、極性切替出力がLであれば、IN1をLにし、IN2にPWM出力を行う。
【0057】
電極ドライブ回路74は、IN1がH、IN2がLの場合、電極出力1のラインから電極出力2のラインに向けて電流を流す。逆に、IN1がL、IN2がHの場合は、電極出力2のラインから電極出力1のラインに向けて電流を流す。IN1とIN2が共にHあるいはLの場合は、電極ドライブ回路74は電極出力を停止し、電流を止める。
【0058】
平均電流監視回路77は電極20間に流れる電流(平均電流)を監視し、電流値をCPU61に入力する。CPU61は電流が設定値になるようにPWM出力を変化させる。
【0059】
電極20間の水の導電率が高い場合、あるいは電極20間が短絡した場合、電極ドライブ回路74に流れる電流が大きくなり、電極ドライブ回路74の破壊につながる。それを防止するため、ピーク電流監視回路78で電極20間に流れる電流を監視し、電流値をCPUに入力する。電流値が設定値以上になったら、CPU61はエラーとしてPWM出力を停止する。
【0060】
制御部60は、電解水中の次亜塩素酸の濃度を一定レベル以下に下げないようにするため、電極20間に大電流と小電流を一定時間ずつ流すことを繰り返す制御を行う。図8に示す例では、300mAの電流を10分間流した後、10分間の電流停止期間を挟んで、150mAの電流を10分間流し、もう一度10分間の電流停止期間を挟んで、300mAの電流を10分間流すというサイクルを繰り返す。電流停止期間は、極性切替出力を切り替えてIN1とIN2を共にHあるいはLにすることにより得られる。
【0061】
また制御部60は、電極20の劣化を防止するため、一定時間毎に極性切替出力のHとLを切り替えて、電極20間の電流方向を一定時間毎に逆転させる制御を行う。
【0062】
制御部60は、加湿器1の制御モードとして、室内の湿度を所定値にすることを主目的とする加湿優先モードと、室内空気の浄化を主目的とする浄化優先モードを備える。加湿優先モードと浄化優先モードは、モード切換スイッチ66により切り換えることができる。
【0063】
加湿器1は、自動運転(湿度を自動的にコントロールする運転)にすることもできれば、連続運転にすることもできる。その選択には運転切換スイッチ67を用いる。
【0064】
加湿器1は、運転の強度を選択することができる。例えば「強」「中」「弱」といった具合である。その選択には能力切換スイッチ68を用いる。
【0065】
電極ユニット19の交換を行ったときは、加湿器1をリセットする必要がある。その時にリセットスイッチ69を用いる。
【0066】
制御モードの選択に関連する加湿器1の動作を図9に基づき説明する。加湿器1においては前記浄化優先モードが標準モードである。加湿優先モードは、図9では「加湿モード」と表記されている。
【0067】
ステップ#101では、モード切換スイッチ66がONであるかどうかを調べる。YESであればステップ#102に進み、NOであればステップ#105に進む。
【0068】
ステップ#102では、現在のモードが標準モードであるかどうかを調べる。YESであればステップ#103に進み、加湿器1は加湿モードに変更される。NOであればステップ#104に進み、加湿器1は標準モードに変更される。
【0069】
ステップ#103またはステップ#104からステップ#105に進む。ステップ#105では、加湿器1が標準モードで運転されているかどうかを調べる。YESであればステップ#106に進み、NOであればステップ#107に進む。
【0070】
ステップ#106では、室内空気の浄化が完了したかどうかを調べる。室内空気の浄化が完了したかどうかは、直近の運転開始時刻からその時点までの加湿器1の累積運転時間などにより判定することができる。YESであればステップ#108に進み、NOであればステップ#110に進む。
【0071】
ステップ#108では、湿度センサ70の検知する湿度が上限湿度を超えたかどうかを調べる。YESであればステップ#109に進み、NOであればステップ#110に進む。
【0072】
ステップ#109では、それ以上湿度が上昇しないよう、送風機16をOFFにする。
【0073】
ステップ#110では、送風機16をONのままとする。
【0074】
ステップ#105において、加湿器1が標準モードで運転されていない、裏を返せば加湿モードで運転されていると判定された場合は、ステップ#107に進む。ステップ#107では湿度センサ70の検知する湿度が目標湿度を超えたかどうかを調べる。YESであればステップ#111に進み、NOであればステップ#110に進む。
【0075】
ステップ#111では、それ以上湿度が上昇しないよう、送風機16をOFFにする。
【0076】
ステップ#109、#110、または#111から、次処理に進む。
【0077】
電極交換に関連する加湿器1の動作を図10に基づき説明する。
【0078】
ステップ#121では、電極20への通電が禁止になっているかどうかを調べる。YESであればステップ#122に進み、NOであればステップ#123に進む。
【0079】
ステップ#122では、操作/表示部24に設けられた電極交換ランプが点灯する。電極20は非通電となる。電極20が非通電であると除菌ができないので、加湿器1も運転禁止となる。ステップ#122からステップ#131に進む。
【0080】
ステップ#123では、電極20に通電して良いかどうかを調べる。NOであればステップ#124に進む。YESであればステップ#125に進む。
【0081】
ステップ#124では、電極20は非通電とされる。ステップ#124からステップ#126に進む。
【0082】
ステップ#125では、電極20に通電する。また、CPU61に付属する電極交換時間カウント部64が電極通電時間をカウントする。カウント値は一定時間毎に不揮発性メモリ63に記憶される。このように不揮発性メモリにデータを退避させることにより、加湿器1の電源コードのプラグがコンセントから抜かれ、その後再びコンセントに差し込まれるようなことがあっても、継続して電極通電時間をカウントすることができる。ステップ#125からステップ#126に進む。
【0083】
ステップ#126では、電極通電時間が予告時間を経過したかどうかを調べる。予告時間は、例えば2年相当の通電で電極ユニット19を交換することとされていた場合、1年と11ヶ月相当の通電時間を予告時間として設定することができる。調べた結果がYESであればステップ#127に進み、NOであればステップ#128に進む。
【0084】
ステップ#127では、電極通電時間が確定時間(2年相当の通電時間)を経過したかどうかを調べる。NOであればステップ#129に進み、YESであればステップ#130に進む。
【0085】
ステップ#128に進んだ場合は、電極交換ランプが消灯する。ステップ#128から次処理に進む。
【0086】
ステップ#129に進んだ場合は、電極交換ランプが点滅し、予告時間が経過した、すなわち電極ユニット19の交換時期が迫ったことを報知する。ステップ#129からステップ#131に進む。
【0087】
ステップ#130に進んだ場合は、電極交換ランプが点灯し、電極ユニット19の交換が確定したことを報知する。また、電極20が非通電とされる。電極20が非通電であると除菌ができないので、加湿器1も運転禁止となる。ステップ#130からステップ#131に進む。
【0088】
ステップ#131では、電極ユニット19が交換され、その後、リセットスイッチ69がONにされたかどうかを調べる。YESであればステップ#132に進む。NOであれば次処理に進む。リセットスイッチ69は、例えば3秒間長押しすることにより、ONになるものとする。
【0089】
ステップ#132では、電極交換ランプが消灯する。また、電極通電時間がリセットされ、これにより加湿器1の運転再開が可能になる。電極通電時間がリセットされたということは不揮発性メモリ63に記憶される。ステップ#132から次処理に進む。
【0090】
本発明の実施形態として、空気清浄機として設計されていない加湿器1を提示したが、空気清浄を本旨とする空気清浄機で本発明を実施することに何の不都合もない。
【0091】
また上記実施形態では、フィルタユニット47とそれを保持するフィルタユニットケース18をもってフィルタ支持体Hを構成したが、フィルタユニット47とフィルタユニットケース18の機能を兼ね備えた1個の枠体によりフィルタ支持体Hを構成することも可能である。
【0092】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は加湿器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 加湿器
10 筐体
11 吸気口
12 吹出口
16 送風機
17 加湿フィルタ
19 電極ユニット
20 電極
21 電解水生成槽
22 電解水生成部
60 制御部
74 電極ドライブ回路
75 極性切替回路
77 平均電流監視回路
78 ピーク電流監視回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、電解水生成部と、前記電解水生成部で生成された電解水で湿潤状態にされる加湿フィルタと、前記加湿フィルタを通過する空気流を生成する送風機を配置し、電解水で加湿された空気を前記筐体外に吹き出す加湿器において、
前記電解水生成部の電極間に流れる電流は電極ドライブ回路で制御されるものであり、前記電極ドライブ回路は制御部からのPWM出力で制御されることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記制御部は極性切替回路に対しPWM出力を行い、前記極性切替回路が前記電極ドライブ回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記電極間に流れる平均電流を監視する平均電流監視回路を備え、前記制御部は前記平均電流監視回路から入力される信号を受けて、前記電極間に流れる電流が設定値になるようにPWM出力を変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記電極間に流れるピーク電流を監視するピーク電流監視回路を備え、前記制御部は前記ピーク電流監視回路から入力される信号が設定値以上になったときはPWM出力を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿器。
【請求項5】
前記制御部は、前記電極間に大電流と小電流を一定時間ずつ流すことを繰り返す制御を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記制御部は、前記電極間の電流方向を一定時間毎に逆転させる制御を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項7】
前記制御部は、当該加湿器の制御モードとして、室内の湿度を所定値にすることを主目的とする加湿優先モードと、室内空気の浄化を主目的とする浄化優先モードを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の加湿器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−52698(P2012−52698A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193654(P2010−193654)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】