説明

加熱剥離型粘着シート

【課題】加熱剥離型粘着シートを使用する際に、被加工物の違いや工程の違い等に応じて予定される加熱剥離型粘着シートを間違えて使用することがあった。このため、このような間違いを生じないために、被加工物や工程の違いに応じて、使用できる加熱剥離型粘着シートを明確に確認することが必要であった。また、無色透明な加熱剥離型粘着シートの場合、被加工物に正確に貼り付けたかを確認することが困難であった。
また、加熱剥離型粘着シートの粘着剤層を単に着色しただけでは、電子部品等の被加工物表面に着色剤に由来する金属イオンが付着して、電子部品を汚染し損傷を与える恐れがあった。
【解決手段】基材の片面又は両面に熱膨張性微小球、着色剤を含有する熱膨張性粘着層が設けられるか、基材の片面又は両面に着色中間層を介して熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱剥離型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハのダイシングやバックグラインド等の加工、電子部品の製造時の切断等の加工、光学部品等の加工において、被加工物と確実に粘着することにより一体化し、これらの加工時においては、加工機械に対して被加工物を加熱剥離型粘着シートを介して固定することによって、加工を円滑に進めようとすることがなされている。
このような被加工物を加工するにあたって、加熱剥離型粘着シートの粘着剤層上に被加工物を固定する工程が必要となる。
この工程においては、被加工物の種類に応じて適切な加熱剥離型粘着シートを選択することになる。このとき、これらの加熱剥離型粘着シートは、無色透明のシート形状の点で共通するのであって、該加熱剥離型粘着シートのロールが新品時に包装された状態においては、該包装材に品番等が表示されるので、加熱剥離型粘着シートが複数種存在していても、被加工物の種類に応じた加熱剥離型粘着シートを選択することができる。
しかしながら、一旦、上記の包装材から複数種の加熱剥離型粘着シートのロールを取り出すと、ロール自体には品番等が示されていないので外見上は区別がつかず、これらの複数種の加熱剥離型粘着シートの間で区別がつかなくなり、別の加熱剥離型粘着シートが紛れ込んだりして、被加工物に対して正しい加熱剥離型粘着シートを使用できなくなる恐れがあった。
さらに、該加熱剥離型粘着シートは無色透明であるために、被加工物への貼付け時に被加工物によっては貼付け視認性が悪く、うまく貼り合わせる事が出来ない。
【0003】
特許文献1に示すように、加熱剥離型粘着シートの発泡性粘着剤層に赤外線吸収性物質である黒色又は青色乃至緑色着色剤を添加することにより赤外線吸収性を付与してなる加熱剥離型粘着シートで、着色により赤外線を吸収させることによる効率の良い発熱、剥離を行うことは知られている。
しかしながら、このような着色は、異なる品番毎に加熱剥離型粘着シートの着色を変化させようとするのではなく、加熱により発泡させる加熱剥離型粘着シート全てに対して同様の着色を行うことを目的としたものである。そして、結局のところ、全ての品番の加熱剥離型粘着シートに対して同様の着色を行うことになり、被加工物によって加熱剥離型粘着シートを選択する際に、加熱剥離型粘着シート間の区別がつかないことになる。また、赤外線を吸収するために、加熱剥離型粘着シートの光透過性が小さくされておりほとんど光が透過しないものである。
【0004】
特許文献2に示すように、加熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層に熱変色性微小球顔料を含有させることも公知ではあるが、この熱変色性微小球顔料は粘着シートが均一に加熱されているかを確認するために含有されるのであって、該熱膨張性粘着層が熱膨張する前である加熱剥離型粘着シートを使用する前は無色透明であることから、加熱剥離型粘着シートを使用する前においては、品番等毎に加熱剥離型粘着剤層の色を変えることまでを行うものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4010643号
【特許文献2】特開2003−160767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱剥離型粘着シートを使用する際に、被加工物の違いや工程の違い等に応じて予定される加熱剥離型粘着シートを間違えて使用することがあった。このため、このような間違いが生じないために、被加工物や工程の違いに応じて、使用できる加熱剥離型粘着シートを明確に確認することが必要であった。また、無色透明な加熱剥離型粘着シートの場合、被加工物に正確に貼り付けたかを確認することが困難であった。
また、加熱剥離型粘着シートの粘着剤層を単に着色しただけでは、電子部品等の被加工物表面に着色剤に由来する金属イオンが付着して、電子部品を汚染し損傷を与える恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者等は加熱剥離型粘着シートの加熱剥離層に顔料を含有させ、さらにその顔料添加量を適切な量とすることで識別性、視認性の向上を図り、かつ金属イオンの汚染を低減させることとした。
具体的には、
1.基材の片面又は両面に熱膨張性微小球、着色剤を含有する熱膨張性粘着層が設けられるか、基材の片面又は両面に着色中間層を介して熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。
2.前記加熱剥離型粘着シートを被加工物へ貼り付けし、剥離後の被加工物への金属転写量が、誘導結合プラズマ質量分析法による測定値として、1.0×1010 atoms/cm2 以下とするものである1記載の加熱剥離型粘着シート。
3.前記加熱剥離型粘着シートを被加工物へ貼り付けし、40℃にて1日間放置した後、加熱剥離した際の被加工物への金属転写量が、誘導結合プラズマ質量分析法による測定値として、1.0×1010 atoms/cm2以下とするものである1〜2に記載の加熱剥離型粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、顔料を添加するテープの識別性を向上させることにより、本発明の加熱剥離型粘着シートを用いて、複数種の被加工物を加工する場合、被加工物の種類毎に色が異なる加熱剥離型粘着シートを対応させて用意しておく。このような準備をした後に被加工物の加工を行うと、使用時において、被加工物に適切な加熱剥離型粘着シートに識別性を持たせることができ、これを間違えることなく使用することができるので、より確実に被加工物を加工することができる。加えて、被加工物に貼りつける際には、着色された加熱剥離型粘着シートによって正確に貼付けたかどうかを確認することが容易である。
且つ、添加量調節による金属イオン量の制限を行い、電子部品(被加工物)への影響を低減させている。さらに、本発明において加熱剥離型粘着シートは、それを貼付けて剥がした後に、熱膨張性粘着層から被加工物への金属転写量が特定の値以下という極めて転写量が少ないものであり、金属イオンによる電子部品のショート等の悪影響を防止するという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の加熱剥離型粘着シート
【図2】本発明の加熱剥離型粘着シートの他の例
【図3】本発明の加熱剥離型粘着シートを使用する例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の基材の片面又は両面に熱膨張性微小球、着色剤を含有する熱膨張性粘着層が設けられ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする加熱剥離型粘着シートは、ウエハや電子部品等の加工時に、これらを固定するために用いられるものである。
なお、全光線透過率を50%以上とする手段としては、基材フィルムとして着色フィルムを使用することが考えられるが、基材フィルムとして使用可能なフィルムであって、上市されているフィルムはいずれも無色透明等、この基材フィルムにより色による識別を行えるものではない。
さらに、本発明の目的は、加熱剥離型粘着シートを貼付けて剥がした後に、熱膨張性粘着層から電子部品等の被加工物への金属転写量が特定の値以下という極めて転写量が少なく金属イオンによる電子部品への悪影響を防止できることである。
【0011】
そして、このような本発明の加熱剥離型粘着シートを用いて、複数種の被加工物を加工する場合、被加工物の種類毎に色が異なる加熱剥離型粘着シートを対応させて用意しておく。このような準備をした後に被加工物の加工のために被加工物に貼り付けるとき、被加工物に適切な加熱剥離型粘着シートが識別性を有し、これを間違えることなく使用することができるので、より確実に被加工物を加工することができる。加えて、被加工物に貼りつける際には、着色された加熱剥離型粘着シートによって正確に貼付けたかどうかを確認することが容易であることを目的とする。
【0012】
このため、上記のように基材の片面又は両面に熱膨張性微小球、着色剤を含有する熱膨張性粘着層が設けられるか、基材の片面又は両面に着色中間層を介して熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする加熱剥離型粘着シートとした。
この加熱剥離型粘着シートは、基材、熱膨張性微小球と着色剤を含有する熱膨張性粘着層を基本的な構成とし、熱膨張性微小球と着色剤を含有する熱膨張性粘着層は基材の片面又は両面に設けられていても良い。基材の片面に設けられる際には、他面には接着剤層を設けることもできる。そして、電子部品を加工する際には、電子部品を固定した該熱膨張性粘着層を有する該加熱剥離型粘着シートを加工装置のステージに載せ、該基材の他方の面の接着剤層によりステージに固定することができる。
もちろん、基材の他方の面に必ずしも該接着剤層を形成する必要はなく、この場合には、電子部品を固定した該熱膨張性粘着層を有する該加熱剥離型粘着シートを加工装置のステージに設けた固定手段、例えば真空チャック等により固定することも可能である。
そして本発明の加熱剥離型粘着シートは、その表面に位置する熱膨張性粘着層、基材、粘着剤層を保護するためのセパレータを設けることもできる。
以下に本発明の加熱剥離型粘着シートを構成する各層について説明する。
【0013】
[基材]
基材1は中間層2等の支持母体となるもので、熱膨張性粘着層3の加熱処理により機械的物性を損なわない程度の耐熱性を有するものが使用される。
このような基材1として、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
基材1は被加工物の切断の際に用いるカッターなどの切断手段に対して切断性を有しているのが好ましい。また、基材1として軟質ポリオレフィンフィルム若しくはシート等の耐熱性と伸縮性とを具備する基材を使用すると、被加工物の切断工程の際、基材途中まで切断刃が入れば、後に基材を伸張することができるので、切断片間に隙間を生じさせることが必要な切断片回収方式に好適となる。
【0014】
さらに、中間層2をエネルギー線硬化型樹脂層からなるものとする場合には、この層を硬化させる際にエネルギー線を用いるため、基材1(又は熱膨張性粘着層3等)は所定量以上のエネルギー線を透過し得る材料で構成される必要がある。基材1は単層であってもよく多層体であってもよい。また、基材1に後述する適宜な剥離剤にて表面処理を施し、その処理面にエネルギー線硬化型樹脂層を形成し、その後にエネルギー線硬化型加熱剥離型粘着シートにエネルギー線を照射し、該エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させた後、基材1を剥離することで、該エネルギー線硬化型加熱剥離型粘着シート自体を薄層化することも可能である。
【0015】
基材1の厚さは、被加工物の貼り合わせ、被加工物の切断、切断片の剥離、回収などの各工程における操作性や作業性を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常500μm以下、好ましくは3〜300μm程度、さらに好ましくは5〜150μm程度である。
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗り剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0016】
[熱膨張性粘着層]
熱膨張性粘着層3は、粘着性を付与するための粘着性物質、及び熱膨張性を付与するための熱膨張性微小球を含んでいる。
熱膨張性粘着層は、熱による発泡剤の発泡により、接着面積が減少して剥離が容易になる層であり、使用される発泡剤としては熱膨張性微小球を用いる。発泡剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
熱膨張性微小球としては、公知の熱膨張性微小球から適宜選択することができる。熱膨張性微小球としては、マイクロカプセル化していない発泡剤では、良好な剥離性を安定して発現させることができない場合があるので、マイクロカプセル化されている発泡剤を好適に用いることができる。
【0017】
前記粘着性物質としては加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を許容し、拘束しない程度の弾性を有するものを使用する。このため、従来公知の粘着剤等を使用することができる。粘着剤として、例えば、天然ゴムや各種の合成ゴム等のゴム系粘着剤;シリコーン系粘着剤;(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこのエステルに対して共重合可能な他の不飽和単量体との共重合体等のアクリル系粘着剤(例えば、前記エネルギー線硬化型樹脂層2の母剤として記載したアクリル系粘着剤など)、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤等が例示される。
さらに、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリープ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)。
また、熱膨張性粘着層3には、エネルギー線硬化型粘着剤を使用することもできる。その場合、エネルギー線照射後の動的弾性率が、熱膨張性微小球の膨張を開始する温度範囲において、せん断貯蔵弾性率1×105〜5×107Pa(周波数:1Hz、サンプル:厚さ1.5mmフィルム状)であると、良好な剥離性を得ることができる。
そして、これらの中でもアクリル系粘着剤を使用することが、粘着性等の点からみて好ましい。
【0018】
(アクリル系粘着剤組成物の詳細記載)
上記のアクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、ヘキサデシルエステル、ヘプタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステルなどのC20アルキルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤などが用いられる。
【0019】
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
上記の粘着剤は、加熱処理前の適度な接着力と加熱処理後の接着力の低下性のバランスの点から、より好ましい粘着剤は、動的弾性率が常温から150℃において5万〜1000万dyn/cmの範囲にあるポリマーをベースとした感圧接着剤である。
【0020】
(着色剤)
着色剤としては、顔料または染料等を使用できる。
前記顔料としては、例えば有機顔料としてアクリル系顔料、アゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、DPP系顔料、蛍光顔料、縮合多環顔料、着色樹脂粒子などが挙げられ、無機顔料としてカーボンブラック、合成シリカ、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、硫化亜鉛、焼成顔料、天然雲母などの公知の顔料が挙げられる。
染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料、高分子染料等の公知のいずれの形態の染料であっても用いることが可能である。
これらの着色剤の中でも、着色力が強い顔料及び染料であると、熱膨張性粘着層に含有させる際においても、より少ない添加量により同程度の着色を行うことができる。また、金属元素を有しないか、あるいは、着色剤中に金属元素が分離しない程度に強く金属元素が結合してなる顔料又は染料を採用すると、使用時において被加工物表面への金属元素の付着量を低下させることができる。
熱膨張性粘着層中の着色剤の濃度は、熱膨張性粘着層3を構成する粘着剤ベースポリマー100重量部に対して0.01〜1.5重量部であり、好ましくは0.3〜1.0重量部である。この範囲であれば、使用者が視認できる程度に着色され、かつ、被加工物に着色剤や着色剤からの金属元素が付着することがない加熱剥離型粘着シートを得ることができる。
【0021】
(熱膨張性微小球)
熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であればよい。前記殻は、通常、熱可塑性物質、熱溶融性物質、熱膨張により破裂する物質などで形成される。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。熱膨張性微小球として、例えば、マツモトマイクロスフェア[商品名、松本油脂製薬(株)製]などの市販品を利用することもできる。
【0022】
熱膨張性微小球の平均粒径は、分散性や薄層形成性などの点から、一般に1〜80μm程度、好ましくは3〜50μm程度である。また、熱膨張性微小球としては、加熱処理により粘着剤を含む熱膨張性粘着層の粘着力を効率よく低下させるため、体積膨張率が5倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有するものが好ましい。なお、低い膨張率で破裂する熱膨張性微小球を用いた場合や、マイクロカプセル化されていない熱膨張剤を用いた場合には、粘着層3と被加工物との粘着面積が十分には低減されず、良好な剥離性が得られにくい。
【0023】
熱膨張性微小球の使用量は、その種類によっても異なるが、熱膨張性粘着層3を構成する粘着剤ベースポリマー100重量部に対して、例えば10〜200重量部、好ましくは20〜125重量部、更に好ましくは20〜50重量部である。10重量部未満であると、加熱処理後の効果的な粘着力低下が不十分になりやすく、また、200重量部を超えると、熱膨張性粘着層3の凝集破壊や、基材上に中間層を設けた場合には該中間層との間で界面破壊が生じやすい。
【0024】
熱膨張性粘着層3には、粘着剤、熱膨張性微小球の他に、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、多官能性エポキシ化合物、または、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等)、可塑剤、顔料、充填剤、老化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤などの適宜な添加剤を配合してもよい。
【0025】
[中間層]
本発明における中間層は、基材と熱膨張性粘着層との接着性向上、加熱剥離型粘着シート使用時において、被加工物を加工する際に熱膨張性粘着層にかかるせん断力や押圧力に抗して熱膨張性粘着層を保持して、被加工物が変位することなく安定的に加工するための層であり、さらに着色剤を含有させることによって、加熱剥離型粘着シート自体を着色すると共に、表面層であり被加工物と接着する熱膨張性粘着層に含有させる着色剤の量を減少させることで金属イオン等による被加工物表面の汚染を防止するための層である。
【0026】
このような中間層としては、基材と熱膨張性粘着層との密着性に優れ、かつ熱膨張性粘着層よりも弾性率及び硬度が高い材料からなり、例えばエネルギー線硬化型樹脂、上記熱膨張性粘着層に使用できる粘着性物質の中で凝集力が大である樹脂などを使用することができる。
エネルギー線硬化型樹脂は、エネルギー線硬化性を付与するためのエネルギー線硬化性化合物(又はエネルギー線硬化性樹脂)を含有するとともに、熱膨張性粘着層3が圧着される際に熱膨張性微小球の凹凸を緩和できる程度の粘弾性を有している。また、該エネルギー線硬化型樹脂は、エネルギー線照射後には弾性体となるものが好ましい。このような観点から、該エネルギー線硬化型樹脂を使用した中間層は、エネルギー線硬化性化合物(又はエネルギー線硬化性樹脂)を弾性を有する母剤中に配合した組成物により構成するのが好ましい。
その該母剤としては、上記の粘着性物質にエネルギー線硬化型樹脂を混合したものがよく、これにより中間層に必要な物性を与えることができる。
【0027】
エネルギー線硬化型樹脂層をエネルギー線硬化させるためのエネルギー線硬化性化合物としては、可視光線、紫外線、電子線などのエネルギー線により硬化可能なものであれば特に限定されないが、エネルギー線照射後のエネルギー線硬化型樹脂層の3次元網状化が効率よくなされるものが好ましい。エネルギー線硬化性化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
エネルギー線硬化性化合物の具体的な例として、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0029】
エネルギー線硬化性化合物としてエネルギー線硬化性樹脂を用いてもよく、エネルギー線硬化性樹脂として、例えば、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、分子末端にアリル基を有するチオール−エン付加型樹脂や光カチオン重合型樹脂、ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー、ジアゾ化したアミノノボラック樹脂やアクリルアミド型ポリマーなど、感光性反応基含有ポリマーあるいはオリゴマーなどが挙げられる。さらに高エネルギー線で反応するポリマーとしては、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルシロキサンなどが挙げられる。なお、エネルギー線硬化性樹脂を使用する場合には、前記母剤は必ずしも必要でない。
【0030】
エネルギー線硬化性化合物の配合量は、例えば、母剤100重量部に対して、5〜500重量部程度、好ましくは15〜300重量部、さらに好ましくは20〜150重量部程度の範囲である。また、エネルギー線硬化型樹脂層からなる中間層のエネルギー線照射後における動的弾性率が、20℃において、せん断貯蔵弾性率5×106〜1×1010Pa(周波数:1Hz、サンプル:厚さ1.5mmフィルム状)であると、優れた切断作業性と加熱剥離性との両立が可能となる。この貯蔵弾性率は、エネルギー線硬化性化合物の種類や配合量、エネルギー線照射条件などを適宜選択することにより調整できる。
なお、必要に応じて前記エネルギー線重合開始剤とともにエネルギー線重合促進剤を併用してもよい。
【0031】
このような中間層を設けることにより、熱膨張性粘着層の層厚をさらに薄くすることができるので、被加工物を加工する際には薄い膜厚によって、被加工物を安定的に保持することができる。
また、中間層自体に着色剤を含有させることによって、金属イオンが中間層から発生した場合においても、該金属イオンが熱膨張性粘着層との界面において遮断されることにより、使用後において被加工物表面を汚染することがない。
中間層には上記成分のほか、エネルギー線硬化性化合物を硬化させるためのエネルギー線重合開始剤、及びエネルギー線硬化前後に適切な粘弾性を得るために、熱重合開始剤、架橋剤、粘着付与剤、加硫剤等の適宜な添加剤、さらに充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤を必要に応じて配合できる。
エネルギー線重合開始剤としては、用いるエネルギー線の種類に応じて公知乃至慣用の重合開始剤を適宜選択できる。
【0032】
エネルギー線として紫外線を用いて重合・硬化を行う場合には、硬化するために光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては特に限定されないが、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイドなどがあげられる。
【0033】
(熱膨張性粘着層の形成)
熱膨張性粘着層3の形成には、例えば、粘着剤、着色剤、熱膨張性微小球、及び必要に応じて添加剤、溶媒等を含むコーティング液を、基材上もしくは基材1上に設けた中間層2を介して塗布し、セパレータ4を介して圧着する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)4上に前記コーティング液を塗布して熱剥離型粘着剤層3を形成し、これを基材1上もしくは基材上に設けた中間層2上に圧着転写(移着)する方法など適宜な方法にて行うことができる。
このセパレータ4は、基材フィルムの片面に必要により剥離剤層を形成してなるシートであり、本発明の加熱剥離型粘着シートの表面層を保護しておき、使用する前に露出させるために剥離されるシート、及び熱膨張性粘着層を形成する際の土台となるシートでもある。
【0034】
セパレータ4の基材フィルムとしては公知のものを使用でき、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム等から選択することが可能である。
使用できる剥離剤層は、フッ素化されたシリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、シリコーン樹脂系剥離剤、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、長鎖アルキル化合物等の公知の剥離剤を、粘着剤層の樹脂に応じて選択して含有させてなる層である。
【0035】
熱膨張性粘着層3の厚さは、粘着シートの使用目的や加熱による粘着力の低減性などに応じて適宜に決定しうるが、表面の平滑性を保持するため、熱膨張性微小球の最大径以下に設定するのが好ましい。このため、熱膨張性粘着層3の厚さは、80μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。中間層2上に熱膨張性粘着層3を形成する場合には、熱膨張性粘着層3の厚さが50μm以下であれば、被加工物を保持するために十分な粘着力が得られることと、電子部品を加工する際に押圧力やせん断力が該電子部品に加わることを通じて、熱膨張性粘着層3へもこれらの力が加わることになるが、熱膨張性粘着層3の厚さが薄いので、この加わる力に抗して本発明の加熱剥離型粘着シートが該電子部品を確実に保持できる。
【0036】
セパレータ4としては、例えば、シリコーン系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、フッ素系樹脂などで代表される剥離剤により表面コートしたプラスチックフィルムや紙等からなる基材、あるいはポリエチレンやポリプロピレンなどの無極性ポリマーからなる粘着性の小さい基材などを使用できる。
セパレータ4は、上記のように、中間層2上に熱膨張性粘着層3を圧着転写(移着)する際の仮支持体として、また、実用に供するまで熱膨張性粘着層3を保護する保護材として用いられる。
【0037】
なお、中間層2や熱膨張性粘着層3は基材1の片面のみならず、両面に形成することもできる。図2は本発明の加熱剥離型粘着シートの他の例を示す概略断面図である。
図2に示すように、基材1の一方の面に必要に応じて中間層2を介して熱膨張性粘着層3を設け、他方の面に通常の接着剤層5を設けることもできる。また、加熱処理時の熱膨張性粘着層3の凹凸変形に伴う被加工物との接着界面での微細な凝集破壊を防止するために、該熱膨張性粘着層3上にさらに粘着層を設けてもよい。該粘着層の粘着物質としては、前述の熱膨張性粘着層3で記載した粘着剤を使用できる。該粘着層の厚さは、被加工物に対する粘着力の低減乃至喪失の観点から、好ましくは0.1〜8μm、特に1〜5μmであり、熱膨張性粘着層3に準じた方法により形成することができる。
【0038】
図2の例では、基材1の一方の面に、中間層2、熱膨張性粘着層3及びセパレータ4がこの順に積層されているとともに、基材1の他方の面に接着剤層5及びセパレータ6が積層されている。この粘着シートは、基材1の中間層2およびその上に熱剥離型粘着剤層3が形成されている面とは反対側の面に、接着剤層5とセパレータ6が設けられている点でのみ、図1の粘着シートと相違する。
【0039】
接着剤層5は粘着性物質を含んでいる。この粘着性物質としては、前記熱膨張性粘着層3における粘着性物質(粘着剤)と同様のものを使用でき、必要に応じて、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、界面活性剤などの適宜な添加剤を配合してもよい。ただし、エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させるエネルギー線の透過を著しく阻害する物質を使用もしくは添加することは好ましくない。
【0040】
接着剤層5の厚さは、熱膨張性粘着層3の被加工物への圧着、被加工物の切断及び切断片の剥離、回収などにおける操作性等を損なわない範囲で適宜設定できるが、一般に1〜50μm、好ましくは3〜30μm程度である。
接着剤層5の形成は、熱膨張性粘着層3に準じた方法により行うことができる。セパレータ6としては、前記熱膨張性粘着層3上のセパレータ4と同様のものを使用できる。このような粘着シートは接着剤層5を利用することにより、台座面に固定して使用することができる。
【0041】
[加熱剥離型粘着シートの製造方法]
基材1の片面又は両面に必要に応じて中間層2を形成する組成物を、任意の手段により均一に塗布する。そして、得られた基材1の片面又は両面上に形成された中間層2がエネルギー線硬化型である場合において反応性溶媒以外の溶媒を含有する場合には、そのような溶媒が乾燥により除去された状態であり、該中間層をエネルギー線による硬化前としておく。但し十分な流動性を備える限りにおいて、部分硬化させてもよい。
中間層2がエネルギー線硬化型でない場合には、中間層2を形成する組成物を塗布乾燥しておく。
別途、用意したセパレータ上に塗布乾燥された熱膨張性粘着層3を形成する。この熱膨張性粘着層はその表面、つまりセパレータ側ではない面は、含有する熱膨張性微小球が該熱膨張性粘着層に完全に埋め込まれることがないために、その熱膨張性微小球の一部が表面に突出して凸部を形成している。
【0042】
次に上記の硬化前の該中間層2の表面に、上記のセパレータ4上に形成された該熱膨張性粘着層3をその凸部が形成された表面を合わせるようにして積層し、該基材1及び該セパレータ4側から、該中間層2と該熱膨張性粘着層3を互いに押圧することによって、硬化されていない該中間層の内部に該凸部を埋め込むようにする。
この結果、該基材1、未硬化の該中間層2、該熱膨張性粘着層3及びセパレータ4を、この順で積層してなるシートを得ることができる。
さらに、この未硬化の該中間層2に対して、基材1側及び/又はセパレータ4側からエネルギー線を照射することによって未硬化の該中間層2を硬化することによって、本発明の加熱剥離型粘着シートを得ることができる。
もちろんセパレータ4を使用せずに、基材1に直接熱膨張性粘着剤を塗布・乾燥しても良い。
【0043】
この加熱剥離型粘着シートの製造方法は、基材1の片面に中間層2と熱膨張性粘着層3を設ける方法であるが、基材1の両面に中間層2と熱膨張性粘着層3を設ける際には、この方法を基材の片面ずつ逐次行っても良いし、基材の両面に対して同時に行っても良い。
また基材の他面に接着剤層5を設ける場合には、該接着剤層5の形成を中間層2と熱膨張性粘着層3を設ける工程の前後のいずれの段階で行っても良い。
【0044】
[加熱剥離型粘着シートの使用方法]
図3は本発明の加熱剥離型粘着シートを使用した切断片の製造方法の一例を示す概略工程図である。より詳細には、図3は、図1の加熱剥離型粘着シート(セパレータ4を剥がした状態のもの)の熱膨張性粘着層3の表面に被加工物7を圧着して貼り合わせ、エネルギー線8の照射等により中間層2を硬化させた後、切断線9に沿って所定寸法に切断して切断片とし、次いで加熱処理により熱膨張性粘着層3中の熱膨張性微小球を膨張および発泡させて、切断片7aを剥離回収する一連の工程を断面図で示した工程図である。なお、エネルギー線8の照射により中間層2を硬化させた後に、熱膨張性粘着層3表面に被加工物7を圧着して貼り合わせ、切断線9に沿って切断してもよい。
また、このような切断に限らず、本発明の加熱剥離型粘着シートの用途は研削、孔開け等の加工工程一般である。
【0045】
図3において、1は基材、2aはエネルギー線照射後の硬化した中間層、3aはエネルギー線照射後さらに加熱により熱膨張性微小球を膨張させた後の熱膨張性粘着層を示す。
加熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層3と被加工物7との圧着は、例えば、ゴムローラ、ラミネートロール、プレス装置などの適宜な押圧手段で圧着処理する方式などにより行うことができる。なお、圧着処理の際、必要ならば、粘着性物質のタイプに応じて、熱膨張性微小球が膨張しない温度範囲で加熱したり、水や有機溶剤を塗布して粘着性物質を賦括させたりすることもできる。
【0046】
エネルギー線8としては可視光線や紫外線、電子線などを使用できる。エネルギー線8の照射は適宜な方法で行うことができる。ただし、エネルギー線8の照射熱により熱膨張性微小球が膨張を開始することがあるため、できるだけ短時間の照射にとどめるか、あるいは加熱剥離型粘着シートを風冷するなどして熱膨張性微小球が膨張を開始しない温度に保つことが望ましい。
【0047】
被加工物7の切断はダイシング等の慣用の切断手段により行うことができる。加熱条件は、被加工物7(又は切断片7a)の表面状態や耐熱性、熱膨張性微小球の種類、粘着シートの耐熱性、被加工物の熱容量などにより適宜設定できるが、一般的な条件は、温度350℃以下、処理時間30分以下であり、特に温度80〜200℃、処理時間1秒〜15分程度が好ましい。また、加熱方式としては、熱風加熱方式、熱板接触方式、赤外線加熱方式などが挙げられるが、特に限定されない。
また、粘着シートの基材1に伸縮性を有するものを使用した場合、伸張処理は例えば、シート類を二次元的に伸張させる際に用いる慣用の伸張手段を使用することにより行うことができる。
【0048】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、粘着性物質(粘着剤)を含む熱膨張性粘着層3を有するので、被加工物7を強固に粘着保持でき、例えば搬送時の振動等により被加工物7が剥がれない。また、熱膨張性粘着層3は薄く形成可能であり、且つ切断工程の前に中間層2を硬化させるため、切断工程時において切断刃による接着剤層の巻き上げや接着剤層等のぶれに伴うチッピング等を従来の熱膨張性粘着シートに比べて大幅に低減しつつ所定の寸法に切断できる。さらに、熱膨張性粘着層3は熱膨張性微小球を含み、熱膨張性を有するので、切断工程後の加熱処理により、熱膨張性微小球が速やかに発泡又は膨張し、前記熱膨張性粘着層3が体積変化して凹凸状の三次元構造が形成され、切断された切断片7aとの接着面積ひいては接着強度が大幅に低下若しくは喪失する。かくして、中間層2の硬化、および加熱処理による接着強度の著しい低下若しくは喪失により、被加工物7の切断工程、切断片7aの剥離、回収工程における操作性及び作業性が大幅に改善され、生産効率も大きく向上できる。
【0049】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、被加工物を永久的に接着させる用途にも使用できるが、被加工物を所定期間接着すると共に、接着目的を達成した後には、その接着状態を解除することが要求若しくは望まれる用途に適している。このような用途の具体例として、半導体ウエハやセラミック積層シートの固定材のほか、各種の電気装置、電子装置、ディスプレイ装置等の組立工程における部品搬送用、仮止め用等のキャリアテープ、仮止め材又は固定材、金属板、プラスチック板、ガラス板等の汚染損傷防止を目的とした表面保護材又はマスキング材などが挙げられる。特に、電子部品の製造工程において、小さな若しくは薄層の半導体チップや積層コンデンサチップなどの製造工程等に好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
以下の手順で実施例1の加熱剥離型粘着シートを作製した。
まず、アクリル酸2-エチルヘキシル‐アクリル酸エチル‐メチルメタアクリレート(順に30、70、5重量部の割合で重合)共重合体系感圧接着剤100重量部(イソシアネート系架橋剤1重量部配合)を含むトルエン溶液を調整し、乾燥後の厚さが15μm程度となるように基材となる厚さ100μmのポリエステルフィルムに塗布し、ゴム状有機弾性層を得た。
次に、アクリル酸2-エチルヘキシル‐アクリル酸エチル‐メチルメタアクリレート共重合体系感圧接着剤100重量部(イソシアネート系架橋剤2重量部配合)にマツモトマイクロスフェアーF-501D(松本油脂製薬株式会社製)を30重量部、金属元素含有固形顔料を0.01重量部を配合したトルエン溶液を調整し、セパレータ上に乾燥後の厚さが35μm程度となるように塗布し熱膨張性粘着層を得た。
最後に、熱膨張性粘着層表面をポリエステルフィルム上のゴム状有機弾性層に貼り合せることにより、実施例1の加熱剥離型粘着シートを作製した。
(実施例2)
金属元素含有固形顔料0.01重量部を配合する代わりに、0.5重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の加熱剥離型粘着シートを得た。
(実施例3)
金属元素含有固形顔料0.01重量部を配合する代わりに、0.8重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の加熱剥離型粘着シートを得た。
(実施例4)
金属元素含有固形顔料0.01重量部を配合する代わりに、1.0重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の加熱剥離型粘着シートを得た。
(比較例1)
比較例1の加熱剥離型粘着シートは、固形顔料3.0重量部を配合すること以外、実施例1と同様の方法で作製した。
【0051】
また、当粘着シートの被加工物への金属転写量(本評価では、フタロシアニン銅を含む顔料を添加した粘着シートを用いた)をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)により定量化した(測定方法は以下に示す)。
まず、粘着シートを半導体製造時に用いられるシリコンウエハ(鏡面、100mm厚)に貼合せ、2kg定加重ゴムローラーにより圧着した。40℃にて1日間放置後、粘着シートを加熱発泡により剥離した。次いで、シリコンウエハのシート剥離面側の酸化膜を全量適当なフッ酸でエッチングした。エッチングにより得られた液を全量蒸発皿に採取、加熱・蒸発乾固し、残渣を酸に溶解して測定供試液を得た。得られた供試液をICP-MSにより測定した。測定で得られた元素質量(ng)をCuの原子量で除してモル数に換算し、アボガドロ数を乗じて原子数に変換、この値をエッチングしたシリコンウエハの面積で除することにより、単位面積当たりの原子数(atoms/cm2)に換算した。
得られた結果を以下に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
上記実施例では、シート剥離面はICP-MSにおいて、銅転写量が検出限界以下となることを確認した。上記測定値に関して、金属元素に由来する汚染、又は付着が実質的にない又はほとんどないことの判断手法として、金属元素含有粘着シートを半導体被加工対象物に適用し、剥離後、半導体被加工対象物(例えばシリコンウエハのミラー面)への転写物をICP-MSにより測定した場合に半導体被加工対象物表面における金属が1.0×1010 atoms/cm2 以下と測定されることが挙げられる。
以上より、顔料添加により、視認性、識別性を向上させることができ、顔料の添加量を制限することで、シートの貼り付けを確認するのに十分な透過率を確保し、貼り付け材料への金属元素に起因する汚染を最小限に抑えることができた。このため、被加工物が電子部品である場合でも、金属イオンによる汚染のために該電子部品に悪影響を及ぼす恐れがない。
さらに顔料の種類を変更しても、同様の性質を備えるものである。このため、各種の色を呈する加熱剥離型粘着シートを用意しておき、被加工物の種類に応じて色により区別をしながら適切な加熱剥離型粘着シートを選択・使用することができる。
【0054】
【表2】

【符号の説明】
【0055】
1・・・基材
2・・・中間層
2a・・エネルギー線照射後の硬化した中間層
3・・・熱膨張性粘着層
3a・・・熱膨張性微小球膨張後の熱膨張性粘着層
4・・・セパレータ
5・・・接着剤層
6・・・セパレータ
7・・・被加工物
7a・・切断片
8・・・エネルギー線
9・・・切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面又は両面に熱膨張性微小球、着色剤を含有する熱膨張性粘着層が設けられるか、基材の片面又は両面に着色中間層を介して熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。
【請求項2】
前記加熱剥離型粘着シートを被加工物へ貼り付けし、剥離後の被加工物への金属転写量が、誘導結合プラズマ質量分析法による測定値として、1.0×1010 atoms/cm2 以下とするものである請求項1記載の加熱剥離型粘着シート。
【請求項3】
前記加熱剥離型粘着シートを被加工物へ貼り付けし、40℃にて1日間放置した後、加熱剥離した際の被加工物への金属転写量が、誘導結合プラズマ質量分析法による測定値として、1.0×1010 atoms/cm2以下とするものである請求項1〜2に記載の加熱剥離型粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184292(P2012−184292A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46864(P2011−46864)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】