説明

加熱消滅性材料

【課題】 十分な大きさの孔を均一に形成することができ、かつ孔を形成するための材料が残存しない多孔質膜の製造方法及び該製造方法により得られた多孔質膜を提供する。
【解決手段】 骨格形成用の架橋性材料(a)と、ポリオキシアルキレン樹脂を主成分とし、加熱により分解揮発する加熱消滅性材料(b)とを含む前駆体を調整する工程と、前記前駆体を、前記加熱消滅性材料(b)の加熱により消滅する温度以上に加熱する工程と、前記加熱前あるいは加熱中に前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程とを備え、前記架橋性材料中において前記加熱消滅性材料(b)が消滅することにより前記骨格相で囲まれた多数の孔を有する多孔質材料を形成することを特徴とする、多孔質材料の製造方法、および、この製造方法により得られた多孔質材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材料及びその製造方法に関し、特に、電子部品の層間絶縁膜などに用いられる、誘電率が低く、多数の孔が均一に分散された多孔質材料及び該多孔質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子や多層配線基板の層間絶縁膜を形成するために、様々な多孔質膜が用いられている。信号伝達遅延時間を短縮するために、この種の層間絶縁膜は、誘電率の低い絶縁材料で構成することが求められている。そこで、下記の特許文献1には、このような要求を満たすものとして、アルコキシシランの部分加水分解縮合物と、カルボン酸基を分子内に有し、かつ主鎖に含フッ素脂肪族環構造または含フッ素脂肪族構造を有するフッ素樹脂とからなる均一に相溶した複合材の膜を、該フッ素樹脂の熱分解開始温度以上の温度で熱処理することにより、多孔質膜を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−217458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法では、上記特定のフッ素樹脂の熱分解開始温度以上の温度で熱処理することにより、多数の孔が形成され、それにより多孔質膜が製造されている。そして、このような多数の孔が設けられたSiO系多孔質材料が得られるため、誘電率の低い膜が得られるとされている。
【0005】
ところで、多孔質膜では、孔の大きさをある程度大きくすることにより、より一層の低誘電率化を図ることができる。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、十分な大きさの孔を均一に形成することが困難であった。また、フッ素系樹脂が熱分解した後、その残渣が残り、それによって低誘電率化を十分に果たすことができないという問題もあった。
【0006】
また、多数の孔を含有するため機械的強度が極めて大きな問題となる。
【0007】
さらにまた、半導体装置における層間絶縁膜の形成に際しては、半導体基板内の素子領域の形成後に実行されるため、高温に曝される時間が長いと素子の劣化を招くことがある。このため低温下で形成することのできる層間絶縁膜の形成が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、十分な大きさの孔を均一に形成することができ、かつ孔を形成するための材料が残存しない多孔質膜の製造方法及び該製造方法により得られた多孔質膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)骨格形成用の架橋性材料(a)と、ポリオキシアルキレン樹脂を主成分とし、加熱により分解揮発する加熱消滅性材料(b)とを含む前駆体を調整する工程と、
前記前駆体を、前記加熱消滅性材料(b)の加熱により消滅する温度以上に加熱する工程と、
前記加熱前あるいは加熱中に前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程とを備え、
前記架橋性材料中において前記加熱消滅性材料(b)が消滅することにより前記骨格相で囲まれた多数の孔を有する多孔質材料を形成することを特徴とする、多孔質材料の製造方法。
(2)前記加熱が、150〜350℃の温度及び10分以内の加熱時間の加熱条件により行われる、前記(1)の多孔質材料の製造方法。
(3)前記骨格形成用の架橋性材料(a)がアルコキシシランであり、前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程が、前記アルコキシシランの縮合により無機シラン化合物相を形成する工程である、前記(1)の多孔質材料の製造方法。
(4)前記加熱消滅性材料(b)は、酸素原子含有量が15〜55質量%で、150〜350℃中の所定の温度に加熱することにより10分以内に重量の95%以上が消滅することを特徴とする前記(1)の多孔質材料の製造方法。
(5)前記ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシテトラメチレン又は、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレン及び/もしくはポリオキシテトラメチレンとの混合樹脂であることを特徴とする前記(1)の多孔質材料の製造方法。
(6)前記混合樹脂中のポリオキシプロピレンの含有率が50質量%以上であることを特徴とする前記(5)の多孔質材料の製造方法。
(7)前記ポリオキシアルキレン樹脂は、数平均分子量が5000〜500万であることを特徴とする前記(1)、(5)乃至(6)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(8)前記加熱消滅性材料(b)は、分解促進剤を含むことを特徴とする前記(1)、(4)乃至(7)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(9)前記分解促進剤は過酸化物であることを特徴とする前記(8)の多孔質材料の製造方法。
(10)前記分解促進剤はアゾ化合物であることを特徴とする前記(8)の多孔質材料の製造方法。
(11)前記分解促進剤は酸化錫であることを特徴とする前記(8)の多孔質材料の製造方法。
(12)前記加熱消滅性材料(b)は、分解遅延剤を含むことを特徴とする前記(1)、(4)乃至(7)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(13)前記分解遅延剤はメルカプト化合物、アミン化合物、有機錫、有機ホウ素のいずれかであることを特徴とする前記(12)の多孔質材料の製造方法。
(14)前記加熱消滅性材料(b)が、架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を含む前記(1)、(4)乃至(13)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(15)前記架橋されたポリオキシアルキレン樹脂は、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む架橋性官能基を有する重合体を架橋剤で架橋したものである前記(14)の多孔質材料の製造方法。
(16)前記架橋性官能基が、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基から選択される少なくとも1つであることを特徴とする前記(15)の多孔質材料の製造方法。
(17)前記骨格形成用の架橋性材料(a)100重量部に対し、前記加熱消滅性材料(b)が5〜1000重量部の範囲で用いられる、前記(1)乃至(16)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(18)前記前駆体は、前記骨格形成用の架橋性材料(a)が部分加水分解縮合した複合材であり、前記複合材を被処理基板上に塗布した後に加熱することを特徴とする前記(1)乃至(17)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(19)前記被処理基板は半導体素子の形成された半導体基板であり、前記半導体素子の間を接続する配線層間の層間絶縁膜として、前記多孔質材料を形成することを特徴とする前記(18)の多孔質材料の製造方法。
(20)前記前駆体の加熱工程は、第1の加熱処理工程と、前記第1の加熱処理より高い温度の第2の加熱処理工程とを含むことを特徴とする前記(1)乃至(19)のいずれかの多孔質材料の製造方法。
(21)前記(1)乃至(20)の多孔質材料の製造方法により得られた多孔質材料。
(22)前記(21)の多孔質材料が多孔質膜であり、該多孔質膜を層間絶縁膜として備えることを特徴とする電子部品。
【0010】
本発明の前記(1)の多孔質材料の製造方法は、骨格形成用の架橋性材料と加熱消滅性材料が均一に分散された状態で、加熱すれば、低温下で作業性よく加熱消滅性材料を消滅させることができるため、均一に空孔が分散し、骨格形成用の架橋性材料がこの空孔を囲むように、強固な骨格相構造を形成することができる。従って、半導体装置の製造工程において他の素子領域に悪影響をおよぼすことなく成膜することができる。また必要に応じて骨格相を構成する架橋性材料を自由に選択することができ、用途に応じて信頼性の高い多孔質材料を形成することができる。また、150から350℃、望ましくは150℃から200℃の低温下で膜質の優れた多孔質材料を形成することができるため、骨格相を構成する架橋性材料の選択に際しても自由度が高い。特に半導体装置の層間絶縁膜として使用する際には、200℃以下という極めて低い温度で形成できるため素子の劣化を招くことなく形成することができる。また成膜方法についても、スピン塗布法、印刷塗布法、など適宜組成を調整することにより選択可能である。さらにまた多孔質シートを形成することも容易である。この多孔質シートを、接着性樹脂を用いて半導体基板表面に貼着し、層間絶縁膜として使用することも可能である。
【0011】
また、本発明の前記(2)の多孔質材料の製造方法は、前記加熱が、150〜350℃の温度及び10分以内の加熱時間の加熱条件により行われることにより、高温工程を経ることなく形成できることから、製造が容易でかつ信頼性の高い方法である。また半導体装置の製造工程において、層間絶縁膜の形成などに使用しても、既に形成されている拡散層の伸びや、配線層の劣化を生じることなく信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0012】
また、本発明の前記(3)の多孔質材料の製造方法は、前記骨格形成用の架橋性材料(a)がアルコキシシランであり、前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程が、前記アルコキシシランの縮合により無機シラン化合物相を形成する工程であることにより、強固でかつ酸や塩基に対する劣化を防止し、信頼性の高い多孔質材料を形成することができる。
【0013】
また、本発明の前記(4)の多孔質材料の製造方法は、前記加熱消滅性材料(b)は、酸素原子含有量が15〜55質量%で、150〜350℃中の所定の温度に加熱することにより10分以内に重量の95%以上が消滅することにより、半導体装置の製造方法において、素子領域や配線の劣化を招くことなく形成することができる。
【0014】
また、本発明の前記(5)の多孔質材料の製造方法は、前記ポリオキシアルキレン樹脂が、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシテトラメチレン又は、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレン及び/もしくはポリオキシテトラメチレンとの混合樹脂であることにより、凝集力の低いポリオキシプロピレンと凝集力の高いポリオキシエチレン及び/又はポリオキシテトラメチレンを組み合わせることが可能となり、本発明の消滅性材料の凝集力を用途・用法に応じて調整することが可能となる。
【0015】
また、本発明の前記(6)の多孔質材料の製造方法は、前記混合樹脂中のポリオキシプロピレンの含有率が50質量%以上であることにより、消滅する温度と消滅するまでの時間とをより適切に調整することができる。
【0016】
また、本発明の前記(7)の多孔質材料の製造方法は、前記ポリオキシアルキレン樹脂の数平均分子量が5000〜500万であることにより、揮発性が強くなり過ぎず、前記加熱消滅性材料(b)をより安定的に扱うことが可能となり、また速やかな消滅がより確実になる。
【0017】
また、本発明の前記(8)の多孔質材料の製造方法は、前記加熱消滅性材料(b)が、分解促進剤を含むことにより、より低温または短時間のうちに消滅させることができる。
【0018】
また、本発明の前記(9)の多孔質材料の製造方法は、前記分解促進剤が過酸化物であることにより、分解促進剤に基づく分解残渣をも低く抑えることができる。
【0019】
また、本発明の前記(10)の多孔質材料の製造方法は、前記分解促進剤がアゾ化合物であることにより、促進剤による分解促進と同時に、アゾ化合物の分解で発生する窒素ガスのため、分解物の揮発性を促進することができる。
【0020】
また、本発明の前記(12)の多孔質材料の製造方法は、前記加熱消滅性材料(b)が、分解遅延剤を含むことにより、消滅時間および時間を各利用用途に適したものに制御することができる。
【0021】
また、本発明の前記(13)の多孔質材料の製造方法は、前記分解遅延剤がメルカプト化合物、アミン化合物、有機錫、有機ホウ素のいずれかであることにより、前記加熱消滅性材料(b)を構成しているポリオキシアルキレンの分解を遅らせることができる。
【0022】
また、本発明の前記(14)の多孔質材料の製造方法は、前記加熱消滅性材料(b)が、架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を含むことにより、分解速度を緩やかにできる場合があり、急激な分解による異常発泡を抑えることができる。
【0023】
また、本発明の前記(15)の多孔質材料の製造方法は、前記架橋されたポリオキシアルキレン樹脂が、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む架橋性官能基を有する重合体を架橋剤で架橋したものであることにより、容易に前記加熱消滅性材料(b)に架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を含ませることができる。
【0024】
また、本発明の前記(16)の多孔質材料の製造方法は、前記架橋性官能基が、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基から選択される少なくとも1つであることにより、公知の架橋反応条件を選べるため、容易に架橋反応を制御することができる。
【0025】
すなわち、加水分解性シリル基の場合、有機錫、有機アルミニウム、有機ホウ素といったルイス酸や、塩酸といった無機酸、トリエチルアミン・アンモニア・水酸化ナトリウムといった公知の架橋剤を用いることができる。
【0026】
イソシアネート基の場合、多価アルコール、多価アミン、有機錫、一分子中に酸無水物構造を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0027】
エポキシ基の場合、一級アミノ基を複数個有する化合物、三級アミン、カルボキシル基を複数個有する化合物、光酸発生剤、光アミン発生剤、一分子中に酸無水構造を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0028】
オキセタニル基の場合、光酸発生剤といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0029】
酸無水物基の場合、多価アルコール、一級アミノ基を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0030】
カルボキシル基の場合、エポキシ基を複数個有する化合物、水酸基を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0031】
水酸基の場合、イソシアネート基を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0032】
重合性不飽和炭化水素基の場合、有機過酸化物、多価メルカプタン、一級アミノ基を複数個有する化合物といった公知の架橋剤を用いることができる。
【0033】
また、本発明の前記(17)の多孔質材料の製造方法は、前記骨格形成用の架橋性材料(a)100重量部に対し、前記加熱消滅性材料(b)を5〜1000重量部の範囲で用いることにより、低誘電率と強度を十分に兼ね備えた多孔質材料を得ることができる。
【0034】
また、本発明の前記(18)の多孔質材料の製造方法は、前記前駆体は、前記骨格形成用の架橋性材料(a)が部分加水分解縮合した複合材であり、前記複合材を被処理基板上に塗布した後に加熱することにより、半導体基板上への形成が極めて容易に実現可能となる。
【0035】
また、本発明の前記(19)の多孔質材料の製造方法は、前記被処理基板は半導体素子の形成された半導体基板であり、前記半導体素子の間を接続する配線層間の層間絶縁膜として、前記多孔質材料を形成することにより、低誘電率でかつ機械的強度の高い層間絶縁膜を形成することができる。
【0036】
また、本発明の前記(20)の多孔質材料の製造方法は、前記前駆体の加熱は、第1の加熱処理と、前記第1の加熱処理より高い温度の第2の加熱処理とで行われることにより、まず、低温下で少しづつ加熱消滅性材料を消滅させた上で、高温にし、より高速で加熱消滅性材料を消滅させることにより、より均一な多孔質材料を形成することができる。
【0037】
また、本発明の前記(21)の多孔質材料は、前記(1)乃至(20)の製造方法により得られたことにより、均質で機械的強度の高いものとすることができる。
【0038】
また、本発明の前記(24)の電子部品は、前記(21)の多孔質材料が多孔質膜であり、該多孔質膜を層間絶縁膜として備えることにより、低誘電率で、機械的強度が高い膜とすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る多孔質材料の製造方法では、骨格形成用の架橋性材料(a)に、ポリオキシアルキレン樹脂を主成分とし、加熱により分解揮発する加熱消滅性材料(b)が分散されている前駆体が用意され、該前駆体を加熱消滅性材料の加熱により消滅する温度以上に加熱するだけで、加熱消滅性材料が消滅することにより多数の孔が形成されており、かつ前記架橋性材料(a)を架橋させた骨格相をマトリックスとする多孔質材料が得られる。すなわち、比較的簡単な方法で多孔質材料を製造することができる。
【0040】
しかも、上記骨格形成用の架橋性材料(a)に、加熱消滅性材料(b)を分散させた前駆体を用意すればよく、加熱消滅性材料を均一に分散させるだけで、孔が均一に分散された多孔質材料を容易に得ることができる。加えて、加熱消滅性材料の分散粒子の粒径を制御することにより、比較的大きな孔を容易に形成することができるとともに、孔の大きさが均一な多孔質材料を容易に提供することができる。加えて、上記加熱消滅性材料は加熱により完全に消滅するため、加熱消滅性材料の残渣による誘電率の上昇等も生じ難い。
【0041】
よって、本発明に係る製造方法によれば、低誘電率であり、しかも誘電率特性のばらつきが少ない、多孔質材料及び該多孔質材料からなる層間絶縁膜を有する電子部品を容易に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の多孔質材料を層間絶縁膜とする半導体デバイスの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に本発明を詳述する。
【0044】
(骨格形成用の架橋性材料(a))
本発明においては、多孔質材料のマトリックスを構成するために、骨格形成用の架橋性材料が用いられる。骨格形成用の架橋性材料としては、特に限定されないが、アルコキシシランが好適に用いられる。
【0045】
アルコキシシランとしては、無機シラン化合物相を縮合により形成する適宜のアルコキシシランが用いられる。このようなアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルオクチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、クロロメチル(ジイソプロポキシ)メチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、トリス(2−メトシエトキシ)ビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシドキシプロピル)メチルシラン、トリメトキシ[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]−ヘプト−3−イル)エチル]シラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロトリス(1,3−ジメチルブトキシ)−シラン、ジクロロジエトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)−プロピオニトリル、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)−プロピルチオイソシアネート、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニル−シクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−エトキシエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メチルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。上記アルコキシシランは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記アルコキシシランは、後述する加熱工程において縮合し、無機シラン化合物相、すなわち、SiO相を構成し、多孔質材料のマトリックス相を構成する。
【0047】
また、上記アルコキシシランは常温で液状であり、従って、アルコキシシランと後述のポリオキシアルキレン樹脂を主成分とする加熱消滅性材料(b)とを含む前駆体において、加熱消滅性材料を均一に分散させることができる。
【0048】
(加熱消滅性材料(b))
本発明では、加熱消滅性材料は、ポリオキシアルキレン樹脂を主成分とする。
【0049】
また、この加熱消滅性材料は、酸素原子含有量が15〜55質量%であることが好ましい。また、この加熱消滅性材料は、150〜350℃中の所定の温度に加熱することにより10分以内に重量の95%以上が消滅するものである。
【0050】
本発明の加熱消滅性材料の加熱消滅性材料のポリオキシアルキレン樹脂とは、未架橋のものと架橋されたものとの双方を纏めて意味するものである。
【0051】
また、本発明の加熱消滅性材料のポリオキシアルキレン樹脂としては、特に限定されないが、ポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体等が挙げられる。
【0052】
上記ポリアルキレングリコールとしては特に限定されないが、例えば、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシテトラメチレン又は、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレン及び/もしくはポリオキシテトラメチレンとの混合樹脂として用いることが好ましく、混合樹脂中のポリオキシプロピレンの含有率が50質量%以上であることがより好ましい。このような混合樹脂を用いれば、樹脂の混合割合を調整することにより、消滅する温度と消滅するまでの時間とを調整することができる。
【0053】
上記ポリオキシアルキレンをセグメントとして含む共重合体におけるポリオキシアルキレンセグメントとは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を2個以上有するセグメントを意味する。
【0054】
【化1】

【0055】
式(1)中、nは1以上の整数を表し、R1n、R2nはn番目の置換基であって、水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基からなる群より選択される1種以上を組み合わせて得られる置換基を表す。
【0056】
なお、上記一般式(1)で表される繰り返し単位が1個である場合には、本発明の加熱消滅性材料を加熱により完全に消滅させることが難しくなる。また、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を2個以上有するセグメントに架橋点がなく他のセグメントにより架橋されたゲル状樹脂である場合であっても、架橋点間に上記ポリオキシアルキレンセグメントが存在する場合には、本発明の加熱消滅性材料に用いることができる。更に、上記ポリオキシアルキレンをセグメントとして含む共重合体は鎖延長剤を用いて鎖状にセグメントを連結させていてもよい。
【0057】
上記ポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体としては特に限定されず、例えば、ポリメチレングリコール(ポリアセタール)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、及び、これら複数のセグメントを含むもの等が挙げられる。また、これより得られる、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。また、これら、ポリオキシアルキレンセグメントをグラフト鎖に有する(メタ)アクリルポリマーやポリスチレン等のビニル重合体等が挙げられる。これら、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
上記ポリオキシアルキレン樹脂の数平均分子量は、5000〜500万であることが好ましい。該数平均分子量が5000より低い場合、揮発性が強くなり、本発明の消滅性材料を安定的に扱うことが困難な場合がある。一方、500万を超えると凝集力に優れるものの、絡み合い効果により速やかな消滅が困難な場合がある。
【0059】
詳細には、該数平均分子量は、本発明の製造方法により得られる多孔質材料の使用用途、使用形態に応じて適宜選択されるものである。
【0060】
また、本発明の加熱消滅性材料には、分解促進剤又は分解遅延剤を含ませることによって、その分解速度及び分解温度を、本発明の製造方法により得られる多孔質材料の使用用途、使用形態に応じて適宜制御することができる。
【0061】
分解促進剤としては、特に限定されないが、アゾジカルボンアミドなどのアゾ化合物、硫酸鉄、硝酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト等の重金属化合物;シュウ酸、リノレイン酸、アスコルビン酸等のカルボン酸類;ハイドロキノン、過酸化物、酸化錫等が挙げられる。
【0062】
上記過酸化物としては、特に限定されず、無機過酸化物であっても有機過酸化物であっても良い。具体的には、無機過酸化物として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウム、過ヨウ素酸カリウム等を等を挙げることができる。
【0063】
有機過酸化物としては特に限定されないが、本発明の加熱消滅性材料に貯蔵安定性を要する場合には、10時間半減期温度が100℃以上であるものが好適である。10時間半減期温度が100℃以上の有機過酸化物としては、例えば、P−メンタンハイドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロキシパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロキシパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロキシパーオキサイド、t−ブチルハイドロキシパーオキサイド等のハイドロキシパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピルベンゼン)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド;1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等のパーオキシエステル等を挙げることができる。
【0064】
上記アゾ化合物としては、特に限定されないが、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(4―メトキシ−2,4―ジメチルヴァレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等を挙げることができる。
【0065】
なお、上記過酸化物およびアゾ化合物を含有することにより、本発明の加熱消滅性材料を加熱して消滅させた後の炭化物の残渣の発生も抑制することができる。特に過酸化物のなかでも、灰分残渣の発生を抑制することができることから、有機過酸化物が好ましい。
【0066】
上記分解遅延剤としては、特に限定されないが、メルカプト化合物、アミン化合物、有機錫、有機ホウ素等が挙げられる。
【0067】
上記メルカプト化合物としては、特に限定されないが、具体的には、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1−オクタンチオール、ドデカンチール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、1,3−プロパンジオール等を挙げることができる。
【0068】
上記アミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、イソプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン、メチルアニリン等を挙げることができる。
【0069】
上記有機錫としては、特に限定されないが、具体的には、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジウラレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオン)、ジラウリル錫ジウラレート等を挙げることができる。
【0070】
上記有機ホウ素としては、特に限定されないが、具体的には、トリメチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート、トリメトキシボロキシン、トリメチレンボレート等を挙げることができる。
【0071】
上記遅延剤を添加することにより、加熱消滅性材料の本来の消滅温度では、均質な多孔質膜が生成しない場合や、加熱消滅性材料の消滅温度付近で多孔質膜のポストベークを行いたい場合に有効である。
【0072】
本発明の加熱消滅性材料における、上記分解促進剤及び分解遅延剤の含有量としては、特に限定されず、本発明の製造方法により得られる多孔質材料の使用用途、使用形態に応じて適宜選択されるものであるが、具体的には、加熱消滅性材料に対し、1〜10質量%含有することが好ましい。
【0073】
また、本発明の加熱消滅性材料は、酸素を含む雰囲気下では150〜300℃中の所定の温度で、嫌気性雰囲気下では150〜350℃中の所定の温度で、減圧下では5分以下に150〜350℃中の所定の温度で、それぞれ加熱することにより消滅する。このような、加熱の際の雰囲気下の違いによって、その分解温度範囲が変化する特性を生かし、様々な用途に適宜利用できる多孔質材料を製造することができる。特に、200℃以下での形成が可能であるため、特別の加熱工程を設けることなく、後続の他工程に際して自然に加熱消滅を実現することも可能である。
【0074】
また上述の通り、本発明において、架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を主成分とする加熱消滅性材料を用いることができる。この場合、上記架橋されたポリオキシアルキレン樹脂の架橋形態としては特に限定されず、物理架橋であっても、化学架橋であってもよい。
【0075】
ポリオキシアルキレン樹脂を物理架橋させる方法としては、例えば、重合セグメントとして結晶性セグメントを選択し結晶化させる方法や、高分子量セグメントを用いて分子鎖の絡み合いを増やす方法や、水酸基やアミノ基、アミド基等の官能基を有するセグメントを用いて水素結合を形成させる方法等が挙げられる。
【0076】
ポリオキシアルキレン樹脂を化学架橋させる方法としては、例えば、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む架橋性官能基を有する重合体を架橋剤で架橋させる方法等が挙げられる。
【0077】
上記ポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体が有する架橋性官能基としては、特に限定されないが、例えば、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基等が挙げられる。なかでも、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基から選択される少なくとも1つであることが好ましく、加水分解性シリル基、エポキシ基、オキセタニル基から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、加水分解性シリル基がさらに好ましい。これら架橋性官能基は単独種のもので用いてもよいし、2種以上を併用したものを用いてもよい。
【0078】
上記、加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体のうち市販されているものとしては、例えば、鐘淵化学工業社製の商品名MSポリマーとしてMSポリマーS−203、S−303、S−903等、サイリルポリマーとして、サイリルSAT−200、MA−403、MA−447等、エピオンとしてEP103S、EP303S、EP505S等、旭硝子社製のエクセスターESS−2410、ESS−2420、ESS−3630等が挙げられる。
【0079】
上記イソシアネート基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体は、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、TDI、MDI等のジイソシアネートとポリプロピレングリコールとをイソシアネートモル量を水酸基モル量より多めにした条件下でウレタン化反応すること等により得ることができる。
【0080】
上記エポキシ基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体のうち市販されているものとしては、例えば、共栄社化学社製エポライトシリーズ等が挙げられる。
【0081】
上記重合性不飽和炭化水素基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等が挙げられる。
【0082】
上記(メタ)アクリロイル基やスチリル基等の重合性不飽和基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体としては、例えば、α,ω−ジ(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレングリコール、α,ω−ジ(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール、α−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレングリコール、α−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール等が挙げられる。このうち市販されているものとしては、例えば、日本油脂製ブレンマーシリーズ、新中村化学社製NKエステルMシリーズ、新中村化学社製NKエステルAMPシリーズ、同社製NKエステルBPEシリーズ、新中村化学社製NKエステルAシリーズ、新中村化学社製NKエステルAPGシリーズ、東亜合成社製アロニックスM−240、東亜合成社製アロニックスM−245、東亜合成社製アロニックスM−260、東亜合成社製アロニックスM−270、第一工業製薬製PEシリーズ、第一工業製薬製BPEシリーズ、第一工業製薬製BPPシリーズ、共栄社化学社製ライトエステル4EG、共栄社化学社製ライトエステル9EG、共栄社化学社製ライトエステル14EG、共栄社化学社製ライトアクリレートMTG−A、共栄社化学社製ライトアクリレートDPM−A、共栄社化学社製ライトアクリレートP−200A、共栄社化学社製ライトアクリレート9EG、共栄社化学社製ライトアクリレートBP−EPA等が挙げられる。
【0083】
以下に、前記化学架橋に用いる架橋剤について説明する。
【0084】
前記化学架橋に用いる架橋剤としては、重合体の架橋性官能基を架橋させる架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、前記ポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体が有する架橋性官能基と反応して、それ自体が架橋体の構造中に取り込まれる作用を有するもの(以下、架橋剤(1)とも称する)と、前記ポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体が有する架橋性官能基同士を反応させる触媒しての作用を有するもの(以下、架橋剤(2)とも称する)がある。また、上記の架橋剤(1)と架橋剤(2)の双方の作用を有する架橋剤(3)がある。
【0085】
架橋剤(1)としては、特に限定されないが、具体的には以下のものが挙げられる。
【0086】
上記オキセタニル基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体を架橋させる架橋剤であって、例えば、紫外線や可視光により酸が発生する光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤である。
【0087】
上記イソシアネート基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体を架橋させる架橋剤であって、例えば、水酸基を複数個持つ化合物やアミノ基を複数個持つ化合物等の活性水素を複数個持つ化合物が挙げられる。上記水酸基を複数個持つ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。上記アミノ基を複数個持つ化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、α,ω−ジアミノプロピレングリコール等が挙げられる。
【0088】
架橋剤(2)としては、特に限定されないが、具体的には以下のものが挙げられる。
【0089】
上記加水分解性シリル基を架橋させる架橋剤として、例えば、下記式(2)で表される官能基を有する光反応性触媒、紫外線や可視光により酸が発生する光カチオン開始剤、有機金属化合物、アミン系化合物、酸性リン酸エステル、テトラアルキルアンモニウムハライド(ハライド:フルオリド、クロライド、ブロマイド、ヨウダイド)、カルボキシル基等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。なかでも、下記式(2)で表される官能基を有する光反応性触媒が好適である。
【0090】
【化2】

【0091】
式(2)中、mは2〜5の整数を表し、Y(m)は周期表のIVB族、VB族又はVIB族の原子を表し、Zは水素基、炭化水素基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基又はオキソ基を表す。
【0092】
上記式(2)で表される官能基を有する光反応触媒は、上記式(2)で表される官能基のうち、異なるものを複数種有していてもよい。
【0093】
上記一般式(2)で表される官能基としては、例えば、酸素、硫黄、窒素、リン及び炭素からなる群より選択されるY(m)で示される原子に対し、カルボニル基が2個結合した化合物であって、Y(m)で示される原子の価数に応じて適宜、Zで示される炭化水素基又はオキシド基を有するもの等が挙げられる。
【0094】
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族系炭化水素基、不飽和脂肪族系炭化水素基、芳香族系炭化水素基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲でアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン基、ウレア基、イミド基、エステル基等の置換基を有していても良い。また、異なる炭化水素基を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒は、環状化合物であってもよい。このような環状化合物としては、例えば、環状鎖の中に1個又は2個以上の同種又は異種の上記一般式(2)で表される官能基を有する化合物等が挙げられる。更に、複数個の同種又は異種の上記環状化合物を適当な有機基で結合した化合物や、複数個の同種又は異種の上記環状化合物をユニットとして少なくとも1個以上含む双環化合物等も用いることができる。
【0096】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が酸素原子の場合には、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブチル酸無水物、イソブチル酸無水物、バレリック酸無水物、2−メチルブチル酸無水物、トリメチル酢酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリル酸無水物、ミリスチリル酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリル酸無水物、ドコサン酸無水物、クロトン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、オレイン酸無水物、リノレイン酸無水物、クロロ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブチル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2,2−ジメチルコハク酸無水物、イソブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2−メチルマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、1−ナフチル酢酸無水物、安息香酸無水物、フェニルコハク酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物等;マレイン酸無水物とラジカル重合性二重結合を持つ化合物の共重合体として、例えば、マレイン酸無水物と(メタ)アクリレートの共重合体、マレイン酸無水物とスチレンの共重合体、マレイン酸無水物とビニルエーテルの共重合体等が挙げられる。これらのうち市販品としては、例えば、旭電化社製のアデカハードナーEH−700、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A;新日本理化社製のリカシッドTH、リカシッドHT−1、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMH−700H、リカシッドMH、リカシッドSH、リカレジンTMEG;日立化成社製のHN−5000、HN−2000;油化シェルエポキシ社製のエピキュア134A、エピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H;住友化学社製のスミキュアーMS等が挙げられる。
【0097】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が窒素原子の場合には、例えば、コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド、α,α−ジメチル−β−メチルコハク酸イミド、α−メチル−α−プロピルコハク酸イミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド、3−メチル−N−フェニルマレイミド、N,N’−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、1,1’−(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミド、N−エチルフタルイミド、N−プロピルフタルイミド、N−フェニルフタルイミド、N−ベンジルフタルイミド、ピロメリット酸ジイミド等が挙げられる。
【0098】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子がリン原子の場合には、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0099】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が炭素原子の場合には、例えば、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のジケトン類;ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルメチルマロネート、テトラエチル1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸エステル類;メチルアセチルアセトナート、エチルアセチルアセトナート、メチルプロピオニルアセテート等のα−カルボニル−酢酸エステル類等が挙げられる。
【0100】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒のなかでも、ジアシルフォスフィンオキシド又はその誘導体は、消滅後の残渣が極めて少ないことから特に好適に用いられる。
【0101】
上記一般式(2)で表される官能基を有する光反応触媒の配合量の好ましい使用量としては、上記加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30重量部である。0.01重量部未満であると、光反応性を示さなくなることがあり、30重量部を超えると、加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体を含有する組成物の光透過性が低下して、光を照射しても表面のみが架橋、硬化し、深部は架橋、硬化しないことがある。より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は20重量部である。
【0102】
上記有機金属化合物として、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のアルキルオキシチタネート等が挙げられる。
【0103】
上記重合性不飽和基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体を架橋させる架橋剤として、例えば、過酸化物、アゾ化合物等の熱ラジカル型開始剤;紫外線や可視光による光ラジカル開始剤;熱又は光ラジカル開始剤とメルカプト基を複数個持つ化合物を組み合わせてなる開始剤系等が挙げられる。
【0104】
上記熱ラジカル開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、tert−ヘキシルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類等の有機過酸化物、又は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0105】
上記光ラジカル開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体化合物;ハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキシド;アシルフォスフォナート;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド;ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタフルオロフェニル)−チタニウム、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]−チタニウム;アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0106】
上記エポキシ基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体を架橋させる架橋剤として、例えば、紫外線や可視光により酸が発生する光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤、アミン化合物系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプト系硬化剤、ケチミンやDICY等の熱潜在性硬化剤、カルバモイルオキシイミノ基等を有する光アミン発生剤等が挙げられる。
【0107】
上記光カチオン触媒としては、例えば、鉄−アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。このうち、オニウム塩やピリジニウム塩の対アニオンとしては、例えば、SbF、PF、AsF、BF、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等が挙げられる。これらの光カチオン触媒のうち市販されているものとしては、例えば、イルガキュアー261(チバガイギー社製)、オプトマーSP−150(旭電化工業社製)、オプトマーSP−151(旭電化工業社製)、オプトマーSP−170(旭電化工業社製)、オプトマーSP−171(旭電化工業社製)、UVE−1014(ゼネラルエレクトロニクス社製)、CD−1012(サートマー社製)、サンエイドSI−60L(三新化学工業社製)、サンエイドSI−80L(三新化学工業社製)、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製)、CI−2064(日本曹達社製)、CI−2639(日本曹達社製)、CI−2624(日本曹達社製)、CI−2481(日本曹達社製)、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローヌ・プーラン社製)、UVI−6990(ユニオンカーバイド社製)、BBI−103(ミドリ化学社製)、MPI−103(ミドリ化学社製)、TPS−103(ミドリ化学社製)、MDS−103(ミドリ化学社製)、DTS−103(ミドリ化学社製)、NAT−103(ミドリ化学社製)、NDS−103(ミドリ化学社製)等が挙げられる。これらの光カチオン触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記熱カチオン硬化剤としては、例えば、アルキル基を少なくとも1個有するアンモニウム塩、スルホニウム塩、ヨウドニウム塩、ジアゾニウム塩、三フッ化ホウ素・トリエチルアミン錯体等が挙げられる。これらの塩類の対アニオンとしては、例えば、SbF、PF、AsF、BF、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等のアニオンが挙げられる。
【0109】
上記光アミン発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシイミノ基を有する化合物、コバルトアミン錯体、カルバミン酸−o−ニトロベンジル、o−アシルオキシム等が挙げられる。
【0110】
架橋剤(3)としては、特に限定されないが、α,ω−ジアミノポリオキシプロピレン等が挙げられる。
【0111】
また架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を主成分とする加熱消滅性材料を用いる場合に、本発明の目的を阻害しない範囲において、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体と同じ反応性中間体を経由する官能基を有する化合物を共重合性又は共架橋性成分として含有してもよい。また、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む重合体とは異なる反応性中間体を経由する架橋性又は重合性官能基を有する化合物を共重合性又は共架橋性成分として含有してもよい。更に、これらの2種類の官能基を同時に併せ持つ化合物を含有してもよい。
【0112】
上記共重合性又は共架橋性成分としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物が挙げられる。このようなラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチリル基を持つ化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物等の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物等が挙げられる。
【0113】
【化3】

【0114】
上記共重合性又は共架橋性成分としては、また、例えば、エポキシ基を有する化合物が挙げられる。このようなエポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、脂肪族環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、グリシジルエステル系化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化SBS(SBSはポリ(スチレン−co−ブタジエン−co−スチレン)共重合体を示す)等が挙げられる。
【0115】
上記共重合性又は共架橋性成分としては、また、例えば、イソシアネート基を有する化合物が挙げられる。このようなイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアン酸フェニルメタン等が挙げられる。
【0116】
また、本発明の加熱消滅性材料は、液状樹脂を含有していてもよい。液状樹脂を含有することにより、本発明の加熱消滅性材料の消滅開始温度を下げることができ、150℃以上で速やかに消滅させることができる。上記液状樹脂としては、本発明の加熱消滅性材料の形状維持、消滅温度を考慮して沸点が100℃以上の化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールオリゴマー、ポリプロピレンオリゴマー、ポリテトラメチレングリコールオリゴマー、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、グリセリンモノオレイル酸エステル等が挙げられる。
【0117】
また、本発明の加熱消滅性材料は、クレー等のフィラー類を含有してもよい。これらを含有することにより、その凝集力が向上する。ただし、これらは必ず無機残渣となるものであることから、その含有量は必要最小限に抑えるべきである。
【0118】
さらに、本発明の加熱消滅性材料は、シランカップリング剤を含有してもよい。
【0119】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン等が挙げられる。
【0120】
また、本発明の加熱消滅性材料は、チタンカップリング剤を含有してもよい。
【0121】
上記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピル−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホシフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリドデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
【0122】
また、本発明の加熱消滅性材料は、更に、用途、用法に応じて、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料等を含有してもよい。
【0123】
上記加熱消滅性材料は、前述した骨格形成用の架橋性材料(a)、具体的には液状のアルコキシシランに分散もしくは溶解された状態で用意される。分散した場合、加熱消滅性材料の粒径を制御することにより、加熱消滅性材料が加熱により消滅した後に生じる孔の径を制御することができる。従って、加熱消滅性材料の粒径は均一であることが好ましい。また、多孔質材料の誘電率を低めるためには、孔の大きさが十分大きいことが必要であり、例えば0.01μm〜100μm程度とすることが望ましい。従って、加熱消滅性材料の粒径は、0.01μm〜100μm程度であることが望ましい。
【0124】
本発明においては、上記骨格形成用の架橋性材料(a)100重量部に対し、好ましくは、上記加熱消滅性材料は5〜1000重量部の割合で用いられる。5重量部未満では、空隙率が小さくなり、誘電率を十分に低くすることができず、1000重量部を越えると、多孔質材料の強度が低下したりすることがある。
【0125】
骨格形成用の架橋性材料(a)に対し加熱消滅性材料を配合するにあたっては、骨格形成用の架橋性材料(a)と加熱消滅性材料を適宜の方法で混合すればよく、それによって加熱消滅性材料が容易に均一に分散される。
【0126】
(加熱)
本発明では、上記のようにして、骨格形成用の架橋性材料(a)に加熱消滅性材料が分散されている前駆体が得られ、該前駆体が加熱消滅性材料の加熱により消滅する温度以上に加熱される。それによって、骨格形成用の架橋性材料(a)がアルコキシシランの場合、該アルコキシシランの縮合により無機シラン化合物相が形成されるとともに、該無機シラン化合物相中において加熱消滅性材料の消滅による多数の孔が形成される。すなわち、多孔質材料が得られる。
【0127】
上記加熱は、例えば150〜350℃の温度で、加熱することにより行われる。すなわち、比較的低温で加熱することにより孔を形成することができる。また、この温度範囲において、10分以内の加熱により孔を形成することができ、すなわち比較的短時間で多孔質材料を得ることができる。
【0128】
このようにして得られた多孔質材料は、様々な用途に用いることができる。すなわち、多数の孔が十分な大きさでかつ均一に分散され、機械的強度の高い多孔質を得ることができるので、層間絶縁膜や、燃料電池の電極あるいはプロトン伝導性膜、さらには断熱材料として好適に用いられ得る。特に、比較的大きな径の孔を均一に分散させることができるので、半導体装置や多層基板などの電子部品における層間絶縁膜に上記多孔質材料からなる多孔質膜を好適に用いることができる。
【0129】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0130】
(実施例1)
テトラエトキシシラン(信越化学社製)80g、加水分解性シリル基含有ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセスター ESS−3630)20g、ジアシルホスフィンオキサイド誘導体(チバスペシャリティケミカル、イルガキュア 819)3gを均一になるまで、遮光下、約40℃で加熱して溶解させた。
【0131】
得られた組成物を、鋼板に粘着テープを用いて横巾10mm×縦巾30mm×深さ0.05mmになるように囲いを作り、その中に入れ、高圧水銀灯(365nm、照度10mw/cm×60秒)を照射し、加水分解性シリル基含有ポリプロピレングリコールの架橋を進行させ、加熱消滅性材料となる共重合体の大きさを制御する。そして、照射後そのまま、20℃で48時間養生した。弾力性のあるフィルムが得られた。得られたフィルムを250℃のオーブン中で、10分間養生した。残留有機分が3%以下の硬質で多孔質の板が得られた。得られた硬質の皮膜をさらに、400℃で30分間養生した。なお、残留有機分の評価は、対象物質を、熱重量損失(TGA、昇温速度10℃/分、上限温度600℃)による損失重量より求めた。
【0132】
(実施例2)
テトラエトキシシラン(信越化学社製)80g、加水分解性シリル基含有ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセスター ESS−3630)12g、α,ω−ジアクリロイルオキシポリプロピレングリコール(東亜合成社製、アロニックス M−270)8g、ジアシルホスフィンオキサイド誘導体(チバスペシャリティケミカル、イルガキュア 819)3gを均一になるまで、遮光下、約40℃で加熱して溶解させた。
【0133】
得られた組成物を、鋼板に粘着テープを用いて横巾10mm×縦巾30mm×深さ0.05mmになるように囲いを作り、その中に入れ、高圧水銀灯(365nm、照度10mw/cm×60秒)を照射し、照射後そのまま、20℃で24時間養生した。弾力性のあるフィルムが得られた。得られたフィルムをフッ化エチレン樹脂焼き付け処理した鉄板の上に置き、250℃のオーブン中で、10分間養生した。残留有機分が約5%の硬質で多孔質の板が得られた。得られた硬質の板をさらに、400℃で30分間養生した。
【0134】
(比較例1)
テトラエトキシシラン(信越化学社製)80g、シクロヘキシルアクリレート(数平均分子量10万)の酢酸エチル溶液(固形分50%)40g、ジブチル錫ジラウレート(和光純薬社製)2gの溶液を、ポリエチレン板に粘着テープを用いて横巾10mm×縦巾30mm×深さ0.05mmになるように囲いを作り、その中に入れ、風乾で酢酸エチルを揮発させながら、20℃で48時間養生した。得られたフィルムを250℃のオーブン中で、10分間養生した。硬質で多孔質の板が得られたが、残留有機分は30%であった。得られた硬質の板をさらに、400℃で30分間養生することで、残留有機分は5%以下となった。
【0135】
(実施例3)
アルコキシシランと加熱消滅性材料とを含む前駆体は、アルコキシシランが部分加水分解縮合した液状の複合材であり、前記複合材をSOG(スピン・オン・ガラス)塗布液として用い、半導体デバイスの配線間の層間絶縁膜を形成した。これについては、図1を参照して詳細に説明する。図1は、被処理基板である半導体基板上にMOSFETを形成し、2層配線構造の層間絶縁膜に本発明の多孔質材料を適用する製造工程順の断面図である。
【0136】
図1(a)に示すように、シリコン基板1に選択的に素子分離領域2をトレンチ素子分離法で形成する。そして、ゲート絶縁膜3を形成しリン等の有効不純物を含有する多結晶シリコンでゲートシリコン層4を形成し、更にソース/ドレイン領域となる不純物拡散層5a、5bをヒ素のイオン注入とその後の熱処理で形成する。次に、図1(b)に示すように、ゲートシリコン層4の側壁にシリコン酸化膜等でスペーサー3sを形成する。引き続いて、全面に高融点金属たとえばコバルト(Co)をスパッター法で堆積させ熱処理を施しその不要部分のコバルトを除去し、図1(c)に示すように上記ゲートシリコン層4、不純物拡散層5a,5b上にそれぞれシリサイド層6g、6a、6bを選択的に形成しサリサイド構造にする。
【0137】
次に、図1(d)に示すように第1層間絶縁膜7を全面に形成する。この第1層間絶縁膜7は、化学気相成長(CVD)法によるシリコン酸化膜の成膜と、化学機械研磨(CMP)による表面の平坦化により形成するとよい。そして、第1コンタクトホール9を第1層間絶縁膜7に設け、タングステン(W)等の金属で第1層配線8を形成する。シリコンの熱酸化膜の比誘電率は3.9であるが、第1層間絶縁膜7の比誘電率は、CVD法で用いる反応ガスによるがほぼ4程度になる。
【0138】
このようにした後に、上述したところのSOG塗布液を第1層間絶縁膜7および第1配線層8を被覆するように1000〜5000rpmの回転速度で全面にスピン塗布する。この回転速度は、SOG塗布液の粘度あるいは層間絶縁膜の膜厚により決められる。その後、拡散炉中で150℃〜250℃、10分間程度の第1の加熱処理を上記スピン塗布膜に施す。このようにして、図1(e)に示すように、残留有機分が約5%の硬質で多孔質の第2層間絶縁膜10が得られる。得られた第2層間絶縁膜10に、拡散炉中でさらに400℃で30分間の第2の加熱処理を施す。このようにして、第2層間絶縁膜10は、例えば膜厚が500nm程度で、膜中に均一な大きさで均一に分散する孔を有する多孔質膜となり、最終的に第2層間絶縁膜10の比誘電率は1.5〜2.5程度にすることが可能になる。
【0139】
ここで、第1,2の加熱処理の雰囲気ガスには酸素あるいは窒素を用いる。酸素ガスの雰囲気で第1の加熱処理を行う場合には、スピン塗布膜の多孔質化が起こり易くなり、130℃程度でも均一な多孔質層が形成される。窒素ガス雰囲気の第1の加熱処理では、酸素ガスの場合よりも多孔質化のための温度は高くなる。この第1の加熱処理では、SOG塗布液の溶剤の除去、ゾル状のスピン塗布膜のゲル化を行っている。そこで、ゲル化し易いSOG塗布液を用いる場合には酸素ガス雰囲気で第1の加熱処理行うとよい。また、ゲル化のし難いSOG塗布液を用いる場合には窒素ガス雰囲気で第1の加熱処理行うとよい。
【0140】
そして、第1層間絶縁膜7および第2層間絶縁膜10に第2コンタクトホール11を設け、アルミニウム(Al)等の金属で第2層配線12を形成する。最後にパッシベーション膜13を全面に被覆する。このようにして、図1(e)に示すような2層配線構造を有する半導体デバイスが形成される。ここで、図示しないがシリコン基板1上にはその他に多数の半導体素子が形成されている。
【0141】
このようにして、高い均一性の孔を有し低誘電率の層間絶縁膜が、半導体デバイス構造に安定的に形成できるようになる。この層間絶縁膜は、機械的強度および耐吸湿性に優れている。そして、設計どおりに、しかも、高速に動作する半導体デバイスが高精度に製造でき、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0142】
実施例3において、第1層間絶縁膜7にも第2層間絶縁膜10と同様な多孔質材料を適用してもよい。この場合には、上述したところのSOG塗布液を全面にスピン塗布するために、第1層間絶縁膜7の表面は平坦に形成され、CMPは不要になる。但し、この場合には、膜厚10nm以下のシリコン窒化膜を全面に形成し、このシリコン窒化膜上に第1層間絶縁膜7を形成するようにするとよい。
【0143】
更に、多層配線構造を有する半導体デバイスの製造において、配線金属に銅を用いたダマシン構造あるいはデュアルダマシン構造における低誘電率の層間絶縁膜として、上述したようなSOG塗布液から形成する多孔質材料を用いることは、上記実施例3と同様に容易である。上述しているように、層間絶縁膜は400℃程度の加熱処理で形成できる、低温成膜の低誘電率絶縁膜であるからである。
【0144】
以上に説明した実施の形態では、シロキサン骨格を有する縮重合化合物(Si−O構造を主骨格とした水素あるいは有機含有の化合物)の多孔質化の場合について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。その他に、有機高分子を主骨格としたシリコン含有の有機薄膜の多孔質化にも、本発明の加熱消滅性材料は同様に適用できる。このような有機絶縁膜として使用できるものには、BCB膜(ジビニルシロキサンベンゾシクロブテン重合体で形成された有機膜)の他にポリアリルエーテル−Si結合の有機絶縁膜があることを確認している。この他に、有機高分子を主骨格としたシリコン含有の有機薄膜としては、一般に有機シロキサン、または、芳香族および/あるいは炭化水素鎖を含む有機シロキサンで構成されるものであれば使用可能である。
【0145】
上記多孔質化された有機薄膜は、スピンオン塗布法及びプラズマ重合法のいずれの成膜方法で形成することも可能である。スピンオン塗布法が使用される場合、先ず、主骨格原料であるモノマーが加熱消滅性材料と共に被処理基板にスピンオン塗布される。更に、被処理基板をアニールすることにより、モノマーが被処理基板上で熱重合され、有機高分子を主骨格としたシリコン含有の有機薄膜が形成される。また、プラズマ重合法が使用される場合、主骨格原料であるモノマーと加熱消滅性材料となるモノマーとが気化されて、モノマー蒸気が生成される。そのモノマー蒸気が不活性ガス中に導入され、更に重合されて、有機高分子を主骨格としたシリコン含有の有機薄膜が形成される。
【0146】
なお、シロキサン骨格を有する縮重合化合物としては、シルセスキオキサン類の絶縁膜、あるいは、Si−H結合、Si−CH 結合、Si−F結合のうち少なくとも1つの結合を含むシリカ膜で形成してもよい。ここで、シルセスキオキサン類の絶縁膜は、メチルシルセスキオキサン(Methyl Silsesquioxane)、ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen Silsesquioxane)、メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン(Methylated Hydrogen Silsesquioxane)あるいはフルオリネーテッドシルセスキオキサン(Furuorinated Silsesquioxane)のような低誘電率膜がある。
【0147】
また、上述したBCB膜は20%程度のシリカ成分を含み、多孔質化する前の比誘電率は、2.5程度であるが、このような有機成分とシリカ成分あるいはシリコン成分とからなる複合膜も有機絶縁膜としてもよい。さらには、該有機成分と該シリカ成分あるいはシリコン成分の一部が窒化された複合膜も有機絶縁膜としてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1…シリコン基板
2…素子分離領域
3…ゲート絶縁膜
3s…スペーサー
4…ゲートシリコン層
5a、5b…不純物拡散層
6a、6b、6g…シリサイド層
7…第1層間絶縁膜
8…第1配線層
9…第1コンタクトホール
10…第2層間絶縁膜
11…第2コンタクトホール
12…第2配線層
13…パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格形成用の架橋性材料(a)と、ポリオキシアルキレン樹脂を主成分とし、加熱により分解揮発する加熱消滅性材料(b)とを含む前駆体を調整する工程と、
前記前駆体を、前記加熱消滅性材料(b)の加熱により消滅する温度以上に加熱する工程と、
前記加熱前あるいは加熱中に前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程とを備え、
前記架橋性材料中において前記加熱消滅性材料(b)が消滅することにより前記骨格相で囲まれた多数の孔を有する多孔質材料を形成することを特徴とする、多孔質材料の製造方法。
【請求項2】
前記加熱が、150〜350℃の温度及び10分以内の加熱時間の加熱条件により行われる、請求項1に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項3】
前記骨格形成用の架橋性材料(a)がアルコキシシランであり、前記架橋性材料を架橋させ骨格相を形成する工程が、前記アルコキシシランの縮合により無機シラン化合物相を形成する工程である、請求項1記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項4】
前記加熱消滅性材料(b)は、酸素原子含有量が15〜55質量%で、150〜350℃中の所定の温度に加熱することにより10分以内に重量の95%以上が消滅することを特徴とする請求項1記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシテトラメチレン又は、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレン及び/もしくはポリオキシテトラメチレンとの混合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合樹脂中のポリオキシプロピレンの含有率が50質量%以上であることを特徴とする請求項5記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレン樹脂は、数平均分子量が5000〜500万であることを特徴とする請求項1、5乃至6のいずれか記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項8】
前記加熱消滅性材料(b)は、分解促進剤を含むことを特徴とする請求項1、4乃至7のいずれか記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項9】
前記分解促進剤は過酸化物であることを特徴とする請求項8記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項10】
前記分解促進剤はアゾ化合物であることを特徴とする請求項8記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項11】
前記分解促進剤は酸化錫であることを特徴とする請求項8記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項12】
前記加熱消滅性材料(b)は、分解遅延剤を含むことを特徴とする請求項1、4乃至7のいずれか記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項13】
前記分解遅延剤はメルカプト化合物、アミン化合物、有機錫、有機ホウ素のいずれかであることを特徴とする請求項12記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項14】
前記加熱消滅性材料(b)が、架橋されたポリオキシアルキレン樹脂を含む請求項1、4乃至13のいずれか記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項15】
前記架橋されたポリオキシアルキレン樹脂は、架橋性官能基を有するポリアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンをセグメントとして含む架橋性官能基を有する重合体を架橋剤で架橋したものである請求項14に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項16】
前記架橋性官能基が、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項15記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項17】
前記骨格形成用の架橋性材料(a)100重量部に対し、前記加熱消滅性材料(b)が5〜1000重量部の範囲で用いられる、請求項1乃至16のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項18】
前記前駆体は、前記骨格形成用の架橋性材料(a)が部分加水分解縮合した複合材であり、前記複合材を被処理基板上に塗布した後に加熱することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項19】
前記被処理基板は半導体素子の形成された半導体基板であり、前記半導体素子の間を接続する配線層間の層間絶縁膜として、前記多孔質材料を形成することを特徴とする請求項18に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項20】
前記前駆体の加熱は、第1の加熱処理と、前記第1の加熱処理より高い温度の第2の加熱処理とで行われることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至20に記載の多孔質材料の製造方法により得られた多孔質材料。
【請求項22】
請求項21に記載の多孔質材料が多孔質膜であり、該多孔質膜を層間絶縁膜として備えることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−275230(P2009−275230A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188809(P2009−188809)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【分割の表示】特願2003−396096(P2003−396096)の分割
【原出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】