説明

加熱装置

【課題】焼き過ぎを防止し美味しく調理することに対して満足のいく加熱装置を提供すること。
【解決手段】発熱部の温度を直接検知することができ、調理物を下方から加熱する加熱手段の発熱部の温度制御を正確かつ安定して行い、調理物の表面を焼きすぎることなく加熱調理することで、調理性能に優れ、安全で使いやすい、両面加熱が可能な加熱装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚等の調理物を加熱調理する際に、加熱手段の温度を精度よく制御する加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱装置、例えば誘導加熱装置においては、図9に示すように、50は厨房家具などに組み込まれたロースタ本体(以下、本体と略す)で、内部に表面をほうろう加工した調理室51を有し、調理室51の入口に扉52を取り付けている。調理室51内の上部にはヒータ53を固定し、調理室51の入口と反対面の後部壁面51aには調理室51内で発生した調理中の蒸気や煙を外部に排出するための煙突54を後方上部に向けて設けている。また調理室51の後部壁面51aには温度センサ55を有している。温度センサ55は、アルミニウムなどの金属板により絶縁チューブで被覆したサーミスタを保持してなるもので、調理室51の後部壁面51aに固定している。温度センサ55は駆動回路(図示せず)と電気的に接続している。
【特許文献1】特開平7−174345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、調理室の温度を測定しているのみであるため、オーブン調理に関しては比較的調理性能を確保できるが、焼き調理に関しては精度よく温度調節をしながら、焼き過ぎを防止し美味しく調理することに対して満足のいくものではないという課題を有していた。例えば魚などの網焼き調理においては、できる限り一定の温度で均一に焼くのが理想に近い焼き方とされ、ヒータの温度を一定温度に制御することが、魚などを美味しく調理するために必要不可欠な要素である。
【0004】
また、異常加熱に対してより安全というわけではなく、調理室の温度が異常温度となり感温動作のスイッチが動作した際には、ヒータは非常に高温になっていることが考えられるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、調理性能に優れ、安全で使いやすい加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱装置は、調理物を載置する載置台と、前記載置台を載せる受け皿と、前記載置台および前記受け皿とともに前記調理物を収納する加熱室と、前記加熱室には前記調理物を下方から加熱する第1の加熱手段を有し、前記第1の加熱手段は発熱部を有し、前記加熱室の後部壁面近傍における前記発熱部の温度を接触検知する温度センサと、制御手段を有し、前記温度センサの温度が所定の値になるように前記制御手段を介して通電を制御する加熱装置としたものである。
【0007】
上記発明のように、発熱部の温度を直接検知することができるため、発熱部の温度制御を正確かつ安定して行うことができる。よって、魚などの網焼き調理において、理想に近い焼き方とされる一定温度による均一焼きに対し、本発明のように両面焼きが可能な加熱装置の場合、特に第1の加熱手段の温度を一定温度に制御することで、魚などを美味しく調理することができる。また発熱部から非発熱部への熱伝導の影響、雰囲気温度の変動による非発熱部の温度変動に関わらず、発熱部の温度を精度よく制御することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱装置は、発熱部の温度を直接検知することができ、調理物を下方から加熱する加熱手段の発熱部の温度制御を正確かつ安定して行い、調理物の表面を焼きすぎることなく加熱調理することで、調理性能に優れ、安全で使いやすいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、調理物を載置する載置台と、前記載置台を載せる受け皿と、前記載置台および前記受け皿とともに前記調理物を収納する加熱室と、前記加熱室には前記調理物を下方から加熱する第1の加熱手段を有し、前記第1の加熱手段は、発熱部と給電端部とを有し、前記第1の加熱手段において前記給電端部の略近傍における発熱部の温度を接触検知する温度センサと、制御手段を有し、前記温度センサの温度が所定の値になるように前記制御手段を介して通電を制御する加熱装置とすることにより、発熱部の温度を直接検知することができるため、発熱部の温度制御を正確かつ安定して行うことができる。
【0010】
また、温度センサは調理物から離れた部位に設置されるため、調理物から流れ出る油や飛沫などによって汚れが付着し難く、温度センサの検知精度低下の可能性が低い。
【0011】
よって、調理性能に優れ、安全で使いやすく、両面加熱ができる加熱装置とすることができる。
【0012】
また、第1の加熱手段の温度を精度よく制御できるため、受け皿と第1の加熱手段との距離を必要以上に離すことなく構成でき、調理物を収納する高さ方向の空間を広く確保することができる。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明における温度センサと発熱部の接触部分を略箱体で囲み、略箱体内部に温度検知空間を設けた加熱装置とすることにより、第1の加熱手段からの輻射熱や、加熱室内温度の変動による温度センサへの影響を最小限に抑えることができる。すなわち、第1の加熱手段に連続通電しながら第2の加熱手段を一定温度に制御したい場合には、加熱時間経過とともに第1の加熱手段の温度は上昇を続け、これからの輻射熱で温度センサは第2の加熱手段の温度を正確に測定することが難しい。また、調理物を加熱している場合には、調理物から発生する水蒸気の影響で加熱室内の温度が一時的に低下することがあり、この影響で温度センサの検知温度が低下し、第2の加熱手段の温度を正確に測定することが難しい。
【0014】
また、温度センサは箱体で囲まれているため、調理物から流れ出る油や飛沫などによって汚れが付着することはなく、温度センサの検知精度が低下することはない。
【0015】
よって、加熱手段の温度を精度よく制御できるため調理性能に優れ、安全で使いやすい加熱装置とすることができる。
【0016】
第3の発明は、特に第1または2の発明における加熱装置に電流遮断手段を設け、電流遮断手段は前記第1の加熱手段と制御手段との間に接続され、前記電流遮断手段が動作して前記加熱手段への通電を停止するときの加熱室内温度は、前記温度センサによって前記加熱手段への通電を制御するときの加熱室内温度より高い値に設定した加熱装置とすることにより、電流遮断手段の方が温度センサより先に動作することがない。また、ON/OFF温度の差を小さく設定した温度センサを用いて駆動回路を制御することにより、調理性能を低下させることなく加熱することができる。また、温度センサが故障した場合には電流遮断手段が動作して異常加熱を停止することができ、安全性を高めることができる。
【0017】
第4の発明は、特に第1の発明における第1の加熱手段の発熱部における温度を、500℃以下に制御する加熱装置とすることにより、第2の加熱手段の発熱部に焼き油が滴下した際に発火し、それが受け皿に落ちて発火が継続することのない安全性に優れた加熱装置とすることができる。
【0018】
また、調理物の表面から内部にかけて徐々に伝熱しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油分が多く残り、調理性能に優れた加熱装置とすることができる。
【0019】
第5の発明は、特に第1の発明における第1の加熱手段の発熱部における温度を、400〜500℃に制御する加熱装置とすることにより、第2の加熱手段の発熱部に焼き油が滴下した際に発火し、それが受け皿に落ちて発火が継続することのない安全性に優れた加熱装置とすることができる。
【0020】
また、調理物の表面から内部にかけて徐々に伝熱しながら調理が進行するので、調理物の内部に旨み成分を含んだ水分や油分が多く残り、調理性能に優れるとともに、調理時間を短くした加熱装置とすることができる。
【0021】
第6の発明は、特に第3の発明における電流遮断手段は、自動または手動復帰式のサーモスタットである加熱装置とすることにより、簡単な構成で、設定された温度で確実に電流を遮断することができる。また、給電を自動または手動で復帰することができるので、温度が低下した際には容易に通常運転に戻すことができる。
【0022】
第7の発明は、特に第3の発明における電流遮断手段は、自動復帰式のサーモスタットと温度ヒューズの組合せとし、前記サーモスタットの方が温度ヒューズより応答が速い加熱装置とすることにより、温度が低下した際には容易に通常運転に戻すことができるとともに、温度が低下しない場合には、サーモスタットが自動的に遮断と復帰を繰り返す間に温度ヒューズの温度が上昇し、温度ヒューズが溶断することで確実に電流を遮断することができる。
【0023】
第8の発明は、特に第2の発明における箱体の略外周を断熱材で覆うようにした加熱装置とすることにより、第1の加熱手段からの輻射熱や、加熱室内温度の変動による温度センサへの影響を極めて最小限に抑えることができ、加熱手段の温度を精度よく制御できるため調理性能に優れ、安全で使いやすい加熱装置とすることができる。
【0024】
第9の発明は、特に第8の発明における温度センサはシース熱伝対とし、シース熱伝対先端部分を黒体塗装した加熱装置とすることにより、発熱部の温度を直接測定するような高温での使用においても、耐久性と繰り返し信頼性に優れ、また輻射熱を効果的に受熱することで、温度検知精度が向上するものである。
【0025】
第10の発明は、上方から加熱する第2の加熱手段を備えることにより、両面焼きの加熱を可能として、調理途中で表裏を返す動作が不要となり、手間を省略できる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における加熱装置の断面図を示したものである。図2は本発明の実施の形態1における加熱装置の要部拡大図である。
【0028】
図1において、1は加熱装置の本体であり、魚等の調理物2を焼く加熱室3を有する。4は加熱室3内に収納された受け皿4で、前面下部にハンドル5を設けており、このハンドル5を操作することにより加熱室3内を前後にスライドするものである。6は調理物2を載置する焼き網で、焼き網6の下面にシーズヒータよりなる第1の加熱手段7が加熱室3の側面に固定されている。焼き網6は、前面端部より第1の加熱手段7を巻き込むようにL状の支持脚を形成し、この支持脚を受け皿4の内底面に載置して受け皿4と一体に前後にスライドするものである。8は第2の加熱手段で、シーズヒータよりなり、加熱室3の上部側面に固定されている。加熱室3内の上部には加熱室3内と連通する排気通路9が設けられ、外部と連通する排気口10が設けられている。
【0029】
図2に示すように、第1の加熱手段7は、発熱部11と、非発熱部12と、給電端部13とからなる。第1の加熱手段7の加熱室3後部壁面に近い発熱部11には、温度センサ14が固定金具15によってねじ止めされている。温度センサ14は、Kタイプの熱伝対をセラミックスなどの絶縁材で電気的に絶縁されたものを、ステンレスなどの金属により被覆したものを用いた。
【0030】
加熱室3後部壁面には、バイメタルなどで構成されたオンオフ幅の大きいサーモスタットからなる電流遮断手段16を取り付けている。電流遮断手段16と第1の加熱手段7および第2の加熱手段8は電源(図示しない)と電気的に直列接続されている。ここで、温度センサ15の温度が所定の値になると駆動回路(図示しない)より第1の加熱手段7および第2の加熱手段8への通電を制御する機能を有しており、さらに、電流遮断手段16が動作して第1の加熱手段7および第2の加熱手段8への通電を停止するときの加熱室3内の温度を、温度センサ14によって第1の加熱手段7への通電を制御するときの加熱室3内の温度より高い値に設定している。
【0031】
以上のように、温度センサ14に関する温度を制御するために制御手段17を設けている。本実施の形態では、第1の加熱手段7の発熱部11の温度を500℃に温調した。
【0032】
以上のように構成された加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
まず、グリル調理の際、使用者がハンドル5を引き出すと、それと連動して焼き網6、受け皿4が加熱室3からスライドして引き出される。そこで焼き網6に魚等の調理物2を載せ、ハンドル5を押し、スライドさせて加熱室3内に収納する。その後、図示しない操作部を操作することにより、第1の加熱手段7、第2の加熱手段8に通電され、加熱調理が開始される。調理物2は第1の加熱手段7、第2の加熱手段8により加熱され、この加熱中、焼き網6の上で焼かれた魚等の調理物2から出る油脂分、即ち焼き油Aを焼き網6の間より落下させ受け皿4へ貯留される。燃焼によって発生した油煙Uは、加熱室3内の排気通路9を通り、排気口10から本体1より排気される。
【0034】
魚などの網焼き調理においては、できる限り一定の温度で均一に焼くのが理想に近い焼き方とされ、本実施の形態のように両面焼きが可能な加熱装置の場合、特に第1の加熱手段7の発熱部11の温度を一定温度に制御することが、魚などを美味しく調理するために必要不可欠な要素である。
【0035】
図3は、従来と本実施の形態の加熱装置における温度センサの検知温度を比較したグラフである。加熱条件は、加熱室3内に何も入れずに魚焼きの調理シーケンスで行った。図3において、T2は図9に示す従来の加熱装置において、第1の加熱手段を追加し両面焼きができるようにしたもので第1の加熱手段の温度を熱伝対により検知し、検知温度の経時変化を示したものである。T1は本実施の形態における温度センサ14の経時変化を示したものである。
【0036】
図3に示すように、従来例では加熱室3後部壁面に取り付けられた温度センサによって、第1及び第2の加熱手段への通電を制御しているため、第1の加熱手段の温度を精度良く温度調整することができない。よって魚の下面に焼き色をつけるために、加熱初期に第1の加熱手段の温度を高温にし、次第に温度を低下させる焼き方にしている。このように、従来例では、魚を一定の温度で均一に焼くことが不可能であり、また加熱初期に第1の加熱手段の温度を高温にすることで、焼き油が第1の加熱手段に滴下した場合に発火の危険性がある。
【0037】
一方、本実施の形態における加熱装置では、加熱初期から第1の加熱手段7の発熱部11を約450℃になるように制御することで、魚の下面に適度な焼き色をつけ美味しく調理している。
【0038】
ここで、第1の加熱手段7に焼き油Aが滴下した場合に発火の可能性がないか、さんまを調理して従来例と比較評価を行った。
【0039】
図4は、受け皿4と第1の加熱手段7の温度と焼き油Aが発火する可能性のある領域の境界線をグラフで示したものである。図4に示すように、第1の加熱手段7の温度が550℃より高い領域では受け皿4が室温の場合でも発火する可能性があり、第1の加熱手段7の温度が500℃〜550℃の領域では受け皿4の温度が室温〜300℃の範囲において発火する可能性があり、第1の加熱手段7の温度が500℃以下の領域では受け皿4の温度が300℃以下の場合においては発火する可能性がない。
【0040】
実調理において、受け皿4の温度は室温から300℃以下であるため、第1の加熱手段7の温度を500℃以下に温調することにより、発火の可能性をなくすことができる。
【0041】
また、第1の加熱手段7の温度が400℃より低い場合にはさんまの標準的な調理時間である20分では十分な焼き色を得られず、また一部に十分に加熱されていない部分が見られる。
【0042】
よって、調理物の種類や調理時間に応じて第1の加熱手段7の温度を400℃以上500℃以下の間で温調することにより、発火することなく焼き性能に優れた加熱装置とすることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態における加熱装置では、発熱部11の温度を直接検知することができるため、発熱部11の温度制御を正確かつ安定して行うことができる。また、発熱部から非発熱部への熱伝導の影響、雰囲気温度の変動による非発熱部の温度変動に関わらず、発熱部の温度を精度よく制御することができる。
【0044】
また、温度センサ14は調理物から離れた部位に設置されるため、調理物から流れ出る油や飛沫などによって汚れが付着し難く、温度センサ14の検知精度低下の可能性が低い。
【0045】
よって、調理性能に優れ、安全で使いやすく、両面加熱ができる加熱装置とすることができる。
【0046】
また、第1の加熱手段7の温度を精度よく制御できるため、受け皿4と第1の加熱手段7との距離を必要以上に離すことなく構成でき、調理物を収納する高さ方向の空間を広く確保することができる。
【0047】
また、電流遮断手段16が動作して第1の加熱手段7および第2の加熱手段8への通電を停止するときの調理室内温度を、温度センサ14によって第1の加熱手段7および第2の加熱手段8への通電を制御するときの調理室内温度より高い値に設定することによって、温度センサ14と駆動回路との制御系より先に動作することがないので、調理性能を悪くすることがない。逆に、温度センサ14などが故障しても、バイメタルによる電流遮断手段16で加熱室3内の異常な温度上昇を感知して、第1の加熱手段7および第2の加熱手段8の通電を機械的に止めることができるので、安全性についても十分に確保できる。また、温度センサ14はオンオフ差を小さくして第1の加熱手段7および第2の加熱手段8の切れる温度と復帰する温度との差を少なくすることにより、調理性能をより向上させることができるものである。
【0048】
なお、本実施の形態における加熱装置では、電流遮断手段としてはサーモスタットのみを用いたが、これを自動復帰式のサーモスタットと温度ヒューズの組合せとし、サーモスタットの方が温度ヒューズより応答が速いものとすることにより、温度が低下した際には容易に通常運転に戻すことができるとともに、温度が低下しない場合には、サーモスタットが自動的に遮断と復帰を繰り返す間に温度ヒューズの温度が上昇し、温度ヒューズが溶断することで確実に電流を遮断することができ、より安全性を向上させることができるものである。
【0049】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における加熱装置の断面図を示したものである。図6は本発明の実施の形態2における加熱装置の要部拡大図である。
【0050】
図5、6において、実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0051】
図5、6において、第1の加熱手段7の加熱室3後部壁面に近い発熱部11に取り付けられている温度センサ14を囲むように箱体20が設けられている。箱体20はステンレス材よりなり、上下2部品で加熱室3後部壁面にビス止め固定されている。
【0052】
以上の構成において、動作については実施の形態1と同等であるため、省略する。
【0053】
効果について、図7を用いて説明する。
【0054】
図7は、実施の形態1と本実施の形態において、さんまを加熱調理した場合の、温度センサ14の温度変化を示したグラフである。T3は本実施の形態における温度センサ14の温度変化を示し、T4は実施の形態1における温度センサ14の温度変化を示したものである。
【0055】
図7に示すように、実施の形態1では加熱後10分くらい経過したところで、温度センサ14の検知温度が一時的に低下している。これは、さんま全体が高温に加熱され、さんまから水蒸気が大量に発生して気化熱により加熱室3内の温度が低下したり、焼き油が滴下したりした場合などに、一時的に温度センサ14の温度が低下するためである。一方、本実施の形態における加熱装置では、それらの現象にほとんど影響を受けていないのが分かる。
【0056】
よって、第2の加熱手段8からの輻射熱や、加熱室3内温度の変動による温度センサへの影響を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、温度センサは箱体で囲まれているため、調理物から流れ出る油や飛沫などによって汚れが付着することはなく、温度センサの検知精度が低下することはない。
【0058】
以上のように、第1の加熱手段7の温度を精度よく制御できるため調理性能に優れ、安全で使いやすい加熱装置とすることができる。
【0059】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3における加熱装置の要部拡大図を示したものである。
【0060】
図8において、実施の形態2と共通する部分については説明を省略する。
【0061】
図8において、箱体20の周囲に断熱材30が設けられている。断熱材30はシリカ・アルミナ繊維よりなるセラミックペーパーを、セラミックボンドにより箱体20に固定している。また、温度センサ14の表面は、黒体塗装されている。
【0062】
以上の構成において、動作については実施の形態1と同等であるため省略し、効果について以下に述べる。
【0063】
箱体20が断熱されることで、実施の形態2における加熱装置よりも加熱室3内温度の変動による温度センサ14への影響を最小限に抑えることができるとともに、放熱が低減されることで箱体20内部の温度上昇スピードが速くなり温度センサ14の温度検知スピードも上昇する。また、温度センサ14の表面が黒体塗装されていることで、箱体20内部の温度変動を素早く検知することで発熱部11の温度制御性が向上するものである。
【0064】
以上のように、加熱手段の温度をより精度よく制御できるため調理性能に優れ、安全で使いやすい加熱装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明における加熱装置は、発熱部の温度を直接検知することができるため、発熱部の温度制御を正確かつ安定して行うことができ、温度センサは調理物から離れた部位に設置されるため、調理物から流れ出る油や飛沫などによって汚れが付着し難く、温度センサの検知精度低下の可能性が低いため、発熱部の温度を精度よく制御することができる。よって、調理物を下方から加熱する加熱手段の発熱部の温度制御を正確かつ安定して行い、この温度を所定温度以下に制御することにより焼き油が滴下した際に発火の危険性がなく、また受け皿と加熱手段との距離も従来どおり保てるため、調理性能が損なわれることもなく、ロースタや電子レンジ、オーブンレンジ、オーブンあるいはグリラーなどの加熱調理機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱装置の要部拡大図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱装置と従来の加熱装置における温度センサの検知温度を比較したグラフ
【図4】焼き油が発火する可能性のある領域の境界線を示したグラフ
【図5】本発明の実施の形態2における加熱装置の断面図
【図6】本発明の実施の形態2における加熱装置の要部拡大図
【図7】本発明の実施の形態2における加熱装置と実施の形態1の加熱装置における、さんまを加熱調理した場合の、温度センサの温度変化を示したグラフ
【図8】本発明の実施の形態3における加熱装置の要部拡大図
【図9】従来の加熱装置を示す図
【符号の説明】
【0067】
1 加熱装置
2 調理物
3 加熱室
4 受け皿
7 第1の加熱手段
8 第2の加熱手段
11 発熱部
13 給電端部
14 温度センサ
16 電流遮断手段
17 制御手段
20 箱体
30 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を載置する載置台と、前記載置台を載せる受け皿と、前記載置台および前記受け皿とともに前記調理物を収納する加熱室と、前記加熱室には前記調理物を下方から加熱する第1の加熱手段を有し、前記第1の加熱手段は発熱部を有し、前記加熱室の後部壁面近傍における前記発熱部の温度を接触検知する温度センサと、制御手段とを有し、前記温度センサの温度が所定の値になるように前記制御手段を介して通電を制御する加熱装置。
【請求項2】
前記温度センサと前記発熱部の接触部分を略箱体で囲み、前記略箱体内部に温度検知空間を設けた請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱装置に電流遮断手段を設け、前記電流遮断手段は前記第1の加熱手段と前記制御手段との間に接続され、前記電流遮断手段が動作して前記加熱手段への通電を停止するときの前記加熱室内温度は、前記温度センサによって前記加熱手段への通電を制御するときの加熱室内温度より高い値に設定した請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1の加熱手段の発熱部における温度を、500℃以下に制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1の加熱手段の発熱部における温度を、400〜500℃に制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記電流遮断手段は、自動または手動復帰式のサーモスタットである請求項3に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記電流遮断手段は、自動復帰式のサーモスタットと温度ヒューズの組合せとし、前記サーモスタットの方が温度ヒューズより応答が速いものとした請求項3に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記箱体の略外周を断熱材で覆うようにした請求項2に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記温度センサはシース熱伝対とし、シース熱伝対の先端部分を黒体塗装した請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
上方から加熱する第2の加熱手段を備えた請求項1〜9のいずれか1項に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−104626(P2008−104626A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289814(P2006−289814)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】