説明

加熱調理器

【課題】被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】投光手段15、16は受光手段17、18の周囲に順次投光するように複数個設け、反射率換算手段19は、投光手段15、16の投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から赤外線センサ14の視野部の反射率を換算するようにした。これによって、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、順次投光する複数個の反射光強度で赤外線センサ14の視野部の反射率が換算されるため、被加熱物11底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物11底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱される鍋、フライパンなどの被加熱物温度を精度良く検出することができる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器では、トッププレート上の被加熱物の温度を迅速かつ正確に検出するために、被加熱物へ投光する発光手段と、反射光を受光する受光手段とを備え、受光手段の出力から換算された被加熱物の放射率、および赤外線センサの受光量から、被加熱物の温度を換算するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−225881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、特定方向への反射光強度のみを検知するものであるため、正確な温度検出ができないものであった。すなわち、被加熱物底面の材質、形状、寸法、表面状態、反りなど、反射光強度を決めるパラメータが多く、また、調理のたびに、あるいは調理中にも使用者により被加熱物の位置がずれるので、特定方向への反射光強度のみを検知する方式では、「反射光強度が大きい被加熱物」を「反射光強度が小さい被加熱物」と誤判定するケースがまれに生ずる。特に、被加熱物底面の中心部に、使用できる加熱源や、被加熱物材質などに関する情報を刻印してある場合は、刻印部のある中心部は、凹凸と埋め込まれた黒色の着色文字のため反射率が低い。ところが、刻印部の周辺部はSUS鏡面で反射率が高い。このため、特定方向への反射光強度のみを検知する方式では、正確に被加熱物底面の放射率を算出することが困難であるという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、投光手段は受光手段の周囲に順次投光するように複数個設け、反射率換算手段は、投光手段の投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにしたものである。
【0006】
これによって、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、順次投光する複数個の反射光強度で赤外線センサの視野部の反射率が換算されるため、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。
【0007】
また、本発明の加熱調理器は、受光手段は投光手段の周囲に複数個設け、反射率換算手段は、複数方向への拡散反射光強度分布から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにしたものである。
【0008】
これによって、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、複数方向への拡散反射光強度分布から赤外線センサの視野部の反射率が換算されるため、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器は、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、被加熱物を誘導加熱する加熱源と、被加熱物底面から放射される赤外線強度を検知する赤外線センサと、この赤外線センサの視野部の被加熱物底面に対して投光する投光手段と、被加熱物底面からの反射光を検知する受光手段と、この受光手段の出力から予め記憶している関係式により被加熱物底面の反射率を近似計算する反射率換算手段と、この換算された反射率および赤外線センサの出力から被加熱物底面の温度を算出する温度算出手段と、この温度算出手段の出力に応じて加熱源に供給する電力量を指示する制御手段とを備え、前記投光手段は受光手段の周囲に順次投光するように複数個設け、前記反射率換算手段は、投光手段の投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにした加熱調理器とすることにより、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、順次投光する複数個の反射光強度で赤外線センサの視野部の反射率が換算されるため、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、受光手段は、赤外線センサが位置する鏡筒内に設け、複数方向からの反射光を鏡筒により受光素子へ導くようにしたことにより、複数方向からの反射光を受光素子へ効率よく導き、経路での反射光の拡散損失が低減され、より精度良く反射率を測定することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、受光手段の受光素子は赤外線センサと同一の素子内に設けたことにより、コンパクトな構成となるとともに、反射光の検出感度が上がり、より精度良く反射率を測定することができる。
【0013】
第4の発明は、被加熱物を誘導加熱する加熱源と、被加熱物底面から放射される赤外線強度を検知する赤外線センサと、この赤外線センサの視野部の被加熱物底面に対して投光する投光手段と、被加熱物底面からの反射光を検知する受光手段と、この受光手段の出力から予め記憶している関係式により被加熱物底面の反射率を近似計算する反射率換算手段と、この換算された反射率および赤外線センサの出力から被加熱物底面の温度を算出する温度算出手段と、この温度算出手段の出力に応じて加熱源に供給する電力量を指示する制御手段とを備え、前記受光手段は投光手段の周囲に複数個設け、反射率換算手段は、複数方向への拡散反射光強度分布から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにした加熱調理器とすることにより、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、複数方向への拡散反射光強度分布から赤外線センサの視野部の反射率が換算されるため、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。
【0014】
第5の発明は、特に、第4の発明において、投光手段は、赤外線センサが位置する鏡筒内に設け、鏡筒により被加熱物底面に投光するようにしたことにより、鏡筒により均一な光を被加熱物底面に投光でき、より精度良く反射率を測定することができる。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、反射率換算手段による反射率の測定は加熱源が停止している期間のみ行うようにしたことにより、加熱源による影響を無くし、より精度良く反射率を測定することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における加熱調理器として誘導加熱調理器を示している。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、結晶化ガラスなどよりなるトッププレート10と、トッププレート10上に載置され調理物を加熱調理する鍋、フライパンなどの被加熱物11と、被加熱物11を加熱する加熱コイルなどの加熱源12と、加熱源12に高周波電流を供給し、被加熱物11を誘導加熱する加熱制御手段13とを備えている。また、トッププレート10下面に配し被加熱物11底面から放射される赤外線の強度を検知する赤外線センサ14と、同じくトッププレート10下面に配し赤外線センサ14の視野部の被加熱物11底面に対して参照用の近赤外線を投光する投光手段15、16と、赤外線センサ14を挟んで位置し投光された参照光の被加熱物11底面からの反射光を検知する受光手段17、18とを有する。さらに、受光手段17、18の出力から予め記憶しているデータ(テーブルデータあるいは関係式データなど)により被加熱物11底面の反射率を近似計算する反射率換算手段19と、この換算された反射率および赤外線センサ14の出力から被加熱物11底面の温度を算出する温度算出手段20と、この温度算出手段20の出力に応じて加熱制御手段13を介し加熱源12に供給する電力量を指示する制御手段21とを備えている。なお、トッププレート10と同一面にはタッチパネル方式の操作部22を設けている。
【0019】
そして、前記投光手段15、16は、受光手段17、18の周囲に複数個設け、順次投光するようにしており、前記反射率換算手段19は、投光手段15、16の投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から赤外線センサ14の視野部の反射率を換算するようにしている。
【0020】
なお、投光手段15、16は、調理器周囲の背景光と投光する参照光とを区別するため高周波数(キャリア周波数30kHz〜600kHz)で変調する変調手段23で駆動され、受光手段17、18の出力は検波手段24で検波されてから出力される。また、赤外線センサ14および受光手段17、18と、加熱源12との間には防磁シールド25を設け、電磁干渉を防いである。
【0021】
また、図2(a)は被加熱物11底面からの赤外線の自己放射エネルギ分布を、(b)はトッププレート10の透過特性を、(c)は赤外線センサ14の感度特性を、(d)は受光手段17、18の感度特性をそれぞれ示している。
【0022】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0023】
まず、操作部22内の電源キーおよび加熱キーを押し、アップ、ダウンキーで所定の電力を設定すると、制御手段21が加熱制御手段13を制御して加熱源12に所定の高周波電力を供給する。加熱源12に高周波電流が供給されると、加熱源12から誘導磁界が発せられ、トッププレート10上に載置された被加熱物11が誘導加熱される。この熱によって被加熱物11の温度が上昇し、被加熱物11内の調理物が調理される。赤外線センサ14は受光した赤外線のエネルギに比例した電圧を出力するもので、被加熱物11の温度が上昇すると被加熱物11底面からの赤外線放射強度も強くなり、赤外線センサ14が受光する赤外線エネルギ量が増え、赤外線センサ14の出力信号電圧が高くなり、温度算出手段20が算出する温度出力も大きくなる。制御手段21はこの温度出力を入力し、所定値(過昇防止温度、あるいは沸騰温度など)以下なら加熱制御手段13へ加熱を指示し続ける。電源キーまたは加熱キーで加熱停止が入力された場合と、温度算出手段20の温度出力が所定値を越えた場合は、加熱停止を指示する。
【0024】
次に、被加熱物11底面の放射率εを推定する動作を説明する。赤外線センサ14の視野部内でトッププレート10下面に配した投光手段15、16が、被加熱物11へ反射率測定用の波長0.6〜1.2μm程度の近赤外線を照射し、被加熱物11底面からの反射光を受光手段17、18で測定する。赤外線センサ14を挟んで位置することで受光手段17と受光手段18との間には所定の距離を設けるとともに、投光手段15と投光手段16で順次投光し、その前後に投光しない期間を設けることで、赤外線センサ14の視野部の立体的な反射の情報を測定することが可能となる。そして、この4つの受光出力から予め記憶させているデータにより反射率換算手段19が被加熱物11底面における赤外線センサ14の視野部の反射率Rを換算する。
【0025】
キルヒホフの法則によれば、物質の表面に到達する単位入射エネルギのうち、固有放射率εは0<ε<1の定数で、その物質の放射の吸収率に等しい。また、不透明な(透過率α=0)物体に関しては、
放射率ε(λ)+反射率R(λ)=1
の関係が成立する。従って、反射率Rが求められたことは、放射率εを求められたことと等価となる。温度算出手段20は、この換算された反射率Rを入力し、赤外線センサ14の出力から放射率補正を行った温度値を算出する。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、特定方向の反射光強度のみを検出するのではなく、順次投光する複数個の反射光強度で赤外線センサ14の視野部の反射率が換算されるため、被加熱物11底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できる。すなわち、被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することが可能となり、この反射率から赤外線センサ14の視野部の放射率を精度良く推定することができる。被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することで、被加熱物11底面の材質、形状、寸法、表面状態、反り、あるいは刻印部、ヘアライン加工、リング加工、打ち込み加工など、特殊な被加熱物の底面状態であってもその影響を無くすことができ、トッププレート10を介しても安定した測定を行うことができる。従って、被加熱物11底面の温度測定が非接触で可能となり、微妙な火加減ができる加熱調理器となる。
【0027】
また、本実施の形態においては、受光手段17、18として、家電機器などのリモコンに使用されるフォトダイオードを用いており、赤外線の自己放射を測定する波長λ=0.9〜2.6μmとは異なる波長λ’=λ−Δλ=0.7〜0.9μmにおいて測定しているが、被加熱物11の反射率R(λ)と、受光手段17、18の検知出力との間には良好な相関関係があり、受光手段17、18の出力から赤外線センサ14の波長帯域での反射率R(λ)への換算を行うことができる。なお、フォトダイオードを用いるのは、調理温度範囲以外の室温近辺で反射率を測定するという仕様上の理由、およびリモコン用に市販されているフォトダイオード、およびフォトトランジスタを用いる方が安価であり、0.7〜0.9μmの波長帯域では、被加熱物11底面やトッププレート10から放射される大きなエネルギ量のより長波長の赤外線には反応しないので、反射光のみを精度良く検知できるという技術的な理由による(図2(d))。
【0028】
なお、フォトダイオードをCCDとすることで、より立体的な情報を検出することができるのは当然であるが、コストが高くなるために、加熱調理器においては、実用面で課題が残る。
【0029】
また、本実施の形態において、受光手段17、18の受光素子は、赤外線センサ14の検知素子と同一の素子内に設けることにより、コンパクトな構成となるとともに、反射光の検出感度が上がり、より精度良く反射率を測定することができる。
【0030】
また、本実施の形態において、トッププレート10の下面に反射防止コーティングを行い、下面での反射、拡散光を減少させ、受光手段17、18の受光量を増加させることもできる。
【0031】
また、本実施の形態では、投光手段15、16を高周波数で変調されることができるフォトダイオードにしたが、高周波で変調できない、例えばハロゲンランプと、機械的シャッターまたは電気光学シャッターとし、所定のデューティでシャッターを開閉して、環境放射強度を穏やかに切り換えることにより、赤外線センサ14で検出できる波長帯域の照射光を投光することもでき、この増分を検出することで、赤外線センサ14のみで放射率を補正することも可能である。
【0032】
(実施の形態2)
図3、図4は、本発明の実施の形態2における加熱調理器を示している。実施の形態1と基本構成は同一であり、同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、トッププレート10下面の防磁シールド25内に配し被加熱物11へ反射率測定用の近赤外線を投光する投光手段15a、15b、16a、16bと、鏡筒26内で被加熱物11底面からの反射光強度を検出する受光手段17、18から加熱調理器の反射率の測定系を構成している。防磁シールド25および鏡筒26は、アルミダイキャスト製のケース27に一体で設けてある。鏡筒26は樹脂よりなり、その内周面は鏡面研磨を行ったのち、保護コーディング(アルミの光沢めっきなど)を施してある。
【0034】
赤外線センサ14は、鏡筒26内に位置しており、この赤外線センサ14を挟むようにして受光手段17、18も鏡筒26内に設け、複数方向からの反射光を鏡筒26により受光手段17、18へ導くようにしている。また、投光手段15a、15b、16a、16bは、受光手段17、18の周囲に設け、順次投光するようにしている。そして、実施の形態1と同様、投光手段15a、15b、16a、16bの投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から反射率換算手段19が赤外線センサ14の視野部の反射率を換算するようになっている。
【0035】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
トッププレート10上に被加熱物11が載置され、電源キーおよび加熱キーが押されて被加熱物11の載置を検出すると、投光手段15a、15b、16a、16bが順次、シーケンシャルに近赤外線を投光する(図4(a)の31〜35)。被加熱物11底面で反射した拡散反射光(図4(a)の36)は受光手段17、18で順次受光される。そして、反射率換算手段19が受光手段17、18の出力群から被加熱物11底面の反射率を換算する。この換算された反射率および赤外線センサ14の出力を入力して、温度算出手段20は被加熱物11底面の温度を算出する。
【0037】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線センサ14の視野部の被加熱物11底面に対して複数の投光手段15a〜16bで異なる箇所に順次投光し、その複数点からの拡散反射光を受光手段17、18で順次検出し、この複数個の反射光強度から反射率換算手段19が赤外線センサ14の視野部の反射率を換算する。これにより、被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することが可能となり、この反射率から赤外線センサ14の視野部の放射率を精度良く推定することができる。被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することで、被加熱物11底面の形状や表面状態、刻印部で図4(b)に示すように受光出力が変動する影響を無くすことができ、トッププレート10を介しても安定した測定を行うことができる。従って、被加熱物11底面の温度測定が非接触で可能となり、微妙な火加減ができる加熱調理器となる。
【0038】
また、本実施の形態では、受光手段17、18は鏡筒26の上端面近くに配し、鏡筒26で合成される前の拡散反射光を検出して立体視を行っているが、受光手段17、18の受光素子を1素子にして、鏡筒26下端面近くに配することで、受光素子単体時の視野よりも広いエリアの拡散反射光を検出して、立体視に近い測定を行うことが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態では、投光手段15a、15b、16a、16bを高周波数で変調しており、外乱光や加熱源12などの影響を低減するとともに、防磁シールド25を施してあるが、加熱源12が停止している期間のみ反射率を測定することにより、加熱源12による影響を無くし、より精度良く反射率を測定することができる。
【0040】
また、投光手段15a、15b、16a、16bの個数をさらに増やし、リング状の光源とし、受光手段17、18周辺を囲んで配置し、順次投光することで、より立体視に近い測定を行うことが可能となる。
【0041】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における加熱調理器を示している。実施の形態1、2と基本構成は同一であり、同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、トッププレート10下面の鏡筒26内に配し被加熱物11へ反射率測定用の近赤外線を投光する投光手段15、16と、鏡筒26周辺、且つ、防磁シールド25内で被加熱物11底面からの反射光強度を検出する受光手段17a、17b、18a、18bとから加熱調理器の反射率の測定系を構成している。防磁シールド25および鏡筒26は、実施の形態2と同様、アルミダイキャスト製のケース27に一体で設けてある。鏡筒26の内周面は鏡面研磨を行ったのち、保護コーディングを施してある。
【0043】
赤外線センサ14は、鏡筒26内に位置しており、この赤外線センサ14を挟むようにして投光手段15、16も鏡筒26内に設け、鏡筒26により被加熱物11底面に投光するようにしている。また、受光手段17a、17b、18a、18bは、投光手段15、16の周囲に設け、複数方向への拡散反射光強度分布から反射率換算手段19が赤外線センサ14の視野部の反射率を換算するようになっている。
【0044】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0045】
トッププレート10上に被加熱物11が載置され、電源キーおよび加熱キーが押されて被加熱物11の載置を検出すると、投光手段15、16が順次、近赤外線を投光する。被加熱物11底面で反射した複数方向への拡散反射光は受光手段17a、17b、18a、18bで受光される。そして、反射率換算手段19がこの拡散反射光強度分布から被加熱物11底面の反射率を換算する。この換算された反射率および赤外線センサ14の出力を入力して、温度算出手段20は被加熱物11底面の温度を算出する。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線センサ14の視野部の被加熱物11底面に対して、投光手段15、16が鏡筒26を用いて均一な参照光を投光し、その複数方向の拡散反射光を受光手段17a、17b、18a、18bで検出し、この拡散反射光強度分布から被加熱物11底面の反射率を換算する。これにより、被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することが可能となり、この反射率から赤外線センサ14の視野部の放射率を精度良く推定することができる。被加熱物11底面の反射率を立体的に検知することで、被加熱物11底面の形状や表面状態、刻印部などで受光出力が変動する影響を無くすことができ、トッププレート10を介しても安定した測定を行うことができる。従って、被加熱物11底面の温度測定が非接触で可能となり、微妙な火加減ができる加熱調理器となる。
【0047】
上記した各実施の形態1〜3における構成は、必要に応じて適宜組み合わせて構成することができるものであり、実施の形態そのものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、被加熱物底面の状態如何にかかわらず、精度良く被加熱物底面温度を検出し、良好な調理加熱制御が実現できるので、誘導加熱調理器はもとより、ラジエントヒータ式加熱調理器などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器のブロック図
【図2】(a)同加熱調理器における被加熱物底面からの自己放射エネルギ分布図(b)トッププレートの透過特性図(c)赤外線センサの感度特性図(d)受光手段の感度特性図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器の赤外線センサ、投光手段、受光手段部分の斜視図
【図4】(a)同加熱調理器における被加熱物底面における近赤外線光の拡散反射状態のイメージを示す断面図(b)被加熱物底面の表面状態による受光手段の検知出力変動のイメージを示す図
【図5】本発明の実施の形態3における加熱調理器の赤外線センサ、投光手段、受光手段部分の斜視図
【符号の説明】
【0050】
10 トッププレート
11 被加熱物
12 加熱源
13 加熱制御手段
14 赤外線センサ
15、16、15a、15b、16a、16b 投光手段
17、18、17a、17b、18a、18b 受光手段
19 反射率換算手段
20 温度算出手段
21 制御手段
26 鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱源と、被加熱物底面から放射される赤外線強度を検知する赤外線センサと、この赤外線センサの視野部の被加熱物底面に対して投光する投光手段と、被加熱物底面からの反射光を検知する受光手段と、この受光手段の出力から予め記憶しているデータにより被加熱物底面の反射率を近似計算する反射率換算手段と、この換算された反射率および赤外線センサの出力から被加熱物底面の温度を算出する温度算出手段と、この温度算出手段の出力に応じて加熱源に供給する電力量を指示する制御手段とを備え、前記投光手段は受光手段の周囲に順次投光するように複数個設け、前記反射率換算手段は、投光手段の投光タイミングに同期して入力した複数個の反射光強度から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにした加熱調理器。
【請求項2】
受光手段は、赤外線センサが位置する鏡筒内に設け、複数方向からの反射光を鏡筒により受光素子へ導くようにした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
受光手段の受光素子は赤外線センサと同一の素子内に設けた請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
被加熱物を加熱する加熱源と、被加熱物底面から放射される赤外線強度を検知する赤外線センサと、この赤外線センサの視野部の被加熱物底面に対して投光する投光手段と、被加熱物底面からの反射光を検知する受光手段と、この受光手段の出力から予め記憶しているデータにより被加熱物底面の反射率を近似計算する反射率換算手段と、この換算された反射率および赤外線センサの出力から被加熱物底面の温度を算出する温度算出手段と、この温度算出手段の出力に応じて加熱源に供給する電力量を指示する制御手段とを備え、前記受光手段は投光手段の周囲に複数個設け、反射率換算手段は、複数方向への拡散反射光強度分布から赤外線センサの視野部の反射率を換算するようにした加熱調理器。
【請求項5】
投光手段は、赤外線センサが位置する鏡筒内に設け、鏡筒により被加熱物底面に投光するようにした請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
反射率換算手段による反射率の測定は加熱源が停止している期間のみ行うようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−221950(P2006−221950A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34016(P2005−34016)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】