説明

加硫ゴム積層体の製造方法および加硫ゴム積層体

【課題】界面接着性を向上した加硫ゴム積層体の製造方法および加硫ゴム積層体を提供すること。
【解決手段】未加硫ゴム組成物からなる少なくとも2層の未加硫ゴム層を加硫接着する加硫ゴム積層体の製造方法であって、少なくとも1層の前記未加硫ゴム層が、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、非ジエン系ゴムを50重量部以上含有する未加硫ゴム組成物からなり、未加硫ゴム層のうち、少なくとも一方の貼り合わせ面に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布する塗布工程と、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面が界面側となるように、2層の未加硫ゴム層を貼り合わせた後、加硫接着する加硫接着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面接着性を向上した加硫ゴム積層体の製造方法および加硫ゴム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、空気ばね、あるいはホースなどのゴム製品では、様々なゴム部材からなる加硫ゴム積層体が使用されることが多く、その成型工程においては未加硫ゴム組成物からなるゴム部材を貼り合わせて未加硫ゴム積層体とする工程と、該未加硫ゴム積層体を加硫接着する工程とが必ず存在する。ここで、未加硫ゴム組成物からなるゴム部材が、同種のゴム種同士(例えば、天然ゴム系ゴム部材と天然ゴム系ゴム部材との組み合わせ)からなる未加硫ゴム積層体である場合は、これらを張り合わせて加硫接着しても接着強度が高く、剥がれなどの問題が生じない。
【0003】
ところで、ゴム製品の様々な機能を向上するため、多くのゴム製品では、同種のゴム種同士からなる加硫ゴム積層体だけでなく、異種のゴム種同士からなる加硫ゴム積層体が使用される場合がある。例えば、タイヤでは、インナーライナー層にブチルゴム層、その外周側に天然ゴム層あるいはスチレン−ブタジエン層を貼り合わせて加硫接着した加硫ゴム積層体が使用されている。あるいは、防振ゴムである空気ばね製品では、カバーゴム層にクロロプレンゴム、その内面側に天然ゴム層を張り合わせて加硫接着した加硫ゴム積層体が使用されている。これらの加硫ゴム積層体では、ブチルゴムやクロロプレンゴムなどの非ジエン系ゴムと、天然ゴムなどのジエン系ゴムとを加硫接着しても、その接着性が高くないため、加硫ゴム積層体中で界面剥離が生じるなどの問題があった。
【0004】
下記特許文献1では、ゴムの接着性向上を目的として、ステアリン酸カルシウムを配合したゴム組成物が記載されている。また、下記特許文献2では、ステアリン酸コバルトまたはナフテン酸コバルトを含有するゴム組成物が記載されている。これらの文献に記載のゴム組成物は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルトまたはナフテン酸コバルトなどの脂肪酸金属塩をゴム組成物中に配合することで、加硫接着時の接着強度を高めることを目的とするが、ゴム組成物中にこれらの脂肪酸金属塩を予め配合すると、ゴムのやけ(スコーチ)、引張物性、熱老化性、あるいは耐疲労性の悪化に繋がる場合がある。
【0005】
また、下記特許文献3では、加硫ゴム積層体の界面での接着性向上を目的として、加硫ゴム積層体の界面に、マレイミド誘導体および/またはポリ−p−ジニトロソベンゼンを配合したゴム組成物からなる接着剤層を介在させる点が記載されている。しかしながら、新たに接着剤層を介在させることは、ゴム製品の重量増あるいはコストアップに繋がるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−7437号公報
【特許文献2】特開2009−51898号公報
【特許文献3】特開2008−24228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、界面接着性を向上した加硫ゴム積層体の製造方法および加硫ゴム積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴム組成物中に脂肪酸金属塩などの接着改良剤を配合すると、各種ゴム物性が悪化する一方、脂肪酸金属塩の中でも特定のものを未加硫ゴム積層体の層間(界面)に直接塗布し、これらを加硫接着させた場合に、その接着性が著しく向上することを見出した。本発明は、上記の検討の結果なされたものであり、下記の如き構成により上述の目的を達成するものである。
【0009】
すなわち、本発明に係る加硫ゴム積層体の製造方法は、未加硫ゴム組成物からなる少なくとも2層の未加硫ゴム層を加硫接着する加硫ゴム積層体の製造方法であって、少なくとも1層の前記未加硫ゴム層が、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、非ジエン系ゴムを50重量部以上含有する未加硫ゴム組成物からなり、前記未加硫ゴム層のうち、少なくとも一方の貼り合わせ面に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布する塗布工程と、前記脂肪酸亜鉛または前記脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面が界面側となるように、2層の前記未加硫ゴム層を貼り合わせた後、加硫接着する加硫接着工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る製造方法によれば、ブチルゴムやクロロプレンゴムなどの非ジエン系ゴムを主成分とする未加硫ゴム組成物からなるゴム層と、天然ゴムなどのジエン系ゴムを主成分とする未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム層とを加硫接着した場合、あるいはブチルゴムやクロロプレンゴムなどの非ジエン系ゴムを主成分とする未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム層同士を加硫接着した場合であっても、界面接着性に優れた加硫ゴム積層体を製造することができる。本発明に係る製造方法により、界面接着性に優れた加硫ゴム積層体を製造できる原因については明らかではないが、以下の理由の如く推定される。
【0011】
脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面では、加硫接着時に脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅が溶融する。これにより、亜鉛と脂肪酸、あるいは銅と脂肪酸という、加硫促進効果の高い組み合わせの成分濃度が高まり、接着界面にて硫黄架橋が促進される。その結果、加硫ゴム積層体の界面にて接着強度が高まる。
【0012】
なお、本発明者は、未加硫ゴム組成物からなる2層の未加硫ゴム層のうち、少なくとも一方の貼り合わせ面に、脂肪酸であるステアリン酸のみ、あるいは酸化亜鉛のみを塗布し、貼り合わせ面が界面側となるように貼り合わせた後、加硫接着することにより、加硫ゴム積層体の接着状態がどのように変化するかを観察した。しかしながら、ステアリン酸のみでは、加硫接着時に溶融するものの、硫黄架橋の促進効果が殆ど見られず、界面接着性の向上に殆ど寄与しなかった。また、酸化亜鉛は無機化合物であるため、加硫接着時に溶融(分散)せず、硫黄架橋の促進効果が殆ど見られないため、やはり界面接着性の向上に殆ど寄与しなかった。したがって、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅が、本発明に係る加硫ゴム積層体の製造方法において最も効果があることがわかる。
【0013】
上記加硫ゴム積層体の製造方法において、前記脂肪酸亜鉛が、ステアリン酸亜鉛であり、前記脂肪酸銅がステアリン酸銅であることが好ましい。ステアリン酸亜鉛の融点は約140℃であり、ステアリン酸銅の融点は約115〜120℃であることから、いずれも加硫接着時に接着界面にて効率良く溶融する。さらに、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸銅は、溶融時に加硫促進効果が高く、未加硫ゴム層の接着界面にて、硫黄架橋がより促進される。その結果、加硫ゴム積層体の界面にて接着強度がより高まる。
【0014】
上記加硫ゴム積層体の製造方法において、前記未加硫ゴム組成物が、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、加硫剤を0.5〜5重量部、加硫促進剤を0.5〜5重量部含有することが好ましい。かかる構成によれば、未加硫ゴム層の接着界面にて、硫黄架橋がさらに促進される。その結果、加硫ゴム積層体の界面にて接着強度がさらに高まる。
【0015】
上記加硫ゴム積層体の製造方法では、前記加硫接着工程において、加硫温度が140〜170℃であることが好ましい。かかる構成によれば、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅が加硫接着時により確実に溶融するため、未加硫ゴム層の接着界面にて、硫黄架橋がより促進される。その結果、加硫ゴム積層体の界面にて接着強度がより高まる。
【0016】
本発明に係る加硫ゴム積層体は、前記いずれかの製造方法により製造されたものであることを特徴とする。上述のとおり、本発明に係る製造方法により製造された加硫ゴム積層体は、界面接着性が特に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る加硫ゴム積層体の製造方法は、未加硫ゴム組成物からなる2層の未加硫ゴム層のうち、少なくとも一方の貼り合わせ面に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布する塗布工程と、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面が界面側となるように、2層の未加硫ゴム層を貼り合わせた後、加硫接着する加硫接着工程と、を有する。本発明において、2層の未加硫ゴム層は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、非ジエン系ゴムを50重量部以上含有する未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム層(以下、「非ジエン系未加硫ゴム層」とも言う)と、ジエン系ゴムを50重量部以上含有する未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム層(以下、「ジエン系未加硫ゴム層」とも言う)と、の組み合わせでも良く、あるいは非ジエン系未加硫ゴム層同士の組み合わせでも良い。
【0018】
本発明において、「非ジエン系ゴム」とは、主鎖に架橋部位としての二重結合を有しないゴム、二重結合を有するとしても、その割合が少ないもの、または主鎖に炭素および水素以外の元素を有するゴムであって、かつ硫黄架橋が可能なゴムを意味する。非ジエン系ゴムを具体的に例示すると、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。一方、本発明において、「ジエン系ゴム」とは、主鎖に架橋部位としての二重結合を有するゴムを意味する。ジエン系ゴムを具体的に例示すると、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどが挙げられる。ゴム成分の全量を100重量部としたとき、非ジエン系未加硫ゴム層中、非ジエン系ゴムを70重量部以上含有することが好ましい。同様に、ジエン系未加硫ゴム層中、ジエン系ゴムを70重量部以上含有することが好ましい。
【0019】
本発明において、非ジエン系未加硫ゴム層を構成する非ジエン系未加硫ゴム組成物(あるいは、ジエン系未加硫ゴム層を構成するジエン系未加硫ゴム組成物)は、加硫剤および加硫促進剤を含有する。
【0020】
加硫剤としては、通常のゴム用硫黄が例示され、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後の耐疲労性および耐熱性、あるいは他のゴム物性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する加硫剤の配合量は、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部であることがより好ましい。
【0021】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する加硫促進剤の配合量は、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、上述したゴム成分、加硫剤および加硫促進剤に加えて、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0023】
本発明で用いられるカーボンブラックとしては特に限定されるものではないが、加硫後のゴムの硬度、補強性などを考慮した場合、HAF、FEF、GPF、SRFおよびFTが好ましい。また、シリカとしては通常のゴム工業で使用されるものを適宜使用可能である。さらに、本発明においては、カーボンブラックおよびシリカ以外の無機白色充填剤なども適量配合しても良い。
【0024】
上述した充填剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して5〜120重量部であることが好ましく、20〜80重量部であることがより好ましく、30〜70重量部であることがさらに好ましい。
【0025】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。ゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する老化防止剤の配合量は、2〜5重量部が好ましい。
【0026】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、上述したゴム成分、加硫剤および加硫促進剤に加えて、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0027】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、ゴム成分およびカーボンブラックのみを予め混練マスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでも良い。
【0028】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、通常のゴム工業で使用されるカレンダーなどの装置により、所定の厚みを有する未加硫ゴム層に成型する。つぎに、本発明に係る加硫ゴム積層体の製造方法について、以下に具体的に説明する。
【0029】
(1)塗布工程
2層の未加硫ゴム層のうち、少なくとも1方の貼り合わせ面に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布する。2層の未加硫ゴム層は、非ジエン系未加硫ゴム層とジエン系未加硫ゴム層との組み合わせでも良く、非ジエン系未加硫ゴム層同士の組み合わせでも良い。なお、本発明に係る加硫ゴム積層体の製造方法は、2層の加硫ゴム積層体のみならず、3層以上の加硫ゴム積層体を製造する場合にも適用可能である。
【0030】
脂肪酸亜鉛としては、特に高級脂肪酸の亜鉛塩、例えばステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、リノール酸亜鉛、リノレン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などが挙げられ、これらの中でもステアリン酸亜鉛が好ましい。また、脂肪酸銅としても、特に高級脂肪酸の銅塩、例えばステアリン酸銅、オレイン酸銅、ナフテン酸銅、リノール酸銅、リノレン酸銅、ネオデカン酸銅、オクチル酸銅などが挙げられ、これらの中でもステアリン酸銅が好ましい。
【0031】
脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅の塗布方法としては、2層の未加硫ゴム層のうち、少なくとも1方の貼り合わせ面に、粉末状態の脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を薄く散布する方法、あるいは粉末状態の脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を、水中あるいは有機溶剤中に分散させ、これを該貼り合わせ面に塗布する方法が挙げられる。いずれの方法においても、加硫ゴム積層体の界面接着性と貼り合わせによる成型性とのバランスを考慮した場合、該貼り合わせ面上に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を0.5〜5g/mの塗布量で塗布することが好ましく、0.8〜2g/mの塗布量で塗布することがより好ましい。
【0032】
(2)加硫接着工程
塗布工程の後、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面が界面側となるように、2層の未加硫ゴム層を貼り合わせた後、加硫接着する。加硫接着の際の加硫温度としては、140〜170℃であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る加硫ゴム積層体は、非ジエン系ゴム層を少なくとも1層含むにもかかわらず、界面接着性に特に優れる。このため、特に空気ばね、ホース、タイヤ用ゴムとして有用である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0035】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100重量部に対して、表1の配合処方に従い、非ジエン系未加硫ゴム層を構成する未加硫ゴム組成物(配合(A))およびジエン系未加硫ゴム層を構成する未加硫ゴム組成物(配合(B))を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す。
【0036】
a)(A)ゴム成分 クロロプレンゴム 「デンカクロロプレンDCR−36」、(電気化学工業社製)
(B)天然ゴム RSS#3
b)硫黄 (「5%オイル処理硫黄」、細井化学工業社製)
c)加硫促進剤
(A)ETU(エチレンチオウレア)(「アクセル22−S」、川口化学工業社製)
(B)NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) (「ノクセラーNS−P」、大内新興化学社製)
(C)TS(テトラメチルチウラムモノスルフィド) (「ノクセラーTS」、大内新興化学社製)
d)カーボンブラック HAF(「シースト3」、東海カーボン社製)
e)老化防止剤 N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)
f)酸化亜鉛 (「亜鉛華3号」、三井金属鉱業社製)
g)ステアリン酸 (「工業用ステアリン酸」、花王社製)
h)アロマオイル (「プロセスX−140」、ジャパンエナジー社製)
【0037】
【表1】

【0038】
配合(A)からなる未加硫ゴム層として、厚み2.5mmのシート(A)を作成した。同様に配合(B)からなる未加硫ゴム層として、厚み2.5mmのシート(B)を作成した。
【0039】
実施例1
2枚のシート(A)のうち、一方の貼り合わせ面に、粉末状のステアリン酸亜鉛(「ステアリン酸亜鉛」、日本油脂社製)を直接塗布し(塗布量1g/m)、これらを貼り合わせた後、加硫温度150℃、加硫時間30分にて加硫接着することにより、加硫ゴム積層体を製造した。島津製作所社製オートグラフ万能試験機を使用し、剥離速度50mm/分にて剥離接着試験を行い、かかる加硫ゴム積層体の界面剥離強度(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
実施例2
2枚のシート(A)に代えて、シート(A)およびシート(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法により加硫ゴム積層体を製造した。界面剥離強度(N/25mm)の評価結果を表2に示す。
【0041】
比較例1
ステアリン酸亜鉛を塗布しないこと以外は、実施例2と同様の手法により加硫ゴム積層体を製造した。界面剥離強度(N/25mm)の評価結果を表2に示す。
【0042】
比較例2
ステアリン酸亜鉛を塗布しないこと以外は、実施例1と同様の手法により加硫ゴム積層体を製造した。界面剥離強度(N/25mm)の評価結果を表2に示す。
【0043】
比較例3
ステアリン酸亜鉛に代えて酸化亜鉛(「亜鉛華3号」、三井金属鉱業社製)を塗布したこと以外は、実施例2と同様の手法により加硫ゴム積層体を製造した。界面剥離強度(N/25mm)の評価結果を表2に示す。
【0044】
比較例4
ステアリン酸亜鉛に代えてステアリン酸(「工業用ステアリン酸」、花王社製)を塗布したこと以外は、実施例2と同様の手法により加硫ゴム積層体を製造した。界面剥離強度(N/25mm)の評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2の結果から、非ジエン系未加硫ゴム層同士を加硫接着する場合、貼り合わせ面にステアリン酸亜鉛を塗布した例(実施例1)では、塗布しない例(比較例2)に比べて、界面剥離強度が大幅に上昇することがわかる。また、非ジエン系未加硫ゴム層とジエン系未加硫ゴム層とを加硫接着する場合、貼り合わせ面にステアリン酸亜鉛を塗布した例(実施例2)では、塗布しない例(比較例1)に比べて、やはり界面剥離強度が大幅に上昇することがわかる。一方、非ジエン系未加硫ゴム層とジエン系未加硫ゴム層とを加硫接着する場合、貼り合わせ面に酸化亜鉛を塗布した例(比較例3)、ステアリン酸を塗布した例(比較例4)、のいずれも、塗布しない例(比較例1)に比べて、界面剥離強度が上昇しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴム組成物からなる少なくとも2層の未加硫ゴム層を加硫接着する加硫ゴム積層体の製造方法であって、
少なくとも1層の前記未加硫ゴム層が、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、非ジエン系ゴムを50重量部以上含有する未加硫ゴム組成物からなり、
前記未加硫ゴム層のうち、少なくとも一方の貼り合わせ面に、脂肪酸亜鉛または脂肪酸銅を塗布する塗布工程と、
前記脂肪酸亜鉛または前記脂肪酸銅を塗布した貼り合わせ面が界面側となるように、2層の前記未加硫ゴム層を貼り合わせた後、加硫接着する加硫接着工程とを有することを特徴とする加硫ゴム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記脂肪酸亜鉛が、ステアリン酸亜鉛であり、前記脂肪酸銅がステアリン酸銅である請求項1に記載の加硫ゴム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記未加硫ゴム組成物が、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、加硫剤を0.5〜5重量部、加硫促進剤を0.5〜5重量部含有する請求項1または2に記載の加硫ゴム積層体の製造方法。
【請求項4】
前記加硫接着工程において、加硫温度が140〜170℃である請求項1〜3のいずれかに記載の加硫ゴム積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの製造方法により製造された加硫ゴム積層体。

【公開番号】特開2012−121302(P2012−121302A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276078(P2010−276078)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】