説明

加硫ベルトスリーブの製造方法

【課題】周長に関わらず、ゴム層間の接着性が高い加硫ベルトスリーブを製造することのできる加硫ベルトスリーブの製造方法を提供する。
【解決手段】
第1内型に、背面ゴム層3形成用の未加硫ゴムシートと、心線4と、圧縮ゴム層2形成用の未加硫ゴムシートとを順に巻き付けてベルトスリーブ10を作製し、このベルトスリーブ10を第1内型から脱型する(第1工程)。次に、ベルトスリーブ10を、その内周面にリブ溝50aが形成された外型50の内側に挿入した後、このベルトスリーブ10の内側に、その外径が拡縮可能な第2内型51を設置する(第2工程)。次に、第2内型51の外径を拡張させて、ベルトスリーブ10を加熱された外型50に押し付けて、ベルトスリーブ10を加熱加圧して加硫するとともに、ベルトスリーブ10の外周面にリブ溝50aに対応するリブ部を形成して(第3工程)、加硫ベルトスリーブを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心線を埋設した背面ゴム層と、突部が形成された圧縮ゴム層とを含む加硫ベルトスリーブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、Vリブドベルト等のベルトを製造する際、加硫ベルトスリーブが用いられる。この加硫ベルトスリーブを製造する方法として、外周面にジャケットが装着された内型と、内周面に型付溝が形成された外型とを用いて、2つの型の間で未加硫ゴムの加硫と、突部形成(型付け)とを行う方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている製造方法では、内型に未加硫ゴムシートや心線等を巻き付けて未加硫ベルトスリーブを形成した後、内型に巻き付けられた状態のベルトスリーブを、外型の内側に挿入する。次に、ジャケット内に高圧蒸気等を送入し、ジャケットを拡径方向に膨張させることにより、未加硫ベルトスリーブを径方向に拡張させて、ベルトスリーブの外周面を加熱された外型に押し付けて加硫するとともに、ベルトスリーブの外周面に型付けを行う。
【0004】
また、特許文献2に開示されている製造方法では、内型に未加硫ゴムシートのみを巻き付けて第1スリーブを形成した後、内型に巻き付けられた状態の第1スリーブを、外型の内側に挿入し、ジャケット内に高圧蒸気等を送入して、第1スリーブを外型に押し付けて型付けを行う(予備成形工程)。次に、第1スリーブから内型を抜き取って、この内型に新たな別の未加硫ゴムシートや心線等を巻き付けて、第2スリーブを形成する。そして、内型に巻き付けられた状態の第2スリーブを、外型の内周面に張り付いた状態の第1スリーブの内側に挿入した後、ジャケット内に高圧蒸気等を送入して、第2スリーブを径方向に拡張させて、第1スリーブと第2スリーブとを密着させて一体的に加硫する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−340934号公報
【特許文献2】特開2006‐7450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の製造方法の場合、外型の隣接する型付溝の間には凸部が形成されているため、内型に巻き付けられた状態のベルトスリーブを外型の内型に挿入するには、拡張前のベルトスリーブの外径を、外型の凸部の内径よりも小さくする必要がある。
しかしながら、心線の伸張率には限度があるため、伸張前の心線の巻き付け径はあまり小さくすることができない。即ち、拡張前のベルトスリーブの径は一定以上に小さくすることができない。また、ベルトスリーブの径方向に関する伸張量は、周長に比例するので、特に、周長の短い加硫ベルトスリーブを製造する場合、心線の伸張率を考慮すると、拡張前のベルトスリーブの外径が、外型の凸部の内径よりも大きくなる場合がある。このような場合、内型に巻き付けられた状態のベルトスリーブを外型の内側に挿入しようとすると、ベルトスリーブの外周面と外型の凸部とが接触するため、挿入できない。
【0007】
また、特許文献2の製造方法の場合、第1スリーブは、上述した特許文献1のベルトスリーブとは異なり、ゴム層のみで構成されるため、拡張前の第1スリーブの径は、かなり小さくすることができる。そのため、内型に巻き付けられた状態の第1スリーブを外型の内側に挿入する際、第1スリーブの外周面と外型の凸部とが接触するという問題は生じない。また、内型に巻き付けられた状態の第2スリーブを、外型の内周面に張り付いた第1スリーブの内側に挿入する際、第1スリーブの内周面は平坦であるため、第2スリーブの外周面と第1スリーブの内周面が接触することもない。
しかしながら、特許文献2の方法の場合、既にある程度加熱加圧されている第1スリーブと、第2スリーブとを加硫時に一体化しているため、第1スリーブと第2スリーブとの接着性が低くなる。
【0008】
そこで、本発明は、周長に関わらず、ゴム層間の接着性が高い加硫ベルトスリーブを製造することのできる加硫ベルトスリーブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
請求項1の加硫ベルトスリーブの製造方法は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した背面ゴム層と、この背面ゴム層に隣接し、突部が形成された圧縮ゴム層とを含むベルトを形成するための加硫ベルトスリーブを製造する方法であって、第1内型に、前記背面ゴム層形成用の未加硫ゴムシートと、前記心線と、前記圧縮ゴム層形成用の未加硫ゴムシートとを順に巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製してから、前記ベルトスリーブを前記第1内型から脱型する第1工程と、前記ベルトスリーブを、その内周面に型付溝が形成された外型の内側に挿入した後、前記ベルトスリーブの内側に、その外径が拡縮可能な第2内型を設置する第2工程と、前記第2内型の外径を拡張させて、前記外型と前記第2内型との間で前記ベルトスリーブを加圧しながら、前記ベルトスリーブを加熱して、前記ベルトスリーブを加硫するとともに、前記ベルトスリーブの外周面に前記型付溝に対応する前記突部を形成する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、外型の内周面には型付溝が形成されているため、隣接する型付溝の間には凸部が形成されることとなる。周長の比較的短いベルトスリーブを製造する場合、拡張前のベルトスリーブの外径が、外型の凸部の内径よりも大きくなる場合がある。このような場合であっても、ベルトスリーブを外型の内側に挿入する際、ベルトスリーブの内側には第1内型がないため、ベルトスリーブを変形させることによって、外型の内側に挿入できる。
また、予め加熱加圧されて型付けされたスリーブと、別のスリーブとを一体化させて加硫ベルトスリーブを製造する場合、スリーブ間(ゴム層間)の接着性が低くなるが、本発明では、最初から一体化されたベルトスリーブを作製して加硫するため、ゴム層間の接着性が高い。
【0011】
請求項2の加硫ベルトスリーブの製造方法は、請求項1において、前記第1工程において、前記第1内型として、その外径が拡縮可能であるものを使用し、前記第1内型の外径を縮小させて、前記ベルトスリーブを第1内型から脱型することを特徴とする。
【0012】
この構成によると、ベルトスリーブが巻き付けられた状態の第1内型の外径を縮小させることにより、ベルトスリーブを第1内型から容易に脱型することができる。さらに、未加硫ゴムシートや心線を巻き付ける前に、第1内型の外径を調整することにより、所望の周方向長さのベルトスリーブを作製することができる。
【0013】
請求項3の加硫ベルトスリーブの製造方法は、請求項1又は2において、前記第1工程は、未加硫の前記ゴム層と前記心線間の接着性を高めるために、前記第1内型に巻き付けられた状態の前記ベルトスリーブを予備的に加熱加圧する予備加熱加圧工程を含むことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、ベルトスリーブを予備的に加熱加圧して、未加硫のゴム層と心線間の接着性を高めることにより、ベルトスリーブを第1内型から脱型する際に、未加硫のゴム層と心線とが剥離するのを防止でき、また、このような剥離に起因する心線の並びの乱れを防止することができる。
【0015】
請求項4の加硫ベルトスリーブの製造方法は、請求項1〜3の何れかにおいて、前記第1工程は、前記第1内型に巻き付けられた状態の前記ベルトスリーブの外周面に、短繊維を付着させる短繊維付着工程を含むことを特徴とする。
【0016】
この構成によると、ゴム層の表面に短繊維が設けられた加硫ベルトスリーブを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、Vリブドベルト1を形成するための加硫ベルトスリーブを製造する際に本発明を適用した例を挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、Vリブドベルト1は、ベルト長手方向に沿って心線4が埋設された背面ゴム層3と、この背面ゴム層3に隣接し、ベルト長手方向に沿って延びる複数のリブ部(突部)6が形成されている圧縮ゴム層2と、圧縮ゴム層2のリブ部6の表面に設けられた短繊維5とを備える。尚、背面ゴム層3の表面は、帆布で被覆されていてもよい。Vリブドベルト1は、加硫ベルトスリーブを所定の幅に切断することによって形成される。
【0019】
圧縮ゴム層2及び背面ゴム層3は、ゴム組成物で構成されており、ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム等の単独又は混合したものが用いられる。
【0020】
上記ゴム組成物には、軟化剤、カーボンブラック等の補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が添加される。さらに、圧縮ゴム層2を構成する上記ゴム組成物には、ベルトの耐久性を向上させるために、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の短繊維を配合してもよい。また、背面ゴム層3を構成する上記ゴム組成物には、このような短繊維を配合してもよいが、コスト低減のために、配合しなくてもよい。
【0021】
心線4としては、例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる撚コードが用いられる。特に、エチレン−2,6−ナフタレートを主な構成単位とするポリエステル繊維のフィラメントを撚り合わせた、総デニール数が4000〜8000の撚コードが好適に用いられる。また、このような撚コードには、ゴムとの接着性を高めるための接着処理が施されている。接着処理としては、例えば、未処理の撚コードをRFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)液に浸漬後、加熱乾燥する方法がある。
【0022】
短繊維5は、圧縮ゴム層2の表面から種々の角度で起毛しつつ、その一部が圧縮ゴム層2に埋没された状態で、圧縮ゴム層2に固着されている。短繊維5は、ベルトの伝動面(リブ部6の表面)の摩擦係数を低減させ、ベルト走行時の異音の発生を防止するために設けられる。短繊維5としては、レーヨン、綿、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等が用いられる。短繊維5の長さは0.1〜5.0mmが好ましく、短繊維5のアスペクト比(長さ/太さ)は30〜300が好ましい。また、短繊維5の密度は、例えば1万〜5万本/cmである。
【0023】
次に、Vリブドベルト1を形成するため加硫ベルトスリーブを製造する方法について説明する。
【0024】
<第1工程>
図2及び図3に示すように、外径が拡縮可能なリンク式内型(第1内型)20を用意する。リンク式内型20は、周方向に4分割された円筒状の金型本体21と、リンク機構22と、軸部材23と、軸部材23に取り付けられた2つの移動部24とを備えている。リンク機構22は、図3に示すように、1水平面中に、90度ずつ隔てた4箇所に設けられた合計16本のアーム部材25で構成されている。各アーム部材25は、一端が金型本体21の内周面に回動自在に連結され、他端が移動部24に回動自在に連結されている。また、移動部24は、その内部に例えば油圧シリンダなどの駆動手段が設置されており、軸部材23に沿って移動可能となっている。リンク式内型20は、2つの移動部24を軸部材23に沿って互いに離間又は接近する方向に等間隔だけ移動させることにより、金型本体21の外径が拡大又は縮小するようになっている。
【0025】
図3に示すように、予め所定の径に拡張したリンク式内型20の外周面に、背面ゴム層3を構成する未加硫ゴムシートを巻き付けてから、その外周面に心線4を食い込ませながら螺旋状に巻き付ける。さらにその上から圧縮ゴム層2を構成する未加硫ゴムシートを巻き付けて、未加硫のベルトスリーブ10を作製する。このように、ベルトスリーブ10を作製する際、予めリンク式内型20の外径を調整することにより、所望の周方向長さのベルトスリーブ10を作製することができる。
【0026】
次に、リンク式内型20に巻き付けられた状態のベルトスリーブ10の外周面に、公知の静電気植毛装置30を用いて、短繊維5を付着させる(短繊維付着工程)。
【0027】
具体的には、静電気植毛装置30を用いて短繊維5を付着させる前に、以下の前処理を行う。先ず、ベルトスリーブ10が巻き付けられた状態のリンク式内型20を回転台(図示省略)に設置するとともに、軸部材23の軸方向に移動可能なスプレーノズル(図示省略)をベルトスリーブ10の外周面に向けて配置する。そして、リンク式内型20を軸部材23を中心として周方向に回転させながら、スプレーノズル(図示省略)により、ベルトスリーブ10の外周面に水系接着剤を塗布する。これにより、ベルトスリーブ10の外周面に、短繊維を付着させるための短繊維保持膜11を形成する。水系接着剤としては、例えば、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン等を用いることができる。
【0028】
次に、図4に示すように、リンク式内型20を回転させながら、軸部材23の軸方向に沿って移動可能な静電気植毛装置30によって、ベルトスリーブ10の外周面(短繊維保持膜11)に短繊維5を付着させる。詳細には、リンク式内型20をアースとして、静電気植毛装置30に設けられた電極板に電圧を印加して電界を形成する。そして、静電気植毛装置30の電極板上に電着処理を施した短繊維5を供給する。すると、短繊維5は帯電して、電界から静電力を受けて飛翔し、ベルトスリーブ10の外周面に衝突する。これにより、短繊維5は短繊維保持膜11に付着する。尚、電着処理とは、短繊維5の漏洩抵抗値や水分を調整して、短繊維5の飛翔性を向上させる処理のことである。また、短繊維5を短繊維保持膜11に付着させた後は、水系接着剤を自然乾燥もしくは加熱乾燥させて、短繊維5を短繊維保持膜11に固着させる。
【0029】
次に、リンク式内型20に巻き付けられた状態のベルトスリーブ10を予備加熱加圧装置40により、予備的に加熱加圧する(予備加熱加圧工程)。この予備加熱加圧工程は、未加硫の背面ゴム層3と心線4、及び、未加硫のゴム層2、3同士の接着力を高めるために行う。
【0030】
図5に示すように、予備加熱加圧装置40は、金属材料からなる筒状壁41と、筒状壁41の内側に設置されたゴム材料からなる筒状の膨張体42とを備える。膨張体42は、両端部が筒状壁41の内周面に固定されている。また、筒状壁41には、導入孔41aと、導入孔41aよりも径の小さい排出孔41bが形成されている。尚、膨張体42としては、周方向に並んで配置され、それぞれ上下左右端部が筒状壁41の内周面に固定された複数の部材で構成されるものであってもよい。
【0031】
この予備加熱加圧装置40の内側に、リンク式内型20に巻き付けられた状態のベルトスリーブ10を設置する。そして、圧縮空気を加熱装置(図示省略)によって加熱してから、筒状壁41に形成された導入孔41aを介して、筒状壁41の外周面と膨張体42の内周面との間に導入する。すると、加熱されて膨張した空気によって、膨張体42は内側に押し出されて縮径方向に変形し、ベルトスリーブ10の外周面を押圧する。このとき、筒状壁41と膨張体42との間の空気は、筒状壁41の外周面に取り付けられたヒーター43によって加熱される。さらに、排気孔41bから少量ずつ空気が排出されるため、常に導入孔41aから加熱された空気が導入される。これにより、ベルトスリーブ10は、ほぼ均一な温度及び圧力で加熱加圧される。尚、この予備的な加熱加圧は、ベルトスリーブ10が完全に加硫されない条件で行われる(例えば、温度100℃、加圧力0.1MPa)。
【0032】
予備加熱加圧工程が終了した後、膨張体42と筒状壁41との間の空気を排気し、ベルトスリーブ10をリンク式内型20ごと予備加熱加圧装置40から取り出す。次に、2つの移動部24を軸部材23に沿って互いに離間する方向に駆動させて、金型本体21の外径を縮小させてから、ベルトスリーブ10をリンク式内型20から脱型する。このように、リンク式内型20の外径を縮小させることにより、ベルトスリーブ10を第1内型から容易に脱型することができる。
【0033】
また、ベルトスリーブ10を予備的に加熱加圧して、未加硫の背面ゴム層3と心線4の間、及び、未加硫の圧縮ゴム層2と背面ゴム層3の間の接着性を高めることにより、ベルトスリーブ10をリンク式内型20から脱型する際に、背面ゴム層3と心線4の間、及び、圧縮ゴム層2と背面ゴム層3の間の剥離を防止できる。また、背面ゴム層3と心線4間の剥離に起因する心線4の並びの乱れを防止することができる。
【0034】
<第2工程>
次に、図7に示す金属材料からなる円筒状の外型50を用意する。外型50は、その内周面に、周方向に延在する複数のリブ溝(型付溝)50aが形成されている。また、隣接するリブ溝50a間には、凸部50bが形成されている。
【0035】
この外型50の内側に、リンク式内型20から脱型したベルトスリーブ10を挿入する。ここで、特に、周長の短い加硫ベルトスリーブ10を製造する場合には、ベルトスリーブ10の外径が、外型50の凸部50bの先端面における内径よりも大きくなる場合がある。このような場合であっても、ベルトスリーブ10を外型50の内側に挿入する際、ベルトスリーブ10の内側にはリンク式内型20がないため、例えば、図6に示すようにベルトスリーブ10を変形させることによって、ベルトスリーブ10を外型50の内側に挿入することができる。尚、図6では、ベルトスリーブ10の断面構造を省略して表示している。
【0036】
次に、図7に示すように、外型50内に配置されたベルトスリーブ10の内側に、加硫用内型(第2内型)51を挿入する。尚、図7では、短繊維5及び短繊維保持膜11を省略して表示している。加硫用内型51は、金属材料からなる円筒状の内型本体52と、内型本体52の外周面に装着されたブラダ53とから構成されている。ブラダ53はゴムからなる筒状体であり、その両端部が内型本体52に固定されている。加硫用内型51は、その外径が拡縮可能となっている。詳細には、内型本体52の外周面とブラダ53の内周面との間に空気が充填されることにより、ブラダ53が拡径方向に膨張するようになっている。
【0037】
<第3工程>
次に、図8に示すように、内型本体52に形成された連通孔52aから、内型本体52とブラダ53との間に高圧空気又は高圧蒸気を注入する。すると、ブラダ53は拡径方向に膨張して、ベルトスリーブ10の内周面に密着し、ベルトスリーブ10を内周側から押圧する。さらにブラダ53が膨張すると、ベルトスリーブ10の外周面が図示しない加熱手段によって加熱された外型50に押し付けられる。これにより、ベルトスリーブ10は加熱加圧されて加硫される。このときの外型50の温度は、例えば100〜180℃である。
【0038】
この加熱加圧の際、ベルトスリーブ10の外周面に型付けを行う。詳細には、ベルトスリーブ10の外周面が外型50に押し付けられることによって、圧縮ゴム層2を構成するゴムが加熱されて流動状となり、リブ溝50a内に押し込まれる。これにより、ベルトスリーブ10の外周面にリブ溝50aに対応するリブ部6が形成される。
【0039】
また、ベルトスリーブ10の外周面が外型50に押し付けられる際、短繊維保持膜11に保持された短繊維5は、その一部が圧縮ゴム層2中に埋没される。尚、図8では、図7と同様に短繊維5及び短繊維保持膜11を省略して表示している。
【0040】
以上の工程により、加硫ベルトスリーブ10が製造される。ここで、予め加熱加圧されて型付けされたスリーブと、別のスリーブとを一体化させて加硫ベルトスリーブを製造する場合、スリーブ間(ゴム層間)の接着性が低くなる。一方、本実施形態では、最初から一体化されたベルトスリーブ10を作製して、加硫するため、圧縮ゴム層2と背面ゴム層3間の接着性が高くなる。
【0041】
尚、加硫が終了した後は、ブラダ53を縮径させて、加硫用内型51を外型50から抜き取った後、加硫ベルトスリーブ10を外型50から脱型する。そして、この加硫ベルトスリーブ10を2つのロールに懸架して走行させながら、所定の幅に切断することにより、個々のVリブドベルト1に仕上げる。
【0042】
以上説明した実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
前記実施形態では、外径が拡縮可能な第2内型として、内型本体52にブラダ53が装着された加硫用内型51を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、機械的な径拡縮機構を有する第2内型を用いてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、Vリブドベルト1を形成するための加硫ベルトスリーブを製造する場合に本発明を適用した一例について説明したが、本発明の適用対象は、これに限定されるものではない。例えば、ベルト長手方向に所定間隔で配置される複数のコグ部が形成されたコグ付ベルトを形成するための加硫ベルトスリーブを製造する際に、本発明を適用することも可能である。尚、この場合、前記実施形態で用いた外型50の代わりに、内周面にコグ溝が形成された外型を用いる。また、Vベルトや、歯付ベルトなど他の種類のベルトの製造する際に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】Vリブドベルトの断面図である。
【図2】第1内型にベルトスリーブが巻き付けられた状態を示す図である。
【図3】図2のA-A線断面図である。
【図4】短繊維付着工程を示す図である。
【図5】予備加熱加圧工程を示す図である。
【図6】外型の内側にベルトスリーブを挿入する工程を示す断面図である。
【図7】ベルトスリーブの内側に第2内型を設置した状態を示す図である。
【図8】ベルトスリーブを加硫している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 Vリブドベルト
2 圧縮ゴム層
3 接着ゴム層
4 心線
5 短繊維
6 リブ部
10 ベルトスリーブ
20 リンク式内型(第1内型)
21 金型本体
22 リンク機構
30 静電気植毛装置
40 予備加熱加圧装置
50 外型
50a リブ溝(型付溝)
50b 凸部
51 加硫用内型(第2内型)
52 内型本体
53 ブラダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト長手方向に沿って心線を埋設した背面ゴム層と、この背面ゴム層に隣接し、突部が形成された圧縮ゴム層とを含むベルトを形成するための加硫ベルトスリーブを製造する方法であって、
第1内型に、前記背面ゴム層形成用の未加硫ゴムシートと、前記心線と、前記圧縮ゴム層形成用の未加硫ゴムシートとを順に巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製してから、前記ベルトスリーブを前記第1内型から脱型する第1工程と、
前記ベルトスリーブを、その内周面に型付溝が形成された外型の内側に挿入した後、前記ベルトスリーブの内側に、その外径が拡縮可能な第2内型を設置する第2工程と、
前記第2内型の外径を拡張させて、前記外型と前記第2内型との間で前記ベルトスリーブを加圧しながら、前記ベルトスリーブを加熱して、前記ベルトスリーブを加硫するとともに、前記ベルトスリーブの外周面に前記型付溝に対応する前記突部を形成する第3工程と、
を備えることを特徴とする加硫ベルトスリーブの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記第1内型として、その外径が拡縮可能であるものを使用し、
前記第1内型の外径を縮小させて、前記ベルトスリーブを第1内型から脱型することを特徴とする請求項1に記載の加硫ベルトスリーブの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、
未加硫の前記ゴム層と前記心線間の接着性を高めるために、前記第1内型に巻き付けられた状態の前記ベルトスリーブを予備的に加熱加圧する予備加熱加圧工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の加硫ベルトスリーブの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程は、
前記第1内型に巻き付けられた状態の前記ベルトスリーブの外周面に、短繊維を付着させる短繊維付着工程を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の加硫ベルトスリーブの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196135(P2009−196135A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38296(P2008−38296)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】