説明

加飾成形体

【課題】 立体感を演出することができる加飾成形体を得る。
【解決手段】 加飾成形体10は、印刷層16の成すバーズアイメープル等の杢柄に対応した凸部12Aを有する成形体12と、成形体12の凸部12A側に例えばインクジェット印刷やタンポ印刷等の印刷により形成された印刷層16とを備える。印刷層16の成す杢柄に成形体12の起伏が対応しているため、印刷層16が成す杢柄は、成形体12の起伏によって立体的となる。この結果、印刷層16の成す杢柄は、見る方向によって見え方が異なり、立体感を演出することができ、さらには、杢の深みを演出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装材又は外装材として使用される加飾成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装材又は外装材として適用可能な加飾成形体が提案されており、その一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
このような加飾成形体は、基体としての成形体を備えている。成形体は、例えば、プラスチック、金属、ゴム等の材質で所定の形状に形成されており、例えば、ステアリング、シフトレバー、ウインドウ操作パネル、計器パネル回り、アームレスト、コンソールボックス、グローブボックス、アンダートレイ、灰皿等に適用される。
【0004】
さらに、加飾成形体は、成形体に対応した印刷層を有している。印刷層は、加飾する(インクジェット印刷等を施す)ことにより平面的に形成されており、全体として木目柄や文字等の画像を成している。
【0005】
すなわち、成形体に木目柄や文字等の画像が施されることで意匠性を演出する構成である。
【0006】
しかしながら、このような加飾成形体は、単に画像が平面的に形成されているだけであるため、木目柄が施されている場合には本物の質感の演出に乏しい。特に、バーズアイメープル(鳥眼杢)や柾目柄、そして板目柄等の木目柄が施されている場合には、立体感を醸し出すことができず、本物の風合いからはほど遠いものとなってしまう、という欠点があった。
【特許文献1】特開2004−123025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、立体感を演出することができる加飾成形体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る加飾成形体は、加飾することで得られる画像に対応した凹凸を表面に有する成形体と、前記成形体の凹凸面側に印刷を施すことで形成され、全体として前記画像を成す印刷層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明に係る加飾成形体では、成形体の表面に凹凸が設けられている。このような成形体の凹凸面側には、例えばインクジェット印刷やタンポ印刷等の印刷を施すことで形成された印刷層が設けられており、全体として画像を成している。
【0010】
このような加飾成形体では、加飾することで得られる画像に成形体の凹凸が対応しているため、印刷層が成す画像(例えば、木目柄や文字等)は、成形体の凹凸によって立体的となる。この結果、印刷層が成す画像は、見る方向によって見え方が異なり、立体感を演出することができる。
【0011】
これにより、例えば印刷層の成す画像が木目柄の場合には、杢の深みを醸し出すことができる。
【0012】
また、印刷層を形成する際において、例えばインクジェット印刷やタンポ印刷等の印刷を成形体の凹凸面側に施すことにより成形体の凹凸と印刷層が成す画像との位置合わせが容易となるため、加飾することで得られる画像を成形体の凹凸に合わせて正確な位置に形成することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る加飾成形体は、請求項1記載の発明において、前記成形体と前記印刷層との間に介在し、前記印刷層を前記成形体に印刷するための受理層を備えた、ことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明に係る加飾成形体では、印刷層を成形体に印刷するための受理層が成形体と印刷層との間に介在しているので、印刷層を成形体に直接印刷することができない場合、あるいは印刷層を成形体に直接付着させることが難しい場合に、受理層によって、印刷層を成形体に滲みなく鮮明に印刷することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る加飾成形体は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記印刷層に対応して設けられ、前記印刷層の表面を被覆することで前記成形体の凹凸に起因した前記印刷層の表面側の凹凸を平滑するクリヤ層を備えた、ことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明に係る加飾成形体では、クリヤ層が印刷層に対応して設けられている。このクリヤ層は、印刷層の表面を被覆することで成形体の凹凸に起因した印刷層の表面側の凹凸を平滑する。このため、印刷層の凹凸側の外見がよくなり、加飾成形体に高級感を醸し出すことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る加飾成形体は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の発明において、前記画像は、杢柄である、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明に係る加飾成形体では、印刷層の成す画像が杢柄であるので、杢の深みを演出することができ、本加飾成形体を、例えばステアリングやシフトレバー、そしてレバーコンビネーションスイッチ等の各種スイッチやインパネ回り等の車両の内装品や外装品として適用でき、好適である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した如く本発明に係る加飾成形体は、立体感を演出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る加飾成形体10について説明する。なお、図1には加飾成形体10の概略が断面図にて示されている。以下、説明の都合上、図1において矢印Xにて示される方向を右側方、矢印Yにて示される方向を上方ということとする。
【0021】
加飾成形体10は、成形体12を備えている。成形体12は、例えばABS樹脂から成っている。この成形体12は、金型により例えば略板状体に形成されており、その表面(図1において上方)には、外側に向かって張り出した凸部12Aを有している。この凸部12Aは、後述の印刷層16が形成されることで得られる画像に対応している。
【0022】
このような成形体12の表面には、受理層14が密着して設けられている。受理層14は、成形体12の表面を全体的に被覆しており、後述の印刷層16を成形体12に印刷するためのものである。受理層14の肉厚は、全体に亘ってほぼ均一とされており、成形体12の凸部12Aに起因する凸形状を有している。
【0023】
受理層14の上方には、印刷層16が密着して設けられている。印刷層16は、膜状とされており、ほぼ均一の膜厚とされている。この印刷層16は、薄色部16Aを有している。薄色部16Aは、前述の成形体12の凸部12Aに対応しており、凸部12Aの上方で印刷層16の表面に印刷されている。
【0024】
この薄色部16Aの左側には、濃色部16Bが設けられている。この濃色部16Bは、薄色部16Aに連続して一体に形成されており、薄色部16Aよりも色の濃さが濃くなっている。
【0025】
一方、薄色部16Aの右側には、濃色部16Bと同様の濃色部16Cが設けられており、薄色部16Aに連続して一体に形成され、この結果、薄色部16A、濃色部16Bと連続して一体に形成されている。このような濃色部16Cは、薄色部16Aよりも色の濃さが濃くなっている。
【0026】
以上説明したような印刷層16の薄色部16A及び濃色部16B、16Cは、成形体12の表面(上方)側に例えばインクジェット印刷やタンポ印刷等の印刷を施すことで形成されており、全体として画像を形成している。このような印刷層16は、受理層14の凸形状(さらに言えば、成形体12の凸部12A)に起因する凸形状を有している。以下、説明の都合上、この画像がバーズアイメープル(鳥眼杢)という木目柄(杢柄)であるとして説明する。
【0027】
このような印刷層16の上方には、クリヤ層18が密着して設けられている。クリヤ層18は、印刷層16に対応しており、印刷層16の表面を被覆している。これにより、クリヤ層18は、成形体12の凹凸に起因した印刷層16の表面側の凹凸を平滑している。
【0028】
以上説明したような加飾成形体10は、例えば、ステアリングやシフトレバー、そしてレバーコンビネーションスイッチ等の各種スイッチやインパネ回り等の車両の内装品や外装品として適用される。
【0029】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0030】
加飾成形体10では、成形体12の凸部12Aが印刷層16の薄色部16A、濃色部16B、16Cが成す画像(バーズアイメープル)に対応しているため、印刷層16の薄色部16A、濃色部16B、16Cが成す画像は、成形体12の凸部12Aによって立体的になる。この結果、この画像を図1の矢印B方向に沿って加飾成形体10をその直上から見ると、図2(B)に示されるように、凸部12Aに対応して設けられた薄色部16Aを中心にして、その左側に濃色部16Bが現れると共に、右側に濃色部16Cが現れ、濃色部16Bと濃色部16Cとが同程度の大きさで見える。
【0031】
一方、この加飾成形体10を図1の矢印A方向から見ると、図2(A)に示されるように、凸部12Aに対応して設けられた薄色部16Aによって、濃色部16C(すなわち、印刷層16のうち薄色部16Aの背後側(右側))が隠される。このため、薄色部16Aと濃色部16Bとが同程度の大きさで見える。
【0032】
これに対して、加飾成形体10を図1の矢印C方向から見ると、図2(C)に示されるように、薄色部16Aによって濃色部16B(すなわち、印刷層16のうち薄色部16Aの背後側(左側))が隠される。このため、薄色部16Aと濃色部16Cとが同程度の大きさで見える。
【0033】
このように、加飾成形体10を見る方向によって、印刷層16の形状(見え方)が異なり、印刷層16が成す画像の立体感を演出することができる。
【0034】
これにより、印刷層16の成す画像(バーズアイメープル)に深みを醸し出すことができる。
【0035】
また、加飾成形体10では、材質上の理由から印刷層16を構成するインクがABS樹脂から成る成形体12に直接に付着することはないが、受理層14によって、印刷層16を成形体12に滲みなく鮮明に印刷することができる。
【0036】
また、加飾成形体10では、クリヤ層18が印刷層16の表面を被覆して成形体12の凸部12Aの形状に起因した印刷層16の表面側の凹凸を平滑しているため、印刷層16の凸部側(上方)の外見が良くなり、加飾成形体10に高級感を醸し出すことができる。
【0037】
また、印刷層16を形成する際においては、例えばインクジェット印刷やタンポ印刷等の印刷を成形体12の上方(凸部12Aが形成されている側)に施すことにより成形体12の凸部12Aと印刷層16が成す画像との位置合わせが容易となるため、加飾することで得られる画像(バーズアイメープル)を成形体12の凸部12Aに合わせて正確な位置に形成することができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態では、成形体12に凸部12Aを設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。成形体12に凹部を設ける構成としてもよい。この場合、図1の加飾成形体10を矢印B方向から見ると印刷層16の成す画像が図2(B)に示されるように見えて本実施の形態と同様であるが、加飾成形体10を矢印A方向から見ると印刷層16の成す画像が図2(C)に示されるように見え、その一方で、加飾成形体10を矢印C方向から見ると印刷層16の成す画像が図2(A)に示されるように見え、これにより、印刷層16が成す画像に立体感を持たせることができる。
【0039】
また、成形体12に凸部12Aと凹部との双方を設ける構成としてもよく、この場合にも印刷層16が成す画像に立体感を持たせることができる。
【0040】
また、本実施の形態では、加飾成形体10に受理層14を設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。印刷層16を構成するインクが成形体12に直接に付着するものである場合には、受理層14を省略してもよい。この場合にも、印刷層16が成す画像に立体感を持たせることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、印刷層16のうち凸部12Aに対応した部位(薄色部16A)の色の濃さを他の部位(濃色部16B、16C)よりも薄くしたが、本発明はこれに限らず、印刷層16のうち凸部12Aに対応した部位の色の濃さを他の部位よりも濃くしても、印刷層16の成す画像に立体感を持たせることができる。
(変形例)
次に、本発明の実施の形態に係る加飾成形体10の変形例について説明する。なお、上述の本発明の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
本変形例は、加飾成形体10の印刷層16が成す画像を、バーズアイメープルとせずに、柾目柄としたものである。
【0043】
図3に示されるように、成形体12の凸部12Aは、その稜線部分が所定方向に沿って略直線状に延びた形状とされており、さらにこのような凸部12Aが複数離間してほぼ平行に形成されており、各凸部12Aは印刷層16の成す画像(柾目柄)の年輪模様に対応している。
【0044】
さらに、印刷層16のうち凸部12Aに対応した部位(稜線部分)を濃色部16Dとし、他の部位を薄色部16Eとし、これらが連続して一体とされている。濃色部16Dの色の濃さは前述の濃色部16B、16Cに対応しており、薄色部16Eの色の濃さは前述の薄色部16Aに対応している。このような印刷層16は、全体として柾目柄を成している。
【0045】
以上説明したような加飾成形体10では、印刷層16の成す柾目柄の年輪模様が浮き立ち、杢の深みを演出することができる。
【0046】
なお、本変形例では、印刷層16の成す画像を柾目柄としたが、本発明はこれに限らない。例えば、印刷層16の成す画像を板目柄としてもよく、この場合にも前述の実施の形態、そして本変形例と同様に、印刷層16の成す画像に立体感を持たせることができ、さらには、杢の深みを演出することができる。
【0047】
また、印刷層16の成す画像を文字とし、この文字に立体感を持たせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る加飾成形体の概略を示す断面図である。
【図2】図1の加飾成形体を各矢印方向から見た図であり、(A)は矢印A方向から見た図、(B)は矢印B方向から見た図、(C)は矢印C方向から見た図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る加飾成形体の変形例の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 加飾成形体
12 成形体
12A 凸部(成形体の凹凸)
14 受理層
16 印刷層
16A 薄色部(画像、杢柄)
16B 濃色部(画像、杢柄)
16C 濃色部(画像、杢柄)
16D 濃色部(画像、杢柄)
16E 薄色部(画像、杢柄)
18 クリヤ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾することで得られる画像に対応した凹凸を表面に有する成形体と、
前記成形体の凹凸面側に印刷を施すことで形成され、全体として前記画像を成す印刷層と、
を備えたことを特徴とする加飾成形体。
【請求項2】
前記成形体と前記印刷層との間に介在し、前記印刷層を前記成形体に印刷するための受理層を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の加飾成形体。
【請求項3】
前記印刷層に対応して設けられ、前記印刷層の表面を被覆することで前記成形体の凹凸に起因した前記印刷層の表面側の凹凸を平滑するクリヤ層を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の加飾成形体。
【請求項4】
前記画像は、杢柄である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の加飾成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−116780(P2006−116780A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305883(P2004−305883)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】