動力システム
【課題】小型化を図ることができると共に、設計の自由度を高めることができる回転機を用いた動力機構と、この動力機構の作動を適切に制御する制御装置とを備えた動力システムを提供する。
【解決手段】第1ロータ51とステータ53と第2ロータと52を備え、ステータ53の電機子磁極の数と第1ロータの磁極の数と第2ロータ52のコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、第1ロータ51が駆動軸23に接続された第1回転機3と、第2ロータ52と接続されたエンジン20と、駆動軸23との間での動力の入出力と、第1回転機3との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機4と、要求出力又は要求トルクが駆動軸23に出力されるように、第1回転機3と第2回転機4とエンジン20のうちの少なくとも第2回転機4を制御する制御装置200とを備える。
【解決手段】第1ロータ51とステータ53と第2ロータと52を備え、ステータ53の電機子磁極の数と第1ロータの磁極の数と第2ロータ52のコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、第1ロータ51が駆動軸23に接続された第1回転機3と、第2ロータ52と接続されたエンジン20と、駆動軸23との間での動力の入出力と、第1回転機3との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機4と、要求出力又は要求トルクが駆動軸23に出力されるように、第1回転機3と第2回転機4とエンジン20のうちの少なくとも第2回転機4を制御する制御装置200とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロータを有する回転機を用いた動力機構とその制御装置を備えた動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のロータを有する回転機として、例えば、第1回転軸に連結された第1ロータと、第2回転軸に連結された第2ロータと、ステータとを備えた回転機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された回転機においては、第1回転軸と第2回転軸が同心状に配置されており、第1ロータ及び第2ロータとステータは、第1回転軸の径方向に内側からこの順で配置されている。そして、第1ロータは、周方向に並んだ複数の第1永久磁石及び第2永久磁石を有しており、第1永久磁石及び第2永久磁石は、第1ロータの軸線方向に並列して配置されている。
【0004】
また、第2ロータは、各々が周方向に並んだ複数の第1コア及び第2コアを有している。第1コア及び第2コアは軟磁性体で構成されており、第1コアは第1ロータの第1永久磁石側の部分とステータの間に配置され、第2コアは第1ロータの第2永久磁石側の部分とステータの間に配置されている。
【0005】
また、ステータは、周方向に回転する第1回転磁界及び第2回転磁界を生じさせるように構成され、第1回転磁界は第1ロータの第1永久磁石側の部分との間に発生し、第2回転磁界は第1ロータの第2永久磁石側の部分との間に発生する。第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極の数と、第1回転磁界及び第2回転磁界の磁極の数と、第1コア及び第2コアの数とは、同一に設定されている。
【0006】
そして、ステータへの電力供給による第1回転磁界及び第2回転磁界の発生に伴なって、第1回転磁界及び第2回転磁界の磁極と第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極により、第1コア及び第2コアが磁化されることによって、これらの要素の間に磁力線が発生する。また、この磁力線の磁力による作用により、第1ロータ及び第2ロータが駆動されて、第1回転軸及び第2回転軸から動力が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−67592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された回転機は、その構成上、複数の第1コアから成る第1軟磁性体列と複数の第2コアから成る第2軟磁性体列を備えることが必須であるため、回転機が大型化するという不都合があった。さらに、特許文献1に記載された電動機は、その構成上、第1回転磁界及び第2回転磁界の回転速度と第2ロータの回転速度との速度差と、第2ロータの回転速度と第1ロータの回転速度との速度差とが同じになる速度関係しか成立しないため、設計の自由度が低いという不都合があった。
【0009】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、小型化を図ることができると共に、設計の自由度を高めることができる回転機を用いた動力機構と、この動力機構の作動を適切に制御する制御装置とを備えた動力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、前記第2ロータと接続された原動機と、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機とを備えた動力システムに関する。
【0011】
前記第1回転機においては、ステータの複数の電機子磁極による回転磁界が発生すると、第2ロータのコア部が電機子磁極と第1ロータの磁極によって磁化されて、磁極とコア部と電機子磁極を結ぶ磁力線が発生する。
【0012】
この場合、前記第1回転機を例えば以下の条件(a)及び(b)の下で構成したときには、回転磁界、第1ロータ、及び第2ロータ間の速度と位置の関係は、次のように表される。また、第1回転機の等価回路は図12のように示される。
【0013】
(a) ステータ100がU,V,Wの3相の電機子101,102,103を有する。
【0014】
(b) 電機子磁極が2個、第1ロータ110の磁極111の数が4、すなわち、電機子磁極のN極及びS極を1組とする極対数が1、磁極のN極及び及びS極を1組とする極対数が2、第2ロータ120のコア部が3個(121,122,123)である。
【0015】
なお、本明細書で用いる「極対」は、N極及びS極の1組を意味する。
【0016】
この場合、3個のコア部のうちの第1コア121を通過する磁極の磁束Ψk1は、以下の式(1)で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
但し、Ψf:磁極の磁束の最大値、θ1:U相コイルに対する磁極の回転角度位置、θ2:U相コイルに対する第1コア121の回転角度位置。
【0019】
そのため、第1コア121を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu1は、上記式(1)にcosθ2を乗じた以下の式(2)で表すことができる。
【0020】
【数2】
【0021】
同様に、第2コア122を通過する磁極の磁束Ψu2は、次式(3)で表される。
【0022】
【数3】
【0023】
U相コイルに対する第2コア122の回転角度位置は、第1コア121に対して2π/3だけ進んでいるため、上記式(3)では、θ2に2π/3が加算されている。
【0024】
したがって、第2コア122を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu2は、上記式(3)にcos(θ+2π/3)を乗じた以下の式(4)で表される。
【0025】
【数4】
【0026】
同様に、第3コア123のコア部123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu3は、以下の式(5)で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
図12に示した第1回転機では、コア部121,122,123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψuは、上記式(2),式(4),式(5)で表される磁束Ψu1,Ψu2,Ψu3を足し合わせた以下の式(6)で表される。
【0029】
【数6】
【0030】
また、上記式(6)を一般化すると、第2ロータ120のコア部121,122,123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψuは、以下の式(7)で表される。
【0031】
【数7】
【0032】
但し、a:第1ロータの磁極の極対数、b:第2ロータのコア部の数、c:ステータの電機子磁極の極対数。
【0033】
また、上記式(7)を変形すると、以下の式(8)が得られる。
【0034】
【数8】
【0035】
上記式(8)において、b=a+cとすると共に、cos(θ+2π)=cosθにより整理すると、以下の式(9)が得られる。
【0036】
【数9】
【0037】
上記式(9)をさらに整理すると以下の式(10)が得られる。
【0038】
【数10】
【0039】
上記式(10)の右辺の第2項の値は、a−c≠0を条件として整理すると、以下の式(11)に示したようにゼロとなる。
【0040】
【数11】
【0041】
また、上記式(10)の右辺の第3項の値も、a−c≠0を条件として整理すると、以下の式(12)に示したようにゼロとなる。
【0042】
【数12】
【0043】
以上により、a−c≠0のときには、第2ロータ120のコア部121,122,123を介してステータ100のU相コイルを通過する磁極の磁束ΨUは、以下の式(13)で表される。
【0044】
【数13】
【0045】
また、上記式(13)において、a/c=αとすると、以下の式(14)が得られる。
【0046】
【数14】
【0047】
さらに、上記式(14)において、c・θ2=θe2とすると共に、c・θ1=θe1とすると、以下の式(15)が得られる。
【0048】
【数15】
【0049】
ここで、θe2は、U相コイルに対するコア部の回転角度位置θ2に、電機子磁極の極対数cを乗じていることから明らかなように、U相コイルに対するコア部の電気角度位置を表している。また、θe1は、U相コイルに対する第1ロータ110の磁極の回転角度位置θ1に、電機子磁極の極対数cを乗じていることから明らかなように、U相コイルに対する磁極の電気角度位置を表している。
【0050】
同様にして、コア部を介してV相コイルを通過する磁極の磁束Ψvは、V相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ遅れていることから、以下の式(16)で表される。
【0051】
【数16】
【0052】
また、コア部を介してW相コイルを通過する磁極の磁束Ψwは、W相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ進んでいることから、以下の式(17)で表される。
【0053】
【数17】
【0054】
また、上記式(15)〜式(17)で表される磁束Ψu,Ψv,Ψwを時間微分すると、以下の式(18)〜式(20)が得られる。
【0055】
【数18】
【0056】
【数19】
【0057】
【数20】
【0058】
但し、ωe1:θe1の時間微分値(ステータに対する第1ロータの角速度を電気角速度に変換した値)、ωe2:θe2の時間微分値(ステータに対する第2ロータの角速度を電気角速度に変換した値)。
【0059】
ここで、コア部121,122,123を介さずにU相〜W相のコイルを直接通過する磁束は極めて小さく、その影響は無視できる。そのため、コア部121,122,123を介してU相〜W相のコイルをそれぞれ通過する磁極の磁束Ψu,Ψv,Ψw(上記式(18)〜式(20))の時間微分値dΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dtは、ステータ100の電機子列に対して、第1ロータ110の電極及び第2ロータ120のコア部が回転(移動)するのに伴なって、U相〜W相のコイルに発生する逆起電圧(誘導起電圧)をそれぞれ表す。
【0060】
このことから、U相のコイルに流れる電流Iu,V相のコイルに流す電流Iv,W相のコイルに流れる電流Iwは、以下の式(21),式(22),式(23)で表される。
【0061】
【数21】
【0062】
【数22】
【0063】
【数23】
【0064】
但し、I:U相〜W相のコイルを流れる電流の振幅(最大値)である。
【0065】
また、上記式(21)〜式(23)により、U相コイルに対する回転磁界のベクトルの電気角度位置θmfは以下の式(24)で表され、U相コイルに対する回転磁界の電気角速度ωmfは以下の式(25)で表される。
【0066】
【数24】
【0067】
【数25】
【0068】
よって、U相のコイルに電流Iu、V相のコイルに電流Iv、W相のコイルに電流Iwが流れることによって、第1ロータ及び第2ロータに出力される機械的出力(動力)Wは、リラクタンス分を除くと、以下の式(26)で表される。
【0069】
【数26】
【0070】
上記式(26)に、上記式(18)〜式(23)を代入して整理すると、以下の式(27)が得られる。
【0071】
【数27】
【0072】
さらに、この機械的出力Wと、磁極を介して第1ロータに伝達されるトルク(以下、第1トルクという)T1と、コア部を介して第2ロータに伝達されるトルク(以下、第2トルクという)T2と、第1ロータの電気角速度ωe1及び第2ロータの電気角速度ωe2との関係は、以下の式(28)で表される。
【0073】
【数28】
【0074】
上記式(27)と式(28)とを比較することにより、第1トルクT1と第2トルクT2は、以下の式(29),式(30)で表される。
【0075】
【数29】
【0076】
【数30】
【0077】
また、電機子列に供給された電力及び回転磁界の電気角速度ωmfと等価のトルクを駆動用等価トルクTeとすると、電機子列に供給された電力と機械的出力Wは、損失を無視すれば等しくなるため、上記式(25)と式(27)の関係から、駆動用等価トルクTeは以下の式(31)で表される。
【0078】
【数31】
【0079】
さらに、上記式(29)〜式(31)より、以下の式(32)が得られる。
【0080】
【数32】
【0081】
上記式(32)で表されるトルクの関係、及び上記式(25)で表される電気角速度の関係は、遊星歯車装置のサンギヤ、リングギヤ及びキャリアにおける回転速度及びトルクの関係と全く同じである。
【0082】
さらに、上述したように、b=a+c及びa−c≠0を条件として、上記式(25)の電気角速度の関係及び上記式(32)のトルクの関係が成立する。この条件b=a+cは、磁極の数をp、電気子磁極の数をqとすると、b=(p+q)/2、すなわち、b/q=(1+p/q)/2で表される。
【0083】
ここで、p/q=mとすると、b/q=(1+m)/2となることから、上述したb=a+cという条件が成立していることは、電機子磁極の数と磁極の数とコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2であることを示している。また、上述したa−c≠0という条件が成立していることは、m≠1.0であることを示している。
【0084】
本発明の第1回転機機においては、所定回転方向の所定区間で、電機子磁極の数と磁極の数とコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(m≠1.0)に設定されているので、上記式(25)に示した電気角速度の関係、及び上記式(32)に示したトルクの関係が成立し、第1回転機が適正に作動することがわかる。
【0085】
また、上述した従来の場合と異なり、第2ロータが単一のコア部の列だけで構成されているため、第1回転機の小型化を図ることができる。さらに、上記式(25)及び式(32)から明らかなように、α=a/c、すなわち、電機子磁極の極対数に対する磁極の極対数の比を設定することによって、回転磁界、第1ロータ、及び第2ロータ間の電気角速度の関係と、ステータ、第1ロータ、及び第2ロータ間のトルクの関係を任意に設定することができる。
【0086】
したがって、第1回転機の設計の自由度を高めることができる。そして、これらの効果は、複数の電機子のコイルの相数が上述した3相以外の場合であっても同様に得ることができる。そして、その上で、前記第2ロータと接続された前記原動機と、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力及び前記第1回転機との間での電力の授受が可能な前記第2回転機とを備えることで、前記駆動軸と前記原動機と前記第1回転機と前記第2回転機を1共線3要素の態様で動作させる動力機構を、小型化と設計の自由度を高めて構成することができる。
【0087】
[第1発明]
第1発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、所定の要求出力又は要求トルクが前記駆動軸に出力されるように、前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機のうちの少なくとも前記第2回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0088】
第1発明において、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記制御装置によって、少なくとも前記第2回転機を制御することにより、前記駆動軸に直接的に動力を伝達するか、或いは前記第1回転機との電力の入出力を介して前記第1回転機を作動させることにより、前記駆動軸に前記要求出力又は前記要求トルクを生じさせることができる。
【0089】
[第2発明]
第2発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、所定の要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクの過不足分を、前記第2回転機の出力又はトルクで補うように、前記第2回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0090】
第2発明において、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクが不足するときに、前記制御装置により前記第2回転機を制御して、前記駆動軸に直接的に動力を伝達するか、或いは前記第1回転機との電力の入出力を介して前記第1回転機を作動させることにより、前記駆動軸に前記要求出力又は前記要求トルクを生じさせることができる。
【0091】
[第3発明]
第3発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することによって前記第1ロータに出力されるトルクと、該駆動軸の要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記回転軸に出力させるトルクを設定する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0092】
第3発明においては、前記第1ロータは前記駆動軸に接続され、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。
【0093】
そのため、前記要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することにより前記第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記駆動軸に出力するトルクを設定することにより、前記駆動軸の出力トルクを前記要求トルクに近づけることができる。
【0094】
[第4発明]
第4発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求トルクに応じて設定された前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御し、該制御により前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力させるトルクを制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0095】
第4発明においては、前記第1ロータは前記駆動軸に接続され、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記原動機の目標回転速度と実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御すると共に、前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと前記駆動軸の要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力するトルクを制御することによって、前記駆動軸の回転速度と出力トルクを制御することができる。
【0096】
[第5発明]
第5発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求出力に応じて前記原動機の要求出力を設定し、該原動機の要求出力に基づいて設定した前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記第1回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0097】
第5発明においては、前記第1回転機の前記第1ロータが前記駆動軸に接続されている。そのため、前記原動機の目標回転速度と前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記制御装置により前記第1回転機を制御することによって、前記原動機の実回転速度を前記目標回転速度に速やかに収束させることができる。
【0098】
[第6発明]
第6発明は、第5発明において、前記第1回転機又は前記第2回転機に駆動用電力を供給すると共に、前記原動機の出力軸の回転により前記第1回転機又は前記第2回転機で生じる発電電力により充電される蓄電手段を備え、前記制御装置は、前記駆動軸要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機に対する要求出力を設定することを特徴とする。
【0099】
第6発明においては、前記蓄電手段に対する電力の入力要求に応じて前記原動機の出力を増加させる必要がある。また、前記蓄電手段に対する電力の出力要求に応じて前記原動機の出力を減少させることが可能である。そこで、前記制御装置によって、前記要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機の目標出力を設定することにより、該電力の入出力要求に適合した出力を前記原動機に出力させることができる。
【0100】
[第7発明]
第7発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの速度を検出する第1速度検出手段と、前記第2ロータの速度を検出する第2速度検出手段と、前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータにmを乗じた値との差に、同期するように前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0101】
上記式(25)のαはa(磁極の極対数)/c(電機子磁極の極対数)であるため、m(=磁極の数/電機子磁極の数)と等しくなる。そのため、上記式(25)は以下の式(33)で表される。
【0102】
【数33】
【0103】
但し、ωmf:回転磁界の電気角速度、ωe2:第2ロータの電気角速度、ωe1:第1ロータの電気角速度、c:電機子磁極の極対数、ω2:第2ロータの速度(機械角速度)、ω1:第1ロータの速度(機械角速度)。
【0104】
そこで、前記制御装置により、前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(m+1)を乗じた値と前記第1ロータの速度との差に、同期するように前記第1回転機を制御することによって、前記第1回転機における前記ステータの電機子電極により発生する回転磁界の速度と前記第1ロータの速度と前記第2ロータの速度との相対的な速度関係を制御することができる。
【0105】
[第8発明]
第8発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子電極により発生する回転磁界の位置が、前記第2ロータの位置に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータの位置にmを乗じた値との差で表される位置となるように、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0106】
上記式(24)のαはa(磁極の極対数)/c(電機子磁極の極対数)であるため、m(=磁極の数/電機子磁極の数)と等しくなる。そのため、上記式(24)は以下の式(34)で表される。
【0107】
【数34】
【0108】
但し、θmf:回転磁界の電気角度位置、θe2:第2ロータの電気角度位置、θe1:第1ロータの電気角度位置、c:電機子磁極の極対数、θ2:第2ロータの位置(機械角度位置)、θ1:第1ロータの位置(機械角度位置)。
【0109】
そこで、前記制御装置により、前記電機子電極により発生する回転磁界の電気角度位置が、前記第2ロータの電気角度位置に(m+1)を乗じた値と、前記第1ロータの電気角度位置にmを乗じた値との差を用いて表される値となるように、前記第1回転機を制御することによって、前記第1回転機における前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0110】
[第9発明]
第9発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差に、回転磁界の極対数を乗じた値で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0111】
第9発明において、前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差は、前記第2ロータと前記第1ロータの機械的な相対位置を示すものとなる。そして、この差に前記電機子磁極の対極数を乗じることで、上記式(34)で示したように、前記第1ロータと前記第2ロータの電気角度位置に対応した、回転磁界の位置を算出することができる。そのため、このようにして算出した回転磁界の位置を通電位相角として前記第1回転機を制御することにより、前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0112】
[第10発明]
第10発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記ステータに対する前記第1ロータ位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0113】
第10発明によれば、上記第9発明と同様に、上記式(34)の関係を満たすように、前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0114】
[第11発明]
第11発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記ステータに対する前記第1ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される電気角検知位置に基づいて、前記第1回転機を、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧の目標値を決定し、該決定した電圧の目標値を、前記電気角検知位置に基づいて多相交流電圧に変換して前記第1回転機の電機子に供給する多相交流電圧の目標値を設定する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0115】
第11発明によれば、上記式(34)の関係を満たす電気角度位置である前記回転角度位置に基づいて、前記第1回転機を直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱うことで、前記第1回転機を、1個のロータを有する一般的な第1回転機と同様に扱って通電制御を行うことができる。
【0116】
[第12発明]
第12発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記第1回転機を、前記第1ロータの検出位置及び前記第2ロータの検出位置に基づいて、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧を制御すると共に、一方の軸の電機子に供給する電圧を、他方の電機子に流れる電流により該一方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0117】
第6発明によれば、前記直交2軸の各軸の電機子の通電制御を行うときに、一方の軸の電機子に流れる電流により他方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、各軸の電機子に供給する電圧を設定することにより、各軸の電機子間で生じる干渉を回避して、各軸の電機子の通電制御を独立して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】第1回転機の概略構造を縦断面により示した図。
【図2】図1に示した第1回転機に備えられたステータ、第1ロータ、及び第2ロータを、これらの周方向に展開して示した図。
【図3】図1に示した第1回転機を用いて構成された動力機構と、その制御装置とを備えた動力システムの構成図。
【図4】図3に示した動力機構の速度共線図。
【図5】図3に示した制御装置の第1実施形態の構成図。
【図6】図3に示した制御装置の第2実施形態の構成図。
【図7】第1回転機制御部の構成図。
【図8】第1回転機のモデルのブロック図。
【図9】図9に示した電流制御部の第1態様の構成図。
【図10】図9に示した電流制御部の第2態様の構成図。
【図11】回転機の等価回路を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明の実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0120】
先ず、図1〜図2を参照して、本実施の形態で用いられる第1回転機3の構成と機能について説明する。
【0121】
図1を参照して、第1回転機3はPDU(Power Drive Unit)10と接続され、PDU10及びVCU(Voltage Control Unit)13を介して、バッテリ11(本発明の蓄電手段に相当する)との間で電力の授受を行う。また、後述する第1回転機制御部60により、第1回転機3の作動が制御される。
【0122】
第1回転機3は、そのハウジング6内に回転自在に支承された第1ロータ51、及び第2ロータ53を同軸心に備えている。また、第1回転機3のハウジング6内に、ステータ53が固定されている。
【0123】
この場合、ステータ53は、第1ロータ51に対向して第1ロータ51の周囲に配置されている。また、第2ロータ52は、第1ロータ51とステータ53との間に、これらと非接触状態で回転するように配置されている。そのため、第1ロータ51、第2ロータ52、及びステータ53は、同心円状に配置されている。
【0124】
なお、以下では、特に断らない限り、「周方向」は第1回転機3の軸心部(第1ロータ51の軸心部)から延在している主軸25の軸心周り方向を意味し、「軸心方向」は主軸25の軸心方向を意味するものとする。
【0125】
ステータ53は、その内側の第1ロータ51及び第2ロータ52に対して作用させる回転磁界を発生する複数の電機子533を有し、複数の鋼板を積層して円筒状に形成された鉄芯(電機子鉄芯)531と、この鉄芯531の内周面部に装着された3相(U,V,W相)分のコイル(電機子巻線)532とを備えている。鉄芯531は主軸25と同軸心に外挿されて、ハウジング6に固定されている。
【0126】
U,V,Wの各相のコイル532は、各コイル532と鉄芯531とにより個々の電機子533を構成している。これらのU,V,Wの3相分のコイル532は、周方向に並ぶようにして鉄芯531に装着されている(図2参照)。これにより、複数(3の倍数個)の電機子533を周方向に並べた電機子列が構成されている。
【0127】
この電機子列の3相分のコイル532は、3相の交流電流を通電したときに、鉄芯531の内周面部に、周方向に等間隔で並び、且つ周方向に回転する複数(偶数)の電機子磁極が発生するように配列されている。この電機子磁極の列は、周方向で、N極及びS極が交互に並ぶ配列(互いに隣り合う任意の2つの電機子磁極が異なる極性となる配列)である。ステータ53は、この電機子磁極列の回転によって、鉄芯531の内側に回転磁界を発生するものである。
【0128】
3相分のコイル532は、PDU10及びVCU13を介してバッテリ11に接続され、PDU10を介してコイル532とバッテリ11との間の電力の授受(コイル532に対する電気エネルギーの入出力)が行われる。また、第1回転機制御部60により、PDU10を介してコイル532の通電を制御することによって、回転磁界の発生形態(回転磁界の回転速度や磁束強度)を制御することができる。
【0129】
図2に示したように、第1ロータ51は、軟磁性体から成る円筒状の基体511と、基体511の外周面に固着された複数(偶数)の永久磁石(磁石磁極,本発明の磁極に相当する)とを備えている。基体511は、例えば鉄板又は鋼板を積層して形成されている。そして、この基体511がステータ53の鉄芯531の内側で主軸25に外挿され、主軸25と一体に回転するように主軸25に固定されている。
【0130】
また、第1ロータ51の複数の永久磁石512は、周方向に等間隔で配列されている。この永久磁石512の配列によって、第1ロータ51の外周面部に、ステータ53の鉄芯531の内周面部に対向して周方向に並ぶ複数の磁極からなる磁極列が構成されている。この場合、図2中の(N),(S)で示したように、周方向で互いに隣り合う2つの永久磁石512,512の外表面部(ステータ53の鉄芯531の内周面部に対応する面部)の磁極は、互いに異なる磁性の磁極となっている。すなわち、第1ロータ51の複数の永久磁石512の配列によって、第1ロータ51の外周面部に形成される磁極列は、N極及びS極が交互に並ぶ配列となっている。
【0131】
なお、第1ロータ51の基体511及び永久磁石512の長さ(主軸25の軸心方向の長さ)は、ステータ53の鉄芯531の軸心方向の長さと同程度とされている。
【0132】
第2ロータ52は、軟磁性体から成る複数のコア521(本発明のコア部に相当する)を、ステータ53と第1ロータ51との間に、これらと非接触状態で配列して構成された軟磁性体列を備えている。この軟磁性体列を構成する複数のコア521は、コア521よりも透磁率が低い部分522を挟んで周方向に等間隔で配列されている。
【0133】
各コア521は、例えば複数の鋼板を積層して形成されている。そして、これらのコア521から成る軟磁性体列は、主軸25に形成された環状のフランジ27に固定されている。これにより、第2ロータ52は、主軸25と一体に回転するようになっている。
【0134】
なお、上記軟磁性体列を構成する各コア521の長さ(主軸25の軸心方向の長さ)は、ステータ53の鉄芯531の軸心方向の長さと同程度とされている。
【0135】
また、第1回転機3のステータ53の電機子磁極の個数をp、第1ロータ51の磁極の個数(永久磁石512の個数)をq、第2ロータ52の軟磁性体のコア521の個数をrとしたときに、これらのp,q,rは、以下の式(35)の関係を満たすように設定されている。
【0136】
【数35】
【0137】
但し、m≠1。なお、p,qは偶数であり、mは正の有理数である。
【0138】
この場合、例えば、p=4、q=8、r=6、m=2に設定すれば、上記式(35)の関係が満たされる。
【0139】
以上のように第1回転機3のステータ53の電機子磁極の個数pと、第2ロータ52のコア521の個数qと、第1ロータ51の磁極の個数(永久磁石512の個数)rとが、上記式(35)の関係を満たすように構成された第1回転機3では、第1ロータ51及び第2ロータ52の両方又は一方の回転時に、第1ロータ51の磁極から第2ロータ52のコア521を経由してステータ53の各相のコイル532に作用する磁束(鎖交磁束)の時間的変化率dΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dt(但し、ΨuはU相、ΨvはV相、ΨwはW相の各コイルに作用する鎖交磁束)は、以下の式(36)、式(37)、式(38)により表される。
【0140】
【数36】
【0141】
【数37】
【0142】
【数38】
【0143】
但し、Ψf:第1ロータ51の磁極の磁束の最大値、θe2:ステータ53の3相コイル532のうちの1つの基準コイル(例えば、U相のコイル)に対する第2ロータ52の電気角度位置、ωe2:第2ロータ52の電気角速度、θe1:上記基準コイルに対する第1ロータ51の電気角度位置、ωe1:第1ロータ51の電気角速度。
【0144】
なお、上記式(36)〜式(38)では、第1ロータ51の1つの磁極が上記基準コイルに対向する状態でのθe1の値を“0”とし、第2ロータ52の1つのコア521が上記基準コイルに対応する状態でのθe2の値を“0”としている。また、上記“電気角度”は、機械角に電機子磁極の極対数(N極及びS極の対の個数(=p/2))を乗じた角度を意味する。
【0145】
この場合、第1ロータ51の磁極から、第2ロータ52のコア521を経由せずに直接的に各コイル532に作用する磁束は、コア521を経由する磁束に対して微小であるので、上記式(36)〜式(38)のdΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dtは、ステータ53に対する第1ロータ51や第2ロータ52の回転に伴なって、各相のコイル532に発生する逆起電力(誘起電圧)を表すものとなる。
【0146】
そこで、本実施形態では、ステータ53のコイル532の通電によって発生する回転磁界の磁束ベクトルの回転角度位置θmf(電気角での回転角度位置)と、その時間的変化率(微分値)である角速度ωmf(電気角速度)とが、それぞれ、以下の式(39),式(40)の関係を満たすように、ステータ53のコイル532の通電電流を第1回転機制御部60によりPDU10を介して制御する。
【0147】
【数39】
【0148】
但し、θmf:回転磁界の磁束ベクトルの回転角度位置、θe2:第2ロータ52の電気角度位置、θe1:第1ロータ51の電気角度位置、c:電機子磁極の対極数、θ2:第2ロータ52の機械角度位置、θ1:第1ロータ51の機械角度位置。
【0149】
【数40】
【0150】
但し、ωmf:回転磁界の磁束ベクトルの角速度、ωe2:第2ロータ52の電気角速度、ωe1:第1ロータ51の電気角速度、c:電機子磁極の対極数、ω2:第2ロータ52の機械角速度、ω1:第1ロータ51の機械角速度。
【0151】
上記のように、ステータ53に回転磁界を発生させることにより、第1回転機3の運転を適切に行なって、第1ロータ51及び第2ロータ52にトルクを発生させることができる。このとき、ステータ53のコイル532への供給電力(入力電力)又はコイル532からの出力電力を、回転磁界の電気角での角速度ωmfで除したものを、この回転磁界の等価トルクTmf(以下、回転界磁等価トルクTmfという)と定義し、第1ロータ51に発生するトルクをT1、第2ロータ52に発生するトルクをT2としたときに、Tmf,T1,T2の間には、以下の式(41)の関係が成立する。なお、ここでは、銅損、鉄損等によるエネルギー損失は無視し得る程度に微小であるとする。
【0152】
【数41】
【0153】
上記式(40)により示される角速度の相互関係、及び上記式(41)により示されるトルクの相互関係は、シングルピニオン型の遊星歯車装置のサンギヤ,リングギヤ,キャリアの回転速度の相互関係、及びトルクの相互関係と同じ関係となる。すなわち、電機子磁極及び第1ロータ51の一方がサンギヤ、他方がリングギヤに対応し、第2ロータ52がキャリアに対応する。
【0154】
したがって、第1回転機3は、遊星歯車装置としての機能(より一般的には、差動装置としての機能)を持つことになり、電機子磁極と第1ロータ51と第2ロータ52の回転が、式(41)で示される共線関係を保って行われる。
【0155】
そして、この場合、第1回転機3は、一般の遊星歯車機構と同様にエネルギーの分配・合成機能を持つ。すなわち、ステータ53と第2ロータ52のコア521(軟磁性体)と第1ロータ51の永久磁石512との間で形成される磁気回路を介して、ステータ53のコイル532と第2ロータ52と第1ロータ51との間でのエネルギーの分配・合成が可能となる。
【0156】
例えば、第1ロータ51及び第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532に電力(電気エネルギー)を供給して回転磁界を発生させることにより、コイル532に供給した電気エネルギーを、上記磁気回路を介して第1ロータ51及び第2ロータ52の回転運動エネルギーに変換して、第1ロータ51及び第2ロータ52を回転駆動する(第1ロータ51及び第2ロータ52にトルクを発生させる)ことができる。この場合、コイル532に入力される電気エネルギーは、第1ロータ51及び第2ロータ52に分配される。
【0157】
また、例えば、第1ロータ51を外部から回転駆動する(第1ロータ51に外部から回転運動エネルギーを与える)と共に、第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532から電気エネルギーを出力させる(コイル532による発電を行う)ように回転磁界を発生させることにより、上記磁気回路を介して第2ロータ52の回転運動エネルギーとコイル532の発電エネルギーとに変換し、第2ロータを回転駆動すると共に、コイル532による発電を行うことができる。この場合、第1ロータ51に入力されるエネルギーが、第2ロータ52とコイル532とに分配される。
【0158】
さらに、例えば、第1ロータ51を外部から回転駆動する(第1ロータ51に外部から回転運動エネルギーを与える)と共に、第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532に電気エネルギーを供給して回転磁界を発生させることにより、第1ロータ51に供給した回転運動エネルギーとコイル532に供給した電気エネルギーとを、上記磁気回路を介して第2ロータの回転運動エネルギーに変換し、第2ロータ52を回転駆動することができる。この場合、第1ロータ51に入力されるエネルギーとコイル532に供給されるエネルギーとが合成されて、第2ロータ52に伝達される。
【0159】
このように、第1回転機3においては、第1ロータ51及び第2ロータ52の各回転運動エネルギーと、コイル532の電気エネルギーとの間の相互変換を行いつつ、第1ロータ51、第2ロータ52、及びコイル532との間で、エネルギーの分配と合成を行うことが可能である。
【0160】
次に、図3,4を参照して、上述した第1回転機3を用いて構成された動力システムの構成と機能について説明する。
【0161】
図3を参照して、本実施の形態の動力システムは、車両(図示しない)の左右の駆動輪24,24を駆動するものであり、動力原であるエンジン20(本発明の原動機に相当する)と、動力機構30と、動力機構30における協調制御を行う制御装置200とを備えている。
【0162】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等により構成された電子ユニットであり、該CPUに動力機構の制御用プログラムを実行させることによって、該CPUが、第1回転機3の作動を制御する第1回転機制御部60、第2回転機4の作動を制御する第2回転機制御部250、エンジン260の作動を制御するエンジン制御部260、及び、第1回転機3と第2回転機4とエンジン20の協調制御を行う協調制御部210として機能する。
【0163】
また、制御装置200は、バッテリ11(本発明の蓄電手段に相当する)に入出される電圧を変圧するVCU(Voltage Control Unit)、第1回転機3に対する駆動電力の供給と第1回転機で生じる発電電力の回収を行うPDU(Power Drive Unit)、及び、第2回転機4に対する駆動電力の供給と第2回転機で生じる発電電力の回収を行うPDUを備えている。
【0164】
動力機構30は、2個のロータ(第1ロータ51及び第2ロータ52)を有する第1回転機3と、1個のロータ(ロータ41)を有する第2回転機4を用いて構成されている。エンジン20の出力軸26は軸受け26aにより回転自在に支持されている。また、主軸25は軸受け25a,25bにより回転自在に支持されて、出力軸26と同一軸線上に配置されている。
【0165】
第1回転機3の第1ロータ51及び第2回転機4のロータ42は、主軸25と一体に回転自在に連結されている。また、第1回転機3の第2ロータ52は、エンジン20の出力軸26と一体に回転自在に連結されている。また、主軸25は伝達機構21を介して差動ギヤ機構22と連結されている。
【0166】
第1回転機3は上述したように遊星歯車装置としての機能を有している。そのため、動力機構30は、図4に示した1共線3要素の共線の関係を保って作動する構成となっている。
【0167】
図4は、第2回転機4の回転速度MG2(=駆動輪24,24の回転速度)と、エンジン20の回転速度ENGと、第1回転機3の回転速度MG1との速度線図である。この場合、第1回転機3の回転速度MG1及び第2回転機4の回転速度MG2を制御することによって、エンジン20の回転速度ENGに対する駆動輪24,24の回転速度OUTPUTを無段階に変速することができる。
【0168】
また、図4に示したように、第1動力システムの第1回転機3と第2回転機4の間、及び第2動力システムの第1回転機3と第2回転機5の間では、発電電力の授受(電気パス)によるエネルギーの分配も可能である。
【0169】
次に、図5を参照して、図3に示した協調制御部210の第1の実施形態の構成(図中210aで示す)と機能について説明する。
【0170】
協調制御部210aには、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量Ap、駆動軸23の回転速度(車両の走行速度)Vcar、バッテリ11の要求電力Bat_req(バッテリ11の充電状態等により決定される)、及びエンジン20の回転速度Vengが入力される。そして、協調制御部210は、これらの入力に基いて、第1回転機3に対するトルク指令値Mg1Tr_cと、第2回転機3に対するトルク指令値Mg2Tr_cと、エンジン20に対する出力要求値EngPw_reqとを決定する。
【0171】
協調制御部210aは、アクセルペダルの踏み込み量Apと駆動軸23の回転速度Vcarに対して、最適な駆動軸要求トルクDrvTr_reqを選択する駆動軸要求トルクマップ211、駆動軸要求トルクDrvTr_reqに駆動軸23の回転速度Vcarを乗じて、駆動軸要求出力DrvPw_reqを出力する乗算器212、駆動軸要求出力DrvPw_reqにバッテリ11の要求電力Bat_reqを加えて、エンジン要求出力EngPw_reqを出力する加算器213、エンジン要求出力EngPw_reqに対して、エンジン20の最適な目標回転速度EngV_tgtを選択するエンジン効率マップ220、エンジン20の目標回転速度EngV_tgtと実回転速度Vengとの差を算出する減算器221、及びエンジン20の目標回転速度EngV_tgtと実回転速度Vengとの差を減少させるための第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cを算出する回転速度制御器222を備えている。
【0172】
さらに、協調制御部210aは、第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cに、1/(1+α)(αは、第1回転機3のステータ43の電機子磁極の極対数に対する第1ロータ51の磁極の極対数の比)を乗じて、第1回転機3のステータ53に対するトルク指令値である第1回転機トルク指令値Mg1Tr_cを出力する分配器224、第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cに、α/(1+α)を乗じて、第1回転機3の第1ロータ51に対するトルク指令値Mg1R1Tr_cを出力する分配器223、及び、駆動軸要求トルクDrvTr_reqから第1回転機3の第1ロータ51に対するトルク指令値Mg1R1Tr_cを減じて、第2回転機4に対するトルク指令値Mg2Tr_cを出力する減算器214を備えている。
【0173】
なお、駆動軸要求トルクマップ211及びエンジン効率マップ220は、実験やコンピュータシミュレーション等の結果に基づいて作成され、これらのマップのデータは予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、駆動軸要求トルクマップ211に代えて、アクセルペダルの踏み込み量Ap及び駆動軸23の回転速度Vcarを入力して、駆動軸要求トルクDrvTr_reqを算出する相関式を用いてもよい。また、エンジン効率マップ220に代えて、エンジン要求出力EngPw_reqを入力して、エンジン20の目標回転速度EngV_tgtを算出する相関式を用いてもよい。
【0174】
以上の構成により、協調制御部210aは、アクセルの踏み込み量Apと、車両の状況(駆動軸23の回転速度Vcar,エンジン20の回転速度Veng,バッテリ11の要求電力Bat_req)とに応じて、エンジン20を効率良く運転させるように、第1回転機3に対するトルク指令値Mg1Tr_cと、第2回転機3に対するトルク指令値Mg2Tr_cと、エンジン20に対する出力要求値EngPw_reqとを適切に決定することができる。
【0175】
次に、図6を参照して、図3に示した協調制御部210の第2の実施形態の構成(図中、210bで示す)と機能について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0176】
第2の実施形態の協調制御部210bは、図6に示した駆動軸要求トルクマップ211に代えて、駆動軸要求出力マップ230を備えている。駆動軸要求出力マップ230は、アクセルペダルの踏み込み量Apと駆動軸23の回転速度Vcarに対して、最適な駆動軸要求出力DrvPw_reqを出力する。そして、協調制御部210bは、駆動軸要求出力DrvPw_reqを駆動軸23の回転速度Vcarで除して駆動軸要求トルクDrvTr_reqを出力する除算器231を備えている。
【0177】
このようにして、駆動軸要求出力DrvPw_reqと駆動軸要求トルクDrvTr_reqが出力された後の処理は、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと同様である。
【0178】
なお、駆動軸要求出力マップ230は、実験やコンピュータシミュレーション等の結果に基づいて作成され、駆動軸要求出力マップ230のデータは予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、駆動軸要求出力マップ230に代えて、アクセルペダルの踏み込み量Ap及び駆動軸23の回転速度Vcarを入力して、駆動軸要求出力DrvPw_reqを算出する相関式を用いてもよい。
【0179】
なお、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと第2の実施形態の協調制御部210bにおいて、バッテリ11の要求電力Bat_reqを考慮しない場合、及びエンジン20の回転速度Vengを考慮しない場合、すなわち、第2回転機4のみを制御する場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0180】
また、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと第2の実施形態の協調制御部210bでは、エンジン20の実回転速度Vengと目標回転速度EngV_tgtとの差を減少させる回転速度のフィードバック制御を行う構成としたが、エンジン20の目標回転速度と、他の回転要素の速度共線図での関係から、第1回転機の回転磁界の目標回転速度を設定し、この目標回転速度と第1回転機の実回転速度との差を減少させる回転速度のフィードバック制御を行う構成としてもよい。
【0181】
また、上記記載における「接続」や「連結」は、減速機、増速機、変速機、クラッチ等を介して行ってもよい。
【0182】
また、上記各種の演算処理で使用される変数に対して、マップやフィルタ等を用いて適宜の補正を行うようにしてもよい。
【0183】
また、図6の乗算器212や図7の除算器231に代えて、マップを用いて駆動軸出力や駆動軸トルクを求める構成としてもよい。
【0184】
また、トルク要求値ではなく、駆動輪の半径等を考慮して、平進方向の力の要求値を用いてもよい。
【0185】
また、第1回転機及び第2回転機のトルクは電機子コイルの通電量で制御されるため、トルク要求として電流要求を用いてもよい。
【0186】
また、車両の運転者のフィーリングを考慮する等の目的を果たすために、アクセルの踏み込み量になまし処理等の補正を適宜行ってもよい。
【0187】
また、第1回転機及び第2回転機に、ロータの内側にステータを配置したアウターロータ構成の回転機を用いてもよい。
【0188】
また、回転速度は、所定時間あたり移動角度で表してもよく、所定時間あたりの回転数で表してもよい。
【0189】
次に、図7〜図10を参照して、第1回転機制御部60の構成と動作について説明する。図8を参照して、第1回転機制御部60は、いわゆるd−qベクトル制御により第1回転機3のステータ53の各相のコイルの通電電流(相電流)を制御する。すなわち、第1回転機制御部60は、第1回転機3のステータ53の3相分のコイルを、2相直流の回転座標であるd−q座標系での等価回路に変換して取り扱う。
【0190】
ステータ53に対応する等価回路は、d軸上の電機子(以下、d軸電機子という)と、q軸上の電機子(以下、q軸電機子という)とを有する。そして、d−q座標系は、3相コイルのうちの基準コイルに対するd軸の位相を、上記式(39)により算出される回転角度位置θmfとし、d軸と直交する方向をq軸として、第1ロータ51及び第2ロータ52と共に回転する回転座標系となる。
【0191】
第1回転機制御部60は、位置センサ70(レゾルバ、エンコーダ等)により検出される第1ロータ51の機械角度位置θ1と、位置センサ71により検出される第2ロータ52の機械角度位置θ2とにより、上記式(39)により、回転角度位置θmfを算出する電気角変換器67と、相電流センサ72,73により検出されるU相電流検出値iu_sとW相電流検出値iw_sを、回転角度位置θmfに基づいて、d軸電機子のコイルに流れる電流(以下、d軸電流という)の検出値であるd軸電流検出値id_s、及びq軸電機子のコイルに流れる電流(以下、q軸電流という)の検出値であるq軸電流検出値iq_sに変換する3相/dq変換器65と、回転角度位置θmfを微分して電気角速度ωmfを算出する電気角速度算出器66とを備えている。
【0192】
さらに、第1回転機制御部60は、外部から与えられるd軸電流の指令値であるd軸電流指令値id_cとd軸電流検出値id_sとの差Δidを求める減算器61と、外部から与えられるq軸電流の指令値であるq軸電流指令値iq_cとq軸電流検出値iq_sとの差Δiqを求める減算器62と、Δidを減少させるようにd軸電機子のコイルの端子間電圧の指令値であるd軸電圧指令値Vd_c、及びΔiqを減少させるようにq軸電機子のコイルの端子間電圧の指令値であるq軸電圧指令値Vq_cを決定する電流制御器63と、d軸電圧指令値Vd_c及びq軸電圧指令値Vq_cを、回転角度位置θmfに基づいて、3相電圧の指令値であるU相電圧指令値Vu_c,V相電圧指令値Vv_c,W相電圧指令値Vw_cに変換するdq/3相変換器64とを備えている。
【0193】
また、PDU10は、Vu_c,Vv_c,Vw_cに応じて、インバータを構成するスイッチング素子(トランジスタ等)をPWM制御によりスイッチングすることにより、第1回転機3のステータ53の3相コイルの通電制御を実行する。
【0194】
次に、d−q座標系における第1回転機3のモデルの電圧方程式は、以下の式(42)で表される。
【0195】
【数42】
【0196】
但し、Vd:d軸電圧、Vq:q軸電圧、id:d軸電流、iq:q軸電流、Ra:d軸電機子及びq軸電機子のコイルの抵抗、Ld:d軸電機子のコイルのインダクタンス、Lq:q軸電機子のコイルのインダクタンス、Ψa:誘起電圧定数、ω:回転磁界の磁束ベクトルの角速度。
【0197】
図9は、上記式(42)の関係をブロック線図で表したものである。図9に示したように、d軸電流idにより生じる電圧成分81(id・(ωLd+ωΨa))が、減算器82でq軸電圧Vqから減じられる。また、q軸電流iqにより生じる電圧成分83(iq・ωLq)が、加算器80でd軸電圧Vdに加えられる。
【0198】
このように、d軸電圧Vdはq軸電流iqの影響を受け、また、q軸電圧Vqはd軸電流idの影響を受ける。そのため、d軸電流idとq軸電流iqを独立して制御することができない。
【0199】
そこで、電流制御器63は、図10に示したように、d軸とq軸間の干渉を回避するための非干渉制御器90aを備えている。非干渉制御器90aは、以下の式(43)で示したように、PI(比例・積分)制御器91によりΔidを減少させるように決定されるd軸電圧Vdaから、減算器92で干渉成分を減じて、d軸電圧指令値Vd_cを算出する。
【0200】
【数43】
【0201】
また、非干渉制御器90aは、以下の式(44)で示したように、PI(比例・積分)制御器91によりΔiqを減少させるように決定されるq軸電圧Vqaから、加算器93で干渉成分を加えて、q軸電圧指令値Vq_cを算出する。
【0202】
【数44】
【0203】
ここで、上記式(42)から、idとiqは以下の式(45),式(46)で表される。
【0204】
【数45】
【0205】
【数46】
【0206】
そして、上記式(43)のVd_cを上記式(45)のVdに代入し、また、上記式(44)のVq_cを上記式(46)に代入して、ω=ωmfとすると、以下の式(47),式(48)の形になる。
【0207】
【数47】
【0208】
【数48】
【0209】
上記式(47),式(48)により、d軸電流及びd軸電圧の制御と、q軸電流及びq軸電圧の制御を、1次系の伝達関数により独立して行うことができることがわかる。
【0210】
次に、図11は、図10に示した非干渉制御器90aを非干渉制御器90bに置き換えて構成したものである。
【0211】
非干渉制御器90aは、d軸電流検出値id_s及びq軸電流検出値iq_sを用いて、干渉成分を算出したが、非干渉制御器90bは、以下の式(49),式(50)で示したように、d軸電流指令値id_c及びq軸電流指令値iq_cを用いて干渉成分を算出する。
【0212】
【数49】
【0213】
但し、iq_c:q軸電流指令値。
【0214】
【数50】
【0215】
但し、id_c:d軸電流指令値。
【0216】
ここで、電流制御器63は、d軸電流指令値id_cとd軸電流検出値id_sとの差Δidを減少させるようにd軸電圧指令値Vd_cを決定すると共に、q軸電流指令値iq_cとq軸電流検出値iq_cとの差Δiqを減少させるようにq軸電圧指令値Vq_cを決定する。そのため、id_c≒id_sに制御され、また、iq_c≒iq_sに制御されている。
【0217】
したがって、上述した非干渉制御器90aを用いる場合と同様に、d軸とq軸間に生じる干渉を回避して、d軸電流及びd軸電圧の制御と、q軸電流及びq軸電圧の制御を、1次系の伝達関数により独立して行うことができる。
【0218】
なお、本実施の形態では、電流制御器63に非干渉制御器90a,90bを備えた構成を示したが、非干渉制御器90a,90bを備えない場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0219】
また、本実施の形態では、第1回転機3のステータ53にU,V,Wの3相のコイルを備えたが、3相以外の相数のコイルによって、回転磁界(移動磁界)を発生させるようにしてもよい。
【0220】
また、本実施の形態では、第1回転機制御部60により、第1回転機3をd−q座標系での等価回路に変換して制御したが、このような変換を行わない場合であっても、上記式(39)又は上記式(40)関係を維持するように、第1回転機3のステータ53の3相コイル532の通電制御を行うことで、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0221】
3…第1回転機、4…第2回転機、11…バッテリ、20…エンジン、23…駆動軸、51…第1回転機の第1ロータ、52…第1回転機の第2ロータ、53…第1回転機のステータ、60…第1回転機制御部、63…電流制御器、90a,90b…非干渉制御器、200…制御装置、210…協調制御部、250…第2回転機制御部、260…エンジン制御部、512…永久磁石、521…コア(軟磁性体)、532…コイル、533…電機子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロータを有する回転機を用いた動力機構とその制御装置を備えた動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のロータを有する回転機として、例えば、第1回転軸に連結された第1ロータと、第2回転軸に連結された第2ロータと、ステータとを備えた回転機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された回転機においては、第1回転軸と第2回転軸が同心状に配置されており、第1ロータ及び第2ロータとステータは、第1回転軸の径方向に内側からこの順で配置されている。そして、第1ロータは、周方向に並んだ複数の第1永久磁石及び第2永久磁石を有しており、第1永久磁石及び第2永久磁石は、第1ロータの軸線方向に並列して配置されている。
【0004】
また、第2ロータは、各々が周方向に並んだ複数の第1コア及び第2コアを有している。第1コア及び第2コアは軟磁性体で構成されており、第1コアは第1ロータの第1永久磁石側の部分とステータの間に配置され、第2コアは第1ロータの第2永久磁石側の部分とステータの間に配置されている。
【0005】
また、ステータは、周方向に回転する第1回転磁界及び第2回転磁界を生じさせるように構成され、第1回転磁界は第1ロータの第1永久磁石側の部分との間に発生し、第2回転磁界は第1ロータの第2永久磁石側の部分との間に発生する。第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極の数と、第1回転磁界及び第2回転磁界の磁極の数と、第1コア及び第2コアの数とは、同一に設定されている。
【0006】
そして、ステータへの電力供給による第1回転磁界及び第2回転磁界の発生に伴なって、第1回転磁界及び第2回転磁界の磁極と第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極により、第1コア及び第2コアが磁化されることによって、これらの要素の間に磁力線が発生する。また、この磁力線の磁力による作用により、第1ロータ及び第2ロータが駆動されて、第1回転軸及び第2回転軸から動力が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−67592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された回転機は、その構成上、複数の第1コアから成る第1軟磁性体列と複数の第2コアから成る第2軟磁性体列を備えることが必須であるため、回転機が大型化するという不都合があった。さらに、特許文献1に記載された電動機は、その構成上、第1回転磁界及び第2回転磁界の回転速度と第2ロータの回転速度との速度差と、第2ロータの回転速度と第1ロータの回転速度との速度差とが同じになる速度関係しか成立しないため、設計の自由度が低いという不都合があった。
【0009】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、小型化を図ることができると共に、設計の自由度を高めることができる回転機を用いた動力機構と、この動力機構の作動を適切に制御する制御装置とを備えた動力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、前記第2ロータと接続された原動機と、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機とを備えた動力システムに関する。
【0011】
前記第1回転機においては、ステータの複数の電機子磁極による回転磁界が発生すると、第2ロータのコア部が電機子磁極と第1ロータの磁極によって磁化されて、磁極とコア部と電機子磁極を結ぶ磁力線が発生する。
【0012】
この場合、前記第1回転機を例えば以下の条件(a)及び(b)の下で構成したときには、回転磁界、第1ロータ、及び第2ロータ間の速度と位置の関係は、次のように表される。また、第1回転機の等価回路は図12のように示される。
【0013】
(a) ステータ100がU,V,Wの3相の電機子101,102,103を有する。
【0014】
(b) 電機子磁極が2個、第1ロータ110の磁極111の数が4、すなわち、電機子磁極のN極及びS極を1組とする極対数が1、磁極のN極及び及びS極を1組とする極対数が2、第2ロータ120のコア部が3個(121,122,123)である。
【0015】
なお、本明細書で用いる「極対」は、N極及びS極の1組を意味する。
【0016】
この場合、3個のコア部のうちの第1コア121を通過する磁極の磁束Ψk1は、以下の式(1)で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
但し、Ψf:磁極の磁束の最大値、θ1:U相コイルに対する磁極の回転角度位置、θ2:U相コイルに対する第1コア121の回転角度位置。
【0019】
そのため、第1コア121を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu1は、上記式(1)にcosθ2を乗じた以下の式(2)で表すことができる。
【0020】
【数2】
【0021】
同様に、第2コア122を通過する磁極の磁束Ψu2は、次式(3)で表される。
【0022】
【数3】
【0023】
U相コイルに対する第2コア122の回転角度位置は、第1コア121に対して2π/3だけ進んでいるため、上記式(3)では、θ2に2π/3が加算されている。
【0024】
したがって、第2コア122を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu2は、上記式(3)にcos(θ+2π/3)を乗じた以下の式(4)で表される。
【0025】
【数4】
【0026】
同様に、第3コア123のコア部123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψu3は、以下の式(5)で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
図12に示した第1回転機では、コア部121,122,123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψuは、上記式(2),式(4),式(5)で表される磁束Ψu1,Ψu2,Ψu3を足し合わせた以下の式(6)で表される。
【0029】
【数6】
【0030】
また、上記式(6)を一般化すると、第2ロータ120のコア部121,122,123を介してU相コイルを通過する磁極の磁束Ψuは、以下の式(7)で表される。
【0031】
【数7】
【0032】
但し、a:第1ロータの磁極の極対数、b:第2ロータのコア部の数、c:ステータの電機子磁極の極対数。
【0033】
また、上記式(7)を変形すると、以下の式(8)が得られる。
【0034】
【数8】
【0035】
上記式(8)において、b=a+cとすると共に、cos(θ+2π)=cosθにより整理すると、以下の式(9)が得られる。
【0036】
【数9】
【0037】
上記式(9)をさらに整理すると以下の式(10)が得られる。
【0038】
【数10】
【0039】
上記式(10)の右辺の第2項の値は、a−c≠0を条件として整理すると、以下の式(11)に示したようにゼロとなる。
【0040】
【数11】
【0041】
また、上記式(10)の右辺の第3項の値も、a−c≠0を条件として整理すると、以下の式(12)に示したようにゼロとなる。
【0042】
【数12】
【0043】
以上により、a−c≠0のときには、第2ロータ120のコア部121,122,123を介してステータ100のU相コイルを通過する磁極の磁束ΨUは、以下の式(13)で表される。
【0044】
【数13】
【0045】
また、上記式(13)において、a/c=αとすると、以下の式(14)が得られる。
【0046】
【数14】
【0047】
さらに、上記式(14)において、c・θ2=θe2とすると共に、c・θ1=θe1とすると、以下の式(15)が得られる。
【0048】
【数15】
【0049】
ここで、θe2は、U相コイルに対するコア部の回転角度位置θ2に、電機子磁極の極対数cを乗じていることから明らかなように、U相コイルに対するコア部の電気角度位置を表している。また、θe1は、U相コイルに対する第1ロータ110の磁極の回転角度位置θ1に、電機子磁極の極対数cを乗じていることから明らかなように、U相コイルに対する磁極の電気角度位置を表している。
【0050】
同様にして、コア部を介してV相コイルを通過する磁極の磁束Ψvは、V相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ遅れていることから、以下の式(16)で表される。
【0051】
【数16】
【0052】
また、コア部を介してW相コイルを通過する磁極の磁束Ψwは、W相コイルの電気角度位置がU相コイルに対して電気角2π/3だけ進んでいることから、以下の式(17)で表される。
【0053】
【数17】
【0054】
また、上記式(15)〜式(17)で表される磁束Ψu,Ψv,Ψwを時間微分すると、以下の式(18)〜式(20)が得られる。
【0055】
【数18】
【0056】
【数19】
【0057】
【数20】
【0058】
但し、ωe1:θe1の時間微分値(ステータに対する第1ロータの角速度を電気角速度に変換した値)、ωe2:θe2の時間微分値(ステータに対する第2ロータの角速度を電気角速度に変換した値)。
【0059】
ここで、コア部121,122,123を介さずにU相〜W相のコイルを直接通過する磁束は極めて小さく、その影響は無視できる。そのため、コア部121,122,123を介してU相〜W相のコイルをそれぞれ通過する磁極の磁束Ψu,Ψv,Ψw(上記式(18)〜式(20))の時間微分値dΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dtは、ステータ100の電機子列に対して、第1ロータ110の電極及び第2ロータ120のコア部が回転(移動)するのに伴なって、U相〜W相のコイルに発生する逆起電圧(誘導起電圧)をそれぞれ表す。
【0060】
このことから、U相のコイルに流れる電流Iu,V相のコイルに流す電流Iv,W相のコイルに流れる電流Iwは、以下の式(21),式(22),式(23)で表される。
【0061】
【数21】
【0062】
【数22】
【0063】
【数23】
【0064】
但し、I:U相〜W相のコイルを流れる電流の振幅(最大値)である。
【0065】
また、上記式(21)〜式(23)により、U相コイルに対する回転磁界のベクトルの電気角度位置θmfは以下の式(24)で表され、U相コイルに対する回転磁界の電気角速度ωmfは以下の式(25)で表される。
【0066】
【数24】
【0067】
【数25】
【0068】
よって、U相のコイルに電流Iu、V相のコイルに電流Iv、W相のコイルに電流Iwが流れることによって、第1ロータ及び第2ロータに出力される機械的出力(動力)Wは、リラクタンス分を除くと、以下の式(26)で表される。
【0069】
【数26】
【0070】
上記式(26)に、上記式(18)〜式(23)を代入して整理すると、以下の式(27)が得られる。
【0071】
【数27】
【0072】
さらに、この機械的出力Wと、磁極を介して第1ロータに伝達されるトルク(以下、第1トルクという)T1と、コア部を介して第2ロータに伝達されるトルク(以下、第2トルクという)T2と、第1ロータの電気角速度ωe1及び第2ロータの電気角速度ωe2との関係は、以下の式(28)で表される。
【0073】
【数28】
【0074】
上記式(27)と式(28)とを比較することにより、第1トルクT1と第2トルクT2は、以下の式(29),式(30)で表される。
【0075】
【数29】
【0076】
【数30】
【0077】
また、電機子列に供給された電力及び回転磁界の電気角速度ωmfと等価のトルクを駆動用等価トルクTeとすると、電機子列に供給された電力と機械的出力Wは、損失を無視すれば等しくなるため、上記式(25)と式(27)の関係から、駆動用等価トルクTeは以下の式(31)で表される。
【0078】
【数31】
【0079】
さらに、上記式(29)〜式(31)より、以下の式(32)が得られる。
【0080】
【数32】
【0081】
上記式(32)で表されるトルクの関係、及び上記式(25)で表される電気角速度の関係は、遊星歯車装置のサンギヤ、リングギヤ及びキャリアにおける回転速度及びトルクの関係と全く同じである。
【0082】
さらに、上述したように、b=a+c及びa−c≠0を条件として、上記式(25)の電気角速度の関係及び上記式(32)のトルクの関係が成立する。この条件b=a+cは、磁極の数をp、電気子磁極の数をqとすると、b=(p+q)/2、すなわち、b/q=(1+p/q)/2で表される。
【0083】
ここで、p/q=mとすると、b/q=(1+m)/2となることから、上述したb=a+cという条件が成立していることは、電機子磁極の数と磁極の数とコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2であることを示している。また、上述したa−c≠0という条件が成立していることは、m≠1.0であることを示している。
【0084】
本発明の第1回転機機においては、所定回転方向の所定区間で、電機子磁極の数と磁極の数とコア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(m≠1.0)に設定されているので、上記式(25)に示した電気角速度の関係、及び上記式(32)に示したトルクの関係が成立し、第1回転機が適正に作動することがわかる。
【0085】
また、上述した従来の場合と異なり、第2ロータが単一のコア部の列だけで構成されているため、第1回転機の小型化を図ることができる。さらに、上記式(25)及び式(32)から明らかなように、α=a/c、すなわち、電機子磁極の極対数に対する磁極の極対数の比を設定することによって、回転磁界、第1ロータ、及び第2ロータ間の電気角速度の関係と、ステータ、第1ロータ、及び第2ロータ間のトルクの関係を任意に設定することができる。
【0086】
したがって、第1回転機の設計の自由度を高めることができる。そして、これらの効果は、複数の電機子のコイルの相数が上述した3相以外の場合であっても同様に得ることができる。そして、その上で、前記第2ロータと接続された前記原動機と、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力及び前記第1回転機との間での電力の授受が可能な前記第2回転機とを備えることで、前記駆動軸と前記原動機と前記第1回転機と前記第2回転機を1共線3要素の態様で動作させる動力機構を、小型化と設計の自由度を高めて構成することができる。
【0087】
[第1発明]
第1発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、所定の要求出力又は要求トルクが前記駆動軸に出力されるように、前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機のうちの少なくとも前記第2回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0088】
第1発明において、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記制御装置によって、少なくとも前記第2回転機を制御することにより、前記駆動軸に直接的に動力を伝達するか、或いは前記第1回転機との電力の入出力を介して前記第1回転機を作動させることにより、前記駆動軸に前記要求出力又は前記要求トルクを生じさせることができる。
【0089】
[第2発明]
第2発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、所定の要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクの過不足分を、前記第2回転機の出力又はトルクで補うように、前記第2回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0090】
第2発明において、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクが不足するときに、前記制御装置により前記第2回転機を制御して、前記駆動軸に直接的に動力を伝達するか、或いは前記第1回転機との電力の入出力を介して前記第1回転機を作動させることにより、前記駆動軸に前記要求出力又は前記要求トルクを生じさせることができる。
【0091】
[第3発明]
第3発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することによって前記第1ロータに出力されるトルクと、該駆動軸の要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記回転軸に出力させるトルクを設定する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0092】
第3発明においては、前記第1ロータは前記駆動軸に接続され、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。
【0093】
そのため、前記要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することにより前記第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記駆動軸に出力するトルクを設定することにより、前記駆動軸の出力トルクを前記要求トルクに近づけることができる。
【0094】
[第4発明]
第4発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求トルクに応じて設定された前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御し、該制御により前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力させるトルクを制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0095】
第4発明においては、前記第1ロータは前記駆動軸に接続され、前記第2回転機は、前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成されている。そのため、前記原動機の目標回転速度と実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御すると共に、前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと前記駆動軸の要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力するトルクを制御することによって、前記駆動軸の回転速度と出力トルクを制御することができる。
【0096】
[第5発明]
第5発明は、上述した前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機とを有する動力機構と、前記駆動軸の要求出力に応じて前記原動機の要求出力を設定し、該原動機の要求出力に基づいて設定した前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記第1回転機を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0097】
第5発明においては、前記第1回転機の前記第1ロータが前記駆動軸に接続されている。そのため、前記原動機の目標回転速度と前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記制御装置により前記第1回転機を制御することによって、前記原動機の実回転速度を前記目標回転速度に速やかに収束させることができる。
【0098】
[第6発明]
第6発明は、第5発明において、前記第1回転機又は前記第2回転機に駆動用電力を供給すると共に、前記原動機の出力軸の回転により前記第1回転機又は前記第2回転機で生じる発電電力により充電される蓄電手段を備え、前記制御装置は、前記駆動軸要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機に対する要求出力を設定することを特徴とする。
【0099】
第6発明においては、前記蓄電手段に対する電力の入力要求に応じて前記原動機の出力を増加させる必要がある。また、前記蓄電手段に対する電力の出力要求に応じて前記原動機の出力を減少させることが可能である。そこで、前記制御装置によって、前記要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機の目標出力を設定することにより、該電力の入出力要求に適合した出力を前記原動機に出力させることができる。
【0100】
[第7発明]
第7発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの速度を検出する第1速度検出手段と、前記第2ロータの速度を検出する第2速度検出手段と、前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータにmを乗じた値との差に、同期するように前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0101】
上記式(25)のαはa(磁極の極対数)/c(電機子磁極の極対数)であるため、m(=磁極の数/電機子磁極の数)と等しくなる。そのため、上記式(25)は以下の式(33)で表される。
【0102】
【数33】
【0103】
但し、ωmf:回転磁界の電気角速度、ωe2:第2ロータの電気角速度、ωe1:第1ロータの電気角速度、c:電機子磁極の極対数、ω2:第2ロータの速度(機械角速度)、ω1:第1ロータの速度(機械角速度)。
【0104】
そこで、前記制御装置により、前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(m+1)を乗じた値と前記第1ロータの速度との差に、同期するように前記第1回転機を制御することによって、前記第1回転機における前記ステータの電機子電極により発生する回転磁界の速度と前記第1ロータの速度と前記第2ロータの速度との相対的な速度関係を制御することができる。
【0105】
[第8発明]
第8発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子電極により発生する回転磁界の位置が、前記第2ロータの位置に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータの位置にmを乗じた値との差で表される位置となるように、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0106】
上記式(24)のαはa(磁極の極対数)/c(電機子磁極の極対数)であるため、m(=磁極の数/電機子磁極の数)と等しくなる。そのため、上記式(24)は以下の式(34)で表される。
【0107】
【数34】
【0108】
但し、θmf:回転磁界の電気角度位置、θe2:第2ロータの電気角度位置、θe1:第1ロータの電気角度位置、c:電機子磁極の極対数、θ2:第2ロータの位置(機械角度位置)、θ1:第1ロータの位置(機械角度位置)。
【0109】
そこで、前記制御装置により、前記電機子電極により発生する回転磁界の電気角度位置が、前記第2ロータの電気角度位置に(m+1)を乗じた値と、前記第1ロータの電気角度位置にmを乗じた値との差を用いて表される値となるように、前記第1回転機を制御することによって、前記第1回転機における前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0110】
[第9発明]
第9発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差に、回転磁界の極対数を乗じた値で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0111】
第9発明において、前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差は、前記第2ロータと前記第1ロータの機械的な相対位置を示すものとなる。そして、この差に前記電機子磁極の対極数を乗じることで、上記式(34)で示したように、前記第1ロータと前記第2ロータの電気角度位置に対応した、回転磁界の位置を算出することができる。そのため、このようにして算出した回転磁界の位置を通電位相角として前記第1回転機を制御することにより、前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0112】
[第10発明]
第10発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記ステータに対する前記第1ロータ位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0113】
第10発明によれば、上記第9発明と同様に、上記式(34)の関係を満たすように、前記ステータの電機子磁極により発生する回転磁界の電気角度位置と前記第1ロータの位置と前記第2ロータの位置との間の相対的な位置関係を制御することができる。
【0114】
[第11発明]
第11発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記ステータに対する前記第1ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される電気角検知位置に基づいて、前記第1回転機を、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧の目標値を決定し、該決定した電圧の目標値を、前記電気角検知位置に基づいて多相交流電圧に変換して前記第1回転機の電機子に供給する多相交流電圧の目標値を設定する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0115】
第11発明によれば、上記式(34)の関係を満たす電気角度位置である前記回転角度位置に基づいて、前記第1回転機を直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱うことで、前記第1回転機を、1個のロータを有する一般的な第1回転機と同様に扱って通電制御を行うことができる。
【0116】
[第12発明]
第12発明は、第1発明から第6発明において、前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記第1回転機を、前記第1ロータの検出位置及び前記第2ロータの検出位置に基づいて、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧を制御すると共に、一方の軸の電機子に供給する電圧を、他方の電機子に流れる電流により該一方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする。
【0117】
第6発明によれば、前記直交2軸の各軸の電機子の通電制御を行うときに、一方の軸の電機子に流れる電流により他方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、各軸の電機子に供給する電圧を設定することにより、各軸の電機子間で生じる干渉を回避して、各軸の電機子の通電制御を独立して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】第1回転機の概略構造を縦断面により示した図。
【図2】図1に示した第1回転機に備えられたステータ、第1ロータ、及び第2ロータを、これらの周方向に展開して示した図。
【図3】図1に示した第1回転機を用いて構成された動力機構と、その制御装置とを備えた動力システムの構成図。
【図4】図3に示した動力機構の速度共線図。
【図5】図3に示した制御装置の第1実施形態の構成図。
【図6】図3に示した制御装置の第2実施形態の構成図。
【図7】第1回転機制御部の構成図。
【図8】第1回転機のモデルのブロック図。
【図9】図9に示した電流制御部の第1態様の構成図。
【図10】図9に示した電流制御部の第2態様の構成図。
【図11】回転機の等価回路を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明の実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0120】
先ず、図1〜図2を参照して、本実施の形態で用いられる第1回転機3の構成と機能について説明する。
【0121】
図1を参照して、第1回転機3はPDU(Power Drive Unit)10と接続され、PDU10及びVCU(Voltage Control Unit)13を介して、バッテリ11(本発明の蓄電手段に相当する)との間で電力の授受を行う。また、後述する第1回転機制御部60により、第1回転機3の作動が制御される。
【0122】
第1回転機3は、そのハウジング6内に回転自在に支承された第1ロータ51、及び第2ロータ53を同軸心に備えている。また、第1回転機3のハウジング6内に、ステータ53が固定されている。
【0123】
この場合、ステータ53は、第1ロータ51に対向して第1ロータ51の周囲に配置されている。また、第2ロータ52は、第1ロータ51とステータ53との間に、これらと非接触状態で回転するように配置されている。そのため、第1ロータ51、第2ロータ52、及びステータ53は、同心円状に配置されている。
【0124】
なお、以下では、特に断らない限り、「周方向」は第1回転機3の軸心部(第1ロータ51の軸心部)から延在している主軸25の軸心周り方向を意味し、「軸心方向」は主軸25の軸心方向を意味するものとする。
【0125】
ステータ53は、その内側の第1ロータ51及び第2ロータ52に対して作用させる回転磁界を発生する複数の電機子533を有し、複数の鋼板を積層して円筒状に形成された鉄芯(電機子鉄芯)531と、この鉄芯531の内周面部に装着された3相(U,V,W相)分のコイル(電機子巻線)532とを備えている。鉄芯531は主軸25と同軸心に外挿されて、ハウジング6に固定されている。
【0126】
U,V,Wの各相のコイル532は、各コイル532と鉄芯531とにより個々の電機子533を構成している。これらのU,V,Wの3相分のコイル532は、周方向に並ぶようにして鉄芯531に装着されている(図2参照)。これにより、複数(3の倍数個)の電機子533を周方向に並べた電機子列が構成されている。
【0127】
この電機子列の3相分のコイル532は、3相の交流電流を通電したときに、鉄芯531の内周面部に、周方向に等間隔で並び、且つ周方向に回転する複数(偶数)の電機子磁極が発生するように配列されている。この電機子磁極の列は、周方向で、N極及びS極が交互に並ぶ配列(互いに隣り合う任意の2つの電機子磁極が異なる極性となる配列)である。ステータ53は、この電機子磁極列の回転によって、鉄芯531の内側に回転磁界を発生するものである。
【0128】
3相分のコイル532は、PDU10及びVCU13を介してバッテリ11に接続され、PDU10を介してコイル532とバッテリ11との間の電力の授受(コイル532に対する電気エネルギーの入出力)が行われる。また、第1回転機制御部60により、PDU10を介してコイル532の通電を制御することによって、回転磁界の発生形態(回転磁界の回転速度や磁束強度)を制御することができる。
【0129】
図2に示したように、第1ロータ51は、軟磁性体から成る円筒状の基体511と、基体511の外周面に固着された複数(偶数)の永久磁石(磁石磁極,本発明の磁極に相当する)とを備えている。基体511は、例えば鉄板又は鋼板を積層して形成されている。そして、この基体511がステータ53の鉄芯531の内側で主軸25に外挿され、主軸25と一体に回転するように主軸25に固定されている。
【0130】
また、第1ロータ51の複数の永久磁石512は、周方向に等間隔で配列されている。この永久磁石512の配列によって、第1ロータ51の外周面部に、ステータ53の鉄芯531の内周面部に対向して周方向に並ぶ複数の磁極からなる磁極列が構成されている。この場合、図2中の(N),(S)で示したように、周方向で互いに隣り合う2つの永久磁石512,512の外表面部(ステータ53の鉄芯531の内周面部に対応する面部)の磁極は、互いに異なる磁性の磁極となっている。すなわち、第1ロータ51の複数の永久磁石512の配列によって、第1ロータ51の外周面部に形成される磁極列は、N極及びS極が交互に並ぶ配列となっている。
【0131】
なお、第1ロータ51の基体511及び永久磁石512の長さ(主軸25の軸心方向の長さ)は、ステータ53の鉄芯531の軸心方向の長さと同程度とされている。
【0132】
第2ロータ52は、軟磁性体から成る複数のコア521(本発明のコア部に相当する)を、ステータ53と第1ロータ51との間に、これらと非接触状態で配列して構成された軟磁性体列を備えている。この軟磁性体列を構成する複数のコア521は、コア521よりも透磁率が低い部分522を挟んで周方向に等間隔で配列されている。
【0133】
各コア521は、例えば複数の鋼板を積層して形成されている。そして、これらのコア521から成る軟磁性体列は、主軸25に形成された環状のフランジ27に固定されている。これにより、第2ロータ52は、主軸25と一体に回転するようになっている。
【0134】
なお、上記軟磁性体列を構成する各コア521の長さ(主軸25の軸心方向の長さ)は、ステータ53の鉄芯531の軸心方向の長さと同程度とされている。
【0135】
また、第1回転機3のステータ53の電機子磁極の個数をp、第1ロータ51の磁極の個数(永久磁石512の個数)をq、第2ロータ52の軟磁性体のコア521の個数をrとしたときに、これらのp,q,rは、以下の式(35)の関係を満たすように設定されている。
【0136】
【数35】
【0137】
但し、m≠1。なお、p,qは偶数であり、mは正の有理数である。
【0138】
この場合、例えば、p=4、q=8、r=6、m=2に設定すれば、上記式(35)の関係が満たされる。
【0139】
以上のように第1回転機3のステータ53の電機子磁極の個数pと、第2ロータ52のコア521の個数qと、第1ロータ51の磁極の個数(永久磁石512の個数)rとが、上記式(35)の関係を満たすように構成された第1回転機3では、第1ロータ51及び第2ロータ52の両方又は一方の回転時に、第1ロータ51の磁極から第2ロータ52のコア521を経由してステータ53の各相のコイル532に作用する磁束(鎖交磁束)の時間的変化率dΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dt(但し、ΨuはU相、ΨvはV相、ΨwはW相の各コイルに作用する鎖交磁束)は、以下の式(36)、式(37)、式(38)により表される。
【0140】
【数36】
【0141】
【数37】
【0142】
【数38】
【0143】
但し、Ψf:第1ロータ51の磁極の磁束の最大値、θe2:ステータ53の3相コイル532のうちの1つの基準コイル(例えば、U相のコイル)に対する第2ロータ52の電気角度位置、ωe2:第2ロータ52の電気角速度、θe1:上記基準コイルに対する第1ロータ51の電気角度位置、ωe1:第1ロータ51の電気角速度。
【0144】
なお、上記式(36)〜式(38)では、第1ロータ51の1つの磁極が上記基準コイルに対向する状態でのθe1の値を“0”とし、第2ロータ52の1つのコア521が上記基準コイルに対応する状態でのθe2の値を“0”としている。また、上記“電気角度”は、機械角に電機子磁極の極対数(N極及びS極の対の個数(=p/2))を乗じた角度を意味する。
【0145】
この場合、第1ロータ51の磁極から、第2ロータ52のコア521を経由せずに直接的に各コイル532に作用する磁束は、コア521を経由する磁束に対して微小であるので、上記式(36)〜式(38)のdΨu/dt,dΨv/dt,dΨw/dtは、ステータ53に対する第1ロータ51や第2ロータ52の回転に伴なって、各相のコイル532に発生する逆起電力(誘起電圧)を表すものとなる。
【0146】
そこで、本実施形態では、ステータ53のコイル532の通電によって発生する回転磁界の磁束ベクトルの回転角度位置θmf(電気角での回転角度位置)と、その時間的変化率(微分値)である角速度ωmf(電気角速度)とが、それぞれ、以下の式(39),式(40)の関係を満たすように、ステータ53のコイル532の通電電流を第1回転機制御部60によりPDU10を介して制御する。
【0147】
【数39】
【0148】
但し、θmf:回転磁界の磁束ベクトルの回転角度位置、θe2:第2ロータ52の電気角度位置、θe1:第1ロータ51の電気角度位置、c:電機子磁極の対極数、θ2:第2ロータ52の機械角度位置、θ1:第1ロータ51の機械角度位置。
【0149】
【数40】
【0150】
但し、ωmf:回転磁界の磁束ベクトルの角速度、ωe2:第2ロータ52の電気角速度、ωe1:第1ロータ51の電気角速度、c:電機子磁極の対極数、ω2:第2ロータ52の機械角速度、ω1:第1ロータ51の機械角速度。
【0151】
上記のように、ステータ53に回転磁界を発生させることにより、第1回転機3の運転を適切に行なって、第1ロータ51及び第2ロータ52にトルクを発生させることができる。このとき、ステータ53のコイル532への供給電力(入力電力)又はコイル532からの出力電力を、回転磁界の電気角での角速度ωmfで除したものを、この回転磁界の等価トルクTmf(以下、回転界磁等価トルクTmfという)と定義し、第1ロータ51に発生するトルクをT1、第2ロータ52に発生するトルクをT2としたときに、Tmf,T1,T2の間には、以下の式(41)の関係が成立する。なお、ここでは、銅損、鉄損等によるエネルギー損失は無視し得る程度に微小であるとする。
【0152】
【数41】
【0153】
上記式(40)により示される角速度の相互関係、及び上記式(41)により示されるトルクの相互関係は、シングルピニオン型の遊星歯車装置のサンギヤ,リングギヤ,キャリアの回転速度の相互関係、及びトルクの相互関係と同じ関係となる。すなわち、電機子磁極及び第1ロータ51の一方がサンギヤ、他方がリングギヤに対応し、第2ロータ52がキャリアに対応する。
【0154】
したがって、第1回転機3は、遊星歯車装置としての機能(より一般的には、差動装置としての機能)を持つことになり、電機子磁極と第1ロータ51と第2ロータ52の回転が、式(41)で示される共線関係を保って行われる。
【0155】
そして、この場合、第1回転機3は、一般の遊星歯車機構と同様にエネルギーの分配・合成機能を持つ。すなわち、ステータ53と第2ロータ52のコア521(軟磁性体)と第1ロータ51の永久磁石512との間で形成される磁気回路を介して、ステータ53のコイル532と第2ロータ52と第1ロータ51との間でのエネルギーの分配・合成が可能となる。
【0156】
例えば、第1ロータ51及び第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532に電力(電気エネルギー)を供給して回転磁界を発生させることにより、コイル532に供給した電気エネルギーを、上記磁気回路を介して第1ロータ51及び第2ロータ52の回転運動エネルギーに変換して、第1ロータ51及び第2ロータ52を回転駆動する(第1ロータ51及び第2ロータ52にトルクを発生させる)ことができる。この場合、コイル532に入力される電気エネルギーは、第1ロータ51及び第2ロータ52に分配される。
【0157】
また、例えば、第1ロータ51を外部から回転駆動する(第1ロータ51に外部から回転運動エネルギーを与える)と共に、第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532から電気エネルギーを出力させる(コイル532による発電を行う)ように回転磁界を発生させることにより、上記磁気回路を介して第2ロータ52の回転運動エネルギーとコイル532の発電エネルギーとに変換し、第2ロータを回転駆動すると共に、コイル532による発電を行うことができる。この場合、第1ロータ51に入力されるエネルギーが、第2ロータ52とコイル532とに分配される。
【0158】
さらに、例えば、第1ロータ51を外部から回転駆動する(第1ロータ51に外部から回転運動エネルギーを与える)と共に、第2ロータ52に負荷を与えた状態で、ステータ53のコイル532に電気エネルギーを供給して回転磁界を発生させることにより、第1ロータ51に供給した回転運動エネルギーとコイル532に供給した電気エネルギーとを、上記磁気回路を介して第2ロータの回転運動エネルギーに変換し、第2ロータ52を回転駆動することができる。この場合、第1ロータ51に入力されるエネルギーとコイル532に供給されるエネルギーとが合成されて、第2ロータ52に伝達される。
【0159】
このように、第1回転機3においては、第1ロータ51及び第2ロータ52の各回転運動エネルギーと、コイル532の電気エネルギーとの間の相互変換を行いつつ、第1ロータ51、第2ロータ52、及びコイル532との間で、エネルギーの分配と合成を行うことが可能である。
【0160】
次に、図3,4を参照して、上述した第1回転機3を用いて構成された動力システムの構成と機能について説明する。
【0161】
図3を参照して、本実施の形態の動力システムは、車両(図示しない)の左右の駆動輪24,24を駆動するものであり、動力原であるエンジン20(本発明の原動機に相当する)と、動力機構30と、動力機構30における協調制御を行う制御装置200とを備えている。
【0162】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等により構成された電子ユニットであり、該CPUに動力機構の制御用プログラムを実行させることによって、該CPUが、第1回転機3の作動を制御する第1回転機制御部60、第2回転機4の作動を制御する第2回転機制御部250、エンジン260の作動を制御するエンジン制御部260、及び、第1回転機3と第2回転機4とエンジン20の協調制御を行う協調制御部210として機能する。
【0163】
また、制御装置200は、バッテリ11(本発明の蓄電手段に相当する)に入出される電圧を変圧するVCU(Voltage Control Unit)、第1回転機3に対する駆動電力の供給と第1回転機で生じる発電電力の回収を行うPDU(Power Drive Unit)、及び、第2回転機4に対する駆動電力の供給と第2回転機で生じる発電電力の回収を行うPDUを備えている。
【0164】
動力機構30は、2個のロータ(第1ロータ51及び第2ロータ52)を有する第1回転機3と、1個のロータ(ロータ41)を有する第2回転機4を用いて構成されている。エンジン20の出力軸26は軸受け26aにより回転自在に支持されている。また、主軸25は軸受け25a,25bにより回転自在に支持されて、出力軸26と同一軸線上に配置されている。
【0165】
第1回転機3の第1ロータ51及び第2回転機4のロータ42は、主軸25と一体に回転自在に連結されている。また、第1回転機3の第2ロータ52は、エンジン20の出力軸26と一体に回転自在に連結されている。また、主軸25は伝達機構21を介して差動ギヤ機構22と連結されている。
【0166】
第1回転機3は上述したように遊星歯車装置としての機能を有している。そのため、動力機構30は、図4に示した1共線3要素の共線の関係を保って作動する構成となっている。
【0167】
図4は、第2回転機4の回転速度MG2(=駆動輪24,24の回転速度)と、エンジン20の回転速度ENGと、第1回転機3の回転速度MG1との速度線図である。この場合、第1回転機3の回転速度MG1及び第2回転機4の回転速度MG2を制御することによって、エンジン20の回転速度ENGに対する駆動輪24,24の回転速度OUTPUTを無段階に変速することができる。
【0168】
また、図4に示したように、第1動力システムの第1回転機3と第2回転機4の間、及び第2動力システムの第1回転機3と第2回転機5の間では、発電電力の授受(電気パス)によるエネルギーの分配も可能である。
【0169】
次に、図5を参照して、図3に示した協調制御部210の第1の実施形態の構成(図中210aで示す)と機能について説明する。
【0170】
協調制御部210aには、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量Ap、駆動軸23の回転速度(車両の走行速度)Vcar、バッテリ11の要求電力Bat_req(バッテリ11の充電状態等により決定される)、及びエンジン20の回転速度Vengが入力される。そして、協調制御部210は、これらの入力に基いて、第1回転機3に対するトルク指令値Mg1Tr_cと、第2回転機3に対するトルク指令値Mg2Tr_cと、エンジン20に対する出力要求値EngPw_reqとを決定する。
【0171】
協調制御部210aは、アクセルペダルの踏み込み量Apと駆動軸23の回転速度Vcarに対して、最適な駆動軸要求トルクDrvTr_reqを選択する駆動軸要求トルクマップ211、駆動軸要求トルクDrvTr_reqに駆動軸23の回転速度Vcarを乗じて、駆動軸要求出力DrvPw_reqを出力する乗算器212、駆動軸要求出力DrvPw_reqにバッテリ11の要求電力Bat_reqを加えて、エンジン要求出力EngPw_reqを出力する加算器213、エンジン要求出力EngPw_reqに対して、エンジン20の最適な目標回転速度EngV_tgtを選択するエンジン効率マップ220、エンジン20の目標回転速度EngV_tgtと実回転速度Vengとの差を算出する減算器221、及びエンジン20の目標回転速度EngV_tgtと実回転速度Vengとの差を減少させるための第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cを算出する回転速度制御器222を備えている。
【0172】
さらに、協調制御部210aは、第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cに、1/(1+α)(αは、第1回転機3のステータ43の電機子磁極の極対数に対する第1ロータ51の磁極の極対数の比)を乗じて、第1回転機3のステータ53に対するトルク指令値である第1回転機トルク指令値Mg1Tr_cを出力する分配器224、第1回転機3の第2ロータ52に対するトルク指令値Mg1R2Tr_cに、α/(1+α)を乗じて、第1回転機3の第1ロータ51に対するトルク指令値Mg1R1Tr_cを出力する分配器223、及び、駆動軸要求トルクDrvTr_reqから第1回転機3の第1ロータ51に対するトルク指令値Mg1R1Tr_cを減じて、第2回転機4に対するトルク指令値Mg2Tr_cを出力する減算器214を備えている。
【0173】
なお、駆動軸要求トルクマップ211及びエンジン効率マップ220は、実験やコンピュータシミュレーション等の結果に基づいて作成され、これらのマップのデータは予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、駆動軸要求トルクマップ211に代えて、アクセルペダルの踏み込み量Ap及び駆動軸23の回転速度Vcarを入力して、駆動軸要求トルクDrvTr_reqを算出する相関式を用いてもよい。また、エンジン効率マップ220に代えて、エンジン要求出力EngPw_reqを入力して、エンジン20の目標回転速度EngV_tgtを算出する相関式を用いてもよい。
【0174】
以上の構成により、協調制御部210aは、アクセルの踏み込み量Apと、車両の状況(駆動軸23の回転速度Vcar,エンジン20の回転速度Veng,バッテリ11の要求電力Bat_req)とに応じて、エンジン20を効率良く運転させるように、第1回転機3に対するトルク指令値Mg1Tr_cと、第2回転機3に対するトルク指令値Mg2Tr_cと、エンジン20に対する出力要求値EngPw_reqとを適切に決定することができる。
【0175】
次に、図6を参照して、図3に示した協調制御部210の第2の実施形態の構成(図中、210bで示す)と機能について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0176】
第2の実施形態の協調制御部210bは、図6に示した駆動軸要求トルクマップ211に代えて、駆動軸要求出力マップ230を備えている。駆動軸要求出力マップ230は、アクセルペダルの踏み込み量Apと駆動軸23の回転速度Vcarに対して、最適な駆動軸要求出力DrvPw_reqを出力する。そして、協調制御部210bは、駆動軸要求出力DrvPw_reqを駆動軸23の回転速度Vcarで除して駆動軸要求トルクDrvTr_reqを出力する除算器231を備えている。
【0177】
このようにして、駆動軸要求出力DrvPw_reqと駆動軸要求トルクDrvTr_reqが出力された後の処理は、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと同様である。
【0178】
なお、駆動軸要求出力マップ230は、実験やコンピュータシミュレーション等の結果に基づいて作成され、駆動軸要求出力マップ230のデータは予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、駆動軸要求出力マップ230に代えて、アクセルペダルの踏み込み量Ap及び駆動軸23の回転速度Vcarを入力して、駆動軸要求出力DrvPw_reqを算出する相関式を用いてもよい。
【0179】
なお、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと第2の実施形態の協調制御部210bにおいて、バッテリ11の要求電力Bat_reqを考慮しない場合、及びエンジン20の回転速度Vengを考慮しない場合、すなわち、第2回転機4のみを制御する場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0180】
また、上述した第1の実施形態の協調制御部210aと第2の実施形態の協調制御部210bでは、エンジン20の実回転速度Vengと目標回転速度EngV_tgtとの差を減少させる回転速度のフィードバック制御を行う構成としたが、エンジン20の目標回転速度と、他の回転要素の速度共線図での関係から、第1回転機の回転磁界の目標回転速度を設定し、この目標回転速度と第1回転機の実回転速度との差を減少させる回転速度のフィードバック制御を行う構成としてもよい。
【0181】
また、上記記載における「接続」や「連結」は、減速機、増速機、変速機、クラッチ等を介して行ってもよい。
【0182】
また、上記各種の演算処理で使用される変数に対して、マップやフィルタ等を用いて適宜の補正を行うようにしてもよい。
【0183】
また、図6の乗算器212や図7の除算器231に代えて、マップを用いて駆動軸出力や駆動軸トルクを求める構成としてもよい。
【0184】
また、トルク要求値ではなく、駆動輪の半径等を考慮して、平進方向の力の要求値を用いてもよい。
【0185】
また、第1回転機及び第2回転機のトルクは電機子コイルの通電量で制御されるため、トルク要求として電流要求を用いてもよい。
【0186】
また、車両の運転者のフィーリングを考慮する等の目的を果たすために、アクセルの踏み込み量になまし処理等の補正を適宜行ってもよい。
【0187】
また、第1回転機及び第2回転機に、ロータの内側にステータを配置したアウターロータ構成の回転機を用いてもよい。
【0188】
また、回転速度は、所定時間あたり移動角度で表してもよく、所定時間あたりの回転数で表してもよい。
【0189】
次に、図7〜図10を参照して、第1回転機制御部60の構成と動作について説明する。図8を参照して、第1回転機制御部60は、いわゆるd−qベクトル制御により第1回転機3のステータ53の各相のコイルの通電電流(相電流)を制御する。すなわち、第1回転機制御部60は、第1回転機3のステータ53の3相分のコイルを、2相直流の回転座標であるd−q座標系での等価回路に変換して取り扱う。
【0190】
ステータ53に対応する等価回路は、d軸上の電機子(以下、d軸電機子という)と、q軸上の電機子(以下、q軸電機子という)とを有する。そして、d−q座標系は、3相コイルのうちの基準コイルに対するd軸の位相を、上記式(39)により算出される回転角度位置θmfとし、d軸と直交する方向をq軸として、第1ロータ51及び第2ロータ52と共に回転する回転座標系となる。
【0191】
第1回転機制御部60は、位置センサ70(レゾルバ、エンコーダ等)により検出される第1ロータ51の機械角度位置θ1と、位置センサ71により検出される第2ロータ52の機械角度位置θ2とにより、上記式(39)により、回転角度位置θmfを算出する電気角変換器67と、相電流センサ72,73により検出されるU相電流検出値iu_sとW相電流検出値iw_sを、回転角度位置θmfに基づいて、d軸電機子のコイルに流れる電流(以下、d軸電流という)の検出値であるd軸電流検出値id_s、及びq軸電機子のコイルに流れる電流(以下、q軸電流という)の検出値であるq軸電流検出値iq_sに変換する3相/dq変換器65と、回転角度位置θmfを微分して電気角速度ωmfを算出する電気角速度算出器66とを備えている。
【0192】
さらに、第1回転機制御部60は、外部から与えられるd軸電流の指令値であるd軸電流指令値id_cとd軸電流検出値id_sとの差Δidを求める減算器61と、外部から与えられるq軸電流の指令値であるq軸電流指令値iq_cとq軸電流検出値iq_sとの差Δiqを求める減算器62と、Δidを減少させるようにd軸電機子のコイルの端子間電圧の指令値であるd軸電圧指令値Vd_c、及びΔiqを減少させるようにq軸電機子のコイルの端子間電圧の指令値であるq軸電圧指令値Vq_cを決定する電流制御器63と、d軸電圧指令値Vd_c及びq軸電圧指令値Vq_cを、回転角度位置θmfに基づいて、3相電圧の指令値であるU相電圧指令値Vu_c,V相電圧指令値Vv_c,W相電圧指令値Vw_cに変換するdq/3相変換器64とを備えている。
【0193】
また、PDU10は、Vu_c,Vv_c,Vw_cに応じて、インバータを構成するスイッチング素子(トランジスタ等)をPWM制御によりスイッチングすることにより、第1回転機3のステータ53の3相コイルの通電制御を実行する。
【0194】
次に、d−q座標系における第1回転機3のモデルの電圧方程式は、以下の式(42)で表される。
【0195】
【数42】
【0196】
但し、Vd:d軸電圧、Vq:q軸電圧、id:d軸電流、iq:q軸電流、Ra:d軸電機子及びq軸電機子のコイルの抵抗、Ld:d軸電機子のコイルのインダクタンス、Lq:q軸電機子のコイルのインダクタンス、Ψa:誘起電圧定数、ω:回転磁界の磁束ベクトルの角速度。
【0197】
図9は、上記式(42)の関係をブロック線図で表したものである。図9に示したように、d軸電流idにより生じる電圧成分81(id・(ωLd+ωΨa))が、減算器82でq軸電圧Vqから減じられる。また、q軸電流iqにより生じる電圧成分83(iq・ωLq)が、加算器80でd軸電圧Vdに加えられる。
【0198】
このように、d軸電圧Vdはq軸電流iqの影響を受け、また、q軸電圧Vqはd軸電流idの影響を受ける。そのため、d軸電流idとq軸電流iqを独立して制御することができない。
【0199】
そこで、電流制御器63は、図10に示したように、d軸とq軸間の干渉を回避するための非干渉制御器90aを備えている。非干渉制御器90aは、以下の式(43)で示したように、PI(比例・積分)制御器91によりΔidを減少させるように決定されるd軸電圧Vdaから、減算器92で干渉成分を減じて、d軸電圧指令値Vd_cを算出する。
【0200】
【数43】
【0201】
また、非干渉制御器90aは、以下の式(44)で示したように、PI(比例・積分)制御器91によりΔiqを減少させるように決定されるq軸電圧Vqaから、加算器93で干渉成分を加えて、q軸電圧指令値Vq_cを算出する。
【0202】
【数44】
【0203】
ここで、上記式(42)から、idとiqは以下の式(45),式(46)で表される。
【0204】
【数45】
【0205】
【数46】
【0206】
そして、上記式(43)のVd_cを上記式(45)のVdに代入し、また、上記式(44)のVq_cを上記式(46)に代入して、ω=ωmfとすると、以下の式(47),式(48)の形になる。
【0207】
【数47】
【0208】
【数48】
【0209】
上記式(47),式(48)により、d軸電流及びd軸電圧の制御と、q軸電流及びq軸電圧の制御を、1次系の伝達関数により独立して行うことができることがわかる。
【0210】
次に、図11は、図10に示した非干渉制御器90aを非干渉制御器90bに置き換えて構成したものである。
【0211】
非干渉制御器90aは、d軸電流検出値id_s及びq軸電流検出値iq_sを用いて、干渉成分を算出したが、非干渉制御器90bは、以下の式(49),式(50)で示したように、d軸電流指令値id_c及びq軸電流指令値iq_cを用いて干渉成分を算出する。
【0212】
【数49】
【0213】
但し、iq_c:q軸電流指令値。
【0214】
【数50】
【0215】
但し、id_c:d軸電流指令値。
【0216】
ここで、電流制御器63は、d軸電流指令値id_cとd軸電流検出値id_sとの差Δidを減少させるようにd軸電圧指令値Vd_cを決定すると共に、q軸電流指令値iq_cとq軸電流検出値iq_cとの差Δiqを減少させるようにq軸電圧指令値Vq_cを決定する。そのため、id_c≒id_sに制御され、また、iq_c≒iq_sに制御されている。
【0217】
したがって、上述した非干渉制御器90aを用いる場合と同様に、d軸とq軸間に生じる干渉を回避して、d軸電流及びd軸電圧の制御と、q軸電流及びq軸電圧の制御を、1次系の伝達関数により独立して行うことができる。
【0218】
なお、本実施の形態では、電流制御器63に非干渉制御器90a,90bを備えた構成を示したが、非干渉制御器90a,90bを備えない場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0219】
また、本実施の形態では、第1回転機3のステータ53にU,V,Wの3相のコイルを備えたが、3相以外の相数のコイルによって、回転磁界(移動磁界)を発生させるようにしてもよい。
【0220】
また、本実施の形態では、第1回転機制御部60により、第1回転機3をd−q座標系での等価回路に変換して制御したが、このような変換を行わない場合であっても、上記式(39)又は上記式(40)関係を維持するように、第1回転機3のステータ53の3相コイル532の通電制御を行うことで、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0221】
3…第1回転機、4…第2回転機、11…バッテリ、20…エンジン、23…駆動軸、51…第1回転機の第1ロータ、52…第1回転機の第2ロータ、53…第1回転機のステータ、60…第1回転機制御部、63…電流制御器、90a,90b…非干渉制御器、200…制御装置、210…協調制御部、250…第2回転機制御部、260…エンジン制御部、512…永久磁石、521…コア(軟磁性体)、532…コイル、533…電機子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
所定の要求出力又は要求トルクが前記駆動軸に出力されるように、前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機のうちの少なくとも前記第2回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項2】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
所定の要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクの過不足分を、前記第2回転機の出力又はトルクで補うように、前記第2回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項3】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することによって前記第1ロータに出力されるトルクと、該駆動軸の要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記回転軸に出力させるトルクを設定する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項4】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求トルクに応じて設定された前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御し、該制御により前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力させるトルクを制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項5】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求出力に応じて前記原動機の要求出力を設定し、該原動機の要求出力に基づいて設定した前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記第1回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項6】
請求項5記載の動力システムにおいて、
前記第1回転機又は前記第2回転機に駆動用電力を供給すると共に、前記原動機の出力軸の回転により前記第1回転機又は前記第2回転機で生じる発電電力により充電される蓄電手段を備え、
前記制御装置は、前記駆動軸要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機に対する要求出力を設定することを特徴とする動力システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの速度を検出する第1速度検出手段と、
前記第2ロータの速度を検出する第2速度検出手段と、
前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータにmを乗じた値との差に、同期するように前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子電極により発生する回転磁界の位置が、前記第2ロータの位置に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータの位置にmを乗じた値との差で表される位置となるように、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差に、回転磁界の極対数を乗じた値で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項10】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記ステータに対する前記第1ロータ位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項11】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記ステータに対する前記第1ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される電気角検知位置に基づいて、前記第1回転機を、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧の目標値を決定し、該決定した電圧の目標値を、前記電気角検知位置に基づいて多相交流電圧に変換して前記電動機の電機子に供給する多相交流電圧の目標値を設定する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項12】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記第1回転機を、前記第1ロータの検出位置及び前記第2ロータの検出位置に基づいて、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧を制御すると共に、一方の軸の電機子に供給する電圧を、他方の電機子に流れる電流により該一方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項1】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
所定の要求出力又は要求トルクが前記駆動軸に出力されるように、前記第1回転機と前記第2回転機と前記原動機のうちの少なくとも前記第2回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項2】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
所定の要求出力又は要求トルクに対して、前記第1回転機と前記原動機から前記駆動軸に出力される出力又はトルクの過不足分を、前記第2回転機の出力又はトルクで補うように、前記第2回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項3】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求トルクに応じて前記第1回転機を制御することによって前記第1ロータに出力されるトルクと、該駆動軸の要求トルクとの差に基づいて、前記第2回転機により前記回転軸に出力させるトルクを設定する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項4】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求トルクに応じて設定された前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように前記第1回転機を制御し、該制御により前記第1回転機の第1ロータに出力されるトルクと、前記要求トルクとの差を減少させるように、前記第2回転機により前記駆動軸に出力させるトルクを制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項5】
所定回転方向に並んだ複数の磁極で構成された磁極列を有する第1ロータと、
前記回転方向に並んだ複数の電機子を有して、前記磁極列と対向して配置され、電力の供給に応じて前記複数の電機子に発生する電機子磁極により、前記回転方向に回転する回転磁界を前記磁極列との間に発生させる電機子列を有するステータと、
前記磁極列と前記電機子列との間に位置し、コア部と該コア部よりも透磁率が低い部分が前記回転方向に交互に配置された第2ロータとを備え、
前記電機子磁極の数と前記磁極の数と前記コア部の数との比が、1:m:(1+m)/2(但し、m≠1.0)に設定され、前記第1ロータが駆動軸に接続された第1回転機と、
前記第2ロータと接続された原動機と、
前記駆動軸又は他の駆動部との間での動力の入出力と、前記第1回転機との間での電力の授受とが可能に構成された第2回転機と、
前記駆動軸の要求出力に応じて前記原動機の要求出力を設定し、該原動機の要求出力に基づいて設定した前記原動機の目標回転速度と、前記原動機の実回転速度との差を減少させるように、前記第1回転機を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項6】
請求項5記載の動力システムにおいて、
前記第1回転機又は前記第2回転機に駆動用電力を供給すると共に、前記原動機の出力軸の回転により前記第1回転機又は前記第2回転機で生じる発電電力により充電される蓄電手段を備え、
前記制御装置は、前記駆動軸要求出力と前記蓄電手段に対する電力の入出力要求とに基づいて、前記原動機に対する要求出力を設定することを特徴とする動力システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの速度を検出する第1速度検出手段と、
前記第2ロータの速度を検出する第2速度検出手段と、
前記電機子電極により発生する回転磁界の速度が、前記第2ロータの速度に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータにmを乗じた値との差に、同期するように前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子電極により発生する回転磁界の位置が、前記第2ロータの位置に(1+m)を乗じた値と前記第1ロータの位置にmを乗じた値との差で表される位置となるように、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記第2ロータの検出位置に(1+m)を乗じた値と、前記第1ロータの検出位置にmを乗じた値との差に、回転磁界の極対数を乗じた値で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項10】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記ステータに対する前記第1ロータ位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される位置を、通電位相角として前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項11】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記ステータに対する前記第1ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第1ロータの電気角位置を設定すると共に、前記ステータに対する前記第2ロータの位置に前記回転磁界の極対数を乗じることによって、前記第2ロータの電気角位置を設定し、前記第1ロータの電気角位置に(m+1)を乗じた値と、前記第2ロータの電気角位置にmを乗じた値との差で表される電気角検知位置に基づいて、前記第1回転機を、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧の目標値を決定し、該決定した電圧の目標値を、前記電気角検知位置に基づいて多相交流電圧に変換して前記電動機の電機子に供給する多相交流電圧の目標値を設定する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【請求項12】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の動力システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1回転機を制御するための構成として、
前記第1ロータの位置を検出する第1位置検出手段と、
前記第2ロータの位置を検出する第2位置検出手段と、
前記電機子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記第1回転機を、前記第1ロータの検出位置及び前記第2ロータの検出位置に基づいて、直交2軸の回転座標系の等価回路に変換して扱い、各軸の電機子に流れる電流の目標値と検出値との差を減少させるように、各軸の電機子に供給する電圧を制御すると共に、一方の軸の電機子に供給する電圧を、他方の電機子に流れる電流により該一方の軸の電機子に生じる電圧分を相殺する補正を行って、前記第1回転機を制御する第1回転機制御部とを備えたことを特徴とする動力システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−79408(P2011−79408A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232795(P2009−232795)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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