説明

動力伝達ベルトと方法

100℃で行われる高温度ベルト伸び評価の48時間後において、元の長さを基準に、その伸びが0.1%以下を示し、1以上の炭素繊維心線から構成される長手に延びる抗張部材(18)を有する動力伝達ベルト(10)、特に歯付き動力伝達ベルト、ベルト伸びの抑制を示すベルトの製造方法、並びに内燃機関におけるクランクシャフトに関係し、タイミングベルトで駆動させられるカムシャフトの角振動を減少させるための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vベルト、マルチVリブドベルト、及び歯付き動力伝達ベルトを含む動力伝達ベルトに関し、特に、少なくとも一本が炭素繊維ヤーンから形成される1本または複数本の心線から構成され、長手に延びる抗張部材を備えるようなベルト、自動車の内燃機関におけるピストンとバルブの同期化を提供するための歯付きベルト、及び歯付きベルトによってカムシャフトが駆動させられている内燃機関におけるクランクシャフトに関するカムシャフトの角振動(angular vibration)を減少させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、動力伝達ベルトは、プーリ間に動力を伝達するために使用される。それらは、通常の使用がなされる間に温度や荷重の極値が付与されるであろう。相対的に低いモジュラスの加硫エラストマー本体部と、ベルトの部品を支える主要な力を明らかにする相対的に高いモジュラスの抗張部材とから構成される複合構造、およびそれらに通常作用されるであろう高負荷の荷重と温度により、高い耐久性、屈曲性、堅牢性がそれぞれの部品パーツに要求される。
【0003】
より一般的ではあるが限定的ではない歯付きベルトの利用に関連する一つの典型的な問題は、ベルトの永久変形が要因となるベルト伸びに関する問題であって、長時間使用、極度の動的な荷重、極値的な使用温度、不適当な構成部品の選択、またはこれらの組み合わせの結果として生じ得る。特に、抗張部材の周囲の材料の耐熱性が不十分である場合、相対的に高い温度における使用は、それらの材料を大いに脆化させ、周辺のベルト本体と抗張部材を効果的に接着しなくなり、これによりベルトの引張強さを低下させ、ベルトの伸びを加速させる。このようなベルトの永久変形は、不適当な歯溝の相互作用、抗張不足、並びに、最終的には抗張心線の破壊による故障を導く。
【0004】
ゴム複合材における補強材として、炭素繊維を導入することに関しては、いくつかの適用事例において、ガラス心線のような従来の繊維に比べて相対的に高いモジュラスを有するため、性能改善の可能性が紹介されている。しかしながら、使用寿命の延長のための、繊維の周辺エラストマー部品に対する接着性、及びそれに関連する問題は、未だ充分に解決されていない。米国特許第5807194号は、そのベルト構造としてウレタンベルト本体部を有する歯付き動力伝達ベルトに抗張部材として炭素繊維を使用することを開示している。この文献の開示は、ベルト複合構造の導入を見込み、心線処理がなされた炭素繊維に限られるとともに、ベルト鋳型過程における、様々な量のウレタンベルトの材料自体を、心線に付着させることを必要とする。加硫工程においては、液状である等、ウレタン物質それ自体の鋳型可能な性質が、ウレタンを、炭素繊維の周囲、及びその隙間内に流れ込むことを可能にする。しかしながら、この開示は、例えば水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)のように鋳型が不可能なエラストマーベルト本体部を有するベルト構造には、適用することができない。
【0005】
例えば自動車エンジンのような内燃機関において、カムシャフトを駆動するために使用される歯付きベルトは、耐久性に悪い影響を与える特定の問題に直面させられる。エンジン部品の回転と往復運動との間に存在する不均衡の結果、さらには、例えばクランクとカムシャフトに作用する角力を発生させる各シリンダーの点火等、シャフトの反復的な燃焼インパルスを要因とするシャフトの角振動の結果として、エンジンの使用において、各部品はエンジンシステムに対する振動に寄与する。そのような振動は、タイミングベルトの強度を低下に結びつく。特に、複数の部品を駆動するために使用され、および/または例えばバルブとピストンの間に非常に小さなクリアランスしかないディーゼルエンジンのような干渉タイプのエンジンに使用される同期ベルトの場合、タイミングベルトの強度低下は、厳しくかつ高価なエンジン損傷を引き起こし得る。
【特許文献1】米国特許第5807194号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加硫エラストマー組成から形成されるベルト本体と、そのベルト本体に埋設され、炭素繊維から形成される1つのヤーンを少なくとも有する心線から構成される抗張部材とを備える。本発明の一実施形態における炭素繊維は、引張モジュラスが50GPa(ギガパスカル)から約350GPaの範囲であることを特徴とし、高温度ベルト伸び評価において、100℃で48時間後、選択されて結果としてベルト伸びが0.1%以下となる弾性率を有するレソルシノールホルムアルデヒド樹脂/ゴムラテックス溶液(RFL)によって形成される心線トリートメントを含む。他の実施形態においては、改善された耐ベルト伸び性を有する動力伝達ベルトを製造するための方法が提供されており、この方法は、抗張心線を形成するヤーンおよび/または1以上の繊維に付着される心線トリートメントの弾性率を選択するステップを備え、これにより、弾性率は20℃において例えば約1.0×106から約5.0×107Nm-2(約1.0×107から約5.0×108dyn/cm2)の範囲に、及び100℃において約5.0×105から約3.0×107Nm-2(約5.0×106から約3.0×108dyn/cm2)の範囲)の範囲になる。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態では、上述の構成を有するベルトであって、自動車の内燃機関における、カムシャフトを駆動させるための歯付きベルトを提供する。
【0008】
またさらなる本発明の実施形態では、自動車の内燃機関において、カムシャフトが歯付きベルトによって駆動させられ、関連するクランクシャフトに関係するカムシャフトの角振動を減少するための方法が提供されており、この方法は炭素繊維から構成される少なくとも1つのヤーンから形成される心線を、ベルトの抗張部材として選択するステップを備える。
【0009】
本発明に係る他の特徴及びその他の優位点は、本発明の図面と明細書を吟味することにより、明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照にすると、本発明のベルト10は、一般的な歯付き動力伝達ベルトの形状が見られる。ベルト10は、適切な加硫エラストマー組成から形成される本体12を有し、ベルト本体にはピッチPの間隔が空けられて歯14が形成される。歯14および/またはその反対面であるベルトの背面17には、図示し、かつ従来知られるように、任意に耐磨耗性帆布16が被覆され、耐磨耗性帆布16は、ベルト歯の外面に沿って、および/またはベルト背面の外面に沿ってそれぞれ配置される。限定するためではないが、ベルトの背面帆布の例およびその使用は、ドイツ特許DE10029470C2号に示され、その内容と同じものは、参考としてここに組みこまれる。この示される実施形態では、螺旋状に巻かれる心線の抗張部材18が、ベルト本体12内に埋設される。
【0011】
ベルト本体のエラストマー組成物として使用されるために、鋳型タイプ、非鋳型タイプの両方のエラストマー、及び熱可塑性エラストマーをも含む、いかなる好適な従来公知のエラストマータイプが使用される。非鋳型タイプのエラストマーとしては、HNBR、CR、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロヒドリン、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、並びにエチレンプロピレンターポリマー(EPDM)及びエチレンプロピレンコポリマー(EPM)のようなエチレン-α-オレフィンエラストマー、またはこれらの2以上のいかなる組み合わせが有益に使用され得るであろう。
【0012】
発明の主題に従ったベルトのベルト本体エラストマーに使用するのに好適な鋳型タイプのエラストマーとしては、ウレタン、ウレタン/ウレア、およびウレアが、限定的な例ではないが挙げられる。鋳型タイプのエラストマーでは、ベルト本体は液体であるベルト物質の鋳造であり、液体であることは、加硫時に動力伝達ベルトに求められる物理的な特徴である。例えば、物質は、ウェストフ(Whesthoff)の米国特許第4838843号、パターソン他(Patterson et al.)の米国特許第5112282号、またはウー他(Wu et al.)の国際公開公報96/02584号(1996年2月1日発行)のいずれかに公開されるような特性を有していても良い。
【0013】
動力伝達ベルト本体部を形成するために、フィラー、硬化剤、活性剤、促進剤、スコーチ防止剤、安定剤、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、および可塑剤を含む従来公知のエラストマー組成物の添加剤は、目的に応じて従来使用される量が、エラストマー成分それ自体とともに使用される。本発明の主題に係るベルトは、図1,2に示すように歯付きベルトであっても良いが、VベルトやマルチVリブドベルトの形状であっても良く、関連する当業者によってたやすく認識されている多数の公知のベルト製造技術を用いて製造される。歯付きや同期ベルト、Vベルト、Vリブドベルトを含む動力伝達ベルトの例は、米国特許第3138962号、3200180号、4330287号、および4332576号に開示されている。そのベルトを製造する方法の例は、米国特許第3200180号、3772929号、および4066732号に開示されている。さらに、特に歯付きベルトを形成する方法は、ケース(Case)による米国特許第2507852号、ゲイスト他(Geist et al.)による米国特許第3250653号、およびスクラ(Skura)による米国特許第3078206号に述べられており、その方法に関するそれぞれの内容は、ここに参考として組み入れられる。これら特許文献は、単なる歯付きベルトの多様な種類の例およびそれらの従来技術を形成する技術の例にすぎない。
【0014】
ベルト本体部に使用されるエラストマー組成物は、選択的に従来公知の繊維を含んでいても良く、そのような従来公知の物質としては、メタアラミド、パラアラミド、ポリエステル、ポリアミド、綿、レーヨン、およびガラス、さらにはこれらのいずれか2以上の組み合わせをも使用する。繊維は、パルプ状にされ、または小繊維状にされていても良く、従来公知の繊維の種類であり、表面積を増加させるものであり、またそれらは、短く切断されていても良く、短繊維状でも良い。繊維は、約0.1から約10mmまでの範囲の長さを有し、エラストマーに対する接着性を増加させるために、選択的に接着処理が施されていても良い。好適な繊維の添加量のレベルは、ベルト本体エラストマーの個々の種類、繊維の種類、およびどのようなものに適用されるかによって異なるが、本発明の実用化においては、最終的な加硫エラストマー組成物に対して約50重量%以下のレベルが使用されるであろう。あるいは、好適な繊維添加量は、約0.5から20phr、または約0.9から約10phr、又は約1から約5phrであろう。
【0015】
複数の横方向に配向される溝20は、選択的にベルトの外面に形成されていても良い。一方、必須ではないが、溝20は、ある適用例では、またある環境下では、ベルト重量を削減し、ベルトの屈曲性を増加させる。そして、典型的には、鋳型タイプの物質が使用されてベルト本体が形成される。
【0016】
ベルト本体によって形成される間隔を空けて設けられる歯14は、いかなる横断面形状を有していても良く、例えば台形、曲線形、先端が切り取られた曲線形であっても良い。曲線形の歯の形状の例は、ミラー(Miller)の米国特許第3756091号、キャッシー他(Cathey et al.)の米国特許第4515577号、ウエストフ(Westhofff)米国特許第4605389号に示される。
【0017】
ベルトの背面およびベルト歯の外面の一方、または両方に配置される選択的な耐摩耗性帆布16は、歯の垂直強度を増加させるためであり、鋳型可能なベルト構造においては特に、スプロケットの溝に入れられるとき、ベルト歯の強度集中を減少するためであり、捲縮ナイロン、綿、麻、ジュート、アラミド、ポリエステル、およびガラス繊維を含むいかなる好適なまたは従来公知の物質が使用されるであろう。帆布は、1層以上使用されても良い。望まれれば、帆布は、ストランドがベルトの進行方向に対して斜めに向けて形成されるように、すじかいに切断されてもよい。帆布は、例えば好ましい角度で交差する経糸と緯糸から成る従来の織物のようないかなる好適な形態でも良く、またピック心線(pick cord)や、編み物、組紐構造、または、それらの類似のものからなっていても良い。
【0018】
この例示の実施形態においては、心線から形成される抗張部材18は、間隔が空けられて並んでおり、螺旋状にベルトの幅方向を横切るように巻かれている。本発明の限定的ではない実施形態における心線は、ベルトの幅の約75%から約95%を占め、好ましくはベルトの幅の約80%から約92%を占める。
【0019】
抗張部材を構成する心線は、あらゆる好適な種類の炭素繊維のヤーンを含み、撚られおよび/または束ねられる複数のヤーンから構成される。この前後、および本開示の全体において、“繊維”および“フィラメント”の用語は、置き換え可能に、例えば4から7μmの小横断直径を有するとともに、その直径の少なくとも100倍の長さを有する物質を指すが、一般的には、非常に大きな、または無限に等しい長さを有し、そして、ヤーンの基本要素を形成する。“ヤーン”の用語は、ここおよびこの開示全体を通して少なくとも2繊維、しかし炭素繊維に関しては一般的には、100またはそれ以上の繊維を指し、それら繊維は、連続的なストランドとして、置かれ、および/または撚られ、さらには、および/または一緒に束ねられ、心線の要素を形成する。“心線”の用語は、この開示全体を通して従来知られるようにおそらく撚られた1以上のヤーンから作られたものを指し、さらには、一緒に置かれ、および/または束ねられ、および/または撚られるであろう2以上のヤーンに使用される。
【0020】
本発明の実施形態の実用化に使用されるための炭素繊維の例は、例えば、前記米国特許第5807194号に述べられ、本発明の実施形態の実用化に使用されるであろう、そこで述べられている炭素繊維に関する記載は、参考としてここに含まれる。炭素繊維は、一般的に例えばポリアクリロニトリル繊維のような他の繊維が炭化されることによって作られ、その炭化工程においては、繊維の直径が実質的に小さくなる。1以上の炭素繊維から形成されるヤーンは、例えば、約66から約1650texの単位長あたりの質量を有するとともに、約1000から約24000のフィラメント数(すなわち、1ヤーンあたりの各炭素繊維の数)を有する。本発明について、使用される炭素繊維は、ASTM4018に従って測定された場合に、50GPaから約350GPa、好ましくは100GPaから約300GPa、最適には150GPaから約275GPaの範囲の引張モジュラスを有する。本発明の実施形態においては、各炭素繊維の横断面の直径が4から7μmの範囲にあり、動力伝達ベルトに使用される心線のフィラメント数は、約5000から約24000であろう。さらなる実施形態では、心線のフィラメント数は、約9000から約15000であろう。従来良く知られているとおり、ヤーンおよびそれから形成される心線は、デニールやデジテックスよりむしろ、それに含まれる繊維数で特徴づけられる。数字および文字“K”で示される表記は、1ヤーン中の炭素繊維の数を示す。それゆえ、“3K”の炭素繊維において、“K”は“1000繊維”の短縮表記であり、“3”は乗数を示す。ゆえに、“3K”の炭素繊維は、3000繊維または3000フィラメントのヤーンに定義づけられる。さらには、心線の表記に関して、例えば“3K-5”の炭素繊維は、5本の3Kのヤーンが一緒に撚られ、そうでなければ、および/または束ねられ、それにより、15000のフィラメント数を有する心線を形成する。本発明の実施形態においては、炭素繊維の心線は、与えられた実用化に好適なヤーンの組み合わせであり、限定されるわけではないが、6K-1,3K-3,6K-2,12K-1,3K-4, 3K-5,6K-3,および6K-4を含む。
【0021】
本発明の実用化の使用に好適な炭素繊維の限定的ではない例としては、商業的に入手可能な東レ社の商品名.TORAYCA-T400 HB 6K 40D、TORAYCA-T7OO GC 12K 41Eがあり、さらに同様の物質としては、以前はBPアモコケミカル社(BP Amoco Chmicals Co)、現在はサイテックカーボンファイバーズ社(Cytec Carbon Fibers LLC)製の商品名.T-650/35 6K 309NTおよびT-650/35 12K 309NTがある。
【0022】
繊維製造会社は、典型的に、繊維が、ヤーンに加工され、スプール上に巻かれるときに破断を抑えるために、そして/または、心線トリートメントが施され、それから形成される繊維及びヤーンの濡れ性を促進するために、サイジングで繊維をコートする。いくつかの例において、サイジングは、それゆえ、動力伝達ベルト中のトリート済心線に組み込まれているヤーンおよび/またはフィラメントに付着される心線トリートメントに相溶性がある化学構造を有し、例えば水ベースまたは溶剤ベースのエポキシ溶液であろう。本発明の開示全体において、“サイジング”という用語は、一般的には、乾燥重量において、すなわち乾燥されたトリート済ヤーンまたはフィラメント(すなわち、上述したように機能するためにサイジングが付着された乾燥ヤーン、またはフィラメント)の重量を基準に、約0.2から2.0%のレベルでヤーンおよび/またはヤーンフィラメントに付着される薄い膜(film)を示すために使用される。
【0023】
本発明の実施形態において、RFL組成物、すなわちエラストマーラテックス組成物は、レソルシノールホルムアルデヒド反応物をさらに有し、ヤーンおよび/または1以上のその炭素フィラメントの少なくとも一部に心線トリートメントとして付着される。本発明の開示全体において、“心線トリートメント”という用語は、ヤーンおよび/またはヤーンフィラメント(サイジングを含んでも良いし、含んでいなくてもよい)に付着され、かつヤーンおよび/またはヤーンフィラメントの表面、並びに、束ねられおよび/または撚られおよび/または他の組み合わせおよびそのような心線トリート済ヤーンの構造によって形成される心線における、そのようなフィラメントやヤーンの間に形成される隙間、の少なくとも一部に配置される物質を示すために使用され、心線トリートメントは、そのようなヤーンおよび/またはフィラメントに、トリート済心線の最終的な重量を元に2.0%以上のレベルで付着される。
【0024】
RFL成分としては、いかなる好適な物質が使用されても良い。RFL溶液において、レソルシノールホルムアルデヒド樹脂の部分量(fraction)は、乾燥重量で、ラテックスの部分量が約60から98%であるに対して、好ましくは、約2から約40%である。好ましくは乾燥重量で、レソルシノールホルムアルデヒド樹脂の部分量は、5から30%で、ラテックスの部分量は、70から95%である。本発明の実施形態におけるこの割合は、以下さらに詳細に述べるように、ここで参照される本発明の特定の実施形態に関して、従来行われている撚りまたは撚り合わせる作業を完成するために充分に必要な屈曲性を保てる一方、摩滅と破壊を減少させるために炭素繊維の種々のフィラメントが充分に浸透されるために見込まれて見出された。使用されるレソルシノールホルムアルデヒド樹脂及びラテックスの特定的な部分量(fraction)または達成される付着量にかかわらず、本発明の実用化において、心線トリートメント溶液の固形分レベルは、RFL溶液が実質的に安定となる程度に設定され、または保たれるべきである。
【0025】
RFL溶液におけるラテックス成分は、HNBR、NBR、カロボキシル化HNBR、カルボキシル化NBR、ビニルピリジン/スチレンブタジエンゴム(“VP/SBR”)、カルボキシル化VP/SBR、クロロスルフォン化ポリエチレン(“CSM”)、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)のようなエチレン‐α‐オレフィンタイプのエラストマー、またはこれらのいかなる2以上の組み合わせを含むいかなる好適な種類のものでも良い。好ましい実施形態においては、ラテックス成分は、カルボキシル化HNBRタイプであって、その等量より少ない重量、または重量比率で、EPDMまたはEPMのようなエチレン‐α‐オレフィンタイプのエラストマーを含む他のエラストマータイプを含んでいても良い。エチレン‐α‐オレフィンエラストマーは、得られるベルトの例えば低温度における屈曲性のように、低温度性能を改善するために、単独でまたはこれらの2以上の組み合わせで使用される。
【0026】
本発明の実施形態に従えば、心線トリートメントの量は、ヤーンの表面の少なくとも一部、及びそれらの各繊維間に形成される隙間の少なくとも一部の中、をコートするのに充分にヤーンに付着される。本発明の実施形態においては、心線トリートメントの付着レベル(pick-up level)は、乾燥重量においてトリート済心線の最終的な重量を基準に、約5.5%から約30%、好ましくは約7%から約25%、さらに好ましくは約7.5%から約24%の範囲に達成される。
【0027】
本発明の実施形態においては、0撚り(すなわち、非撚り)の炭素繊維ヤーン、または少なくとも1つの炭素繊維を有するヤーン束は、RFL心線トリートメントを含む含浸浴に浸漬され、含浸された繊維のヤーンは乾燥され、その後、ヤーンまたはヤーン束は、使用される特定の心線タイプの適切な構造に撚られ、そしてそのコート済心線は、選択的に、心線の表面に付着される好適な心線接着剤の付加的なオーバーコートを含んでいても良く、上示したように、いかなる従来公知のまたは好適な方法を利用するベルト構造に、組み込まれる。この前後、および本開示の全体において、“オーバーコート”という用語は、心線表面に付着される物質を示すために使用されるが、一般的には、各ヤーンおよび/またはその繊維の間に形成される隙間内に存在するわけではなく、一般的には乾燥重量においてトリート済心線の最終的な重量を基準に、約1%から10%の範囲のレベルであって、トリート済心線の、周囲に存在するベルト物質への接着力を促進するように機能する。
【0028】
本発明の限定的ではない実施形態において、心線トリートメントステップを行うとき、心線トリートメントは、ヤーンおよび/または1以上の繊維に対する心線トリートメントが実施された後において、ヤーンの中心部のフィラメントを含むできるだけ多くのフィラメントを被膜できるように、ヤーンの内部、およびヤーンの各ファイバーおよび繊維それ自体の間に形成される隙間内に、染み込ませられても良い。心線における、RFLの心線トリートメントの付着量を増加させるためのいかなる好適な方法は、必須ではないが、本発明の実用化において実施される。しかしながら、一実施形態においては、上述した被膜処理は、さらなるステップを含んでおり、このステップにおいては、少なくとも含浸ステップの間に、ヤーンを構成するフィラメントが広げられることにより炭素ヤーンが開けられ、これにより各繊維は、含浸ステップが成される面積が増加させられる。このヤーンを開き、広げることは、いなかる好適な操作によっても成されるであろう。
【0029】
本発明の実施形態によれば、1以上の変更操作によるRFL心線トリートメントの弾性率の選択によって、100℃で実施される高温度ベルト伸び評価における48時間後の永久ベルト伸びの減少を示すベルトを生産することは、以下述べるように、特定の動力伝達ベルト構造を最適化することになり得るということが、驚くべきことに見出された。
【0030】
本発明の実施形態に従って、RFL心線トリートメントのモジュラスの選択はいくつかの方法において達成することができ、その方法は、心線が暴露される温度、および/またはトリートメント工程における、心線トリートメントのヤーン含浸の暴露期間を含む心線処理の条件(ここでは以下“処理条件”という)を調整すること、炭素繊維が含浸されるRFL心線トリートメント溶液に、相対的に少ない量のカーボンブラックのようなフィラーを加えること、RFLにおけるホルムアルデヒド:レソルシノールの重量比率を変更すること、RFLにおけるレソルシノールホルムアルデヒド樹脂:ラテックスの重量比率を変更すること、心線トリートメント溶液に水性分散系の従来公知の酸化防止剤を微量加えること、RFLのラテックスの種類を選択すること、およびRFLにブロックトイソシアネートを加えることを含む。
【0031】
驚くべきことに、本発明の実施形態に従えば、最適化レベルの本発明の実施形態の通りに、炭素繊維の心線トリートメントとして使用されるRFL組成物の弾性率を変更することによって、結果としてベルト伸びを顕著に減少されることが見出された。さらに、永久ベルト伸びの抑制に関して、特定のレベルの引張モジュラスを有する炭素繊維にとって、最適なRFLの弾性率が存在することが直ちに信じられる。いかなる特定の理論によって結びつけられて解釈されるわけではないが、直ちに、動力伝達ベルトの抗張部材のいかなる種類にとっても、最適な心線トリートメントの弾性率が存在することが信じられ、その構造において、永久ベルト伸びの減少という結果をもたらす。
【0032】
さらに、RFL溶液の塗布後、心線が暴露される高温度や暴露期間等のトリート済心線の処理条件は、以下提示される例およびその説明において示されるように、心線の最終的な湿分、心線の剛性、及び得られるベルトの耐ベルト伸び特性に意義のある影響を与えつつ変更され得ることが見出された。付与されるRFL組成物および/または心線の種類にとって低すぎる暴露温度及び暴露期間に関して、例えば、トリート済心線の残留(例えば後工程における)湿分は、RFL組成物の弾性率に必要的な影響を与えないが、心線束内部に残る高い湿分は、抗張部材、そのヤーン、繊維、および隙間に、RFLが完全にまたは均一に被膜または結合することを妨げる。これは、同様に、ベルトにおける耐ベルト伸び特性の改善というRFLの効果を減少させる。逆に、特定のRFL組成物および/または心線の種類にとって、高すぎる暴露時間や暴露期間に関しては、望ましくないことに、低い湿分、および/またはRFL組成物におけるラテックス部の分解が生じ、それに対応して、高い心線剛性が結果として生じ、これによりRFL心線トリートメントの効果的な弾性率を、脆性および前記のそれに関連する問題が、生じるような望ましくない高いレベルに増加させる。
【0033】
[実証例1]
本発明の効果を実証するために、先端幅19mmの歯を97歯有し(9.525mm ピッチ)、長さが932.925mmの複数の歯付きベルトが形成され、それらは実質的に同一のHNBRのベルト本体部と、2本の炭素繊維ヤーンから形成される抗張心線を有し、ヤーン各々は、250GPaの引張モジュラス、396texの単位長当たりの質量、及び約6000のフィラメント数を有し、商品名TORAYCA-T400 HB 6K 40Dとして日本の東レ(Toray)から入手可能である。ベルトは以下の表2に示すように、特にRFL心線トリートメント組成物、および/または抗張心線に付着されるRFL心線トリートメントの処理条件(乾燥温度および/または暴露期間を含む)の点において異なった。表2に示す各実施例、および比較例においては、上述したように、または表2に示すようにさらに変更したように、表1に示す同一のカルボキシル化HNBRベースの高耐熱性RFL溶液が使用された(以下、“X-HNBR RFL組成物”と示す)。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、X−HNBR RFLを形成するために、アンモニア水が水に加えられ、そして完全に混合されるまで攪拌された。そして、その作られた溶液に、レソルシノール/ホルムアルデヒド樹脂が加えられ、樹脂が完全に溶けるまで混合された。得られた樹脂混合物は、最終的なpHが少なくとも9.0となるように、追加的に必要とされるアンモニア水によって調整された。そして、この樹脂混合物は、カルボキシル化HNBRラテックスに加えられ、完全に混合されるまで攪拌された。そのとき、攪拌しながら、その溶液にホルムアルデヒドが加えられ、得られた溶液が充分に混合された。そしてその混合物は少なくとも2時間熟成され、溶液のpHが必要なアンモニア水によって調整され、最終的なpHが9.0となった。心線トリートメントとして使用される前に、さらに16時間の熟成が与えられた。
【0036】
表1に示す成分に加えて、表2に示す特定の実施例および比較例に使用されるX−HNBR RFLは、ヘビアテックス社(Heveatex)製の固形分45%のHEVEAMUL M-111bワックス分散体がウエット重量4.3%(18重量部)、41%ウレア水溶液がウエット重量6.50%(27.2重量部)、および、グッドイヤーケミカル社(Goodyear Chemical Co.)製の商品名.AQUANOX 29として入手可能な酸化防止剤がウエット重量2%(8.4重量部)で含まれていた。これらの3つの成分、すなわちワックス、ウレア、および酸化防止剤は、本発明に係るRFL溶液においては、必要とされないが、選択的に、処理を補助するために使用され、かつ/または酸化防止剤の場合、本発明の範囲に関係のない特性を改善するであろう。
【0037】
実施例4、6、および比較例5のそれぞれでは、組成物が16時間熟成された後、このステップで、表2に示すように、カーボンブラックがそれぞれの量、X−HNBR RFLに加えられ混合された。表2で示した、この実施例で使用されるカーボンブラックの種類は、固形分35%分散体であって、JCガッダ社 (J. C. Gadd Co.)製の商品名.BLACK SHIELD No. 4として入手可能なものであった。しかしながら、本発明の実用化において、カーボンブラックは、RFL溶液の弾性率を増加させるために使用されるとき、いかなる従来公知または好適な補強タイプが使用され、そして、RFLが製造されるいかなる都合の良いステップにおいて、例えばラテックスが添加されるとき、混合されるだろう。
【0038】
表2で述べるベルトにおける心線トリートメントとして使用されるX−HNBR RFL組成物の弾性率を決定するためには、各組成物のフィルムサンプルについて、動的機械的評価が実施された。表1に示す成分に加えて、各X−HNBR RFL組成物は、上述の酸化防止剤を、ウエット重量基準で組成物の2重量%含んでいた。
【0039】
記載された請求項を含む本開示全体を通して、RFL組成物または心線トリートメント組成物に付された“弾性率”という用語は、実質的に乾燥状態にある結合された組成物における、以下に示す手順に従って得られた弾性率を示すために使用される。これは、抗張部材の隙間の中および周りにある最終的な形状の組成物の弾性率とは区別され得、処理ステップにおいて、実質的に取り去られなかったラテックスや他の原料に残留する水は組成物の有効な弾性率を低下させるという結果をもたらし、またトリート済心線への長期間の高温度暴露は、特にVP/SBRのような耐熱性が低いラテックスが使用される組成物においては、組成物の分解という結果をもたらすであろう。
【0040】
各心線トリートメントにおいて使用されたウレアやワックス分散体は、この評価において得られる弾性率の値の算出のためのRFL組成物には使用されなかった。この改変は、各RFL組成物の弾性率の結果に影響を与えるとは考えられない。特に、それぞれの場合には、同じエラストマーのラテックスが使用され、RFL組成物における、レソルシノールに対するホルムアルデヒドの重量比率は、それぞれの場合において1.274であり、そしてレソルシノール/ホルムアルデヒド樹脂に対するラテックスの溶液の重量比率は、13.17であった。
【0041】
フィルムは、各RFL溶液を含む容器の中にガラスサンプルのコレクタープレートを浸漬することにより用意され、各例において厚さ0.05mm、測定長さ22.7mmのフィルムサンプルを得た。上述したX−HNBR RFL組成物を生産する製造ステップは、本評価のための各RFL溶液を形成するときに、実施された。表2に示す心線トリートメントとして使用されるとき、RFL組成物に暴露される高い温度とは対照的に本評価における試験体は、わずか50℃の温度の暴露において乾燥されたが、それにもかかわらず、それぞれの場合のテストサンプルは、実質的に乾燥された。トリート済心線の相対的に大きく、複雑な構造内にあるRFL組成物を、完全にまたは実質的に乾燥するためには、相対的に高い温度が必要とされる一方、相対的に小さく、平らで、かつ非複雑的なサンプルのスライス形状においては、組成物を、完全に乾燥するために相対的に低い温度しか要求されないからである。
【0042】
そして、ここで報告されるこれらRFL組成物のテストサンプルにおける効果的な弾性率の範囲は、表2に示す歯付き動力伝達ベルトの構造において、心線トリートメントとして使用される同じ組成のRFL組成物によって示される弾性率と実質的に一致する。上記に示し、さらには下記で詳細に示すように、トリート済心線のための処理条件(乾燥温度および暴露期間を含む)は、結果として過度に高い心線剛性にならないように、RFL組成物を実質的に乾燥するために選択される。
【0043】
歪(strain)0.1%、1.6Hz、引張り-引張り(tension-tension)モードにセットされたRSAテスト装置は、加硫されたRFLテストサンプルを分析するために使用された。弾性率は、約-70℃から約170℃の温度範囲にわたって測定される。温度が20℃および100℃のとき、読み取られた結果が、表2の関連のある表題の下に示される。
【0044】
表2で実証される各ベルトでは、X-HNBR RFL単独、またはRFL組成物に加えられる少ない割合のカーボンブラックを含むように表2に従って変性されたものが、上述した炭素繊維への心線トリートメントとして付着される。最初のステップでは、撚られていないヤーンが適切なX-HNBR RFLまたはカーボンブラック変性X-HNBR RFL溶液を含むタンクに浸漬された。本発明に応じた心線に心線トリートメントを付着するためにいかなる方法が使用されても良く、そのため実証例の炭素繊維のヤーンのフィラメントは、ファイバーの露出面積を増加させ、そこに付着されるRFL心線トリートメントの量を増加させるために、浸透ステップの間に、広げられた。広げられるのは、RFLトリートメントの中に入れられ、ヤーンの通るルートに対して垂直に取り付けられ、互いに34mm離間し測定直径がそれぞれ1mmの2つのピンの周りにヤーンを巻きつけて通すことにより行なわれ、これにより2つのピンはヤーンに開きやすい傾向を創り、ピンに接するほとんどのライン幅をフィラメントが占めるように、フィラメントを広げた。RFL組成物を含む浸漬タンクの中にある間、ヤーンに作用される張力は、40から50gに制御される。その後、ヤーンは、タンクから離れて位置する直径81mmのスチールダイを通り、余分なトリートメントが取り去られるとともに、心線トリートメントを浸透させた。そして、ヤーンは2つのオーブンを通った。それぞれ測定長さ3mであり、それぞれのオーブンにおけるヤーンのオーブン時間は、4.5秒であった。第1オーブンのオーブン平均温度は、145.8℃であった。第2オーブンのオーブン平均温度は、以下の表に示すようにおよそ231.5℃、267.0℃、および302.5℃であった。いかなる特定の理論および実践に限定して主張するわけではないが、以下に示す本例のように充分に長い期間相対的に低い第1高温度と、相対的に高い第2高温度の両方にトリート済心線を暴露することは、有効な心線乾燥手段の提供にあたり、すなわちRFL組成物のラテックス部から、実質的な量の残留する水を取り除き、そしてRFL組成物のレソルシノールホルムアルデヒド部の少なくとも一部が、炭素心線そのものおよびRFL組成物のラテックス部の少なくとも一部に反応し、これにより心線トリートメントの心線への接着性が向上させられる。
【0045】
以下に示す例の目的のためにトリート済心線を処理するために2つのオーブンが使用されたが、これらの操作は、単一のオーブンや等価的な装置で行なう単一操作で成し遂げられることも可能である。第2オーブンから出された被膜心線のRFLの付着量、すなわち表面に付着されまたはヤーン内の心線トリートメントの量は、表2に示すように、ヤーンの最終的な乾燥重量を基準にすると、20.45から21.0%の間であった。心線トリートメントの付着レベルは、心線トリートメントの付着(含浸)、処理、トリート、さらには105℃雰囲気下で16時間処理後のヤーンの、10m長さのヤーンの重量増加量を測定することによって、このまたは全ての他の実証の目的のために測定された。
【0046】
乾燥オーブンから出されたとき、被膜心線の剛性は、心線トリートメントの弾性率に関連すると信じられて、単一被膜のヤーンサンプルの剛性が、Taber V-5 Stiffness Testerによって測定された。本方法で分析され、本実証例で使用された各種被膜心線のために、10の測定ユニットの釣合重りが使用され、心線剛性の相対的な測定値が得られた。得られた値の結果を表2に示す。
【0047】
RFL組成物のラテックス部によって主に与えられるトリート処理済心線の湿分、すなわち残留した水は、さらに105℃雰囲気下で16時間暴露された後のトリート処理済心線の10mの部分の重量損失を測定するによって決定され、以下に示す表2の結果を得る。
【0048】
各実施例および比較例においては、METUMAT撚り機(メミンゲン (Memmingen Co.社製))が使用され、メートル当たりの撚り数80で、張力を付与しつつ2つのトリート済ヤーンが一緒に撚られた。その機は、30%のブレーキ、600gのpackage let-off tensionにセットされ、使用された。心線構造は、6K-2であって、すなわちフィラメント数6000のTORAYCA-T400 HB 40D 6Kが2本の構造であった。
【0049】
ヘンケル(Henkel)社製の商品名CHEMOSIL 2410であって、30%固形組成物を有するオーバーコートは、キシレン中に固形分が8.2%となるようにされ、各心線に付着され、これにより、心線とその周りのベルト成分要素の間の接着力を強めた。それにより、撚られた心線は、1kgの張力の下解かれ、前述した第2トリートメントを含むタンクに浸漬され、さらに90℃、18m/秒の速度で、測定長さ8mのオーブンを通された。乾燥後、心線は、同じステップで2回暴露された。トリート済心線におけるこのオーバーコートの付着レベルは、乾燥重量において、トリート済ヤーンの5%未満であった。
【0050】
表2に示す各実施例および比較例における、上述の2つのベルトは、以下に示すように製造・分析され、テストにおける24および48時間後の各ベルトから得られた結果が示される。表2を用いて上述したように、永久ベルトの長さ伸びを測定するために、各ベルトは、図2に模式的に示すように、6つのプーリ32,40,36,38,34,および42から成るリグ30に取り付けられた。原動プーリ32とプーリ40は、ベルト歯に噛み合うために、それぞれピッチ9.525で19個のスプロケット溝を有していた。プーリ34および38は平プーリすなわち歯の無いプーリであって、測定直径50mmであるとともに、テンショナプーリ42は平プーリであって、その測定直径が70mmであった。テスト装置は、テストリグを含むチャンバーから成り、テスト中全体にわたって、その中の温度は100℃に保持された。原動プーリ32が6200rpmで駆動されるとともに、プーリ42に200Nの初期張力が作用され、ベルトはリグにおいて、荷重が作用されずに反時計回りに動作させられ、ベルト長さの増加量(すなわち、ベルト伸び)が、ベルトの元の長さからの増加パーセンテージとして、テストの24時間後及び48時間後の各期間の終わりに、1つのベルトについて測定された。本開示およびその全体の趣旨として、本テストは、“高温度ベルト伸び評価”として示される。
【0051】
【表2】

【0052】
心線トリートメント処理における、暴露温度を保持したままで、かつ同じ心線トリートメントRFL溶液が用いられた場合の、第2ステージの心線乾燥温度の変化の効果は、表2に示す比較例1、実施例2、3の結果に見られた。これらの結果は、上述したように第2ゾーンにおけるオーブン温度が約267℃である場合、24時間、48時間両方のベルトの元の長さから測定されたベルト長さ増加は、0.1%未満であり(実施例2)、一方第2ゾーンのオーブン温度がそれより低い(比較例1)、または高い(実施例3)場合、24、48時間に読み取られたときのいずれにおいても、0.1%より大きいベルト伸びの増加に生じる。すなわち、心線が暴露されている期間、および心線トリートメント処理の間のRFL組成物へ暴露される高温度は、その心線を有するベルトの最終的な特性に影響を与えることが理解可能である。さらに、この心線が組み込まれたベルトに生じるベルト長さの増加を最小限にするための特定の組成物に対して、暴露期間における最適な温度が存在することが理解可能である。
【0053】
いかなる特定の理論を特定して主張するわけではないが、このステージの暴露期間の低すぎる暴露温度、例えば比較例1の230℃は、RFLのラテックス成分部に液体を残してしまい、かつ/またはラテックス成分の加硫度を著しく低下させるという結果を生じ、その結果として、ここで示される乾燥フィルムサンプルに比べ、相対的に低いRFLモジュラスという結果をもたらす。前者は、比較例1および実施例2で示される各々の湿分、および各々のベルト伸び結果によって明らかにされる。このステージの露光期間における過度の高温度、例えば実施例3(比較例)に示す約300℃は、トリート済心線から多量の水を除去すると信じられるが、以下述べるように非常に高い心線剛性をもたらす。さらに直ちに信じられることに、過度の高温度および/または暴露期間は、示された乾燥フィルムサンプルに比べると、トリート済心線の内部および周辺における、好ましくないレベルまで、そして報告されるベルト伸びの結果に反映されるくらいまで、RFLの弾性率を効果的に増加するのに充分なくらいに、RFLのラテックス成分の少なくとも一部の加硫度を高くするように作用する。過度または長期間の高温暴露は、さらに、特に相対的に耐熱性が低いゴムラテックスが組み込まれた組成物に関し、RFLを分解させることもある。いずれの場合においても、受け入れ難いレベルまで、永久ベルト長さの増加が生じる。
【0054】
この現象はさらに、トリート済心線に暴露された温度のみが異なる実施例4および6で示される結果に現れる。いずれのベルトも優れた耐ベルト伸びを有するが、実施例6のベルトは、わずか2.4%の残留湿分を含み、それに付随して実施例4に比べて心線剛性を増加させ、わずかに耐ベルト伸び性が劣っていた。すなわち、過度に高い心線剛性、およびそれに付随した低い残量湿量は、心線トリートメントが適切に被膜されることを阻害し、妨げるが、上述の実証として、相対的に高剛性の心線は、相対的に剛性の低い心線を有するベルトに比べ、実際に、耐ベルト伸び性を顕著に改善するという結果となった。
【0055】
過度に低いモジュラスを有するRFLの場合、ベルト伸びは、炭素繊維の各フィラメントによって引き起こされる磨耗と摩滅が増加させられるために、低モジュラスのRFL物質によって充分に保護されずに、これにより抗張部材の強度低下を招く。
【0056】
過度に高いモジュラスを有するRFLの場合、高剛性のRFL心線トリートメントが被膜された後撚られる間にヤーンが纏められる結果として、炭素繊維ヤーンのフィラメントは損傷されると考えられる。さらに、そのような非常に高いモジュラスのRFL物質の心線剛性は、炭素繊維ヤーンのフィラメントが効果的におよび/または充分に、撚り構造にともに束ねられるのを妨げ、これにより、ベルト複合構造中に、相対的に大きな中空スペースをもたらす。結果的に、ベルトに荷重が作用されて駆動されるとき、この中空スペースは崩れ、ベルトに伸びが生じ、すなわち測定される元の長さからの増加パーセントが生じる。
【0057】
心線トリートメントにおける、ラテックスの加硫度および/または残留湿分(すなわち心線の剛性)の変化に伴い、RFL組成物へのカーボンブラックの添加は、物質の弾性率を増加させるという効果をもたらす。RFL組成物への少量のカーボンブラックの添加の効果は、同一処理温度、暴露期間において見られ、表2の比較例1、実施例4及び5におけるベルト伸びの結果として現れる。これらの結果は、X-HNBR RFL組成物にカーボンブラックが添加されないとき(比較例1)、本テストの24、及び48時間後の両方において、0.1%を超える永久ベルト伸びが生じる。同様に、X-HNBR RFL組成物に、カーボンブラックがウエット重量を基準に8%添加されるとき(実施例5)、ベルトが意義のある高い弾性率の心線トリートメントを含むために、0.1%を超える永久ベルト伸びは、本テストにおける48時間後の1つの例においてのみ生じる。X-HNBR RFL組成物に、カーボンブラックがウエット重量を基準に4%添加されるとき、組成物の弾性率が前者の比較例と非比較例(実施例5)の間になり、そして24時間後においては永久ベルト伸びが1つの例で0.1%を超え、48時間後では0.1%以下の結果となる。実施例4で示されるベルト伸びの結果に関しては、明らかなことに、一つの例において、ベルト伸びのレベルが実際に、24時間後に読み取られた値から、48時間後に読み取られた値において低下した。一般的には、ベルト伸びはテスト時間の増加とともに増加するが、いくつかの例においは、例えばエラストマーベルトの成分が膨張するために、および/または測定誤差によって、ベルトはいくらか収縮する場合がある。すなわち、RFL心線トリートメントへのカーボンブラックの添加は、心線トリートメントの弾性率に影響を及ぼし、これにより最終的なベルト特性は、そのような心線トリートメントによって処理された心線により構成されると見られる。さらに、RFL心線トリートメントにおけるカーボンブラックの最適レベルは存在し、そのようなトリート済心線は、組み込まれると、永久ベルト長さの増加を最小限に留める。
【0058】
特に、処理条件(すなわち、高温度、及び暴露期間)の設定のために、少なすぎまたは多すぎるカーボンブラックがX-HNBR RFL組成物に加えられるとき、受け入れられない永久ベルト伸びが生じ、それは、いずれの場合においても、RFL心線トリートメントの望ましくない弾性率および、上述したようにそれに関連し付随する問題のためと考えられる。逆に、適切な量のカーボンブラックがX-HNBR RFL組成物に加えられ(例えば実施例4における4phr)、最適なRFLモジュラスが達成されると、特に48時間高温度ベルト伸び試験の結果として示されるように、永久ベルト伸びの発生レベルが抑制されることが見出される。すなわち、X-HNBR RFL組成物として表1に示す特定の成分に関して、並びに関連する実施例において適用される処理条件にとって、望ましいRFLの弾性率を達成するために、本発明においてカーボンブラックが使用される場合、RFL溶液のウエット重量基準で約0.5から約10%の量、好ましくはウエット重量基準で約2から約7.5%の量、最適にはウエット重量基準で約3から約5%の量が使用される。
【0059】
RFL組成物の弾性率に影響するラテックスの種類を含む、多くのファクターが変更されるであろうから、技術を有する実務家は、上述のX-HNBR RFL組成物に対するカーボンブラックの好ましい添加量として提示された範囲が、他の組成物および/または他のトリート済心線の処理条件にとって、必然的に効果的かつ充分であるわけではないと直ちに理解するであろう。すなわち、本発明の主題に従って、一般的にRFL組成物の弾性率を増加させるために使用されるとき、ウエット重量基準で組成物の約25%未満のカーボンブラック量が効果的であろう。そのように使用されるときの量は、RFL組成物のウエット重量に対して、ウエット重量基準で好ましくは約1%から約20%、最適にはウエット重量基準で約3%から約15%である。
【0060】
この分析から導かれ、かつ上述の表2で示される実施例2,4,6の結果と矛盾しない結果を利用すると上述したように心線の剛性に悪影響を与えることなくRFLから実質的な量の水を取り去ることができる程度に充分な処理条件によって暴露した後、または適切かつ充分に心線トリートメントを乾燥できるようないかなる他の手段によって得られた心線トリートメントの弾性率は以下のようであると信じされ、すなわち、その弾性率は、20℃において、好ましくは約1.0 × 107 dyn/cm2(1.0 × 106 Nm-2)から約5.0 × 108 dyn/cm2 (5.0 × 107 Nm-2)の範囲、さらに好ましくは約3.0 × 107 dyn/ cm2 (3.0 × 106 Nm-2)から約3.8 × 108 dyn/ cm2 (3.8 × 107 Nm-2) の範囲、さらに好ましくは3.5 × 107 dyn/ cm2 (3.5 × 106 Nm-2)から約3.5 × 108 dyn/ cm2 (3.5 × 107 Nm-2) の範囲、最適には7.0 × 107 dyn/ cm2 (7.0 × 106 Nm-2) から約3.0 × 108 dynes/ cm2 (3.0 × 107 Nm-2) の範囲である。また、心線トリートメントの弾性率は、100℃において、好ましくは約 5.0 × 106 dyn/cm2 (5.0 × 105 Nm-2)から約4.0 × 108 dynes/cm2 (4.0 × 107 Nm-2)の範囲、さらに好ましくは約1.0 × 107 dyn/cm2 (1. 0 × 106 Nm-2) から約 2.5 × 108 dyn/cm2 (2.5 × 107 Nm-2)の範囲、さらに好ましくは約1.8 × 107 dyn/cm2 (1.8 × 106 Nm-2から約 2.7 × 108 dyn/cm2 (2.7 × 107 Nm-2)の範囲、最適には約2.5 × 107 dyn/cm2 (2.5 × 106 Nm-2)から約1.0 × 108 dyn/cm2 (1.0 × 107 Nm-2)の範囲である。
【0061】
上述したように、RFL溶液の弾性率をここで見出した効果的な範囲に調整するいかなる方法も、本発明の実施化においては、等価に使用され得る。すなわち、例えばRFLにおけるホルムアルデヒド:レソルシノールの重量比率を増加させることにより、RFLモジュラスを増加させる効果があることが見出された。例えば、X-HNBR RFL組成物である表1に示す組成物における、ホルムアルデヒド:レソルシノールの重量比率を約0.75から2.0の間、好ましくは約1.0から約1.75の間、最適には約1.1から約1.4の間とすると、結果として、乾燥組成物は、上示したように効果的な範囲内の弾性率を示す。さらに、上示したように、ブロックトイソシアネート組成物がRFL溶液に加えられると、そのモジュラスを増加させるであろう。すなわち、例えば、X-HNBR RFL組成物である表1に示す成分に、商品名GRILBOND IL-6としてEMS Company社(イーエムエスカンパニー社)から入手可能な固形分50%レベルのブロックトイソシアネートを添加することにより、得られる組成物の乾燥弾性率を増加させる。表1に示す組成物に対して使用するにあたり、50%固形分物質の好適な量は、例えばエラストマー100重量部に対して、0から25重量部(phr)であって、さらに好ましくは約2から約15phr、最適には約5から約10phrであって、これによりRFL溶液に加えられるブロックトイソシアネートの量は、好ましくは、乾燥重量基準で、RFL組成物の約4.6%から約9.3%である。
【0062】
加えて、乾燥物におけるRFL組成物の弾性率は、RFL溶液における、レソルシノール/ホルムアルデヒド樹脂(RF樹脂)成分に対するエラストマーラテックス成分の重量比率を改変することにより増加させることができる。すなわち、例えば、表1に示す成分に関しては、RF樹脂に対するラテックスの重量比率は、13.17であったが、約5から約20でもよく、さらに好ましくは約7.5から約17であって、最適には約10から約15である。さらには、RFL組成物におけるラテックス成分は、全体的にまたは一部を第2エラストマーラテックスに置換しても良く、またはいかなる2以上のエラストマーラテックスの組み合わせでも良く、これにより最終的な乾燥RFLの弾性率に変化がもたらされる。特定の実施形態に従ってこの変化を示す実施例は、以下に示す実証例2において示される。
【0063】
技術を有する実務家が直ちに理解できることに、RFL心線トリートメントの弾性率の改変に関する大量の技術は、本発明の主題に従って使用可能であって、さらには上述した非限定的ではない2以上の技術は、上述したように効果的なRFLの弾性率レベルを達成するために、RFL組成物を作るときに、組み合わせ使用可能である。すなわち、例えば、以下に示す実証例2で示すように、RFL組成物の弾性率を効果的な範囲に調整することに関して、効果的なカーボンブラックの量は、RFL溶液に使用されるエラストマーラテックスの特定の種類によって変化するであろう。下述する実証例2において示される結果において例えば示されるように、RFL組成物に使用されるカルボキシル化HNBRエラストマーラテックスを、カルボキシル化されていないHNBRエラストマーラテックスに置換し、表1に示すようにその他を実質的に同様にした場合、上記した手順に従って得られた組成物の20℃、および100℃における弾性率は、エラストマーラテックス成分としてカルボキシル化HNBRエラストマーラテックスを使用した成分が示す弾性率に比べ高くなった。
【0064】
[実証例2]
上述したように炭素繊維の抗張心線部材が使用され、さらには心線トリートメントとして上示した弾性率が効果的な範囲にあるRFL組成物が使用された歯付き動力伝達ベルトは、100℃高温度ベルト伸び評価の48時間後において、元のベルト長さを基準に0.1%以下にベルト伸びが抑制され、上示した弾性率が効果的な範囲外にあるRFL組成物で処理された炭素繊維の抗張心線部材が使用されたベルトは、その手法に従って測定されたベルト伸びが0.1%を超えると予想される。この実証において、炭素繊維抗張心線は、実質的に上述した実証例1と同一であるが、以下に示すように改変され、その炭素繊維の心線トリートメントとして組み込まれるRFL組成物は表3に示すように、以下のように改変され、上述した実証例1のように歯付き動力伝達ベルトに組み込まれた。
【0065】
RFL組成物の弾性率、および/またはサンプルベルトによって結果として示されるベルト伸びに対する、エラストマーラテックスタイプ、心線の引張モジュラス、および処理条件の効果を示すために、追加的なものとして実質的に上述の表1のX-HNBR RFL組成物であるRFL組成物を用意したが、ここではカルボキシル化HNBRの代わりに、他の単一エラストマーラテックスタイプ、または2つのエラストマーラテックスタイプの組み合わせを使用した。いずれの例にでも、RFL組成物において、ホルムアルデヒド:レソルシノールの配合率が、1.274であり、ラテックス:レソルシノールホルムアルデヒドの配合率が13.17に定められた。
【0066】
日本ゼオン社製の商品名ZETPOL Aとして入手可能なカルボキシル化されていないHNBRラテックスは、285.86重量部が1つのRFL組成物において置換され、この開示においてはこの後“HNBR RFL組成物”として示され、このHNBR RFL組成物は、さらに表1に示すRFL組成物において示される88重量部の代わりに52重量部の脱イオン水を有していた。この特定の実施例では、52重量部のみの水が使用される一方、ある条件下では、例えば溶液の安定性をおよびシェルフ寿命を改善するために、追加的な水が使用されてもよく、すなわち、RFL溶液の組成物において、ウエット基準パーセントによって表される固形レベルは、通常約25から35であり、さらに好ましくは約27から35であり、好適には約30から33である。
【0067】
次の実施例においては、第1の組み合わせは、この開示内においてはこの後“XHNBR−VP/SBR RFL組成物”として示され、表1で述べたRFL組成において使用される40%固形分のカルボキシル化HNBRラテックス143重量部と、RFL組成物のエラストマーラテックス部としてオムノバソルーションズ(Omnova Solutions)社製の商品名GENTAC FS118として入手可能な41%固形分のVP/SBRラテックス140重量部との組み合わせが利用された。
【0068】
次の実施例においては、この開示内においてはこの後“XHNBR/EPDM RFL組成物”として示され、表1で示されたRFL組成物に使用された40%固形分のカルボキシル化HNBRラテックス142.93重量部と、ザロードコーポレーション(The lord Corporation)社製の商品名CHEMLOK E0872(以前はEP872)として入手可能な50%固形分のEPDMラテックス115.20重量部との組み合わせが、RFL組成物のエラストマーラテックス部として使用され、そのRFL組成物は表1に示す88重量部の代わりに脱イオン水52重量部が用いられた。
【0069】
次の実施例においては、この開示内においてはこの後“EPDM RFL組成物”として示され、ザロードコーポレーション社製の商品名CHEMLOK EP872として入手可能な50%固形分のEPDMラテックス180重量部がRFL組成物のエラストマーラテックス部として使用され、そのRFL組成物は表1に示す88重量部の代わりに脱イオン水182重量部が用いられ、さらにアンモニア水1重量部のみ、レソルシノールホルムアルデヒド樹脂8重量部、およびホルムアルデヒド2.5重量部が使用された。各成分量の相違は、他の典型的なRFL組成物に比べて、固形分が高く、結果として高い非安定性のためである。しかしながら、表1に示すRFL組成物に関して提示される記載に実質的に従って用意される。
【0070】
上記成分に加えて、各示される例における心線トリートメントとして使用されるために、表3に要約される特定の実証例で使用される各組成物は、選択的な成分として、へベアテックス(Heveatex)社製の45%固形分のHEVEAMUL M-111bワックス分散体がウエット重量で4.3%(18重量部)、41%ウレア水溶液がウエット重量6.50%(27.2重量部)含んでいた。表3に酸化防止剤の使用が示されるように、グッドイヤーケミカル社(Goodyear Chemical Co.)製の商品名.AQUANOX 29として入手可能な酸化防止剤がウエット重量基準で3.2%(8.4重量部)使用された。カーボンブラックの使用が示されるように、先述した実証例1と同じ種類で、同じ相対的な比率のものが、利用された。VP/SBRを有するこれらの成分にとって、使用されたVP/SBRは、グッドイヤーケミカル社製の商品名.VP106Sとして入手可能な41%固形分タイプであった。
【0071】
以下に示される表3に提示されるベルト伸びデータのための各組成物は、以下に付記される範囲以外の部分において、上記で提示された説明に従って炭素繊維ヤーンに付着された。しかしながら、調べられるベルト伸び程度に対するRFL組成物の弾性率への影響を検証するために、これらの組成物は、表3に示すようにカーボンブラックまたは酸化防止剤のレベルまたは処理温度、または暴露期間の変化により、改変された。
【0072】
上述の実証例1で使用された特定の炭素繊維タイプ(以下、本開示においては“T400"という)に加えて、引張モジュラス230GPaで、単位長あたりの質量800tex、フィラメント数12000であって、東レ社製の商品名.TORAYCA-T700 GC 12K 41として入手可能な第2の炭素繊維タイプ(以下、本開示においては“T700"という)が以下の表に示すように使用された。
【0073】
T400およびT700いずれにおいても、ヤーンは、それぞれのRFL組成物を含む浸漬タンクから出され、測定直径1.1mmのダイ、次ぎに測定長3mの第1乾燥オーブンを30m/分の速度で表5に示す温度で通され、さらには測定長さ5mの第2加硫オーブンを30m/分の速度で表5に示す温度で通された。T400ヤーンは、さらに上述の実証例1で示されるようにさらに処理され、T700ヤーンは、1m当たりの撚り数80回で張力約50g作用され、ペアではなく単一的に撚られ、得られた心線は、実証例1で述べたようなオーバーコートとしてCHEMOSIL 2410で処理された。EPDM RFL組成物が用いられた実施例11および12は、1m当たりの撚り数が60回であった。さらに、T700心線においては、浸漬される際、100gの張力が保たれて、RFL心線トリートメントを含む浸漬タンクを通された。
【0074】
弾性率の測定のために、表3で示すベルト例においてRFL組成物の心線トリートメントとして使用されるワックス分散体、酸化防止剤、またはウレアのいずれも、弾性率の測定が行なわれかつ表3に結果が報告されるRFL組成物のテストサンプルでは、使用されなかった。重ねてそれは、心線トリートメント処理条件に関する以下述べる実証例1以外では、種々の形態における組成物の各弾性率には影響がないと信じられる。テストサンプルは、上述の実証例1で示される手法に従って用意され、上述した温度範囲下でかつ上述した手法に従って各例の弾性率が測定され、結果が以下の表3に記録された。
【0075】
単一被膜ヤーンの剛性は、以下述べるようにいくつかの実施例と比較例において確認され、そして単一被膜ヤーンはRFL浸漬タンクから出され、オーブンで処理され、その得られた結果は、以下の表に示される。しかしながら、T700心線が使用された実施例、比較例では、Taber V-5 Stiffness Testerにおいて、500の測定ユニットの釣合重りが使用された。これは、T400に比べ本心線の質量が大きく、比較的有意義な結果を得るためには、より多くの釣合重りの使用が必要とされるからであった。処理済心線の実例における、湿量および心線トリートメントの付着量レベルは、それぞれの場合に、上記実証例1に示す手法に従って測定された。
【0076】
ベルト伸び結果は、48時間後に代えてテストの100時間後に得られた結果以外は、実証例1に関する上述の手法に従って得られた。100時間後の測定値は、48時間後の値に比べ正確であると考えられる。一般的に、適切な処理条件、すなわちここで述べるようにトリート済心線を乾燥することによって、テストにおける100時間後のベルト伸び率が、一定となることが見出された。逆に、心線にとって、それが不適切な処理である場合、すなわち不十分および/または不均一な乾燥であったり、または不十分なRFL付着量である場合、ベルト伸びは、一般的には、安定せず、高くなり続ける。さらに、上記したように、稀な環境下を除いて、テストにおける100時間後において、ベルト伸びが0.1%未満となるベルトは、同様に、テストにおけるわずか48時間後においてもベルト伸びは0.1%未満となる。
【0077】
【表3】

【0078】
XHNBR RFL組成物を用いた場合の表2に示す弾性率の結果と比べると、HNBR RFL組成物を用いた場合の表3の結果は、実質的に同様の組成であるにもかかわらず、カルボキシル化HNBRをカルボキシル化されていないHNBRに置換したことは、得られたRFL組成物の弾性率を劇的に増加させる効果があることを示している。しかしながら、特に、この弾性率の増加は、予想されることではあるのだが、ベルト伸びに対する傾向を増加させる結果をもたらし、例えば表2の実施例2、実施例7を比べると、相対的に高い弾性率の心線トリートメントを組み込まれたものは、同様に低いベルト伸びを示した。これは、実施例2によって得られるわずかに高い対応値に比べて、実施例7に示すように、低い残留湿分とそれに付随して生じる高い心線剛性のためであると直ちに信じられる。すなわち、RFL組成物によって示される弾性率の値は、耐ベルト伸びを決定するための1つのファクターである一方、処理済心線の湿分やそれに関連する心線剛性も同様に、耐ベルト伸びの決定に関連すると考えられ、湿分の減少(および剛性の増加)によって永久伸びの減少がある程度もたらされる。実施例8は、実施例7で使用されたものと同じHNBR RFL組成物が使用されて実証されるが、相対的に堅く複雑なT700心線が適用され、それゆえ改変された心線処理パラメータ、すなわちわずかに低い処理温度とわずかに長い暴露期間が取り入れられた。重ねて、相対的に高いモジュラスのRFL組成物が使用されたにもかかわらず、テストにおける100時間後の優れたベルト伸びが得られる。特に、相対的に高い湿分が顕出されたにもかかわらず、優れたベルト伸びの値が得られる。このように、より堅い心線構造は、堅さが低いT400心線に比べて、耐ベルト伸びに悪影響を与えることなく、高い残留湿分を順応させるものと信じられる。
【0079】
表3に示すXHNBR-VP/SBR RFL組成物および表2に示すXHNBR RFL組成物が用いられた場合における弾性率の結果を比べると、50重量%のカルボキシル化HNBRラテックスの代わりにVP/SBRラテックスを用いることは、XHNBRの代わりに全てHNBRを用いた場合に表されるほどではないが、実質的に同様の組成物であるにもかかわらず、得られる組成物の弾性率を上昇させるという効果を有する。しかしながら、重ねて、心線トリートメントの弾性率が、例えば表2の実施例2で示されるものよりも高いにもかかわらず、実施例10のサンプルベルトは、テストにおける100時間後において、優れた耐ベルト伸び性を示した。これは、この実施例において示されるように、相対的に低い残留湿分とそれに付随して発生する高い心線剛性の値のためであると信じられる。
【0080】
心線ヤーンおよび/またはフィラメントへのRFL組成物の付着において、可能な限りの水分量の除去は、長期使用におけるベルトの伸び傾向を減少させることに関して有益である。一般的に、好ましくは、トリート済心線の処理ステップが終了したとき、ここおよび上記で述べるように使用される手法に従って測定された残留湿分は、50重量%未満である。本発明のさらなる実施形態においては、残留湿分は、約30重量%未満であり、さらに別の実施形態では、約1から25重量%の範囲にある。
【0081】
表2のXHNBR RFL組成物によって得られた結果に比べて、XHNBR/EPDM RFL組成物によって得られた表3に示す結果は、表1に示すXHNBR RFL組成物に使用されるカルボキシル化HNBRラテックスの50重量%をEPDMラテックスに置き換えることは、XHNBRの全てをHNBRに置き換えた場合に示すほどではないが、得られる組成物の弾性率を増加させる効果があるということを示す。さらに、EPDMベースの実施例11、12では、優れたベルト伸びの値が得られる。特筆すべきことに、実施例12においては、低い心線トリートメント温度および長い暴露期間を取り入れたことが、データから明らかなように、実施例中、最も低いベルト伸びの値を示した。これは、心線処理工程におけるRFL組成物からの相対的に漸進的な水分の除去は、耐ベルト伸びを改善することを示唆する。
【0082】
上記実証例1で提示された特定の実施例は、単一炭素繊維タイプを利用するが、いかなる他のタイプの炭素繊維もまた、本発明の範囲内において使用することは可能である。本実証例で用いられた東レから入手可能なT700の炭素繊維タイプは、同様に本発明の主題に従うと、肯定的な結果をもたらした。特定の材料は、前述した実証例で使用された繊維より高いフィラメント数を有し、単一ヤーンが有効に使用されこのタイプを使用するベルトの抗張部材を形成し、さらにはヤーンそれ自体が本実証例で使用されるヤーンより大きいので、そのような心線が取り入れられたベルトのベルト伸びを抑制するためには、ヤーントリートメント処理ステップにおける、心線トリートメントタンクから取り出された浸透ヤーンの好適な暴露温度は、T400ヤーンのときの上記のものとは異なることは当業者ならば直ちに認識するに違いない。そのような改変は、従来、実務家の技術としてよく行なわれ、本発明の範囲内であって、例えば表3のT700心線を使用するテストにおける第2ゾーンのオーブン温度に反映される。
【0083】
[実証例3]
一定のRFL加硫弾性率の下、永久ベルトの長さ変化に対する心線引張モジュラスの影響をさらに実証するために、表1、2の実証例1において、上述した4つの歯付きベルトが形成された。いずれの場合においても、HNBRベルト本体部が使用され、かつ全てが上述した実証例1の心線トリートメントステップに従ったベルトとして、表1の実施例4の記述に応じて作られたRFL心線トリートメントが、心線トリートメントとして使用された。上述したように、オーバーコートはCHMOSIL 2410(ヘンケル社製)が同様に使用された。
【0084】
2つのベルト1は、引張モジュラス250GPa、単位長さ当たりの質量396tex、フィラメント数12000である、T400ヤーンから形成された6K-2心線を抗張部材として有し、一方2つの比較ベルト2は、引張モジュラス392GPa、単位長さ当たりの質量364tex、フィラメント数12000であって炭素繊維から形成される6K-2心線である、東レから入手可能な商品名.Toray M40B 6K 50Bを抗張部材として有した。心線におけるヤーンは、両方の例において、上述した表2、3における実施例、比較例と同様の方法により撚られていた。
【0085】
ベルト長さの増加量を測定するために、ベルト1および比較ベルト2のいずれも、テスト期間は延ばされたが、上述した同一のベルト長さ変化テスト、すなわち100℃で実施される高温度ベルト伸び評価が行なわれた。テストにおける100時間後において、2つのベルト1はいずれも、ベルト伸びが0.15%未満を示したが、2つの比較例ベルト2はいずれも元の長さから0.17%より大きな増加を示した。特に、200時間における、2つのベルト1はいずれも、ベルト伸びレベルが、テストにおける100時間後のときの性能に比べて、低下していたが、比較例2ベルトは、200時間のとき、ベルト伸びが0.2%より大きく示した。テストの300時間後でも、いずれのベルト1のベルトは、ベルト伸びが0.15%より大きく示さなかった。すなわち、そのような心線が歯付きベルトに組み入れられることにより、ベルト伸び程度に対する心線の引張モジュラス効果が示された。
【0086】
本発明の1以上の実施形態に従って製造された動力伝達ベルトによって示される耐ベルト伸び性の特筆すべき改善に加えて、炭素繊維から形成される抗張心線を備え、ここで提示される乾燥時の弾性率を有する心線トリートメントを有するベルトは、さらに、高い荷重が掛けられる用途における歯付きベルトに従来使用されていた、アラミド、ガラス繊維のような補強用物質の性能を大部分で上回り、限定されるわけではないが、高い耐荷重性、曲げ疲れ抵抗性、引張強さ残率を含む性能特性について、全般的に優れていた。
【0087】
例えば、本発明の実施形態に従って、さらには図1のようにここで提示される記述に従って製造され、炭素繊維によって補強された歯付きベルトは、エンジン走行試験において、500時間以上を示した。このテストにおいては、ベルト荷重が、各歯あたりかつベルト幅の単位mm当たり8Nよりわずかに大きく、4000rpmで作動され、かつ有効張力2500Nであった。これは、ガラスのような他の物質によって形成されるが、同じ直径の抗張心線を備える比較ベルトによって示される破損時間の3倍以上であった。本発明の本実施形態に従ったそのような炭素繊維補強歯付きベルトはさらに、上述した高温度ベルト伸び評価の800時間後において、残存引張強度が66%を示し、ガラス補強歯付きベルトの残存引張強度に比べ約40%以上優れていた。
【0088】
[実証例4]
本発明の1以上の実施形態に従って製造されたタイミングベルトは、内燃機関、特に自動車の内燃機関において、カムシャフトを駆動するために使用されたとき、1以上の特定の性能分野において、顕著な改善を示すことが見出された。特にこれらのベルトは、エンジン動作に際し、関連するクランクシャフトに関係する自動車エンジンのカムシャフトの望ましくない角振動を顕著に削減できることを見出した。この前後において、“角速度”の用語が意味するところは、カムシャフトの回転振動であって、すなわちシャフトの長手軸を中心とするシャフト振動であって、それは例えば、その長手に沿って作用される捩れ力に起因してカムシャフトによって、またはカムシャフト自身の自由本体回転(free body rotation)によって、作用される駆動トルクの非不変的で、非一定的な現象によって中位のカムシャフト速度で付加される周期的なまたは断続的な角速度によって現れる、いかなる又は全ての捩れ振動によって生じさせられるであろう。さらに、与えられたエンジンにおける所定のカムシャフト速度では、一般的に、駆動システムでは1以上の共鳴周波数が存在するので、その所定の速度では、カムシャフトの角振動による大きな振幅が生じる。
【0089】
内燃機関で駆動されるカムシャフトであって、クランクシャフトに関係するカムシャフトの望ましくない角振動を顕著に減少するための方法を提供する本発明の効果および特徴をさらに実証するために、実証例1についての上述の2つのベルトが製造され、それぞれ実質的に同一である、短繊維が混入されたHNBRベルト本体部を有するが、それぞれ抗張部材が異なる。1加硫後の、短繊維が混入されたHNBRベルト本体部の平均モジュラスは、100%伸長したとき2.5MPaであった(ゴムの中で実質的にランダムに配向される繊維の存在のために、加硫ゴムに発生するわずかな異方性を考慮して、平均結果は、ゴムの圧延方向と同一および逆方向に引っ張ったときの平均結果である。)。ベルト3は、抗張心線として、東レから入手可能なT700炭素繊維心線を有しており、その心線には実証例2に関する上述のように、HNBR RFL心線トリートメント組成物が付着されていた。心線トリートメントは、実質的に実証例1に関する上述のように付着されているが、付着処理後の第1暴露温度が120℃であり、第2暴露温度が230℃であった。比較ベルト4のサンプルは、その抗張部材として、ベルト3と実質的に同じ直径、すなわち直径7μmの心線を有しているが、この場合、その心線は22tex×3×18の構造を有するUガラスから形成され、引張モジュラス92GPaであった。比較例4においては、日本グラスファイバー(Nippon Glass Fiber)社製の商品名1022として入手可能な心線に、固有のトリートメントが付着された。
【0090】
自動車の内燃機関における、クランクシャフトに関係するカムシャフトの相対的な角振動を減少させるという、本発明の特徴に従うベルトの効果を実証するため、ベルト3および比較ベルト4それぞれを、図3に示すように44歯付きカムシャフト52、19歯付き水ポンププーリ54、22歯付きカムシャフト56、アイドラ58、直径72mmのテンショナプーリから成るとともに、上記各部品が9.525mmのピッチで特徴付けられる、4つのシリンダーユニットを有するインジェクターモーターエンジンのテストリグ50に取り付けた。リグは、大気温度120℃、最大有効張力4500N、30mmプーリに作用される荷重150N/mmで、カムシャフトを駆動し、クランクシャフトによって駆動される試験ベルトによって動作させられた。得られたエンジン力は、115から150馬力であった。そのテストで使用される特定のエンジンにおける、限界速度は4000から4500rpmの範囲であるとともに、通常の運転速度は2700-3000rpmであった。そのテストにおいて、エンジンは、アイドル状態からおよそ5000rpmの最大速度まで走行され、クランクシャフトに関係するカムシャフトの角振動が燃焼インパルスに関連して振動の発生するエンジンの燃焼順番で記録され、本テストで使用される特に4つのシリンダーがあるテストエンジンの場合、2、4番目で記録される。結果が表4に提示され、垂直軸がカムシャフトのピーク振動の程度を表し、水平軸が毎分のクランクシャフトの回転数を表す。表4において、相対的に高い振動レベルを示す2つの曲線は、ベルト3および比較ベルト4のテストにおいて、燃焼順番が2番目における結果に対応し、相対的に低いピークの振動曲線を示す2つの曲線は、ベルト3および比較ベルト4のテストにおいて、燃焼順番が2番目における結果に対応する。
【0091】
【表4】

【0092】
本技術に関する当業者は、クランクシャフトに関係するカムシャフトの角振動レベルが減少すること、および相対的なピーク角振動レベルが、共鳴周波数が発生するいなかる速度(通常動作速度のみならず大きな限界速度)から外れて上下にシフトすることは、当業者ならば望ましいことと直ちに認識するだろう。表4で示された結果から、比較ベルト4に比べて、ベルト3のサンプルは、両方において、4000から4500rpmの限界エリアにおいて、2番目の燃焼順番で、クランクシャフトに関係するカムシャフトの角振動の劇的な減少をもたらすとともに、相対的なピーク角振動は、4番目の燃焼順番においても、通常のエンジン動作範囲から離れた位置にシフトすることが理解できる。
【0093】
すなわち、加硫非鋳型タイプのエラストマーベルト本体部、および本発明の実施形態に従って、炭素繊維から形成される少なくとも1つのヤーンを含む心線から形成される抗張部材を有する耐久性があり、伸びの低いタイミングベルトを提供することによって、内燃機関における、クランクシャフトに関係し、歯付きベルトによって駆動されるカムシャフトの振動を減少するための方法が提供される。
【0094】
本発明は、説明の目的のために上記において詳細に記載されたが、このような詳細は単にその目的のためであって、種々の変形例が、請求の範囲によって限定されるような範囲を除いて本発明の精神あるいは範囲から逸脱することなく、当業者によって可能である。ここに例示的に開示された本発明は、ここに特に開示されない、いくつかの要素がなくても適切に実現されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】横断的に部分的に切り離された部分的な縦断面図であって、埋設される心線と歯を有する、本発明の実施形態に係るベルトを示す。
【図2】本発明の特徴を特徴づけるために利用されるテスト機の外形を、模式的に表示した図を示す。
【図3】本発明のさらなる特徴を特徴づけるために使用されるモーターエンジンを、模式的に表示した図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関におけるクランクシャフトに関係するカムシャフトの角振動を減少させるための方法であって、前記カムシャフトが、加硫エラストマーベルト本体部、およびこのベルト本体部に埋設され、螺旋状に巻かれた心線から形成される抗張部材を有する歯付きベルトで駆動され、心線トリートメント組成物が前記心線の少なくとも一部を被膜するエラストマーラテックスを備え、
(a)炭素繊維を備える少なくとも1つのヤーンを、前記心線として選択するステップと、
(b)前記心線トリートメント組成物にレソルシノールホルムアルデヒド反応生成物を組み入れるステップと、
(c)心線トリートメント組成物の弾性率を、温度20℃においては、約1.0×107dyn/cm2から約5.0×108dyn/cm2の範囲内に、温度100℃においては、約5.0×106dyn/cm2から約4.0×108dyn/cm2の範囲内に選択するステップと、
(d)前記心線トリートメント組成物を前記心線に付着し、トリート済心線を形成するステップと、
(e)前記トリート済心線を未加硫エラストマー組成物に組み入れ、集成体を形成するステップと、
(f)前記集成体を加硫し、前記歯付きベルトを形成するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記心線の引張モジュラスを、約100から約300GPaの範囲にあるように、前記抗張部材を選択するステップをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心線の引張モジュラスを、約150から約275Gpaの範囲にあるように、前記抗張部材を選択するステップをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加硫エラストマーベルト本体部が、
(a)水素化アクリロニトリルブタジエンエラストマー
(b)ポリクロロプレン
(c)アクリロニトリルブタジエンゴム
(d)スチレンブタジエンゴム
(e)アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン
(f)エピクロヒドリン
(g)ブタジエンゴム
(h)ポリイソプレン
(i)エチレン-α-オレフィンエラストマー
から選択された少なくとも1つのエラストマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマーベルト本体部が、エラストマー100重量部に対して、約0.5から約20重量部の繊維をさらに備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記心線トリートメント組成物のエラストマーラテックスが、
(a)水素化アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス
(b)アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス
(c)カルボキシル化水素化アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス
(d)カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス
(e)ビニルピリジン/スチレンブタジエンゴムラテックス
(f)カルボキシル化ビニルピリジン/スチレンブタジエンゴムラテックス
(g)スチレンブタジエンゴムラテックス
(h)クロロスルフォン化ポリエチレンゴムラテックス
(i)エチレン-α-オレフィンゴムラテックス
から選択された少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記心線トリートメントの含水量が、前記トリート済心線の重量を基準に、約50重量%未満となるような充分な条件により、前記トリート済心線を暴露し、処理済トリート済心線を形成するステップをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記条件が、温度とこの温度における暴露期間を含み、前記含水量が約30%未満にされる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記含水量が、約1%から約25%の範囲のレベルに設定される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記心線トリートメントが前記炭素繊維に付着され、前記心線トリートメントの前記炭素繊維における付着量レベルが、最終的な乾燥繊維の重量を基準として、約5.5%から約30%の範囲に達する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記トリート済心線にゴム‐繊維接着剤を備えるオーバーコートを付着するステップをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素繊維ヤーンが、約1000から約24000の範囲のフィラメント数を有するように選択するステップをさらに備え、そして前記心線を約5000から約24000の範囲のフィラメント数を有するように選択する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ベルトが、少なくともベルトの背面およびベルトの歯表面のいずれか一方に沿って配置される被覆帆布要素をさらに備える請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−509662(P2006−509662A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561465(P2004−561465)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/041679
【国際公開番号】WO2004/057209
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】