説明

包装体及び包装体の製造方法

【課題】集束部での密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体、および、集束部での密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体を効率よく製造できる製造方法を提供すること。
【解決手段】端部320が集束され、集束された部分324で横断する横シール322がされた筒状フィルム310と、筒状フィルム310に充填されて封入された内容物Cとを備え、筒状フィルム310が2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム316と、2枚の層形成フィルム316を接着する接着剤層318を有する多層フィルムで形成される、包装体300。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体及び包装体の製造方法に関し、特に塩化ビニリデン系樹脂の筒状フィルムに内容物が充填され、端部が収束され、密封性に優れる包装体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーセージやスティックチーズ等の内容物が充填された筒状フィルムを密封し個々の包装体を得る場合の密封手段として、筒状フィルムの端部を金属製のワイヤクリップで結さつする方法が知られている。ところが、金属製のワイヤクリップで結さつする方法では製品検査における金属探知においてワイヤクリップを探知してしまい、内容物への金属異物の混入を検知できない不便があるので、筒状フィルム端部を集束し横シールする方法が行われるようになってきた。かかるシール方法においては、横シールされた部分あるいはその近傍でピンホールが生じ易くなるという機械的強度の低下が見られ、そのため次のような対策が提案されている(特許文献1参照)。
(1)横シールされる部分の筒状フィルムの厚さを補うテープを、集束された後の筒状フィルム端部に配設した上で筒状フィルムと共にシールする。
(2)横シールされる部分の筒状フィルムの厚さを補うテープを、未だ集束されていない筒状フィルム端部の内容物の不在部に配設し、筒状フィルム端部とテープを共に集束した上でシールする。
【0003】
【特許文献1】特許第2516885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の筒状フィルム端部を横シールする手段により製造された包装体では、レトルトやボイルなどの加熱処理により内容物が体積膨張して、内圧が増して横シールされた部分の耐圧強度が不足し、加熱シール部分が破れて密封不足となり、外気の流入による内容物の腐敗や、内容物の水分の浸出による包装体の横シールされた部分の周辺の汚れの恐れがあった。レトルト工程中に包装体が破れると、汚れを除くのに時間が掛かるために生産効率を大きく下げることにもなっていた。
そこで本発明は、集束部での密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体、および、集束部での密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体を効率よく製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る包装体は、例えば図1に示すように、端部320が集束され、集束された部分324で横断する横シール322がされた筒状フィルム310と;筒状フィルム310に充填されて封入された内容物Cとを備え;筒状フィルム310が、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム316と、2枚の層形成フィルム316を接着する接着剤層318を有する多層フィルムで形成される。
【0006】
このように構成すると、筒状フィルムが2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層を有する多層フィルムで形成されるので、集束され横シールされた端部の多層フィルムの層間での剥離が防止され、密封性が高く耐圧強度が高くなる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る包装体では、例えば図1に示すように、請求項1に記載の包装体において、接着剤層318が、ウレタン系樹脂で形成されてもよい。
このように構成すると、接着剤層がウレタン系樹脂で形成されるので、例えばレトルト食品のように、包装体が高温に晒されても接着剤層の接着強度は維持される。
【0008】
前記目的を達成するため、請求項3に記載の発明に係る包装体の製造方法は、例えば図1、図2および図6に示すように、内容物Cが充填された筒状フィルム310の端部320が集束され、集束された部分324で横断する横シール322がされてなる包装体300の製造方法であって;2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム316と2枚の層形成フィルム316を接着する接着剤層318を有する帯状フィルムFの長手方向の側縁部を重ね合わせて縦シールし筒状フィルムF1を成形する縦シール工程S110と;筒状フィルムF1に内容物Cを充填する充填工程S120と;内容物Cが充填された筒状フィルム15aに対して、筒状フィルム15aの長手方向に所定間隔毎の内容物の不在部15bを扁平に形成するしごき工程S130と;不在部15bを横断方向に、前記長手方向に間隔を持つ第1の二つの位置X1、X2で線状に横シール322をする、あるいは、第1の二つの位置X1、X2の間にわたり帯状の横シールをする横シール工程S140と;第1の二つの位置X1、X2の間で、横シール322の幅方向に集束すると共に集束部分324で前記長手方向に間隔を持つ第2の二つの位置Y1、Y2で線状にもしくは第2の二つの位置Y1、Y2の間を帯状に加熱シールする集束工程S150と;第2の二つの位置Y1、Y2の間で、前記筒状フィルムF1を切断する切断工程S160とを備える。
【0009】
このように構成すると、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層とを有する帯状フィルムから筒状フィルムを形成し、筒状フィルムに内容物を充填し、端部を横シールし、集束して包装体を製造するので、集束され横シールされた端部の層形成フィルム間での剥離が防止され、密封性が高く耐圧強度が高くなる。また、連続的に、包装体を効率よく製造できる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る包装体の製造方法では、例えば図2〜図5に示すように、請求項3に記載の包装体の製造方法において、帯状フィルムFが、塩化ビニリデン系樹脂から成るコンパウンドを環状ダイ106から溶融押出し、長く連続した中空状フィルムa1とする工程S10と;中空状フィルムa1をインフレーション法によって延伸する工程S20と;延伸された中空状フィルムa3を径方向に潰して折りたたみ、扁平a4にする工程S30と;扁平にされた中空状フィルムb1(a4)の長手方向の2ヶ所の側縁部b6、b7を所定の幅で切除し、2枚の層形成フィルムb2、b3を製造する工程S60と;2枚の層形成フィルムb2、b3の内の1枚の層形成フィルムb2の片面に接着剤層Pを形成する工程S80と;形成された接着剤層Pに2枚の層形成フィルムb2、b3の内の他の1枚の層形成フィルムb3を重ねて圧着する工程S90とを有して製造されてもよい。
【0011】
このように構成すると、帯状フィルムが、塩化ビニリデン系樹脂から成るコンパウンドを環状ダイから溶融押出し、インフレーション法によって延伸し、折りたたんで側縁部を切除して2枚の層形成フィルムとし、2枚の層形成フィルムの内の1枚の層形成フィルムに接着剤層を形成し、他の1枚の層形成フィルムと重ねて圧着して製造されるので、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムとそれらを接着する接着剤層を有する帯状フィルムを効率的に大量に製造できる。なおここで、「中空状フィルム」とは、管のように長く中空部を囲むフィルムをいい、押しつぶされて中空部がなくなった状態も含む。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る包装体の製造方法では、例えば図2に示すように、請求項4に記載の包装体の製造方法において、延伸された中空状フィルムを熱固定する工程S50をさらに含んでもよい。
このように構成すると、延伸された中空状フィルムを熱固定する工程を含むので、扁平な2枚の層形成フィルムの形状が安定し、その後に形成する層形成フィルムが時間と共に変形することを防止できる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る包装体の製造方法では、例えば図1に示すように、請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の包装体の製造方法において、接着剤層318がウレタン系樹脂で形成されてもよい。
このように構成すると、接着剤層がウレタン系樹脂で形成されるので、例えばレトルト食品のように、包装体の製造後に高温に晒されても接着剤層の接着強度は維持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、包装体の筒状フィルムが2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層を有する多層フィルムで形成されるので、集束され横シールされた端部の多層フィルムの層間での剥離が防止され、密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体が提供される。
【0015】
また本発明によれば、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層を有する帯状フィルムから筒状フィルムを形成し、筒状フィルムに内容物を充填し、端部を横シールし、集束して包装体を製造するので、集束され横シールされた端部の層形成フィルム間での剥離が防止され、密封性を高め、耐圧強度を高めた包装体を効率よく製造できる製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
先ず、図1を参照して、本発明の実施の形態としての包装体300について説明する。図1は、本発明の実施の形態としての包装体を説明する図であり、(a)は包装体300を説明する一部断面正面図であり、(b)は筒状フィルム310の積層構成を示す拡大断面図、(c)は端部320の拡大図である。包装体300は、筒状フィルム310内に内容物Cが充填され、両端の端部320で横シールされている。内容物は、例えばソーセージやチーズ等の食品でもよく、糊等のぺースト状のものででもよく、特に限定はされない。筒状フィルム310は、長手方向の縦シール312により1枚の平板の帯状フィルムが筒状に形成されている。
【0018】
端部320では、図1(c)にも示すように、筒状フィルム310が集束されている。すなわち、筒状フィルム310を扁平に潰し、扁平な面を横断する方向に細かく折りたたまれて集束されている。そして、扁平に潰された面を貼り合わせるように横断して横シール322がなされ、また、加熱シール部326にて集束された形状を維持するように加熱シールされている。このように端部320を集束し、集束部324で横シールすることにより、ワイヤクリップを用いるときのように、端部320での応力集中を抑えることができる。しかし、集束部324を加熱シールするので、集束部の集束した状態が僅かに緩み得るワイヤクリップと異なり集束の状態が強く維持されるので、横シール322に生ずる応力は大きくなる傾向がある。
【0019】
ここで、筒状フィルム310は、図1(b)に示すように、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム316を、接着剤層318で接着した多層フィルムで形成される。塩化ビニリデン系樹脂とは、塩化ビニリデン単量体を60〜97重量%含み、塩化ビニル単量体、塩化ビニルを一部含むビニル系単量体、メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸ブチル単量体を3〜40重量%含む樹脂で、可塑剤、安定剤、顔料、滑剤などが適宜配合された樹脂をいう。塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム316を用いることにより、筒状フィルム310のガス遮断性が優れ、また、熱収縮性および透明性にも優れるので、特に食品包装の用途に好適である。さらに、層形成フィルム316を2枚重ねて用いることにより、一の層形成フィルム316にピンホールを生じても、二の層形成フィルム316のピンホールの位置と異なることが多いので、ピンホールが連通してガス遮断性が劣ることはない。ここで、層形成フィルム316とは、多層の筒状フィルム310を形成するための単層のフィルムを指す。すなわち、それぞれの層形成フィルム316にピンホールが形成されたとしても、2枚の層形成フィルム316のピンホールが連通することは稀で、多層フィルムとしてのピンホールの形成が防止される。ここで、2枚の層形成フィルム316を接着剤層318で接着するので、2枚の層形成フィルム316が剥離し、それぞれのピンホールが連通し易くなることがない。よって、横シール322に生ずる応力が大きくなっても、ピンホールの形成が防止される。以上のことより明らかなように、包装体300は、密封性が高く、耐圧強度の高い包装体となる。
【0020】
接着剤層318は、塩化ビニリデン系樹脂と相溶性のよいウレタン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体で形成されるのが好適である。特に好ましくは、ウレタン系樹脂で形成される。ウレタン系樹脂としては、2液型ウレタン系樹脂あるいは1液型ウレタン系樹脂が用いられる。2液型ウレタン系樹脂は、2官能のイソシアネートであるジイソシアネートとグリコールを主とするポリオールとを反応させる樹脂である。1液型ウレタン系樹脂は、活性の強いイソシアネートをフェノールやアミンなどの化合物で保護して不活性化し、加熱により遊離したイソシアネート基をポリオールと反応させるブロック型樹脂である。特にアロファネート結合による架橋反応やビュレット結合によるウレタンの架橋反応は、接着剤の凝集力を高めるために有用である。ウレタン系樹脂は、塩化ビニリデン系樹脂との化学的親和性(例えば相溶性パラメータ値)が大きいので、接着強度が大きく、かつ、100℃程度の高温に加温しても接着強度が維持される。そこで、例えば食品を充填した包装体をレトルトするために高温に加温しても、筒状フィルム310の密封性が低下することがない。なお、多層フィルムの一例としては、2枚の層形成フィルム316の厚さを各々20μm、接着剤層318の厚さを5μmとし、全体で45μmの厚さとする。
【0021】
続いて、図2を参照して、塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム、多層フィルムおよび包装体の製造方法について説明する。図2は、塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム、多層フィルムの製造方法を含め、包装体を製造する製造方法を説明するフローチャートである。
【0022】
先ず、図3を参照して、塩化ビニリデン系樹脂のコンパウンドからパリソンa1、a2および中空状フィルムa3、a4を製造するまでの工程について説明する。図3は、塩化ビニリデン系樹脂のコンパウンドからパリソンa1を製造し、延伸するフィルム製造装置100のブロック図であり、図の左側から右方向にパリソンa1、a2および中空状フィルムa3、a4は流れるように走行する。すなわち、左側が上流側、右側が下流側となる。また、図中の上下方向は、フィルム製造装置100の上下方向と一致する。フィルム製造装置100は、原料コンパウンドを貯留するホッパー102と、原料コンパウンドを加熱溶融しダイへ押し出すように加圧する溶融押出機104と、溶融混錬された原料コンパウンドを、溶融した原料コンパウンドの環状体であるパリソンa1として吐出する環状ダイ106と、環状ダイ106から押し出されたパリソンa1を冷却する冷却バス110と、冷却したパリソンa2を延伸に適する温度に調整するために加温する加温バス112と、加温したパリソンa2をインフレーション法により延伸するための一対のピンチローラ122、142と、延伸した中空状フィルムa4を熱固定する熱固定ユニット160と、熱固定された中空状フィルムa4をロールa5に巻く巻取機152とを備える。また、フィルム製造装置100を走行するパリソンa1、a2の走行を円滑にするためにガイドローラ116、120を備え、中空状フィルムa4の走行を円滑にするためにガイドローラ148を備える。なお、本書では、パリソンa1、a2を、中空状フィルムと称することもある。
【0023】
ホッパー102は、上部が広く下になるほどすぼまる形状の容器で、上部から投入された原料コンパウンドを下端の小さな開口から流す。ホッパー102の上端を開口して該開口から原料コンパウンドを投入してもよいし、上部に連通するパイプを連接して該パイプを通じて原料コンパウンドを投入してもよい。必要により、開口面積を閉鎖・調整する弁を有してもよい。ホッパー102の下端の開口は、溶融押出機104に連通し、原料コンパウンドを溶融押出機104に供給する。溶融押出機104は、原料コンパウンドを加熱溶融し混錬して、溶融した原料コンパウンドをスクリューで加圧する。溶融押出機104の原料コンパウンド出口には、環状等の流路が形成された環状ダイ106が配置され、環状ダイ106の環状リップ(不図示)から吐出されることにより、溶融した原料コンパウンドは、環状の溶融体であるパリソンa1となる。
【0024】
冷却バス110は、環状ダイ106から押し出され、まだ中空状で溶融した状態であるパリソンa1を冷却バス110に貯留する冷水で急冷すると共に、一対のロ−ラの間に中空状のパリソンa1を通すことにより径方向に扁平に潰すピンチローラ114を備える貯槽である。冷水の温度は、通常、0〜15℃とされるが、水以外の冷媒によって冷却してもよい。貯留する冷水を冷却するための冷却器(不図示)を備えてもよいし、冷水を外部の冷却器(不図示)で冷却するための循環配管系(不図示)を備えてもよい。ピンチローラ114の一対のローラが動力により回転し、パリソンa2を所定の速さで送り出してもよい。ここで、所定の速度とは、溶融押出機104に押し出され、環状ダイ106の環状リップ(不図示)から吐出されるパリソンa1とバランスする速さである。
【0025】
温水バス112は、冷却されたパリソンa2を加温して、後の工程の延伸工程に備えるために温水を貯留する貯槽であり、パリソンa2を温水バス112中に導き走行させるためのガイドローラ118を備える。温水の温度は15〜60℃とされるが、水以外の加温媒体によって加温してもよい。冷却バス110と温水バス112とは、隣接して配置され、その間にパリソンa2の走行を支えるためのガイドローラ116を備える。
【0026】
一対のピンチローラ122、142は、離間して配置され、その間の中空状フィルムa3中に空気を封入して、延伸された中空状フィルムa3とする。すなわち、ピンチローラ122、142では、それぞれ上下に配置された一組のローラが扁平な中空状フィルムa3を気密に圧着させる。また、ピンチローラ122、142では、中空状フィルムa3を所定の速さで走行させてもよい。温水バス112の上方にガイドローラ120を備える。上流側のピンチローラ122の下流すぐの位置には、中空状フィルムa3が破裂したときにパリソンa2がピンチローラ122に巻きつくトラブルを回避するための駆動ローラ124、案内ローラ126およびローラ駆動機構としてのエアシリンダ128が配置されている。通常運転時は、駆動ローラ124および案内ローラ126は中空状フィルムa3と接触しない位置に退避している。しかし中空状フィルムa3が破裂すると、駆動ローラ124に垂れ下がり、エアシリンダ128が案内ローラ126を駆動ローラ124とほぼ接する位置まで下げ、駆動ローラ124と案内ローラ126とで中空状フィルムa3になり損ねたパリソンa2を挟み、駆動ローラ124の回転により確実に下流側に送り出し落下させる。したがって、パリソンa2がピンチローラ122に巻きつくトラブルが回避され、ピンチローラ122より上流側における運転は連続して行われ、迅速な再稼働を行うことができる。
【0027】
下流側のピンチローラ142に挟まれる中空状フィルムa3を、上下方向に潰して折りたたみ扁平にするため、ピンチローラ142の上流すぐの位置に中空状フィルムa3を挟む間隔を漸次減少する一対のフリーローラ群132が配置される。フリーローラ群132は、中空状フィルムa3に沿って複数のローラを有し、複数のローラがピンチローラ142に挟まれる中空状フィルムa3を徐々に扁平にする。各々のフリーローラ群132は、位置駆動装置としてのエアシリンダ136により離間間隔が調整される。
【0028】
一対のピンチローラ122、142間のほぼ中央には、バブルガイド130が配置される。バブルガイド130は、空気で膨らんだ中空状フィルムa3より僅かに大きな枠体によって構成され、中空状フィルムa3の振れを抑える。また、フリーローラ群132のローラの間に破裂検知器134が配置される。フリーローラ群132のローラの間に配置されることにより、破裂検知器134は通常運転時には中空状フィルムa3と接し、中空状フィルムa3の破裂を容易に検知できる。破裂検知器134により押圧力の急変として破裂を検知した場合には、例えば制御装置(不図示)を介して、エアシリンダ128や駆動ローラ124を起動させ、中空状フィルムa3を挟んで下流側に送り出し落下させる。
【0029】
下流側ピンチローラ142の上位置のローラに接してガイドローラ146が配置され、扁平にされた中空状フィルムa4をピンチローラ142のローラに沿って走行させる。ガイドローラ146で中空状フィルムa4をピンチローラ142のローラに沿って走行させることにより、ピンチローラ142での中空状フィルムa3の気密性を向上させる。ピンチローラ142の上方にガイドローラ148を備え、中空状フィルムa4を水平に走行させて、巻取機152で中空状フィルムa4を巻き取る。ガイドローラ148と巻取機152との間にピンチローラ150を備える。ピンチローラ150の周速度は、ピンチローラ142の周速度(中空状フィルムa4を走行させる速度)の0.90〜0.97倍、好ましくは0.92〜0.96倍の速さとし、巻取機152でロールに巻き取った中空状フィルムa4の巻姿を整える。ピンチローラ150の周速度をピンチローラ142の周速度の0.90倍未満とするとロールa5に巻き取られた中空状フィルムa4に皺が入り、0.97倍を超えると、扁平フィルムの長手方向の端部でのいわゆる耳立ち現象を生じ、巻姿が悪くなる。
【0030】
フィルム製造装置100で原料コンパウンドからロールに巻かれた中空状フィルムのフィルムロールa5を製造するには、先ずホッパー102に原料コンパウンドを投入する。原料コンパウンドは、通常、塩化ビニリデン単量体60〜97重量%、塩化ビニル単量体、塩化ビニルを一部含むビニル系単量体、メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸ブチル単量体3〜40重量%からなる塩化ビニリデン系樹脂に可塑剤、安定剤、その他必要に応じて顔料、滑剤などを適宜配合して調整して用いる。
【0031】
可塑剤としては、セバチン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチルまたはこれを混合して用いる。安定剤としては、エポキシ化植物油などが好適に使用される。原料コンパウンドの組成は、通常、塩化ビニリデン樹脂系樹脂100重量部、可塑剤0.1〜10重量部、安定剤0.1〜5重量部とする。
【0032】
ホッパー102に投入された原料コンパウンドは、下端の開口から溶融押出機104に供給され、溶融押出機104にて加熱され溶融する。溶融した原料コンパウンドは、溶融押出機104から押し出され、環状ダイ106を通って溶融管状体としてのパリソンa1として冷却バス110中に流下し、冷水で冷却されて、溶融状態からフィルム状のパリソンa1となる(ステップS10)。フィルム状のパリソンa1は冷却バス110内で、ピンチローラ114で扁平に折りたたまれて、また、ピンチローラ114のローラが所定の回転速度で回転することにより、パリソンa1は所定の速さで走行する。パリソンa1の内部の、ピンチローラ114で挟まれた上側に離型剤Lが注入されており、パリソンa1の内面に塗布される。離型剤Lは、パリソンa1がピンチローラ114により圧着されることにより、ピンチローラ114で挟まれた上側に保持される。パリソンa1の内部の、ピンチローラ114で挟まれた上側に離型剤Lを、環状ダイ106を上下に貫通するパイプを介して上部タンク(不図示)から注入しておくことにより、離型剤Lの塗布は容易かつ連続的に行われる。離型剤Lが塗布されることにより、パリソンa1同士の粘着が防止され、また、後段でパリソンa2の内面を離間し易くなる。
【0033】
ピンチローラ114で折りたたまれたパリソンa2は、冷却バス110から上方へ走行し、ガイドローラ116で下方に走行の向きを変え、加温バス112内の温水中に没入する。加温バス112内で温水により加温されたパリソンa2は、ガイドローラ118で方向を変え、加温バス112の上方へ走行し、ガイドローラ120で方向を変えてほぼ水平に走行し、ピンチローラ122に至る。
【0034】
パリソンa2は、製造スタート時に内部に封入され、かつ、ピンチローラ122とピンチローラ142との作用のために内部に閉じ込められた圧縮空気により強制的に膨張され、管状体の直径が通常2〜5倍に膨張したバブルである中空状フィルムa3となる。すなわち、中空状フィルムa3は、インフレーション法により延伸される(ステップS20)。そこで、ピンチローラ122とピンチローラ142とは内部の空気が漏出しないように上流側のパリソンa2と中空状フィルムa4とを押圧する。中空状フィルムa3の内部の空気が僅かに漏洩し、内部の圧力が低下した場合には、ピンチローラ142を、すなわちピンチローラ142を支持するコラム140を、ピンチローラ122側に接近するように移動して、またはピンチローラ122を支えるコラム138をコラム140側に接近するように移動して、内部の圧力を所定の圧力に維持する。コラム138・140の下部にはピニオン(不図示)を備え、床上に設置されたラック(不図示)と絡んで移動出来るようにすることが好ましい。
【0035】
中空状フィルムa3は、ピンチローラ122とピンチローラ142との中間において、バブルガイド130により導かれ振れを抑えられる。中空状フィルムa3は、フリーローラ群132により徐々に扁平に折りたたまれ、ピンチローラ142に至る(ステップS30)。
【0036】
ピンチローラ142で折りたたまれた中空状フィルムa4は、ガイドローラ146、ガイドローラ148で方向を変えられ、ピンチローラ150を経て、熱固定ユニット160に導かれる。延伸した塩化ビニリデン樹脂は、その後も結晶化度が大きくなり、中空状フィルムa4の寸法は変化する。例えば、室温において1ヶ月間に寸法として10%以下の収縮を生ずる。そこで、所定の温度で中空状フィルムa4を加熱して、結晶化度をより大きくする(ステップS40)。これを熱固定(Heat Set)という。典型的には、30℃〜80℃の温度で、好ましくは30℃〜60℃の温度で加熱することで熱固定を行う。温度が80℃を超えると中空状フィルムa4の走行が安定せず、皺を生ずることがある。加熱の方法は、例えば、誘導加熱ロールもしくは抵抗加熱ロールなどのヒートロール、または輻射加熱で行う。図3で示すように、誘導加熱ロール(不図示)あるいは輻射器(不図示)を備える熱固定ユニット160を巻取機152の上流側に配置し、延伸した中空状フィルムa4に熱固定を行うのがよい。熱固定を行うことにより、例えば結晶化度を20%〜40%、より好ましくは25〜40%、特に好ましくは25〜35%とすると、その後のフィルム等の変形が起こらず、好適である。なお、熱固定は、中空状フィルムa4をロールa5に巻き取った後に、加温して加速してもよいし、常温に長時間維持することによって行ってもよい。
【0037】
ピンチローラ142で折りたたまれ、熱固定された中空状フィルムa4は、巻取機152にてロールa5に巻かれる(ステップS50)。
【0038】
次に、図4をも参照して、延伸された中空状フィルムa4が巻き取られたフィルムロールa5から、層形成フィルムb2、b3を製造する方法について説明する。図4は、延伸された中空状フィルムa4が巻かれたフィルムロールa5から層形成フィルムb2、b3を製造する方法を説明するブロック図である。フィルムロールa5から、折りたたまれた中空状フィルムb1が引き出されて、平行する2つのカッター202で側縁部b6、b7を切除される。中空状フィルムb1は側縁部b6、b7が切除されることにより、所定の幅の2枚の層形成フィルムb2、b3となる(ステップS60)。折りたたまれた中空状フィルムb1は、実質的に一定の幅に形成されるため、該幅から、所定の幅で側縁部b6、b7が切除されることにより、一定の幅の層形成フィルムb2、b3となる。2枚の層形成フィルムb2、b3は、それぞれロールb4、b5に巻かれる(ステップS70)。なお、必要に応じて、ロールb4、b5に巻くステップS70を省略して、ステップS60から後のステップS80・ステップS90へインラインでつなぐこともできる。
【0039】
続いて、図5を参照して、2枚の層形成フィルムb2、b3を接着する工程について説明する。図5は、2枚の層形成フィルムb2、b3に接着剤Pを塗布し、接着して多層の帯状フィルムFとする工程を説明するブロック図である。2つの層形成フィルムb2、b3が巻かれたロールb4、b5の内の一つのロールb4から、層形成フィルムb2が引き出される。層形成フィルムb2は、ガイドローラ218で走行方向を変えられた後、液体の接着剤Pを貯留する接着剤バット210上のかき上げ・塗布ローラ212で接着剤Pを塗布される。
【0040】
かき上げ・塗布ローラ212は、その下部で接着剤バット210に貯留される接着剤Pに浸り、回転することにより接着剤Pを表面全体に付着する(ステップS80)。接着剤Pの粘性等により、かき上げ・塗布ローラ212の表面に付着する接着剤Pは、厚く、また、不均一に付着することがある。そこで、かき上げ・塗布ローラ212に隣接して掻き落しリバースローラ214が配置される。接着剤バット210の接着剤Pを付着して上方向に回転するかき上げ・塗布ローラ212の表面に対し、掻き落しリバースローラ214の表面が、ほぼ接するように下向きに回転することで、かき上げ・塗布ローラ212の表面に厚く、不均一に付着する接着剤Pを薄く、均等に広げ、余分な接着剤Pを接着剤バット210に戻すように掻き落す。よって、層形成フィルムb2の片面に接着剤Pが均一に塗布される。接着剤Pが層形成フィルムb2に確実に塗布されるように、かき上げ・塗布ローラ212に対向する押し付けローラ216が配置され、かき上げ・塗布ローラ212と押し付けローラ216とで層形成フィルムb2を挟む。または、掻き落しリバースローラ214の替わりに不図示のドクターナイフを用いて不均一に付着する接着剤Pを掻き落としてもよい。
【0041】
かき上げ・塗布ローラ212で接着剤Pを均等の厚さに塗布された層形成フィルムbpは、ガイドローラ220で走行を支えられると共に、接着剤Pを塗布された面を鉛直上方に向けられる。接着剤Pを塗布された面を鉛直上方に向けた層形成フィルムbpは、乾燥炉230に導かれる。
【0042】
乾燥炉230は、層形成フィルムbp上の接着剤Pを乾燥するための炉で、高温乾燥空気を炉内に導入し、接着剤P中の溶媒を蒸発させる。層形成フィルムbpが乾燥炉230内を水平または上方に凸に湾曲して走行するように、ローラ群232が炉内に配置され、走行する層形成フィルムbpを下から支える。乾燥炉230は、例えば50℃〜70℃に加熱する乾燥空気を不図示のダクトから導入し、蒸発した溶媒を含む空気を不図示の排出口から溶媒捕集装置(不図示)へ導き、衛生上問題ないように処理して排出する。乾燥空気の温度が70℃を超えるとフィルムb2の走行が安定せず皺を生ずることがある。また乾燥空気の温度が50℃未満では溶媒の蒸発が不十分であるため接着力が不足することがある。
【0043】
乾燥炉230で接着剤Pを乾燥した層形成フィルムbpは、ガイドローラ240で走行を支えられ、圧着ローラ250に導かれる。また、2つのロールb4、b5の内の他の一つのロールb5から、層形成フィルムb3が、ガイドローラ260、262を経て、圧着ローラ250に導かれる。圧着ローラ250にて、層形成フィルムbp上の接着剤Pに層形成フィルムb3が圧着され、接着剤Pを塗布された層形成フィルムbpと層形成フィルムb3とが接着される(ステップS90)。すなわち、層形成フィルムb2、接着剤P、層形成フィルムb3の多層フィルムFが製造される。多層フィルムFは、細長い帯状であり、多層の帯状フィルムFとなる。乾燥炉230で溶媒を蒸発させて層形成フィルムbpと層形成フィルムb3とを圧着するが、必要に応じて巻き取られたロール21を温度30℃〜45℃で1週間以内静置して、層形成フィルムbpと層形成フィルムbpとの接着力をより高める処理を行う。
【0044】
帯状フィルムFは、ガイドローラ270、272で走行を支えられ、ロール21に巻き取られる(ステップS100)。ロール21に巻き取るときに、先端にローラ274を備え他端が回転自在に支持されたアーム276により、帯状フィルムFをロール21方向に押すことにより、ロール21は皺なく巻かれ、緩みにくくなる。ロール21に巻かれた帯状フィルムFは、原反として、離間する後の工程に供給される。なお、層形成フィルムb2、b3は図1に示す層形成フィルム316に相当し、接着剤Pは図1に示す接着剤層318に相当する。
【0045】
次に図6を参照して、帯状フィルムFから包装体300の製造方法について説明する。図6は、帯状フィルムFから包装体300を製造する製造装置を説明する図で、(a)は包装体を製造する包装体製造装置1の全体構成を示す構成図、(b)は集束・加熱シール・切断装置70の構成を説明する部分斜視図である。図6(a)の紙面上の上下は実際の鉛直方向の上下に対応し、後述の筒状フィルムF1は図中、上から下に流れるように走行する。すなわち、上が充填包装作業における筒状フィルムF1の走行方向の上流側、下が走行方向の下流側となる。ロール状に巻かれた帯状フィルムFは、ロール21として回転自在に支持されている。ロール21から引き出された帯状フィルムFは、ガイドローラ22A、22Bに案内されて走行し、フォーミングプレート11に導かれる。このロール21とガイドローラ22A、22Bにより原反供給装置20が構成されている。
【0046】
フォーミングプレート11は、上下に開口する円筒形状を有している。また、周方向の一箇所で縦方向に延びる円周方向の隙間をもっている。フォーミングプレート11の上端縁は湾曲傾斜しており、帯状フィルムFは、その内面に沿うように案内されることにより側縁部で重ね合わせ部を持つ連続筒状フィルムF1に形成される。フォーミングプレート11の下流側である下方には、案内筒12が垂下され、筒状フィルムF1はその筒状の形を保ったまま下流側に走行案内される。
【0047】
案内筒12に案内された筒状フィルムF1の重ね合わせ部は、縦シール装置13により、押圧されながら溶着され、縦シールされる。縦シール装置13による溶着手段は超音波加熱シールが好適であるが、これ以外にも抵抗加熱シール、高周波誘電加熱シール、レーザー加熱シール、溶融樹脂滴吹付シール、その他種々の加熱して溶着しシールする手段を用いることができる。また、縦シールは、いわゆる合掌貼りシールであってもよいし、封筒貼りシールであってもよい。
【0048】
包装体製造装置1の上部には、縦シールされた筒状フィルムF1に内容物Cを充填するポンプ31とノズル32とを備える充填装置30が設けられている。ノズル32は、フォーミングプレート11の上方に設置されたポンプ31に接続され、先端が案内筒12内へ導入されている。ノズル32の先端は、縦シール装置13より下流側で開口している。なお、ポンプ31は、フォーミングプレート11の上方ではなく、内容物を適宜補充し易い他の位置に設置し、配管によりノズル32と連接されていてもよい。特に、練状食品のように比較的重量のある内容物を充填する場合には、地上に設置された容器に貯留された練状食品を、ポンプによりノズル32の位置に圧送して供給するのがよい。
【0049】
案内筒12及びノズル32の下流側に、送り装置である送りローラ14が設けられている。一対の円柱状の送りローラ14は、縦シールされた筒状フィルムF1内に内容物Cが充填された筒状フィルム15aを、下方へ連続して狭圧搬送する。
【0050】
送りローラ14の下流側には、しごき装置40が設けられている。しごき装置40のしごきローラ41は、図6において紙面に垂直方向に延びる筒状外面を有し、その直角方向の長さは少なくとも折り幅よりも長いものであり、腕体42により支持されている。なお、「折り幅」とは筒状フィルム15aを扁平にしたときの幅、言い換えれば筒状フィルム15aの円周長の半分の長さをいう。腕体42はその一端42aを中心に揺動可能で、中間部でピン等を介して横部材43が接続されている。一対の横部材43が近接方向に移動すると、一対のしごきローラ41により筒状フィルム15aは狭圧される。横部材43が離間方向へ後退すると、しごきローラ41は筒状フィルム15aを狭圧することはなくなる。このように、走行する筒状フィルム15aに走行方向で所定の距離だけ内容物Cの不在部15bを形成する。しごき装置40は、筒状フィルム15aに内容物Cの不在部15bを扁平に形成できればよく、ローラに限られず、例えば、平らな部材で筒状フィルム15aを両側から押しつぶし、内容物を上下に振り分けるようなものであってもよい。このような押しつぶしも、ここで言う「しごき」の概念に含まれるものとする。
【0051】
しごき装置40の下流側には、第1の超音波加熱シール装置61が設置される。第1の超音波加熱シール装置61は、第1のホーン62と第1のアンビル63が、筒状フィルム15aあるいは不在部15bを挟んで、対向して配置されている。第1のホーン62は、水平方向に長い2本の圧着面62aを所定の間隔だけ離して上下に有する。所定の間隔は、不在部15bの長さより短く、その間隔の中で、集束し、後述の2次シールをし、包装体に切断することができる長さである。圧着面62aは、水平方向に不在部15bの幅より長く、不在部15bを横断する長さを有する。第1のアンビル63は、第1のホーン62の圧着面62aに対向する平面63aを有し、圧着面62aとの間に不在部15bを挟む。ホーン62およびアンビル63は、互いに近接し、次いで離れる往復動をする。第1のホーン62と第1のアンビル63とが近接したときに、不在部15bを狭圧しフィルムを超音波加熱シールして横シールをする。なお、第1の超音波加熱シール装置61の代わりに、抵抗加熱シール、高周波誘電加熱シール装置、レーザー加熱シール装置、その他種々の加熱シール装置を用いることができる。
【0052】
第1の超音波加熱シール装置61の不在部15bを形成した所定の間隔分、すなわち、1つの包装体300の長さと同じだけ下流側に、2組の集束板72、73を有する集束装置71が設置される。集束装置71は、組となった集束板72、73がそれぞれ扁平な不在部15bの幅方向に不在部15bを挟む。対向した集束板72、73は、互いに近接し、次いで離れる往復動をする。この往復動はしごき装置40あるいは第1の超音波加熱シール装置61の往復動とは直交した方向で行われる。すなわち、図6(a)では、集束板72、73も紙面上を往復するように描かれているが、実際には紙面に垂直な方向の往復運動をする。図6(b)に示すように、集束板72、73には、不在部15b側の対向縁に凹んだ形状の集束溝が形成されている。この凹んだ形状はV字状、U字状などである。対向する集束板72、73が近接したときには、左右の集束板72、73が重なり、それぞれのV字溝の溝底同士で、一つの小さな空間を形成する。V字溝の溝底にU字状の切り欠きを形成すれば、集束板72、73が近接したときに、U字の底同士で円形の空間が形成されるので、好適である。
【0053】
集束装置71の2組の集束板72、73の間に第2の超音波加熱シール装置76が設けられている。第2の超音波加熱シール装置76では、第2のホーン77と第2のアンビル78が、筒状フィルム15aあるいは集束された不在部15bを挟んで、対向して配置される。第2のホーン77は、水平方向には集束装置71で集束された不在部15bの幅(集束されたときの折幅)より長く所定の間隔はなれた2本の圧着面77aを有する。この所定の間隔は、第1のホーン62の2本の圧着面62aが離れる所定の間隔より短いが、その間で包装体を切断することができる長さである。第2のアンビル78は、第2のホーン77の圧着面77aに対向する位置を含む平面78aを有し、圧着面77aとの間に集束された不在部15bを挟み、集束された状態を維持するように不在部15bを加熱シールする。第2のホーン77と第2のアンビル78は、集束板72、73より僅かに遅れて不在部15bを挟み、集束装置71で集束された不在部15bを加熱シールする。第2の超音波加熱シール装置76も、集束装置71と同様に、図6(a)の紙面に垂直な方向の往復動をする。
【0054】
第2のアンビル78を上下に2分する位置に、切断装置としてのカッター81が設けられている。カッター81は板状であり、切断される不在部15bが存在する側に鋭利な刃部が設けられている。カッター81も、集束板72、73並びに第2のホーン77および第2のアンビル78と同様に図6(a)の紙面に垂直な方向の往復動をし、集束された不在部15bが第2の超音波加熱シール装置76で加熱シールされた後に不在部15bを切断するように、第2のホーン77および第2のアンビル78が不在部15bを挟んで加熱シールするのに遅れて不在部15bを切断する。集束装置71、第2の超音波加熱シール装置76およびカッター81は、共通の駆動装置(不図示)により駆動する構成とするのが、構成が単純化されて好ましい。そこで、集束装置71、第2の超音波加熱シール装置76およびカッター81を、一つのまとまった集束・加熱シール・切断装置70として、構成するのがよい。
【0055】
また、集束装置71、第2の超音波加熱シール装置76およびカッター81は、筒状フィルム15aが下方に送られるのと同じ速さで下方に移動しつつ不在部15bを集束し、加熱シールし、切断した後、不在部15bを開放して上の位置に戻る、いわゆる「拝み運動(ボックスモーション)」をするのが好ましい。そこで、集束装置71、第2の超音波加熱シール装置76およびカッター81が、共通の上下に移動する架台(不図示)上に設置されると、構成が簡単になる。第1の超音波加熱シール装置61を同様に拝み運動させてもよい。
【0056】
続いて、包装体製造装置1を用いて包装体300を製造する方法について説明する。帯状フィルムFはロール21から所定の速度で引き出され、ガイドローラ22A、22Bにより所定の張力をかけられて、走行案内され、フォーミングプレート11に到達する。
【0057】
フォーミングプレート11に到達した帯状フィルムFは、側縁部で重ね合わせ部を持つ筒状に形成され、縦シール装置13によって重ね合わせ部が加熱シールされる。このようにして、縦シールされた筒状フィルムF1が形成される(ステップS110)。この筒状フィルムF1内には、ポンプ31からノズル32を経て内容物Cが充填される(ステップS120)。内容物Cが充填された筒状フィルム15aは、送りローラ14によって下流側へ搬送される。一対の送りローラ14は、筒状フィルム15aを局部的に押しつぶすように狭圧して搬送するが、押しつぶされた筒状フィルム15aは、送りローラ14の位置を通過した後は内容物Cによる内圧により元の筒形に復帰する。
【0058】
筒状フィルム15aは、一対のしごきローラ41により間けつ的に所定の長さにわたり狭圧され、内容物Cのない不在部15bが所定の間隔をもって形成される(ステップS130)。第1の超音波加熱シール装置61により不在部15bに第1のホーン62の2本の圧着面62aに対応する第1の二つの位置X1、X2で線状に横シールがなされる(ステップS140)。この横シールを1次シールともいう。なお、この横シールをするときに不在部15bを覆う補強フィルムを不在部15bに重ね、不在部15bと一緒に横シールをすると、シールされた集束部の強度がさらに向上するので好ましい。補強フィルムの材質は、帯状フィルムFの材質と同じとするのが一般的であるが、帯状フィルムFと加熱シールされ易い材質であれば、他の材質であってもよい。また、縦シールされた重ね合わせ部が片面に収まるようにしごきローラ41で扁平にし、重ね合わせ部を補強シールで覆うのが好ましい。このように補強フィルムを有することにより、加熱シールされ弱部となり易い場所が補強される。
【0059】
集束装置71は横シールがなされた第1の二つの位置X1、X2間の不在部15bを集束する。横シールがなされ集束されることにより、集束された部分は細くまとめられる。不在部15bを集束すると、横シールされた位置までは扁平にされた筒状フィルムFだけしか存在しないので容易に集束され、横シールを挟んで反対側の内容物Cが充填された部分が集束に対して抵抗して元の形状(円筒形状)を維持しようとする。よって、図1(c)に示すように、横シール322された位置までは集束され、横シール322を挟んで内容物Cが充填された部分で、横シールされ集束された、すなわち細くまとめられた形状が徐々に元の形状に戻る。そのため、横シールされた部分322は、集束された部分324の範囲に含まれる。集束された状態を維持するように第2の超音波加熱シール装置76は第2のホーン77の2本の圧着面77aに対応する第2の二つの位置Y1、Y2で集束された不在部15bを線状に加熱シールする(ステップS150)。この加熱シールを2次シールともいう。包装体300は、基本的に第1の超音波加熱シール装置61によりなされた横シールによりシールされるので、第2の超音波加熱シール装置76による加熱シールではシール(封止)されなくてもよい。そして、第2の超音波加熱シール装置76により加熱シールされた第2の二つの位置Y1、Y2間で、カッター81により切断されることにより、1本の包装体300となる(ステップS160)。包装体300は、後段の処理に供給される。
【0060】
このように、包装体製造装置1を用いて包装体300を製造することで、連続的に、すなわち大量にかつ迅速に包装体300を製造することができる。なお、これまでは、第1の超音波加熱シール装置61は、不在部15bに所定の間隔を有する第1の二つの位置X1、X2で線状の横シールをするものとして説明したが、第1の二つの位置X1、X2間を帯状に横シールをしてもよい。また、第2の超音波加熱シール装置76も、所定の間隔を有する第2の二つの位置Y1、Y2で線状の加熱シールをするものとして説明したが、第2の二つの位置Y1、Y2間を帯状に加熱シールをしてもよい。
【0061】
また、上記の説明では、延伸して熱固定した中空状フィルムa4をロールa5に巻き、ロールa5から引き出した中空状フィルムb1を用いて、側縁部b6、b7を切除して2枚の層形成フィルムb2、b3を製造するものとしているが、延伸して熱固定した中空状フィルムa4をロールa5に巻くことなくそのまま連続的に中空状フィルムa4(b1)の側縁部b6、b7を切除して2枚の層形成フィルムb2、b3を製造してもよい。また、2枚の層形成フィルムb2、b3をロールb4、b5に巻いて、ロールb4、b5から層形成フィルムb2、b3を引き出して接着剤Pを塗布して接着し多層フィルムFを製造するものとしているが、2枚の層形成フィルムb2、b3をロールb4、b5に巻くことなくそのまま連続的に接着剤Pを塗布して接着し多層フィルムFを製造してもよい。
【0062】
以上説明したように、塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムを製造して、2枚の層形成フィルムを接着剤層で接着して多層フィルムを形成し、多層フィルムを用いて端部が集束され集束された部分を横断する横シールがなされた包装体の製造方法によれば、2枚の層形成フィルムが剥離せず、それぞれのピンホールが連通しにくく、ピンホールの形成が防止されるので、密封性が高く、耐圧強度の高い包装体を効率よく製造できる。
【実施例1】
【0063】
本発明の効果を確認するため、上述のように2枚の層形成フィルムを接着剤にて接着した多層フィルムを用いて製造した包装体のピンホール発生率を測定した。塩化ビニリデン系樹脂の厚さ20μmの層形成フィルム2枚をウレタン系樹脂の接着剤で接着した合計厚さ45μmの多層フィルムを使用し、直径20mm、長さ150mmで、魚肉ソーセージ用エマルジョンを内容物とした包装物を製造した。包装体の外側に直径13mmの正電圧の電極板を当接させ、包装体の内部に負電圧の電極針を挿入して、4000Vの電圧を印加した。その結果、80μA以上の電流が流れた場合をピンホールが生じたものと判定した。
【0064】
比較のために、塩化ビニリデン系樹脂の厚さ20μmの層形成フィルム2枚を接着剤で接着することなく重ねただけで同様に包装体を製造し、同様な測定を行った。ここで、一般的にピンホール発生率が0.5%未満であれば包装体として良品(不良率が少ない)とされ、0.5%以上の場合にはシール条件を変更するなどの対策を講じる。
【0065】
それぞれ、200本の包装体を製造し、ピンホールの有無を測定した結果、本発明に係る2枚の層形成フィルムをウレタン系樹脂の接着剤で接着した多層フィルムを使用して製造した包装体では、ピンホール発生率が0.5%未満となり、2枚の層形成フィルムを重ねただけのフィルムを使用して製造した包装体では、ピンホール発生率が0.5%を超えた。よって、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態としての包装体を説明する図であり、(a)は包装体300を説明する一部断面正面図であり、(b)は筒状フィルム310の構成を示す拡大断面図、(c)は端部320の拡大図である。
【図2】塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルム、多層フィルムの製造方法を含め、包装体を製造する製造する製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】塩化ビニリデン系樹脂のコンパウンドからパリソンを製造し、延伸するフィルム製造装置のブロック図である。
【図4】延伸された中空状フィルムが巻かれたフィルムロールから層形成フィルムを製造する方法を説明するブロック図である。
【図5】2枚の層形成フィルムに接着剤を塗布し、接着して多層の帯状フィルムとする工程を説明するブロック図である。
【図6】帯状フィルムから包装体を製造する製造装置を説明する図で、(a)は包装体を製造する包装体製造装置の全体構成を示す構成図、(b)は集束・加熱シール・切断装置の構成を説明する部分斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 包装体製造装置
11 フォーミングプレート
12 案内筒
13 縦シール装置
14 送りローラ
15a 内容物が充填された筒状フィルム
15b 不在部
20 原反供給装置
21 ロール
22A、22B ガイドローラ
30 充填装置
31 ポンプ
32 ノズル
40 しごき装置
41 しごきローラ
42 腕体
43 横部材
61 第1の超音波加熱シール装置
62 第1のホーン
62a 圧着面
63 第1のアンビル
63a 平面
70 集束・加熱シール・切断装置
71 集束装置
72、73 集束板
76 第2の超音波加熱シール装置
77 第2のホーン
77a 圧着面
78 第2のアンビル
78a 平面
81 カッター
100 フィルム製造装置
102 ホッパー
104 溶融押出機
106 環状ダイ
110 冷却バス
112 加温バス
114、122、142、150 ピンチローラ
116、118、120、146、148 ガイドローラ
124 駆動ローラ
126 案内ローラ
128 エアシリンダ
130 バブルガイド
132 フリーローラ群
134 破裂検知器
136 エアシリンダ
138、140 コラム
152 巻取機
160 熱固定ユニット
202 カッター
210 接着剤バット
212 かき上げ・塗布ローラ
214 掻き落しリバースローラ
216 押し付けローラ
218、220 ガイドローラ
230 乾燥炉
232 ローラ群
240 ガイドローラ
250 圧着ローラ
260、262 ガイドローラ
270、272 ガイドローラ
274 ローラ
276 アーム
300 包装体
310 筒状フィルム
312 縦シール
316 層形成フィルム
318 接着剤層
320 端部
322 横シール(横断するシール)
324 集束部分(集束された部分)
326 加熱シール部
a1、a2 パリソン(中空状フィルム)
a3、a4 中空状フィルム
a5 フィルムロール
b1 折りたたまれた中空状フィルム
b2、b3 層形成フィルム
b4、b5 層形成フィルムのロール
b6、b7 側縁部
bp 接着剤を塗布された層形成フィルム
C 内容物
F 帯状フィルム
F1 筒状フィルム
L 離型剤
P 接着剤
X1、X2 第1の二つの位置
Y1、Y2 第2の二つの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が集束され、前記集束された部分で横断する横シールがされた筒状フィルムと;
前記筒状フィルムに充填されて封入された内容物とを備え;
前記筒状フィルムが、2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと、前記2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層を有する多層フィルムで形成される;
包装体。
【請求項2】
前記接着剤層が、ウレタン系樹脂で形成される;
請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
内容物が充填された筒状フィルムの端部が集束され、前記集束された部分で横断する横シールがされてなる包装体の製造方法であって;
2枚の塩化ビニリデン系樹脂の層形成フィルムと前記2枚の層形成フィルムを接着する接着剤層を有する帯状フィルムの長手方向の側縁部を重ね合わせて縦シールし筒状フィルムを成形する縦シール工程と;
前記筒状フィルムに内容物を充填する充填工程と;
前記内容物が充填された筒状フィルムに対して、前記筒状フィルムの長手方向に所定間隔毎の内容物の不在部を扁平に形成するしごき工程と;
前記不在部を横断方向に、前記長手方向に間隔を持つ第1の二つの位置で線状に横シールをする、あるいは、前記第1の二つの位置の間にわたり帯状の横シールをする横シール工程と;
前記第1の二つの位置の間で、横シールの幅方向に集束すると共に前記集束部分で前記長手方向に間隔を持つ第2の二つの位置で線状にもしくは前記第2の二つの位置の間を帯状に加熱シールする集束工程と;
前記第2の二つの位置の間で、前記筒状フィルムを切断する切断工程とを備える;
包装体の製造方法。
【請求項4】
前記帯状フィルムが、
塩化ビニリデン系樹脂から成るコンパウンドを環状ダイから溶融押出し、長く連続した中空状フィルムとする工程と;
前記中空状フィルムをインフレーション法によって延伸する工程と;
前記延伸された中空状フィルムを径方向に潰して折りたたみ、扁平にする工程と;
前記扁平にされた中空状フィルムの長手方向の2ヶ所の側縁部を所定の幅で切除し、2枚の層形成フィルムを製造する工程と;
前記2枚の層形成フィルムの内の1枚の層形成フィルムの片面に前記接着剤層を形成する工程と;
前記形成された接着剤層に前記2枚の層形成フィルムの内の他の1枚の層形成フィルムを重ねて圧着する工程とを有して製造される;
請求項3に記載の包装体の製造方法。
【請求項5】
前記延伸された中空状フィルムを熱固定する工程をさらに含む;
請求項4に記載の包装体の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層がウレタン系樹脂で形成される;
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−189357(P2008−189357A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25972(P2007−25972)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】