説明

包装用箱

【課題】所定の方向の衝撃に対して優れた緩衝性能を有し、1枚の箱体形成片から簡単に組み立てることが可能な包装用箱を提供する。
【解決手段】第三及び第四の側面20,22の先端には、その基端部から先端までの長さを超える長さを有する一対の緩衝片48,76を備え、箱体形成片12が組立状態で折罫線50,78から緩衝片48,76の先端側に向かって、底面14に対して急斜面を形成する第一の斜面部48a,76aと、緩衝片先端側端部で底面14の中央方向に折曲げられ、その折罫線52,80から緩衝片先端側に向かって、底面14に対して緩斜面を形成する第二の斜面部48b,76bと、緩衝片先端側端部で第三及び第四の側面方向に各々折曲げられ、その折罫線54,82から先端にかけて底面14に当接する当接部48c,76cを備える。第三及び第四の側面の第一の側面側の各側端には、立設状態に位置決めする一対の係合片56,84を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング電源装置等の電子機器を梱包する包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片を折り曲げて組み立てられ、収容物に対する緩衝機能を一体に備えた包装箱がある。例えば、特許文献1には、蓋フラップと底フラップとを折曲げて構成された二重蓋部と二重底部とを備え、収容物はその二重蓋部と二重底部部分に設けられた段差を利用した収容凹部に納められ、収容物が箱体の6つの周壁から所定の隙間を空けて支持される緩衝構造を備えた梱包箱が開示されている。
【0003】
また、ブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片と、収容物を支持する支持用部材とを別個に形成し、箱体形成片を折り曲げて組み立てられた箱体と支持用部材とを組み合わせて一体に包装用箱を構成したものも実用化されている。
【特許文献1】特開2002−249127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の梱包箱は、構造が複雑で、折曲げ回数も多く、組組み立て難いものであった。また、この梱包箱は、概ね全ての方向の衝撃に対して有効な緩衝構造を備えているため、例えば包装された収容物がどのように取り扱われるかが明らかで、梱包箱に加わる衝撃の方向がほぼ一定の方向であることが分かっている用途に用いた場合は、衝撃が加わらない部分にも緩衝構造を備える梱包箱であるため、梱包箱が不必要に大型化するという問題があった。
【0005】
また、箱体形成片と支持用部材とを別個に備えた包装用箱は、少なくとも2つ以上の部材を組み合わせて構成されるため、組み立て作業が繁雑になる上、包装用箱自体の材料費や管理費が増大する等の問題があった。
【0006】
この発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、所定の方向の衝撃に対して優れた緩衝性能を有し、1枚の箱体形成片から簡単に組み立てることが可能な包装用箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、前記箱体形成片には、四角形の底面と、前記底面の互いに対向する一方の端部に一対に設けられた第一及び第二の側面と、前記底面の互いに対向する他方の端部に一対に設けられた第三及び第四の側面と、前記第一の側面の先端側に設けられ、前記箱体形成片が組立状態のときに前記第一乃至第四の側面で形成される箱体の開口部を閉鎖する外蓋片とを備えた包装用箱であって、前記第三及び第四の側面の先端には、前記第三及び第四の側面の基端部から先端までの長さを超える長さを有する一対の緩衝片が設けられたものである。前記緩衝片は、前記箱体形成片が組立状態のときに前記緩衝片の基端部側で内側方向に折り曲げられ、その折罫線から前記緩衝片の先端側に向かって、前記底面に対して急斜面を形成する第一の斜面部と、前記第一の斜面部の前記緩衝片先端側端部で前記底面中央方向に折曲げられ、その折罫線から前記緩衝片先端側に向かって、前記底面に対して緩斜面を形成する第二の斜面部と、前記第二の斜面部の前記緩衝片先端側端部で前記第三及び第四の側面方向に各々折曲げられ、その折罫線から先端にかけて前記底面に当接する当接部とを有する。前記第三及び第四の側面の前記第一の側面側の各側端には、前記箱体形成片が組立状態のときに互いに係合し、前記第三及び第四の側面を立設状態に位置決めする一対の係合片が設けられ、前記一対の緩衝片と前記一対の係合片には、互いに隣接する側端同士を各々連結し、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記一対の緩衝片と前記一対の係合片とを位置決めする第一の連結部が設けられている。前記第二の側面の各側端と、前記第三及び第四の側面の第二の側面側の各側端には、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記第二の側面と前記第三及び第四の側面とを位置決めする第二の連結部が設けられている。
【0008】
さらに、前記一対の緩衝片の前記当接部の先端に凸部が各々設けられ、その凸部は、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記第三及び第四の側面の基端部と前記底面との間に形成された切り込みに各々嵌合して位置決めされるものである。
【0009】
前記外蓋片の先端には外蓋側差込片が設けられ、前記第二の側面の先端には内蓋片が設けられ、前記第二の側面には、前記第二の側面部分から前記内蓋片部分に及ぶ切り込みによって形成された内蓋側差込片が設けられ、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記外蓋片は前記内蓋片の外側に重なり、前記外蓋側差込片は、前記内蓋片の基端部に形成された切り込みに差し込まれ、前記内蓋側差込片の先端部は、前記外蓋片の基端部に形成された切り込みに差し込まれて、前記外蓋片により前記第一乃至第四の側面で形成される箱体の開口部を閉鎖した状態に各部が位置決めされるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装用箱は、搬送や運搬時において衝撃の加わりやすい側面と底面方向への衝撃に対して、優れた緩衝機能を有する。さらに、底面を下にして積み置き等されても、収容物と底面との間の空間によって、収容物に加わる衝撃を緩和することができる。
【0011】
また、1枚の箱体形成片で構成され、容易に組み立てることができるので、包装用箱自体の材料費や管理費も抑えられる。さらに、緩衝機能を持たせる必要のない部分は、収納物と箱体周壁との間に無駄な空間が生じないように構成してあるので、組立状態の包装用箱の外形をコンパクトにすることができ、運搬や輸送等の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図5はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の包装用箱10は、例えば段ボールなどの一枚のブランクシートを打ち抜いて形成された箱体形成片12を組み立てて形成されている。ここで、図1に示すように、組み立てられた略直方体形状の包装用箱10において、長手方向である幅寸法をW、短手方向である奥行きの寸法をD、高さ方向の寸法をHと定義する。
【0013】
図5は、箱体形成片12を裏面から見た展開図であり、箱体形成片12は、中央に長方形の底面14が設けられ、底面14の短手方向に対向する一対の端部に第一の側面16と第二の側面18が設けられ、底面14の長手方向に対向する一対の端部に第三の側面20と第四の側面22が設けられている。
【0014】
側面16,18及び底面14が連接した方向と直交する幅方向の寸法は、各面でほぼ等しくWであり、側面20,22及び底面14が連接した方向と直交する幅方向の寸法は、各面でほぼ等しくDである。また、側面16,18,20,22の底面14側の各折罫線から反対側の端部の各折罫線までの長さ寸法は、ほぼ等しくHである。そして、底面14と4つの側面16,18,20,24は、箱体形成片12の肉厚を圧縮するようにして各々形成した折罫線26,28,30,32で区切られている。また、折罫線28,30の中央部分には、寸法Dの約2分の1の長さの切り込み28a,30aが各々入れられている。
【0015】
側面16の折罫線24の反対側の端部には、外蓋片32が折罫線34で区切られて設けられている。さらに、外蓋片32の折罫線32の反対側の端部の中央には、外蓋側差込片36が折罫線38で区切られて設けられている。
【0016】
外蓋片32は、底面14とほぼ同形状の長方形である。外蓋側差込片36は、外蓋片32の長手方向の長さWの約3分の2の幅を有し、折罫線38から突端までの長さは、寸法Hの約2分の1の長さを有している。また、折罫線38の中央部分には、折罫線38の約2分の1の長さの切り込み38aが入れられ、切り込み38aの両端は、外蓋片32の部分にくの字型に延びている。さらに、外蓋片32の切り込み38aとの境界の中央部分に、略半円状の切り欠かれた指かけ40が設けられている。 側面18の折罫線26の反対側の端部には、内蓋片42が折罫線44で区切られて設けられている。内蓋片42は、側面18長手方向の長さWより若干短い幅を有し、折罫線44から突端までの長さは、寸法Dの約2分の1の長さを有している。折罫線44の中央部分には、外蓋側差込片36の幅よりも若干長めの切り込み44aが入れられ、切り込み44aの両端は、側面18の部分にくの字型に延びている。
【0017】
さらに、側面18と内蓋片42のほぼ中央部分に跨るコの字型の切り込みによって内蓋側差込片46が設けられている。内蓋側差込片46は、外蓋側差込片36の基端部側の折罫線38aよりも若干短めの幅を有している。そして、内蓋側差込片46は、基端部が折罫線26と平行に設けられた折罫線46aによって側面18と区切られ、中央部分に折罫線44aとほぼ同一線上に折罫線46bが設けられている。
【0018】
側面20の折罫線28の反対側の端部には、緩衝片48が折罫線50で区切られて設けられている。緩衝片48は略長方形であり、幅は側面20の幅寸法Dよりも若干短めの寸法で、基端部側の折罫線50から突端までの長さは、寸法Hの約2倍の長さである。
【0019】
緩衝片48は、折罫線50と互いに平行に設けられた折罫線52,54によって、3つの部分に区切られている。折罫線50と折罫線50から寸法αを空けて対向する折罫線52とで区切られた部分は、組立状態で急峻な傾斜面を形成する第一の斜面部48aである。折罫線52と折罫線52から寸法βを空けて対向する折罫線54とで区切られた部分は、組立状態で緩慢な傾斜面を形成する第二の斜面部48bである。折罫線54で区切られ、折罫線54から寸法γの位置に突端を有する部分は、組立状態で底面14と当接する面となる当接部48cである。さらに、当接部48cの突端の中央部分には、凸部48dが設けられている。この凸部48dは、幅が側面18の根元の切り込み28aの長さよりも若干短く、突出長さは箱体形成片12の厚み分程度の長さを有している。上記の第一の斜面部48aの長さα、第二の斜面部48bの長さβ、当接部48cの長さγ、側面20の長さHは、H>α、γ>β、α+β>Hという関係を満たしている。
【0020】
側面20の側面16側の側端部には、係合片56が折罫線58で区切られて設けられている。係合片56は、幅は側面20の幅寸法Dよりも若干短めの寸法で、基端部の折罫線58から突端までの長さは、幅Wの約3分の2の寸法である。そして、係合片56は、根元の折罫線58から幅Wの約2分の1の長さの位置に、外側(図5における左側)の端部から内側(図5における右側)の方向にスリット56aが設けられている。スリット56aは、幅が箱体形成片12の厚みの約3倍程度の幅で、長さは係合片56の短手方向の幅寸法の約2分の1である。そして、係合片56のスリット56a両側の角部分は、緩やかに面取りされた曲線形状を有している。
【0021】
係合片56と第一の斜面部48aとが互いに近接する側の各側端部は、中心角が略90度の扇形の連結部60で連結されている。そして、連結部60と係合片56は折罫線62で区切られ、連結部60と第一の斜面部48aは折罫線64で区切られ、連結部60自体には、折罫線24とほぼ同一線上の箇所に折罫線66が設けられている。
【0022】
側面20と側面18の互いに近接する側の側端部は、中心角が略90度の扇形の連結部68で連結されている。そして、連結部68と側面20は折罫線70で区切られ、連結部68と側面18は折罫線72で区切られ、連結部68自体には中心角で略45度の部分に折罫線74が設けられている。
【0023】
側面22及びその周端部に設けられた各部分は、底面14を挟んで側面20及びその周端部に設けられた各部分と一対に対向している。ここでは、上述した側面20側の緩衝片48、第一の斜面部48a、第二の斜面部48b、当接部48c、凸部48d、折罫線52,54に相当する部分が、それぞれ、側面22側の緩衝片76、第一の斜面部76a、第二の斜面部76b、当接部76c、凸部76d、折罫線80,82である。また、上述した側面20側の係合片56、スリット56a、折罫線58に相当する部分が、それぞれ、側面22側の係合片84、スリット84a、折罫線86である。また、上述した側面20側の連結部60、折罫線62,64,66に相当する部分が、それぞれ、側面22側の連結部88、折罫線90,92,94である。そして、上述した側面20側の連結部68、折罫線70,72,74に相当する部分が、それぞれ、側面22側の連結部96、折罫線98,100,102である。
【0024】
ここで、側面22側の各部分において、側面20側の各部分と非対称に形成されている部分は、係合片84である。係合片84のスリット84aは、係合片84の根元の折罫線86から幅Wの約2分の1の長さの位置に、内側(図5における左側)の端部から外側(図5における右側)の方向に設けられている。つまり、スリット84aのスリット自体の形状はスリット56aと同様であるが、その方向が図5において同方向に形成され、互いに非対称に位置している。係合片84以外の部分は、互いに対称な形状に形成されている。
【0025】
次に、この実施形態の包装用箱10の組立方法の一例について説明する。なお、図5は包装用箱10の箱体形成片12の裏面を見たものであり、以下の説明において、箱体形成片12の表面が凸になる折り方を正折り、そして裏面が凸になる折り方を逆折りと称する。
【0026】
箱体形成片12は、作業者が使用する作業机等の上に置かれ、一対の側面20,22及びその周端部に設けられた各部分から組み立てられる。まず、底面14を作業台の表面に当接させた状態で、緩衝片48,76において、折罫線54,82を正折りしながら折罫線52,80を逆折りし、さらに折罫線50,62及び折罫線78、90を正折りする。そして、折罫線54で正折りされた第二の斜面部48bと当接部48cが折り重なった状態で指で挟持し、当接部48cの突端の凸部48dを、側面20の基端部の切り込み28aに誘導して差し込む。同様に、折罫線82で正折りされた第二の斜面部76bと当接部76cが折り重なった状態で指で挟持し、当接部76cの突端の凸部76dを、側面22の根元の切り込み30aに誘導して差し込む。
【0027】
すると、この状態では当接部48cはほぼ直立し、上述したH>α、γ>β、α+β>Hという関係により、第一の斜面部48aと第二の斜面部48bが、互いに異なる角度の傾斜面を立体的に形成する。同様に、当接部76cもほぼ直立し、第一の斜面部76aと第二の斜面部76bが、互いに異なる角度の傾斜面を立体的に形成する。
【0028】
次に、上記各斜面部の形状を保持しながら、係合片56を表面側から指で引き上げるようにして折罫線58を正折りし、係合片56を直立させる。すると、この動作によって、連結部60の折罫線64も同時に正折りされ、また、折罫線66も同時に逆折りされる。同様に、係合片84を表面側から指で引き上げるようにして折罫線86を正折りし、係合片84を直立させる。すると、連結部88の折罫線92も同時に正折りされ、また、折罫線94も同時に逆折りされる。
【0029】
次に、折罫線28と折罫線72を正折りし、側面20と連結部68を直立させる。すると、係合片56は、側面16の根元の折罫線24上に直立し、スリット56aの切り込み口が上向きに配置される。このとき、当接部48cの突端の凸部48dが切り込み28aに嵌合しているので、各斜面部48a,48bの立体形状が保持されたまま当接部48cは底面14に当接し、側面20は直立状態となる。
【0030】
次に、折罫線30と折罫線100を正折りし、側面22と連結部96を直立させる。すると、係合片84は、直立した係合片56上に移動し、切り込み口が下向きのスリット84aは、切り込み口が上向きに配置されたスリット56aとで係合する。このとき、スリット56a,84aの両側の角部分は、緩やかに面取りされた曲線形状に形成されているので、係合片56,84は、互いに交差しながら円滑に差し込まれる。また、当接部76cの突端の凸部76dが切り込み30aに嵌合しており、上記各斜面部76a,76bの立体形状が保持されたまま当接部76cは底面14に当接し、側面22は直立状態となる。
【0031】
このときの組立状態を図2に示す。側面20,22は、係合片56,84のスリット56a,84aが係合していることにより、底面14に対してほぼ垂直に自立している。また、緩衝片48,76は、連結部60,88によって係合片56,84に対して各々の位置が決定され、第一の斜面部48a,76aは底面14に対して急峻な角度の傾斜面を形成し、第二の斜面部48b,76bは緩慢な角度の傾斜面を形成している。
【0032】
次に、底面10の上方から収容物である電子機器が載せられる。ここでは、収容物は、電子機器の一種であるスイッチング電源装置110である。スイッチング電源装置110は、図3に示すように、略長方形に形成されたプリント基板112を備え、プリント基板112の上面にはリード端子118を有する大型電子部品116や、図示しない発熱部品が取り付けられた放熱板114等が配置され、リード端子116aがスルーホールに挿通されて裏面のランドに接続されている。下面には低背の小型電子部品118が表面実装されている。スイッチング電源装置110の長手方向の寸法は、プリント基板112の寸法で決定され、図3に示すように、対向する折罫線52,80の間隔にほぼ等しい。また、スイッチング電源装置110の短手方向の寸法は、包装用箱10の寸法Dより僅かに小さい。
【0033】
スイッチング電源装置110は、プリント基板112の長手方向の両端が、対向する折罫線52,80部分に各々支持される。このとき、プリント基板112の下面側に配置された小型電子部品120やリード端子118は、底面14の上方に所定の空間を空けて位置しており、大型電子部品116や放熱板114の上端は、側面20,22の上端とほぼ同じ高さに位置している。
【0034】
次に、側面18を表面側から指で引き上げるようにして折罫線26を正折りし、側面18を直立させる。そして同時に、連結部68,96の折罫線70,72及び折罫線98,100を正折りし、折罫線74,102は逆折りに折曲げる。すると、連結部68,96は、折罫線26上に沿って折り重ねられた状態になり、側面20,22の連結部68,96側の各側端部と側面18の両端との間の位置が決定される。
【0035】
次に、折罫線44を正折りし、内蓋片42がほぼ水平な角度に伏せられる。このとき、内蓋側差込片46は直立したままである。そして、折罫線24が正折りされて側面16を直立し、さらに折罫線34を正折りして、外蓋片32を水平な角度にする。このとき、外蓋側差込片36は、折罫線34を正折りされるのとほぼ同時に正折りし、外蓋片32が伏せられる動作とともに、外蓋側差込片36を、切り込み44aに差し込む。
【0036】
次に、内蓋側差込片46を、折罫線46aで逆折りし、折罫線46bで正折りする。そして、内蓋側差込片46を、折罫線46aの逆折り状態を元に戻すようにしながら、先端を切り込み38aに差し込み、図1に示す組み立て完了の状態となる。
【0037】
なお、指かけ40は、組み立て作業には特に機能しない。指かけ40は、組み立てられた包装容箱10を開梱するときに使用される切り欠きで、内蓋側差込片46を容易に切り込み38aから抜き出すことができるようにするものである。
【0038】
以上説明したように、包装用箱10は、箱体形成片12を作業台の上に置いたまま、非常に少ない折り回数で、簡単に効率よく組み立てることができる。また、箱体形成12の製造段階で、各折罫線を仮折りして折り曲げ方向に若干の角度を付けておけば、実際に作業者が包装するときの作業効率を一層向上させることができる。
【0039】
また、スイッチング電源装置110は、上記のような緩衝構造で支持されているので、包装用箱10の外部から側面20,22が対向する向きに衝撃が加わっても、緩衝片48,76の緩衝作用により、スイッチング電源装置110自体には大きな衝撃が伝わらず、安全である。
【0040】
例えば、スイッチング電源装置110を運搬用のバケット120を用いて運搬する場合は、図4(a)に示すように、側面20,22が上下に対向するようにバケット122に詰めるとよい。運搬作業者が、一対の持ち手122aを握ってバケット122を持ち上げ、また床に置く作業を行うとき、最も懸念されるのが上下方向に加わる衝撃であるが、図4(a)のように詰めておけば安全である。
【0041】
また、バケット122を誤って落下させる等の事故を除けば、バケット122の側面から水平方向に大きな衝撃が加わることはなく、通常の作業によって加えられる振動等であれば、箱体形成片12の段ボール素材が備える緩衝性能によって、スイッチング電源装置110は十分に保護される。従って、包装用箱10の外部から一定以上の衝撃が加わる心配のない周壁面(外蓋片32、側面16,18)については、緩衝用に特別な空間が設けられておらず、その分だけ組立状態の包装用箱10の外形がコンパクトになるので、バケット122に入るスイッチング電源装置の台数が増え、運搬の効率がよい。
【0042】
また、包装された状態で長期保管等される場合は、例えば図4(b)に示すように、包装用箱12の底面14を下にして積み重ねて置かれることがある。この場合であっても、プリント基板112の下面側の小型電子部品120等は、底面14から一定の空間を空けて保持されているので、積み置きされる際に上下方向に多少の衝撃が加わっても、一対の緩衝材48,76の緩衝作用により、それらの部品にストレスが加わることはなく、安全である。
【0043】
なお、スイッチング電源装置110は、プリント基板112の長手方向の両端で支持されているが、大型電子部品116の重量が十分軽いので、プリント基板112が反るおそれはない。また、スイッチング電源装置110のように、放熱板114がプリント基板112の長手方向の複数箇所で固定されていれば、大型電子部品116の重量がやや重い場合であっても、プリント基板112が反る問題は生じない。
【0044】
なお、この発明の包装用箱は上記実施形態に限定されるものではなく、第一の斜面部48aの長さα、第二の斜面部48bの長さβ、当接部48cの長さγは、収容物の形状に応じて適宜設定されるものである。例えば、スイッチング電源装置110において、上面側に配置される電子部品の高さが、下面側に配置される電子部品の高さよりも低い場合は、第一の斜面部48aの長さαは、第二の斜面部48bの長さβよりも短くなるように設定すればよい。
【0045】
また、一対の緩衝片48,76は、包装用箱10の長手方向の側面に設けてもよく、その場合には、収容物を支持する面積が広くなるため、特に外蓋片32から底面14の方向のストレスに対する緩衝性能を向上することができる。
【0046】
また、緩衝片48,76の大きさや箱体形成片12の強度などの関係で、組み立ての作業性に問題なければ、凸部48d,76d及び切り込み28a,30aは設けなくてもよい。なお、これらを設けなくても、包装用箱としての緩衝性などの性能にほとんど影響ない。
【0047】
また、箱体形成片12の材質は、各種段ボールや厚紙など特に限定されるものではなく、収容物の大きさや重量に応じて適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態の包装用箱の組立状態を示す斜視図である。
【図2】この実施形態の包装用箱の組み立て途中の状態を示す部分破断斜視図である。
【図3】この実施形態の包装用箱に収容された収容物の様子を示す縦断面図である。
【図4】この実施形態の包装用箱に収容された収容物がバケットに詰められた様子を示す斜視図(a)と、床に積み置きれた様子を示す斜視図(b)である。
【図5】この実施形態の包装用箱の展開図である。
【符号の説明】
【0049】
10 包装用箱
12 箱体形成片
14 底面
16,18,20,22 側面
28a,30a,38a,44a 切り込み
32 外蓋片
36 外蓋側差込片
42 内蓋片
46 内蓋側差込片
48,76 緩衝片
48a,76a 第一の斜面部
48b,76b 第二の斜面部
48c,76c 当接部
48d,76d 凸部
56,84 係合片
56a,84a スリット
60,68,88,96 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、前記箱体形成片には、四角形の底面と、前記底面の互いに対向する一方の端部に一対に設けられた第一及び第二の側面と、前記底面の互いに対向する他方の端部に一対に設けられた第三及び第四の側面と、前記第一の側面の先端側に設けられ、前記箱体形成片が組立状態のときに前記第一乃至第四の側面で形成される箱体の開口部を閉鎖する外蓋片とを備えた包装用箱において、
前記第三及び第四の側面の先端には、前記第三及び第四の側面の基端部から先端までの長さを超える長さを有する一対の緩衝片が設けられ、
前記緩衝片は、前記箱体形成片が組立状態のときに前記緩衝片の基端部側で内側方向に折り曲げられ、その折罫線から前記緩衝片の先端側に向かって、前記底面に対して急斜面を形成する第一の斜面部と、
前記第一の斜面部の前記緩衝片先端側端部で前記底面中央方向に折曲げられ、その折罫線から前記緩衝片先端側に向かって、前記底面に対して緩斜面を形成する第二の斜面部と、
前記第二の斜面部の前記緩衝片先端側端部で前記第三及び第四の側面方向に各々折曲げられ、その折罫線から先端にかけて前記底面に当接する当接部とを有し、
前記第三及び第四の側面の前記第一の側面側の各側端には、前記箱体形成片が組立状態のときに互いに係合し、前記第三及び第四の側面を立設状態に位置決めする一対の係合片が設けられ、
前記一対の緩衝片と前記一対の係合片には、互いに隣接する側端同士を各々連結し、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記一対の緩衝片と前記一対の係合片とを位置決めする第一の連結部が設けられ、
前記第二の側面の各側端と、前記第三及び第四の側面の第二の側面側の各側端には、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記第二の側面と前記第三及び第四の側面とを位置決めする第二の連結部が設けられたことを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
前記一対の緩衝片の前記当接部の先端に凸部が各々設けられ、その凸部は、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記第三及び第四の側面の基端部と前記底面との間に形成された切り込みに各々嵌合して位置決めされることを特徴とする請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
前記外蓋片の先端には外蓋側差込片が設けられ、前記第二の側面の先端には内蓋片が設けられ、前記第二の側面には、前記第二の側面部分から前記内蓋片部分に及ぶ切り込みによって形成された内蓋側差込片が設けられ、前記箱体形成片が組立状態のときに、前記外蓋片は前記内蓋片の外側に重なり、前記外蓋側差込片は、前記内蓋片の基端部に形成された切り込みに差し込まれ、前記内蓋側差込片の先端部は、前記外蓋片の基端部に形成された切り込みに差し込まれて、前記外蓋片により前記第一乃至第四の側面で形成される箱体の開口部を閉鎖した状態に各部が位置決めされることを特徴とする請求項1又は2記載の包装用箱。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280211(P2009−280211A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130908(P2008−130908)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【出願人】(594071583)ティ・エス・ケイ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】