説明

包装食品および食品の退色防止方法

【課題】 外観から内容物が観察でき、かつ蛍光灯などによる食品の退色を防止しうる包装食品を提供する。
【解決手段】 水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上であるフィルムで包装し、かつ窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封したことを特徴とする。前記フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に非結晶の酸化アルミニウムが蒸着された酸化アルミニウム蒸着フィルム、またはプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に炭素、水素、珪素および酸素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と珪素酸化物とからなる化合物の連続層が形成された珪素化合物蒸着フィルムであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装食品および食品の退色防止方法に関し、より詳細には、ガスバリア性に優れる酸化アルミニウム蒸着フィルムまたは珪素化合物蒸着フィルムで食品を包装した包装食品および前記ガスバリア性フィルムで食品を包装する、食品の退色防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に食品は、保存時間の経過と共に光による製造時の品質が低下し、または食品の色が退色し、商品価値を低下させる場合がある。このため、包装食品を製造する際には遮光性に優れる包装容器を使用する場合があり、不透明のアルミ蒸着フィルムなどが多用されている。しかしながら、アルミ蒸着フィルムは酸素に対するバリア性をもつが内容物が見えないため販売促進効果が乏いという問題点があり、食品によっては印刷フィルムによる遮光が行われている。このような保存性食品として塩蔵ワカメがあり、2〜5月の限定された期間に採取された海草は、保存のために速やかにブランチングして緑色に変色させ、塩を付着して塩蔵し、これを適宜販売するものである。今日、市場にて販売されている袋入り塩蔵ワカメは、店内および陳列棚の蛍光灯の光によるワカメの退色を防止するため、薄いブルーに着色された包装フィルム内で保存されることが一般的である。
【0003】
一方、飲食品を充填包装するために種々の包装用素材が開発され、近年、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性素材として、プラスチック基材の表面に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、その他等の無機酸化物を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機酸化物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。
【0004】
例えば、透明性、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性等に優れ、更に、ラミネート適性を有する酸化アルミニウム蒸着フィルムであって、プラスチックフィルムの上に酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を設けた構成からなる、酸化アルミニウム蒸着フィルムがある(特許文献1)。該文献1に記載される酸化アルミニウム蒸着フィルムは、非結晶性の酸化アルミニウムの蒸着膜が形成されるため透明性に優れ、かつ該蒸着膜がインラインで酸素ガスが供給されているため巻き取られたときにプラスチックフィルムとプラスチックフィルムとの間に酸素ガスが挿入され、蒸着後のエージングにより酸化アルミニウムの蒸着膜と挿入された酸素ガスとが反応するため透明性が向上する。実施例に示すフィルムは、酸素透過性、水蒸気透過度が低く、かつ全光線透過率に優れるものとなっている。このフィルムは、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他等の種々の物品を充填包装する包装材料として有用である。
【0005】
また、基材フィルムの少なくとも一方の面にプラズマ化学蒸着法によって設けたバリア層を有し、該バリア層は、珪素酸化物と炭素、水素、珪素及び酸素のなかから1種あるいは2種以上の元素からなる化合物の連続層からなる積層フィルムがある(特許文献2)。基材層にプラズマ化学蒸着法によってSiOx層を形成させたSiOxフィルムの一方の面に表面樹脂層、他の面にプラスチックフィルムとの積層フィルムを形成したものである。SiOxフィルムのSiOx層の厚さは、60〜300Åで着色もなく、柔軟性に富み、そして、酸素透過度は、1ml/m2・day以下、水蒸気透過度は、1g/m2・day・atm以下であり、SiOx層に含まれる珪素酸化物と炭素、水素、珪素及び酸素のなかから1種あるいは2種以上の元素からなる化合物は、炭素系高分子化合物に類似した物性をもたせる作用をもつため、SiOxは延展性に富み、SiOxとフィルムとの接着強度も高く、SiOxフィルムと他のフィルムとの積層をするときにクラックの発生もなく、得られた積層フィルムは酸素透過度、水蒸気透過度の低下を防止する効果を奏する、という。また、実施例で得られた積層フィルムは、目視による着色のないことが示されている。
【特許文献1】特開2000−25183号公報
【特許文献2】特開平8−142253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩蔵ワカメの変退色の一因として赤変菌などの好塩菌の増殖によるものが知られており、酸素を遮断することで一定の効果を期待することができる。しかしながら、微生物による変質を原因とする退色のほかに、たとえば塩蔵わかめの退色は、光を要因とするものと考えられている。このため、上記した様に食品を着色フィルムで包装する方法が採用されているが、フィルムが着色されているため食品の色彩を直接観察することができない。また、付加した色彩によっては食欲や購買意欲を低下させる場合もある。
【0007】
また、特許文献1記載の酸化アルミニウム蒸着フィルムや特許文献2記載の積層フィルムは、水蒸気透過性や酸素透過性を抑制することが示されているが、フィルム自体が透明であるため、可視光の透過は自明である。
【0008】
このような状況下、包装食品の外部から内部が観察できる透明性を有し、かつ陳列時の蛍光灯などの光線を被覆させた場合にも、内部の食品の退色を防止しうる包装食品や、食品の退色防止方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、包装食品の退色について詳細に検討した結果、食品を、特定の全光線透過率を有するフィルムであって、特定範囲の水蒸気透過性および特定範囲の酸素透過性を有する、特定の酸化アルミニウムの蒸着膜や特定の珪素化合物の連続層を有する積層フィルムで密封し、および/または窒素充填したり、または脱酸素剤を同封して包装体の内部の酸素濃度を低減すると、従来から蛍光灯などの光によって退色すると考えられていた食品であっても、きわめて長期にわたって退色予防の効果に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装食品は、透明性に優れ、かつ特定範囲の水蒸気透過性および特定範囲の酸素透過性を有するフィルムで包装されているため、外部から食品を目視することができる。
【0011】
食品の陳列や保存時に蛍光灯を照らしても効果的に食品の退色を防止することができるため、食品の管理保存が容易である。
【0012】
該フィルムは、水蒸気透過性および酸素透過性が引くいため、同時に好気性菌の増殖を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第一は、水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm、全光線透過率が80%以上であるフィルムで包装し、かつ窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封したことを特徴とする包装食品である。
【0014】
従来から、食品の退色を防止するために、着色フィルムや脱酸素剤を封入して酸素を遮断する方法が多用されてきたが、水蒸気透過性が3g/m2・day未満、および酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、好ましくは3ml/m2・day・atm未満、特には1ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上、好ましくは90%以上であるフィルムは、その透明性のために内容物を肉眼で観察することができ、包装体内の酸素濃度を低減すると優れた退色防止効果が得られ、この結果、きわめて長期に亘り食品の退色を防止することができる。
【0015】
このようなフィルムとしては特に制限はないが、たとえば、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に非結晶の酸化アルミニウムが蒸着された酸化アルミニウム蒸着フィルムや、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に炭素、水素、珪素および酸素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と珪素酸化物とからなる化合物の連続層が形成された珪素化合物蒸着フィルムがある。
【0016】
(1)酸化アルミニウム蒸着フィルム
本発明で使用しうる酸化アルミニウム蒸着フィルムとして、たとえば酸化アルミニウム蒸着フィルム酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、その蒸着膜形成直後に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を設けて酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造した酸化アルミニウム蒸着フィルムがある。
【0017】
酸化アルミニウム蒸着フィルムを構成するプラスチックフィルムとしては、無色透明の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができ、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル系樹脂、アセタール系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、単層、あるいは、2層以上の共押し出し法で製膜したもの、または、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されているもの等を使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂は、透明性および耐熱性に優れ、好ましい。
【0018】
このようなプラスチックフィルムの厚さは、酸化アルミニウム蒸着フィルムの製造時の安定性やフィルムの強度などの点から、5〜100μm、好ましくは6〜50μm、特に好ましくは10〜30μmである。該プラスチックフィルムには、用途に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、その他等の所望の添加剤を、その透明性に影響しない範囲内で任意に添加してもよい。
【0019】
該プラスチックフィルムに蒸着する酸化アルミニウムとしては、AlOX (ただし、式中、Xは、1〜1.5の数を表す。)で示される非結晶性のものが透明性に優れる点で好適である。このような蒸着層は、例えば酸化アルミニウムを分子状酸素含有ガスと共に供給しながら、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法によって、前記プラスチックフィルム上に酸化アルミニウムの蒸着膜を形成させることができる。またはアルミニウムを分子状酸素含有ガスと共に供給しながら、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法によって、前記プラスチックフィルム上に酸化アルミニウムの蒸着膜を形成させてもよい。いずれの方法であっても、プラスチックフィルムには酸化アルミニウムとして蒸着されるからである。なお、蒸着原料の加熱方式としては、例えば、エレクトロンビ−ム(EB)方式、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式等を用いることができる。
【0020】
酸化アルミニウムの蒸着膜の膜厚は、好ましくは50〜3000Å、より好ましくは100〜2000Å、特には150〜500Åとする。3000Åを超えると膜の可撓性が低下し、膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Åを下回るとそのガスバリア性を確保することが困難になる場合がある。
【0021】
酸化アルミニウムの蒸着膜面には、直ちにインラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理を行うことが好ましい。酸素ガスによる処理面を設けると、酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムが巻き取られた時に、該プラスチックフィルムとプラスチックフィルムとの間に酸素ガスが挿入されているため、蒸着後のエージングによって酸化アルミニウムの蒸着膜と挿入された酸素ガスとが反応し、透明性が更に向上するからである。このような酸素ガスの供給方法としては、たとえば酸化アルミニウムの蒸着膜を設けた直後のプラスチックフィルムの該酸化アルミニウムの蒸着膜表面を巻き取りロールで巻き取る直前に、巻き取りロール近傍に酸素ガス供給パイプを配置し、ここからインラインで酸素ガスを供給して該酸素ガスによる処理を行う方法がある。この際、酸素ガスの供給量としては、500〜3000ml/minである。なお、同様の趣旨により、酸素ガスを供給して酸素ガスによる処理を行った後酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムを巻き取りロ−ルで巻き取り、その巻き取り面内に酸素ガスを内包し、これにより、プラスクックフィルム上の酸化アルミニウムの蒸着膜を経時的に酸素ガスにより処理して、該酸素ガスによる処理面を形成することもできる。
【0022】
本発明で使用する酸化アルミニウム蒸着フィルムは、酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスによるプラズマ処理面、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガス等の無機ガスとの混合ガスによるプラズマ処理面を設けてもよい。特には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用してプラズマ処理を行うことが最も好ましい。より低い電圧でプラズマ処理を行なうことができるからである。プラスチックフィルムの表面に酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、インラインでプラズマ処理を行うと、蒸着された直後の酸化アルミニウムの蒸着膜とプラズマ化した化学的に活性な酸素とが反応し、より緻密な酸化アルミニウムの蒸着膜を形成可能とし、優れたガスバリア性を有する酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムを製造することができる。更に、活性酸素が挿入されることにより、酸化アルミニムウの蒸着膜を構成するアルミニウムの酸化が促進され、酸化アルミニウムの蒸着膜の透明性が向上する。
【0023】
プラズマ処理は、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜1×10-10 Torr、より好ましくは1×10-4〜1×10-8Torrであり、また、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガスまたはヘリウムガス=100:0〜30:70、より好ましくは、90:10〜70:30であり、更に、そのプラズマ出力としては、0.5〜30kW、より好ましくは、1〜15kW、更にまた、その処理速度としては、50〜800m/min、より好ましくは、200〜600m/minである。上記の酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの分圧比において、アルゴンガスまたはヘリウムガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスまたはヘリウムガスが還元性ガスとして作用する傾向にあることから好ましくないものである。また、上記のプラズマ出力が、0.5kW未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくい場合があり、また、30kWを越えるとプラズマ出力が高すぎるため、酸化アルミニウム蒸着フィルムの劣化、物性が低下等の問題を引き起こす場合がある。更に、上記の処理速度が50m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また800m/minを越えると酸化アルミニウム蒸着フィルムのバリア性が低下して好ましくない場合がある。なお、プラズマを発生させる方法としては、例えば、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等の装置を利用して行うことができる。
【0024】
得られたフィルムは、水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上である。なお、本明細書において、水蒸気透過性、酸素透過性および全光線透過率は、後記する実施例で記載した測定方法によるものとする。
【0025】
上記酸化アルミニウム蒸着フィルムは、更に樹脂フィルム等の包装用容器を構成する包装用素材等と任意にラミネートして種々の積層体を製造することもできる。上記の樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシートなどがある。上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。更に、フィルムないしシートとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0026】
ラミネート方法としては、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、その他等で行うことができる。上記積層を行う際に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理、その他等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、ポリエステル系、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を使用することができる。このような積層は、1層に限定されない。従って、酸化アルミニウム蒸着フィルムにカーボネートを積層して積層体を得て、この積層体にドライラミネーション法によってポリエチレンフィルムを積層してもよく、ポリエチレン樹脂を接着層にしてポリエチレンフィルムを積層してもよい。更に、酸化アルミニウム蒸着フィルムにポリカーボネートを積層して積層体を得て、ドライラミネーション法によってナイロンフィルムを積層し、ついで再びドライラミネーション法によって無延伸ポリプロピレンを積層してもよい。
【0027】
上記積層体を使用して製袋するには、例えば、包装用容器がプラスチックフィルム等からなる軟包装袋の場合、上記のような方法で製造した積層体を使用し、その内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。而して、その製袋方法としては、上記の積層体を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。その他、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能であり、更に、本発明においては、上記の積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
【0028】
(2)珪素化合物蒸着フィルム
プラスチックフィルムに蒸着SiOx層を設けたものである。
【0029】
プラスチックフィルムとしては、可撓性に富むフィルムであることが好ましく、たとえばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー等の単層又は多層共押出し成形の延伸又は未延伸フィルムが使用でき、好ましくは、寸法安定性がある延伸ポリエステルフィルムである。
【0030】
SiOx層を形成する有機珪素化合物は、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトシメトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのなかから選択することができ、好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンである。いずれも液体である上記有機珪素化合物を気化させ、酸素と、不活性ガスであるヘリウム及び/又はアルゴンとを混合した原料ガスをSiOxを、前記プラスチックフィルムが設置されているプラズマ化学蒸着機に導入して60〜500Å、好ましくは100〜300ÅのSiOx層を形成する。このようにして形成されたSiOx層には、珪素酸化物と炭素、水素、珪素及び酸素のなかから1種あるいは2種以上の元素からなる化合物が含まれる。具体的には、アルキル基を含むハイドロカーボンや、シリル基、シリレン基をもつハイドロシリカ、更にシラノール等の水酸基をもつ誘導体がある。上記以外でも、原料ガスの組成、蒸着条件を変化させることにより、バリア層に化合物の種類、量を制御することができる。これらの化合物の含有率はSiOx層の0.1〜40質量%、好ましくは5〜20質量%である。この含有率が0.1質量%未満であると、バリア層の耐衝撃性、延展性が不充分となり、曲げなどによってクラックの発生がみられ、高いバリア性を保つことができなくなる。また、40質量%を超えるとバリア性が低下して好ましくない。また、SiOx層に含まれる上記の炭素、水素、珪素、及び酸素のなかから1種、あるいは2種以上の元素からなる化合物の濃度分布は、基材フィルムに近い部分は低く、蒸着表面層の部分は濃度が高くなるように構成されている。このため、最もクラックが発生しやすい最表面での耐衝撃性が優れ、基材フィルムとSiOx層との接着は強固なものになる。
【0031】
上記珪素化合物蒸着フィルムは、更に樹脂フィルム等の包装用容器を構成する包装用素材等と任意にラミネートして種々の積層体を製造することもできる。具体的には、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシートなどがある。この際、上記した包装用素材フィルム層は、SiOxフィルムの、SiOx層あるいは前記プラスチックフィルムのいずれの側に設けてもよい。必要によってはプライマー層を設けた溶融押出しコーティングや、予め製膜したフィルムを接着剤層を用いたドライラミネーションや、熱溶融樹脂を接着用樹脂層とするサンドイッチラミネーションによって形成することもできる。従って、上記した包装用素材フィルム層と前記プラスチックフィルムとは、SiOxフィルムに必要によってはプライマー層を介して溶融押出しコーティングによって形成することもできる。
【0032】
また、包装用素材フィルム層の厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。更に、フィルムないしシートとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0033】
このような積層は、1層に限定されず、従って、珪素化合物蒸着フィルムにカーボネートを積層して積層体を得て、この積層体にドライラミネーション法によって線状低密度ポリエチレンフィルムを積層してもよく、ポリエチレン樹脂を接着層にしてポリエチレンフィルムを積層してもよい。
【0034】
得られたフィルムは、水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上である。上記フィルムは、酸化アルミニウム蒸着フィルムの製袋方法と同様にして製袋することができる。
【0035】
なお、本発明における全光線透過率とは、上記フィルムにおける単位面積当たりの全光線透過率を意味し、包装として使用されるフィルムの各部位の全光線透過率の平均値を意味するものではない。従って、該フィルムで食品を包装する場合には、該包装には印刷がなされていてもよい。印刷によって印刷部分の全光線透過率が低下する場合があったとしても、包装の少なくとも一部に全光線透過率が80%以上の部分があれば、包装内の食品を外部から視認できるからである。
【0036】
(3)包装食品
本発明の包装食品は、上記フィルムで包装し、かつ窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封したことを特徴とする包装食品である。後記する実施例に示すように、窒素充填や脱酸素剤の同封により、包装容器内の酸素濃度を1%以下に低下させることができ、しかもフィルムの酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、水蒸気透過性が3g/m2・day未満であるから、長期にわたりその低酸素濃度条件を維持することができる。しかも、フィルム自体は全光線透過率が80%以上であるから、フィルムを通して内部を見ることができ、従って、優れた可視光線透過性を有するが、食品の退色を防止することができる。
【0037】
本発明の包装食品としては、わかめ、こぶ、あらめ、もずく、ひじきなどの海草類があり、塩蔵品のほか、鳴門わかめなどの乾燥品であってもよい。本発明では、特に塩蔵わかめを長期保存する際に、その退色防止効果に優れる。
【0038】
脱酸素剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、第一鉄塩、ヒドロキノン、カテコール、没食子酸、レゾルシン、ピロガロール、ロンガリット、アルコルビン酸(塩)、イソアルコルビン酸(塩)、ソルボース、グルコース、リグニン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどを含有する脱酸素剤、鉄粉などの金属粉を含有する脱酸素剤、炭酸ガス発生型脱酸素剤などのいずれであってもよい。更に、脱酸素剤を用いる場合の脱酸素剤の形態として、小袋状、シート状、キャップ状など、その形態は特に限定されない。更にガス置換と脱酸素剤との併用、真空包装と脱酸素剤との併用など、各種ガス調整方法と組み合わせてもよい。
【0039】
(4)食品の退色防止方法
本発明の第二は、プラスチックフィルムの少なくも一方の面に設けられた非結晶性の酸化アルミニウムの蒸着膜にインラインで酸素ガスを供給して形成した酸素ガスによる処理面を有する酸化アルミニウム蒸着フィルムで食品を包装し、または、プラスチックフィルムの少なくも一方の面にプラズマ化学蒸着法によって、炭素、水素、珪素および酸素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と珪素酸化物とからなる化合物の連続層が形成された珪素化合物蒸着フィルムで食品を包装し、かつ包装体に窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封することを特徴とする、食品の退色防止方法である。
【0040】
このような酸化アルミニウム蒸着フィルムや珪素化合物蒸着フィルムは、前記したように、水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上であり、窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封することで食品の退色を有効に防止することができる。その理由について詳細は不明であるが、上記フィルムは内部を見ることができる優れた可視光線透過性を有するが、酸素濃度の低下と高いバリアー性により、食品の退色を防止すると考えられる。
【0041】
本発明で使用する脱酸素剤や包装体内の酸素濃度、退色を防止しうる食品などは、上記(3)で記載したと同様である。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0043】
(製造例)
プラスチックフィルムとして厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にヘキサメチルジシロキサンを気化させて、ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリゥムガス=1:9:8よりなる混合ガスを原料ガスとして蒸着し、SiOx層を200Åの厚さで設けたSiOx層フィルムを形成した。次いで、SiOxフィルムのSiOx層にウレタン系のバインダーよりなるグラビアインキで絵柄層を設け、ポリエステルイソシアネート系プライマー層を介してオゾンガスの雰囲気下で、滑剤を含むアイオノマー(三井ポリケミカル(株)製ハイミラン1652SB)を、厚さ40μmで溶融押出しコーティングしてプラスチックフィルムであるアイオノマー層を設けた。
【0044】
なお、該フィルムには印刷を行わなかった。
【0045】
(比較製造例)
プラスチックフィルムとして厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートと、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンとをポリエステルウレタン系接着剤によりドライラミネーション法によって積層した。なお、該フィルムにも製造例と同様に、印刷を行わなかった。
【0046】
製造例及び比較製造例で調製した積層体について、酸素透過度、水蒸気透過度、酸化珪素の蒸着層と他のフィルムとの接着強度及び着色の程度透明性を次の方法で評価した結果を表1に示す。
【0047】
評価方法
(1)酸素透過度は、MOCON社製OXTRANにより、温度23℃ 湿度90%RHの条件で測定。
【0048】
(2)水蒸気透過度は、MOCON社製PERMATRANにより、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定。
【0049】
(3)全光線透過率は、スガ試験機(株)製、ヘイズメーターHGM−2Kで測定した。
【0050】
【表1】


(比較例)
比較製造例で調製したフィルムを用いて、150mm×135mmの密封容器を作成し、塩蔵ワカメ100gを封入し、脱酸素剤(三菱ガス化学製、商品名「GL50」(非鉄系))を同封してサンプルとした。これを蛍光灯(TOSHIBAメロウホワイトFL20SS・N/18.20型 18ワット2本)をサンプルから70cmの距離に設置し、経時的なサンプルの色彩の変化を540時間に亘り観察した。
【0051】
脱酸素剤を同封する代わりに、古川製作所(FVSII−500IIG)により、真空時間4.3秒(真空ゲージ約76cmHg)、充填時間5.0秒(真空ゲージ約20cmHg)、シール時間1.7秒の条件で窒素ガスを充填し、上記と同様に経時的なサンプルの色彩変化を観察した。
【0052】
また、窒素充填と脱酸素剤の同封とを行ったサンプルについて、上記と同様に経時的なサンプルの色彩変化を観察した。
【0053】
なお、脱酸素剤を同封せず、窒素充填も行わないものを対照とした。
【0054】
色彩は、肉眼により観察し、塩蔵ワカメの退色によって黄色味が増す程度に従って、1〜5段階で評価した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

(実施例)
製造例で調製した珪素化合物蒸着フィルムを用いる以外は比較例と同様にして経時的なサンプルの色彩の変化を観察した。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

(結果)
上記表2と表3を比較して明らかなように、蛍光灯の照射後168時間を経過すると、明らかに比較例のフィルムで作成したサンプルでは、脱酸素剤の同封やN2置換の有無にかかわらず、サンプルの退色が観察された。一方、珪素化合物蒸着フィルムを使用したものは、珪素化合物蒸着フィルムのみでも退色を防止でき、脱酸素剤を同封したものやN2置換をしたものも変色を起こさなかった。
【0057】
比較製造例で調製したフィルムを用いたサンプルは、蛍光灯の照射216時間で退色の程度が「3」となったが、珪素化合物蒸着フィルムを使用したものは、脱酸素剤を同封し、またはN2置換を行うことで540時間の長期に亘り、退色の程度が「2」を維持することができた。
【0058】
なお、一般の流通過程では、店頭における蛍光灯の照射時間を18時間/日とすれば、540時間は約1ヶ月に換算される。従って、本発明の包装食品は、少なくとも1ヶ月に亘り退色を防止しうる優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上であるフィルムで包装し、かつ窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封したことを特徴とする包装食品。
【請求項2】
前記フィルムが、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に非結晶の酸化アルミニウムが蒸着された酸化アルミニウム蒸着フィルム、またはプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に炭素、水素、珪素および酸素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と珪素酸化物とからなる化合物の連続層が形成された珪素化合物蒸着フィルムである、請求項1記載の包装食品。
【請求項3】
前記食品は、塩蔵海草である、請求項1または2記載の包装食品。
【請求項4】
プラスチックフィルムの少なくも一方の面に設けられた非結晶性の酸化アルミニウムの蒸着膜にインラインで酸素ガスを供給して形成した酸素ガスによる処理面を有する酸化アルミニウム蒸着フィルムで食品を包装し、かつ包装体に窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封することを特徴とする、食品の退色防止方法。
【請求項5】
前記酸化アルミニウム蒸着フィルムは、酸化アルミニウムの蒸着膜面に、予め、酸素ガスによるプラズマ処理面、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理面が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の食品の退色防止方法。
【請求項6】
プラスチックフィルムの少なくも一方の面にプラズマ化学蒸着法によって、炭素、水素、珪素および酸素の中から選ばれた少なくとも1種の元素と珪素酸化物とからなる化合物の連続層が形成された珪素化合物蒸着フィルムで食品を包装し、かつ包装体に窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封することを特徴とする、食品の退色防止方法。
【請求項7】
前記食品は、塩蔵海草である、請求項4〜6のいずれかに記載の食品の退色防止方法。

【公開番号】特開2007−151461(P2007−151461A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350979(P2005−350979)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】