説明

化合物及びその製造方法、並びにそれを用いたインク組成物、薄膜、有機トランジスタ及び有機電界発光素子

【課題】有機電界発光素子の青色発光材料として用いた場合、色度が優れた化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造(下記一般式(1)で表される構造から少なくとも1つの水素原子を除いた残基の構造を含む)を含むことを特徴とする化合物。
【化1】


(式(1)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物の製造方法、及びこれらの新規化合物の合成原料として用いられる化合物、並びに、これらの新規化合物を含有するインク組成物、これらの新規化合物を含有する薄膜、これらの新規化合物を含有する有機トランジスタ、これらの新規化合物を含有する有機電界発光素子及びこのような素子を用いた面状光源及び表示材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の製造に有用な発光材料や電荷輸送材料が種々検討されている。例えば、「Polymer preprints」、2001年発行、42巻(2号)、587頁(非特許文献1)には、繰返し単位として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼンの構造を有する化合物等のアミン化合物が開示されている。
【非特許文献1】「Polymer preprints」、2001年発行、42巻(2号)、587頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の化合物は、有機電界発光素子の青色発光材料として用いた場合、色度が十分ではないという問題があった。また、有機電界発光素子とした時に従来のアミン化合物では駆動電圧が高いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、有機電界発光素子の青色発光材料として用いた場合、色度が優れた化合物を提供すること、並びに有機電界発光素子とした時の駆動電圧を下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼンの構造を炭素原子で架橋した構造を有する化合物において、この架橋炭素上の置換基を適宜選択することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の化合物は、下記一般式(1):
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。)
で表される構造(一般式(1)で表される構造から少なくとも1つの水素原子を除いた残基の構造を含む)を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(7):
【0010】
【化2】

【0011】
(式(7)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。)
で表される化合物を原料として重合する工程を含むことを特徴とする方法である。
【0012】
さらに、本発明の化合物にかかる合成原料は、前記一般式(1)で表される構造を含む化合物を得るためのものである。
【0013】
また、本発明の組成物は、前記化合物、並びに、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選択される少なくとも1種類の材料を含有することを特徴とするものである。さらに、本発明のインク組成物は、前記化合物又は前記組成物を含有することを特徴とするものである。また、本発明の薄膜は、前記化合物又は前記組成物を含有することを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の有機トランジスタは、前記薄膜を有することを特徴とするものである。また、本発明の有機電界発光素子は、陽極及び陰極からなる電極間に、前記化合物又は前記組成物を含む有機層を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の面状光源は、前記有機電界発光素子を備えることを特徴とするものである。さらに、本発明の表示装置は、前記有機電界発光素子を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機電界発光素子の青色発光材料として用いた場合、色度が優れた化合物を提供することが可能となる。そして、本発明の化合物を用いた有機電界発光素子は、低駆動電圧である。本発明の化合物は、通常、発光材料や電荷輸送材料として有用であり、且つ有機電界発光素子に用いた場合には、発光波長が短いものである。また、本発明の化合物を含む青色の発光部と緑色や赤色等の発光部とを共存させた場合、緑色や赤色、白色の発光部としても有用に使用できる。
【0017】
したがって、本発明の化合物は有機トランジスタや有機電界発光素子に有用である。さらに、本発明の有機電界発光素子は、面状光源、表示装置(例えば、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置等の表示装置、液晶表示装置のバックライト)に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される構造(下記一般式(1)で表される構造から少なくとも1つの水素原子を除いた残基の構造を含む)を含むものである。
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(1)において、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表す。また、A環、B環及びC環はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0022】
このような芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ペリレン環、テトラセン環、ペンタセン環、フルオレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チオフェンオキシド環、ベンゾチオフェンオキシド環、ジベンゾチオフェンオキシド環、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、ジベンゾピロール環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、ボロール環、ベンゾボロール環、ジベンゾボロール環等の複素芳香環が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、蛍光強度、素子特性等の観点から、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0023】
また、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基が挙げられる。
【0024】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルキル基の炭素数は通常1〜30程度、溶媒への溶解性の観点から好ましくは3〜15程度である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等と耐熱性とのバランスという観点から、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0026】
アルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルコキシ基の炭素数は通常1〜30程度、溶媒への溶解性の観点から好ましくは3〜15程度である。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等と耐熱性とのバランスという観点から、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0027】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルキルチオ基の炭素数は通常1〜30程度、溶媒への溶解性の観点から好ましくは3〜15程度である。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等と耐熱性とのバランスという観点から、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0028】
アリール基は、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。このようなアリール基の炭素数は通常6〜60程度、好ましくは6〜30程度である。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12は、C〜C12の直後に示す有機基の炭素数(ここでは、アルコキシフェニル基のうちのアルコキシ基中の炭素数)が1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基が好ましい。また、C〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、i−プロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、i−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基が挙げられる。さらに、C〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基が挙げられる。
【0029】
アリールオキシ基においては、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜30程度である。このようなアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。また、C〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、i−プロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、i−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基が挙げられる。さらに、C〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0030】
アリールチオ基においては、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜30程度である。このようなアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0031】
アリールアルキル基においては、炭素数が通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0032】
アリールアルコキシ基においては、炭素数が通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルコキシ基としては、例えば、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基などのフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0033】
アリールアルキルチオ基においては、炭素数が通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点から、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基が好ましい。
【0034】
アルケニル基においては、炭素数が2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロピレニル基、2−プロピレニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、シクロヘキセニル基が挙げられる。また、このようなアルケニル基には、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサ−1,3−ジエニル基、1,3,5−ヘキサトリエニル基等のジエニル基やトリエニル基も含まれる。
【0035】
アルキニル基においては、炭素数が2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピレニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、シクロヘキシルエチニル基が挙げられる。また、このようなアルキニル基には、1,3−ブタジイニル基等のジイニル基も含まれる。
【0036】
2置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される2個の基で置換されたアミノ基が挙げられる。このような2置換アミノ基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。また、このような2置換アミノ基の炭素数は、アルキル基等が有する置換基の炭素数を含めないで通常2〜60程度、好ましくは2〜30程度である。このような2置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジ−2−エチルヘキシルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジ−3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ジラウリルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、ジ−1−ナフチルアミノ基、ジ−2−ナフチルアミノ基、ジペンタフルオロフェニルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジピリダジニルアミノ基、ジピリミジルアミノ基、ジピラジルアミノ基、ジトリアジルアミノ基、ジ(フェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基が挙げられる。
【0037】
3置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。このような3置換シリル基の炭素数は通常3〜90程度、好ましくは3〜45程度である。なお、このような3置換シリル基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。このような3置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0038】
アシル基においては、炭素数が通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0039】
アシルオキシ基においては、炭素数が通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0040】
イミン残基においては、炭素数が2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなイミン残基としては、例えば以下に示す構造式で表される基が挙げられる。なお、以下に示す構造式において、波線はsyn又はantiを表し、synであってもantiであってもよい。
【0041】
【化4】

【0042】
アミド基においては、炭素数が通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0043】
酸イミド基としては、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基が挙げられる。このような酸イミド基の炭素数は4〜30程度、好ましくは4〜15程度である。このような酸イミド基としては、例えば以下に示す構造式で表される基が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。このような1価の複素環基の炭素数は通常2〜30程度、好ましくは2〜15程度である。なお、このような1価の複素環基において、複素環は置換基を有していてもよいが、炭素数には、複素環上の置換基の炭素数は含まれない。また、ここで複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。このような1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。これらの中でも、1価の芳香族複素環基が好ましく、特に、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0046】
置換カルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられる。このような置換カルボキシル基の炭素数は通常2〜30程度、好ましくは2〜15程度である。このような置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。なお、このような置換カルボキシル基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。また、置換カルボキシル基の炭素数にはアルキル基等の有する置換基の炭素数は含まれない。
【0047】
ヘテロアリールオキシ基(Q−O−で表される基、Qは1価の複素環基を表す)においては、炭素数が通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。なお、このようなヘテロアリールオキシ基において、1価の複素環基は置換基を有していてもよいが、ヘテロアリールオキシ基の炭素数には、1価の複素環基上の置換基の炭素数は含まれない。このようなヘテロアリールオキシ基としては、例えば、チエニルオキシ基、C〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基、チアジアゾールオキシ基が挙げられる。また、Qとしては1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0048】
ヘテロアリールチオ基(Q−S−で表される基、Qは1価の複素環基を表す)においては、炭素数が通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。なお、このようなヘテロアリールチオ基において、1価の複素環基は置換基を有していてもよいが、ヘテロアリールチオ基の炭素数には、1価の複素環基上の置換基の炭素数は含まれない。このようなヘテロアリールチオ基としては、チエニルメルカプト基、C〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基、チアジアゾールメルカプト基が挙げられる。また、Qとしては1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0049】
前記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表す。
【0050】
本明細書において、1価の基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、3置換シリル基、アシル基、1価の複素環基、置換カルボキシル基が挙げられる。
【0051】
これらのアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、3置換シリル基、アシル基、1価の複素環基及び置換カルボキシル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。
【0052】
化合物の安定性の観点から、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
【0053】
前記一般式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
【0054】
、R、R及びRで表されるアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよいが置換基を有しない。このようなアルキル基の炭素数は通常1〜30程度、溶媒への溶解性の観点から、好ましくは3〜15程度である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等と耐熱性とのバランスという観点から、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0055】
、R、R及びRで表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。
【0056】
化合物の合成の容易さの観点から、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であることが好ましい。
【0057】
さらに、前記一般式(1)で表される構造の合成の容易さの観点から、前記一般式(1)で表される構造がC2対称である場合が好ましい。
【0058】
また、化合物の発光がより短波長となり、青色としての純度が高くなるという観点から、前記一般式(1)におけるR、R、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は1価の炭化水素基であることが好ましい。さらに、通電した時の安定性の観点から、R、R、R及びRがそれぞれ独立に1価の炭化水素基であることが好ましい。ここで、「1価の炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子のみからなる基であって、脂肪族の基であっても芳香族の基であってもよい。
【0059】
また、耐熱性、製膜性の観点から、前記一般式(1)におけるR、R、R及びRがそれぞれ独立に下記一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0060】
【化6】

【0061】
一般式(2)において、*は炭素原子との結合手を表す。また、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基又は3置換シリル基を表す。さらに、mは0から5までの整数を表す。また、mが2以上の場合、R7は同じであっても異なっていてもよい。
【0062】
このようにRで表される、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基又は3置換シリル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として例示した基と同様のものが挙げられる。これらの中でも、化合物の安定性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、2置換アミノ基が好ましい。
【0063】
また、化合物の溶解性の観点から、Rは炭素数3以上のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基であることが好ましく、中でも炭素数3以上のアルキル基が好ましい。
【0064】
前記一般式(2)として更に好ましくは下記一般式(2−1)で表される場合である。
【0065】
【化7】

【0066】
一般式(2−1)において、Rは前記と同じ意味を表す。
【0067】
さらに、化合物の導電性の観点から、共役がつながった結合位置で重合することが好ましい。中でも、化合物中の前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(3)で表される繰返し単位である場合が好ましい。
【0068】
【化8】

【0069】
一般式(3)において、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。また、A環及びC環上に結合手を有する。また、A環、B環、C環、R、R、R、R、R及びRとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0070】
また、化合物中の前記一般式(1)で表される構造が、前記一般式(3)で表される繰返し単位である場合には、化合物の合成の容易さの観点から、前記一般式(3)におけるA環及びC環がベンゼン環であることが好ましく、具体的には、繰返し単位が下記一般式(4)で表される繰返し単位である場合が好ましい。
【0071】
【化9】

【0072】
一般式(4)において、*は結合手を表し、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
また、前記一般式(4)において、R、R、R、R、R及びRとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、B環としてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。これらのB環の中でも、耐熱性、蛍光強度、素子特性等の観点から、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。Ra及びRbにおけるアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基及びヘテロアリールオキシ基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。化合物の合成しやすさの観点からo及びpが0の場合が好ましい。
【0074】
前記一般式(4)として更に好ましくは、下記一般式(4−1)で表される場合である。
【0075】
【化10】

【0076】
一般式(4−1)において、R、R、R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。
【0077】
さらに、有機電界発光素子に用いた時に発光効率や寿命等の素子特性に優れるという観点から、前記一般式(1)で表される構造を含む化合物は、更に下記一般式(5)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
【0078】
【化11】

【0079】
一般式(5)において、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。nは0又は1を表す。なお、Arが2種以上であってもよい。
【0080】
このようなArにおけるアリーレン基においては、炭素数が通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。このようなArにおけるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、以下に示す一般式1〜3)、ナフタレンジイル基(例えば、以下に示す一般式4〜13)、アントラセニレン基(例えば、以下に示す一般式14〜19)、ビフェニレン基(例えば、以下に示す一般式20〜25)、トリフェニレン基(例えば、以下に示す一般式26〜28)、縮合環化合物基(例えば、以下に示す一般式29〜38)が挙げられる。なお、以下に示す式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。また、アリーレン基の炭素数には、置換基Rの炭素数は含まれない。
【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
【化14】

【0084】
【化15】

【0085】
【化16】

【0086】
また、本発明において、2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。このような2価の複素環基の炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。また、ここで複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0087】
このような2価の複素環基としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、以下に示す式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。また、2価の複素環基の炭素数には、置換基Rの炭素数は含まれない。
【0088】
ヘテロ原子として窒素を含む2価の複素環基として、例えば、ピリジン−ジイル基(例えば、以下に示す一般式39〜44)、ジアザフェニレン基(例えば、以下に示す一般式45〜48)、キノリンジイル基(例えば、以下に示す一般式49〜63)、キノキサリンジイル基(例えば、以下に示す一般式64〜68)、アクリジンジイル基(例えば、以下に示す一般式69〜72)、ビピリジルジイル基(例えば、以下に示す一般式73〜75)、フェナントロリンジイル基(例えば、以下に示す一般式76〜78)が挙げられる。
【0089】
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含みフルオレン構造を有する基として、例えば、以下に示す一般式79〜93で表される基が挙げられる。これらの中でも、窒素原子を含む式82〜84で表されるカルバゾールやトリフェニルアミンジイル基等の芳香族アミンモノマーを有していることが発光効率の点で望ましい。
【0090】
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基として、例えば、以下に示す一般式94〜98で表される基が挙げられる。
【0091】
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環縮合複素環基として、例えば、以下に示す一般式99〜109で表される基、ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾオキサジアゾール−4,7−ジイル基が挙げられる。
【0092】
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基として、例えば、以下に示す一般式110〜111で表される基が挙げられる。
【0093】
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基として、例えば、以下に示す一般式112〜118で表される基が挙げられる。
【0094】
ヘテロ原子として窒素、酸素、硫黄等を含む縮合した複素環基とベンゼン環又は単環性の複素環基とが結合した3環性の基として、例えば、以下に示す一般式120〜125で表される基が挙げられる。
【0095】
【化17】

【0096】
【化18】

【0097】
【化19】

【0098】
【化20】

【0099】
【化21】

【0100】
【化22】

【0101】
【化23】

【0102】
【化24】

【0103】
【化25】

【0104】
【化26】

【0105】
前記一般式(5)で表される繰返し単位としては、nが0の場合が好ましく、より好ましくはAr1がアリーレン基の場合である。
【0106】
また、前記一般式(5)で表される繰返し単位としては、下記一般式(5−1)で表される構造が更に好ましい。
【0107】
【化27】

【0108】
一般式(5−1)において、C環及びC環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれC4環又はC5環上に存在し、Rw及びRxはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。Rw及びRxは互いに結合して環を形成してもよい。
【0109】
芳香族炭化水素環とは、ベンゼン環又は縮合した芳香族炭化水素環のことをいう。このような芳香族炭化水素環の炭素数は6〜30程度、好ましくは6〜15程度である。なお、芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。このような芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、アセナフチレン環が挙げられる。
【0110】
Rw及びRxにおけるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として例示した基と同様のものが挙げられる。
【0111】
前記一般式(5−1)で表される繰返し単位としては、具体的には以下に示す一般式で表される繰返し単位が挙げられる。また、このような繰返し単位は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基及びハロゲン原子等からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい。なお、以下に示す一般式において、芳香族炭化水素における結合手は任意の位置をとり得ることを表す。
【0112】
【化28】

【0113】
これらの繰返し単位の中でも、1A−0、1A−1、1A−2又は1A−3で表される繰返し単位が好ましく、1A−0で表される繰返し単位が特に好ましい。
【0114】
更に好ましくは下記一般式(1A−0−1)で表される場合である。
【0115】
【化29】

【0116】
一般式(1A−0−1)において、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環化合物基であり、2つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Rは互いに結合して環を形成してもよい。
【0117】
また、本発明の化合物は、耐熱性の向上、電荷輸送性改善、発光色の調整、発光効率を高める等の素子特性を改善するという観点から、前記一般式(5)で表される繰返し単位以外の下記一般式(6−1)、(6−2)、(6−3)で表される繰返し単位からなる群から選択される少なくとも1種類の繰返し単位を更に含むことが好ましく、2種類以上の繰返し単位を含むことがより好ましい。
【0118】
【化30】

【0119】
一般式(6−1)において、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立にアリーレン基又は2価の複素環基を表す。また、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基、又は1価の複素環基を表す。さらに、a及びbはそれぞれ独立に0又は正の整数を表す。また、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは置換基を有していてもよい。
【0120】
【化31】

【0121】
一般式(6−2)において、D環及びE環は、それぞれ独立に芳香環を表す。また、Yは−O−、−S−又は−C(=O)−を表す。さらに、R20は1価の基を表す。また、D環上、E環上にそれぞれ結合手を有する。
【0122】
【化32】

【0123】
一般式(6−3)において、Yは−O−又は−S−を表す。また、6員環上に2つの結合手を有する。
【0124】
前記一般式(6−1)で表される繰返し単位の具体例としては、以下に示す一般式133〜140で表されるものが挙げられる。
【0125】
【化33】

【0126】
【化34】

【0127】
【化35】

【0128】
上記一般式において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0129】
また、上記一般式におけるRがアルキル基を含む置換基である場合においては、高分子化合物の有機溶媒への溶解性を高めるために、炭素数が3以上のアルキル基が含まれることが好ましい。さらに、上記一般式133〜140で表される構造の中でも、発光波長を調節するという観点から、上記一般式133、134及び137で表される構造が好ましい。
【0130】
前記一般式(6−1)で表される繰返し単位において、発光波長を調節、素子寿命等の素子特性の観点から、Ar、Ar、Ar及びArがそれぞれ独立にアリーレン基であり、Ar、Ar及びArがそれぞれ独立にアリール基であるものが好ましい。また、Ar、Ar及びArが、それぞれ独立に、無置換のフェニレン基、無置換のビフェニレン基、無置換のナフチレン基、又は無置換のアントラセンジイル基であるものが好ましい。さらに、有機溶媒への溶解性、素子特性等の観点から、Ar、Ar及びArそれぞれ独立に、1つ以上の置換基を有するアリール基であるものが好ましく、3つ以上の置換基を有するアリール基であるものがより好ましい。さらに、Ar、Ar及びArが3つ以上の置換基を有するフェニル基、3つ以上の置換基を有するナフチル基、又は3つ以上の置換基を有するアントラセニル基であるものがより好ましく、Ar、Ar及びArが3つ以上の置換基を有するフェニル基であるものがさらにより好ましい。
【0131】
これらの繰返し単位の中でも、Ar、Ar及びArが、それぞれ独立に下記一般式(6−4)で表される基であり、且つa+b≦3であるものが好ましく、a+b=1であるものがより好ましく、a=1、b=0であるものが特に好ましい。
【0132】
【化36】

【0133】
一般式(6−4)において、Re、Rf及びRgは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。また、Re、Rf及びRgに含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。さらに、Rh及びRiは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。また、Rh及びRiに含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0134】
また、前記一般式(6−4)において、Re及びRfがそれぞれ独立に、炭素数3以下のアルキル基、炭素数3以下のアルコキシ基、炭素数3以下のアルキルチオ基であり、且つRgが炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルチオ基であることが好ましい。
【0135】
前記一般式(6−1)で表される繰返し単位において、Arが下記一般式(6−5)又は(6−6)で表される基であることが好ましい。
【0136】
【化37】

【0137】
一般式(6−5)及び(6−6)において、構造中に含まれるベンゼン環は、無置換のものが好ましいが、それぞれ独立に1個以上4個以下の置換基を有していてもよい。それら置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、このようなベンゼン環に他の芳香族炭化水素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0138】
また、前記一般式(6−1)で表される繰返し単位として、より好ましい具体例としては、以下に示す一般式141〜143で表されるものが挙げられる。
【0139】
【化38】

【0140】
上記一般式において、Re、Rf、Rg、Rh及びRiとしては、それぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0141】
さらに、前記一般式(6−1)で表される繰返し単位として、特に好ましい具体例としては、蛍光強度、発光波長の調整、耐熱性等の素子特性の観点から、下記一般式(22)〜(24)で表されるものが挙げられる。
【0142】
【化39】

【0143】
前記一般式(6−2)において、D環及びE環は、それぞれ独立に芳香環を表す。また、D環及びE環上には置換基を有していてもよい。化合物の安定性の観点から、好ましくは芳香族炭化水素環の場合であり、特に好ましくはベンゼン環の場合である。
【0144】
前記一般式(6−2)で表される繰返し単位の好ましい具体例としては、下記一般式(6−7)で表されるものが挙げられる。
【0145】
【化40】

【0146】
一般式(6−7)において、Y及びR20としては、それぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0147】
本発明の化合物の中でも、薄膜にした時の電荷の輸送性、有機電界発光素子に用いた時に発光効率や寿命等の素子特性の観点から、共役系高分子であるものが好ましい。ここで、共役系高分子とはポリマーの主鎖骨格に沿って非局在π電子対が存在している高分子を意味する。この非局在電子としては、2重結合のかわりに不対電子又は孤立電子対が共鳴に加わる場合もある。
【0148】
また、本発明の化合物においては、発光特性や電荷輸送特性を損なわない範囲で、非共役の単位で連結されていてもよいし、繰返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。非共役な結合構造としては、例えば、以下に示す一般式で表される構造、及び以下に示す一般式で表される構造のうち2つ以上を組み合わせた構造が挙げられる。なお、以下に示す式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。また、Arは芳香族炭化水素環又は複素環を表す。
【0149】
【化41】

【0150】
また、本発明の化合物は、交互、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光又はりん光の量子収率の高い高分子発光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロック又はグラフト共重合体が好ましい。さらに、本発明の化合物には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるものやデンドリマーも含まれる。
【0151】
また、本発明の化合物は色度の観点から、非共役な主鎖である場合、より青色の色度が高く好ましい。
【0152】
さらに、本発明の化合物においては、有機電界発光素子に用いた時に発光効率や寿命等の素子特性の観点から、前記一般式(1)で表される構造を含む構造単位を全構造単位に対して0.1モル%以上50モル%以下含むことが好ましく、1モル%以上20モル%以下含むことがより好ましい。
【0153】
また、電荷の輸送及び注入性の観点からは、前記一般式(1)で表される構造を含む構造単位を全構造単位に対して10モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、30モル%以上70モル%以下含むことがより好ましい。
【0154】
また、本発明の化合物においては、有機電界発光素子にした時の電荷の輸送性や寿命等の素子特性の観点から、前記一般式(5)で表される繰返し単位を全構造単位に対して1モル%以上99モル%以下含むことが好ましく、50モル%以上97モル%以下含むことがより好ましい。
【0155】
さらに、本発明の化合物が前記一般式(6−1)で表される繰返し単位、前記一般式(6−2)で表される繰返し単位又は前記一般式(6−3)で表される繰返し単位の少なくとも1つを含む場合には、有機電界発光素子にした時の電荷の輸送性や発光色の調整などの素子特性の観点から、このような繰返し単位を全構造単位に対して0.01モル%以上50モル%以下含むことが好ましく、0.1モル%以上30モル%以下含むことがより好ましい。
【0156】
また、本発明の化合物は、有機電界発光素子に用いた時に発光効率や寿命等の素子特性や製膜性の観点から、ポリスチレン換算の数平均分子量が2000以上であることが好ましく、2×10〜10であることがより好ましく、1×10〜10であることが特に好ましい。なお、本明細書においては、場合によって、ポリスチレン換算の数平均分子量が2000以上の化合物のことを高分子化合物(以下、本発明の化合物のうちポリスチレン換算の数平均分子量が2000以上のものを「本発明の高分子化合物」ということがある)といい、他方、単一の組成からなるものを低分子化合物(通常、数平均分子量は2000未満)という。また、本発明の化合物はデンドリマーやオリゴマー等の、低分子化合物と高分子化合物との中間的な構造であるものであってもよい。本発明の化合物が低分子化合物である場合には、合成の容易さの観点から、本発明の化合物が下記一般式(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0157】
【化42】

【0158】
前記一般式(4−2)において、R、R、R、R、R及びRとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、B環としてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。Rc及びRdはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。q及びrは0〜4の整数を表す。qが2以上の場合、複数あるRcは互いに同一であっても異なっていてもよい。化合物の合成のしやすさの観点からq及びrが0の場合が好ましい。これらのB環の中でも、耐熱性、蛍光強度、素子特性等の観点から、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0159】
前記一般式(4−2)で表される化合物のうち、合成のしやすさの観点から下記一般式(4−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0160】
【化43】

【0161】
前記一般式(4−3)において、R、R、R、R、R及びRとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。Re及びRfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。
【0162】
次に、本発明の化合物の製造方法について説明する。
【0163】
本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(7)で表される化合物を原料として重合する工程を含むことを特徴とする方法である。すなわち、前記一般式(3)で表される化合物は下記一般式(7)で表される化合物を原料として重合することにより製造することができる。
【0164】
【化44】

【0165】
一般式(7)において、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。また、A環、B環、C環、R、R、R、R、R及びRとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0166】
また、本発明の化合物(特に高分子化合物)が、前記一般式(3)で表される繰返し単位以外の繰返し単位を有する場合には、前記一般式(3)で表される繰返し単位以外の繰返し単位となる単量体を共存させればよい。
【0167】
本発明の高分子化合物は、重合に関与しうる置換基(重合活性基)を有する単量体を原料として使用して重合することにより製造することができる。ここで使われる重合活性基としては、重合方法により異なるが、例えば、ホルミル基、ホスホニウム基、臭素、よう素、塩素等のハロゲン原子、ビニル基、ハロメチル基、アセトニトリル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。分子量制御、共重合比制御等の観点から、重合活性基の数は、2の場合が好ましい。
【0168】
本発明の高分子化合物の製造方法としては、主鎖にビニレン基を有する場合には、3重項発光錯体から誘導された重合活性基を有する単量体と、必要に応じてその他の単量体を用いて、例えば特開平5−202355号公報に記載の方法により製造することができる。すなわち、〔1〕アルデヒド基を有する化合物とホスホニウム塩基を有する化合物とのWittig反応による重合、〔2〕アルデヒド基とホスホニウム塩基とを有する化合物のWittig反応による重合、〔3〕ビニル基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とのHeck反応による重合、〔4〕ビニル基とハロゲン原子とを有する化合物のHeck反応による重合、〔5〕アルデヒド基を有する化合物とアルキルホスホネート基を有する化合物とのHorner−Wadsworth−Emmons法による重合、〔6〕アルデヒド基とアルキルホスホネート基とを有する化合物のHorner−Wadsworth−Emmons法による重合、〔7〕ハロゲン化メチル基を2つ以上有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、〔8〕スルホニウム塩基を2つ以上有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、〔9〕アルデヒド基を有する化合物とアセトニトリル基を有する化合物とのKnoevenagel反応による重合、〔10〕アルデヒド基とアセトニトリル基とを有する化合物のKnoevenagel反応による重合などの方法、〔11〕アルデヒド基を2つ以上有する化合物のMcMurry反応による重合等の方法が例示される。上記〔1〕〜〔11〕の重合方法について以下に反応式で示す。
【0169】
【化45】

【0170】
【化46】

【0171】
【化47】

【0172】
【化48】

【0173】
【化49】

【0174】
【化50】

【0175】
【化51】

【0176】
【化52】

【0177】
【化53】

【0178】
【化54】

【0179】
【化55】

【0180】
また、本発明の高分子化合物の製造方法としては、主鎖にビニレン基を有しない場合には、重合活性基を有する単量体と必要に応じてその他の単量体を用いて重合することにより製造することができる。例えば、〔12〕Suzukiカップリング反応により重合する方法、〔13〕Grignard反応により重合する方法、〔14〕Stilleカップリング反応により重合する方法、〔15〕Ni(0)触媒により重合する方法、〔16〕FeCl3等の酸化剤により重合する方法/電気化学的に酸化重合する方法、或いは〔17〕適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法が例示される。上記〔12〕〜〔17〕の重合方法について以下に反応式で示す。
【0181】
【化56】

【0182】
【化57】

【0183】
【化58】

【0184】
【化59】

【0185】
【化60】

【0186】
【化61】

【0187】
これらの重合方法のうち、Wittig反応による重合、Heck反応による重合、Horner−Wadsworth−Emmons法による重合、Knoevenagel反応による重合、及びSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Stilleカップリングを用いる方法及びNi(0)触媒により重合する方法が、構造制御がしやすいので好ましい。さらに、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が原料の入手しやすさと重合反応操作の簡便さから好ましい。
【0188】
本発明の高分子化合物の製造方法においては、単量体を、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。このような反応方法としては、例えば、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第27巻,345−390頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1982年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、ジャーナル オブ プラクティカル ケミストリー(J.Prakt.Chem.),第336巻,247頁(1994年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Makromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)に記載の公知の方法を用いることができる。
【0189】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、用いる溶媒は十分に脱酸素処理を施し、不活性雰囲気化で反応を進行させることが好ましい。また、同様に脱水処理を行うことが好ましい。(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。)
反応させるために適宜アルカリや適当な触媒を添加する。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。ここで、アルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリ又は触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリ又は触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリ又は触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0190】
本発明の高分子化合物を有機電界発光素子の発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、重合前の単量体を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0191】
本発明の高分子化合物の製造方法において、それぞれの単量体は、一括混合して反応させてもよいし、必要に応じて分割して混合してもよい。
【0192】
本発明の高分子化合物の製造方法において、反応条件について説明すると、Wittig反応、Horner反応、Knoevengel反応等の場合は、単量体の官能基に対して当量以上、好ましくは1〜3当量のアルカリを用いて反応させる。アルカリとしては、特に限定されないが、例えば、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウムエチラート、リチウムメチラート等の金属アルコラート;水素化ナトリウム等のハイドライド試薬;ナトリウムアミド等のアミド類を用いることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン等が用いられる。反応の温度は、通常は室温から150℃程度で反応を進行させることができる。反応時間は、例えば、5分間〜40時間であるが、十分に重合が進行する時間であればよく、また反応が終了した後に長時間放置する必要はないので、好ましくは10分間〜24時間である。反応の際の濃度は、希薄すぎると反応の効率が悪く、濃すぎると反応の制御が難しくなるので、約0.01wt%〜溶解する最大濃度の範囲で適宜選択すればよく、通常は、0.1wt%〜20wt%の範囲である。Heck反応の場合は、パラジウム触媒を用い、トリエチルアミン等の塩基の存在下で、単量体を反応させる。N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドンなどの比較的沸点の高い溶媒を用い、反応温度は、80〜160℃程度、反応時間は、1時間から100時間程度である。
【0193】
Suzukiカップリング反応の場合は、触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウム等の無機塩を単量体に対して当量以上、好ましくは1〜10当量加えて反応させる。無機塩を水溶液として、2相系で反応させてもよい。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。溶媒にもよるが50〜160℃程度の温度が好適に用いられる。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。また、−B(OH)及びホウ酸エステルからなる群から選択される基を2つ有するモノマーと、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基からなる群から選択される基を2つ有するモノマーとを重合する場合、重合が停止した後、モノマーを添加することにより分子量を上げることができ、分子量の制御が容易である。分子量は以下の式から予測することができ、この式から目的の分子量に調製するために加えるモノマー量を求めることができる。
Mn=Fw*Pn
Mn:数平均分子量
Fw:繰返し単位の平均分子量
Pn:平均重合度
Pn=1/(1−p+α)
p:(反応した手の数)/(反応前に存在した手の総数)
α:実験に基づく補正値。
【0194】
Grignard反応の場合は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒中でハロゲン化物と金属Mgとを反応させてGrignard試薬溶液とし、これと別に用意した単量体溶液とを混合し、ニッケル触媒又はパラジウム触媒を過剰反応に注意しながら添加した後に昇温して還流させながら反応させる方法が例示される。Grignard試薬は単量体に対して当量以上、好ましくは1〜1.5当量、より好ましくは1〜1.2当量用いる。これら以外の方法で重合する場合も、公知の方法に従って反応させることができる。
【0195】
ニッケル触媒の存在下反応させる例としては例えば上述のニッケル(0)触媒により重合する方法が挙げられる。ニッケル触媒としては、例えば、エチレンビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル錯体、ビス(シクロオクタジエニル)ニッケル錯体が挙げられる。
【0196】
パラジウム触媒の存在下反応させる例としては、上記Suzukiカップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]錯体、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム錯体、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体等が挙げられる。
【0197】
以上説明したような一般式(7)で表される化合物は、本発明の化合物(特に高分子化合物)を重合するための原料として有用である。
【0198】
本発明は、有機トランジスタや有機電界発光素子などの光電材料やそれらの光電材料の中間体として有用な下記式(8)〜(10)で表される化合物及びその合成法を提供するものである。
【0199】
このような一般式(7)で表される化合物の中でも、合成の容易さの観点から、下記一般式(8)で表される化合物が好ましい。
【0200】
【化62】

【0201】
一般式(8)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R、R、R、R、R、R、X及びXとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。Ra及びRbにおけるアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基及びヘテロアリールオキシ基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。また、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0202】
更に好ましくは下記一般式(8−1)で表される化合物である。
【0203】
【化63】

【0204】
一般式(8−1)において、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R、R、R、R、Ra、Rb、X、X、o及びpとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0205】
中でも、(i)パラジウム触媒と塩基の存在下、ホウ酸残基又はホウ酸エステル残基とハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基とを用いたSuzukiカップリングを用いる方法;(ii)ニッケル(0)触媒存在下、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基をカップリングさせるYamamoto重合を用いる方法;(iii)パラジウム触媒の存在下、スタニル基とハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基とを用いたStilleカップリングを用いる方法;又は(iv)ニッケル触媒の存在下、ハロゲン化マグネシウムとハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基とをカップリングさせるGrignardカップリング法は反応収率が高いため、高い分子量の高分子化合物を得ることが容易であり、また、共重合をおこなった場合、モノマー仕込み比どおりの共重合体を得ることが可能等、反応の制御が容易であることから好ましい。これらの方法の中でも試薬の安全性の観点から、Suzuki重合法及びYamamoto重合法がより好ましい。また、反応性の観点から、重合に関与しうる置換基(重合活性基)であるハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基の中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
【0206】
前記一般式(8)で表される化合物は、下記一般式(9)で表される化合物から、X及びXを官能基変換することにより、合成することができる。
【0207】
【化64】

【0208】
一般式(9)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R、R、R、R、R、R、Ra及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0209】
更に好ましくは下記一般式(9−1)で表される化合物である。
【0210】
【化65】

【0211】
一般式(9−1)において、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R、R、R、R、Ra、Rb、X、X、o及びpとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0212】
前記一般式(8)におけるX及び/又はXがホウ酸エステル残基であるものは、X及び/又はXをGrignard試薬又はリチウムに置き換えた後にホウ酸エステルを反応させることにより合成することができる。このようなホウ酸エステルとしては、トリメチルホウ酸、トリイソプロピルホウ酸、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン等が挙げられる。また、J. Org. Chem., 60(23), 7508(1995) に記載のようにパラジウム触媒と塩基の存在下、ジボレートと反応させることにより合成することもできる。このジボレートとしては、ビス(ピナコレート)ジボラン、ビス(カテコレート)ジボラン、ビス(ネオペンチルグリコレート)ジボラン、ビス(トリメチレングリコレート)ジボラン等が挙げられる。
【0213】
また、前記一般式(8)におけるX及び/又はXが−B(OH)2であるものは、上記ホウ酸エステルを酸又は塩基の存在下に加水分解する方法で合成することができる。
【0214】
さらに、前記一般式(8)におけるX及び/又はXがハロゲン化マグネシウムであるものは、マグネシウムの存在下で合成することができる。
【0215】
また、前記一般式(8)におけるX及び/又はXがハロゲン化マグネシウムであるものは、X及び/又はXをGrignard試薬又はリチウムに置き換えた後にトリアルキル塩化スズと反応させることにより合成することができる。このトリアルキル塩化スズとしては、トリメチル塩化スズ、トリ−n−ブチル塩化スズ等が挙げられる。
【0216】
さらに、前記一般式(8)におけるX及び/又はXがアルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基であるものは、X及び/又はXを水酸基に変換した後に、塩基の存在下、対応するスルホン酸無水物又は塩化スルホニルを反応させることで合成することができる。このスルホン酸無水物としては、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ベンゼンスルホン酸無水物等が挙げられる。また、この塩化スルホニルとしては、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル、塩化ベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0217】
また、前記一般式(9)におけるX及び/又はXを水酸基に変換する方法としては、上記のようにして得られるX及び/又はXが−B(OH)2である化合物を過酸化物で酸化することにより合成することができる。この過酸化物としては、過酸化水素、m−クロロベンゼン過安息香酸、t−ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。
【0218】
前記一般式(9)で表される化合物は、ハロゲン化剤の存在下で、下記一般式(10)で表される化合物から、ハロゲン化反応により、合成することができる。適当な反応条件を選択することにより非常に選択性よく上記式(9)で表される化合物を合成することができる。
【0219】
【化66】

【0220】
一般式(10)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R、R、R、R、R、R、Ra及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0221】
更に好ましくは下記一般式(10−1)で表される化合物である。
【0222】
【化67】

【0223】
一般式(10−1)において、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R、R、R、R、Ra、Rb、o及びpとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0224】
ここでハロゲン化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−クロロフタル酸イミド、N−クロロジエチルアミン、N−クロロジブチルアミン、N−クロロシクロへキシルアミン、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタル酸イミド、N−ブロモジトリフルオロメチルアミン、N−ヨウドスクシンイミド、N−ヨウドフタル酸イミド等のN−ハロゲノ化合物;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン元素;ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミドが挙げられる。これらの中でも、N−ハロゲノ化合物が好ましい。
【0225】
反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン等のアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0226】
反応の温度は、−100℃〜溶媒の沸点程度であり、好ましくは−20℃〜50℃である。
【0227】
前記一般式(10)で表される化合物は、塩基の存在下で、下記一般式(11)で表される化合物から、窒素原子上の置換反応により、製造することができる。例えば、R及び/又はRがアルキル基の場合、塩基の存在下、ハロゲン化アルキルへの求核置換反応で製造することができる。また、R及び/又はRが芳香族基(すなわち、アリール基、1価の芳香族複素環基であり、以下、同じである。)の場合、銅触媒と塩基の存在下、芳香族ヨウ化物と反応させるUllmannカップリング条件で製造することができる。また、Angewandte Chemie, International Edition in English, (1995), 34(12), 1348 記載のようにパラジウム触媒と塩基とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることによっても製造することができる。
【0228】
【化68】

【0229】
一般式(11)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。また、R10及びR11のうちの少なくとも一方は水素原子である。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。さらに、R、R、R、R、Ra及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。また、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0230】
更に好ましくは下記一般式(11−1)で表される化合物である。
【0231】
【化69】

【0232】
一般式(11−1)において、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子または1価の基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R、R、R10、R11、Ra、Rb、o及びpとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0233】
前記一般式(10)又は(11)で表される化合物は、酸の存在下で、下記一般式(12)で表される化合物から環化反応により製造することができる。
【0234】
【化70】

【0235】
一般式(12)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R、R、R、R、Ra及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0236】
このような酸としては、プロトン酸でもよく、ルイス酸でもよい。プロトン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。これらのプロトン酸の中でも、塩酸、硫酸、硝酸等の強無機酸が好ましい。また、ルイス酸としては、例えば、3臭化ホウ素、3塩化ホウ素、3フッ化ホウ素エーテル錯体等ハロゲン化ホウ素化物;塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化銅、塩化亜鉛、臭化アルミニウム、臭化チタン、臭化マンガン、臭化鉄、臭化コバルト、臭化銅、臭化亜鉛等のハロゲン化金属が挙げられる。これらのルイス酸の中でも、トリフェニルメチルテトラフルオロボレートが好ましい。これらのルイス酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0237】
反応の媒体としては上記の酸を用いてもよいが、それ以外の溶媒を用いても良い。用いる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化化合物が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0238】
反応温度としては、−50℃〜溶媒の沸点程度であり、好ましくは0〜100℃である。
【0239】
なお、前記一般式(10)でR12及びR13のうち少なくとも一方が芳香族基である場合、副反応で収率が悪くなるので、R12及び/又はR13が水素原子の化合物を用い前記一般式(11)で表される化合物を製造し、その後に窒素原子上を芳香族基に変換する方法が好ましい。
【0240】
前記式(12)で表される化合物のうち、合成のしやすさの観点から下記一般式(12−1)で表される場合が好ましい。
【0241】
【化71】

【0242】
一般式(12−1)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R21、R22、R23及びR24のうちの少なくとも1つはアリール基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R12、R13、Ra、Rb、o及びpとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。R21、R22、R23及びR24におけるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基としては、R、R、R及びRに例示の基と同様のものが挙げられる。
【0243】
前記一般式(12−1)で表される化合物は、一般式:R14−M
(式中、R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムを表す。)
で表される化合物の下記一般式(13)で表される化合物への求核反応により製造することができる。
【0244】
【化72】

【0245】
一般式(13)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R21及びR23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。R21、R23及びR14のうちの少なくとも1つはアリール基を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R12、R13、Ra及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、R14で表されるアルキル基としては、R、R、R及びRで表される基として例示の基と同様のものが挙げられる。R14で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。また、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0246】
用いる一般式:R14−Mで表される化合物の当量は、前記一般式(13)におけるR12及びR13がいずれも水素原子の場合、4当量以上であることが好ましい。また、R12、R13のうちのどちらか一方が水素原子の場合、3当量以上であることが好ましい。さらに、R12及びR13がいずれも水素原子でない場合、2当量以上であることが好ましい。
【0247】
また、前記一般式(12−1)で表される化合物は、一般式:R15−M
(式中、R15はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムを表す。)
で表される化合物の下記一般式(14)で表される化合物への求核反応により製造することができる。
【0248】
【化73】

【0249】
一般式(14)において、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表し、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。また、B環、R12、R13とRa及びRbとしてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。さらに、R16及びR17で表されるアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基に例示の基と同様のものが挙げられる。また、化合物の合成の容易さの観点から、o及びpが0の場合が好ましい。
【0250】
用いる一般式:R15−Mで表される化合物の当量は、R12及びR13がいずれも水素原子の場合、6当量以上であることが好ましい。また、R12、R13のうちのどちらか一方が水素原子の場合、5当量以上であることが好ましい。R12及びR13がいずれも水素原子でない場合、4当量以上であることが好ましい。
【0251】
前記一般式(13)で表される化合物から前記一般式(12−1)で表される化合物を製造する反応、並びに前記一般式(14)で表される化合物から前記一般式(12−1)で表される化合物を製造する反応は、いずれもアルゴンや窒素等の不活性ガスの雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0252】
反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0253】
反応の温度としては、−100℃から溶媒の沸点程度であり、−80℃〜室温が好ましい。
【0254】
次に、前記一般式(14)で表される化合物の中でも、化合物の合成の容易さの観点から好適に用いることができる下記一般式(14−1)で表される化合物の製造方法について説明する。
【0255】
【化74】

【0256】
一般式(14−1)において、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。前記一般式(14−1)で表される化合物は、パラジウム、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む触媒の存在下で、下記一般式(15)で表される化合物、下記一般式(16)で表される化合物及び下記一般式(17)で表される化合物から縮合反応により製造することができる。
【0257】
【化75】

【0258】
一般式(15)〜(17)において、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、X及びXはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。また、R16及びR17としてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0259】
反応の条件としては、銅触媒と塩基の存在下、芳香族ヨウ化物と反応させるUllmannカップリング条件で製造することができる。また、Angewandte Chemie, International Edition in English, (1995), 34(12), 1348 記載のようにパラジウム触媒と塩基とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることによっても製造することができる。
【0260】
合成の容易さの観点から、前記一般式(15)で表される化合物及び前記一般式(16)で表される化合物は同一である場合が好ましい。
【0261】
また、前記一般式(14−1)で表される化合物は、パラジウム、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む触媒の存在下で、下記一般式(18)で表される化合物、下記一般式(19)で表される化合物及び下記一般式(20)で表される化合物から縮合反応により製造することもできる。
【0262】
【化76】

【0263】
一般式(18)〜(20)において、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、X及びXはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。また、R16、及びR17としてはそれぞれ前述の通りのものが挙げられる。
【0264】
反応の条件としては、銅触媒と塩基の存在下、芳香族ヨウ化物と反応させるUllmannカップリング条件で製造することができる。また、Angewandte Chemie, International Edition in English, (1995), 34(12), 1348 記載のようにパラジウム触媒と塩基とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることによっても製造することができる。
【0265】
合成の容易さの観点から、前記一般式(18)で表される化合物及び前記一般式(19)で表される化合物は同一である場合が好ましい。
【0266】
次に、本発明の化合物を含む組成物について説明する。正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選択される少なくとも1種類の材料と本発明の化合物を含有する組成物は、発光材料や電荷輸送材料として用いることができる。
【0267】
本発明の組成物において、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選択される少なくとも1種類の材料と本発明の化合物の含有比率は、用途に応じて決めればよい。また、本発明の化合物を2種類以上混合し、組成物として用いることもできる。
【0268】
また、本発明の組成物を用いて有機電界発光素子の発光層を形成することができる。このような発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0269】
このような発光層の形成方法としては、溶液からの成膜による方法が例示される。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法を用いることができる。パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。
【0270】
印刷法等で用いるインク組成物(溶液)としては、少なくとも1種類の本発明の化合物が含有されていればよく、また本発明の化合物以外に正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0271】
このようなインク組成物中における本発明の化合物の割合は、溶媒を除いた組成物の全重量に対して通常は20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜100wt%である。また、このようなインク組成物中に溶媒が含まれる場合の溶媒の割合は、組成物の全重量に対して1wt%〜99.9wt%であり、好ましくは60wt%〜99.5wt%であり、さらに好ましく80wt%〜99.0wt%である。なお、インク組成物の粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法等インク組成物中が吐出装置を経由するもの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0272】
本発明のインク組成物(溶液)は、本発明の化合物の他に、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、粘度を高めるための高分子量の高分子化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤等を適宜組み合わせて使用すればよい。
【0273】
このように粘度を高めるための高分子量の高分子化合物としては、本発明の化合物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよい。例えば、高分子量のポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、或いは本発明の化合物のうち分子量が大きいものなどを用いることができる。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、50万以上のものが好ましく、100万以上のものがより好ましい。
【0274】
また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。すなわち、溶液中の固形分に対する貧溶媒を少量添加することで、粘度を高めることができる。この目的で貧溶媒を添加する場合、溶液中の固形分が析出しない範囲で、溶媒の種類と添加量を選択すればよい。保存時の安定性も考慮すると、貧溶媒の量は、溶液全体に対して50wt%以下であることが好ましく、30wt%以下であることがより好ましい。
【0275】
また、本発明のインク組成物(溶液)は、保存安定性を改善するために、本発明の化合物の他に、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、本発明の化合物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0276】
さらに、このような溶液をインク組成物として用いる場合、用いる溶媒としては特に制限はないが、このインク組成物を構成する溶媒以外の材料を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの溶媒の中でも、高分子化合物等の溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンがより好ましい。さらに、溶液中の溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることが好ましく、2〜3種類であることがより好ましく、2種類であることが特に好ましい。
【0277】
また、溶液中に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であることが好ましく、200℃以上の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点から、2種類の溶媒ともに、60℃において1wt%以上の本発明の化合物が溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において1wt%以上の本発明の化合物が溶解することが好ましい。
【0278】
さらに、溶液中に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、溶液中の全溶媒の重量の40〜90wt%であることが好ましく、50〜90wt%であることがより好ましく、65〜85wt%であることが特に好ましい。
【0279】
このような溶液中に含まれる本発明の化合物は、1種類でも2種類以上でもよく、素子特性等を損なわない範囲で本発明の化合物以外の化合物を含んでいてもよい。
【0280】
本発明のインク組成物(溶液)には、水、金属及びその塩を1〜1000ppm(重量基準)の範囲で含んでいてもよい。金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、コバルト、白金、イリジウムが挙げられる。また、本発明のインク組成物(溶液)は、珪素、リン、フッ素、塩素、臭素を1〜1000ppm(重量基準)の範囲で含んでいてもよい。
【0281】
本発明のインク組成物(溶液)を用いて、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法により、本発明の薄膜を作製することができる。これらの塗布方法の中でも、本発明のインク組成物(溶液)をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法により成膜する用途に用いることが好ましく、インクジェット法で成膜する用途に用いることがより好ましい。
【0282】
本発明の化合物を含む薄膜は、上記のように本発明のインク組成物(溶液)を用いて作製できる。このような薄膜としては、例えば、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜が挙げられる。
【0283】
本発明の導電性薄膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。また、このような薄膜に、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。さらに、表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□であることが特に好ましい。
【0284】
本発明の有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のうちのいずれか大きいほうが、10−5cm/V/秒以上であることが好ましく、10−3cm/V/秒以上であることがより好ましく、10−1cm/V/秒以上であることが特に好ましい。
【0285】
また、SiO等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に本発明の有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0286】
また、本発明の有機電界発光素子としては、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設けた有機電界発光素子、陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた有機電界発光素子、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設け、且つ陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた有機電界発光素子、並びにこれらの素子に更に陽極と発光層との間にインターレイヤー層を設けた有機電解発光素子等が挙げられる。
【0287】
このような有機電界発光素子の構造としては、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同じである。)
また、これら構造において、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設ける構造も例示される。すなわち、
a’)陽極/インターレイヤー層/発光層/陰極
b’)陽極/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/陰極
c’)陽極/インターレイヤー層/発光層/電子輸送層/陰極
d’)陽極/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/電子輸送層/陰極。
【0288】
インターレイヤー層は正孔注入、正孔輸送及び電子ブロックのいずれか1つ以上の機能を有することもある。
【0289】
本発明の化合物は、有機電界発光素子の全ての或いは一部の層に、単独若しくは混合物として用いることができる。本発明の化合物を、一部の層に用いる場合、及び混合物として用いる場合には、下記に示すような、一般的な材料を用いることができる。
【0290】
本発明の有機電界発光素子の発光層としては、高分子材料として、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン又は本発明の高分子化合物等の共役系高分子化合物を用いてなるものが挙げられる。
【0291】
また、これら高分子材料を用いてなる発光層は、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系色素化合物や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子色素化合物を含有してもよい。また、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光を発光する金属錯体を含有してもよい。
【0292】
また、本発明の発光素子が有する発光層は、非共役系高分子化合物[例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂や、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体を含む重合体]と前記有機色素や金属錯体などの発光性有機化合物との混合組成物から構成されてもよい。
【0293】
このような高分子化合物の具体例としては、WO97/09394号パンフレット、WO98/27136号パンフレット、WO99/54385号パンフレット、WO00/22027号パンフレット、WO01/19834号パンフレット、GB2340304A号公報、GB2348316号公報、US573636号公報、US5741921号公報、US5777070号公報、EP0707020号公報、特開平9−111233号公報、特開平10−324870号公報、特開平2000−80167号公報、特開2001−123156号公報、特開2004−168999号公報、特開2007−162009号公報、有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)、等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0294】
また、低分子化合物の具体例としては、例えば、特開昭57−51781号公報、有機薄膜仕事関数データ集[第2版](シーエムシー出版、2006年発行)、有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)等に記載されている化合物が例示される。
【0295】
前記材料は単成分であっても或いは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記発光層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0296】
発光層の成膜方法に制限はなく、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。また、溶液からの成膜方法に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0297】
発光層に続いて、電子輸送層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0298】
発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、発光層の膜厚としては、例えば5nmから1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは30nm〜200nmである。
【0299】
本発明の有機電界発光素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送性材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0300】
また、このような正孔輸送性材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているものが挙げられる。
【0301】
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子正孔輸送性材料が好ましく、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体がより好ましい。
【0302】
また、低分子化合物の正孔輸送性材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体が例示される。なお、低分子化合物の正孔輸送性材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0303】
このように低分子化合物を混合するための高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。このような高分子バインダーとしては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが挙げられる。
【0304】
ポリビニルカルバゾール及びその誘導体は、例えば、ビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0305】
また、ポリシラン及びその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0306】
さらに、ポリシロキサン及びその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖又は主鎖に前記低分子正孔輸送性材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0307】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送性材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送性材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0308】
このように溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送性材料を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0309】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法を用いることができる。
【0310】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。このような正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0311】
本発明の有機電界発光素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0312】
また、このような電子輸送性材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているものが挙げられる。
【0313】
これらの中でも、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがより好ましい。
【0314】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送性材料では、粉末からの真空蒸着法、又は溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、上記の高分子バインダーを併用してもよい。
【0315】
このように溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解又は均一に分散できるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0316】
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法を用いることができる。
【0317】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。このような電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0318】
インターレイヤー層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等、芳香族アミンを含むポリマーが例示される。
【0319】
このようなインターレイヤー層の成膜方法に制限はないが、例えば高分子材料を用いる場合においては溶液からの成膜による方法が例示される。
【0320】
このように溶液からの成膜方法に用いる溶媒としては、正孔輸送性材料を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0321】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布方法を用いることができる。
【0322】
インターレイヤー層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。インターレイヤー層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0323】
このようなインターレイヤー層を発光層に隣接して設ける場合、特に両方の層を前記塗布方法により形成する場合には、2つの層の材料が混合して素子の特性等に対して好ましくない影響を与える場合がある。インターレイヤー層を前記塗布方法で形成した後、発光層を前記塗布方法で形成する場合、2つの層の材料の混合を少なくする方法としては、(i)インターレイヤー層を前記塗布方法で形成した後、このインターレイヤー層を加熱、光照射等の処理で有機溶媒に対して不溶化した後、発光層を形成する方法や、(ii)発光層を塗布する時に用いる溶媒をインターレイヤー層の溶解性が低い溶媒を用いる方法等が挙げられる。インターレイヤー層を加熱により不溶化する場合、加熱の温度は通常150℃〜300℃程度であり、時間は通常1分〜1時間程度である。このような場合、加熱により溶媒不溶化しなかった成分を除くため、加熱した後、発光層を形成する前に、このインターレイヤー層を発光層形成に用いる溶媒でリンスすることで取り除くことが好ましい。加熱による溶媒不溶化が十分に行なわれた場合は、溶媒によるリンスを省略してもよい。加熱による溶媒不溶化が十分に行なわれるためには、インターレイヤー層に用いる高分子化合物として分子内に少なくとも一つの重合可能な基を含むものを用いることが好ましい。さらには重合可能な基の数が、分子内の繰返し単位の数に対して5%以上であることがより好ましい。重合可能な基としては、二重結合を有する基、環状エーテル基等が挙げられる。二重結合を有する基としては、ビニル基、1,3−ブテジエニル基、アクリレート基、メタクリレート基等が挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。
【0324】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0325】
さらに、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。さらに、積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0326】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた有機電界発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を設けた有機電界発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた有機電界発光素子が挙げられる。
【0327】
このような有機電界発光素子の構造としては、例えば、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、これらの構造において、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設ける構造も例示される。
【0328】
電荷注入層としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送性材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が例示される。
【0329】
このような電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、この導電性高分子の電気伝導度は、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下であることがより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが特に好ましい。また、通常はこの導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10S/cm以下とするために、この導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0330】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が例示される。
【0331】
このような電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、好ましくは2nm〜50nmである。
【0332】
電荷注入層に用いる材料としては、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボンが挙げられる。
【0333】
また、本発明の有機電界発光素子においては、電荷注入を容易にするために、絶縁層を更に設けてもよい。このような絶縁層の膜厚は、通常、2nm以下である。このような絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。このような絶縁層を設けた有機電界発光素子としては、例えば、陰極に隣接して絶縁層を設けた有機電界発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた有機電界発光素子が挙げられる。
【0334】
このような有機電界発光素子の構造としては、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/絶縁層/陰極
s)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
t)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
w)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
y)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
z)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
ab)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
また、これら構造において、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設ける構造も例示される。
【0335】
本発明の有機電界発光素子を形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。このような基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0336】
また、通常本発明の有機電界発光素子が有する陽極及び陰極のうちの少なくとも一方が透明又は半透明である。陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
【0337】
このような陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。このような陽極の材料として、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、このような陽極として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0338】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0339】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0340】
本発明の有機電界発光素子で用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。このような陰極の材料として、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、或いはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0341】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0342】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、本発明の有機電界発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。また、本発明の有機電界発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0343】
このような保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、このカバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。また、この空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0344】
本発明の有機電界発光素子は面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置等の表示装置、液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。
【0345】
本発明の有機電界発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0346】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、或いは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0347】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、数平均分子量、重量平均分子量、及び蛍光スペクトルはそれぞれ以下の方法により測定した。
【0348】
(i)数平均分子量及び重量平均分子量
数平均分子量及び重量平均分子量については、GPC(島津製作所社製:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。測定する重合体は、約0.5wt%の濃度になるようテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/minの流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー社製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)を用いた。
【0349】
(ii)蛍光スペクトル
蛍光スペクトルの測定は以下の方法で行った。すなわち、測定する高分子化合物の0.8重量%トルエン溶液を石英上にスピンコートしてこの高分子化合物の薄膜を作製した。この薄膜を350nmの波長で励起し、蛍光分光光度計(堀場製作所社製、商品名「Fluorolog」)を用いて、この高分子化合物の蛍光スペクトルを測定した。薄膜での相対的な蛍光強度を得るために、水のラマン線の強度を標準に、波数プロットした蛍光スペクトルをスペクトル測定範囲で積分して、分光光度計(Varian社製、商品名「Cary5E」)を用いて測定した「励起波長での吸光度」で割り付けた値を求めた。
【0350】
(実施例1〜5)
下記構造式(A)で表される化合物Aを以下に示すようにして合成した。
【0351】
【化77】

【0352】
<実施例1:化合物A−1の合成>
先ず、下記構造式(A−1)で表される化合物を合成した。
【0353】
【化78】

【0354】
すなわち、300mlの4口フラスコに1,4−ジブロモベンゼン5.00g、アントラニル酸メチル7.05gを取り、脱水トルエン100mlを加え1時間窒素バブリングした。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.19g、トリ(t−ブチル)ホスフィンテトラフルオロボレート0.24g、炭酸セシウム10.36gを加え、70℃で5時間加熱した後に20時間還流した。セライト20gを敷いたグラスフィルターで熱時濾過し、酢酸エチルで洗浄した。次に、溶媒を留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。そして、溶媒を留去し、5.49gの粗生成物を得た。また、水相を100mlのクロロホルムで3回抽出し、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。そして、溶媒を留去し、更に4.00gの粗生成物を得た。得られた粗生成物を合わせ、トルエン30mlで再結晶し、6.28gの化合物A−1を得た。
【0355】
<分析データ>
*LC-MS
APPI-MS, positive 377 ([M+H]+、exact mass=376)
1H-NMR(300MHz,CDCl3)
δ3.91(6H, s), 6.72(2H, t), 7.17-7.26(6H,m), 7.31(2H, t),7.96(2H, d), 9.42(2H, s)
13C-NMR(300MHz,CDCl3)
δ52.1,111.8, 114.1, 117.1, 124.4, 131.9, 134.5, 136.9, 148.7, 169.3。
【0356】
<実施例2:化合物A−2の合成>
次に、下記構造式(A−2)で表される化合物を合成した。
【0357】
【化79】

【0358】
すなわち、300mlの4口フラスコに1−ブロモ−4−n−ヘキシルベンゼン8.98gを取り、窒素置換した。その後、90mlの脱水THFに溶解し、−78℃に冷却した後、10分でn−ブチルリチウム(1.6Mへキサン溶液)を滴下した。次に、2時間保温した後、2.00gの化合物A−1を20mlの脱水THFに溶解させ、滴下した。その後、徐々に室温まで昇温し、5時間攪拌した後に、0℃にて100mlの水を滴下した。次いで、分液し、水相を100mlの酢酸エチルで抽出した。また、油相を水、飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去したところ、8.86gの粗生成物を得た(赤橙色固体)。得られた粗生成物をヘキサン50mlから再結晶し、4.14gの化合物A−2を得た。
【0359】
<分析データ>
*LC-MS
ESI, positive 999 ([M+K]+、exact mass=960)
1H-NMR(300MHz,CDCl3)
δ0.88(12H,t), 1.30(24H, m), 1.60(8H, m), 2.60(8H, t), 4.74(2H, brs), 5.68 (2H, brs), 6.55-6.63(6H, m), 6.75(2H, m),7.03-7.26(20H, m)
13C-NMR(300MHz,CDCl3)
δ14.4,22.9, 29.3, 31.6, 32.0, 35.8, 82.4, 118.8, 120.2, 122.0, 127.9, 128.4, 130.3,136.1, 137.7, 142.3, 143.3, 144.0。
【0360】
<実施例3:化合物A−3の合成>
次に、下記構造式(A−3)で表される化合物を合成した。
【0361】
【化80】

【0362】
すなわち、300mlのナス型フラスコに化合物A−2を8.00g取り、窒素置換した。その後、80mlの酢酸に溶解させ、0℃に冷却した。2.8mlの濃塩酸を滴下した後、室温に昇温し、5時間攪拌した後、再度0℃に冷却して濾過、水洗した。次に、トルエン250mlに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、溶媒を留去したところ13.75gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン50mlから再結晶し、6.78gの化合物A−3を得た。
【0363】
<分析データ>
*LC-MS
ESI, positive 963 ([M+K]+、exact mass=924)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.90(12H,t), 1.34(24H, m), 1.55-1.62(8H, m), 2.56(8H, t), 6.37(2H, s), 6.63-6.70(6H, m), 6.87(8H, d), 6.98-7.01(10H, m),7.87(2H, s)
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ13.7,22.8, 29.5, 31.8, 32.0, 35.7, 56.2, 113.5, 115.2, 118.2, 126.8, 127.1, 127.3,130.1, 130.4, 134.5, 140.4, 141.8, 144.6。
【0364】
<実施例4:化合物A−4の合成>
次に、下記構造式(A−4)で表される化合物を合成した。
【0365】
【化81】

【0366】
すなわち、300mlの4口フラスコを窒素置換し、化合物A−3を9.90g、及び1−ブロモ−4−n−ブチルベンゼンを4.94g取り、脱水トルエン150mlに溶解させた。20分間窒素バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.05g、トリ(t−ブチル)ホスフィンテトラフルオロボレート0.03g、ナトリウム−t−ブトキシド0.30gを加え、10時間還流した。その後、0℃まで冷却後、水100mlを加え、分液し、水相を100mlのトルエンで2回抽出した。そして、油相を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄し、シリカゲル60gを敷いたグラスフィルターで濾過した。その後、トルエンで洗浄した後、溶媒を留去し、16.52gの粗生成物を得た。得られた粗生成物にヘキサン50mlを加え結晶化し、メタノール50mlを加え、濾過した。得られた個体を50mlのヘキサンから再結晶し、10.09gの化合物A−4を得た。
【0367】
<分析データ>
*LC-MS
ESI, positive 1218 ([M+H]+、exact mass=1217)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.62(12H,t), 0.69(6H, t), 1.00-1.34--17(28H, m), 1.27-1.37(12H, m), 2.26-2.35(12H, m),5.67(2H, s), 5.93(2H, d), 6.38-6.47(8H, d), 6.56-6.61(10H, m), 6.64(8H, d),6.79(6H, d)
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ15.5,15.6, 24.6, 24.7, 31.3, 33.7, 33.9, 35.8, 37.6, 58.3, 116.0, 117.8, 121.2,128.0, 129.1, 130.8, 138.5, 140.9, 142.2, 144.1, 145.0, 146.0。
【0368】
<実施例5:化合物Aの合成>
次いで、化合物Aを合成した。すなわち、300mlのナス型フラスコに化合物A−4を10.09g取り、窒素置換した。その後、100mlのクロロホルムに溶解させ、0℃に冷却した。次に、2.87gのNBSを6mlのDMFに溶解させた溶液を20分で滴下した。その後、冷浴を外し、7時間攪拌後、0℃に冷却して0.29gのNBSを0.5mlのDMFに溶解し、滴下した。さらに、2.5時間攪拌後、水100mlを滴下し、分液し、水相をクロロホルムで抽出した。また、油相を水、飽和食塩水で洗浄した後、シリカゲル50gを敷いたグラスフィルターを通して濾過、トルエン洗浄した。その後、溶媒を留去したところ、12.48gの粗生成物を得た。水相及び油相から得られた粗生成物をヘキサン180ml、200mlそれぞれから再結晶し、9.55gの化合物Aを得た。
【0369】
<分析データ>
*LC-MS
APCI, positive 1346 ([M+H]+、exact mass=1345)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.90(12H,t), 0.97(6H, t), 1.30-1.45(28H, m), 1.57-1.69(12H, m), 2.56-2.61(12H, m),5.95(2H, s), 6.16(2H, brs), 6.70(4H, d), 6.76(8H, d), 7.01(8H, d), 7.02(2H, m),7.05(2H, m), 7.12(4H, d),
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ15.5,15.6, 24.6, 24.7, 31.3, 33.6, 33.9, 35.7, 37.4, 37.6, 117.7, 129.4, 130.3,132.0, 138.5, 142.7, 144.5。
【0370】
(実施例6:高分子化合物1の合成)
窒素雰囲気下、化合物A1.01g及び2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン0.40g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名「Aliquat336」)0.10g、トルエン15mlを混合し、90℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液4.1mlを滴下し、2時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸10mgを加え、さらに4.5時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え80℃で3時間撹拌した。冷却後、水10mlで2回、3重量%酢酸水溶液10mlで2回、水10mlで2回洗浄し、得られた溶液をメタノール120mLに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン25mLに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール120mlに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物1を得た。得られた高分子化合物1の収量は0.89gであった。また、得られた高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.0×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×10であった。
【0371】
(合成例1:高分子化合物2の合成)
N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンを単量体として重合させた高分子化合物2を以下のようにして合成した。なお、N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンは Polymer Preprints 2001, 42(2), 587 に記載の方法に従って合成することができる。
【0372】
すなわち、窒素雰囲気下、N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン2.73g及び2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン2.11g、酢酸パラジウム1.8mg、トリ(o−トリル)ホスフィン11.3mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名「Aliquat336」)0.52g、トルエン15mlを混合し、90℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液10.9mlを滴下し、6時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸49mgを加え、さらに2時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え80℃で2時間撹拌した。冷却後、水50mlで2回、3重量%酢酸水溶液50mlで2回、水50mlで2回洗浄し、得られた溶液をメタノール620mlに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン120mlに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール620mlに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物2を得た。得られた高分子化合物2の収量は3.19gであった。また、高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は、4.2×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.7×10であった。
【0373】
<高分子化合物の蛍光スペクトル及び色度の評価>
実施例6及び合成例1で得られた高分子化合物の蛍光ピーク波長及びCIE色度座標をそれぞれ表1に示す。
【0374】
【表1】

【0375】
表1に記載した結果からも明らかなように、本発明の高分子化合物(実施例6)の方がより短波長でより色度が優れた青色の蛍光ピークを与えることが確認された。
【0376】
(実施例7:高分子化合物3の合成)
窒素雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン2.13g、化合物A4.31g及び3,7−ジブロモ−10−(4−ブチルフェニル)−10H−フェノキサジン(特開2004−35221号公報に記載の方法に従って合成)0.38g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.7mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名「Aliquat336」)0.52g、トルエン40mlを混合し、90℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液20mlを滴下し、7時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸50mgを加え、さらに12時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え85℃で3時間撹拌した。冷却後、水50mlで2回、3重量%酢酸水溶液50mlで2回、水50mlで2回洗浄し、得られた溶液をメタノール600mLに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン120mLに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール600mlに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物3を得た。得られた高分子化合物3の収量は4.76gであった。また、得られた高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は、7.2×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.7×10であった。
【0377】
(合成例2:高分子化合物4の合成)
窒素雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(n−オクチル)フルオレン4.87g、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(n−オクチル)フルオレン2.96g及び2,7−ジブロモ−9,9−ジ(3−メチルブチル)フルオレン1.67g、酢酸パラジウム6mg、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン38mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名「Aliquat336」)0.5g、トルエン40mlを混合し、45℃に加熱した。この反応溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液15mlを滴下した後、還流温度まで昇温し8時間還流させた。その後、ブロモベンゼン1.55gを加え4時間還流し、更にフェニルホウ酸1.21gを加え、さらに4時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え65℃で4時間撹拌した。冷却後、分液し、水200mlで6回洗浄した。トルエン5Lに希釈し、セライト545 200gを敷いたグラスフィルターを通してろ過し、得られた濾液を150mlまで半濃縮した。この溶液をメタノール1.6L中に滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン150mLに溶解させ、メタノール1.6L中に滴下、攪拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物4を得た。得られた高分子化合物4の収量は5.92gであった。また、得られた高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量は、8.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.1×10であった。
【0378】
(合成例3:高分子化合物5の合成)
窒素雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン10.4954g及び3,7−ジブロモ−10−(4−ブチルフェニル)−10H−フェノキサジン(特開2004−35221号公報に従って合成)9.3364gトリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名「Aliquat336」)1.867g、トルエン120gに溶解させ90℃に昇温した。酢酸パラジウム4.4mg、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン42.0mgを6.5gのトルエンに溶解させた溶液を加えた後、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液38.2gを滴下した。4時間還流した後、分子量を測定するとポリスチレン換算の数平均分子量は、3.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.0×105であった。2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン0.1381gを加え、更に4時間還流したところポリスチレン換算の数平均分子量は、5.5×10、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.9×10となった。フェニルホウ酸0.24gを加え、さらに14時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え85℃で3時間撹拌した。冷却後、水100mlで2回、3重量%酢酸水溶液100mlで2回、水100mlで2回洗浄し、得られた溶液をメタノール1.2Lに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン250mLに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール1.2Lに滴下し撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物5を得た。得られた高分子化合物5の収量は12.2gであった。また、得られた高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量は、5.5×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.4×10であった。
【0379】
(実施例8〜10、比較例1及び2:有機電界発光素子1〜5の作製)
<実施例8:有機電界発光素子1の作製>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社製、商品名「AI4083」)を用いてスピンコートにより65nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。
【0380】
次に、発光層として、キシレン溶媒中に1.5重量%の濃度で溶解させた高分子化合物の混合物[高分子化合物1と高分子化合物4とのモル比(高分子化合物1:高分子化合物4)が1:1]をスピンコートにより3000rpmの回転速度で成膜した。膜厚は約80nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で10分間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して有機電界発光素子を作製した。なお、真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0381】
<実施例9、比較例1:有機電界発光素子2及び3の作製>
発光層を成膜するための高分子化合物として表2に記載のものを用いた以外は実施例8と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0382】
<有機電界発光素子の発光色、駆動電圧及び輝度半減寿命の測定>
実施例8及び9、比較例1で得られた有機電界発光素子の発光色(CIE色度座標)、駆動電圧及び輝度半減寿命を測定した。CIE色度座標、駆動電圧、駆動電流は、東京システム開発株式会社製の有機ELテストシステム(ST−Pシリーズ)にて測定した。輝度半減寿命は、EHC社製のPEL−100Tシリーズにて測定した。得られた結果をそれぞれ表2に示す。なお、駆動電圧は、輝度1000cd/mの条件で有機電界発光素子を駆動させた場合の駆動電圧を測定した。また、輝度半減寿命は、駆動電流3mAの条件で有機電界発光素子を駆動させた場合において、輝度が初期の輝度の半分となる時間を測定し、比較例1の値を1としたときの相対値で示した。
【0383】
【表2】

【0384】
<実施例10:有機電界発光素子4の作製>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社製、商品名「AI4083」)を用いてスピンコートにより65nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。
【0385】
次に、実施例6で得られた高分子化合物1を0.8重量%のキシレン溶液の状態でスピンコートして、約20nmの厚みに成膜した。その後窒素ガス雰囲気下180℃でホットプレート上で180℃、60分間乾燥し、インターレイヤー層を形成した。
【0386】
次に、キシレン溶媒中に1.2重量%の濃度で溶解させた高分子化合物(サメイション株式会社製、商品名「Lumation BP105」)をスピンコートにより2000rpmの回転速度で成膜し、発光層を形成した。膜厚は約60nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で10分間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、有機電界発光素子を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0387】
<比較例2:有機電界発光素子5の作製>
インターレイヤー層を製膜するための高分子化合物として合成例1で得られた高分子化合物2を用いた以外は実施例10と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0388】
<有機電界発光素子の発光色、駆動電圧及び輝度半減寿命の測定>
実施例10及び比較例2で得られた有機電界発光素子の発光色(CIE色度座標)、駆動電圧及び輝度半減寿命を測定した。得られた結果をそれぞれ表3に示す。なお、駆動電圧は、輝度1000cd/mの条件で有機電界発光素子を駆動させた場合の駆動電圧を測定した。また、輝度半減寿命はそれぞれ初期輝度2400cd/mで発光させ、その時の電流量を一定にして駆動し、初期の輝度の半分となる時間を測定し、比較例2の値を1としたときの相対値で示した。
【0389】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0390】
以上説明したように、本発明によれば、有機電界発光素子の青色発光材料として用いた場合、色度が優れた化合物を提供することが可能となる。また、本発明の化合物を用いることによって有機電界発光素子とした時の駆動電圧を下げることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造(下記一般式(1)で表される構造から少なくとも1つの水素原子を除いた残基の構造を含む)を含むことを特徴とする化合物。
【化1】

(式(1)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR、R、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は1価の炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR、R、R及びRがそれぞれ独立に下記一般式(2)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化2】

(式(2)中、*は炭素原子との結合手を表し、R7は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、又は3置換シリル基を表し、mは0から5までの整数を表す。なお、mが2以上の場合には、R7は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
ポリスチレン換算の数平均分子量が2000以上のものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
下記一般式(3)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【化3】

(式(3)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。また、A環及びC環上に結合手を有する。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【化4】

(式(4)中、*は結合手を表し、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
下記一般式(5)で表される繰返し単位を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【化5】

(式(5)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又はシアノ基を表し、nは0又は1を表す。)
【請求項8】
下記一般式(6−1)、(6−2)、(6−3)で表される繰返し単位からなる群から選択される少なくとも1つの繰返し単位を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【化6】

(式(6−1)中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立にアリーレン基、又は2価の複素環基を表し、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基、又は1価の複素環基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0又は正の整数を表す。)
【化7】

(式(6−2)中、D環及びE環はそれぞれ独立に環上に結合手を有する芳香環を表し、Yは−O−、−S−、又は−C(=O)−を表し、R20は1価の基を表す。)
【化8】

(式(6−3)中、Yは−O−又は−S−を表す。また、6員環上に2つの結合手を有する。)
【請求項9】
下記一般式(7)で表される化合物を原料として重合する工程を含むことを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【化9】

(式(7)中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。)
【請求項10】
前記一般式(7)で表されることを特徴とする化合物。
【請求項11】
下記一般式(8)で表されることを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【化10】

(式(8)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に重合に関与しうる置換基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項12】
前記一般式(7)、(8)中のX及びXがそれぞれ独立に−B(OH)、ホウ酸エステル残基、ハロゲン化マグネシウム、スタニル基、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基であることを特徴とする請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
下記一般式(9)で表されることを特徴とする請求項10〜12のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【化11】

(式(9)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、X、Xはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項14】
前記一般式(9)で表される化合物から、X及びXを官能基変換することにより、前記一般式(8)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項11又は12に記載の化合物の製造方法。
【請求項15】
ハロゲン化剤の存在下で、下記一般式(10)で表される化合物から、ハロゲン化反応により、前記一般式(9)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項13に記載の化合物の製造方法。
【化12】

(式(10)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R及びRはそれぞれ独立に1価の基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項16】
前記一般式(10)で表されることを特徴とする化合物。
【請求項17】
塩基の存在下で、下記一般式(11)で表される化合物から、窒素原子上の置換反応により、前記一般式(10)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項16に記載の化合物の製造方法。
【化13】

(式(11)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表し、R10及びR11のうちの少なくとも一方は水素原子である。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項18】
前記一般式(11)で表されることを特徴とする化合物。
【請求項19】
酸の存在下で、下記一般式(12)で表される化合物から前記一般式(10)又は(11)で表される化合物を環化反応により製造することを特徴とする請求項16又は18に記載の化合物の製造方法。
【化14】

(式(12)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項20】
前記一般式(12)で表される化合物のうち、下記一般式(12−1)で表されることを特徴とする化合物。
【化15】

(式(12−1)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R21、R22、R23及びR24のうちの少なくとも1つはアリール基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項21】
一般式:R14−M
(式中、R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムを表す。)
で表される化合物の下記一般式(13)で表される化合物への求核反応により前記一般式(12−1)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項20に記載の化合物の製造方法。
【化16】

(式(13)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R21及びR23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。R21、R23及びR14のうちの少なくとも1つはアリール基を表す。)
【請求項22】
一般式:R15−M
(式中、R15はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムを表す。)
で表される化合物の下記一般式(14)で表される化合物への求核反応により前記一般式(12−1)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項20に記載の化合物の製造方法。
【化17】

(式(14)中、B環は単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は1価の基を表し、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。Ra及びRbはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、1価の複素環基又はヘテロアリールオキシ基を表す。o及びpはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。oが2又は3の場合、複数あるRaは同一であっても異なっていてもよい。pが2又は3の場合、複数あるRbは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項23】
前記一般式(14)で表される化合物のうち、下記一般式(14−1)で表されることを特徴とする化合物。
【化18】

(式(14−1)中、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。)
【請求項24】
パラジウム、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む触媒の存在下で、下記一般式(15)で表される化合物、下記一般式(16)で表される化合物及び下記一般式(17)で表される化合物から縮合反応により前記一般式(14−1)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項23に記載の化合物の製造方法。
【化19】

(式(15)〜(17)中、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、X及びXはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。)
【請求項25】
パラジウム、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む触媒の存在下で、下記一般式(18)で表される化合物、下記一般式(19)で表される化合物及び下記一般式(20)で表される化合物から縮合反応により前記一般式(14−1)で表される化合物を製造することを特徴とする請求項23に記載の化合物の製造方法。
【化20】

(式(18)〜(20)中、R16及びR17はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、X及びXはそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。)
【請求項26】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物、並びに、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選択される少なくとも1種類の材料を含有することを特徴とする組成物。
【請求項27】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物又は請求項26に記載の組成物を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項28】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物又は請求項26に記載の組成物を含有することを特徴とする薄膜。
【請求項29】
請求項28に記載の薄膜を有することを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項30】
陽極及び陰極からなる電極間に、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物又は請求項26に記載の組成物を含む有機層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項31】
前記有機層が発光層であることを特徴とする請求項30に記載の有機電界発光素子。
【請求項32】
陽極及び陰極からなる電極間に、発光層と正孔輸送層とを有し、且つ前記正孔輸送層が請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物又は請求項26に記載の組成物を含む請求項30に記載の有機電界発光素子。
【請求項33】
陽極及び陰極からなる電極間に、発光層と正孔輸送層とを有し、前記発光層と前記正孔輸送層との間にインターレイヤー層を有し、且つ前記インターレイヤー層が請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の化合物又は請求項26に記載の組成物を含む請求項30に記載の有機電界発光素子。
【請求項34】
請求項30〜33のうちのいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする面状光源。
【請求項35】
請求項30〜33のうちのいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置。

【公開番号】特開2009−52032(P2009−52032A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191845(P2008−191845)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】