化学反応システム、及び化学反応方法、並びに抗原抗体反応の判定方法
【課題】効率よく、マイクロ流体デバイス内流路の残留液体を、気体流通手段等を用いた残留液除去部で液体を除去する、気泡発生防止手段を具備した化学反応システムを提供する。
【解決手段】複数の担体を流路に並べたマイクロ流路デバイス、または流路に複数の突起構造を持つマイクロ流路デバイスの液導入口と液排出口に接続可能なコネクタと、流路に液体を導入する配管、液体操作を制御する送液ポンプ、さらに、液体の排出・除去手段であるアスピレータやコンプレッサー等とその周辺部品であるコネクタ、配管を有する化学反応システムを用意する。複数種類の反応溶液、洗浄溶液に対して、各液の流通後に発生する担体の隙間に残る残留液体を、各溶液流通工程後に、液体除去手段と配管し、排出・除去させる。これらの液体の流通、除去を連続的に行うことで、溶液導入時の気泡の発生を防ぐことができる。これにより、反応効率を向上させ、さらに、化学発光の発光量を気泡による散乱光がない状態での発光計測が可能となる。
【解決手段】複数の担体を流路に並べたマイクロ流路デバイス、または流路に複数の突起構造を持つマイクロ流路デバイスの液導入口と液排出口に接続可能なコネクタと、流路に液体を導入する配管、液体操作を制御する送液ポンプ、さらに、液体の排出・除去手段であるアスピレータやコンプレッサー等とその周辺部品であるコネクタ、配管を有する化学反応システムを用意する。複数種類の反応溶液、洗浄溶液に対して、各液の流通後に発生する担体の隙間に残る残留液体を、各溶液流通工程後に、液体除去手段と配管し、排出・除去させる。これらの液体の流通、除去を連続的に行うことで、溶液導入時の気泡の発生を防ぐことができる。これにより、反応効率を向上させ、さらに、化学発光の発光量を気泡による散乱光がない状態での発光計測が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応システム、及び化学反応方法、並びに抗原抗体反応の判定方法に関し、例えば、微小な空間での化学反応を利用した化学反応システム、及び化学反応方法、並びに抗原抗体反応の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小な空間を構成し、化学反応を行わせる技術が発展しつつある。微小な空間を構成する方法としては、半導体の製造工程で使用される微細加工技術を用いる方法がある。例えば、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程を経て、シリコン基板やガラス基板に溝パターンを構成し、その上に別の基板を貼り付けることで微小な流路を形成して、流路内の流体を駆動するマイクロ流体デバイスを構成できる。そして、これらの微小空間を利用した化学反応による物質生産(非特許文献1参照)や化学分析(非特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
また、生体関連分子を計測する方法として、プローブ分子を固相に固定し、そのプローブ分子に捕捉された生体関連分子を計測する方法がある。例えば、異なるプローブ分子が固定された複数の担体や構造物が納められた微小な流路に試料を送液し、試料内の生体関連分子を担体や構造物上に捕捉し、計測する方法が提案されている(非特許文献3参照)。
【0004】
一方、マイクロ流体デバイスの流路内で流体を正確に駆動するために、(マイクロ流体デバイス内に分岐構造を設けることや、表面を修飾することで、)溶液内の気泡を除去する方法がある。例えば、溶液を駆動する流路と分岐させた表面が親水性である流路を形成し、溶液内の気体を除去する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、少なくとも二つのチャンネルが任意の領域において並行接触部分を形成しており、一つのチャンネルのみの内表面を化学修飾されているマイクロ流体デバイスにおいて、気液の多相流を操作し、溶液内の気体を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【非特許文献1】Analytical Chemistry, 74, 3112-3117(2002)
【非特許文献2】Analytical Chemistry, 73, 2112-2116(2001)
【非特許文献3】Nucleic Acids Research, 30, e87(2002)
【特許文献1】特開2002−102681号公報
【特許文献2】特開2005−169386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、化学および生化学の分野にマイクロ流体デバイスを応用しようとする場合には、特に反応の効率化を図る観点からも、流路内に複数の担体を設置して利用することが多い。この担体としては、たとえば壁からの突起や流路内部に設置されるビーズや微粒子などが挙げられる。これら複数の担体を含む流路に対して、その化学反応の目的に応じた複数種類の液体を順次送液することが必要である。
【0007】
しかしながら、この際、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスの流路では、液体が流通できる領域に広い部分と狭い部分が存在するため、流路と担体との隙間に気泡が生じやすいという問題が存在する。この気泡は、化学反応の効率を低下させる、化学反応の均一性を低下させる、溶液の流路内部での滞留時間分布を大きく広げてしまう、光計測時に光の散乱等が生じ正確な光量の計測ができなくなる、光計測時のクロストークを生じる原因となる、など化学反応デバイスの性能向上を妨げる大きな原因の一つとなってしまう。
【0008】
この気泡は次のように発生すると考えられる。つまり、ある液体を流路に導入し、その後、その液体を排出する場合、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスの流路では、流路と担体との隙間に液体が残りやすい。マイクロ流路のスケールでこのような現象が起こるのは、液体の流れによる慣性力に対し液体の表面張力の寄与が大きくなってくるためである。このように流路と担体との隙間に液体が残った状態で、次の液体が導入されると、導入時に流れの分布が生じて均一に液体を導入することができず、結果として流路と担体との隙間に気泡が残ると考えられる。生じた気泡を取り除く方法として、流路に導入した液体の流れを用いて、気泡を押し出すことが考えられる。
【0009】
しかし、マイクロ流体デバイスで通常想定されている液体の容量は小さいため、気泡を押し出すのに十分な流れを生じさせることは現実的には難しい。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、複数の担体が納められたマイクロ流路に対して、気泡を生じさせずに溶液を導入する化学反応デバイス等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、複数の担体が配置された流路に第1の液体を導入し、次いで第1の液体を導出して、残留液除去部により流路に残留する液体を除去させてから、前記流路に第2の液体を導入することで、気泡の発生を抑制する化学反応システムを提供する。残留液除去部により流路から一旦液体を除去させることで、通常では流路に残ってしまう液体をほぼ完全に排出することが可能となるため、気泡が発生させることなく次の液体を導入することができる。
【0011】
すなわち、本発明による化学反応システムは、流路と、前記流路の少なくとも一部に配置される複数の担体と、前記流路に第1の液体と第2の液体とを導入する液体導入部と、前記流路から前記第1の液体を導出する液体導出部と、前記流路から前記第1の液体を導出した後に前記流路の液体を除去させる残留液除去部とを有する。ここでの残留液除去部には、一般的に、アスピレータやコンプレッサー等の気体を流通させる気体制御部や、ヒータなどの担体の温度を調整する温度制御部を用いることができる。担体はビーズや、複数の突起構造物、などである。流路は、第1の基板に設けた溝と、溝を覆って設置される第2の基板とから構成されるものが多いが、ガラス等のキャピラリーの内部もこれに含まれる。
【0012】
第1の液体と第2の液体の液量については、1マイクロリットルから1ミリリットルの範囲で操作する。また、第1の液体と第2の液体とを導入する速度については、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルで操作する。このような範囲で液体の容量や流速を設定すると、通常流路内部に頻繁に気泡が発生してしまう。しかし、本発明によりその気泡発生を回避できるという効果が得られる。
【0013】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明の実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスに用いられてきた従来の化学反応システムに、気体流通手段を具備する残留液除去部を追加し、それを用いて、液体操作後の流路に残った残留液体を排出、除去する工程を追加することで、反応効率の低下や担体間の反応のばらつき、計測時の光散乱の原因となる、気泡の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を、図を参照にして詳細に説明する。ただし、本実施形態は、本発明を実現するための1例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に関わる化学反応システム100を模式的に示す図である。ここでは、溶液の導入と流路の液体を除去する構成及び動作について説明する。まず、図1(A)を用いて、構成について説明する。化学反応システム100では、流路が形成されたチップ101と試薬容器102がステージ103上に設置されている。
【0017】
チップ101には、第1の基板121の上に図のx軸に沿った方向に主流路が形成されており、第2の基板122は主流路を覆って設置されている。また、主流路と第1のチューブ105、第2のチューブ110を配管するための開放端に繋がる副流路がz軸に沿った方向に形成されている。チップ101は、いわゆるコの字型の流路を持つマイクロ流体デバイスである。なお、チップ101の主流路、副流路の断面形状は、四角でも、丸でも良い。即ち、キャピラリーの内部を流路とし用いても良い。
【0018】
試薬容器102に関しては、簡単のために、図1(A)ではステージ上に3個セットされた例が示されているが、個数は3個に限られるものではなく、容器のセット数は使用する試薬の数によって変更できるようになっている。
【0019】
チップ101上の流路の開放端の一端は、第1のコネクタ104と第1のチューブ105を介してシリンジポンプ106にセットされたシリンジ107と接続される。また、第1のチューブ105は第1のアクチュエータ108により保持されている。チップ101上の流路の開放端の片端は第2のコネクタ109と第2のチューブ110を介して廃液ボトル111に接続されており、さらに廃液ボトル111は第3のチューブ112を介してアスピレータ113と接続されている。第2のチューブ110は第2のアクチュエータ114により保持されている。制御機115による制御によって、ステージ103はx方向に、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114はz方向にそれぞれ駆動することができるようになっている。また、シリンジポンプ106は制御機115により、シリンジ107の押し引き駆動を制御することができる。アスピレータ113は制御機115により、On/Offを制御できる。光検出器120は、チップ101の流路内の流体挙動や反応後の光検出に用いる。なお、光検出器120として、CCDカメラ、ホトマル、ホトダイオード等を用いることができる。
【0020】
図1(A)は、チップ101の流路、第1のチューブ105と第2のチューブ110が、第1のコネクタ104と第2のコネクタ105を介して、接続されており、シリンジ107の押しの動作で、チップ101内の流路に溶液を導入し、また反応後は、溶液を導出することができる状態を示している。溶液の導入や導出、さらにそれらの送液速度は、シリンジポンプ106の移動距離と移動スピードで制御する。本システムにおけるハンドリング可能な溶液量は、1マイクロリットルから1ミリリットルである。また、送液速度は、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルの範囲で変更可能なものである。
【0021】
送液量と送液速度を最適化すれば、発生した気泡を押し出すことができるということは一般的に知られている。しかしながら、実際には、送液に使用する試薬量にはコストの面で制限があり、また、送液速度も反応した生体物質に影響を与えないように設定する必要がある。このため、上記した使用溶液量と送液速度は、これらの現実的な状況を踏まえて設定されたものである。
【0022】
続いて、図1(B)から(G)を用いて、チップ101上の流路への溶液の導入、及び流路からの溶液の導出の動作について説明する。まず、図1(B)に示すように、制御機115は、溶液の導入及び導出の指示を受けると、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114を駆動し、チップ101の流路と第1のチューブ105及び第2のチューブ110の接続を解除する。
【0023】
次に、図1(C)に示すように、制御機115は、ステージ103を駆動し、3つの試薬容器102の内の1つの試薬容器上の開口部の中心位置に、第1のチューブ105の開口部中心を移動させ、その後に第1のアクチュエータ108を駆動し、チューブ105を試薬容器102の中に挿入する(図1(D))。挿入後、シリンジポンプ106を駆動し、シリンジ107を引いて、第1のチューブ105に試薬容器102の溶液を吸入する。シリンジ107が予め設定したある一定量の溶液を吸入した後、制御機115は、第1のアクチュエータ108を駆動し、第1のチューブ105を試薬容器102から取り出す(図1(E))。次に、図1(F)に示すように、制御機115は、ステージ103を駆動し、チップ101の位置をチューブ105及び第2のチューブ110の位置に移動させ、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114を駆動し、第1のチューブ105及び第2のチューブ110をチップ101上の流路と接続させる(図1(G))。シリンジポンプ106を駆動し、シリンジを押して、第1のチューブ105内の溶液をチップ101上の流路に導入する。ここで、流路内部で溶液の反応を行い、反応終了後、制御機115は、再度シリンジポンプ106を駆動し、シリンジ107の押しまたは引き操作により、流路内部の溶液を導出する。チップ101内の流路から導出された溶液は、廃液ボトル111に溜められる。
【0024】
図1(H)を用いて、流路内部の液体を除去させる動作について説明する。制御機115は、流路内部の液体の除去の指示を受けると、第1のアクチュエータ108を駆動し、チップ101上の流路と第1のチューブ105との接続を解除する。そして、アスピレータ113をOnにし、チップ101上の流路内部に残っている溶液を吸引して、流路内部の液体を除去させる。このとき、チップ101内の流路中の残留液体は、廃液ボトル111に溜まることになる。
【0025】
図1(I)は、ポンプ以外の駆動部を持たない場合の本システムの構成例を示している。この場合、チップ101上の流路に第1のチューブ105が第1のコネクタ104により、第2のチューブ110が第2のコネクタ109により接続され、固定されている。
【0026】
また、第1のチューブ105には溶液導入多方弁116が接続され、溶液導入多方弁116の分岐口には溶液導入チューブ117が接続されている。溶液導入チューブ117のもう片端は試薬容器に挿入されている。第1のチューブ105には圧力開放多方弁118が接続されており、圧力開放多方弁118の分岐口には圧力開放チューブ119が接続され、圧力開放チューブ119のもう片端は大気開放となっている。溶液導入多方弁116と圧力開放多方弁118は、経路切替指示に基づいて、制御機115により、経路を切り替えることができるようになっている。試薬容器102の溶液を導入する際は、溶液導入多方弁116を切り替えて、シリンジ107から第1のチューブ105の経路を溶液導入チューブ117に接続し、シリンジポンプ106を駆動することで、溶液を第1のチューブ105に吸入することができる。また、流路の液体を除去する際は、圧力開放多方弁118を切り替えて、チップ101上の流路からコネクタ104を介して第1のチューブ105に接続されている経路を圧力開放チューブ119に接続し、アスピレータ113をOnにすることで、流路内部に残留している溶液を吸引することができる。
【0027】
図2、図3を用いて、上記操作により2種の溶液を順次導入した際の、流路内部の様子について説明する。流路には、担体として突起構造物を有するものや微粒子を配列したものを設けることも考えられるが、ここでは、ビーズを流路内部に配列した例について説明する。
【0028】
図2は、図1(H)の液体除去操作を行わない場合に得られる結果を説明する模式図である。流路201には、複数のビーズ202が並べられている(図2(A))。ここに、図2(B)に示すように、流路201に第1の液体203を導入し、その後、図2(C)に示すように、流路201から第1の液体203を導出すると、ビーズ202と流路201の内壁との隙間に液体204が残留してしまう。この残留液体がある状態で、図2(D)に示すように第2の液体205を導入すると、図2(E)に示すように、ビーズ202と流路201の内壁との隙間に気泡206が生じてしまう。
【0029】
一方、図3は、図1(H)の液体除去操作を行った場合に得られる結果とその効果を説明する模式図である。図2(A)と同様に、複数のビーズ302を並べた流路301に(図3(A))、流路301に第1の液体303を導入し(図3(B))、その後、図3(C)に示すように、流路301から第1の液体303を導出すると、ビーズ302と流路301の内壁との隙間に液体304が残留してしまう。次に、液体除去操作を行い、残留液除去部により流路301内から残留した液体304を排出する。液体除去操作終了後に、第2の液体305の導入を行うと、図3(F)に示すように、気泡が生じることなく、第2の液体305が流路301へ導入できる。
【0030】
以上のように、液体除去操作を実行することにより、流路に気泡を生じさせること無く、流路へ溶液を挿入し、流路から溶液を導出することができるようになる。
【0031】
なお、ここでは、流路の液体を除去させる手段として、アスピレータを用いているが、それをビーズ(担体)の温度を調整する温度制御部であるヒータと置き換えても同様の効果が得られるものである。
【0032】
<第2の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態で説明した化学反応システム100を用いたアプリケーションの適用形態である。複数の担体を持つ流路において様々な化学反応・生化学反応を行うことができるが、ここでは一例として、ビーズを一列に並べた流路でアレルギー診断を目的とした抗原抗体反応を行う工程について示す。検出方法は、二つに大別される。1つは、蛍光標識した2次抗体と励起光源を用いた蛍光検出法、もう一つは、酵素標識した2次抗体とその酵素と反応する発光気質を用いた化学発光法である。本例では、検出時に気泡の影響を受けやすい、化学発光の例のみを取り上げることにする。ただし、蛍光検出においても、本発明の化学反応システムが適用できるのは明らかである。
【0033】
図4は、アレルギー診断における抗原抗体反応を説明するためのフローチャートを示している。反応前の準備工程として、アレルゲンをビーズに固定し(S11)、ビーズを流路に任意の配列で並べておく(S12)。
【0034】
本発明の化学反応システム100に関連する動作工程を示しているのは、S13からS30である。なお、S13からS16の工程は血液サンプル反応を、S17からS20の工程は血液サンプル反応後の洗浄を、S21からS24の工程は2次抗体反応を、S25からS28の工程は2次抗体反応後の洗浄を、さらに、S29からS30の工程は化学発光検出反応を、それぞれ示している。血液サンプルとしては、たとえば、血液、血液に抗凝固剤や生理食塩水等を添加した血液希釈液、血清、血漿等が挙げられる。なお、S13乃至S16、S17乃至S20、S21乃至S24、及びS25乃至S28のそれぞれは、上述の第1の実施形態で説明した溶液の導入、導出排出、及び液体除去の動作と同様の方法(図1(B)乃至(H)参照)で実行される。ここでは、S13からS16で血液サンプルの導入・導出を、S21〜S24で2次抗体の導入・導出を、順次行っているが、血液サンプルと2次抗体は、順次導入しても、同時に導入しても、混合した混合液を導入してもかまわない。ビーズに固定化したアレルゲンに反応した血液サンプル中の物質に2次抗体を効率的に反応させる観点からは、血液サンプルと2次抗体は順次導入するのが好ましい。
【0035】
まず、血液サンプル反応フローが実行される。つまり、流路に血液サンプルを導入し(S13)、流通させて、ビーズ上のアレルゲンに血液サンプルに含まれるアレルゲン特異免疫グロブリンEを捕捉する反応を行う(S14)。反応後、血液サンプルを流路から導出し(S15)、アスピレータにより流路内部に残留している液体を排出する(S16)。
【0036】
次に、血液サンプル反応後の洗浄フローが実行される。つまり、流路に洗浄溶液を導入し(S17)、流通させて、ビーズ表面や流路内壁に残っている未反応の物質を洗浄する(S18)。洗浄後、洗浄溶液を流路から導出し(S19)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液を排出する(S20)。
【0037】
続いて、2次抗体反応フローが実行される。つまり、流路に2次抗体溶液として酵素標識された抗免疫グロブリンE抗体を導入し(S21)、ビーズ上に捕捉されているアレルゲン免疫グロブリンEと反応させる(S22)。反応後、溶液を流路から導出し(S23)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液を排出する(S24)。
【0038】
さらに、2次抗体反応後の洗浄フローが実行される。つまり、流路に洗浄溶液を導入し(S25)、流通させて、ビーズ表面や流路内壁に残っている未反応の物質を洗浄する(S26)。洗浄後、洗浄溶液を流路から導出し(S27)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液をアスピレータにより排出する(S28)。
【0039】
最後に、化学発光検出反応のフローが実行される。つまり、流路にルミノールと過酸化水素を含む発光基質を導入し(S29)、ビーズ上に存在する酵素との反応により、化学発光を生じさせ、検出器により計測する(S30)。
【0040】
従来の化学反応システムでは、S16、S20、S24、S28の排出・除去工程を行わないため、図2で説明したように、流路とビーズや、ビーズ同士の隙間に溶液が残ってしまうことになる。この後に、流路に溶液を導入すると、残った溶液が混入し、気泡が流路と樹脂ビーズとの隙間に生じてしまう。しかし、本発明の化学反応システム100におけるS16、S20、S24、S28の工程の追加により、図4中の溶液導入工程の何れにおいても、気泡の発生を防ぐことができる。
【0041】
気泡の影響については、次に図5で実際の反応検出結果を示し、説明する。要約すると、気泡が発生した結果、反応した抗体量を示す検出シグナルの値がばらつくことになる。それは、気泡によるビーズと溶液との接触面積の低下、洗浄を行う際の洗浄効率のばらつきが原因である。また、図4のS30の工程において、ビーズと流路の隙間に気泡が存在している場合、化学発光により生じた光が気泡により散乱・屈折し、実際の発光量と検出器で得られる計測結果に違いが生じてしまう。
【0042】
2次抗体と発光基質を均一に反応させ、化学発光反応により生じた光が気泡で散乱・屈折し検出シグナルのばらつきが生じることを防ぐ観点から、S28で流路に残留する洗浄液を排出・除去することが好ましい。また、血液サンプル中の抗原と2次抗体を均一に効率よく反応させる観点から、S20で流路に残留する洗浄液を排出・除去し、2次抗体の残留と気泡の発生を抑制することが好ましい。また、洗浄液により流路中で未反応の血液サンプル・2次抗体を効率的に洗浄する観点から、S16、S24で流路に残留する血液サンプル及び2次抗体を排出・除去することが好ましい。もっとも好ましい工程としては、S16、S20、S24、S28で流路に残留する溶液を排出・除去することである。
【0043】
ここでは、化学発光計測を例に述べたが、蛍光計測など他の光計測全てに上記計測誤りは生じうる。
【0044】
本方式により計測した例を以下に述べる。スギ花粉アレルゲン特異免疫グロブリンEの検出を行った。スギ花粉アレルゲンを直径100μmの樹脂ビーズに固定した検査用ビーズと、ブロッキング剤を樹脂ビーズに固定したダミーのビーズを任意の配列でアクリルのチップ上に形成した幅110μm、深さ130μmの流路に並べた。流路にスギ花粉特異免疫グロブリンEが50ng/mL含まれるヒト血清を50μL導入し、毎分10μLで20分往復流通させた。その後、流路からヒト血清を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を3回繰り返した。
【0045】
続いて、流路に洗浄溶液(リン酸緩衝溶液(pH7.4)、Tween(0.05%))を40μL導入し、毎分10μLで4分一方向に流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を2回繰り返した。次に、流路に2次抗体溶液(1000ng/mL抗ヒト免疫グロブリンE抗体−HRP)を50μL導入し、毎分10μLで20分往復流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を3回繰り返した。さらに、流路に洗浄溶液(リン酸緩衝溶液(pH7.4)、Tween(0.05%))を40μL導入し、毎分10μLで4分一方向に流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を2回繰り返した。最後に、流路に発光基質(ルミノール、過酸化水素)を導入し、CCDカメラを用いて検査用ビーズからの発光を計測した。図5は計測結果の例である。
【0046】
なお、上記のアスピレータの吸引時間やその回数は、予備実験を行い検討した結果を採用している。溶液の粘性や、マイクロ流体デバイスの形態による流路抵抗の違いから、これらのパラメータを変更する必要性が生じる。しかし、本化学反応システム100にはCCDカメラ等の光検出器120が備わっており、残留液体の挙動を常時画像としてモニタできるため、使用するマイクロ流体デバイスの違いによるパラメータの条件変更は比較的容易である。液体の除去が不十分な場合には、吸引回数を増やす等の制御をCCDカメラによる画像認識で自動化することも可能である。
【0047】
図5(A)は、気泡が発生していないときの計測結果を示している。CCD像501に示すように、流路503に3つの検査用ビーズ504と各検査用ビーズ504の間にダミーのビーズ505が3つずつ配列されている。発光基質506を導入したときに生じた化学発光を計測し、解析したプロファイル502には、検査用ビーズ504の位置から理想的なピーク507が検出されている。
【0048】
一方、図5(B)は、気泡が発生したときの計測結果を示している。これは、図4におけるS28の残留液体の排出・除去工程を省いた場合の典型的な結果である。CCD像501に示すように、検査用ビーズ504とダミーのビーズ505は図5(A)と同じ順序で配列されているが、液体除去工程を行わずに発光基質506を導入したため、気泡508が生じている。その結果、気泡508が検査用ビーズ504の周囲に存在する場合、プロファイル502に示すように、理想的なピーク507に比較して発光強度が低く、ピーク幅が広い、気泡の影響を受けたピーク509が検出される。
【0049】
また、図4におけるS28以外の残留液体の排出・液体除去工程であるS16、S20、S24の何れかを省いた場合では、反応時の気泡が反応効率に影響し、検査用ビーズ504間でピーク強度がばらつくことになる。
【0050】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態による化学反応システム600を示す図である。この化学反応システム600は、第1の実施形態の変形例に係るものである。図6において、チップ601上の流路の開放端の一端は、第1のコネクタ602と第1のチューブ603を介して、コンプレッサー604に接続されている。チップ601上の流路の開放端のもう片端は、第2のコネクタ605と第2のチューブ606を介して、廃液ボトル607に接続されている。第1のチューブ603は第1のアクチュエータ608に保持されており、第1のアクチュエータ608は第2のアクチュエータ609に搭載されている。第2のチューブ606は第3のアクチュエータ610に保持されている。第1のアクチュエータ608はy方向に、第2のアクチュエータと第3のアクチュエータはz方向に駆動させることができる。
【0051】
図6には示されてはいないが、第1のアクチュエータ608には、シリンジに接続された溶液導入用のチューブ(図1(A)の第1のチューブ105)が、y軸に垂直、z軸に並行に、第1のチューブ603と異なる位置に保持されている。そして、第1のアクチュエータ608を駆動させることで、チップ601上の流路と第1のチューブ603とを接続するか、チップ601上にシリンジに接続された溶液導入用チューブとを接続するかを、選択することができるようになっている。
【0052】
このような構成を備える化学反応システム600において、チップ601上の流路の液体除去操作は、コンプレッサー604をOnにし、流路内部に残留する液体を押し出して、廃液ボトル607に排出することにより実行される。
【0053】
なお、ここでは、流路の液体を除去させる手段として、コンプレッサーを用いているが、それをビーズ(担体)の温度を調整する温度制御部であるヒータと置き換えても同様の効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1(A)】本発明の第1の実施形態による化学反応システムの概略構成図である。
【図1(B)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(C)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(D)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(E)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(F)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(G)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(H)】流路内部の液体を除去させる工程を示す図である。
【図1(I)】多方弁を用いて、溶液導入する工程を示す図である。
【図2】流路内部の液体除去を行わずに、溶液を順次導入する工程を示す図である。
【図3】流路内部の液体除去を行い、溶液を順次導入する工程を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に基づくアレルギー診断を行う工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に基づくアレルギー診断の計測結果を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に基づく化学反応システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
101:チップ、102:試薬容器、103:ステージ、104:第1のコネクタ、105:第1のチューブ、106:シリンジポンプ、107:シリンジ、108:第1のアクチュエータ、109:第2のコネクタ、110:第2のチューブ、111:廃液ボトル、112:第3のチューブ、113:アスピレータ、114:第2のアクチュエータ、115:制御機、116:溶液導入多方弁、117:溶液導入チューブ、118:圧力開放多方弁、119:圧力開放チューブ、120:光検出器、121:第1の基板、122:第2の基板、201:流路、202:ビーズ、203:第1の液体、204:液体、205:第2の液体、206:気泡、301:流路、302:ビーズ、303:第1の液体、304:液体、305:第2の液体、501:CCD像、502:プロファイル、503:流路、504:検査用ビーズ、505:ダミーのビーズ、506:発光基質、507:理想的なピーク、508:気泡、509:気泡の影響を受けたピーク、601:チップ、602:第1のコネクタ、603:第1のチューブ、604:コンプレッサー、605:第2のコネクタ、606:第2のチューブ、607:廃液ボトル、608:第1のアクチュエータ、609:第2のアクチュエータ、610:第3のアクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応システム、及び化学反応方法、並びに抗原抗体反応の判定方法に関し、例えば、微小な空間での化学反応を利用した化学反応システム、及び化学反応方法、並びに抗原抗体反応の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小な空間を構成し、化学反応を行わせる技術が発展しつつある。微小な空間を構成する方法としては、半導体の製造工程で使用される微細加工技術を用いる方法がある。例えば、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程を経て、シリコン基板やガラス基板に溝パターンを構成し、その上に別の基板を貼り付けることで微小な流路を形成して、流路内の流体を駆動するマイクロ流体デバイスを構成できる。そして、これらの微小空間を利用した化学反応による物質生産(非特許文献1参照)や化学分析(非特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
また、生体関連分子を計測する方法として、プローブ分子を固相に固定し、そのプローブ分子に捕捉された生体関連分子を計測する方法がある。例えば、異なるプローブ分子が固定された複数の担体や構造物が納められた微小な流路に試料を送液し、試料内の生体関連分子を担体や構造物上に捕捉し、計測する方法が提案されている(非特許文献3参照)。
【0004】
一方、マイクロ流体デバイスの流路内で流体を正確に駆動するために、(マイクロ流体デバイス内に分岐構造を設けることや、表面を修飾することで、)溶液内の気泡を除去する方法がある。例えば、溶液を駆動する流路と分岐させた表面が親水性である流路を形成し、溶液内の気体を除去する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、少なくとも二つのチャンネルが任意の領域において並行接触部分を形成しており、一つのチャンネルのみの内表面を化学修飾されているマイクロ流体デバイスにおいて、気液の多相流を操作し、溶液内の気体を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【非特許文献1】Analytical Chemistry, 74, 3112-3117(2002)
【非特許文献2】Analytical Chemistry, 73, 2112-2116(2001)
【非特許文献3】Nucleic Acids Research, 30, e87(2002)
【特許文献1】特開2002−102681号公報
【特許文献2】特開2005−169386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、化学および生化学の分野にマイクロ流体デバイスを応用しようとする場合には、特に反応の効率化を図る観点からも、流路内に複数の担体を設置して利用することが多い。この担体としては、たとえば壁からの突起や流路内部に設置されるビーズや微粒子などが挙げられる。これら複数の担体を含む流路に対して、その化学反応の目的に応じた複数種類の液体を順次送液することが必要である。
【0007】
しかしながら、この際、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスの流路では、液体が流通できる領域に広い部分と狭い部分が存在するため、流路と担体との隙間に気泡が生じやすいという問題が存在する。この気泡は、化学反応の効率を低下させる、化学反応の均一性を低下させる、溶液の流路内部での滞留時間分布を大きく広げてしまう、光計測時に光の散乱等が生じ正確な光量の計測ができなくなる、光計測時のクロストークを生じる原因となる、など化学反応デバイスの性能向上を妨げる大きな原因の一つとなってしまう。
【0008】
この気泡は次のように発生すると考えられる。つまり、ある液体を流路に導入し、その後、その液体を排出する場合、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスの流路では、流路と担体との隙間に液体が残りやすい。マイクロ流路のスケールでこのような現象が起こるのは、液体の流れによる慣性力に対し液体の表面張力の寄与が大きくなってくるためである。このように流路と担体との隙間に液体が残った状態で、次の液体が導入されると、導入時に流れの分布が生じて均一に液体を導入することができず、結果として流路と担体との隙間に気泡が残ると考えられる。生じた気泡を取り除く方法として、流路に導入した液体の流れを用いて、気泡を押し出すことが考えられる。
【0009】
しかし、マイクロ流体デバイスで通常想定されている液体の容量は小さいため、気泡を押し出すのに十分な流れを生じさせることは現実的には難しい。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、複数の担体が納められたマイクロ流路に対して、気泡を生じさせずに溶液を導入する化学反応デバイス等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、複数の担体が配置された流路に第1の液体を導入し、次いで第1の液体を導出して、残留液除去部により流路に残留する液体を除去させてから、前記流路に第2の液体を導入することで、気泡の発生を抑制する化学反応システムを提供する。残留液除去部により流路から一旦液体を除去させることで、通常では流路に残ってしまう液体をほぼ完全に排出することが可能となるため、気泡が発生させることなく次の液体を導入することができる。
【0011】
すなわち、本発明による化学反応システムは、流路と、前記流路の少なくとも一部に配置される複数の担体と、前記流路に第1の液体と第2の液体とを導入する液体導入部と、前記流路から前記第1の液体を導出する液体導出部と、前記流路から前記第1の液体を導出した後に前記流路の液体を除去させる残留液除去部とを有する。ここでの残留液除去部には、一般的に、アスピレータやコンプレッサー等の気体を流通させる気体制御部や、ヒータなどの担体の温度を調整する温度制御部を用いることができる。担体はビーズや、複数の突起構造物、などである。流路は、第1の基板に設けた溝と、溝を覆って設置される第2の基板とから構成されるものが多いが、ガラス等のキャピラリーの内部もこれに含まれる。
【0012】
第1の液体と第2の液体の液量については、1マイクロリットルから1ミリリットルの範囲で操作する。また、第1の液体と第2の液体とを導入する速度については、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルで操作する。このような範囲で液体の容量や流速を設定すると、通常流路内部に頻繁に気泡が発生してしまう。しかし、本発明によりその気泡発生を回避できるという効果が得られる。
【0013】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明の実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の担体が納められたマイクロ流体デバイスに用いられてきた従来の化学反応システムに、気体流通手段を具備する残留液除去部を追加し、それを用いて、液体操作後の流路に残った残留液体を排出、除去する工程を追加することで、反応効率の低下や担体間の反応のばらつき、計測時の光散乱の原因となる、気泡の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を、図を参照にして詳細に説明する。ただし、本実施形態は、本発明を実現するための1例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に関わる化学反応システム100を模式的に示す図である。ここでは、溶液の導入と流路の液体を除去する構成及び動作について説明する。まず、図1(A)を用いて、構成について説明する。化学反応システム100では、流路が形成されたチップ101と試薬容器102がステージ103上に設置されている。
【0017】
チップ101には、第1の基板121の上に図のx軸に沿った方向に主流路が形成されており、第2の基板122は主流路を覆って設置されている。また、主流路と第1のチューブ105、第2のチューブ110を配管するための開放端に繋がる副流路がz軸に沿った方向に形成されている。チップ101は、いわゆるコの字型の流路を持つマイクロ流体デバイスである。なお、チップ101の主流路、副流路の断面形状は、四角でも、丸でも良い。即ち、キャピラリーの内部を流路とし用いても良い。
【0018】
試薬容器102に関しては、簡単のために、図1(A)ではステージ上に3個セットされた例が示されているが、個数は3個に限られるものではなく、容器のセット数は使用する試薬の数によって変更できるようになっている。
【0019】
チップ101上の流路の開放端の一端は、第1のコネクタ104と第1のチューブ105を介してシリンジポンプ106にセットされたシリンジ107と接続される。また、第1のチューブ105は第1のアクチュエータ108により保持されている。チップ101上の流路の開放端の片端は第2のコネクタ109と第2のチューブ110を介して廃液ボトル111に接続されており、さらに廃液ボトル111は第3のチューブ112を介してアスピレータ113と接続されている。第2のチューブ110は第2のアクチュエータ114により保持されている。制御機115による制御によって、ステージ103はx方向に、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114はz方向にそれぞれ駆動することができるようになっている。また、シリンジポンプ106は制御機115により、シリンジ107の押し引き駆動を制御することができる。アスピレータ113は制御機115により、On/Offを制御できる。光検出器120は、チップ101の流路内の流体挙動や反応後の光検出に用いる。なお、光検出器120として、CCDカメラ、ホトマル、ホトダイオード等を用いることができる。
【0020】
図1(A)は、チップ101の流路、第1のチューブ105と第2のチューブ110が、第1のコネクタ104と第2のコネクタ105を介して、接続されており、シリンジ107の押しの動作で、チップ101内の流路に溶液を導入し、また反応後は、溶液を導出することができる状態を示している。溶液の導入や導出、さらにそれらの送液速度は、シリンジポンプ106の移動距離と移動スピードで制御する。本システムにおけるハンドリング可能な溶液量は、1マイクロリットルから1ミリリットルである。また、送液速度は、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルの範囲で変更可能なものである。
【0021】
送液量と送液速度を最適化すれば、発生した気泡を押し出すことができるということは一般的に知られている。しかしながら、実際には、送液に使用する試薬量にはコストの面で制限があり、また、送液速度も反応した生体物質に影響を与えないように設定する必要がある。このため、上記した使用溶液量と送液速度は、これらの現実的な状況を踏まえて設定されたものである。
【0022】
続いて、図1(B)から(G)を用いて、チップ101上の流路への溶液の導入、及び流路からの溶液の導出の動作について説明する。まず、図1(B)に示すように、制御機115は、溶液の導入及び導出の指示を受けると、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114を駆動し、チップ101の流路と第1のチューブ105及び第2のチューブ110の接続を解除する。
【0023】
次に、図1(C)に示すように、制御機115は、ステージ103を駆動し、3つの試薬容器102の内の1つの試薬容器上の開口部の中心位置に、第1のチューブ105の開口部中心を移動させ、その後に第1のアクチュエータ108を駆動し、チューブ105を試薬容器102の中に挿入する(図1(D))。挿入後、シリンジポンプ106を駆動し、シリンジ107を引いて、第1のチューブ105に試薬容器102の溶液を吸入する。シリンジ107が予め設定したある一定量の溶液を吸入した後、制御機115は、第1のアクチュエータ108を駆動し、第1のチューブ105を試薬容器102から取り出す(図1(E))。次に、図1(F)に示すように、制御機115は、ステージ103を駆動し、チップ101の位置をチューブ105及び第2のチューブ110の位置に移動させ、第1のアクチュエータ108及び第2のアクチュエータ114を駆動し、第1のチューブ105及び第2のチューブ110をチップ101上の流路と接続させる(図1(G))。シリンジポンプ106を駆動し、シリンジを押して、第1のチューブ105内の溶液をチップ101上の流路に導入する。ここで、流路内部で溶液の反応を行い、反応終了後、制御機115は、再度シリンジポンプ106を駆動し、シリンジ107の押しまたは引き操作により、流路内部の溶液を導出する。チップ101内の流路から導出された溶液は、廃液ボトル111に溜められる。
【0024】
図1(H)を用いて、流路内部の液体を除去させる動作について説明する。制御機115は、流路内部の液体の除去の指示を受けると、第1のアクチュエータ108を駆動し、チップ101上の流路と第1のチューブ105との接続を解除する。そして、アスピレータ113をOnにし、チップ101上の流路内部に残っている溶液を吸引して、流路内部の液体を除去させる。このとき、チップ101内の流路中の残留液体は、廃液ボトル111に溜まることになる。
【0025】
図1(I)は、ポンプ以外の駆動部を持たない場合の本システムの構成例を示している。この場合、チップ101上の流路に第1のチューブ105が第1のコネクタ104により、第2のチューブ110が第2のコネクタ109により接続され、固定されている。
【0026】
また、第1のチューブ105には溶液導入多方弁116が接続され、溶液導入多方弁116の分岐口には溶液導入チューブ117が接続されている。溶液導入チューブ117のもう片端は試薬容器に挿入されている。第1のチューブ105には圧力開放多方弁118が接続されており、圧力開放多方弁118の分岐口には圧力開放チューブ119が接続され、圧力開放チューブ119のもう片端は大気開放となっている。溶液導入多方弁116と圧力開放多方弁118は、経路切替指示に基づいて、制御機115により、経路を切り替えることができるようになっている。試薬容器102の溶液を導入する際は、溶液導入多方弁116を切り替えて、シリンジ107から第1のチューブ105の経路を溶液導入チューブ117に接続し、シリンジポンプ106を駆動することで、溶液を第1のチューブ105に吸入することができる。また、流路の液体を除去する際は、圧力開放多方弁118を切り替えて、チップ101上の流路からコネクタ104を介して第1のチューブ105に接続されている経路を圧力開放チューブ119に接続し、アスピレータ113をOnにすることで、流路内部に残留している溶液を吸引することができる。
【0027】
図2、図3を用いて、上記操作により2種の溶液を順次導入した際の、流路内部の様子について説明する。流路には、担体として突起構造物を有するものや微粒子を配列したものを設けることも考えられるが、ここでは、ビーズを流路内部に配列した例について説明する。
【0028】
図2は、図1(H)の液体除去操作を行わない場合に得られる結果を説明する模式図である。流路201には、複数のビーズ202が並べられている(図2(A))。ここに、図2(B)に示すように、流路201に第1の液体203を導入し、その後、図2(C)に示すように、流路201から第1の液体203を導出すると、ビーズ202と流路201の内壁との隙間に液体204が残留してしまう。この残留液体がある状態で、図2(D)に示すように第2の液体205を導入すると、図2(E)に示すように、ビーズ202と流路201の内壁との隙間に気泡206が生じてしまう。
【0029】
一方、図3は、図1(H)の液体除去操作を行った場合に得られる結果とその効果を説明する模式図である。図2(A)と同様に、複数のビーズ302を並べた流路301に(図3(A))、流路301に第1の液体303を導入し(図3(B))、その後、図3(C)に示すように、流路301から第1の液体303を導出すると、ビーズ302と流路301の内壁との隙間に液体304が残留してしまう。次に、液体除去操作を行い、残留液除去部により流路301内から残留した液体304を排出する。液体除去操作終了後に、第2の液体305の導入を行うと、図3(F)に示すように、気泡が生じることなく、第2の液体305が流路301へ導入できる。
【0030】
以上のように、液体除去操作を実行することにより、流路に気泡を生じさせること無く、流路へ溶液を挿入し、流路から溶液を導出することができるようになる。
【0031】
なお、ここでは、流路の液体を除去させる手段として、アスピレータを用いているが、それをビーズ(担体)の温度を調整する温度制御部であるヒータと置き換えても同様の効果が得られるものである。
【0032】
<第2の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態で説明した化学反応システム100を用いたアプリケーションの適用形態である。複数の担体を持つ流路において様々な化学反応・生化学反応を行うことができるが、ここでは一例として、ビーズを一列に並べた流路でアレルギー診断を目的とした抗原抗体反応を行う工程について示す。検出方法は、二つに大別される。1つは、蛍光標識した2次抗体と励起光源を用いた蛍光検出法、もう一つは、酵素標識した2次抗体とその酵素と反応する発光気質を用いた化学発光法である。本例では、検出時に気泡の影響を受けやすい、化学発光の例のみを取り上げることにする。ただし、蛍光検出においても、本発明の化学反応システムが適用できるのは明らかである。
【0033】
図4は、アレルギー診断における抗原抗体反応を説明するためのフローチャートを示している。反応前の準備工程として、アレルゲンをビーズに固定し(S11)、ビーズを流路に任意の配列で並べておく(S12)。
【0034】
本発明の化学反応システム100に関連する動作工程を示しているのは、S13からS30である。なお、S13からS16の工程は血液サンプル反応を、S17からS20の工程は血液サンプル反応後の洗浄を、S21からS24の工程は2次抗体反応を、S25からS28の工程は2次抗体反応後の洗浄を、さらに、S29からS30の工程は化学発光検出反応を、それぞれ示している。血液サンプルとしては、たとえば、血液、血液に抗凝固剤や生理食塩水等を添加した血液希釈液、血清、血漿等が挙げられる。なお、S13乃至S16、S17乃至S20、S21乃至S24、及びS25乃至S28のそれぞれは、上述の第1の実施形態で説明した溶液の導入、導出排出、及び液体除去の動作と同様の方法(図1(B)乃至(H)参照)で実行される。ここでは、S13からS16で血液サンプルの導入・導出を、S21〜S24で2次抗体の導入・導出を、順次行っているが、血液サンプルと2次抗体は、順次導入しても、同時に導入しても、混合した混合液を導入してもかまわない。ビーズに固定化したアレルゲンに反応した血液サンプル中の物質に2次抗体を効率的に反応させる観点からは、血液サンプルと2次抗体は順次導入するのが好ましい。
【0035】
まず、血液サンプル反応フローが実行される。つまり、流路に血液サンプルを導入し(S13)、流通させて、ビーズ上のアレルゲンに血液サンプルに含まれるアレルゲン特異免疫グロブリンEを捕捉する反応を行う(S14)。反応後、血液サンプルを流路から導出し(S15)、アスピレータにより流路内部に残留している液体を排出する(S16)。
【0036】
次に、血液サンプル反応後の洗浄フローが実行される。つまり、流路に洗浄溶液を導入し(S17)、流通させて、ビーズ表面や流路内壁に残っている未反応の物質を洗浄する(S18)。洗浄後、洗浄溶液を流路から導出し(S19)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液を排出する(S20)。
【0037】
続いて、2次抗体反応フローが実行される。つまり、流路に2次抗体溶液として酵素標識された抗免疫グロブリンE抗体を導入し(S21)、ビーズ上に捕捉されているアレルゲン免疫グロブリンEと反応させる(S22)。反応後、溶液を流路から導出し(S23)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液を排出する(S24)。
【0038】
さらに、2次抗体反応後の洗浄フローが実行される。つまり、流路に洗浄溶液を導入し(S25)、流通させて、ビーズ表面や流路内壁に残っている未反応の物質を洗浄する(S26)。洗浄後、洗浄溶液を流路から導出し(S27)、アスピレータにより流路内部に残留している溶液をアスピレータにより排出する(S28)。
【0039】
最後に、化学発光検出反応のフローが実行される。つまり、流路にルミノールと過酸化水素を含む発光基質を導入し(S29)、ビーズ上に存在する酵素との反応により、化学発光を生じさせ、検出器により計測する(S30)。
【0040】
従来の化学反応システムでは、S16、S20、S24、S28の排出・除去工程を行わないため、図2で説明したように、流路とビーズや、ビーズ同士の隙間に溶液が残ってしまうことになる。この後に、流路に溶液を導入すると、残った溶液が混入し、気泡が流路と樹脂ビーズとの隙間に生じてしまう。しかし、本発明の化学反応システム100におけるS16、S20、S24、S28の工程の追加により、図4中の溶液導入工程の何れにおいても、気泡の発生を防ぐことができる。
【0041】
気泡の影響については、次に図5で実際の反応検出結果を示し、説明する。要約すると、気泡が発生した結果、反応した抗体量を示す検出シグナルの値がばらつくことになる。それは、気泡によるビーズと溶液との接触面積の低下、洗浄を行う際の洗浄効率のばらつきが原因である。また、図4のS30の工程において、ビーズと流路の隙間に気泡が存在している場合、化学発光により生じた光が気泡により散乱・屈折し、実際の発光量と検出器で得られる計測結果に違いが生じてしまう。
【0042】
2次抗体と発光基質を均一に反応させ、化学発光反応により生じた光が気泡で散乱・屈折し検出シグナルのばらつきが生じることを防ぐ観点から、S28で流路に残留する洗浄液を排出・除去することが好ましい。また、血液サンプル中の抗原と2次抗体を均一に効率よく反応させる観点から、S20で流路に残留する洗浄液を排出・除去し、2次抗体の残留と気泡の発生を抑制することが好ましい。また、洗浄液により流路中で未反応の血液サンプル・2次抗体を効率的に洗浄する観点から、S16、S24で流路に残留する血液サンプル及び2次抗体を排出・除去することが好ましい。もっとも好ましい工程としては、S16、S20、S24、S28で流路に残留する溶液を排出・除去することである。
【0043】
ここでは、化学発光計測を例に述べたが、蛍光計測など他の光計測全てに上記計測誤りは生じうる。
【0044】
本方式により計測した例を以下に述べる。スギ花粉アレルゲン特異免疫グロブリンEの検出を行った。スギ花粉アレルゲンを直径100μmの樹脂ビーズに固定した検査用ビーズと、ブロッキング剤を樹脂ビーズに固定したダミーのビーズを任意の配列でアクリルのチップ上に形成した幅110μm、深さ130μmの流路に並べた。流路にスギ花粉特異免疫グロブリンEが50ng/mL含まれるヒト血清を50μL導入し、毎分10μLで20分往復流通させた。その後、流路からヒト血清を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を3回繰り返した。
【0045】
続いて、流路に洗浄溶液(リン酸緩衝溶液(pH7.4)、Tween(0.05%))を40μL導入し、毎分10μLで4分一方向に流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を2回繰り返した。次に、流路に2次抗体溶液(1000ng/mL抗ヒト免疫グロブリンE抗体−HRP)を50μL導入し、毎分10μLで20分往復流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を3回繰り返した。さらに、流路に洗浄溶液(リン酸緩衝溶液(pH7.4)、Tween(0.05%))を40μL導入し、毎分10μLで4分一方向に流通させた。その後、流路から溶液を導出し、アスピレータにより10秒間吸引する工程を2回繰り返した。最後に、流路に発光基質(ルミノール、過酸化水素)を導入し、CCDカメラを用いて検査用ビーズからの発光を計測した。図5は計測結果の例である。
【0046】
なお、上記のアスピレータの吸引時間やその回数は、予備実験を行い検討した結果を採用している。溶液の粘性や、マイクロ流体デバイスの形態による流路抵抗の違いから、これらのパラメータを変更する必要性が生じる。しかし、本化学反応システム100にはCCDカメラ等の光検出器120が備わっており、残留液体の挙動を常時画像としてモニタできるため、使用するマイクロ流体デバイスの違いによるパラメータの条件変更は比較的容易である。液体の除去が不十分な場合には、吸引回数を増やす等の制御をCCDカメラによる画像認識で自動化することも可能である。
【0047】
図5(A)は、気泡が発生していないときの計測結果を示している。CCD像501に示すように、流路503に3つの検査用ビーズ504と各検査用ビーズ504の間にダミーのビーズ505が3つずつ配列されている。発光基質506を導入したときに生じた化学発光を計測し、解析したプロファイル502には、検査用ビーズ504の位置から理想的なピーク507が検出されている。
【0048】
一方、図5(B)は、気泡が発生したときの計測結果を示している。これは、図4におけるS28の残留液体の排出・除去工程を省いた場合の典型的な結果である。CCD像501に示すように、検査用ビーズ504とダミーのビーズ505は図5(A)と同じ順序で配列されているが、液体除去工程を行わずに発光基質506を導入したため、気泡508が生じている。その結果、気泡508が検査用ビーズ504の周囲に存在する場合、プロファイル502に示すように、理想的なピーク507に比較して発光強度が低く、ピーク幅が広い、気泡の影響を受けたピーク509が検出される。
【0049】
また、図4におけるS28以外の残留液体の排出・液体除去工程であるS16、S20、S24の何れかを省いた場合では、反応時の気泡が反応効率に影響し、検査用ビーズ504間でピーク強度がばらつくことになる。
【0050】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態による化学反応システム600を示す図である。この化学反応システム600は、第1の実施形態の変形例に係るものである。図6において、チップ601上の流路の開放端の一端は、第1のコネクタ602と第1のチューブ603を介して、コンプレッサー604に接続されている。チップ601上の流路の開放端のもう片端は、第2のコネクタ605と第2のチューブ606を介して、廃液ボトル607に接続されている。第1のチューブ603は第1のアクチュエータ608に保持されており、第1のアクチュエータ608は第2のアクチュエータ609に搭載されている。第2のチューブ606は第3のアクチュエータ610に保持されている。第1のアクチュエータ608はy方向に、第2のアクチュエータと第3のアクチュエータはz方向に駆動させることができる。
【0051】
図6には示されてはいないが、第1のアクチュエータ608には、シリンジに接続された溶液導入用のチューブ(図1(A)の第1のチューブ105)が、y軸に垂直、z軸に並行に、第1のチューブ603と異なる位置に保持されている。そして、第1のアクチュエータ608を駆動させることで、チップ601上の流路と第1のチューブ603とを接続するか、チップ601上にシリンジに接続された溶液導入用チューブとを接続するかを、選択することができるようになっている。
【0052】
このような構成を備える化学反応システム600において、チップ601上の流路の液体除去操作は、コンプレッサー604をOnにし、流路内部に残留する液体を押し出して、廃液ボトル607に排出することにより実行される。
【0053】
なお、ここでは、流路の液体を除去させる手段として、コンプレッサーを用いているが、それをビーズ(担体)の温度を調整する温度制御部であるヒータと置き換えても同様の効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1(A)】本発明の第1の実施形態による化学反応システムの概略構成図である。
【図1(B)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(C)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(D)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(E)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(F)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(G)】試薬容器から溶液を分注し、流路に導入する工程を示す図である。
【図1(H)】流路内部の液体を除去させる工程を示す図である。
【図1(I)】多方弁を用いて、溶液導入する工程を示す図である。
【図2】流路内部の液体除去を行わずに、溶液を順次導入する工程を示す図である。
【図3】流路内部の液体除去を行い、溶液を順次導入する工程を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に基づくアレルギー診断を行う工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に基づくアレルギー診断の計測結果を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に基づく化学反応システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
101:チップ、102:試薬容器、103:ステージ、104:第1のコネクタ、105:第1のチューブ、106:シリンジポンプ、107:シリンジ、108:第1のアクチュエータ、109:第2のコネクタ、110:第2のチューブ、111:廃液ボトル、112:第3のチューブ、113:アスピレータ、114:第2のアクチュエータ、115:制御機、116:溶液導入多方弁、117:溶液導入チューブ、118:圧力開放多方弁、119:圧力開放チューブ、120:光検出器、121:第1の基板、122:第2の基板、201:流路、202:ビーズ、203:第1の液体、204:液体、205:第2の液体、206:気泡、301:流路、302:ビーズ、303:第1の液体、304:液体、305:第2の液体、501:CCD像、502:プロファイル、503:流路、504:検査用ビーズ、505:ダミーのビーズ、506:発光基質、507:理想的なピーク、508:気泡、509:気泡の影響を受けたピーク、601:チップ、602:第1のコネクタ、603:第1のチューブ、604:コンプレッサー、605:第2のコネクタ、606:第2のチューブ、607:廃液ボトル、608:第1のアクチュエータ、609:第2のアクチュエータ、610:第3のアクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に複数の担体が配置される流路と、
前記流路に液体を導入する液体導入部と、
前記流路から液体を導出する液体導出部と、
前記流路に残留する液体を除去する残留液除去部と、
を備えることを特徴とする化学反応システム。
【請求項2】
前記残留液除去部は、前記流路に気体を流通させる気体制御部を含むことを特徴とする請求項1に記載の化学反応システム。
【請求項3】
前記残留液除去部は、アスピレータを含むことを特徴とする請求項2に記載の化学反応システム。
【請求項4】
前記残留液除去部は、コンプレッサーを含むことを特徴とする請求項2に記載の化学反応システム。
【請求項5】
前記残留液除去部は、前記担体の温度を調整する温度制御部を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項6】
前記担体は、ビーズであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項7】
前記流路が、第1の基板に設けた溝と、前記溝を覆って設置される第2の基板とによって構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化学反応システム。
【請求項8】
前記流路が、キャピラリーの内部に構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項9】
前記流路に導入される液体の液量は、1マイクロリットルから1ミリリットルの範囲に含まれることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項10】
前記流路に液体を導入する速度は、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルの範囲に含まれることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項11】
さらに、前記流路内の化学反応を検出するための光検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項12】
前記検出器が光検出器であることを特徴とする請求項11に記載の化学反応システム。
【請求項13】
前記光検出器が、前記流路内の担体から発生した化学発光に伴う光を検出することを特徴とする請求項12に記載の化学反応システム。
【請求項14】
流路を有する微小空間において液体の化学反応を起こさせる化学反応方法であって、
少なくとも一部に複数の担体が配置された流路に、液体導入部を用いて、第1の液体を導入する第1の工程と、
液体導出部を用いて、前記流路から前記第1の液体を導出する第2の工程と、
残留液除去部を用いて、前記第2の工程後に前記流路に残留する液体を除去する第3の工程と、
前記第3の工程後に、前記液体導入部を用いて、前記第1の液体とは異なる第2の液体を前記流路に導入する第4の工程と、
を備えることを特徴とする化学反応方法。
【請求項15】
さらに、前記第4の工程後に、検出器を用いて、前記流路内の化学反応を検出する第5の工程を備えることを特徴とする請求項14に記載の化学反応方法。
【請求項16】
前記検出器は光検出器であって、前記第5の工程において前記流路内の担体から発生した化学発光に伴う光を検出することを特徴とする請求項15に記載の化学反応方法。
【請求項17】
請求項13に記載の化学反応システムを用いる、抗原抗体反応の判定方法であって、
抗原又は抗体を複数の担体に固定化する第1の工程と、
前記抗原又は抗体が固定化された前記複数の担体を流路に配列する第2の工程と、
前記複数の担体が配列された流路に血液サンプルを導入・導出する第3の工程と、
前記流路に2次抗体溶液を導入・導出する第4の工程と、
前記流路に洗浄液を導入・導出する第5の工程と、
前記流路に発光基質液を導入する第6の工程と、
前記光検出器により前記担体からの化学発光を検出する第7の工程と、
前記第4の工程及び前記第5の工程のいずれかの工程又は両方の工程の後に、前記流路に残留する液体を除去する工程と、
を備えることを特徴とする抗原抗体反応の判定方法。
【請求項18】
前記第1の工程の後に、前記流路に残留する液体を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項17記載の判定方法。
【請求項19】
前記第1の工程において前記複数の担体に固定化された抗原又は抗体がアレルゲンであって、アレルギー反応を判定することを特徴とする請求項17又は18記載の判定方法。
【請求項1】
少なくとも一部に複数の担体が配置される流路と、
前記流路に液体を導入する液体導入部と、
前記流路から液体を導出する液体導出部と、
前記流路に残留する液体を除去する残留液除去部と、
を備えることを特徴とする化学反応システム。
【請求項2】
前記残留液除去部は、前記流路に気体を流通させる気体制御部を含むことを特徴とする請求項1に記載の化学反応システム。
【請求項3】
前記残留液除去部は、アスピレータを含むことを特徴とする請求項2に記載の化学反応システム。
【請求項4】
前記残留液除去部は、コンプレッサーを含むことを特徴とする請求項2に記載の化学反応システム。
【請求項5】
前記残留液除去部は、前記担体の温度を調整する温度制御部を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項6】
前記担体は、ビーズであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項7】
前記流路が、第1の基板に設けた溝と、前記溝を覆って設置される第2の基板とによって構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化学反応システム。
【請求項8】
前記流路が、キャピラリーの内部に構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項9】
前記流路に導入される液体の液量は、1マイクロリットルから1ミリリットルの範囲に含まれることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項10】
前記流路に液体を導入する速度は、毎分1マイクロリットルから毎分1ミリリットルの範囲に含まれることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項11】
さらに、前記流路内の化学反応を検出するための光検出器を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の化学反応システム。
【請求項12】
前記検出器が光検出器であることを特徴とする請求項11に記載の化学反応システム。
【請求項13】
前記光検出器が、前記流路内の担体から発生した化学発光に伴う光を検出することを特徴とする請求項12に記載の化学反応システム。
【請求項14】
流路を有する微小空間において液体の化学反応を起こさせる化学反応方法であって、
少なくとも一部に複数の担体が配置された流路に、液体導入部を用いて、第1の液体を導入する第1の工程と、
液体導出部を用いて、前記流路から前記第1の液体を導出する第2の工程と、
残留液除去部を用いて、前記第2の工程後に前記流路に残留する液体を除去する第3の工程と、
前記第3の工程後に、前記液体導入部を用いて、前記第1の液体とは異なる第2の液体を前記流路に導入する第4の工程と、
を備えることを特徴とする化学反応方法。
【請求項15】
さらに、前記第4の工程後に、検出器を用いて、前記流路内の化学反応を検出する第5の工程を備えることを特徴とする請求項14に記載の化学反応方法。
【請求項16】
前記検出器は光検出器であって、前記第5の工程において前記流路内の担体から発生した化学発光に伴う光を検出することを特徴とする請求項15に記載の化学反応方法。
【請求項17】
請求項13に記載の化学反応システムを用いる、抗原抗体反応の判定方法であって、
抗原又は抗体を複数の担体に固定化する第1の工程と、
前記抗原又は抗体が固定化された前記複数の担体を流路に配列する第2の工程と、
前記複数の担体が配列された流路に血液サンプルを導入・導出する第3の工程と、
前記流路に2次抗体溶液を導入・導出する第4の工程と、
前記流路に洗浄液を導入・導出する第5の工程と、
前記流路に発光基質液を導入する第6の工程と、
前記光検出器により前記担体からの化学発光を検出する第7の工程と、
前記第4の工程及び前記第5の工程のいずれかの工程又は両方の工程の後に、前記流路に残留する液体を除去する工程と、
を備えることを特徴とする抗原抗体反応の判定方法。
【請求項18】
前記第1の工程の後に、前記流路に残留する液体を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項17記載の判定方法。
【請求項19】
前記第1の工程において前記複数の担体に固定化された抗原又は抗体がアレルゲンであって、アレルギー反応を判定することを特徴とする請求項17又は18記載の判定方法。
【図1(A)】
【図1(B)】
【図1(C)】
【図1(D)】
【図1(E)】
【図1(F)】
【図1(G)】
【図1(H)】
【図1(I)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1(B)】
【図1(C)】
【図1(D)】
【図1(E)】
【図1(F)】
【図1(G)】
【図1(H)】
【図1(I)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−66512(P2009−66512A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237092(P2007−237092)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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