説明

化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法

【課題】収率の高い化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーを重合開始剤を用いて重合させる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法において、2種以上の重合開始剤を用いる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法。2種以上の重合開始剤それぞれが、下式(1)または(2)で表される構造を有する前記記載の製造方法。


(Z1、Z2は電子吸引性基である。R1〜R6は直鎖または分枝の炭素数1〜10のアルキル基、環状構造を含む炭素数3〜10のアルキル基であり、R1とR2、R3とR4は結合して2価の飽和炭化水素基を形成してもよい。R1〜R6の水素原子は芳香環、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基で、−CH−はカルボニル基、カルボキシル基で置換されていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂は、放射線(紫外線、X線、電子線)の照射により酸に溶解可能となる性質を有する樹脂であり、放射線の照射により酸に溶解可能となる性質を有する樹脂と酸発生剤を含有してなる化学増幅型ポジ型レジストは、半導体の微細加工におけるリソグラフィプロセスにおいて用いられている。
【0003】
この化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造においては、メタアクリルモノマー(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルあるいは(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなど、放射線の照射により発生した酸により溶解可能となる性質を有する樹脂を与えるモノマーを、1種の重合開始剤を用いて重合して製造されていた。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の製造方法においては、収率が50%程度と十分ではなく、より収率の高い製造方法が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−137327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、収率の高い化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため、重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーを重合開始剤を用いて重合させる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法について鋭意検討した結果、重合開始剤を2種以上用いた場合に収率が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーを重合開始剤を用いて重合させる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法において、2種以上の重合開始剤を用いることを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、高い収率で化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法は、重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーを重合開始剤を用いて重合させる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法において、2種以上の重合開始剤を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明において用いられる重合開始剤は、公知のものであって、特に限定されるものではなく、重合開始剤の具体例として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素など無機過酸化物等が挙げられ、これらのうち2種類以上の開始剤を併用する。
【0012】
2種以上の重合開始剤のそれぞれが熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤は、一般的に下式(1)または(2)で表される構造を有する。


(式中、Z1およびZ2は互いに独立に電子吸引性基である。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立に直鎖または分枝の炭素数1〜10のアルキル基、あるいは環状構造を含む炭素数3〜10のアルキル基であり、R1とR2あるいはR3とR4は結合して2価の飽和炭化水素基を形成してもよい。R1、R2、R3、R4、R5およびR6における少なくとも1個の水素原子は、芳香環、水酸基、ハロゲン原子またはアミノ基で置換されていてもよく、少なくとも1個の−CH−は、カルボニル基またはカルボキシル基で置換されていてもよい。)
【0013】
1およびZ2としては、例えばシアノ基、エステル(−COOR’:R’は例えば炭素数1〜4のアルキル基など)などが挙げられる。
【0014】
1、R2、R3、R4、R5およびR6における炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができ、炭素数3〜10の環状構造を含むアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,2−ジメチルシクロヘキシル基、4,4−ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、3−メチルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等を挙げることができる。R1とR2あるいはR3とR4が結合して形成される2価の飽和炭化水素基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等を挙げることができる。
1、R2、R3、R4、R5およびR6における少なくとも1個の水素原子が置換されていてもよい芳香環としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、同ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0015】
重合開始剤の1種として、式(1)で示される化合物を含んでいることが好ましく、重合開始剤の2種以上が、いずれも式(1)で示される化合物であることがさらに好ましい。また、開始剤を2種使用する場合、そのモル比率は1:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0016】
また、式(1)で示される化合物としては、R1、R2、R3およびR4がいずれも直鎖または分岐した炭素数1〜6のアルキル基であり、かつZ1およびZ2がいずれもシアノ基であることが好ましい。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)及びジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)がより好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がさらに好ましい。また、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの組み合わせ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)との組み合わせ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)と1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)との組み合わせ、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)との組み合わせが特に好ましい。
【0017】
さらに、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール等の連鎖移動剤を併用することもできる。
【0018】
本発明の製造方法における重合としては、ラジカル重合、アニオン重合、配位重合などが挙げられるが、その中でもラジカル重合が好ましい。
重合によって得られる樹脂の重量平均分子量としては1000〜500000が挙げられ、好ましくは、4000〜50000である。
【0019】
本発明において用いることができるモノマーまたはオリゴマーは、重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与える。化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂(以下、単に「樹脂」ということがある。)は、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した該樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂となる。
【0020】
重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーが、オレフィン性二重結合を有するカルボン酸に3級アルコール残基が置換し酸の作用により解裂する基を有するエステル1種以上を含むものが好ましい。つまり、酸に不安定な基の1種であるカルボン酸エステル構造を−COORのRエステルとして例示すると((−COO−C(CH33)をtert−ブチルエステルという形式で呼ぶ。)、カルボキシル基の酸素側に結合する炭素原子が4級炭素原子であるアルキルエステル、イソボルニルエステル、1−アルキルシクロアルキルエステル、2−アルキル−2−アダマンチルエステル、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルエステルなどの脂環式エステルなどが挙げられる。
【0021】
このようなカルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明で用いられるモノマーまたはオリゴマーは、通常、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合とを有するモノマーまたはオリゴマーであり、付加重合により樹脂となる。
かかるモノマーとしては、酸に不安定な基として、2−アルキル−2−アダマンチル、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなどのような脂環式構造などの嵩高い基を含むモノマーが、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0023】
具体的な嵩高い基を含むモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−アルキル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、(メタ)アクリル酸1−(2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル)アルキル、(メタ)アクリル酸1−((1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルオキシカルボニル)アルキル、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなどが挙げられる。また、オリゴマーとしては、前記モノマーの1種以上が2〜10個程度結合したものが挙げられる。
とりわけ(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルや(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、(メタ)アクリル酸1−(2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル)アルキルをモノマーとして用いた場合は、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0024】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル、アクリル酸2−n−ブチル−2−アダマンチルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸1−(2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル)アルキルとしては、例えば、アクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチル、メタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチル、アクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチル、メタクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチル、アクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)エチル、メタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)エチル、アクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)エチル、メタクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)エチル、アクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)プロピル、メタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)プロピル、アクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)プロピル、メタクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)プロピル、アクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)ブチル、メタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)ブチル、アクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)ブチル、メタクリル酸1−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)ブチルなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル又はメタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチルを用いた場合、得られるレジストの感度が優れ耐熱性にも優れる傾向があることから好ましい。
【0026】
この(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは、通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0027】
本発明に用いられるモノマーまたはオリゴマーは、酸に不安定な基を有するモノマーまたはオリゴマーに加えて、酸に安定なモノマーまたはオリゴマーを含んでいてもよい。ここで、酸に安定なモノマーまたはオリゴマーとは、酸発生剤によって解裂しない構造を意味する。
【0028】
具体的には、アクリル酸やメタクリル酸のような遊離のカルボン酸基を有するモノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、2−ノルボルネン、(メタ)アクリロニトリル、カルボキシル基の酸素側に結合する炭素原子が2級炭素原子または3級炭素原子のアルキルエステルや1−アダマンチルエステルである(メタ)アクリル酸エステル類、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系のモノマー、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。尚、1−アダマンチルエステルは、カルボキシル基の酸素側に結合する炭素原子が4級炭素原子であるが、酸に安定な基であり、1−アダマンチルエステルには水酸基などが結合していてもよい。また、オリゴマーとしては、前記モノマーの1種以上が2〜10個程度結合したものが挙げられる。
【0029】
具体的な酸に安定なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、α−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、式(a)、(b)、(c)、ヒドロキシスチレン、ノルボルネン(d)などの分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物、無水マレイン酸(e)などの脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸(f)などが例示される。
【0030】
これらの中でも、特に、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系のモノマー、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、式(a)で示される構造単位を導くモノマー、式(b)で示される構造単位を導くモノマー及び式(c)で示される構造単位を導くモノマーから得られる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂は、基板への接着性及びレジストの解像性が向上する傾向にあることから好ましい。また、オリゴマーとしては、前記モノマーの1種以上が2〜10個程度結合したものが挙げられる。
【0031】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子を表し、pは、1〜3の整数を表す。pが複数のときには、R2は互いに異なる基であってもよい。X1は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。)
【0032】
(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルなどのモノマーは、市販されているが、例えば対応するヒドロキシアダマンタンを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。
【0033】
また、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンなどのモノマーは、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−もしくはβ−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−もしくはβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライドもしくはメタクリル酸ハライドを反応させることにより製造できる。
【0034】
式(a)、(b)、(c)で示される構造単位を与えるモノマーは、具体的には例えば、次のような水酸基を有する脂環式ラクトンの(メタ)アクリル酸エステル、それらの混合物等が挙げられる。これらのエステルは、例えば対応する水酸基を有する脂環式ラクトンと(メタ)アクリル酸類との反応により製造し得る(例えば、特開2000−26446号公報参照。)。
【0035】

【0036】
ここで、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0037】
化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を用いて製造される化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物がKrFエキシマレーザー露光用の場合は、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系のモノマーを用いても充分な透過率を得ることができる。このようなモノマーを共重合させて得られる樹脂は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン、及びスチレンをラジカル重合した後、酸によって脱アセチルすることによって得てもよい。
【0038】
また、2−ノルボルネンから導かれる構造単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環基を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。2−ノルボルネンは、重合の際に、例えば対応する2−ノルボルネンの他に無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、2−ノルボルネンから導かれる構造単位は、ノルボルネン構造の二重結合が開いて形成され、式(d)で表すことができ、無水マレイン酸及び無水イタコン酸から導かれる構造単位は、無水マレイン酸無水物及び無水イタコン酸無水物の二重結合が開いて形成され、それぞれ式(e)及び(f)で表すことができる。
【0039】

【0040】
ここで、式(d)中のR5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシル基、シアノ基もしくは−COOU基(Uはアルコール残基である)を表すか、あるいは、R5及びR6が、−C(=O)OC(=O)−で示されるカルボン酸無水物残基を表す。
5及び/又はR6が−COOU基である場合は、カルボキシル基がエステルとなったものであり、Uに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル基、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イル基などを挙げることができる。ここで、アルキル基の置換基として、水酸基や脂環式炭化水素残基などが結合していてもよい。
5及び/又はR6がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、水酸基が結合したアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0041】
式(d)で示されるノルボネン構造を導くモノマーの具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
2−ノルボルネン、
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0042】
なお、式(d)中のR5及び/又はR6の−COOU基のUについて、カルボキシル基の酸素側に結合する炭素原子が4級炭素原子である脂環式エステルなどの酸に不安定な基であれば、ノルボルネン構造を有するといえども、酸に不安定な基を有する構造単位である。ノルボルネン構造と酸に不安定な基を含むモノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが例示される。
【0043】
本発明の製造方法においては、パターニング露光用の放射線の種類や酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、通常、モノマーおよび/またはオリゴマーを重合して得られる樹脂における酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量を10〜80モル%の範囲に調整する。
【0044】
そして、酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位として特に、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルに由来する構造単位を含む場合は、該構造単位が樹脂を構成する全構造単位のうち15モル%以上となると、樹脂が脂環基を有するために頑丈な構造となり、与えるレジストのドライエッチング耐性の面で有利である。
【0045】
また、酸に不安定な基を有するモノマーに由来する構造単位に加えて、酸に安定なモノマーに由来する構造単位の樹脂における含有量としては、通常、樹脂に対して20〜90モル%の範囲である。
【0046】
なお、分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をモノマーとする場合には、これらは付加重合しにくい傾向があるので、この点を考慮し、これらは過剰に使用することが好ましい。
【0047】
さらに、用いられるモノマーとしてはオレフィン性二重結合が同じでも酸に不安定な基が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基が同じでもオレフィン性二重結合が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合との組合せが異なるモノマーを併用してもよい。
【0048】
本発明の製造方法において、重合に用いられる有機溶剤は、モノマーと開始剤、及び得られる共重合体のいずれも溶解できる溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン等の炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等が挙げられ、それぞれ単独でも良いし、2種類以上の溶剤を混合して用いても良い。
【0049】
本発明における樹脂の製造方法における反応温度は、0〜150℃の範囲であって、好ましくは40〜100℃の範囲である。
【0050】
本発明の製造方法としては特に制限はないが、ここではより好ましいラジカル重合について説明する。まず、1種類以上のモノマーまたはオリゴマーを有機溶剤に溶解させる。続いて2種類以上のラジカル重合開始剤を溶解させる。そして、得られた反応溶液を所定反応温度において保温しておくことにより、目的とする樹脂が得られる。溶媒量は、仕込みモノマーまたはオリゴマー量に対して1重量倍から5重量倍が好ましく、開始剤量については、仕込みモノマーまたはオリゴマー量に対して1から20モルパーセントが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を用いて化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物を製造する場合、化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物には、本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂とともに、酸発生剤を含有させる。
【0052】
該酸発生剤として、例えば、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化合物、スルホン化合物、スルホネート化合物などからなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられ、オニウム塩が好ましい。具体的には、次の化合物を挙げることができる。
【0053】
ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム パーフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフエート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム カンファースルホネート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
【0054】
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
【0055】
1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、1,2,3−ベンゼントリイル トリス(メタンスルホネート)、2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、ジフェニル ジスルホン、ジ−p−トリル ジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
【0056】
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、N−(10−カンフアースルホニルオキシ)ナフタルイミド、
【0057】
(5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−ブチルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−オクチルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(2,4,6−トリメチルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(4−ドデシルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(2−ナフチル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−ベンジルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、
【0058】
(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(メタンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(ベンゼンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(p−トルエンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(カンファースルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(トリイソプロピルベンゼンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロブタンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロオクタンスルホネート)、
【0059】
(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(トリフルオロ−N−〔(パーフルオロメチル)スルホニル〕スルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロ−N−〔(パーフルオロエチル)スルホニル〕−1−エタンスルホンアミデート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロ−N−〔(パーフルオロブチル)スルホニル〕−1−ブタンスルホンアミデート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(トリフルオロ−N−〔(パーフルオロブチル)スルホニル〕−1−ブタンスルホンアミデート)、
【0060】
(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(テトラフルオロボレート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(ヘキサフルオロアルセネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジフェニルスルホニウム ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジ(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジ(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム ビス(パーフルオロブタンスルホネート)、(オキシジ−4,1−フェニレン)ビスジ(p−トリル)スルホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホネート)、トリフェニルスルホニウム (アダマンタン−1−イルメチル)オキシカルボニルジフルオロメタンスルホネートなど。
【0061】
また、本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を用いて化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物を製造する場合、化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物には、本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂および酸発生剤とともに、塩基性化合物、好ましくは、塩基性含窒素有機化合物、とりわけ好ましくはアミン又はアンモニウム塩を含有させる。塩基性化合物をクエンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良することができる。クエンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。

【0062】

(XII)
【0063】
式中、T1、T2及びT7は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基の水素原子、シクロアルキル基の水素原子又はアリール基の水素原子は、それぞれ独立に、水酸基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましく、該アリール基は、炭素数6〜10程度が好ましい。但し、式(XII)におけるT1、T2及びT7は何れも水素原子ではない。
【0064】
3、T4及びT5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。該アルキル基の水素原子、シクロアルキル基の水素原子、アリール基の水素原子、又はアルコキシ基の水素原子は、それぞれ独立に、水酸基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基、で置換されていてもよい。該アミノ基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましく、該アリール基は、炭素数6〜10程度が好ましく、該アルコキシ基は、炭素数1〜6程度が好ましい。
【0065】
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。該アルキル基の水素原子又はシクロアルキル基の水素原子は、それぞれ独立に、水酸基、アミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましい。
【0066】
Aは、アルキレン基、カルボニル基、イミノ基、スルフィド基又はジスルフィド基を表す。該アルキレン基は、炭素数2〜6程度であることが好ましい。
【0067】
また、T1〜T7において、直鎖構造と分岐構造の両方をとり得るものについては、そのいずれでもよい。
【0068】
このような化合物として、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、1−又は2−ナフチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4′−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−イソプロピルアニリン、イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン、2,2′−ジピリジルアミン、ジ−2−ピリジルケトン、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジルオキシ)エタン、4,4′−ジピリジルスルフィド、4,4′−ジピリジルジスルフィド、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、2,2′−ジピコリルアミン、3,3′−ジピコリルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、及びコリンなどを挙げることができる。
【0069】
さらには、特開平11−52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物をクエンチャーとすることもできる。
【0070】
特に式(XII)で表される構造の化合物をクエンチャーとして用いると、解像度向上の点で好ましい。
具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラオクチルアンモニウムハイドロオキサイド、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、3−トリフルオロメチル−フェニルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0071】
本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を用いる化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物は、その全固形分量を基準に、通常は、本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を80〜99.9重量%程度、そして酸発生剤を0.1〜20重量%程度の範囲で含有させる。
【0072】
また、化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物としてクエンチャーである塩基性化合物を用いる場合は、化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物の全固形分量を基準に、通常は、0.01〜1重量%程度の範囲で含有させる。
【0073】
化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物としては、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有することもできる。
【0074】
本発明の製造方法により得られた化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を用いる化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物は、通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態で化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物とされ、シリコンウェハーなどの基体上に、スピンコーティングなどの常法に従って塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で一般に用いられている溶剤が使用しうる。
【0075】
例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0076】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例1
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルを9.70g、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルを7.10g、メタクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリルを5.11g仕込み(モル比 1.3:1:1)、全モノマーの1.49重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、72℃で約6時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約8200、分子量分布1.61の共重合体を収率72%で得た。
【0079】
実施例2
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルを9.70g、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルを7.10g、メタクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリルを5.11g仕込み(モル比 1.3:1:1)、全モノマーの2.6重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、72℃で約6時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約7200、分子量分布1.52の共重合体を収率65%で得た。
【0080】
比較例1
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルを9.70g、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルを7.10g、メタクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリルを5.11g仕込み(モル比 1.3:1:1)、全モノマーの2.6重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して3mol%添加し、72℃で約6時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約12900、分子量分布1.85の共重合体を収率46%で得た。
【0081】
比較例2
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルを15.0g、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルを7.14g、メタクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリルを5.14g仕込み(モル比 2:1:1)、全モノマーの2.6重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して2mol%添加し、87℃で約6時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約9400、分子量分布1.52の共重合体を収率47%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーを重合開始剤を用いて重合させる化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法において、2種以上の重合開始剤を用いることを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂の製造方法。
【請求項2】
2種以上の重合開始剤それぞれが、下式(1)または(2)で表される構造を有する請求項1に記載の製造方法。


(式中、Z1、Z2は互いに独立に電子吸引性基である。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立に直鎖または分枝の炭素数1〜10のアルキル基、あるいは環状構造を含む炭素数3〜10のアルキル基であり、R1とR2あるいはR3とR4は結合して2価の飽和炭化水素基を形成してもよい。R1、R2、R3、R4、R5およびR6における少なくとも1個の水素原子は、芳香環、水酸基、ハロゲン原子またはアミノ基で置換されていてもよく、少なくとも1個の−CH−は、カルボニル基またはカルボキシル基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
重合開始剤の少なくとも1種が、式(1)で表される化合物である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
2種以上の重合開始剤が、いずれも式(1)で表される化合物である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
重合により化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂を与えるモノマーまたはオリゴマーが、オレフィン性二重結合を有するカルボン酸に3級アルコール残基が置換し酸の作用により解裂する基を有するエステル1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
オレフィン性二重結合を有するカルボン酸に3級アルコール残基が置換し酸の作用により解裂する基を有するエステルが、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル及び(メタ)アクリル酸1−(2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル)アルキルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの製造方法により得られたことを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂。
【請求項8】
請求項7に記載の化学増幅型ポジ型レジスト用樹脂と酸発生剤と塩基性化合物とを含有してなることを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−119759(P2007−119759A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264175(P2006−264175)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】