説明

化学増幅型ポジ型レジスト組成物

【課題】接触角及び後退角に優れ、水接触時の、水へのレジスト組成物の溶出量が少ないレジスト膜を形成することができる化学増幅型ポジ型レジスト組成物の提供。
【解決手段】酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位を含有し、酸の作用によりアルカリ可溶性に変化する樹脂(A)、式(I)で表される構造単位及びフッ素含有構造単位を含有する樹脂(B)、並びに酸発生剤を含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物。


(式(I)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型ポジ型レジスト組成物は、半導体を微細加工するリソグラフィプロセスにおいて用いられている。
例えば、特許文献1及び2には、化学増幅型ポジ型レジスト組成物として、酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位、ヒドロキシル基を側鎖に有する構造単位、及びラクトン構造を側鎖に有する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含有する樹脂と、酸発生剤とを含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−296783号公報
【特許文献2】特開2003−215806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレジスト組成物では、レジスト膜を形成した際、レジスト膜表面における接触角及び後退角が必ずしも満足できるものではない場合や、水接触時に、レジスト膜からレジスト組成物が溶出してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、上記課題について検討した結果、接触角及び後退角に優れ、水接触時の、水へのレジスト組成物の溶出量が少ないレジスト膜を形成することができる化学増幅型ポジ型レジスト組成物を見出し、本発明に至った。
本発明は、酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位を含有し、酸の作用によりアルカリ可溶性に変化する樹脂(A)、
式(I)で表される構造単位及びフッ素含有構造単位を含有する樹脂(B)、並びに
酸発生剤を含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。

(式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。Zは、単結合又は−[CH2k−CO−X−基を表す。kは、1〜4の整数を表す。X、X、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜3の整数を表す。)
【0006】
また本発明は、フッ素含有構造単位が、式(VI)で表されるフッ素含有構造単位である上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0007】

【0008】
(式(VI)中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。ARは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子に置換されている。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、−NH−又は硫黄原子に置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルキル基に置換されていてもよい。)
【0009】
また本発明は、樹脂(A)が、式(III)で表される構造単位及び式(V)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位を含有する樹脂である上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0010】

【0011】
(式(III)中、R31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環状炭化水素基を表す。k31は、1〜4の整数を表す。)
(式(V)中、R41は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環式炭化水素基を表す。)
【0012】
また本発明は、樹脂(A):樹脂(B)の重量比が、100:0.1〜100:30である、上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0013】
また本発明は、酸発生剤が、式(VIII)で表される化合物である、上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0014】

【0015】
(式(VIII)中、R12は、炭素数1〜30の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基を表す。炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基又は酸素原子に置換されていてもよく、炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。A+は有機対イオンを表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)
【0016】
また本発明は、酸発生剤が、式(IX)又は式(X)で表される化合物である上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0017】

【0018】
(式(IX)及び式(X)中、環Xは、炭素数3〜30の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。Z’は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。A+、Y1及びY2は、上記と同じ意味を表す。)
【0019】
また本発明は、A+が、式(XIIe)で表されるカチオンである上記化学増幅型ポジ型レジスト組成物に関する。
【0020】

【0021】
(式(XIIe)中、P22〜P24は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。)
【発明の効果】
【0022】
本発明の化学増幅型ポジ型レジスト組成物によれば、接触角及び後退角に優れ、水接触時の、水へのレジスト組成物の溶出量が少ないレジスト膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の化学増幅型ポジ型レジスト組成物(以下「レジスト組成物」という場合がある)は、レジスト重合体として樹脂(A)と、添加剤としてフッ素含有重合体である樹脂(B)とを含有する。
【0024】
まず、樹脂(A)について説明する。
本発明のレジスト組成物が含有する樹脂(A)は、少なくとも、酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位を含有する。本明細書中、構造単位とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことをいう。
【0025】
本明細書中、酸に不安定な基とは、酸の作用により脱離し得る基をいう。具体的には、カルボン酸エステル構造(−COOY)におけるY基のことをいう。Y基は酸の作用により脱離し得る構造を有しており、これによってカルボン酸エステル構造(−COOY)はカルボキシル基(−COOH)に変化する。このため、酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位を含有する樹脂(A)は、酸の作用によりアルカリ可溶性に変化することができる。
酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位としては、式(IIa)又は(IIb)で表される構造単位が好ましい。
【0026】

【0027】
[式(IIa)及び式(IIb)中、R51は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。R52は、直鎖又は分岐の炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜8の環状のアルキル基を表す。R53は、メチル基を表す。nは、0〜14の整数を表す。R54及びR55は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を表す。あるいはR54とR55とで互いに結合して環を形成していてもよく、その場合には炭素数1〜8のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を表す。また、R54とR55とは結合してR54が結合する炭素原子とR55が結合する炭素原子同士の直接結合を表し、すなわち、R54が結合する炭素原子とR55が結合する炭素原子とが二重結合を形成してもよい。mは、1〜3の整数を表す。Zは、単結合又は−[CH2k5−COO−基を表す。kは、1〜4の整数を表す。]
【0028】
この構造単位においては、−COO−基に結合している脂環式基が酸に不安定な基であり、これが例えば露光により酸発生剤から発生する酸の作用によって容易に(メタ)アクリレート(アクリレートとメタクリレートとの総称をいう)部位から開裂することで、露光後のレジスト膜がアルカリ可溶性となる。式(IIa)又は(IIb)で表される構造単位のうち1種のみを使用してもよいし、これら構造単位のうち2種類以上を併用してもよい。
【0029】
51におけるハロゲン原子としては、フッ素原子等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。R51は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
52における直鎖状又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、環状の炭素数3〜8のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4,4−ジメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜8の環状のアルキル基であることが好ましい。
は0又は1の整数であることが好ましい。Zは、単結合又は−CH−COO−であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
炭素数1〜8のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基としては、エチレン基及びトリメチレン基等が挙げられる。
【0030】
式(IIa)で表される構造単位を導くモノマーとしては、例えば、以下のモノマーを挙げることができる。
【0031】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
式(IIb)で表される構造単位を導くモノマーとしては、例えば、以下のモノマーを挙げることができる。
【0037】

【0038】

【0039】
酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位のうち、特に、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、又は、(メタ)アクリル酸1−(2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル)アルキルに由来する構造単位は、樹脂(A)が頑丈な構造となり、レジスト組成物のドライエッチング耐性の面で有利であり好ましい。
【0040】
これらの中でも(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル又はメタクリル酸1−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)メチルに由来する構造単位は、得られるレジスト組成物の感度が優れ耐熱性にも優れる傾向があることからさらに好ましい。
【0041】
酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位としては、式(IIc)又は(IId)で表される構造単位を用いることもできる。
【0042】

【0043】
[式(IIc)及び式(IId)中、R61及びR71は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。R63及びR73は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。R62及びR72は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表す。pは、0〜10の整数である。pが2以上のときは、複数のR62は、互いに同一でも異なってもよい。pは、0〜8の整数である。pが2以上のときは、複数のR72は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0044】
61及びR71としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。
式(IIc)及び式(IId)において、R62及びR72で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0045】
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。
【0046】
63及びR73における炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。R63及びR73が直鎖又は分岐の炭素数3〜5のアルキル基の場合、式(IIc)及び式(IId)で表される構造単位に導くモノマーとして、具体的には下記のようなモノマーが挙げられる。
【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】
前記樹脂(A)を構成する全構造単位のうち酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位の占める割合は、パターニング露光用の放射線の種類や酸に不安定な基の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、10〜80モル%の範囲にあってよい。特に、レジスト組成物のドライエッチング耐性の面で有利になるので、前記割合は15〜70モル%が好ましい。
【0054】
樹脂(A)は、式(III)で表される構造単位及び式(V)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位をさらに含有する樹脂であることが好ましい。
【0055】

【0056】
(式(III)中、R31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環状炭化水素基を表す。k31は、1〜4の整数を表す。)
【0057】
31としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。
エステル結合を含む前記環状炭化水素基はラクトン構造を含むものであれば特に限定されない。前記環状炭化水素基の炭素数はエステル結合中の炭素原子を含む。前記環状炭化水素基は単環式であってもよいし、多環式であってもよい。当該環状炭化水素基に含まれる水素原子は、カルボキシル基、シアノ基又は炭素数1〜4程度の炭化水素基に置換されていてもよい。式(III)で表される構造単位としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
式(III)で表される構造単位としては、式(IIIa)、式(IIIb)又は式(IIIc)で表される構造単位が好ましい。
【0059】

【0060】
[式(IIIa)、式(IIIb)及び式(IIIc)中、R31は、上記と同じ意味を表す。
32は、メチル基を表す。
lは、0〜5の整数を表す。lが2以上のとき、複数のR32は、互いに同一でも異なってもよい。
33及びR34は、それぞれ独立に、カルボキシル基、シアノ基又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。
l’は、0〜9の整数を表す。l’が2以上のとき、複数のR33及びR34は、互いに同一でも異なってもよい。
31は、1〜4の整数を表す。]
【0061】
式(IIIa)、式(IIIb)又は式(IIIc)で表される構造単位のうち1種のみを使用してもよいし、これら構造単位のうち2種以上を併用してもよい。
【0062】
式(IIIa)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0063】

【0064】
式(IIIb)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0065】

【0066】
式(IIIc)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0067】

【0068】
式(IIIa)、式(IIIb)又は式(IIIc)で表される構造単位としては、l=0、l’=0の場合が好ましく、なかでも、(メタ)アクリル酸2−(5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチルから導かれる構造単位は、リソグラフィプロセス後のレジストパターン形状が良好であるレジスト組成物を与えることからさらに好ましい。
【0069】
前記樹脂(A)を構成する全構造単位のうち式(III)で表される構造単位の占める割合は、当該構造単位の種類や、パターニング露光用の放射線の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、5〜80モル%の範囲にあってよい。好ましくは10〜60モル%である。
【0070】

【0071】
(式(V)中、R41は、水素原子又はメチル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環式炭化水素基を表す。)
【0072】
41としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。
エステル結合を含む前記環状炭化水素基はラクトン構造を含むものであれば特に限定されない。前記環状炭化水素基の炭素数はエステル結合中の炭素原子を含む。前記環状炭化水素基は単環式であってもよいし、多環式であってもよい。当該環状炭化水素基に含まれる水素原子は、カルボキシル基、シアノ基又は炭素数1〜4程度の炭化水素基に置換されていてもよい。式(V)で表される構造単位としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
式(V)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0074】

【0075】

【0076】

【0077】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸ヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、又は、(メタ)アクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリルから導かれる構造単位は、レジストの基板への接着性が向上する傾向にあることから好ましい。
【0078】
前記樹脂(A)を構成する全構造単位のうち式(V)で表される構造単位の占める割合は、当該構造単位の構造や、パターニング露光用の放射線の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、5〜80モル%の範囲にあってよい。好ましくは10〜60モル%である。例えば、5〜80モル%の範囲にあってよい。好ましくは10〜35モル%である。
【0079】
本発明のレジスト組成物で使用する樹脂(A)は、前述した3種類の構造単位に加えて、式(IV)で表される構造単位をさらに含有するものがより好ましい。
【0080】

【0081】
[式(IV)中、R81は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。R82及びR83は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシル基を表す。R84は、メチル基を表す。nは、0〜12の整数を表す。Zは、単結合又は−[CH2k8−COO−基を表す。kは、1〜4の整数を表す。]
【0082】
81としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。
このような構造単位としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
式(IV)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0083】

【0084】

【0085】
これらの中でも、R82及びR83が、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロキシル基であり、n=0であるものが好ましい。特に、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸1−(3−ヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニル)メチル、メタクリル酸1−(3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニル)メチルから導かれる構造単位は、優れた解像度を示すレジスト組成物を与えることからさらに好ましい。
【0086】
前記樹脂(A)を構成する全構造単位のうち式(IV)で表される構造単位の占める割合は、当該構造単位の種類や、パターニング露光用の放射線の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、0〜40モル%の範囲にあってよい。好ましくは5〜35モル%である。
【0087】
また、樹脂(A)は、2−ノルボルネンから導かれる構造単位を含むことができる。このような構造単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環基を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。2−ノルボルネンは、重合の際に、例えば、対応する2−ノルボルネンの他に、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、2−ノルボルネンから導かれる構造単位は、ノルボルネン構造の二重結合が開いて形成され、式(d)で表すことができ、無水マレイン酸及び無水イタコン酸から導かれる構造単位は、無水マレイン酸及び無水イタコン酸の二重結合が開いて形成され、それぞれ式(e)及び(f)で表すことができる。
【0088】

【0089】
ここで、式(d)中のR91及びR92はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ヒドロキシル基もしくは−COOU(Uはアルコール残基である)を表すか、あるいは、R91及びR92が、−C(=O)OC(=O)−で表されるカルボン酸無水物残基を表す。
【0090】
前記−COOUは、カルボキシル基がエステルとなったものであり、Uに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル基、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イル基などを挙げることができる。ここで、アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基や脂環式炭化水素残基などに置換されていてもよい。
【0091】
91及び/又はR92がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、ヒドロキシル基が結合したアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0092】
式(d)で表されるノルボネン構造を導くモノマーの具体例としては、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
2−ノルボルネン、
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0093】
なお、式(d)中の前記−COOUのUについて、カルボキシル基の酸素側に結合する炭素原子が4級炭素原子である脂環式エステルなどの酸に不安定な基であれば、ノルボルネン構造を有するといえども、前述した酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位に該当する。ノルボルネン構造と酸に不安定な基を含むモノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが挙げられる。
【0094】
樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、通常、重量平均分子量で1,000〜500,000程度であり、好ましくは、4,000〜50,000である。
【0095】
次に樹脂(B)について説明する。
本発明のレジスト組成物が含有する樹脂(B)は、式(I)で表される構造単位及びフッ素含有構造単位を含有する。
【0096】

【0097】
(式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。Zは、単結合又は−[CH2k−CO−X−基を表す。kは、1〜4の整数を表す。X、X、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜3の整数を表す。)
【0098】
としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
Zは、単結合であることが好ましい。
、X及びXは酸素原子、Xは硫黄原子であることが好ましい。
mは、1であることが好ましい。
nは、0〜2の整数であることが好ましい。
【0099】
式(I)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、例えば、以下のモノマーを挙げることができる。
【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】
樹脂(B)を構成する全構造単位のうち式(I)で表される構造単位の占める割合は、パターニング露光用の放射線の種類や他の構造単位の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、5〜95モル%、好ましくは10〜70モル%である。
【0107】
樹脂(B)は、フッ素含有構造単位として式(VI)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0108】

【0109】
(式(VI)中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。ARは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子に置換されている。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、−NH−又は硫黄原子に置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルキル基に置換されていてもよい。)
【0110】
21としては、R51におけるものと同じものが挙げられる。
このような構造単位としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
式(VI)で表される構造単位としては、例えば式(VII)で表される構造単位を挙げることができる。
【0111】

【0112】
(式(VII)中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。)
当該構造単位中のシクロヘキシル基には2個の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル基が結合しているが、その結合位置は特に限定されない。式(VII)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、例えば、以下のモノマーを挙げることができる。
【0113】

【0114】
式(VI)で表される構造単位を導くモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0115】

【0116】

【0117】
式(VI)で表される構造単位としては、ARが1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された単環又は多環式炭化水素基を表す構造単位が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸5−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸6−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸4,4−ビス(トリフルオロメチル)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0.02,5]ノニルから導かれる構造単位は、優れた解像度を示すレジスト組成物を与えることからさらに好ましい。
【0118】
樹脂(B)を構成する全構造単位のうち式(VI)で表される構造単位の占める割合は、パターニング露光用の放射線の種類や他の構造単位の種類等によって変動し、特に限定されないが、例えば、5〜90モル%の範囲にあってよい。好ましくは10〜70モル%である。
【0119】
樹脂(B)は、上述した式(III)で表される構造単位及び上述した式(V)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位を含有することが好ましい。これらの構造単位は1種のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0120】
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、通常、重量平均分子量で1,000〜500,000程度であり、好ましくは、4,000〜50,000である。
【0121】
本発明で使用する各樹脂を製造する方法としては特に制限はなく、各種重合方法を使用することができるが、なかでもラジカル重合法が好ましい。このラジカル重合法について具体的に説明すると、まず、有機溶剤に、重合させる各モノマーと、ラジカル重合開始剤を順次添加し、溶解させた後、反応液を所定の反応温度で保温することにより、目的の樹脂を得る。
【0122】
前記重合法で使用する有機溶剤は特に限定されないが、モノマー、重合開始剤、及び得られる樹脂のいずれも溶解できる溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン等の炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独でも用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0123】
前記重合開始剤は特に限定されず、公知の化合物を使用できる。具体的には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの無機過酸化物等が挙げられる。
【0124】
ラジカル重合の反応温度は、通常、0〜150℃の範囲であり、好ましくは40〜100℃の範囲である。有機溶媒の使用量は、仕込みモノマー総量に対して1〜5重量倍が好ましく、重合開始剤の使用量は、仕込みモノマー総量に対して1〜20モル%が好ましい。
【0125】
本発明のレジスト組成物において、樹脂(A)と樹脂(B)との重量比は、現像処理後のレジスト膜の残膜率の観点から、100:0.1〜100:30であることが好ましい。より好ましくは100:1〜100:10である。
上記のような樹脂を含むレジスト組成物によれば、接触角及び後退角に優れ、水接触時の、水へのレジスト組成物の溶出量が少ないレジスト膜を形成することができ、また、現像残渣の発生が少ないパターンを形成することができる。
【0126】
本発明のレジスト組成物は、以上で詳述した樹脂に加えて、酸発生剤を含有する。
【0127】
酸発生剤は、その物質自体に、あるいはその物質を含むポジ型レジスト組成物に、熱又は光や電子線などの放射線を作用させることにより、その物質が分解して酸を発生する。酸発生剤から発生する酸が前記樹脂(A)に作用して、酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位中の酸に不安定な基を当該構造単位から開裂させることになる。
【0128】
酸発生剤としては、オニウム塩、有機ハロゲン化合物、スルホン化合物、スルホネート化合物が挙げられ、オニウム塩であることが好ましい。酸発生剤としては、例えば、特開第2003−5374号公報に記載されている酸発生剤が挙げられる。
本発明に用いる酸発生剤として、下式(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【0129】

【0130】
(式(VIII)中、R12は、炭素数1〜30の直鎖状、分枝状又は、環状の炭化水素基を表す。前記炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基又は酸素原子に置換されていてもよく、前記炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。A+は有機対イオンを表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)
【0131】
式(VIII)で表される化合物のアニオン部分の具体例としては、以下のアニオンが挙げられる。
【0132】

【0133】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】
本発明に用いる好ましい酸発生剤としては、下式(IX)または式(X)で表される化合物が挙げられる。
【0162】
式(IX)及び式(X)中、環Xは、炭素数3〜30の単環式又は多環式炭化水素基を表す。A+は有機対イオンを表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。環Xに含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。Z’は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。
【0163】
前記環Xとしては、例えば、炭素数4〜8のシクロアルキル骨格、アダマンチル骨格、ノルボルナン骨格などが挙げられる。いずれの骨格も、含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。
【0164】
式(IX)及び式(X)で表される酸発生剤のアニオン部分の具体例としては、以下のアニオンが挙げられる。
【0165】

【0166】

【0167】

【0168】
また、本発明に用いる酸発生剤として、下式(XI)で表される化合物が挙げられる。
+−S−R13 (XI)
式(XI)中、R13は炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキル基を表し、A+は有機対イオンを表す。
【0169】
式(XI)のアニオン部分の具体的な例としては、次のようなイオンを挙げることができる。
トリフルオロメタンスルホネート、
ペンタフルオロエタンスルホネート、
ヘプタフルオロプロパンスルホネート、
パーフルオロブタンスルホネートなど。
【0170】
式(VIII)、(IX)、(X)又は(XI)において、A+は、有機対イオンを表し、具体的には、以下に示す式(XIIz)、式(XIIb)、式(XIIc)又は式(XIId)で表されるカチオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンが挙げられる。
ここで、式(XIIz)は、下記式である。
【0171】

【0172】
式(XIIz)中、Pa〜Pcは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜30の炭化水素基を表す。該炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜12の環式炭化水素基に置換されていてもよい。
式(XIIz)で表されるカチオンの中でも、式(XIIa)で表されるカチオンが好ましい。
【0173】

【0174】
式(XIIa)中、P1〜P3は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。)
該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、該アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などが挙げられる。
式(XIIb)は、ヨウ素カチオンを含む下記式である。
【0175】

【0176】
式(XIIb)中、P4、P5は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、式(XIIa)のアルキル基及びアルコキシ基と同じ意味を表す。
式(XIIc)は、下記式である。
【0177】

【0178】
式(XIIc)中、P6、P7は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。該シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などが挙げられる。また、P6とP7とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基を形成してもよい。P8は、水素原子を表し、P9は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換されていてもよい芳香環基(例えば、フェニル基、ベンジル基など)を表すか、あるいは、P8とP9とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基を表す。P9を表すアルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。前記シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などが挙げられる。前記2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、いずれも、カルボニル基、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。
式(XIId)は、下記式である。
【0179】

【0180】
式(XIId)中、P10〜P21は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。該アルキル基及び該アルコキシ基は、式(XIIa)のアルキル基及びアルコキシ基と同じ意味を表す。
Bは、硫黄原子又は酸素原子を表す。mは、0又は1を表す。
式(XIIz)で表されるカチオンA+の具体例としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0181】

【0182】

【0183】
式(XIIb)で表されるカチオンA+の具体例としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0184】

【0185】
式(XIIc)で表されるカチオンA+の具体例としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0186】

【0187】

【0188】

【0189】
式(XIId)で表されるカチオンA+の具体例としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0190】

【0191】

【0192】

【0193】
+は、式(XIIe)で表されるカチオンが好ましい。
【0194】

【0195】
式(XIIe)中、P22〜P24は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、該アルキル基及び該アルコキシ基は、直鎖でも分岐していてもよい。
本発明のレジスト組成物において、酸発生剤は単独で用いても複数種を併用してもよい。
本発明で用いる酸発生剤のなかでも、前述の式(IX)又は(X)で表される酸発生剤が好ましく、さらに、下記の式(XIIIa)〜(XIIIe)で表される酸発生剤が、優れた解像度及びパターン形状を示すレジスト組成物を与えることからより好ましい。
【0196】

【0197】
式(XIIIa)〜(XIIIe)中、P25〜P27は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。P28、P29は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。あるいは、P28とP29とが結合して、アルキレン基などの炭素数3〜12の2価の炭化水素基を形成してもよい。P30は、水素原子を表し、P31は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換されていてもよい芳香環基を表すか、あるいはP30とP31が結合して炭素数3〜12の2価の炭化水素基を表す。ここで、2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。Y11、Y12、Y21、Y22、Y31、又はY32は、それぞれ独立に、フッ素原子、又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
【0198】
式(IX)または式(X)で表される酸発生剤は公知の手法により容易に合成できる(例えば、特開2007−249192号公報を参照)。
【0199】
本発明のレジスト組成物には、前述した樹脂及び酸発生剤とともに、塩基性化合物を配合することが好ましい。当該塩基性化合物をクエンチャーとして作用し、この配合により、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良することができる。塩基性化合物としては、塩基性含窒素有機化合物が好ましく、アミン又はアンモニウム塩がより好ましい。
クエンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で表される化合物が挙げられる。
【0200】

【0201】

【0202】
式中、T1、T2及びT7は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されていてもよい。該アミノ基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基に置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましく、該アリール基は、炭素数6〜10程度が好ましい。
【0203】
3、T4及びT5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されていてもよい。該アミノ基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基に置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましく、該アリールは、炭素数6〜10程度が好ましく、該アルコキシ基は、炭素数1〜6程度が好ましい。
【0204】
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。該アルキル基及びシクロアルキル基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されていてもよい。該アミノ基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基に置換されていてもよい。また、該アルキル基は、炭素数1〜6程度が好ましく、該シクロアルキル基は、炭素数5〜10程度が好ましい。
【0205】
Aは、アルキレン基、カルボニル基、イミノ基、スルフィド基又はジスルフィド基を表す。該アルキレンは、炭素数2〜6程度であることが好ましい。
また、T1〜T7において、直鎖構造と分岐構造の両方をとり得るものについては、そのいずれでもよい。
【0206】
前記塩基性化合物として、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、1−又は2−ナフチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン、2,2’−ジピリジルアミン、ジ−2−ピリジルケトン、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジルオキシ)エタン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、2,2’−ジピコリルアミン、3,3’−ジピコリルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンなどを挙げることができる。また、特開平11−52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物も使用できる。
【0207】
本発明で使用する塩基性化合物としては、式(XIV)で表される化合物が解像度向上の点で好ましい。式(XIV)で表される化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラオクチルアンモニウムハイドロオキサイド、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、3−トリフルオロメチル−フェニルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0208】
本発明のレジスト組成物においては、その全固形分量を基準に、通常、本発明の樹脂を80〜99.9重量%程度の範囲で、酸発生剤を0.1〜40重量%程度の範囲で配合すればよい。クエンチャーである塩基性化合物を配合する場合、前記組成物の全固形分量を基準に、通常、0.01〜5重量%程度の範囲で配合すればよい。
【0209】
本発明のレジスト組成物は、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など各種の添加物を少量含有することもできる。
【0210】
本発明のレジスト組成物は、通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態で、シリコンウェハなどの基体上に、スピンコーティングなどの通常工業的に用いられる方法に従って塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で一般に用いられている溶剤が使用しうる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、シクロヘキサノン等のケトン類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0211】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種アルカリ性水溶液であればよく、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0212】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。尚、測定条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0213】
合成例1
[樹脂A1の合成]
モノマーAを15.00g、モノマーBを4.89g、モノマーCを8.82g、モノマーDを8.81g仕込み(モル比 35:12:23:30)、全モノマー量の1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、77℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い精製した。その結果、重量平均分子量が約8100の共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0214】

合成例2
[樹脂A2の合成]
モノマーAを9.70g、モノマーBを7.10g、モノマーDを5.11g仕込み(モル比 40:30:30)、全モノマーの1.5重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、72℃で約6時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い精製した。その結果、重量平均分子量が約8200の共重合体を収率72%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。

合成例3
[樹脂B1の合成]
モノマーEを7.90g、モノマーFを15.21g仕込み(モル比 50:50)、全モノマーの1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1.5mol%、4.5mol%添加し、75℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させた。その沈殿物を大量のメタノールと水の混合溶媒で洗浄する動作を3回行い精製した結果、重量平均分子量が約9300の共重合体を収率75%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂B1とする。

合成例4
[樹脂B2の合成]
モノマーEを7.00g、モノマーFを8.98g仕込み(モル比 60:40)、全モノマーの1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1.5mol%、4.5mol%添加し、75℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させた。その沈殿物を大量のメタノールと水の混合溶媒で洗浄する動作を3回行い精製した結果、重量平均分子量が約11500の共重合体を収率72%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂B2とする。

合成例5
[樹脂B3の合成]
モノマーEを8.00g、モノマーFを6.60g仕込み(モル比 70:30)、全モノマーの1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1.5mol%、4.5mol%添加し、75℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させた。その沈殿物を大量のメタノールと水の混合溶媒で洗浄する動作を3回行い精製した結果、重量平均分子量が約12900の共重合体を収率85%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂B3とする。

合成例6
[樹脂B4の合成]
モノマーEを7.00g、モノマーFを9.80g、モノマーGを1.69g仕込み(モル比 55:40:5)、全モノマーの1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、70℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させた。その沈殿物を大量のメタノールと水の混合溶媒で洗浄する動作を3回行い精製した結果、重量平均分子量が約17700の共重合体を収率63%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂B4とする。

合成例7
[樹脂A3の合成]
モノマーBを2.89g、モノマーCを9.53g、モノマーDを10.77g、モノマーHを15.00g、モノマーIを5.61g仕込み(モル比 6:21:31:28:14)、全モノマー量の1.5重量倍の1,4−ジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%、3mol%添加し、73℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させ、その沈殿物を大量のメタノールで洗浄する動作を3回行い精製した。その結果、重量平均分子量が約7800の共重合体を収率85%で得た。この共重合体は、次式の各構造単位を有するものであり、これを樹脂A3とする。

【0215】
実施例1〜10及び比較例1〜4
表1〜4及び以下に示す各成分を記載された比率で混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
<酸発生剤>
酸発生剤C1:

酸発生剤C2:

酸発生剤C3:

<クエンチャー>
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 140部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20部
2−ヘプタノン 35部
γ−ブチロラクトン 3部
【0216】
シリコンウェハー上に、上記の化合物を表1の量で混合したレジスト液を乾燥後の膜厚が0.15μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、ベーク温度を100℃で60秒間プリベークした。こうしてウェハー上に形成したレジスト膜について、未露光処理の状態で後退角及び接触角の測定を行なった。
【0217】
以下に、接触角及び後退角の測定実験の手順を示す。
協和界面科学製のDrop Master−700を用いて、接触角及び後退角を測定した。接触角は液滴法で1マイクロリットルの水を用いて滴下後0.1秒後に測定した。後退角は傾斜法で50マイクロリットルの水を用いて、段階傾斜モードで測定した。結果を表2に示す。
【0218】
【表1】

【0219】
【表2】

【0220】
実施例1〜6では、比較例1に比べて後退角及び接触角が高く良好な結果であった。実施例1〜3の結果を比較すると樹脂(B)の割合が多い方がより後退角及び接触角が高く、より良好な結果であった。
実施例7では、比較例2に比べて後退角及び接触角が高く良好な結果であった。
実施例8では、比較例3に比べて後退角及び接触角が高く良好な結果であった。
実施例9では、比較例4に比べて後退角及び接触角が高く良好な結果であった。
実施例1〜9のいずれも比較例1〜4に比べて、後退角及び接触角が高く良好な結果であった。
【0221】
シリコンウェハー上に、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.15μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、ベーク温度を100℃で60秒間プリベークした。こうしてウェハー上に形成した未露光処理の状態のレジスト膜について、水接触時における水への溶出物の定量実験を行った。結果を表3に示す。
【0222】
以下に、レジスト膜から水への溶出物の溶出量の定量実験の手順を示す。
ウェハー上に形成したレジスト膜に超純水を20mL盛り、60秒(レジスト膜が超純水に浸漬された浸漬時間)後に水(超純水)をサンプリングした。サンプリングされた水を、LC−MS法(液体クロマトグラム−マススペクトル法)により定量分析し、酸発生剤由来のアニオン種とカチオン種の溶出量を測定した。
【0223】
上記条件にて各レジストに含有される酸発生剤のカチオン種及びアニオン種の検出強度を測定した。表3に記載の測定結果は、単位 [×10−12mol/cm]で表される。
【0224】
【表3】

【0225】
実施例1〜6では、比較例1に比べてレジスト膜から抽出水へのアニオン種及びカチオン種の溶出量が小さく良好な結果であった。実施例1〜3の結果を比較すると樹脂(B)の割合が多い方がより溶出量が小さく、より良好な結果であった。
実施例7では、比較例2に比べてレジスト膜から抽出水へのアニオン種及びカチオン種の溶出量が小さく良好な結果であった。
実施例8では、比較例3に比べてレジスト膜から抽出水へのアニオン種及びカチオン種の溶出量が小さく良好な結果であった。
実施例9では、比較例4に比べてレジスト膜から抽出水へのアニオン種及びカチオン種の溶出量が小さく良好な結果であった。
実施例1〜9のいずれも比較例1〜4に比べて、レジスト膜から抽出水へのアニオン種及びカチオン種の溶出量が小さく良好な結果であった。
【0226】
シリコンウェハーに、有機反射防止膜用組成物[ARC−29A−8;日産化学工業(株)製]を塗布して205℃、60秒の条件でベークすることによって厚さ780Åの有機反射防止膜を形成させ、次いでこの上に、上記の化学増幅型フォトレジスト組成物を乾燥後の膜厚が0.08μmとなるようにスピンコートした。化学増幅型フォトレジスト組成物液塗布後は、プロキシミティホットプレート上にて、80℃で60秒間プリベークした。こうして化学増幅型フォトレジスト組成物膜を形成したそれぞれのウェハーに、ArFエキシマステッパー〔FPA−5000AS3;キヤノン(株)製;NA=0.75、3/4Annular〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後は、ホットプレート上にて85℃で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で15秒間の現像を行った。
有機反射防止膜基板上のもので現像後のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、現像残渣の有無を確認した。その結果を表4に示した。
【0227】
現像残渣の有無:走査型電子顕微鏡で観察した際に、ラインアンドスペースパターン上に残渣が確認されたものを「×」とし、残渣が確認されなかったものを「○」と表した。「○」であれば、現像残渣がなく良好な結果としている。
【0228】
【表4】

【0229】
実施例10では、現像残渣が確認されず良好な結果であった。
【0230】
(実施例11)
<レジスト組成物Aの調整>
[合成例8 樹脂2の合成]
温度計、還流管を装着した4つ口フラスコに1,4−ジオキサン27.78部を仕込み、窒素ガスで30分間バブリングを行った。その後、窒素シール下で73℃まで昇温した後、上記の図で示されるモノマーa 15.00部、モノマーb 5.61部、モノマーc 2.89部、モノマーd 12.02部、モノマーe 10.77部、アゾビスイソブチロニトリル0.34部、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.52部、1,4−ジオキサン63.85部を混合した溶液を、73℃を保ったまま2時間かけて滴下した。滴下終了後73℃で5時間保温した。冷却後、その反応液を1,4−ジオキサン50.92部で希釈した。この希釈したマスを、メタノール481部、イオン交換水120部の混合液中へ攪拌しながら注ぎ、析出した樹脂を濾取した。濾物をメタノール301部の液に投入し攪拌後濾過を行った。得られた濾過物を同様の液に投入、攪拌、濾過の操作を、更に2回行った。その後減圧乾燥を行い37.0部の樹脂を得た。収率:80%、Mw:7883、Mw/Mn:1.96。

【0231】
光酸発生剤合成例:4−(N,N−ジエチルアミノカルボキシ)フェニルジフェニルススルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネートの合成

【0232】
反応フラスコ内で、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート30gをジクロロメタン300gに溶解し、窒素を流し、窒素置換を行った。そして、N,N−ジエチルカルバモイルクロライド17.9g加え、続いて、トリエチルアミン10.5gを加えて、室温で1時間攪拌した。
次いで、イオン交換水100gを加え、この混合溶液を分液漏斗に移して振とうさせ、静置した後、水層を除去した。さらに、蒸留水300mlを加えて振とうさせ、静置した後、水層を除去した。残ったジクロロメタン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した。その後、エバポレーターを用いて乾燥後の前記ジクロロメタン溶液からジクロロメタンを留去し、得られた液体を減圧乾燥することにより、4−(N,N−ジエチルアミノカルボキシ)フェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート26.7gを得た。
【0233】
樹脂2 10部、4−(N,N−ジエチルアミノカルボキシ)フェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート 1.5部、下記式で表される2,6−ジイソプロピルアニリン 0.105部を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物Aを調製した。
【0234】

実施例1と同様にして第1のパターンを形成する。その後、ハードベークを行う。
【0235】
続いて、得られた第1のラインアンドスペースパターン上に、第2のレジスト液として、レジスト組成物Aを溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル 255部、2−ヘプタノン 35部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20部、γ−ブチロラクトン 3部)に溶解したレジスト液を塗布する。第2のレジスト液塗布後、ホットプレート上にてプリベークする。
【0236】
このようにして得られる第2のレジスト膜を、ArFエキシマステッパーを用い、第1のラインアンドスペースパターン間に第1のラインアンドスペースパターンに対して平行に第2のラインアンドスペースパターンを露光する。
露光後、ホットプレート上にてポストエキスポジャーベークを行う。さらに、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行い、第1のラインアンドスペースパターン間に第2のラインアンドスペースパターンを形成する。
(実施例12〜20)
実施例2〜10と同様にして第1のパターンを形成すること以外は、実施例11と同様にして、第1のラインアンドスペースパターン間に第2のラインアンドスペースパターンを形成する。
(実施例21〜40)
モノマーEをモノマーE’に変更し、合成例3〜6(樹脂B1〜B4)に準じて樹脂B5〜B8を合成する。樹脂B5〜B8を用いて、実施例1〜20に準じてパターンを形成する。
【0237】

【0238】

【産業上の利用可能性】
【0239】
本発明の化学増幅型ポジ型レジスト組成物によれば、接触角及び後退角に優れ、水接触時の、水へのレジスト組成物の溶出量が少ないレジスト膜を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸に不安定な基を側鎖に有する構造単位を含有し、酸の作用によりアルカリ可溶性に変化する樹脂(A)、
式(I)で表される構造単位及びフッ素含有構造単位を含有する樹脂(B)、並びに
酸発生剤を含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。Zは、単結合又は−[CH2k−CO−X−基を表す。kは、1〜4の整数を表す。X、X、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜3の整数を表す。)
【請求項2】
フッ素含有構造単位が、式(VI)で表されるフッ素含有構造単位である請求項1記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(VI)中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。ARは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子に置換されている。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、−NH−又は硫黄原子に置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルキル基に置換されていてもよい。)
【請求項3】
樹脂(A)が、式(III)で表される構造単位及び式(V)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位を含有する樹脂である請求項1又は2記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(III)中、R31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環状炭化水素基を表す。k31は、1〜4の整数を表す。)
(式(V)中、R41は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基を表す。環Xは、置換されていてもよい炭素数3〜30の環式炭化水素基を表す。)
【請求項4】
樹脂(A):樹脂(B)の重量比が、100:0.1〜100:30である、請求項1〜3のいずれか記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
酸発生剤が、式(VIII)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(VIII)中、R12は、炭素数1〜30の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基を表す。炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基又は酸素原子に置換されていてもよく、炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。A+は有機対イオンを表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)
【請求項6】
酸発生剤が、式(IX)又は式(X)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(IX)及び式(X)中、環Xは、炭素数3〜30の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基又はシアノ基に置換されていてもよい。Z’は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。A+、Y1及びY2は、上記と同じ意味を表す。)
【請求項7】
+が、式(XIIe)で表されるカチオンである請求項5又は6記載の化学増幅型ポジ型レジスト組成物。

(式(XIIe)中、P22〜P24は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。)

【公開番号】特開2010−61118(P2010−61118A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180394(P2009−180394)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】