説明

化学療法剤に対する応答を予測するための遺伝子発現マーカー

本発明は、癌の予後予測においてその発現が重要である遺伝子のセットを提供する。特に、本発明は、癌患者が化学療法に対して有益な処置応答を有する可能性が高いか否かを予測するために有用な遺伝子発現情報を提供する。本発明は、複数遺伝子RNA分析を用いる、化学療法に対する患者の応答を予測する、臨床的に検証された癌、例えば乳癌の試験を提供する。本発明は、関連の遺伝子セットにおける全てのマーカーのアッセイのための、保管されたパラフィン包埋生検材料の使用に適合し、従って、最も広く利用可能なタイプの生検材料と適合性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌の予後(prognosis)においてその発現が重要である遺伝子のセットを提供する。詳細には、本発明は、癌患者が化学療法に対して有益な処置応答を有する可能性が高いか否かを予測するために有用な遺伝子発現情報を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
腫瘍学者は、彼らにとって利用可能な多数の処置選択肢を有しており、それには「標準医療(standard of care)」として特徴付けられる化学療法薬物および特定の癌について表示された効能を持たないが、その癌において明らかな有効性が存在する多数の薬物の種々の組み合わせが挙げられる。良好な処置転帰の見込みを最も高くするには、患者が利用可能な最適の癌処置に割り当てられること、およびこの割り当てが診断後できるだけ迅速に行われることが必要である。詳細には、「標準医療」化学療法に対する患者の応答の可能性を決定することが重要である。なぜなら、アントラサイクリンおよびタキサンのような化学療法薬物は、有効性が限られており、毒性であるからである。従って、応答する可能性が最大であるかまたは最小である患者の特定によって、これらの薬物が提供すべき正味の利点が増大され、さらに理にかなった患者選択によって、正味の罹患率および毒性が減少される。
【0003】
現在のところ、臨床診療に用いられる診断試験は、単独の分析物であり、従って、多数の種々のマーカーの間の既知の関係の潜在的価値をとらえない。さらに、診断試験はしばしば、免疫組織化学のせいで定量的ではない。この方法はしばしば異なる実験室で異なる結果を生じる。その理由の一部は、この試薬が標準化されていないことであり、そしてその理由の一部は、解釈が主観的であって、容易に定量できないことである。RNAに基づく試験はしばしば、経時的なRNA分解の問題、そして分析用に患者から新鮮な組織サンプルを得ることが困難であるという事実のせいで用いられてきていない。固定されたパラフィン包埋組織は、より容易に利用可能であり、そして固定された組織中でRNAを検出する方法は確立されている。しかし、これらの方法では代表的には、少量の物質由来の多数の遺伝子(DNAまたはRNA)の研究は可能にならない。従って、慣習的に、固定された組織は、タンパク質の免疫組織化学検出について以外にはほとんど用いられていない。
【0004】
ここ2〜3年間で、いくつかのグループが、マイクロアレイ遺伝子発現分析による種々の癌のタイプの分類に関する研究を発表している(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照のこと)。遺伝子発現パターンに基づくヒト乳癌の特定の分類も報告されている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。しかし、これらの研究はほとんど、乳癌を含む種々のタイプの癌の既に確立された分類を改善および強化することに集中しており、一般には示差的に発現される遺伝子の関係に対する新規な洞察を提供するものではなく、癌治療の臨床的転帰を改善するための処置ストラテジーに対する知見には関連しない。
【0005】
現代の分子生物学および生物化学は、何百もの遺伝子であってその活性が腫瘍細胞の挙動、それらの分化の状態および特定の治療薬物に対するその感度または耐性に影響する遺伝子を明らかにしてきたが、わずかな例外があり、これらの遺伝子の状態は、薬物処置についての臨床的決定を慣用的に行うという目的に関しては開拓されていない。顕著な例外の1つは、タモキシフェンのような抗エストロゲン薬物での処置に対して患者を選択するための、乳癌におけるエストロゲンレセプター(ER)タンパク質発現の使用である。別の例外的な例は、Her2アンタゴニスト薬物Herceptin(登録商標)(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)での処置に対して患者を選択するための、乳癌におけるErbB2(Her2)タンパク質発現の使用である。
【0006】
最近の進歩にかかわらず、癌処置の課題は依然として、病原的に別個の腫瘍タイプに対する特定の処置レジメンを標的して、最終的に腫瘍処置を個人化して転帰を最良にすることである。従って、種々の処置の選択肢に対する患者応答について予測的な情報を同時に提供する試験の必要性が存在する。これは特に、その生物学が十分理解されていない乳癌についてあてはまる。2〜3のサブグループ、例えばErbB2陽性サブグループ、ならびにエストロゲンレセプター(ER)および2〜3のさらなる転写因子の遺伝子発現が低いか全くないことによって特徴付けられるサブグループへの乳癌の分類(非特許文献9)では、乳癌の細胞および分子の異質性を反映せず、患者の応答を最大化する処置ストラテジーの設計はできないということが明らかである。
【0007】
乳癌は、米国における女性の間の最も一般的なタイプの癌であり、40〜59歳の女性の間の癌死亡の主要な原因である。従って特に、化学療法に対する患者応答を予測する臨床的に検証された乳癌試験の必要性は大きい。
【非特許文献1】Golubら、Science (1999年)286:531〜537
【非特許文献2】Bhattacharjaeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2001年)98:13790〜13795
【非特許文献3】Chen−Hsiangら、Bioinformatics (2001年)17(補遺.1):S316−S322
【非特許文献4】Ramaswamyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2001年)98:15149〜15154
【非特許文献5】Martinら、Cancer Res.(2000年)60:2232〜2238
【非特許文献6】Westら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2001年)98:11462〜11467
【非特許文献7】Sorlieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2001年)98:10869〜10874
【非特許文献8】Yanら、Cancer Res.(2001年)61:8375〜8380
【非特許文献9】Perouら、Nature (2000年)406:747−752
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、化学療法に対する癌、例えば乳癌の患者の応答を予測するのに有用な遺伝子セットを提供する。さらに、本発明は、複数遺伝子RNA分析(multi−gene RNA analysis)を用いる、化学療法に対する患者の応答を予測する、臨床的に検証された癌、例えば乳癌の試験を提供する。本発明は、関連の遺伝子セットにおける全てのマーカーのアッセイのための、保管されたパラフィン包埋生検材料の使用に適合し、従って、最も広く利用可能なタイプの生検材料と適合性である。
【0009】
1局面では、本発明は、癌の診断をされた被験体の化学療法に対する応答を予測するための方法であって、この被験体から得られた癌細胞を含む生物学的サンプル中における1つ以上の予後予測RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含し、この予測的なRNA転写物は、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン(Catenine);CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン(Hepsin);CRABP1;AK055699;コンティグ(Contig).51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1からなる群より選択された1つ以上の遺伝子の転写物であり、
(a)ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの1つ以上;または対応する発現産物の発現増大のあらゆる単位について、この被験体は、化学療法に対する応答の可能性が増大していると予測され;かつ
(b)TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1の1つ以上;または対応する発現産物の発現の増大のあらゆる単位について、この被験体は、化学療法に対する応答の可能性が減少していると予測される、方法に関する。
【0010】
特定の実施形態では、上記の方法では、上記の予測的なRNA転写物は、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;およびTK1からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物である。
【0011】
別の実施形態では、上記応答は病理学上の完全寛解である。
【0012】
好ましい実施形態では、上記被験体はヒト患者である。
【0013】
上記癌は、任意のタイプの癌であってもよいが、好ましくは、固形腫瘍、例えば、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌および肺癌である。
【0014】
この腫瘍が乳癌である場合、これは、例えば、浸潤性の乳癌であっても、または第II期もしくは第III期の乳癌であってもよい。
【0015】
特定の実施形態では、上記化学療法は補助化学療法である。
【0016】
別の実施形態では、この化学療法は新補助化学療法である。
【0017】
この新補助化学療法は、例えば、タキサン誘導体、例えば、ドセタキセルおよび/もしくはパクリタキセル、ならびに/または他の抗癌剤、例えば、アントラサイクリンクラスの抗癌剤のメンバー、ドキソルビシン、トポイソメラーゼインヒビターなどの投与を含んでもよい。
【0018】
この方法は、上記で列挙した予後予測転写物またはその発現産物のうち少なくとも2つ、または少なくとも5つ、または少なくとも10個、または少なくとも15個の発現レベルの決定を包含してもよい。
【0019】
上記生物学的サンプルは、例えば、癌細胞を含む組織サンプルであってもよく、この組織は、固定されても、パラフィン包埋されても、または新鮮であってももしくは凍結されてもよい。
【0020】
特定の実施形態では、この組織は、微細な針、コアまたは他のタイプの生検由来である。
【0021】
別の実施形態では、この組織サンプルは、微細針吸引、気管支洗浄または経気管支生検によって得られる。
【0022】
上記予後予測RNA転写物(単数または複数)の発現レベルは、例えば、RT−PCRまたは他のPCRに基づく方法、免疫組織化学、プロテオミクス技術、もしくは当該分野で公知の任意の他の方法、またはそれらの組み合わせによって決定され得る。
【0023】
ある実施形態では、この予後予測RNA転写物またはそれらの発現産物の測定のためのアッセイは、キット(単数または複数)の様式で提供される。
【0024】
別の局面では、本発明は、以下の遺伝子:TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むアレイに関する。
【0025】
ある実施形態では、このアレイは、以下の遺伝子:TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0026】
別の実施形態では、このアレイは、以下の遺伝子:ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0027】
さらに別の実施形態では、このアレイは、以下の遺伝子:ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0028】
またさらなる実施形態では、このアレイは、以下の遺伝子:TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0029】
別の実施形態では、このアレイは、以下の遺伝子:TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6Cのうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0030】
種々の実施形態では、このアレイは、このようなポリヌクレオチドのうちの少なくとも5つ、または少なくとも10個、または少なくとも15個、または少なくとも10個を含む。
【0031】
特定の実施形態では、このアレイは、上記で列挙された遺伝子のうちの全てに対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0032】
別の特定の実施形態では、このアレイは、同じ遺伝子に対してハイブリダイズする1より多いポリヌクレオチドを含む。
【0033】
別の実施形態では、このポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、イントロンに基づく配列であって、その発現が対応するエキソン配列の発現と相関している配列を含む。
【0034】
種々の実施形態では、このポリヌクレオチドはcDNAであってもまたはオリゴヌクレオチドであり得る。
【0035】
別の局面では、本発明は、患者の個人化されたゲノミクスプロフィールを調製する方法であって、以下の工程:
(a)この患者から得た癌細胞において、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1からなる群より選択される遺伝子または遺伝子セットのRNA転写物または発現産物の正規化された発現レベルを決定する工程と;
(b)この遺伝子発現分析によって得られたデータを要約している報告を作成する工程と;を包含する方法に関する。
【0036】
特定の実施形態では、ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの1つ以上;またはその対応する発現産物の発現増大が確認される場合、上記報告は、上記患者が化学療法に対する応答の可能性が増大しているという予測を含む。この場合、特定の実施形態では、この方法は、化学療法剤を用いて上記患者を処置するさらなる工程を包含する。
【0037】
前述の方法では、TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1;または対応する発現産物のうちの1つ以上の発現増大が確認される場合、上記報告は、上記被験体が化学療法に対する応答の可能性が低下しているという予測を含む。
【0038】
別の局面では、本発明は、化学療法に対する患者の応答の可能性を決定するための方法であって:
(a)以下の遺伝子ACTB、BAG1、BCL2、CCNB1、CD68、SCUBE2、CTSL2、ESR1、GAPD、GRB7、GSTM1、GUSB、ERBB2、MKI67、MYBL2、PGR、RPLPO、STK6、MMP11、BIRC5、TFRCのRNA転写物、またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程と;
(b)再発スコア(RS)を算出する工程と;を包含する方法に関する。
【0039】
ある実施形態では、RSが50を超える患者は、化学療法に対して応答する可能性が高い患者の上方の50パーセントにある。
【0040】
ある実施形態では、RSが35未満である患者は、化学療法に対して応答する可能性が高い患者の下方の50パーセントにある。
【0041】
さらなる実施形態では、RSは、以下の遺伝子サブセット:
(i)増殖因子サブセット:GRB7およびHER2;
(ii)エストロゲンレセプターサブセット:ER、PR、Bcl2およびCEGP1;
(iii)増殖サブセット:SURV、Ki.67、MYBL2、CCNB1、およびSTK15;ならびに
(iv)浸潤サブセット:CTSL2、およびSTMY3;
を作製する工程であって、
ここで、任意のサブセット(i)〜(iv)内の遺伝子が、この腫瘍において0.40以上というピアソン相関係数でこの遺伝子と同時発現する代替遺伝子によって置換され得る工程と;
(c)サブセット(i)〜(iv)の各々の寄与を重み付けすることによってこの被験体の乳癌再発に対する再発スコア(RS)を算出する工程と;によって、決定される。
【0042】
前述の方法はさらに、CD68、GSTM1およびBAG1のRNA転写物、もしくはそれらの発現産物、または対応する代替遺伝子もしくはそれらの発現産物を決定する工程と、RSの算出において乳癌再発に対するこの遺伝子または代替遺伝子の寄与を含める工程とを包含し得る。
【0043】
RSは例えば、以下の式:
RS=(0.23〜0.70)×GRB7axisthresh−(0.17〜0.55)×ERaxis+(0.52〜1.56)×prolifaxisthresh+(0.07〜0.21)×invasionaxis+(0.03〜0.15)×CD68−(0.04〜0.25)×GSTM1−(0.05〜0.22)×BAG1
を用いることによって決定され得、
ここで
(i)GRB7 axis=(0.45〜1.35)×GRB7+(0.05〜0.15)×HER2;
(ii)GRB7 axis<−2であるならば、GRB7 axis thresh=−2であり、かつGRB7 axis≧−2であるならば、GRB7 axis thresh=GRB7 axisであり;
(iii)ER axis=(Est1+PR+Bcl2+CEGP1)/4;
(iv)prolifaxis=(SURV+Ki.67+MYBL2+CCNB1+STK15)/5;
(v)prolifaxis<−3.5であるならば、prolifaxisthresh=−3.5であり、
prolifaxis≧−3.5であるならば、prolifaxishresh=prolifaxisであり;そして
(vi)invasionaxis=(CTSL2+STMY3)/2
であり、
ここで(iii)、(iv)および(vi)における遺伝子の個々の寄与は、0.5〜1.5の係数で重み付けされ、かつRSが高いほど、乳癌再発の可能性の増大を示す。
【0044】
別の実施形態では、RSは以下の式:
RS(範囲、0〜100)=+0.47×HER2群スコア
−0.34×ER群スコア
+1.04×増殖群スコア
+0.10×浸潤群スコア
+0.05×CD68
−0.08×GSTM1
−0.07×BAG1
を用いることによって決定される。
【0045】
表1は、その発現が正にまたは負に相関する遺伝子のリストを、アドリアマイシンおよびタキサンの新補助化学療法に対する乳癌応答とともに示す。病理学上の完全寛解のエンドポイントでの臨床トライアルからの結果。統計学的な分析は、プロビットリンク関数とともに一変量一般化線形モデルを利用した。
【0046】
表2は、その発現が化学療法に対する乳癌応答を予測する遺伝子のリストを示す。レトロスペクティブな臨床トライアルからの結果。この表は、遺伝子のアクセッション番号、PCR増幅に用いた順方向プライマーおよび逆方向プライマー(それぞれ、「f」および「r」で示す)およびプローブ(「p」で示す)の配列を含む。
【0047】
表3は、示した遺伝子のPCR増幅において用いられるアンプリコン配列を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(詳細な説明)
(A.定義)
他のように定義されない限り、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology、第2版、J.Wiley & Sons(New York,NY 1994),およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure、第4版、John Wiley & Sons(New York,NY 1992)は、本出願において用いられる用語の多くについての一般的手引きを当業者に与える。
【0049】
当業者は、本発明の実施において用いられ得る、本明細書に記載されるのと同様または等価である多くの方法および物質を認識する。実際、本発明は決して、記載される方法および物質に限定されるものではない。本発明の目的のために、以下の用語を下に規定する。
【0050】
「マイクロアレイ」という用語は、基板上の、ハイブリダイズ可能なアレイエレメント、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則的な配置をいう。
【0051】
「ポリヌクレオチド」という用語は一般に、単数または複数形で用いる場合、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをいい、これは、修飾されていないRNAもしくはDNAであってもよく、または修飾されたRNAもしくはDNAであってもよい。従って、例えば、本明細書に規定されるようなポリヌクレオチドとしては、限定はしないが、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖の領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖および二本鎖の領域を含むRNA、一本鎖であるか、またはより代表的には、二本鎖であり得る、一本鎖および二本鎖の領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において用いる場合、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域をいう。このような領域における鎖は、同じ分子由来であっても、または異なる分子由来であってもよい。この領域は、1つ以上の分子の全てを含み得る、より代表的には、いくつかの分子のある領域のみを含み得る。三重らせん領域の分子の1つはしばしばオリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は詳細にはcDNAを含む。この用語は、1つ以上の修飾された塩基を含む、DNA(cDNAを含む)およびRNAを包含する。従って、安定性に関して、または他の理由に関して修飾された骨格を有するDNAまたはRNAが、その用語が本明細書において意図されるとおりの「ポリヌクレオチド」である。さらに、イノシンのような通常でない塩基、またはトリチウム化した塩基のような修飾された塩基を含むDNAまたはRNAは、本明細書に規定される「ポリヌクレオチド」という用語に含まれる。一般に、「ポリヌクレオチド」という用語は、修飾されていないポリヌクレオチドの全ての化学的に、酵素的におよび/または代謝的に修飾された形態、そしてウイルスならびに単純細胞および複雑型細胞を含む細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
【0052】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、比較的短いポリヌクレオチドであって、限定はしないが、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖または二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッドおよび二本鎖DNAを含むポリヌクレオチドをいう。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドはしばしば、化学的方法によって、例えば、市販されている自動オリゴヌクレオチドシンセサイザーを用いて合成される。しかし、オリゴヌクレオチドは、インビトロの組み換えDNA媒介性技術を含む種々の他の方法によって、そして細胞および器官のDNAの発現によって作成され得る。
【0053】
「示差的に発現される遺伝子」、「示差的な遺伝子発現」という用語、および交換可能に用いられるそれらの同義語は、遺伝子であって、疾患、特に乳癌のような癌に罹患している被験体において、正常またはコントロールの被験体におけるその発現に対して、高レベルまたは低レベルまでその発現が活性化される遺伝子をいう。この用語はまた、遺伝子であって、同じ疾患の種々の段階で高レベルまたは低レベルまでその発現が活性化される遺伝子をいう。示差的に発現された遺伝子は、核酸レベルもしくはタンパク質レベルで活性化されても阻害されてもよく、または種々のポリペプチド産物を生じるように選択的スプライシングに供されてもよいということも理解される。このような相違は、例えば、mRNAレベル、表面発現、分泌またはポリペプチドの他の区分における変化によって証明され得る。示差的な遺伝子発現は、正常な被験体と、疾患、詳細には癌に罹患している被験体との間で、または同じ疾患の種々の段階の間で異なる、2つ以上の遺伝子またはそれらの遺伝子産物の間の発現の比較、または2つ以上の遺伝子もしくはそれらの遺伝子産物の間の発現の比の比較、または同じ遺伝子の2つの示差的にプロセシングされた産物の比較さえ含み得る。示差的な発現としては、例えば、正常なおよび疾患の細胞の間での、または異なる疾患状態もしくは疾患段階を被っている細胞の間での、遺伝子またはその発現産物における一時的なまたは細胞の発現パターンにおける、定量的、そして定性的な相違の両方が挙げられる。本発明の目的に関しては、正常なおよび疾患の被験体において、または疾患状態の被験体における疾患の発達の種々の段階において、所定の遺伝子の発現の間に少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約4倍、より好ましくは少なくとも約6倍、最も好ましくは少なくとも約10倍の相違が存在する場合に、「示差的な遺伝子発現」が存在するとみなされる。
【0054】
遺伝子転写物または遺伝子発現産物に関して「正規化された(normalized)」という用語は、参照遺伝子のセットの転写物/産物の平均レベルに対する、その転写物または遺伝子発現産物のレベルをいい、ここで、この参照遺伝子は、それらの最小変動交差(minimal variation across)、患者、組織もしくは処置(「ハウスキーピング遺伝子」)のいずれかに基づいて選択されるか、またはこの参照遺伝子は、試験された遺伝子の全体である。後者の場合、これは一般に「全体的な正規化(global normalization)」と呼ばれ、試験した遺伝子の総数が相対的に大きい、好ましくは50より大きいことが重要である。詳細には、RNA転写物に関する「正規化された」という用語は、1セットの参照遺伝子の転写物レベルの平均に対するこの転写物のレベルをいう。さらに詳細には、RNA転写物の平均レベルとは、TaqMan(登録商標)RT−PCRによって測定した場合、1セットの参照遺伝子転写物のCt値から平均Ct値を引いた値をいう。
【0055】
「発現閾値」および「規定の発現閾値」という用語は、交換可能に用いられて、問題となっているある遺伝子または遺伝子産物のレベルであって、その遺伝子または遺伝子産物がそれを上回れば、ある薬物に対する患者の応答または耐性についての予測マーカーとして機能するレベルをいう。この閾値は代表的には、臨床研究から実験的に規定される。この発現閾値は、最大感度(例えば、薬物に対する全ての応答因子を検出するため)について、または最大選択性(例えば、薬物に対する唯一の応答因子を検出するため)について、または最小誤差についてのいずれかのために選択され得る。
【0056】
「遺伝子増幅」という句は、遺伝子または遺伝子フラグメントの複数のコピーが特定の細胞または細胞株で形成されるプロセスをいう。重複領域(増幅したDNAのストレッチ)はしばしば、「アンプリコン」と呼ばれる。しばしば、生成されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量、すなわち遺伝子発現のレベルはまた、特定の遺伝子からなるコピーの数に対して割合が増大する。
【0057】
「予後予測(prognosis)」という用語は、本明細書において用いる場合、乳癌のような腫瘍性疾患の再発、転移性の伝播および薬物耐性を含む、癌が寄与する死亡または進行の可能性の予測を指す。「予測(prediction)」という用語は、本明細書において用いる場合、患者が薬物または薬物のセットに対して有利にまたは不利にかのいずれかで応答する可能性、およびまたそれらの応答の程度、または原発性腫瘍の外科的な除去、および/または特定の期間にわたる化学療法の後に、癌の再発なしに患者が生存することをいう。本発明の予測方法は、任意の特定の患者について最も適切な処置様式を選択することによって処置決定を行うために臨床上用いられ得る。本発明の予測方法は、患者が処置レジメン、例えば、外科的介入、所定の薬物もしくは薬物の併用での化学療法および/もしくは放射線療法に対して有利に応答する可能性が高いか否か、あるいは手術後および/または化学療法もしくは他の処置様式の終了後に、患者の長期生存の可能性が高いか否かを予測するのにおける有用なツールである。
【0058】
「長期」生存という用語は、本明細書において用いる場合、外科手術または他の処置後、少なくとも3年間、より好ましくは少なくとも8年間、最も好ましくは少なくとも10年間の生存をいう。
【0059】
「腫瘍」という用語は、本明細書において用いる場合、悪性であろうと良性であろうと、全ての新生物細胞増殖および増殖、ならびに全ての前癌状態および癌性の細胞および組織をいう。
【0060】
「癌」および「癌性の」という用語は、制御されない細胞増殖によって代表的には特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはそれを表現する。癌の例としては、限定はしないが、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞性癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫および脳腫瘍が挙げられる。
【0061】
癌の「病理」としては、患者の健康を損なう全ての現象が挙げられる。これには、限定はしないが、異常または制御不能の細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機能の妨害、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症または免疫学的応答の抑制または悪化、新生物形成、前悪性状態、悪性腫瘍、周囲または別個の組織または器官、例えばリンパ節の浸潤などが挙げられる。
【0062】
「患者応答(patient response)」は、患者の利点を示す任意のエンドポイントを用いて評価され得、これには、限定はしないが、(1)腫瘍増殖のある程度までの阻害であって、減速および完全な増殖停止を含む阻害;(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍サイズの減少;(4)隣接する末梢の器官および/または組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち、減少、減速または完全な停止);(5)転移の阻害(すなわち、減少、減速または完全な停止);(6)腫瘍の退行または拒絶を生じ得るが、必ずしも生じる必要はない、抗腫瘍免疫応答の強化;(7)腫瘍に関連する1つ以上の症状のある程度までの軽減;(8)処置後の生存の長さの増大;および/または(9)処置後の所定の時点での死亡率の減少、が挙げられる。
【0063】
「新補助療法」とは、最初の(主な)治療の前に与えられる補助的なまたは補助の治療法である。新補助療法としては、例えば、化学療法、放射線療法、およびホルモン療法が挙げられる。従って、化学療法は、腫瘍を縮小させるために手術の前に投与されてもよく、その結果、手術がより有効なるか、または以前には処置不能であった腫瘍の場合も可能となり得る。
【0064】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者に容易に決定可能であり、そして一般には、プローブ長、洗浄温度および塩濃度に依存した、経験的な計算である。一般にはプローブが長いほど、適切なアニーリングには高い温度が必要になるが、プローブが短いほど、低い温度が必要である。ハイブリダイゼーションは一般に、相補的な鎖がそれらの融点より低い環境にある場合、変性されたDNAが再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、用いられ得る相対的な温度は高い。結果として、相対的な温度が高いほど、よりストリンジェントな反応条件が行われる傾向であるが、温度が低いほど、ストリンジェンシーは低くなるということになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers(1995)を参照のこと。
【0065】
「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」とは、本明細書において定義されるとおり、代表的には:(1)洗浄のために、低いイオン強度および高温、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、50℃を使用するか;(2)ハイブリダイゼーションの間に、変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)のホルムアミドと0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)と750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムとを42℃で使用するか;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、42℃で、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルミアミドを用いて55℃で洗浄し、続いて55℃でEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシーの洗浄をする。
【0066】
「中度にストリンジェントな条件」とは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989によって記載されるように特定され得、そして上記で記載された条件よりもストリンジェントが低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度およびSDSの%)の使用を包含する。中度にストリンジェントな条件の例は、20%のホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート溶液、10%硫酸デキストランおよび20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での37℃での一晩のインキュベーション、その後の1×SSC中での約37〜50℃でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブ長などのような調節因子に対して必要な場合、温度、イオン強度などを調節する方法を承知している。
【0067】
本発明の状況では、任意の特定の遺伝子セットに列挙された遺伝子の「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」、「少なくとも5つ」などに対する言及は、列挙された遺伝子のいずれか1つまたは任意のおよび全ての組み合わせを意味する。
【0068】
(B.詳細な説明)
本発明の実施は、他に示さない限り、当該分野の技術の範囲内である、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、および生物化学の従来の技術を使用する。このような技術は、文献、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,第2版、(Sambrookら、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編、1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編,1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」、第4版(D.M.Weir & C.C.Blackwell編,Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.MillerおよびM.P.Calos編1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編,1987);および「PCR:The Polymerase Chain Reaction」、(Mullisら編,1994)に詳細に説明される。
【0069】
(1.遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現プロファイリングの方法としては、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、およびプロテオミクスに基づく方法が挙げられる。サンプル中のmRNA発現の定量のために当該分野で公知の最も一般的に用いられる方法としては、ノーザンブロットおよびインサイチュハイブリダイゼーション(ParkerおよびBarnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999));RNAse保護アッセイ(RNAse protection assays)(Hod,Biotechniques 13:852〜854(1992));およびPCRに基づく方法、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weisら、Trends in Genetics 8:263−264(1992))が挙げられる。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識し得る抗体が使用され得る。配列決定に基づく遺伝子発現分析のための代表的な方法としては、連続遺伝子発現解析(Serial Analysis of Gene Expression)(SAGE)、および超並列的遺伝子ビーズクローン解析(massively parallel signature sequencing)(MPSS)が挙げられる。
【0070】
(2.PCRベースの遺伝子発現プロファイリング方法)
(a.逆転写酵素PCR(RT−PCR))
最も高感度でかつ最も融通の利く定量的なPCRベースの遺伝子発現プロファイリング方法の1つはRT−PCRであり、これは、種々のサンプル集団における、正常組織および腫瘍組織において、mRNAレベルを薬物処置の有無で比較して、遺伝子発現のパターンを特徴付けて、密接に関係するmRNAの間を識別し、そしてRNA構造を分析するために用いられ得る。
【0071】
第一の工程は、標的サンプルからのmRNAの単離である。出発物質は代表的には、ヒト腫瘍または腫瘍細胞株から単離され、そしてそれぞれ正常な組織または細胞株に対応する、総RNAである。従って、RNAは、乳房、肺、結腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮などの腫瘍または腫瘍細胞株を含む種々の原発性腫瘍から、健常なドナー由来のプールされたDNAとともに単離され得る。mRNAの供給源が、原発性腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結されるかまたは保管された、パラフィン包埋され、そして固定された(例えば、ホルマリン固定された)組織サンプルから抽出され得る。
【0072】
mRNA抽出のための一般的方法は、当該分野で周知であり、そしてAusubelら,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997)を含む、分子生物学の標準的な教科書に開示されている。パラフィン包埋された組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、RuppおよびLocker,Lab Invest.56:A67(1987),ならびにDe Andresら,BioTechniques 18:42044(1995)に開示される。詳細には、RNA単離は、商業的な製造業者、例えばQiagenからの精製キット、緩衝液セットおよびプロテアーゼを用いて、製造業者の指示に従って行なわれ得る。例えば、培養中の細胞に由来する総RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを用いて単離され得る。他の商業上利用可能なRNA単離キットとしては、MasterPureTMComplete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標),Madison,WI)、およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.)が挙げられる。組織サンプル由来の総RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を用いて単離され得る。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離され得る。
【0073】
RNAは、PCRのためのテンプレートとして機能できないので、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングにおける第一の工程は、cDNAへのRNAテンプレートの逆転写であり、その後にPCR反応におけるその指数関数的増幅が続く。2つの最も一般的に用いられる逆転写酵素は、トリ(avilo)骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。この逆転写の工程は代表的には、発現プロファイリングの状況および目的に依存して、特定のプライマー、ランダムなヘキサマーまたはオリゴ−dTプライマーを用いてプライムされる。例えば、抽出されたRNAは、製造業者の指示に従って、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,CA,USA)を用いて逆転写されてもよい。次いで、誘導されたcDNAは引き続くPCR反応におけるテンプレートとして用いられ得る。
【0074】
PCR工程は、種々の熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用し得るが、これは代表的には、5’−3’のヌクレアーゼ活性を有するが、3’−5’のプルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠く、Taq DNAポリメラーゼを使用する。従って、TaqMan(登録商標)PCRは代表的には、その標的アンプリコンに結合されたハイブリダイゼーションプローブにTaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼがハイブリダイズする5’−ヌクレアーゼ活性を利用するが、等価な5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を用いてもよい。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR反応の代表的なアンプリコンを生成する。第三のオリゴヌクレオチドまたはプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によっては非伸長性であり、そしてレポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識される。このレポーター色素からの任意のレーザー誘導性の発光は、2つの色素がプローブ上にあるように接近して一緒に配置される場合、クエンチング色素によってクエンチされる。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、テンプレート依存性の様式でプローブを切断する。得られたプローブフラグメントは、溶液中で解離して、その遊離されたレポーター色素からのシグナルは、第二の発蛍光団のクエンチング効果を有さない。レポーター色素の1分子は、合成された各々の新しい分子について遊離されて、そしてクエンチされていないレポーター色素の検出によって、データの定量的解釈の基礎が提供される。
【0075】
TaqMan(登録商標)RT−PCRは、市販の装備、例えば、ABI PRISM 7700TM Sequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)などを用いて行われ得る。好ましい実施形態では、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7700TM Sequence Detection SystemTMのようなリアルタイムの定量的PCRデバイスで行われる。このシステムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピューターから構成される。このシステムは、サーモサイクラー上の96ウェルのフォーマットでサンプルを増幅する。増幅の間、レーザー誘導性蛍光シグナルは、96ウェルすべてについて光ファイバーケーブルを通じてリアルタイムで集積されて、CCDで検出される。このシステムは、この装置を作動させるため、およびデータを分析するためのソフトウェアを備える。
【0076】
5’−ヌクレアーゼのアッセイデータは最初は、Ctとしてまたは閾値サイクルとして表される。上記で考察したとおり、蛍光値は、全サイクルの間記録されて、増幅反応におけるそのポイントに対して増幅された生成物の量を表す。蛍光シグナルが統計学的に有意であるとして最初に記録されるポイントが、閾値サイクル(Ct)である。
【0077】
サンプル間の変動の誤差および効果を最小にするために、RT−PCRは通常、理想的には種々の組織の間で一定レベルで発現され、実験処理によって影響されない参照RNAを用いて行う。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も高頻度に用いられるRNAは、ハウスキーピング遺伝子のグリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ(GAPD)およびβ−アクチン(ACTB)のmRNAである。
【0078】
RT−PCR技術のより最近のバリエーションは、リアルタイム定量PCRであり、これは二重標識された蛍光発生プローブ(すなわち、TaqMan(登録商標)プローブ)を通じてPCR生成物の蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、各々の標的配列についての内部競合因子が正規化のために用いられる定量的競合的PCRとも、そしてサンプル内に含まれる正規化遺伝子、またはRT−PCRのためのハウスキーピング遺伝子を用いる定量的競合的PCRとも適合する。さらなる詳細については、例えば、Heldら,Genome Research 6:986〜994(1996)を参照のこと。
【0079】
(b.MassARRAYシステム)
Sequenom,Inc.(San Diego,CA)によって開発された、MassARRAYベースの遺伝子発現プロファイリング方法では、RNAおよび逆転写酵素の単離後、得られたcDNAは、単独塩基以外の全ての位置で、標的されたcDNA領域に適合しかつ内部標準として機能する合成DNA分子(競合因子)でスパイクされる。このcDNA/競合因子混合物をPCR増幅して、残りのヌクレオチドの脱ホスホリル化を生じるPCR後のエビアルカリホスファターゼ(SAP)酵素処理に供する。アルカリホスファターゼの不活性化後、競合因子およびcDNA由来のPCR生成物は、プライマー伸長に供され、これによって競合因子由来およびcDNA由来のPCR産物についての別個の質量シグナルを作成する。精製後、これらの生成物は、チップアレイ上に分配され、これをマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)分析での分析に必要な成分とともに事前ローディングする。次いで反応物中に存在するcDNAは、作成した質量スペクトルにおけるピーク面積の比を分析することによって定量される。さらなる詳細については、例えば、DingおよびCantor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3059−3064(2003)を参照のこと。
【0080】
(c.他のPCRベースの方法)
さらなるPCRベースの技術としては、例えば、ディファレンシャルディスプレイ(LiangおよびPardee,Science 257:967〜971(1992));増幅フラグメント長多形性(amplified fragment length polymorphism)(iAFLP)(Kawamotoら,Genome Res.12:1305〜1312(1999));BeadArrayTM技術(Illumina,San Diego,CA;Oliphantら,Discovery of Markers for Disease(Biotechniquesに対する補遺),2002年6月;Fergusonら,Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現のための迅速なアッセイにおいて、市販のLuminex100LabMAPシステムおよび複数の色でコードされたミクロスフェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を用いる、BeadsArray for Detection of Gene Expression(BADGE)(Yangら,Genome Res.11:1888〜1898(2001));ならびにハイ・カバレッジ発現プロファイリング(high coverage expression profiling)(HiCEP)分析(Fukumuraら,Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))が挙げられる。
【0081】
(3.マイクロアレイ)
示差的遺伝子発現はまた、マイクロアレイ技術を用いて同定されてもよいし、確認されてもよい。従って、乳癌関連遺伝子の発現プロファイルは、マイクロアレイ技術を用いて、新鮮な腫瘍組織、またはパラフィン包埋された腫瘍組織のいずれかにおいて測定され得る。この方法では、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を、マイクロチップ基板上にプレートするか、配列する。次いで、この配列された配列を目的の細胞または組織由来の特定のDNAプローブとハイブリダイズさせる。ちょうどRT−PCR法でのとおり、mRNAの供給源は、代表的には、ヒト腫瘍または腫瘍細胞株、および対応する正常な組織または細胞株から単離される総RNAである。従って、RNAは、種々の原発性腫瘍または腫瘍細胞株から単離され得る。mRNAの供給源が原発性腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結されるかまたは保管された、パラフィン包埋され、そして固定された(例えば、ホルマリン固定された)組織サンプルであって、毎日の臨床実務で慣用的に調製されて保存されるサンプルから抽出され得る。
【0082】
マイクロアレイ技術の特定の実施形態では、cDNAクローンのPCR増幅されたインサートは、密度アレイにおいて基板に適用される。好ましくは、少なくとも10,000個のヌクレオチド配列が、この基板に適用される。マイクロチップ上で10,000個のエレメントの各々に固定されたマイクロアレイの遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに適切である。蛍光的に標識されたcDNAプローブは、目的の組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光ヌクレオチドの組み込みを通じて、生成され得る。チップに適用された標識cDNAプローブは、このアレイ上のDNAの各々のスポットに対して特異的にハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄後、このチップは、共焦点レーザー顕微鏡によって、またはCCDカメラのような別の検出方法によって、スキャンされる。各々の配列されたエレメントのハイブリダイゼーションの定量によって、対応するmRNAの量の評価が可能になる。二重の色の蛍光を用いて、RNAの2つの供給源から生成した別々に標識したcDNAプローブを、アレイに対して対合してハイブリダイズさせる。従って、各々の特定された遺伝子に対応する2つの供給源由来の転写物の相対的な量が、同時に決定される。ハイブリダイゼーションの規模の小型化によって、多数の遺伝子の発現パターンの便利でかつ迅速な評価が可能になる。このような方法は、1細胞あたり2〜3個のコピーで発現される、まれな転写物を検出するために必要な感度を有しており、発現レベルにおける少なくともほぼ2倍の相違を再現可能に検出することが示されている(Schenaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106〜149(1996))。マイクロアレイ分析は、市販の装備によって、製造プロトコールに従って、例えば、Affymetrix GenChip技術、またはIncyteのマイクロアレイ技術を用いることによって行ってもよい。
【0083】
遺伝子発現の大規模分析のためのマイクロアレイ方法の開発によって、癌の分類の分子マーカーおよび種々の腫瘍タイプにおける結果予測について体系的に調査することが可能になる。
【0084】
(4.連続遺伝子発現解析(SAGE))
連続遺伝子発現解析(serial analysis of gene expression)(SAGE)は、各々の転写物についての個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なしに、多数の遺伝子転写物の同時分析および定量分析を可能にする方法である。第一に、転写物を固有に同定するための十分な情報を含む短い配列タグ(約10〜14bp)が、このタグが各々の転写物内の固有の位置から得られるという条件下で、生成される。次いで、多くの転写物は、一緒に連結されて、長い連続分子を形成し、これが配列決定され得、これによって複数のタグを同時に同定する。転写物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの量を決定すること、および各々のタグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価され得る。さらなる詳細については、例えば、Velculescuら,Science 270:484〜487(1995);およびVelculescuら,Cell 88:243〜51(1997)を参照のこと。
【0085】
(5.超並列的遺伝子ビーズクローン解析(massively parallel signature sequencing)(MPSS)による遺伝子発現分析)
この方法は、Brennerら,Nature Biotechnology 18:630〜634(2000)によって記載されており、非ゲルベースのサイン(signature)配列決定と、別々の5μmの直径のマイクロビーズ上の数百万のテンプレートのインビトロクローニングとを組み合わせる配列決定アプローチである。第一に、DNAテンプレートのマイクロビーズのライブラリーは、インビトロクローニングによって構築される。この後に、テンプレート含有マイクロビーズの平面アレイのアセンブリが、フローセル中で高密度(代表的には、1cmあたり3×10個より多いマイクロビーズ)で続く。各々のマイクロビーズ上のクローニングされたテンプレートの遊離の末端は、DNAフラグメント分離を要しない蛍光ベースのサイン配列決定方法を用いて、同時に分析される。この方法は、単回の操作で、酵母cDNAライブラリーから何十万もの遺伝子のサイン(signature)配列を同時にかつ正確に提供することが示されている。
【0086】
(6.免疫組織化学)
免疫組織化学方法はまた、本発明の予測マーカーの発現レベルを検出するために適切である。従って、抗体および抗血清、好ましくはポリクローナル抗血清、そして最も好ましくは各々のマーカーに特異的なモノクローナル抗体を用いて発現を検出する。この抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識(例えば、ビオチン)、または酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)を用いる抗体自体の直接標識によって検出され得る。あるいは、未標識の一次抗体は、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む、標識された二次抗体と組み合わせて用いられる。免疫組織化学プロトコールおよびキットは、当該分野で周知であり、そして市販される。
【0087】
(7.プロテオミクス)
「プロテオーム(proteome)」という用語は、特定の時点でサンプル(例えば、組織、生物体または細胞培養物)中に存在するタンパク質の全体として規定される。プロテオミクスとしては、とりわけ、サンプル中のタンパク質発現の全体的変化の研究を包含する(「発現プロテオミクス(expression proteomics)」とも呼ばれる)。プロテオミクスは代表的には、以下の工程を包含する:(1)2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)による、サンプル中の個々のタンパク質の分離;(2)例えば、ゲルから回収した個々のタンパク質の同定(例えば、質量分析法またはN末端配列決定);ならびに(3)バイオインフォマティクスを用いるデータの分析。プロテオミクス法は、遺伝子発現プロファイリングの他の方法に対する有用な補完であり、本発明の予測マーカーの生成物を検出するために、単独で、または他の方法と組み合わせて使用され得る。
【0088】
(8.mRNA単離、精製および増幅の一般的説明)
mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む、RNA供給源として固定されたパラフィン包埋組織を用いる、遺伝子発現をプロファイリングするために代表的なプロトコールの工程は、種々の公表された学術論文(例えば:T.E.Godfreyら,J.Molec.Diagnostics 2:84〜91[2000];K.Spechtら,Am.J.Pathol.158:419−29[2001])に示される。要するに、代表的なプロセスは、パラフィン包埋された腫瘍組織サンプルの約10μmの厚みの切片を切断することで開始する。次いで、RNAを抽出し、そしてタンパク質およびDNAを除去する。RNA濃度の分析後、RNA修復および/または増幅工程が、必要な場合に含まれてもよく、そしてRNAは、遺伝子特異的プロモーター、続いてRT−PCRを用いて逆転写される。最終的に、試験された腫瘍サンプルにおいて同定された特徴的な遺伝子発現パターンに基づいて、患者に対して利用可能な最適の処置の選択肢(単数または複数)を特定するために、このデータを分析する。
【0089】
(9.癌化学療法)
癌処置において用いられる化学療法剤は、その作用機序に依存して、数個の群に分けることができる。いくつかの化学療法剤は、DNAおよびRNAを直接損傷する。DNAの複製を破壊することによって、このような化学療法は、複製を完全に停止させるか、またはノンセンスDNAまたはRNAの生成を生じる。このカテゴリーとしては、例えば、シスプラチン(Platinol(登録商標))、ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、およびエトポシド(VePesid(登録商標))が挙げられる。癌の化学療法剤の別の群は、ヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの形成を妨げ、その結果RNA合成および細胞複製がブロックされる。このクラスの薬物の例としては、メトトレキセート(Abitrexate(登録商標))、メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、フルオロウラシル(Adrucil(登録商標))、およびヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))が挙げられる。化学療法剤の第三のクラスは、紡錘体の合成または破壊を生じ、そして結果として、細胞分裂を中断する。このクラスの薬物の例としては、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))およびタキサン、例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、およびトセタキセル(Tocetaxel)(Taxotere(登録商標))が挙げられる。トセタキセルは現在、米国において、先の化学療法の失敗後に局所的に進行するかまたは転移した乳癌を有する患者、および先の白金ベースの化学療法の失敗後に局所的に進行したかまたは転移性の非小細胞肺癌を有する患者を処置するために、承認されている。
【0090】
化学療法による一般的な問題は、この処置アプローチの臨床的利点を制限する、アントラサイクリンおよびタキサンのような化学療法剤の高い毒性である。
【0091】
ほとんどの患者は、腫瘍の外科的な除去後に直ちに化学療法を受ける。このアプローチは一般に、アジュバント療法と呼ばれる。しかし、化学療法はまた、いわゆる新補助処置として、外科手術の前に実施されてもよい。新補助化学療法の使用は、進行し、手術不能な乳癌の処置から始まったが、同様に他のタイプの癌の処置においても受け入れられている。新補助化学療法の有効性は、いくつかの臨床治験において試験されている。多施設のNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B−18(NSAB B−18)治験(Fisherら,J.Clin.Oncology 15:2002−2004(1997);Fisherら,J.Clin.Oncology 16:2672−2685(1998))新補助療法は、アドリアマイシンおよびシクロホスファミドの組み合わせ(「ACレジメン」)で行われた。別の臨床治験では、新補助療法は、5−フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミドの組み合わせ(「FECレジメン」)を用いて実施された(van Der Hageら,J.Clin.Oncol.19:4224−4237(2001))。さらに新しい臨床治験はまた、タキサン含有新補助処置レジメンを用いている。例えば、Holmesら,J.Natl.Cancer Inst.83:1797−1805(1991)およびMoliterniら,Seminars in Oncology,24:S17−10−S−17−14(1999)を参照のこと。乳癌についての新補助化学療法についてのさらなる情報については、Cleatorら,Endocrine−Related Cancer 9:183〜195(2002)を参照のこと。
【0092】
(10.癌遺伝子セット、アッセイされた遺伝子サブ配列、および遺伝子発現データの臨床適用)
本発明の重要な局面は、乳癌組織による特定の遺伝子の発現の測定を用いて予後情報を提供することである。この目的のために、アッセイされたRNAの量、用いられるRNAの量の変動、および他の要因における相違(例えば、機械および操作者の相違)について補正(正規化する)ことが必要である。従って、このアッセイは代表的には、周知のハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDおよびACTB)から転写されるRNAを含む、参照RNAの使用を測定し、組み込む。遺伝子発現データを正規化するための正確な方法は、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems;1997)のための「User Bulletin #2」に示されている。あるいは、正規化は、アッセイされた遺伝子の全てまたはその大きいサブセットの平均またはメジアンのシグナル(Ct)に基づいてもよい(全体的な正規化アプローチ)。以下の実施例に記載される研究では、いわゆる中央正規化ストラテジーが用いられたが、これは、正規化のために、臨床上の結果との相関が欠失することに基づいて選択されたスクリーニングされた遺伝子のサブセットを利用した。
【0093】
(11.治療スコアに対する再発および応答、ならびにそれらの適用)
2003年7月10日出願の同時係属中の出願番号第60/486,302号は、癌再発の可能性および/または患者が処置様式によく応答する可能性を決定するためのアルゴリズムベースの予後試験を記載する。他の癌予後方法からそれを識別するアルゴリズムの特徴としては以下が挙げられる:1)再発の可能性を決定するために用いられる試験mRNA(または対応する遺伝子発現産物)の固有のセット、2)発現データを式に組み合わせるために用いられる特定の重量、および3)種々のレベルのリスクの群(例えば、低リスク、中リスクおよび高リスクの群)に患者を分けるために用いられる閾値。このアルゴリズムによって、数値的な再発スコア(RS)が得られるか、または処置に対する患者応答を評価する場合は治療に対する応答スコア(RTS)が得られる。
【0094】
この試験は、特定のmRNAまたはそれらの発現産物のレベルを測定するための実験室アッセイを必要とするが、患者から既に収集されて保管されている必要がある、ごく少量の新鮮な組織または凍結組織または固定され、パラフィン包埋された腫瘍生検標本を利用してもよい。従って、この試験は、非浸潤性であってもよい。これは、例えば、コア生検または細針吸引を介する、腫瘍組織回収のいくつかの種々の方法とも適合する。
【0095】
本発明によれば、癌再発スコア(RS)は、以下:
(a)被験体から得た癌細胞を含む生物学的サンプルを、遺伝子またはタンパク質の発現プロファイリングに供する工程;
(b)各々の遺伝子についての発現値を決定するために、複数の個々の遺伝子の発現レベル[すなわち、mRNAまたはタンパク質のレベル]を定量する工程;
(c)遺伝子発現値のサブセットであって、各々のサブセットが癌関連の生物学的機能によって、そして/または同時発現によって関連される遺伝子についての発現値を含むサブセットを作成する工程;
(d)サブセット内の各々の遺伝子の発現レベルと、このサブセット内の治療に対する癌の再発または応答へのその相対的な寄与を反映する係数を掛けて、乗算の結果を加えてこのサブセットの項を得る工程;
(e)各々のサブセットの項と、治療に対する癌の再発または応答へのその寄与を反映する係数とを掛ける工程;ならびに
(f)この係数を掛けた各々のサブセットについての項の合計を算出して、再発スコア(RS)または治療に対する応答スコア(RTS)を得る工程;
によって決定され、
ここで、治療に対する癌再発または応答との線形の相関を示さない各々のサブセットの寄与は、事前に決定された閾値レベルをわずかに超えて含まれ、そして
特定の遺伝子の発現増大が癌再発のリスクを下げるサブセットは、負の値を割り当てられ、特定の遺伝子の発現が癌の再発のリスクを増大するサブセットは正の値を割り当てられる。
【0096】
特定の実施形態では、RSは、以下:
(a)被験体から得られた腫瘍細胞を含む生物学的サンプルにおける、GRB7、HER2、EstR1、PR、Bcl2、CEGP1、SURV、Ki.67、MYBL2、CCNB1、STK15、CTSL2、STMY3、CD68、GSTM1、およびBAG1、またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程;ならびに
(b)以下の式:
RS=(0.23〜0.70)×GRB7axisthresh−(0.17〜0.51)×ERaxis+(0.53〜1.56)×prolifaxisthresh+(0.07〜0.21)×invasionaxis+(0.03〜0.15)×CD68−(0.04〜0.25)×GSTM1−(0.05〜0.22)×BAG1
によって再発スコア(RS)を算出する工程であって、
ここで
(i)GRB7 axis=(0.45〜1.35)×GRB7+(0.05〜0.15)×HER2;
(ii)GRB7 axis<−2であるならば、GRB7 axis thresh=−2であり、かつGRB7 axis≧−2であるならば、GRB7 axis thresh=GRB7 axisであり;
(iii)ER axis=(Est1+PR+Bcl2+CEGP1)/4;
(iv)prolifaxis=(SURV+Ki.67+MYBL2+CCNB1+STK15)/5;
(v)prolifaxis<−3.5であるならば、prolifaxisthresh=−3.5であり、
prolifaxis≧−3.5であるならば、prolifaxishresh=prolifaxisであり;そして
(vi)invasionaxis=(CTSL2+STMY3)/2
である工程、
によって決定され、
ここで範囲が特に示されない個々の遺伝子全てについての項は、約0.5〜1.5の間で変化し得、かつRSが高いほど、癌再発の可能性の増大を示す。
【0097】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例に記載される。
【実施例】
【0098】
(浸潤性乳癌における新補助化学療法のレトロスペクティブ研究)
(パラフィン包埋されたコア生検組織の遺伝子発現プロファイリング)
これは、Genomic Health,Inc.,(Redwood City California)、およびInstitute Tumori,Milan,Italyが関与する共同研究であった。この研究の主な目的は、局所的に進行した乳癌において、処置前の分子プロフィールと新補助化学療法に対する病理学上の完全寛解(pathologic complete response)(pCR)との間の相関を調査することであった。
【0099】
(患者包括判定基準)
侵襲性乳癌(手術日1998年〜2002年)の組織学的診断;局所的に進行した乳癌の診断は、皮膚浸潤および/またはN2腋窩の節の状態およびまたは同側の鎖骨上の陽性節によって規定した;コア生検、新補助化学療法および外科的切除はIstituto Nazionale Tumori,Milanで行った;組織学的診断または診断手順について得られた生物学的物質を検索に用いるというインフォームドコンセントにサインをもらった;そして組織病理学的評価によって、この探索研究に包含するための腫瘍組織の適切な量が示される。
【0100】
(除外判定基準)
遠位の転移;最初のコア生検から、もしくは外科的切除から入手可能な腫瘍ブロックがない;または病理学者がH&Eスライドの試験で評価した場合ブロック中に腫瘍がないかごくわずかしかない(スライド上の全体的組織の5%未満)。
【0101】
(研究のデザイン)
89例の評価可能な患者(96例の臨床上評価可能な患者のセット由来)を同定して研究した。384個のmRNA種のレベルをRT−PCRによって測定し、これによって生物医学的研究の文献から選択された候補の癌関連遺伝子の産物が示される。不十分なシグナルに起因して遺伝子の1つだけ欠失した。
【0102】
患者の特徴は以下のとおりであった:平均年齢:50歳;腫瘍グレード:24%が良(Well)、55%が中(Moderate)、そして21%が不良(Poor);63%の患者がER陽性{免疫組織化学による};70%の患者が陽性のリンパ節を有した。
【0103】
全ての患者に予備的な新補助化学療法:ドキソルビシンに加えてタキソールを3週/3サイクル、続いてタキソール(登録商標)(パクリタキセル)を1週/12サイクル、を与えた。腫瘍の外科的除去は化学療法の終了後とした。コア腫瘍生検の標本を化学療法の開始前に採取して、RT−PCRアッセイのためにRNAの供給源として役立てた。
【0104】
(材料および方法)
生検由来の固定されたパラフィン包埋(FPE)腫瘍組織を、化学療法の前後に得た。コア生検は、化学療法の前に採取した。その場合、病理学者は、ほとんどの代表的な原発性の腫瘍ブロックを選択し、RNA分析のために9つの10ミクロンの切片にした。詳細には、全部で9つの切片(各々の厚みが10ミクロン)を調製して、3つのCostar Brand Microcentrifuge Tubes(ポリプロピレン、1.7mL試験管、透明;各々の試験管に3切片)に入れて、プールした。
【0105】
MasterPureTMRNA精製キット(Epicentre Technologies)を用いてメッセンジャーRNAを抽出して、RiboGreen(登録商標)蛍光法(Molecular probes)によって定量した。定量的な遺伝子発現の分子アッセイは、ABI PRISM 7900TMSequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を用いて、RT−PCRによって行った。ABI PRISM 7900TMは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピューターから構成される。このシステムは、サーモサイクラー上で384−ウェルの形式においてサンプルを増幅する。増幅中、レーザー誘導性蛍光シグナルを、384ウェルの全てについてリアルタイムで収集し、CCDで検出する。このシステムは、装置の運転のため、およびデータの分析のためのソフトウェアを備える。
【0106】
(分析および結果)
腫瘍組織を384遺伝子について分析した。各々の患者についての閾値サイクル(C)値を、臨床結果との相関がないことに基づいて選択した、その特定の患者についてスクリーニングされた遺伝子のサブセットの中央値に基づいて正規化した(中央正規化ストラテジー)。化学療法に対する患者の有益な応答は、病理学上の完全寛解(pCR)と規定した。患者を全ての化学療法の終了の際に応答について正式に評価した。
【0107】
臨床上の完全寛解(clinical complete response)(cCR)には、身体的な検査または診断的な乳房の画像化のいずれかによる、全ての臨床上検出可能な疾患の完全な消失を必要とする。
【0108】
病理学上の完全寛解(pathologic complete response)(pCR)には、予備的な化学療法後、生検した乳房組織、腫瘍摘出手術または乳房切除術の標本の組織学的な検査において残留する乳癌が存在しないことが必要である。インサイチュ腺管癌(DCIS)は残留して存在してもよい。局所のリンパ節における残留する癌は存在し得ない。89例の評価可能な患者のうち11(12%)が、病理学上の完全寛解(pCR)を有した。これらの患者のうち7例がER陰性であった。
【0109】
部分的臨床応答は、腫瘍面積(最長の垂線の直径の積の合計)の50%以上の減少か、または乳房および腋窩における複数の病変の最長の垂線の直径の積の合計における50%以上の減少と規定した。疾患の領域が25%よりも増大することはあり得ず、そして新しい病変が出現することもあり得ない。
【0110】
正規化された遺伝子発現とpCRまたは非pCRの2成分の結果との間の関係を比較することによって分析を行った。一変量一般化モデルを、プロビットまたはロジットリンクの関数とともに用いた。例えば、Van K.Borooah,LOGIT and PROBIT,Ordered Multinominal Models,Sage University Paper,2002を参照のこと。
【0111】
表1は、遺伝子発現との病理学上の応答の相関を示しており、86個の遺伝子を列挙しており、群間の相違についてのp値は0.1未満であった。第二の欄(「方向(Direction)」と頭書きしている)は、発現の増大が化学療法に対する応答の可能性の低下と関連するか、それとも増大と関連するかを示す。各々の遺伝子についての予後予測値の統計学的有意差は、P値(右側の欄)によって示される。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

表1に示されるデータセットに基づいて、以下の遺伝子の発現増大は、処置に対する病理学上の完全寛解の可能性の増大と相関している:ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1。一方で、以下の遺伝子の発現増大は、処置に対する病理学上完全寛解の可能性の低下と相関している:TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;Bcl2。
【0114】
再発リスクアルゴリズム(同時係属の米国特許出願第60/486,302号に記載)とpCRとの間の関係も検討した。このアルゴリズムは、21個のmRNA種の測定したレベルを組み込む。16個のmRNA(以下に名前を挙げる)は候補の臨床マーカーであり、残りの5つ(ACTB、GAPD、GUSB、RPLPOおよびTFRC)が参照遺伝子である。参照の正規化された発現の測定値は、0〜15の範囲であり、ここで1単位の増大は、RNAの2倍の増大を反映する。
【0115】
再発スコア(RS)は、4つのセットのマーカー遺伝子(エストロゲンレセプター群の4つの遺伝子−ESR1、PGR、BCL2、およびSCUBE2;増幅セットの5つの遺伝子−MKI67、MYBL2、BIRC5、CCNB1、およびSTK6;HER2セットの2つの遺伝子−ERBB2およびGRB7、浸潤群の2つの遺伝子−MMP11およびCTSL2)そして3つの他の個々の遺伝子−GSTM1、BAG1、およびCD68の定量的発現から算出する。
【0116】
この式で用いた遺伝子および増倍係数は、変化してもよいが、代表的な実施形態においては、以下の式を用いて、RSを算出してもよい:
RS(範囲、0〜100)=+0.47×HER2群スコア
−0.34×ER群スコア
+1.04×増殖群スコア
+0.10×浸潤群スコア
+0.05×CD68
−0.08×GSTM1
−0.07×BAG1。
【0117】
臨床および遺伝子発現データセットを研究するためのこのアルゴリズムの適用によって、図1に示されるとおり、pCR値に対してRSを関連させる連続曲線が得られる。これらのデータの試験によって、RSが50を超える患者は、化学療法に対する応答の可能性に関して患者の上方の50パーセントにあること、そしてRSが35未満の患者は、化学療法に対する応答の可能性に関して患者の下方の50パーセントにあることが示される。
【0118】
本開示を通じて引用された全ての引用文献は、本明細書において明白に参考として援用される。
【0119】
本発明は特定の実施形態に基づいて強調して記載されてきたが、特定の方法および技術におけるバリエーションおよび改変が可能であるということは、当業者には明白である。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によって規定されるとおりの本発明の精神および範囲内に包含される全ての改変を包含する。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、臨床トライアルからの結果に基づいて、再発スコア(RS)と化学療法に対する患者応答の可能性との間の関係を、病理学上の完全寛解のエンドポイントで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌と診断された被験体の化学療法に対する応答を予測するための方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的サンプル中における1つ以上の予後予測的なRNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含し、該予測的なRNA転写物は、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1からなる群より選択された1つ以上の遺伝子の転写物であり、
(a)ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの1つ以上;または対応する発現産物の発現増大のあらゆる単位について、該被験体は、化学療法に対する応答の可能性が増大していると予測され;かつ
(b)TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1の1つ以上;または対応する発現産物の発現の増大のあらゆる単位について、該被験体は、化学療法に対する応答の可能性が減少していると予測される、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記予測的なRNA転写物が、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;およびTK1からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物である、方法。
【請求項3】
前記応答が病理学上の完全寛解である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体がヒト患者である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌および肺癌からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が乳癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が浸潤性の乳癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が第II期または第III期の乳癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法が補助化学療法である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記化学療法が新補助化学療法である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記新補助化学療法がタキサン誘導体の投与を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タキサンがドセタキセルまたはパクリタキセルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タキサンがドセタキセルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法がさらなる抗癌剤の投与をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記さらなる抗癌剤がアントラサイクリンクラスの抗癌剤のメンバーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記さらなる抗癌剤がドキソルビシンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記さらなる抗癌剤がトポイソメラーゼインヒビターである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記予後予測転写物またはその発現産物のうち少なくとも2つの発現レベルを決定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記予後予測転写物またはそれらの発現産物のうち少なくとも5つの発現レベルを決定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記予後予測転写物またはそれらの発現産物の全ての発現レベルを決定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルが癌細胞を含む組織サンプルである、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記組織が固定されるか、パラフィン包埋されるか、または新鮮であるかもしくは凍結される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組織が微細な針、コアまたは他のタイプの生検由来である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組織サンプルが、微細針吸引、気管支洗浄または経気管支生検によって得られる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記予後予測RNA転写物の発現レベルが、RT−PCRまたは他のPCRに基づく方法によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記発現産物の発現レベルが、免疫組織化学によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記発現産物の発現レベルが、プロテオミクス技術によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記予後予測RNA転写物またはそれらの発現産物の測定のためのアッセイがキットの形式で提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記予後予測転写物が、イントロンに基づく配列であって、その発現が対応するエキソン配列の発現と相関する配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
以下の遺伝子:TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項31】
以下の遺伝子:TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項32】
以下の遺伝子:ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項33】
以下の遺伝子:ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項34】
以下の遺伝子:TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1のうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項35】
以下の遺伝子:TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6Cのうちの複数に対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドのうちの少なくとも5つを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドのうちの少なくとも10個を含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドのうちの少なくとも15個を含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項39】
前記遺伝子の全てに対してハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項40】
同じ遺伝子に対してハイブリダイズする1より多いポリヌクレオチドを含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項41】
前記ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、イントロンに基づく配列であって、その発現が対応するエキソン配列の発現と相関している配列を含む、請求項30に記載のアレイ。
【請求項42】
前記ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項30〜41のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドがオリゴヌクレオチドである、請求項30〜41のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項44】
患者についての個人化されたゲノミクスプロフィールを調製する方法であって、以下の工程:
(a)該患者から得た癌細胞において、TBP;ILT.2;ABCC5;CD18;GATA3;DICER1;MSH3;GBP1;IRS1;CD3z;fas1;TUBB;BAD;ERCC1;MCM6;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;E2F1;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;ID2;G.カテニン;FBXO5;FHIT;MTA1;ERBB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;CDC20;STAT3;ERK1;HLA.DPB1;SGCB;CGA;DHPS;MGMT;CRIP2;MMP12;ErbB3;RAP1GDS1;CDC25B;IL6;CCND1;CYBA;PRKCD;DR4;ヘプシン;CRABP1;AK055699;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;ZNF38;MCM2;GBP2;SEMA3F;CD31;COL1A1;ER2;BAG1;AKT1;COL1A2;STAT1;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;TK1、ErbB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2、CD68、GSTM1、BCL2、ESR1からなる群より選択される遺伝子または遺伝子セットのRNA転写物または発現産物の正規化された発現レベルを決定する工程と;
(b)該遺伝子発現分析によって得られたデータを要約している報告を作成する工程と;
を包含する、方法。
【請求項45】
前記癌細胞が固形腫瘍から得られる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌および肺癌からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記癌細胞が、前記腫瘍の固定されたパラフィン包埋生検サンプルから得られる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記RNAが断片化される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記報告が前記患者の処置様式についての提案を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
請求項45に記載の方法であって、ILT.2;CD18;GBP1;CD3z;fas1;MCM6;E2F1;ID2;FBXO5;CDC20;HLA.DPB1;CGA;MMP12;CDC25B;IL6;CYBA;DR4;CRABP1;コンティグ.51037;VCAM1;FYN;GRB7;AKAP.2;RASSF1;MCP1;MCM2;GBP2;CD31;ER2;STAT1;TK1;ERBB2、CCNB1、BIRC5、STK6、MKI67、MYBL2、MMP11、CTSL2およびCD68のうちの1つ以上;またはその対応する発現産物の発現増大が確認される場合、前記報告は、前記被験体が化学療法に対する応答の可能性が増大しているという予測を含む、方法。
【請求項51】
化学療法剤を用いて前記患者を処置する工程をさらに包含する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が補助化学療法に供される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記患者が新補助化学療法に供される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記新補助化学療法がタキサン誘導体の投与を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記タキサンがドセタキセルまたはパクリタキセルである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記タキサンがドセタキセルである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記化学療法がさらなる抗癌剤の投与をさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記さらなる抗癌剤がアントラサイクリンクラスの抗癌剤のメンバーである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記さらなる抗癌剤がドキソルビシンである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記さらなる抗癌剤がトポイソメラーゼインヒビターである、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
請求項45に記載の方法であって、TBP;ABCC5;GATA3;DICER1;MSH3;IRS1;TUBB;BAD;ERCC1;PR;APC;GGPS1;KRT18;ESRRG;AKT2;A.カテニン;CEGP1;NPD009;MAPK14;RUNX1;G.カテニン;FHIT;MTA1;ErbB4;FUS;BBC3;IGF1R;CD9;TP53BP1;MUC1;IGFBP5;rhoC;RALBP1;STAT3;ERK1;SGCB;DHPS;MGMT;CRIP2;ErbB3;RAP1GDS1;CCND1;PRKCD;ヘプシン;AK055699;ZNF38;SEMA3F;COL1A1;BAG1;AKT1;COL1A2;Wnt.5a;PTPD1;RAB6C;GSTM1、BCL2、ESR1;または対応する発現産物のうちの1つ以上の発現増大が確認される場合、前記報告は、該被験体が化学療法に対する応答の可能性が低下しているという予測を含む、方法。
【請求項62】
前記RNA転写物が、イントロンに基づく配列であって、その発現が対応するエキソン配列の発現と相関する配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項63】
化学療法に対する患者の応答の可能性を決定するための方法であって:
(a)以下の遺伝子:ACTB、BAG1、BCL2、CCNB1、CD68、SCUBE2、CTSL2、ESR1、GAPD、GRB7、GSTM1、GUSB、ERBB2、MKI67、MYBL2、PGR、RPLPO、STK6、MMP11、BIRC5、TFRCのRNA転写物、またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程と;
(b)再発スコア(RS)を算出する工程と;
を包含する、方法。
【請求項64】
RSが50を超える患者が、化学療法に対して応答する可能性が高い患者の上方の50パーセントにある、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
RSが35未満である患者が、化学療法に対して応答する可能性が高い患者の下方の50パーセントにある、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
請求項63に記載の方法であって、RSが、
以下の遺伝子サブセット:
(i)増殖因子サブセット:GRB7およびHER2;
(ii)エストロゲンレセプターサブセット:ER、PR、Bcl2およびCEGP1;
(iii)増殖サブセット:SURV、Ki.67、MYBL2、CCNB1、およびSTK15;ならびに
(iv)浸潤サブセット:CTSL2、およびSTMY3;
を作製する工程であって、
ここで、任意のサブセット(i)〜(iv)内の遺伝子が、該腫瘍において0.40以上というピアソン相関係数で該遺伝子と同時発現する代替遺伝子によって置換され得る工程と;
サブセット(i)〜(iv)の各々の寄与を重み付けすることによって該被験体の乳癌再発に対する再発スコア(RS)を算出する工程と;
によって、決定される、方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法であって、CD68、GSTM1およびBAG1のRNA転写物、もしくはそれらの発現産物、または対応する代替遺伝子もしくはそれらの発現産物を決定する工程と、RSの算出において乳癌再発に対する該遺伝子または代替遺伝子の寄与を含める工程とをさらに包含する、方法。
【請求項68】
請求項66に記載の方法であって、RSが以下の式:
RS=(0.23〜0.70)×GRB7axisthresh−(0.17〜0.55)×ERaxis+(0.52〜1.56)×prolifaxisthresh+(0.07〜0.21)×invasionaxis+(0.03〜0.15)×CD68−(0.04〜0.25)×GSTM1−(0.05〜0.22)×BAG1
を用いることによって決定され、
ここで
(i)GRB7 axis=(0.45〜1.35)×GRB7+(0.05〜0.15)×HER2;
(ii)GRB7 axis<−2であるならば、GRB7 axis thresh=−2であり、かつGRB7 axis≧−2であるならば、GRB7 axis thresh=GRB7 axisであり;
(iii)ER axis=(Est1+PR+Bcl2+CEGP1)/4;
(iv)prolifaxis=(SURV+Ki.67+MYBL2+CCNB1+STK15)/5;
(v)prolifaxis<−3.5であるならば、prolifaxisthresh=−3.5であり、
prolifaxis≧−3.5であるならば、prolifaxishresh=prolifaxisであり;そして
(vi)invasionaxis=(CTSL2+STMY3)/2
であり、
ここで(iii)、(iv)および(vi)における遺伝子の個々の寄与は、0.5〜1.5の係数で重み付けされ、かつRSが高いほど、乳癌再発の可能性の増大を示す、方法。
【請求項69】
請求項66に記載の方法であって、RSが以下の式:
RS(範囲、0〜100)=+0.47×HER2群スコア
−0.34×ER群スコア
+1.04×増殖群スコア
+0.10×浸潤群スコア
+0.05×CD68
−0.08×GSTM1
−0.07×BAG1
を用いることによって決定される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
請求項63に記載の方法であって、RNA転写物が、イントロンに基づく配列であって、その発現が対応するエキソン配列の発現と相関している配列を含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−532113(P2007−532113A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507495(P2007−507495)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/011760
【国際公開番号】WO2005/100606
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504345126)ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド (17)
【出願人】(506339501)
【Fターム(参考)】