説明

化粧シートおよびその製造方法

【課題】 硬化皮膜と凹凸とを同時に有する化粧シートにおいて、凹凸がシャープに再現されていて、しかも基材と硬化皮膜と密着が優れており、凹凸の深さの増加により、基材と硬化皮膜との密着性の低下がない化粧シート、および製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 化粧シートを構成する熱可塑性樹脂シート2の表面に、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4を積層し、硬化樹脂保護層4の表面から凹凸5を形成することにより、プライマー層3および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層された構造とすることができ、課題を解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートを基材とし、硬化した樹脂からなる保護層を有し、表面に凹凸を有する化粧シート、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂シートを基材とする化粧シートとしては、従来から、種々の物が用いられている。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂シートを基材とし、印刷を施した後、表面塗装や凹凸付与(=エンボス)加工を行なう等して、様々な化粧シートが製造されている。
【0003】
これら化粧シートにおいて、表面塗装は、表面の艶の調整と、物理的および化学的性状の向上の目的で行なわれ、特に、後者の目的で、硬化性樹脂を用いて形成され、硬化皮膜とされることが多い。また、凹凸は、表面に変化を与える目的や、実際の具象物の表面の凹凸を模して、表面状態を再現する目的等で付与される。
【0004】
ところで、硬化皮膜の形成とエンボス加工を同じ化粧シートに行なう場合、硬化皮膜の形成を行なってからエンボス加工を行なって得た化粧シートは、凹凸はシャープに再現されるものの、凹凸が深くなるほど、密着性が低下する傾向があり、また、エンボス加工を行なってから、表面塗装を行なって得た化粧シートは、密着性が初期の状態から不十分であり、しかも、凹凸を埋めるために、表面の凹凸が鈍くなる。特に、後者のエンボス加工を行なってから、表面塗装を行なう方式では、凹凸に沿った硬化皮膜を形成すること自体が困難で、硬化皮膜が凹凸から浮いたり、硬化皮膜の一部が形成されない(=抜け)等により、凹凸のシャープさが損なわれると共に、密着強度が得られない。即ち、塗布等の方法では平坦な対象でないと、均一で、抜けのない硬化皮膜の形成ができないからである。上記のような傾向は、もともと接着性が高いとは言えないポリオレフィン系樹脂においては、より目立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、硬化皮膜と凹凸とを同時に有する化粧シートにおいて、凹凸がシャープに再現されていて、しかも基材と硬化皮膜と密着が優れており、凹凸の深さの増加により、基材と硬化皮膜との密着性の低下がない化粧シートを提供することであり、また、本発明は、そのような化粧シートを製造する方法をも提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、基材である熱可塑性樹脂シートに、プライマー層、好ましくは密着性と柔軟性の高いプライマー層と、硬化皮膜とを重ねて積層し、その後、エンボス加工を行なうことにより、また、このような積層構造とすることにより、解決されることが判明した。
【0007】
第1の発明は、熱可塑性樹脂シートの表面に、プライマー層形成用組成物、および硬化性樹脂組成物の層を順に積層し、必要に応じて両層に硬化手段を講じてプライマー層、および前記硬化性樹脂組成物の層が硬化した硬化樹脂保護層を形成し、その後、前記硬化樹脂保護層上からエンボス加工を行なって凹凸を形成することを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、前記硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物であり、前記硬化手段を電離放射線を照射することにより行なうことを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第3の発明は、第1または第2の発明において、前記熱可塑性樹脂シートがポリオレフィン系樹脂シートであり、プライマー層が、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物からなることを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第4の発明は、第3の発明において、前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分、ポリエステルポリオール成分、およびジイソシアネート成分との反応生成物であることを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第5の発明は、第4の発明において、前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレート、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオール、およびイソホロンジイソシアネートとの反応生成物であることを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第6の発明は、第3〜第5いずれかの発明において、プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比が40/60〜60/40であることを特徴とする化粧シートの製造方法に関するものである。第7の発明は、熱可塑性樹脂シートの表面に、プライマー層、硬化樹脂保護層が積層され、前記硬化樹脂保護層の表面から凹凸が形成されており、かつ、前記プライマー層、および前記硬化樹脂保護層が、前記凹凸に沿って積層されていることを特徴とする化粧シートに関するものである。第8の発明は、第7の発明において、前記熱可塑性樹脂シート自身が、着色および/または模様を施されたシートであることを特徴とする化粧シートに関するものである。第9の発明は、第8の発明において、前記熱可塑性樹脂シートが、着色および/または模様を施された単層のシートであることを特徴とする化粧シートに関するものである。第10の発明は、第8の発明において、前記熱可塑性樹脂シートが、複層のシートの積層体からなり、かつ、着色および/または模様を施されたものであることを特徴とする化粧シートに関するものである。第11の発明は、第7〜第9いずれかの発明において、前記硬化樹脂保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化したものであることを特徴とする化粧シートに関するものである。第12の発明は、第7〜第11いずれかの発明において、前記熱可塑性樹脂シートがポリオレフィン系樹脂シートであり、プライマー層が、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物からなることを特徴とする化粧シートに関するものである。第13の発明は、第12の発明において、前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分、ポリエステルポリオール成分、およびジイソシアネート成分との反応生成物であることを特徴とする化粧シートに関するものである。第14の発明は、第13の発明において、前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレート、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオール、およびイソホロンジイソシアネートとの反応生成物であることを特徴とする化粧シートに関するものである。第15の発明は、第12〜第14いずれかの発明において、プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比が40/60〜60/40であることを特徴とする化粧シートに関するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、熱可塑性樹脂シートの表面に、プライマー層を介して硬化樹脂保護層を形成してからエンボス加工を行なうので、エンボス加工後にプライマー層を介して硬化樹脂保護層を形成する場合に比べ、凹凸がシャープに再現され、熱可塑性樹脂シートと硬化樹脂保護層の密着性が優れ、凹凸を深く形成しても、凹凸に沿って硬化樹脂保護層が形成できるので、凹凸を深く形成しても、基材と硬化皮膜との密着性の低下が生じにくい化粧シートを得ることが可能な化粧シートの製造方法を提供できる。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、硬化性樹脂保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて形成され、電離放射線の照射により、容易に硬化が行なえる化粧シートの製造方法を提供できる。請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、接着性が必ずしも良好ではないポリオレフィン系樹脂シートを用いながらも、プライマー層を、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物で形成するため、ポリオレフィン系樹脂シートと硬化樹脂保護層との間の密着性、柔軟性、および耐候性が優れた化粧シートの製造方法を提供できる。請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果とほぼ同様な効果の助長が可能になる化粧シートの製造方法を提供できる。請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加え、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体の成分を特定したので、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレートを使用することにより、耐候性、密着性が特に良好となり、また、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオールを使用することにより、柔軟性が特に良好となり、イソホロンジイソシアネートを使用したことにより、物性、コスト面で優れたプライマー層を与えることが可能になる化粧シートの製造方法を提供できる。請求項6の発明によれば、請求項3〜5いずれかの発明の効果に加え、プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比を特定したので、プライマー層の塗膜の耐ブロッキング性、およびリコート性が優れた化粧シートの製造方法を提供できる。請求項7の発明によれば、熱可塑性樹脂シート、プライマー層、および硬化樹脂保護層の積層体に凹凸が形成されており、プライマー層および前記硬化樹脂保護層が凹凸に沿って積層されている構造を有しているので、凹凸が深くシャープであり、それでいて熱可塑性樹脂シートと硬化樹脂保護層との密着性が確保できる化粧シートを提供できる。請求項8の発明によれば、請求項7の発明の効果に加え、熱可塑性樹脂シート自身が、着色もしくは模様を施されていて、より装飾効果の高い化粧シートを提供できる。請求項9の発明によれば、請求項8の発明の効果に加え、熱可塑性樹脂シートが一層の構成の化粧シートを提供できる。請求項10の発明によれば、請求項8の発明の効果に加え、熱可塑性樹脂シートが二層の構成の化粧シートを提供できる。請求項11の発明によれば、請求項7〜9いずれかの発明の効果に加え、硬化樹脂保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化したものであることにより、表面の耐摩耗性、耐久性を備えた化粧シートを提供できる。請求項12の発明によれば、第7〜第11いずれかの発明の効果に加え、基材がポリオレフィン系樹脂シートでありながら、プライマー層を、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物で形成してあるため、基材と硬化樹脂保護層との間の密着性、柔軟性、および耐候性が優れた化粧シートを提供できる。請求項13の発明によれば、請求項12の発明の効果がより助長された化粧シート提供できる。請求項14の発明によれば、請求項13の発明の効果に加え、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体において、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレートが使用されているので、耐候性、密着性が特に良好であり、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオールが使用されているので、柔軟性が特に良好であり、イソホロンジイソシアネートが使用されているので、物性、コスト面で優れたプライマー層を有する化粧シート提供できる。請求項15の発明によれば、請求項12〜14いずれかの発明の効果に加え、プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比が特定されているので、プライマー層の塗膜の耐ブロッキング性、およびリコート性が優れた化粧シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】化粧シートの基本的な構造を示す断面図である。
【図2】「表刷り」タイプの化粧シートの断面図である。
【図3】「裏刷り」タイプの化粧シートの断面図である。
【図4】「ダブリングエンボスシート」タイプの化粧シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、化粧シート1の基本的な構造を示すもので、化粧シート1は、まず、熱可塑性樹脂シート2を基材とし、その片面にプライマー層3、および硬化樹脂保護層4が順に積層された三層の積層体からなるものである。そして、この積層体は、最表面の硬化樹脂保護層4から、直下のプライマー層3、および、その下層の熱可塑性樹脂シート2の上面から、その厚みの途中に到達する凹凸5を有しており、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層されたものである。なお、ここで言う凹凸5は、最表面から見える凹凸の意味と、下層、特に熱可塑性樹脂シートにも及んだ凹凸をも指し、熱可塑性樹脂シートが二層ある場合には下層の熱可塑性樹脂シートの凹凸をも指すものとする。
【0011】
化粧シート1の基材は、基本的には熱可塑性樹脂シート2からなるものであるが、エンボス加工を受けるのに充分な厚みがあれば、下面側(=裏面側)が、他の素材で裏打されたものであってもよく、例えば、紙や不織布が下面側に積層されたものであってもよい。
【0012】
熱可塑性樹脂シート2を構成する熱可塑性樹脂としては、一般的なものが使用可能であり、例えば、ポリエチレン樹脂、もしくはポリプロピレン樹脂等の汎用ポリオレフィン樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂もしくはビニル系共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、もしくはポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂等のポリフタル酸エステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、もしくはポリアクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む。)、ポリアミド樹脂(ナイロン6又はナイロン66等で通称される。)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、もしくはABS樹脂等が使用可能である。
【0013】
上記の一般的な熱可塑性樹脂のうち、従来は、ポリ塩化ビニル樹脂を使用することがほとんどで、その理由は、ポリ塩化ビニル樹脂シートとしたときに、接着性や熱接着性がよいため、印刷やラミネート上の支障がなく、エンボス加工も容易である上に、難燃性も備えており、さらに可塑剤の添加により硬軟の度合いを自在に調整できる利点もあるからである。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂シートは、構造中に塩素を含み、変褪色が避けられないし、燃焼時に有毒ガスが発生し、燃やせば煙も発生する。また、含んでいる可塑剤に起因する問題もある。
【0014】
ポリ塩化ビニル樹脂シート以外のシートとしては、高度の耐候性を必要とする場合には、アクリル樹脂シートが、また、耐汚染性を必要とする場合に、フッ素樹脂シート等が使用されることはあったが、いずれも、ポリ塩化ビニル樹脂シートに取って代わるほどのものではなかった。
【0015】
そこで、最近、ポリ塩化ビニル樹脂シートの代替のため、ポリオレフィン系樹脂シートが使用され始めており、大別すると、
(A)非エラストマーであるポリオレフィン系樹脂のシート
(B)ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのシートとがある。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂の1つのタイプは上記(A)の非エラストマーであるが、具体的にはポリエチレン(低密度、又は高密度)、ポリプロピレン(イソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/ブテン共重合体等の高結晶質のものである。ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂のもう1つのタイプは、上記(B)のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、次の(1)〜(8)のようなものである。
【0017】
(1)主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレン、又はアイソタクチックポリプロピレン等からなり、更に、ソフトセグメントとしてのエラストマー及び、必要に応じて無機充填剤を添加したもの。
【0018】
ここで、エラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム等がある。水素添加ジエンゴムは、上記のジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、高密度ポリエチレン又はポリプロピレン)の結晶化を抑え、柔軟性を向上させたものである。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン/プロピレン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、適量架橋させてもよい。
【0019】
(2)ハードセグメントがアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントがアタクチックポリプロピレンであるもので、好ましくは、成膜時のネッキングの解消可能とし、かつ、加工時の伸び、変形、破断を最小にするため、後者の割合が5〜50%、好ましくは20〜40%のもの(特公平6−23278号公報記載、なお以降、%で示す数字は、特に断りなければ、質量%である。)。
【0020】
(3)エチレン/プロピレン/ブテンの共重合体で、ブテンとして、1−ブテン、2−ブテン、またはイソブチレンの3種の構造異性体の1種を含むもの。次の(3a)〜(3c)が代表的である。
(3a)エチレン/プロピレン/ブテンの3元のランダム共重合体でありモノマー中のプロピレンが、好ましくは90%以上であるもの(特開平9−111055号公報記載)。
(3b)プロピレン成分含有率が50%以上である、エチレン/プロピレン/ブテンの3元の共重合体からなる非晶質と、結晶質ポリプロピレンからなるもの(特開平5−77371号公報記載)。
(3c)プロピレン及び/又は1−ブテンの含有量が50%以上の低結晶質と、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィンを含むものに、更に、油ゲル化剤を0.5%添加したもの(特開平7−316358号公報記載)。
【0021】
(4)ハードセグメントがポリエチレン、ポリプロピレン又はポリメチルペンテン等の結晶質であり、ソフトセグメントが部分架橋したエチレン/プロピレン非共役ジエン3元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムであるもの(特公昭53−21021号公報記載)。
【0022】
(5)ハードセグメントとしてのオレフィン系共重合体(結晶質)とソフトセグメントとしての未架橋モノオレフィン共重合体ゴムとを加熱しつつ剪断応力を加え、部分架橋させてあるもの(特公昭53−34210号公報記載)。
【0023】
(6)過酸化物と混合・加熱すると分子量が減って流動性が増す過酸化物分解型オレフィン重合体、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、プロピン/エチレン共重合体、又はプロピレン/ブテン−1共重合体をハードセグメントとし、同様な操作で流動性が減る過酸化物架橋型モノオレフィン重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体ゴム、エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体ゴム等をソフトセグメントとし、更には、同様な操作で架橋せず、流動性も変わらない過酸化物非架橋型炭化水素ゴム、等を過酸化物の存在下で混合・加熱して得られるもの(特公昭56−15741号公報記載)。
【0024】
(7)エチレン/スチレン/ブタジエン共重合体(特開平2−139232号公報記載)。
【0025】
(8)水酸基又はカルボキシル基を持たせた上記(1)〜(7)のオレフィン系エラストマー。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂シートとしては、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能である。ポリオレフィン系樹脂シートには、又、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤を添加する。このようなポリオレフィン系樹脂シートの厚みは20〜300μm程度である。また、ポリオレフィン系樹脂シートは、そのままでは接着性が乏しいため、印刷又は接着に関与する面にコロナ放電処理を行なって、接着性を改善しておくとよい。
【0027】
プライマー層3は、一般的には、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等を樹脂成分とし、これを溶解もしくは分散したプライマー層形成用組成物を使用して形成されたものである。
【0028】
熱可塑性樹脂シート2が、非エラストマーであるポリオレフィン系樹脂、もしくは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーで構成されるとき、プライマー層3は、アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と、イソシアネート化合物の反応生成物からなるものであることが接着性の向上の意味でより好ましい。
【0029】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、次の三成分、即ち、(A)末端に水酸基を有するアクリル重合体成分、(B)ポリエステルポリオール成分、および(C)ジイソシアネート成分の反応生成物からなるもので、これら三成分を配合して反応させてプレポリマーを製造し、このプレポリマーに、更にジアミン等の鎖延長剤を添加して鎖延長することにより、得られるものである。上記により、ポリエステルウレタンが形成するとともに、アクリル重合体成分が分子中に導入されて、末端に水酸基を有する、アクリル・ポリエステルウレタン共重合体が形成する。
【0030】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体において、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分との質量比は、アクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分=40/60〜60/40とするのが、耐ブロッキング性、リコート性等の特性が良好であるため好ましい。なお、アクリル樹脂成分とは、共重合体中のアクリル重合体に関するものであり、ウレタン樹脂成分とは、共重合体中のポリエステルポリオールとイソシアネート成分の合計に関するものである。
【0031】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体において、(A)の末端に水酸基を有するアクリル重合体成分としては、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いれられ、例えば、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメタクリル酸メチル重合体が、耐候性(特に、太陽光に対する劣化に対する耐久性)が優れ、また、ウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましく用いられる。
【0032】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体において、(B)のポリエステルポリオール成分は、(C)のジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成して、ウレタン樹脂成分となるものである。ポリエステルポリオール成分としては、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられ、特に、芳香族またはスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物またはその誘導体、又はエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、及び環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等が挙げられる。
【0033】
上記のジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、もしくはメチルペンタンジオール等の脂肪族短鎖ジオール等が挙げられる。また、上記の二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、もしくはテレフタル酸等がある。
【0034】
上記のポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分がアジピン酸、またはアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたアジペート系のポリエステルジオールである。
【0035】
プライマー層3において、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、耐候性および耐ブロッキング性等に寄与し、末端に水酸基を有するポリメタクリル酸メチルの場合、分子量が5000〜7000であることが好ましい。また、プライマー層3において、ウレタン樹脂成分は、層の柔軟性と被着体との密着性に寄与する。ウレタン樹脂において、ポリエステルポリオール成分の分子量は、プライマー層の柔軟性を充分発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸、またはアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるアジペート系のポリエステルジオールである場合、500〜5000が好ましい。
【0036】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体において、(C)ジイソシアネート成分としては、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族または脂環族のジイソシアネート化合物が用いられ、具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、もしくは1,4’シクロヘキシルジイソシアネートが挙げられる。これらのうち、イソホロンジイソシアネートが、物性、および価格が優れている点から好ましい。
【0037】
上記の(A)、(B)、および(C)を反応させる場合、アクリル重合体、ポリエステルジオール、および後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合も含める。)とイソシアネート基の当量比は、イソシアネート基が過剰となるようにして反応させる。
【0038】
上記の三成分を60〜120℃で2時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルジオール末端の水酸基と反応し、ポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共に、アクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤を加え、イソシアネート基をその鎖延長剤と反応させ、鎖延長することで、アクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する所望のアクリル・ウレタン共重合体が得られる。
【0039】
末端に水酸基を有するアクリル・ウレタン共重合体の製造例を、次に示す。
(A)分子量6000、両末端に水酸基を有するポリメチルメタクリレート、(B)1,4シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを重縮合させて得られるポリエステルジオール、および3メチルペンタンジオール、並びに、(C)イソホロンジイソシアネートを用い、また、鎖延長剤としてイソホロンジアミンを用いる。
【0040】
乾燥窒素が導入され、密閉可能で攪拌装置の付いた反応容器、上記の(A)、(B)、および(C)を配合し、75℃の温度で6時間反応させて、プレポリマーを得た後、得られたプレポリマーをメチルエチルケトンで溶解し、60℃の温度でイソホロンジアミンを滴下して鎖延長を行ない、さらにトルエン、およびイソプロピルアルコールを加えて、樹脂固形分38%のアクリル・ウレタン共重合体を得た。アクリル・ウレタン共重合体の分子量は53000、アクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比は50/50、溶剤組成は、メチルエチルケトン/トルエン/イソプロピルアルコール=55/40/5であった。
【0041】
上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体(=末端に水酸基を有する所望のアクリル・ウレタン共重合体)と共に、プライマー層3に用いれるイソシアネート化合物は、上記のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、例えば、2価以上の脂肪族または芳香族イソシアネート化合物が望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、もしくはリジンイソシアネート等の単量体、二量体、三量体、もしくはそれ以上の多量体、またはこれらのイソシアネート化合物をポリオールに付加した誘導体(アダクト体)等のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0042】
プライマー層3には、上記樹脂以外に、シリカ微粉末等の充填剤、もしくは光安定剤等の添加剤を添加してあってもよい。プライマー層3は、これら各成分を用い、必要に応じて溶剤もしくは希釈剤と混合して、プライマー層形成用組成物を作成し、得られたプライマー層形成用組成物を、熱可塑性樹脂シート2上に、公知の塗布方法であるグラビアコーティングもしくはロールコーティング等の方法により塗布し、その後、必要に応じて乾燥させ、硬化させることにより形成される。硬化のために加熱もしくは加温することもある。プライマー層3の厚みは、0.5〜10g/m2 であることが好ましい。
【0043】
なお、本発明においては、硬化樹脂保護層4を熱可塑性樹脂シート2に密着させるためにプライマー層3を形成しているが、化粧シートの最下面、即ち、被着体と積層する側にもプライマー層を形成してもよく、図1を引用して説明した化粧シート1に限らず、以降の図2〜図4を引用して説明するような化粧シート1においても、同様である。ただし、図3に示す化粧シート1のように、下面側にプライマー層を介して模様層、および着色層を形成したものは、必ずしも最下面のプライマー層は形成しなくてもよい。
【0044】
硬化樹脂保護層4は、硬化性樹脂組成物の層に硬化手段を講じて硬化させたものであり、一般的な熱硬化性樹脂を用いて構成することができるが、無色透明であり、硬化後の塗膜として柔軟性が得られる不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、もしくはエポキシ樹脂が使用され、とりわけ、ポリウレタン樹脂がよく使用される。これらを、溶剤もしくは希釈剤等と共に混合して硬化性樹脂保護層形成用組成物とし、通常の塗布手段により、プライマー層3上に塗布し、その後、必要に応じて乾燥させ、硬化させることにより、硬化樹脂保護層4が形成される。硬化のために加熱もしくは加温することもある。
【0045】
しかしながら、メラミン樹脂化粧板、もしくはジアリルフタレート樹脂化粧板等のように、熱プレス手段を用いて作成される熱硬化樹脂で表面を構成した化粧板並みの耐摩耗性、耐久性を、化粧シートの表面に備えさせるためには、紫外線硬化性もしくは電子線硬化性の、いわゆる電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて塗布等により層を形成し、紫外線もしくは電子線を照射して硬化させて得られる電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化したもので、硬化樹脂保護層4を構成することがより好ましい。
【0046】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、分子中に重合性不飽和結合または、カチオン重合性官能基を有する下記のプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合したものである。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は、紫外線又は電子線を用いる。
【0047】
上記のプレポリマー、オリゴマーの例のうち、分子中に重合性不飽和結合を有するものとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、トリアジンアクリレート等のアクリレート、もしくは、前記の各アクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
【0048】
また、上記のプレポリマー、オリゴマーの例のうち、カチオン重合性官能基を有するものとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、もしくはノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂等がある。
【0049】
さらに、上記のモノマーの例としては、単官能のものでは、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブチルアクリレート、もしくはフェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリレート類、または対応する単官能メタクリレート類、多官能のものでは、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類、または対応する多官能メタクリレート類が挙げられる。なお、チオール基を有するモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、もしくはジペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等がある。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーや表面硬度等の物性を調整するため、電離放射線硬化性樹脂組成物に、電離放射線照射では硬化しない樹脂を添加することもでき、具体的には、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂である。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布後の硬化が紫外線照射により行われるときは、光重合開始剤や光重合促進剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100に対し、0.1〜10である(質量基準)。
【0052】
硬化樹脂保護層4には、層の表面の耐摩耗性を向上させる意味で、好ましくは無機質であって、硬化樹脂よりも高硬度の球状粒子を含有させるとよい。球状粒子としては、必ずしも真球である必要はなく、α−アルミナ、シリカ、酸化クロム、酸化鉄、ダイアモンド、黒鉛等が例示できるが、中でも、硬度が高く、球形のものが多い点から、球形のα−アルミナ(昭和電工株式会社の球状アルミナAS−10からAS50)であって、平均粒径が5〜100μmのものを使用することが好ましい。
【0053】
上記のプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマー、必要に応じて添加する樹脂、光重合開始剤、および球状粒子等を、さらに必要であれば、溶剤もしくは希釈剤と共に混合して、硬化樹脂保護層形成用組成物とした後、得られた硬化樹脂保護層形成用組成物を、プライマー層3上に、公知の塗布方法であるグラビアコーティングもしくはロールコーティング等の方法により塗布し、その後、必要に応じて乾燥させた後、紫外線もしくは電子線を照射して硬化させることにより、硬化樹脂保護層が形成される。硬化樹脂保護層の厚みは、2〜20g/m2 であることが好ましい。
【0054】
硬化のための紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボナーク灯、ブラックライト、蛍光灯、メタルハライドランプ等を使用し、これらから発する波長190〜380nmの紫外線を用いる。また、硬化のための電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、もしくは高周波型等の各種電子線加速機を用い、100〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを持つ電子線を照射する。
【0055】
図1に示す化粧シート1は、熱可塑性樹脂シート2、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4からなる積層体に、最表面の硬化樹脂保護層4から、直下のプライマー層3、および、その下層の熱可塑性樹脂シート2の上面から、その厚みの途中に到達する凹凸5を有しており、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層されたものである。この凹凸5は、凹凸を表面に有する金属板、金属ロール等の凹凸型を、上記の積層体の硬化樹脂保護層側に当てて、加圧、通常は加熱および加圧し、加熱を伴なったときは、その後、冷却することにより、形成されるものである。加熱には凹凸型を加熱する場合、および/または積層体を加熱する場合がある。
【0056】
ところで、化粧シート1は、基材となる熱可塑性樹脂シート2に何らかの化粧が施されたものであることが好ましい。上記の説明の化粧シート1においては、凹凸5を有しているが、化粧シート1としては、さらに、着色されているか、もしくは模様が付与されていることが、より好ましい。また、化粧シート1の基材は、図1におけるように1枚の場合もあるが、2枚の場合もある。以降に、基材が1枚のシートからなる場合、および2枚のシートからなる場合について、着色されているもの、もしくは模様が付与されたものについて説明する。
【0057】
図2に示す化粧シート1は、着色された着色熱可塑性樹脂シート2a上に、プライマー層3a、着色層6a、絵柄層6b、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が順に積層された積層体からなるものであり、この積層体は、最表面の硬化樹脂保護層4から最下層の熱可塑性樹脂シート2の上面側から見て、その厚みの途中に到達する凹凸5を有しており、プライマー層3a、着色層6a、絵柄層6b、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層されたものである。いわゆる「表刷り」のタイプの化粧シートである。
【0058】
ここで、プライマー層3および3aのいずれも、もしくは、少なくとも、下側のプライマー層3は、図1に関連して既に説明したプライマー層3を構成するのと同じ素材を用いて構成される。
【0059】
着色層6aおよび絵柄層6bは、いずれか一方、もしくは両方を形成することを選択し得る。絵柄層6bは、通常、下層を隠蔽しないので、絵柄層6b上から下層が透視可能である。着色層6aおよび絵柄層6bは、いずれも、熱可塑性樹脂、例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはポリ酢酸ビニル樹脂等をバインダ樹脂とし、染料もしくは顔料からなる着色剤、添加剤、溶剤、および希釈剤等を添加し、混練して作成したインキ組成物を用いて、印刷法により、形成することができる。着色層6aは均一一様に形成された、いわゆるベタ層であるので、塗布方法によって形成することもできる。
【0060】
図3に示す化粧シート1は、透明である透明熱可塑性樹脂シート2bの下面に、プライマー層3a、絵柄層6b、および着色層6aが順に積層され、また、透明熱可塑性樹脂シートの上面に、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が順に積層された積層体からなるものであり、この積層体は、最表面の硬化樹脂保護層4から、透明熱可塑性樹脂シート2bの上面側から見て、その厚みの途中に到達する凹凸5を有しており、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層されたものである。いわゆる「裏刷り」タイプの化粧シートである。
【0061】
図3を引用して説明した例においても、プライマー層3および3aは、いずれも、図1に関連して既に説明したプライマー層3を構成するのと同じ素材を用いて構成され、着色層6aおよび絵柄層6bは、図2を引用して説明した場合と同様な材料、手段を用いて形成される。この場合、着色層6aは、化粧シート1に隠蔽性を与える意味で、無いよりは、むしろ形成してあった方がよく、隠蔽性のある顔料を加えて形成するとよい。
【0062】
図4に示す化粧シート1は、着色された着色熱可塑性樹脂シート2a上に、プライマー層3a、着色層6a、および絵柄層6bが順に積層されており、ここまでは、図2を引用して説明した化粧シート1と共通部分を有する。絵柄層6b上には接着剤層7を介して透明熱可塑性樹脂シート2bが積層されており、透明熱可塑性樹脂シート2b上には、図1を引用して説明した化粧シート1におけるのと同様、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が順に積層されて積層体を構成している。この積層体は、最表面の硬化樹脂保護層4から、着色熱可塑性樹脂シート2aの上面側から見て、その厚みの途中に到達する凹凸5を有しており、プライマー層3a、着色層6a、絵柄層6b、接着剤層7、透明熱可塑性樹脂シート2b、プライマー層3、および硬化樹脂保護層4が、凹凸5に沿って積層されたものである。二枚のシートを積層してあることから、「ダブリングシート」、また、エンボス加工も付与されていることから、「ダブリングエンボスシート」とも言う。なお、二枚のシートを使用する場合において、二枚のシートの両方を透明熱可塑性樹脂シートで構成してもよく、この場合、両シートの間に絵柄層6bのみ形成する場合と、絵柄層6bの下層に着色層6aを伴なう場合とがある。また、両シートの間には絵柄層6bのみ形成し、下層側の透明熱可塑性樹脂シートの下面に着色層6aを形成してもよい。
【0063】
ここで、新たに加わった接着剤層7は、省略することも可能であるが、ポリオレフィン系樹脂シートを基材として使用するときは、接着剤層が介在した方がよく、接着剤層としては種々のものが使用できるが、濡れやすく、柔軟性が得られ、ドライラミネーションが可能である点で、ポリオールの主剤とイソシアネート化合物の硬化剤からなる、二液型のポリウレタン系樹脂の接着剤を用いて構成することが好ましい。
【0064】
なお、熱可塑性樹脂シートを三枚以上積層して化粧シート1を構成することも考えられるが、三枚以上使用しないと必要な厚みが得られないものでもなく、また、三枚以上のシートを使用することは、経済的でもないので、特別な効果を狙う場合を除き、1枚もしくは2枚のシートを使用して化粧シート1とすることが好ましい。
【0065】
ところで、本発明によると、特に、プライマー層として、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物を用いて構成したときは、柔軟性があり、かつ接着性が優れているので、熱可塑性樹脂シート2上にプライマー層3、および硬化樹脂保護層4が積層された状態(図1、図2、図3、および図4を引用して説明した化粧シートを得る前の積層体をいずれも含む。)で、硬化樹脂保護層4にエンボス加工を行なって凹凸を形成する際に、積層体が部分的に伸ばされ、積層界面にひずみが生じても、ひずみを吸収しやすいため、エンボスにより、浅い凹凸は勿論だが、かなり深い凹凸を形成することができる。一例として、凹凸のピッチが50〜150μm、好ましくは50〜100μm、高低差が50〜300μm、好ましくは50〜150μmのような深い凹凸も充分できる。また、平坦な表面に凹部を形成する場合、凹部の短径が30〜200μm、好ましくは30〜150μm、深さが30〜300μm、好ましくは30〜150μmのような深い凹部を形成することもできる。
【実施例】
【0066】
(実施例1)厚み60μmのポリオレフィン系樹脂シートの表裏両面にコロナ放電処理を施し、下記の各インキ組成物を使用し、いずれもグラビア印刷法により、プライマー層と、ベタ層、および絵柄層からなる模様層を順次積層した。
(プライマー層形成用インキ組成物)
・ポリウレタン樹脂 28質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 4質量部
・シリカ 4質量部
・メチルエチルケトン 34質量部
・トルエン 34質量部
【0067】
得られた印刷済みのシートの絵柄面上に、下記の接着剤組成物を使用し、ロールコーティング法により、乾燥時塗布量が10g/m2になるよう塗布し、乾燥させて、接着剤層を形成した後、この接着剤層上に、ポリプロピレン樹脂を溶融押し出しして、厚み80μmの透明層を形成し、着色シートと透明層の間に模様層が挟まれた複層シートとした。
(接着剤組成物)
・ポリエステルポリオール 50質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 7質量部
・酢酸エチル 50質量部
【0068】
上記で得られた複層シートの透明層表面にコロナ放電処理を施し、処理面に、下記組成のプライマー層形成用塗料組成物を乾燥時塗付量が1g/m2 になるよう塗布し、さらに、表面保護層形成用ウレタンアクリレート系電子線硬化性樹脂組成物を乾燥時塗付量が15g/m2 になるよう塗布した後、電子線照射装置を用いて、加速電圧125KV、照射線量5Mrad、酸素濃度200ppm以下、の条件で電子線を照射して、両塗膜を硬化させて、表面保護層を形成した。
(プライマー層形成用塗料組成物)
・アクリル・ウレタン共重合体 48質量部
(段落0037〜0038の製造例のもの)
・ヘキサメチレンジイソシアネート 5質量部
・シリカ 4質量部
・メチルイソブチルケトン 7質量部
・メチルエチルケトン 41質量部
(絵柄層形成用インキ組成物)
・ポリウレタン樹脂 3質量部
・アクリルポリオール 12質量部
・顔料 10質量部
・シリカ 1質量部
・メチルエチルケトン 37質量部
・メチルイソブチルケトン 37質量部
(表面保護層形成用ウレタンアクリレート系電子線硬化性樹脂組成物)
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 40質量部
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー 10質量部
・シリカ 5質量部
・酢酸エチル 45質量部
【0069】
表面保護層が形成されたシートを、エンボス機にかけて、表面側より版深100μm以上の梨地状エンボス版を用いてエンボスを行なった。得られた製品の表面の塗膜は、初期密着性、および耐候性試験後の密着性の評価において剥離が無く、また、エンボス版の凹凸形状の再現性も充分であった。
【0070】
上記において、初期密着性は、カッターナイフにて、硬化樹脂保護層およびプライマー層、その下層の透明層に至る2mm間隔の縦横各々11本の切り目を入れて、100個の碁盤目を形成し、その上にセロハン粘着テープを貼って、45°方向に急激に剥離して剥離の有無を観察した結果である。また、耐候性試験を、スーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)を用い、温度;63℃、相対湿度;70%、照射強度;60mW/cm2 、DEWサイクル;照射20時間/DEW4時間として行ない、試験後に上記と同様の密着性評価を行ない、耐候性試験後の密着性とした。さらにエンボス版の凹凸形状の再現性については、目視で行ない、「充分」;深さおよび形状とも充分なもの、「やや不充分」;深さおよび形状ともやや不充分なもの、および「不充分」;深さおよび形状とも不充分なもの、とした。
【0071】
(比較例1)複層シートに、先に、表面側より版深100μm以上の梨地状エンボス版を用いてエンボスを行なった後、エンボス面にコロナ放電処理を施し、その後、プライマー層形成、保護層形成を行ない、それ以外は、実施例1におけるのと同様にした。得られた製品の表面の塗膜は、初期密着性、および耐候性試験後の評価において剥離がかなりあり、またエンボス版の凹凸形状の再現性は、「やや不充分」であった。
【0072】
(比較例2)比較例1におけるのと同様に、ただし、エンボスを、版深20μmの砂目状エンボス版を用いて行なった。得られた製品の表面の塗膜は、初期密着性、および耐候性試験後の密着性の評価で、僅かに剥離があり、また、エンボス版の凹凸形状の再現性は、「不充分」であった。
【0073】
(比較例3)プライマー層形成用塗料組成物として下記のものを使用した以外は実施例1と同様にして行なった。
(プライマー層形成用塗料組成物)
・ポリエステルポリオール 30質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 4質量部
・メチルエチルケトン 35質量部
・トルエン 35質量部
【0074】
得られた製品の表面の塗膜は、初期密着性の評価では剥離が無かったが、耐候性試験後の密着性の評価では剥離がかなりあった。また、エンボス版の凹凸形状の再現性は、「充分」であった。
【0075】
(比較例4)プライマー層形成用塗料組成物として下記のものを使用した以外は実施例1と同様にして行なった。
(プライマー層形成用塗料組成物)
・ポリエステルポリオール 17質量部
・アクリル樹脂 17質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 4質量部
・メチルエチルケトン 33質量部
・トルエン 33質量部
【0076】
得られた製品の表面の塗膜は、初期密着性の評価では剥離が無かったが、耐候性試験後の密着性の評価では、僅かに剥離があった。また、エンボス版の凹凸形状の再現性は、「充分」であった。
【符号の説明】
【0077】
1 化粧シート
2 熱可塑性樹脂シート
3 プライマー層
4 硬化樹脂保護層
5 凹凸
6 模様層(6a;着色層、6b;絵柄層)
7 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートの表面に、プライマー層形成用組成物、および硬化性樹脂組成物の層を順に積層し、必要に応じて両層に硬化手段を講じてプライマー層、および前記硬化性樹脂組成物の層が硬化した硬化樹脂保護層を形成し、その後、前記硬化樹脂保護層上からエンボス加工を行なって凹凸を形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物であり、前記硬化手段を電離放射線を照射することにより行なうことを特徴とする請求項1記載の化粧シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂シートがポリオレフィン系樹脂シートであり、プライマー層が、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物からなることを特徴とする請求項1または2記載の化粧シートの製造方法。
【請求項4】
前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分、ポリエステルポリオール成分、およびジイソシアネート成分との反応生成物であることを特徴とする請求項3記載の化粧シートの製造方法。
【請求項5】
前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレート、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオール、およびイソホロンジイソシアネートとの反応生成物であることを特徴とする請求項4記載の化粧シートの製造方法。
【請求項6】
プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比が40/60〜60/40であることを特徴とする請求項3〜5いずれか記載の化粧シートの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂シートの表面に、プライマー層、硬化樹脂保護層が積層され、前記硬化樹脂保護層の表面から凹凸が形成されており、かつ、前記プライマー層、および前記硬化樹脂保護層が、前記凹凸に沿って積層されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂シート自身が、着色および/または模様を施されたシートであることを特徴とする請求項7記載の化粧シート。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂シートが、着色および/または模様を施された単層のシートであることを特徴とする請求項8記載の化粧シート。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂シートが、複層のシートの積層体からなり、かつ、着色および/または模様を施されたものであることを特徴とする請求項8記載の化粧シート。
【請求項11】
前記硬化樹脂保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化したものであることを特徴とする請求項7〜10記載の化粧シート。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂シートがポリオレフィン系樹脂シートであり、プライマー層が、アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体と、イソシアネート化合物との反応生成物からなることを特徴とする請求項7〜11いずれか記載の化粧シート。
【請求項13】
前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分、ポリエステルポリオール成分、およびジイソシアネート成分との反応生成物であることを特徴とする請求項12記載の化粧シート。
【請求項14】
前記アクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体が、末端に水酸基を有する分子量5000〜7000のポリメチルメタクリレート、分子量500〜5000のアジペート系ポリエステルポリオール、およびイソホロンジイソシアネートとの反応生成物であることを特徴とする請求項13記載の化粧シート。
【請求項15】
プライマー層を構成するアクリル樹脂とウレタン樹脂の共重合体におけるアクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分の比が40/60〜60/40であることを特徴とする請求項12〜14いずれか記載の化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−136578(P2011−136578A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46157(P2011−46157)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【分割の表示】特願2000−241437(P2000−241437)の分割
【原出願日】平成12年8月9日(2000.8.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】