説明

化粧料

【課題】アブラナ科ブラシカ属の植物を素材として得られ、従来公知の該植物の抽出物よりもすぐれた皮膚生理活性を具えると共に、皮膚刺激性や保存安定性に於いて上記の抽出物よりも改善された特性を示す新規な成分が配合されてなり、すぐれた皮膚健全化効果と高い生体安全性を有し、しかも品質保持性の良好な化粧料を提供すること。
【解決手段】アブラナ科ブラシカ属の植物を乳酸菌等で醗酵させて得られる発酵物を配合してなる化粧料の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブラナ科ブラシカ属に属する植物の発酵物を配合してなる化粧料に関し、詳しくは上記の発酵物を配合してなり、美白効果とさらに皮膚老化防止効果に於いて高い有効性を示し、総合的かつすぐれた皮膚健全化効果を発揮すると共に、生体安全性や品質安定性にもすぐれた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科ブラシカ属の植物に含まれる成分は、皮膚を健全で若々しい状態に保持し或いは改善するために有効な様々な皮膚生理活性を具えており、化粧料用の配合成分として極めて有用性の高いものである。
このアブラナ科ブラシカ属植物(以下、ブラシカ属植物ということがある)の成分の示す生理活性とその皮膚に対する効果に関しては、該植物の抽出物についてよく研究、検討がなされており、例えば特開平8−325130号公報には、メラニン生成抑制作用及び抗炎症作用に基づく美白効果や美肌化効果が、特開2003−81848号公報には、スーパーオキサイドや過酸化水素などの活性酸素の消去作用に基づく皮膚老化防止効果が、又特開2003−238429号公報には、線維芽細胞賦活作用に基づく皮膚老化防止効果及び肌荒れの予防・改善効果がそれぞれ開示されており、さらに特開2003−342150号公報には、当該抽出物が線維芽細胞の産生する細胞外マトリックス成分のエラスチンに類似した作用を有し、同じく皮膚老化防止と肌荒れの予防・改善に有効であることが示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−325130号
【特許文献2】特開2003−81848号
【特許文献3】特開2003−2338429号
【特許文献4】特開2003−342150号
【0004】
このようにブラシカ属植物、特にその抽出物は、多様でかつすぐれた皮膚生理活性を有し、化粧料配合原料として利用価値の高いものであるが、他方ブラシカ属植物の抽出物には、一般に保存中に着色やオリが発生し易く、保存安定性が必ずしも十分ではないという難点があり、又該植物のうちでも、白芥(Brassica alba)、黄芥(Brassica juncea)、黒芥(Brassica nigra)などの場合、就中それらの種子の場合には、その抽出物が皮膚に対して多少の刺激性を示すという問題もあって、それらの難点を改善し或いは解消することが、アブラナ科ブラシカ属植物の抽出物を化粧料配合成分として使用するに当たっての解決課題となっている。
【0005】
これに対して本発明者らは先に、ブラシカ属植物の抽出物を蛋白分解酵素で処理した場合、該抽出物の有するすぐれた皮膚生理活性はこれを保持したまま、その保存安定性と皮膚刺激性を大きく改善することが可能であることを見い出し、かかる知見に基づいてブラシカ属植物抽出物の酵素処理分解物とこれを含む化粧料について特許出願を行った(特願2004-141666号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブラシカ属植物の化粧料への利用に係る上述の如き技術的背景の下になされたものであり、その目的とするところは、ブラシカ属植物を素材として用いて、保存安定性と生体安全性の点では上記の酵素処理分解物と同様のすぐれた特性を有すると共に、皮膚生理活性に於いては酵素処理分解物や従来公知の抽出物よりもさらに高い有効性を示す化粧料配合成分を調製することにより、品質安定性と生体安全性にすぐれ、しかも皮膚健全化効果の一段と改善された化粧料の提供を可能ならしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、アブラナ科ブラシカ属(Brassica)の植物を発酵させた発酵物を配合してなる化粧料に関するものである。
なおここで、化粧料なる文言は所謂化粧料のほかに医薬部外品をも含む広義で用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明で化粧料配合成分として用いるアブラナ科ブラシカ属植物の発酵物は、該植物の抽出物や酵素処理分解物に比べてより高められた線維芽細胞賦活作用と同等或いはそれ以上のメラニン生成抑制作用を有し、皮膚生理活性に於いてそれら抽出物や酵素処理分解物よりもすぐれるばかりでなく、保存安定性や皮膚刺激性の面では、酵素処理分解物と同様に大きく改善されたものとなっている(後述の試験例参照)。
従って、かかる発酵物を配合してなる本発明の化粧料は、ブラシカ植物の抽出物や酵素処理分解物を配合した化粧料よりも一層すぐれた、そして総合的な皮膚健全化効果を発揮するばかりでなく、発酵物の有する高い保存安定性の故に、長期保存中にも着色やオリを生ずることがなく品質保持性にすぐれ、しかも該発酵物が実質的に皮膚刺激性を有さないことから、皮膚に適用した場合、紅斑等の発生の恐れがなく安全性にも極めてすぐれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるブラシカ属植物としては、例えば白芥(Brassica alba)、黄芥(Brassica juncea)、黒芥(Brassica nigra)、アブラナ(Brassica ropa)などを挙げることができる。それらブラシカ属植物のうちでも、得られる発酵物の線維芽細胞賦活作用、メラニン生成抑制作用等の皮膚生理活性の観点から、白芥、黄芥或いは黒芥などの芥子類、就中それらの種子が好ましく、特に白芥の種子(白芥子)を用いた場合、すぐれた皮膚生理活性を有する発酵物が得られることから最も好ましい。
【0010】
それらブラシカ属植物を素材として用いて本発明の発酵物を調製する方法としては、該植物の種子、葉、花、雄しべ、雌しべ、茎、根、全草など適宜の部分、好ましくは種子を、必要に応じて予め水洗、乾燥し、又好適には細切もしくは粉砕した上、発酵媒体中に懸濁させて発酵させる方法、或いは上記と同様にして得られるブラシカ属植物の細切物もしくは粉砕物を溶媒で抽出し、ここに得られる抽出物を発酵させる方法などが好ましく用いられるが、発酵方法はそれらに限定されるものではなく、要はブラシカ属植物の含有乃至構成成分を発酵せしめ得る方法であればいずれでもよい。
【0011】
発酵に用いる菌としては、乳酸菌、麹菌、納豆菌、酵母等が挙げられ、それらの菌のいずれを用いた場合であっても、すぐれた線維芽細胞賦活作用とメラニン生成抑制作用を有し、しかも高い保存安定性と生体安全性を示す発酵物が得られるが、なかでも乳酸菌を用いた場合に特に好ましい結果が得られる。
【0012】
ここで乳酸菌としては、例えばラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス ブレビス(L. brevis)、ラクトバシルス カゼイ(L. casei)等のラクトバシルス(Lactobacillus)属の乳酸菌;カルノバクテリウム ディバージェンス(Carmobacterium divergens)、カルノバクテリウム ピシコーラ(Carmobacterium piscicola)等のカルノバクテリウム(Carmobacterium)属の乳酸菌;ロイコノストック メセンテロイズ(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック シトレウム(Leuconostoc citreum)等のロイコノストック(Leuconostoc)属の乳酸菌; ストレプトコッカス フェーカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス ビオジェネス(Streptococcus pyogenes)等のストレプトコッカス属の乳酸菌;エンテロコッカス カゼリフラバス(Enterococcus caseliflavus)、エンテロコッカス サルフレウス(Enterococcus sulfreus)等のエンテロコッカス( Enterococcus)属の乳酸菌;ラクトコッカス プランタラム(Lactococcus plantarum) ラクトコッカス ラフィノラクティス(Lactococcus rafinolactis)等のラクトコッカス属の乳酸菌;ヴェイセラ コンフューザ(Weissella confusa)、ヴェイセラ カンドュレリ(Weissella kandleri)等のヴェイセラ属の乳酸菌;アトポビウム ミニュタム(Atopobium minutum)、アトポビウム パービュラス(Atopobiumparvulus)等のアトポビウム(Atopobium)属の乳酸菌;バゴコッカス フルビアリス(Vagococcus fluvialis)、バゴコッカス サーモニナラム(Vagococcus salmoninarum)等のバゴコッカス(Vagococcus)属の乳酸菌;ペディオコッカス ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等のペディオコッカス(Pediococcus)属の乳酸菌等が挙げられる。それら乳酸菌のうちでも、得られる発酵物の皮膚生理活性と取り扱いのし易さの観点から、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)の使用が最も好ましい。
【0013】
麹菌としては、例えばアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス ポリオキソジェネス(Aspergillus polyoxogenes)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)等の黄麹菌、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス カワウチ(Aspergillus kawauchii)、アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami)、
アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等の黒麹菌、モナスカス アンカ(Monascus anka)、モナスカス ピロサス(Monascus pilosus)等の紅麹菌などが挙げられる。それらのうちでも、発酵液の着色や発酵臭が比較的少ないことから、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)が最も好ましい。
【0014】
納豆菌としては、例えばバシルス ナットー(Bacillus natto)、バシルス サブチルス(Bacillus subtilis)、バシルス サーキュランス(Bacillus circulans)等のバシルス属の細菌などが挙げられる。なかでも、食品に広く使用されており、安全性が高い点でバシルス ナットー(Bacillus natto)が最も好ましい。
【0015】
酵母としては、例えばサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス アワモリ(Saccharomyces awamori)、サッカロミセス チェバリエリ(Saccharomyces chevalieri)、サッカロミセス カールスバージェンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス バヨナス(Saccharomyces bayo
nus)等のサッカロミセス属の酵母、トルラスポラ デルブルエキ(Torulaspora delbruekii)、トルラスポラ ファーメンタチ(Torulaspora fermentati)、トルラスポラ ロゼー(Torulaspora rosei)等のトルラスポラ属の酵母、ジゴサッカロミセス ローキシ(Zygosaccharomyces rouxii)、ジゴサッカロミセス ソーヤ(Zygosacchar
omyces soya)、ジゴサッカロミセス サケ(Zygosaccharomyces sake)、ジゴサッカロミセス ミソ(Zygosaccharomyces miso)、ジゴサッカロミセス ラクティス(Zygosaccharomyces lactis)等のジゴサッカロミセス属の酵母、カンディダ ベルサチリス(Candida versatilis)、カンディダ エチェリシイ(Candida etchellsii)、カンディダ ケフィール(Candida kefyr)、カンディダ サケ(Candida sake)、カンディダ スコッティ(Candida scottii)等のカンディダ属の酵母などが挙げられる。
それらのうちでも、食品に最も広く利用され、発酵力が強いという点からサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が最も好ましい。
【0016】
発酵方法として、ブラシカ属植物を発酵媒体中に懸濁させて発酵を行わしめる
方法を用いる場合、発酵媒体としては、水、水とエタノール、プロパノールなどの低級アルコール類との混合液、水とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどのグリコール類との混合液、水とソルビトール、グルコースなどの糖類との混合液等を用いることができるが、発酵に用いる菌が最も作用し易い点とブラシカ属植物以外に菌の栄養源となる成分を含まない点で、水単独が最も好ましい。
混合液を用いる場合は、水100重量部に対して低級アルコール類、グリコール類、糖類などを一般に20重量部以下、特に10重量部以下混合するようにするのがよい。
ブラシカ属植物と上記の抽出媒体との混合比は、重量比で一般に1:1〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:2〜1:100、より好ましくは1:5〜1:50の範囲である。ブラシカ属植物の量比が大きすぎると発酵液の収量が低下し、又小さすぎると発酵液の濃度が希薄となっていずれも好ましくない。
【0017】
一方、発酵法としてブラシカ属植物の抽出物を発酵させる方法を用いる場合、抽出方法としては浸漬法、向流抽出法などを用いることができる。又超臨界抽出法を用いてもよい。
抽出溶媒としては、前記の懸濁液の調製に用いた発酵媒体と同様のもの、即ち水或いは水と低級アルコール類、グリコール類或いは糖類等との混合液、特に水単独が好ましく用いられる。抽出溶媒として酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類或いはn−ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などを用いることもできるが、それらを抽出溶媒として用いた場合には、得られた抽出液から一旦溶媒を留去して固形分を分取した上、これを水或いは上記の混合液に再溶解もしくは再分散させて発酵を行わしめるようにする。
ブラシカ属植物と抽出溶媒の量比としては、前述の懸濁液の調製に於けるブラシカ属植物と発酵媒体との混合比と同様の範囲が一般に用いられる。
【0018】
抽出に際して、抽出液のpHに特に限定はないが、一般には3.0〜9.0の範囲とすることが好ましく、かかる意味で、必要ならば前記の抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤や、クエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤等を添加し、目的とするpHとなるように調整してもよい。
【0019】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpH、或いは被抽出物の細切度、粒度等によっても異なるが、例えば水を抽出溶媒とする浸漬法の場合であれば、抽出温度は一般に1〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、又抽出時間は、室温抽出の場合で一般に0.5〜72時間の範囲、特に1〜24時間の範囲である。
【0020】
以上の如きブラシカ属植物の懸濁液或いは抽出物溶液の菌による発酵は、例えば以下のようにして行われる。
即ち、発酵に先立ってまず懸濁液や抽出物溶液に殺菌処理を施す。殺菌処理としては、それらの液を120〜130℃で10〜20分間加熱するオートクレーブ殺菌法や、80〜90℃に60〜120分間保持することを1日1回2〜3日間繰り返す間断殺菌法といった加熱殺菌法が一般に用いられる。
懸濁液や抽出物溶液を殺菌する方法に代えて、素材のブラシカ属植物それ自体を予め殺菌用エタノール等で洗浄殺菌し、これを無菌水等の無菌媒体と混合することにより、無菌化された懸濁液或いは抽出物溶液を調製するようにしてもよい。
【0021】
次に、無菌化した懸濁液或いは抽出物溶液に菌を接種する。菌の接種量は10〜10個/mLが適量である。接種量が上記の範囲より多くなっても発酵の進行時間は殆ど変わらず、一方上記の範囲より少なくなると発酵完了迄に長時間を要することとなって好ましくない。
【0022】
発酵温度は、5〜50℃の範囲であれば発酵が進行し目的の発酵物を得ることができるが、より好ましくは各菌の生育至適温度である30〜40℃の範囲である。
発酵日数は、上記の至適温度で発酵を行う場合で一般に1〜10日であり、より好ましくは2〜5日である。発酵日数が1日より短いと発酵が十分に行われず、目的とする高い皮膚生理活性を具えた発酵物を得ることが困難となる。一方、発酵日数が10日を越えて長くなり過ぎても、それ以上発酵は進行せず発酵物の有効性に向上が認められないだけでなく、かえって着色や発酵臭が強まるなどの不都合が生じ好ましくない。
【0023】
所定の発酵日数が経過したならば、次に発酵液を、例えば80〜90℃で60〜120分間加熱する方法などを用いて殺菌し、発酵を停止せしめた後、ろ過或いは遠心分離などの固液分離手段を用いて不溶物を除去し、目的の発酵物を含む溶液を得る。
ここに得られる発酵物溶液は、一般にはpHを4〜8に調整した上、これをそのまま化粧料に配合するか、もしくは必要ならば減圧濃縮等により所定の濃度に調整した上化粧料に配合する。又場合によっては、スプレードライ法、凍結乾燥法など常法に従って粉末化してもよい。
【0024】
なお、以上の発酵を行うに際して、ブラシカ属植物の懸濁液或いは抽出物溶液に、蛋白分解酵素による加水分解処理を施すようにしてもよく、これによって発酵後の固液分離操作が容易となるだけでなく、発酵液の保存安定性もさらに良好なものとなる。
この酵素加水分解処理は、発酵の前に行ってもよく、又発酵と並行してこれを行ってもよい。
【0025】
酵素加水分解処理を行う場合、酵素としては、例えばアクチナーゼなどのアクチナーゼ類、ペプシンなどのペプシン類、トリプシン、キモトリプシンなどのトリプシン類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類、グリシルグリシンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなどのペプチダーゼ類、ブロメラインなどを用いることができ、それらはいずれか1種を単独で用いても或いは2種以上を組み合わせ用いてもよい。
それら酵素のうちでも、アクチナーゼなどのアクチナーゼ類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類或いはブロメラインが特に好ましい。
【0026】
酵素の使用量は、懸濁液或いは抽出物溶液中の固形分に対して、0.01〜10重量%の範囲とするのがよく、より好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲である。
pH、温度、時間などの処理条件は、発酵と同条件であって差し支えないが、発酵前に酵素加水分解処理を行う場合には、用いる酵素の至適pH、至適温度付近で2〜24時間処理を行うようにすることが好ましい。
【0027】
以上の如くして得られる本発明の発酵物を配合してなる化粧料としては、例えば乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、洗顔料などの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リキッドファンデーション、メイクアッププレスパウダーなどのメイクアップ化粧料、洗顔料、ボディシャンプー、石けんなどの清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の化粧料中に於ける発酵物の配合量は、固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.001〜3.0重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲、清浄用化粧料の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲、又浴剤の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲である。
【0029】
本発明の化粧料には、上記の必須成分の他に、通常化粧料に用いられる配合成分、例えば油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、色素、香料、抗酸化剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0030】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては,例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
又、乳化剤乃至乳化助剤として、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ジュアゼイロ(Zizyphus juazeiro:Rhamnaceae)抽出物等を配合することもできる。
【0032】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、乳酸菌醗酵米、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、ビャッキュウ抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0033】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分、ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリグルタミン酸及びその誘導体、グルコシルトレハロースと加水分解水添デンプンを主体とする糖化合物等が挙げられる。
【0034】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物等がある。
【0035】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、6−又は12−ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、小豆など)のパウダー等がある。
【0036】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0037】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、イネ抽出物等がある。
【0038】
さらに必要ならば、本発明で用いる発酵物の作用効果及び特長を損なわない範囲で、他の活性成分(美白剤、皮膚老化防止・美肌化剤等)を配合してもよく、かかるものとしては、例えば美白剤であれば、t−シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀類)、党参抽出物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海草の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体等が、又皮膚老化防止・美肌化成分であれば、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、カミツレエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米糠抽出物加水分解物、米抽出物加水分解物、米醗酵エキス、ハス発酵液、アナアオサ抽出物、アマモ等の海草の抽出物、ソウハクヒエキス、ジュアゼイロ(Zizyphus juazeiro:Rhamnaceae)抽出物、紫蘭根抽出物、ムラサキシキブ抽出物、サンゴ草抽出物等が挙げられる。
【0039】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、L−アスコルビン酸−2−グルコシド(2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)、L−アスコルビン酸−5−グルコシド(5−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L−アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3−O−エチルアスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−O−パルミテートナトリウム等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド)、α−アルブチン(ハイドロキノン−α−D−グルコピラノシド)等が、レゾルシノール誘導体としては、例えば4−n−ブチルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール等が、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5−ジアセトキシ安息香酸、2−アセトキシ−5−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、ビタミンE誘導体としては、例えばビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等が、α−ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α−ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0040】
次に、製造例、実施例及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下に於いて、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0041】
製造例1 発酵物溶液の調製(1)
白芥の種子(白芥子)100gを粉砕し、これに精製水900gを加えて懸濁液を調製した。この懸濁液に蛋白分解酵素(アクチナーゼAS;科研ファルマ株式会社製)0.1gを加えて40℃で2時間加水分解した後、80℃で1時間抽出並びに酵素失活処理を行い、室温まで冷却後ろ過して白芥子の抽出物溶液を得た。
次に、この液を加熱殺菌し、乳酸菌(ラクトバシルス プランタラム)を10個/mL接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却後ろ過して白芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液650g(固形分濃度2.1%)を得た。
【0042】
製造例2.発酵物溶液の調製(2)
白芥の種子(白芥子)100gを粉砕し、これに精製水900gを加えて80℃で1時間抽出を行い、室温まで冷却後ろ過して白芥子の抽出物溶液を得た。
次に、この液を加熱殺菌し、乳酸菌(ラクトバシルス プランタラム)を10個/mL接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却後ろ過して白芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液630g(固形分濃度1.9%)を得た。
【0043】
製造例3.発酵物溶液の調製(3)
乳酸菌としてラクトバシルス プランタラムに代えてストレプトコッカス フェーカリスを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液620g(固形分濃度2.0%)を得た。
【0044】
製造例4.発酵物溶液の調製(4)
乳酸菌に代えて麹菌のアスペルギルス オリゼーを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の麹菌発酵物溶液630g(固形分濃度1.9%)を得た。
【0045】
製造例5.発酵物溶液の調製(5)
乳酸菌に代えて麹菌のアスペルギルス アワモリを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の麹菌発酵物溶液630g(固形分濃度1.8%)を得た。
【0046】
製造例6.発酵物溶液の調製(6)
乳酸菌に代えて納豆菌のバシルス ナットーを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の納豆菌発酵物溶液670g(固形分濃度1.8%)を得た。
【0047】
製造例7.発酵物溶液の調製(7)
乳酸菌に代えて納豆菌のバシルス サブチルスを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の納豆菌発酵物溶液640g(固形分濃度1.7%)を得た。
【0048】
製造例8.発酵物溶液の調製(8)
乳酸菌に代えて酵母のサッカロミセス セレビシエを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の酵母発酵物溶液710g(固形分濃度2.0%)を得た。
【0049】
製造例9.発酵物溶液の調製(9)
乳酸菌に代えて酵母のカンディダ ケフィールを用いるほかは製造例1と同様にして、白芥子抽出物溶液の麹菌発酵物溶液700g(固形分濃度1.7%)を得た。
【0050】
製造例10.発酵物溶液の調製(10)
白芥の種子(白芥子)100gを粉砕し、これに精製水900gを加えて懸濁液を調製し加熱殺菌した。この液に乳酸菌(ラクトバシルス プランタラム)を10個/mL接種し、さらに蛋白分解酵素(アクチナーゼAS;科研ファルマ株式会社製)0.1gを加えて37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却後ろ過して白芥子懸濁液の乳酸菌発酵物溶液810g(固形分濃度3.2%)を得た。
【0051】
製造例11.発酵物溶液の調製(11)
白芥の種子(白芥子)100gを粉砕し、これに精製水900gを加えて懸濁液を調製し加熱殺菌した。この液に乳酸菌(ラクトバシルス プランタラム)を10個/mL接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却後ろ過して白芥子懸濁液の乳酸菌発酵物溶液800g(固形分濃度2.9%)を得た。
【0052】
製造例12.発酵物溶液の調製(12)
発酵素材として白芥子に代えて白芥の葉の乾燥物を用いるほかは製造例1と同様にして、白芥の葉の抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液550g(固形分濃度0.9%)を得た。
【0053】
製造例13.発酵物溶液の調製(13)
発酵素材として白芥子に代えて白芥の全草を用いるほかは製造例1と同様にして、白芥全草の抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液540g(固形分濃度0.9%)を得た。
【0054】
製造例14.発酵物溶液の調製(14)
発酵素材として白芥子に代えて黄芥の種子(黄芥子)を用いるほかは製造例2と同様にして、黄芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液600g(固形分濃度2.0%)を得た。
【0055】
製造例15.発酵物溶液の調製(15)
発酵素材として白芥子に代えて黒芥の種子(黒芥子)を用いるほかは製造例2と同様にして、黒芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液610g(固形分濃度1.9%)を得た。
【0056】
製造例16.発酵物溶液の調製(16)
発酵素材として白芥子に代えてアブラナの全草を用いるほかは製造例2と同様にして、アブラナ全草の抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液520g(固形分濃度1.0%)を得た。
【0057】
製造例17.発酵物粉末の調製
製造例1と同様にして調製した白芥子抽出物溶液の乳酸菌発酵物溶液500gを50gに濃縮した後凍結乾燥し、これを粉砕して白芥子の乳酸菌発酵物粉末10gを得た。
【0058】
比較製造例1.白芥子抽出物溶液の調製
白芥の種子(白芥子)100gを粉砕し、これに精製水900gを加えて80℃で1時間抽出を行い、室温まで冷却後ろ過して白芥子の抽出物溶液680g(固形分濃度1.2%)を得た。
【0059】
比較製造例2.白芥子抽出物の酵素処理分解物溶液の調製
比較製造例1と全く同様にして得られた白芥子抽出物溶液に、アクチナーゼAS(科研ファルマ株式会社製)0.1gを加えて40℃で2時間加水分解した後、80℃で1時間加熱して酵素を失活させ、室温まで冷却後ろ過して白芥子抽出物の酵素処理分解物溶液660g(固形分濃度1.4%)を得た。
【0060】
比較製造例3.白芥の葉の抽出物溶液の調製
白芥子に代えて白芥の葉の乾燥物を用いるほか比較製造例1と同様にして白芥の葉の抽出物溶液550g(固形分濃度0.9%)を得た。
【0061】
比較製造例4.黄芥子の抽出物溶液の調製
白芥子に代えて黄芥子を用いるほか比較製造例1と同様にして黄芥子の抽出物溶液670g(固形分濃度1.2%)を得た。
【0062】
比較製造例5.黒芥子の抽出物溶液の調製
白芥子に代えて黒芥子を用いるほか比較製造例1と同様にして黒芥子の抽出物溶液660g(固形分濃度1.3%)を得た。
【0063】
実施例1.クリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 5.0
ヘキサラン (注1) 4.0
パラフィン 5.0
グリセリルモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 6.0
ブチルパラベン 0.1
(注1)株式会社テクノーブル製 トリオクタン酸グリセリル
[B成分]
製造例1の発酵物溶液 10.0
グリセリン 5.0
カルボキシメチルモノステアレート 0.1
モイストン・C (注2) 1.0
精製水 全量が100部となる量
(注2)株式会社テクノーブル製 NMF成分
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合してクリームを得た。
【0064】
実施例2.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例1の発酵物溶液 10.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。こ
れを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0065】
実施例3.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例2の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0066】
実施例4.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例4の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0067】
実施例5.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例6の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0068】
実施例6.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例8の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0069】
実施例7.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例15の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0070】
実施例8.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例16の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0071】
実施例9.乳液
実施例2のB成分中製造例1の発酵物溶液に代えて製造例17の発酵物溶液を用いるほかは実施例2と同様にして乳液を得た。
【0072】
実施例10.ローション
[成分] 部
製造例3の発酵物溶液 15.0
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
香料 適量
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を混合してローションを得た。
【0073】
実施例11.ローション
実施例10の成分中製造例3の発酵物溶液に代えて製造例5の発酵物溶液を用いるほかは実施例10と同様にして乳液を得た。
【0074】
実施例12.ローション
実施例10の成分中製造例3の発酵物溶液に代えて製造例7の発酵物溶液を用いるほかは実施例10と同様にして乳液を得た。
【0075】
実施例13.ローション
実施例10の成分中製造例3の発酵物溶液に代えて製造例9の発酵物溶液を用いるほかは実施例10と同様にして乳液を得た。
【0076】
実施例14.化粧水
[A成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
ブチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例2の発酵物溶液 15.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。
これを50℃まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して化粧水を得た。
【0077】
実施例15.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例1の発酵物溶液 10.0
L−アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0078】
実施例16.乳液
実施例15のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム2.0部を用いるほかは実施例15と同様にして乳液を得た。
【0079】
実施例17.乳液
実施例15のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム2.0部を用いるほかは実施例15と同様にして乳液を得た。
【0080】
実施例18.乳液
実施例15のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン2.0部を用いるほかは実施例15と同様にして乳液を得た。
【0081】
実施例19.乳液
実施例15のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えて米糠抽出物加水分解物(株式会社テクノーブル製、商品名「グレイスノウ*雪*HP」、固形分濃度3.5%)5.0部を用いるほかは実施例15と同様にして乳液を得た。
【0082】
実施例20.乳液
実施例15のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてγ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸1.0部を用いるほかは実施例15と同様にして乳液を得た。
【0083】
実施例21.プレスドパウダー
[A成分] 部
ベンガラ 0.5
黄酸化鉄 1.5
黒酸化鉄 0.1
酸化チタン 10.0
ナイロンパウダー 4.0
セリサイト 全量が100部となる量
マイカ 23.0
タルク 25.0
製造例14の発酵物粉末 0.5
[B成分]
スクワラン 1.0
メチルポリシロキサン 4.0
プロピルパラベン 0.1
デヒドロ酢酸 0.1
流動パラフィン 2.0
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ混合攪拌し混合した後、200メッシュのタイラーメッシュの篩にかけ、得られた混合粉末を金型に打型してプレスドパウダーを得た。
【0084】
実施例22.リキッドファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 2.4
モノステアリン酸プロピレングリコール 2.0
セトステアリルアルコール 0.2
液状ラノリン 2.0
流動パラフィン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.5
プロピルパラベン 0.05
[B成分]
製造例10の発酵物溶液 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
ベントナイト 0.5
プロピレングリコール 4.0
トリエタノールアミン 1.1
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
酸化チタン 8.0
タルク 4.0
着色顔料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ加温した後混合攪拌した。これを再加温し、上記のC成分を添加して型に流し込み、室温になるまで攪拌してリキッドファンデーションを得た。
【0085】
実施例23.リキッドファンデーション
実施例22のB成分中製造例10の発酵物溶液に代えて製造例11の発酵物溶液を用いるほかは実施例22と同様にしてリキッドファンデーションを得た。
【0086】
実施例24.リキッドファンデーション
実施例22のB成分中製造例10の発酵物溶液に代えて製造例12の発酵物溶液を用いるほかは実施例22と同様にしてリキッドファンデーションを得た。
【0087】
実施例25.リキッドファンデーション
実施例22のB成分中製造例10の発酵物溶液に代えて製造例13の発酵物溶液を用いるほかは実施例22と同様にしてリキッドファンデーションを得た。
【0088】
実施例26.クリームファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 5.0
セタノール 2.0
モノステアリン酸グリセリル 3.0
流動パラフィン 5.0
スクワラン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸グリセリル 2.0
プロピルパラベン 0.1
[B成分]
製造例2の発酵物溶液 5.0
ソルビトール 3.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
トリエタノールアミン 1.5
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
酸化チタン 8.0
タルク 2.0
カオリン 5.0
ベントナイト 1.0
着色顔料 適 量
[D成分]
香料 0.3
C成分を混合し、粉砕機で粉砕した。B成分を混合し、これに粉砕したC成分を加え、コロイドミルで均一分散させた。A成分及び均一分散させたB、C成分をそれぞれ80℃に加温後、B、C成分にA成分を攪拌しながら加え、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、D成分を加えて攪拌混合し、さらに攪拌しながら30℃以下まで冷却してクリームファンデーションを得た。
【0089】
実施例27.クリームファンデーション
実施例26のB成分中製造例2の発酵物溶液に代えて製造例15の発酵物溶液を用いるほかは実施例26と同様にしてクリームファンデーションを得た。

【0090】
実施例28.ボディシャンプー
[A成分] 部
N−ラウロイルメチルアラニンナトリウム 25.0
ヤシ油脂肪酸カリウム液(40%) 26.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
メチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例13の発酵物溶液 10.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してボディシャンプーを得た。
【0091】
実施例29.石けん
[A成分] 部
硬化ヒマシ油 26.0
ヤシ油 10.0
オリーブ油 4.0
[B成分]
水酸化ナトリウム 6.0
砂糖 10.0
グリセリン 5.0
製造例14の発酵物粉末 0.5
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
エタノール 20.0
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加えてケン化した。これを攪拌しながら50℃まで冷却し、C成分を加えた。これを型に流し込み冷却した後、室温下で数日間乾燥させ、充分に乾燥したものを型から取りだして石けんを得た。
【0092】
試験例1.線維芽細胞賦活作用(1)
ブラシカ属植物として白芥子を用い、これを乳酸菌で発酵して得られる発酵物について線維芽細胞賦活作用を調べた。又、比較のため白芥子の抽出物及び白芥子抽出物の酵素処理分解物についても同様の試験を実施した。
[試料]
(1) 製造例1で得られた発酵物溶液
(2) 製造例2で得られた発酵物溶液
(3) 製造例10で得られた発酵物溶液
(4) 製造例11で得られた発酵物溶液
(5) 比較製造例1で得られた抽出物溶液
(6) 比較製造例2で得られた酵素処理分解物溶液
【0093】
[試験方法]
ヒト真皮由来線維芽細胞NB1RGB(Lot.040514(7))を、0.5%NCS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに1×10 個/穴播種し、37℃,5.0%COの条件下に1日間プレ培養した後、培地に試料溶液を5.0%の濃度となるように添加し、同条件でさらに3日間培養した。次に、培地を除去し、0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンを酸性イソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 450、バイオラッド社製)を用いて波長370−630nmでMTT値を測定した。
試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値に対する各試料添加時のMTT値の相対値を求め、線維芽細胞MTT活性率(%)とした。
なお比較のため、試料溶液の代わりにグルコースを50mM添加した場合(陽性対照)についても、同様の試験を行った。
【0094】
[結果]
結果を表1に示す。
【表1】

【0095】
表1に示す通り、比較製造例1の白芥子の抽出物溶液や比較製造例2の白芥子抽出物の酵素処理分解物溶液に比べ、白芥子の抽出物溶液を乳酸菌で発酵させるかもしくは懸濁液を乳酸菌で発酵させた本発明の発酵物溶液(製造例2、製造例11)の方がMTT活性が強く、又乳酸菌発酵の前或いは発酵と同時に蛋白分解酵素による加水分解処理を行った場合(製造例1、製造例10)にも、同様に比較実施例1、2に比べてMTT活性が高い結果となった。
このことから、本発明の乳酸菌発酵処理により白芥子の線維芽細胞MTT活性 が高まることが明らかとなった。
【0096】
試験例2.線維芽細胞賦活作用(2)
ブラシカ属植物として白芥子を用い、これを各種の菌で発酵して得られる発酵物について線維芽細胞賦活作用を調べた。又、比較のため白芥子の抽出物及び白芥子抽出物の酵素処理分解物についても同様の試験を実施した。
[試料]
(1) 製造例3で得られた発酵物溶液
(2) 製造例4で得られた発酵物溶液
(3) 製造例6で得られた発酵物溶液
(4) 製造例8で得られた発酵物溶液
(5) 比較製造例1で得られた抽出物溶液
(6) 比較製造例2で得られた酵素分解物溶液
【0097】
[試験方法]
試験例1と同様にして行った。
【0098】
[結果]
結果を表2に示す。
【表2】

【0099】
表2に示すとおり、比較製造例1の白芥子の抽出物溶液や比較製造例2の白芥子抽出物の酵素処理分解物溶液に比べ、白芥子の加水分解抽出物溶液を乳酸菌、麹菌、納豆菌或いは酵母で発酵させた製造例3、4、6、8の発酵物溶液の方がMTT活性が高い結果となった。
このことから、乳酸菌、麹菌、納豆菌或いは酵母による発酵処理により白芥子の線維芽細胞MTT活性 が高まること、又乳酸菌が特に好結果を与えることが明らかとなった。
【0100】
試験例3.線維芽細胞賦活作用(3)
各種のブラシカ属植物を素材として用い、これを乳酸菌で発酵して得られる発酵物について線維芽細胞賦活作用を調べた。又、素材として用いた各植物の抽出物についても同様の試験を実施した。
[試料]
(1) 製造例12で得られた発酵物溶液
(2) 製造例14で得られた発酵物溶液
(3) 製造例15で得られた発酵物溶液
(4) 比較製造例3で得られた抽出物溶液
(5) 比較製造例4で得られた抽出物溶液
(6) 比較製造例5で得られた抽出物溶液
【0101】
[試験方法]
試験例1と同様にして行った。
【0102】
[結果]
結果を表3に示す。
【表3】

【0103】
表3に示す通り、白芥の葉、黄芥子及び黒芥子のいずれの場合も、それらの抽出物溶液(比較製造例3、4、5)よりも抽出物発酵物溶液(製造例12、14、15)の方がMTT活性が高い結果となった。
このことから、本発明の発酵処理によりブラシカ属植物の線維芽細胞MTT活性が高まることが明らかとなった。
【0104】
試験例4.B16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用(1)
ブラシカ属植物として白芥子を用い、これを乳酸菌で発酵して得られる発酵物についてB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を調べた。又、比較のため白芥子の抽出物及び白芥子抽出物酵素処理分解物についても同様の試験を実施した。
[試料]
試験例1に同じ。
【0105】
[試験方法]
培養B16マウスメラノーマ細胞(Lot.040409(4))を、96穴マイクロプレートに8×10個/穴播種し、10%FBS含有イーグル最小必須培地中、37℃、5.0%CO2の条件下に1日間プレ培養した後、10%FBS含有イーグル最小必須培地で試料溶液を2.5又は5.0%の濃度(溶液として)となるように希釈した液に置換し、同条件で3日間培養した。
次に培養液を除去し、界面活性剤(Triton X-100)と5mML−ドーパ溶液を添加して37℃で反応を行った後、マイクロプレートリーダー(Model 450、バイオラッド社製)を用い、波長490nmでドーパ値を測定した。
試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたドーパ値に対する各試料添加時のドーパ値の相対値を求め、チロシナーゼ活性率(%)とした。
なお、比較のため、試料溶液の代わりに、3mMのアルブチンを添加した場合(陽性対照)についても同様の試験を行った。
【0106】
[結果]
上記の試験で得られた結果を表4に示した。
【表4】

【0107】
表4に示す通り、白芥子の抽出液や懸濁液を乳酸菌で発酵させて得られる製造例2及び11の発酵物溶液は、白芥子抽出物の酵素処理分解物(比較製造例2)や白芥子の抽出物溶液(比較製造例1)と比べて、それと同等もしくはそれよりまさるB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を発揮する。又、この傾向は、乳酸菌発酵前或いは発酵と同時に酵素加水分解処理を行って得られる発酵物(製造例1、10)についても同様である。
【0108】
試験例5.B16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用(2)
ブラシカ属植物として白芥子を用い、これを各種の菌で発酵して得られる発酵物についてB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を調べた。又、比較のため白芥子の抽出物及び白芥子抽出物の酵素分解処理物についても同様の試験を実施した。
[試料]
試験例2に同じ。
【0109】
[試験方法]
試験例4と同様にして行った。
【0110】
[結果]
結果を表5に示す。
【表5】

【0111】
表5に示す通り、白芥子の加水分解抽出物溶液を乳酸菌、麹菌、納豆菌或いは酵母で発酵させた製造例3、4、6、8の発酵物溶液は、比較製造例1の白芥子の抽出物溶液や比較製造例2の白芥子抽出物の酵素処理分解物溶液に比べ、それらと同等もしくはより強いB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を示し、又特に乳酸菌の場合に好結果が得られた。
【0112】
試験例6.B16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用(3)
各種のブラシカ属植物を素材として用い、これを乳酸菌で発酵して得られる発酵物についてB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を調べた。又、素材として用いた各植物の抽出物についても同様の試験を実施した。
[試料]
試験例3に同じ。
【0113】
[試験方法]
試験例4と同様にして行った。
【0114】
[結果]
結果を表6に示す。
【表6】

【0115】
表6に示す通り、白芥の葉、黄芥子及び黒芥子のいずれの場合も、それらの抽出物発酵物溶液(製造例12、14、15)は、抽出物溶液(比較製造例3、4、5)と同等以上のB16細胞内チロシナーゼ活性抑制作用を発揮する。
【0116】
試験例7.白色モルモットを用いた皮膚一次刺激性試験
[試料]
(1) 製造例2で得られた発酵物溶液(本発明試料)
(2) 製造例14で得られた発酵物溶液(本発明試料)
(3) 比較製造例1の抽出物溶液(比較試料)
(4) 比較製造例2の酵素処理分解物溶液(比較試料)
(5) 比較製造例4の抽出物溶液(比較試料)
(6) 精製水(対照)
【0117】
[試験方法]
雄性白色モルモット(Clean Kwl:Hartley、4週齢、体重250〜300g)3匹(GA、GB及びGC)を5日間予備飼育した後、一般状態及び皮膚に異常のないことを確認して試験に供した。
白色モルモットの背部の被毛を、電気バリカン及び電気シェーバーを用いて皮膚に損傷を与えないように刈毛及び剃毛し、1.5×1.5cmの試験部位を6ヶ所設定した。各試料をそれぞれ200μL宛パッチテスト絆(鳥居薬品製)に塗布したものを5ヶ所の試験部位のいずれかに貼付し、テーピングテープでその上を覆った。貼付開始から24時間後にパッチ絆を除去し、除去直後(貼付開始から24時間後)、除去24時間後(貼付開始から48時間後) 及び除去48時間後(貼付開始から72時間後)に、試料貼付部位の紅斑・痂皮形成及び浮腫形成の程度を観察し、下記のドレイズ(Draize)の判定基準に従って評価した。
【0118】
(紅斑・浮腫形成)
スコア 皮膚の状態
0 : 紅斑なし
1 : 極く軽度の紅斑
2 : 明らかな紅斑
3 : 中程度から強い紅斑
4 : 深紅色の強い紅斑に軽い痂皮形成
(浮腫形成)
スコア 皮膚の状態
0 : 浮腫なし
1 : 極く軽度の浮腫
2 : 明らかな浮腫(周囲と明らかに区別可能)
3 : 中程度の浮腫(約1mmの膨隆)
4 : 強い浮腫(1mmを越える膨隆と貼付部周辺への広がり)
【0119】
[結果]
上記の方法により求めた紅斑・痂皮形成及び浮腫形成の判定値を表7に示した。
【表7】

【0120】
又、3匹のモルモットのそれぞれについて、各試験部位(試料貼付部位)に於ける貼付開始24時間後及び72時間後の紅斑・痂皮形成及び浮腫形成の判定値を合計し、合計値を2で割って得られた数値を一次刺激インデックス(P.I.I.)として表8に示した。
【0121】
【表8】

【0122】
さらに、表8に示した各試料のP . I . I .の平均値(3匹のモルモットの平均)から、下記のドレイズ(Draize)の方法による刺激物質の安全性評価区分に基づいて各試料の皮膚一次刺激性を評価した。
安全性評価区分 P . I . I .の平均値
非刺激性〜弱い刺激性 0〜2
中程度の刺激 3〜5
強い刺激性 6〜8
【0123】
以上に示す通り、白芥子や黄芥子の抽出物溶液(比較製造例1、4)には、中程度の刺激性が見られたが、それらの抽出物溶液に発酵処理を施して得られた製造例2及び14の発酵物溶液には、比較製造例2の酵素処理分解物溶液の場合と同様に、刺激性は全く認められなかった。
このことから、本発明の発酵処理によってブラシカ属植物抽出物の皮膚刺激性が低下することが明らかとなった。
【0124】
試験例8.保存安定性試験
[試料]
(1) 製造例2で得られた発酵物溶液(本発明試料)
(2) 製造例14で得られた発酵物溶液(本発明試料)
(3) 比較製造例1の抽出物溶液(比較試料)
(4) 比較製造例2の酵素処理分解物溶液(比較試料)
(5) 比較製造例4の抽出物溶液(比較試料)
【0125】
[試験方法]
各試料45mLをそれぞれ容量50mLの硝子製スクリュー管(透明硝子瓶)に入れ、プラスチック製の蓋で栓をして4℃、20℃及び40℃の条件下に6カ月間保管し、その間の色調変化、析出物の有無及び匂いの変化を、毎日1回目視又は官能検査により観察した。6カ月の試験期間内であっても、上記の観察項目のいずれかに変化が認められた試料については不安定であると判断し、それ以降の観察を中止した。なお、試験は各試料のそれぞれ3ロットについて行った。
【0126】
[結果]
試験結果を表9及び表10に示す。
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
表9及び表10に示す通り、比較製造例1、4の抽出物溶液では、1〜2ヶ月の保存観察中に、高温(40℃)保存品の場合は着色が進み、又低温(4℃)保存品の場合は沈殿(オリ)の発生が見られたが、発酵処理を施して得られた製造例2及び14の発酵物溶液については、比較製造例2の酵素処理分解物溶液の場合と同様に、6ヶ月の保存中、高温、室温及び低温のいずれの保管条件下に於いても全く変化は認められなかった。
このことから、本発明の発酵処理によってブラシカ属植物抽出物の保存安定性が非常に高くなることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブラナ科ブラシカ属(Brassica)の植物を発酵させた発酵物を配合したことを特徴とする化粧料。
【請求項2】
発酵に用いる菌が、乳酸菌、麹菌、納豆菌及び酵母から選ばれたものである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
発酵に用いる菌が乳酸菌である請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
アブラナ科ブラシカ属(Brassica)の植物として白芥(Brassica alba)を用いる請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
白芥の種子(白芥子)を用いる請求項4に記載の化粧料。

【公開番号】特開2006−104129(P2006−104129A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293307(P2004−293307)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000162021)共栄化学工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】