説明

化粧料

【課題】
気泡安定性と良好な使用感を兼ね備えた気泡含有化粧料を提供すること。
【解決手段】
(A)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重
合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転
移温度を有する高分子化合物
(B)乳化剤
(C)液状油剤
(D)高級アルコール
を含有することを特徴とする水中油型気泡含有化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡を含有する水中油型化粧料に関し、さらに詳細には、化粧料中に気泡を安定して保持することができ、かつふわりとした軽い感触を有するなど使用感にも優れる気泡含有水中油型化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡含有化粧料は、気泡の特性により、肌への塗布時に、弾力性に富みふっくらとした伸び広がりを付与することができる。しかしながら、このような気泡は不安定であり、流通や保管中における衝撃や温度等によって消失したり、気泡同士が融合して不均一になってしまうため、従来より気泡を安定化させる方法が提案されている。
【0003】
例えば、グルコース、フコース、グルクロン酸等を構成単糖とする多糖類を含有することを特徴とした気泡含有化粧料の気泡安定化方法が開示されている(特許文献1)。しかしながらこの技術による化粧料は、多糖類独特の、ヌルつき、べたつき感があり、後肌の使用感が不十分なものであった。
【0004】
また、特定表面積の疎水化無水ケイ酸と水性成分を用い、一定のかさ比重とするホイップド水性化粧料が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この技術による化粧料は、粉体である無水ケイ酸を配合することにより、使用時に粉感、キシミ感が出てしまうため、良好な使用感を得ることが困難であった。
【0005】
さらに、気体をオーバーランさせて処理したホイップド化粧料が開示されている(特許文献3)。しかしながら、この技術による化粧料は、高融点ワックスを用いて気泡安定性を確保しているために、使用感が悪く、後肌も硬いという問題点があった。また気泡を20μ未満にして安定に配合した化粧料組成物が開示されているが(特許文献4)、配合する気泡含有量が少ないため、使用感としての気泡の特徴が得られにくいという問題があり、気泡の安定化にジェランガムを使用した気泡含有化粧料(特許文献5)では、油剤の配合に制限があるため、エモリエント感に欠ける場合があった。
【0006】
このように従来提案されている技術は、いずれも良好な使用感を得ることが困難なものであった。また、気泡安定化効果についても、15℃以下の低温域ではある程度の効果を発揮するものもあるが、15℃よりも高い温度、特に35℃以上の高温域においては、その効果は低下してしまい十分な気泡の安定性が得られないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/08225号パンフレット
【特許文献2】特開2004−59456号公報
【特許文献3】特公昭63−23962号公報
【特許文献4】特表平8−503936号公報
【特許文献5】特開2000−355517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、優れた使用感を与える良好な物性の気泡を安定して保持することができる気泡含有化粧料の開発が望まれており、本発明はそのような気泡含有化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、0〜37℃の温度範囲で水溶液がゾル状態からゲル状態に転移を起こす高分子化合物を用い、これを乳化剤、液状油剤、高級アルコールと組み合わせて水中油型エマルションとし、気泡を形成させることによって、気泡としての良好な物性を維持しつつ、気泡界面を強化することができ、高温域においても気泡が安定して保持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
次の成分(A)〜(D);
(A)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重
合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転
移温度を有する高分子化合物
(B)乳化剤
(C)液状油剤
(D)高級アルコール
を含有することを特徴とする水中油型気泡含有化粧料
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気泡含有化粧料は、高温で保存しても気泡を安定して保持することができるとともに、ふんわりとした軽い感触で伸びが軽く、さらに良好な使用後の肌のしなやかさが得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において、下限臨界溶液温度(LCST;Lower Critical Solution Temperature)とは、この温度よりも低い温度では高分子が水に溶解して透明の溶液となるが、この温度よりも高い温度では不溶化して白濁するか沈殿が生じ、相分離する温度である。
【0013】
本発明の気泡含有化粧料は、0℃より高く37℃より低いLCSTを有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物(成分(A))を必須成分として用いる。
【0014】
この成分(A)の高分子化合物は、その水溶液が固有のゾル−ゲル転移温度を有するものであり、ゾルーゲル転移温度より低い温度では流動性を有するゾル状であるが、ゾル−ゲル転移温度よりも高い温度では流動性を失ってゲル化する性質を持つものである。
【0015】
このような高分子化合物は公知の化合物であり、例えば、特許第3585309号公報にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物として記載されているものである。またこの高分子化合物の製造も、この特許第3585309号公報の実施例1ないし6等の明細書中の記載に従って行うことができる。
【0016】
上記成分(A)の高分子化合物は、複数の0℃よりも高く37℃よりも低いLCSTを有する高分子部分(以下、「LCST高分子部分」ということがある)を含むものである。このLCST高分子部分には、LCST挙動を示す温度応答性高分子が含まれる。LCST挙動を示す温度応答性高分子としては、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタクリルアミド誘導体及びこれらの共重合体、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。より具体的には、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミドなどが挙げられ、特にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0017】
上記LCST高分子部分は、前記LCST挙動を示す温度応答性高分子のみから構成されるホモポリマーであってもよいが、さらに他のモノマーと共重合させたコポリマーであってもよい。このようなコポリマーを構成する他のモノマーとして、親水性モノマー及び疎水性モノマーのいずれも用いることができる。
【0018】
親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等、並びに塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩等が例示できる。
【0019】
一方、上記疎水性モノマーとしては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレート誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミド等のN−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いる成分(A)の高分子化合物を構成する上記LCST高分子部分は、LCSTが0℃より高く37℃よりも低い範囲にあるものである。このLCST高分子部分をホモポリマーとする場合は、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミドやポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミドなど、固有のLCSTが0〜37℃の範囲にあるものを適宜選択することができる。一方、LCST高分子部分をコポリマーとする場合には、一般的にLCSTを有する高分子に親水性モノマーを共重合することにより、コポリマーのLCSTを上昇させることが可能となり、また疎水性モノマーを共重合することにより、LCSTを下降させることが可能となるため、LCST挙動を示す温度応答性高分子と共重合させるモノマーの組み合わせを選択し、組成比等を調整することによって、0〜37℃の範囲で高分子部分のLCSTを調整することができる。
【0021】
また、本発明に用いる成分(A)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分の他に、親水性高分子部分を含有するものである。この親水性高分子部分を構成する高分子としては、例えば、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる成分(A)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト重合体である。グラフト重合体の場合は、主鎖であるLCST高分子部分に親水性高分子部分が側鎖として結合したものであっても、主鎖である親水性高分子部分に、側鎖としてLCST高分子部分が結合したものであってもよい。
【0023】
上記LCST高分子部分と、親水性高分子部分とのブロック共重合体は、例えば予め両者に反応活性な官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等)を複数導入し、両者を化学反応により結合させることによって得ることができる。例えば、親水性高分子であるポリエチレンオキサイドの両末端に重合性官能基であるメタクリロイル基を導入し、LCSTを有する高分子を構成するモノマーであるN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0024】
また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−アクリロキシスクシンイミドを共重合させて1級アミンと反応する基を導入した高分子を合成し、これと末端に1級アミノ基を導入したポリエチレンオキサイドを反応させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0025】
また、上記LCSTを有する高分子部分と親水性高分子部分とのグラフト共重合体は、通常のグラフト重合法を用いることができ、重合体の連鎖移動反応を利用する方法、幹重合体に遊離基に分裂し得る官能基を導入し、該官能基から重合を開始する方法、幹重合体からイオン重合を開始せしめる方法等を用いることができるが、側鎖の重合度を制御するという観点からは、LCST高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、親水性高分子部分を与えるモノマーと共重合させる方法や、親水性高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、LCST高分子部分を構成するモノマーと共重合させる方法などが好ましく用いられる。
【0026】
本発明に用いられる成分(A)の高分子化合物の分子量は1万以上が好ましく、特に10万以上であると、ゾル−ゲル転移温度より高い場合に良好にゲルが形成されるので好ましい。このような分子量のものは、上記のようにして得られたブロック共重合体やグラフト共重合体から、限外ろ過などの通常の分離精製手段を用いて得ることができる。また分子量の測定は、前記特許第3585309号公報に記載の方法に従って行うことができる。
【0027】
以上のようにして、LCST高分子部分と親水性高分子部分の組成や、両高分子部分の疎水度および親水度、分子量等によって、成分(A)の高分子化合物の水溶液のゾルーゲル転移温度を0℃よりも高く37℃よりも低い範囲に調整し、好ましくは15〜35℃の範囲であり、特に好ましくは15〜25℃である。この成分(A)の高分子化合物は、ゾルーゲル転移温度よりも低い温度では流動性のあるゾル状態であるが、この温度よりも高い温度では流動性を失いゲル状態を示す。このような高分子化合物として、市販されているメビジェル−32(ゾル−ゲル転移温度32℃)やメビジェル−20(ゾル−ゲル転移温度20℃;いずれも一丸ファルコス社製)を用いることもできる。このメビジェル−32および20は、N−イソプロピルアクリルアミド・メタクリル酸n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジメタアクリレート共重合体の15w/w%水溶液である。このような市販品を利用して温度応答性高分子化合物の水溶液のゾル−ゲル転移温度を20℃より高く32℃より低い温度に調整したものを用いることもできる。
【0028】
本発明の水中油型気泡含有化粧料における上記成分(A)の高分子化合物の配合量は特に限定されるものではないが、0.01〜10質量%(以下単に「%」と略す)が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0%である。
【0029】
また本発明に用いられる成分(B)の乳化剤は、通常水中油型化粧料に用いられる乳化剤であれば特に限定されるものではなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレグリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0031】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0032】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。
【0034】
これらの乳化剤のうち、非イオン性界面活性剤としてはソルビトールの脂肪酸エステルやポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが、アニオン性界面活性剤としてはアシルメチルタウリン塩などが、両性界面活性剤としてはレシチンなどが好ましく用いられる。
【0035】
本発明の水中油型気泡含有化粧料における成分(B)の乳化剤の配合量は、成分(C)の液状油剤を安定に水中に乳化できる量であれば特に限定されないが、0.05〜10.0%が好ましく、0.1〜5%が更に好ましい。成分(B)をこの範囲で配合すると、乳化性及び気泡の経時安定性が特に良好な水中油型気泡含有化粧料を得ることができる。
【0036】
本発明に用いられる成分(C)の液状油剤は、常温で液状を示す油剤であれば特に限定されるものではないが、不揮発性油剤が好ましく用いられ、例えばスクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソステアリル、ノナン酸イソトリデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、イソステアリン酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル、オクチルドデシル)、パラメトキシ桂皮酸オクチル等のエステル油、ひまし油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、月見草油、オリーブ油、ハッカ油、液状ラノリン等の動植物油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン等のフッ素化油剤、ジグリセライド、トリグリセライド等が挙げられ、これらの一種又は二種以上用いることができる。これらの液状油剤のうち、トリグリセライドなどが肌へのエモリエント感の付与の点で好ましい。
【0037】
本発明の水中油型気泡含有化粧料における成分(C)の液状油剤の配合量は、0.1〜30.0%が好ましく、1.0〜15%が更に好ましい。成分(C)をこの範囲で配合すると、使用感の向上とともに、肌のエモリエント効果を高めることができる。
【0038】
本発明に用いられる成分(D)の高級アルコールは、乳化助剤として機能するものであり、通常の化粧料に用いられる高級アルコールであれば何れのものも用いることができる。具体的には、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これらの中でも、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、コレステロール、フィトステロールを用いると、より微細な乳化滴とすることができ、コク感をもちながらも、主に
0〜30℃程度の低温〜常温域における気泡の安定性が特に良好な水中油型気泡含有化粧料を得ることができるため好ましい。
【0039】
本発明の水中油型気泡含有化粧料における成分(D)の高級アルコールの配合量は、0.1〜10.0%が好ましく、1.0〜5.0%がより好ましい。成分(D)の配合量がこの範囲であると、より乳化性が良好であり、気泡の経時安定性に優れる水中油型気泡含有化粧料を得ることができる。
【0040】
本発明の水中油型気泡含有化粧料には、上記必須成分(A)〜(D)に加え、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で更に任意成分を配合することができる。この任意成分としては、水溶性高分子、pH調整剤、水性成分、紫外線吸収剤、トリメチルシロキシケイ酸等の油溶性被膜形成剤、エタノール等の溶剤、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミン類、美容成分、保湿剤、香料、殺菌剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0041】
上記水溶性高分子は、気泡安定性向上、感触改良等を目的として配合されるものである。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体類、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、クインスシードガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等の天然高分子類、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル,ポリビニルピロリドン等の合成高分子類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上用いることができる。これらのうち、特にメチルセルロースが気泡安定性が向上するという点で好ましい。
【0042】
本発明の水中油型気泡含有化粧料の製造は、気泡含有処理をする以外は常法に従って行うことができる。この気泡含有処理としては、特に限定されるものではなく、例えば化粧料の製造中に空気や不活性ガスをバブリングしながら混合攪拌する方法や、気泡を巻き込み易い構造を有した攪拌ミキサー等を用いホイッピングする方法、また、起泡剤を用いて気泡を生じさせる方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の水中油型気泡含有化粧料に含有される気泡の量は、気泡内包率として下記式で求められる。すなわち、同一処方の化粧料について、上記気泡含有処理を含む製造方法により製造した化粧料と、気泡含有処理を行わない以外は同一の製造方法により製造した化粧料とを、同一容積の容器に入れて、これらの質量を測定することによって求める。
気泡内包率(%)=((A−B)/A)×100
A:気泡含有処理をしない化粧料の質量(g)
B:気泡含有処理をした化粧料の質量(g)
【0044】
本発明の気泡含有化粧料における気泡内包率は、5〜70%の範囲が好ましく、15〜50%の範囲がより好ましい。この範囲であれば、ふわりとした感触で指にとれ、のびが軽く、肌等に対する気泡独特の良好な感触の化粧料が得られる。
【0045】
また、本発明の気泡含有化粧料中の気泡の平均径は、1〜5000ミクロンの範囲が好ましく、10〜100ミクロンの範囲であれば気泡の安定性が高く良好な感触なものが得られるためにより好ましい。この気泡の平均径は光学顕微鏡を用いて測定した100個の気泡の直径の平均値として求められる。
【0046】
本発明の気泡含有化粧料において、分散させた気泡は、そのままの状態で安定的に保たれる。すなわち、化粧料が流通、保管される通常の温度、圧力、振動、衝撃等の条件下で、化粧料中の気泡が系外へ放出されることによりその数が著しく減少したり、気泡同士が融合して気泡の大きさにばらつきが生じたりすることなく、ほぼ一定の気泡数と大きさが維持される。また経時的にも、通常の流通、保管および使用期間において安定的な分散状態が維持される。さらに、35℃以上の過酷条件下においても、同様に気泡の分散状態は安定的に保たれる。
【0047】
本発明の水中油型気泡含有化粧料は、例えばスキンケア化粧料として、乳液、クリーム、洗顔料、クレンジング、マッサージ料等、メーキャップ化粧料として、ファンデーション、アイシャドウ、口紅等、頭髪化粧料として、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0049】
実施例1〜8および比較例1〜3
水中油型気泡含有スキンクリーム:
下記表1に示す組成の水中油型気泡含有スキンクリームを下記製造方法に従って調製した。得られたスキンクリームについて、下記評価方法により気泡安定性評価および官能評価(ふわりとした軽い感触、のびの軽さ、使用後の肌のしなやかさ)を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0050】
【表1】

※1:N−イソプロピルアクリルアミド・メタクリル酸n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジメタアクリレート共重合体水溶液(固形分15%;ゾル−ゲル転移温度20℃)
【0051】
(製造方法)
A:1〜4、10〜12を加温溶解する。
B:5〜9を加熱混合する。
C:AにBを加え、乳化、攪拌ミキサーを用いてホイッピング処理をし、冷却する。
【0052】
<気泡安定性評価>
実施例1〜8および比較例1〜3の水中油型気泡含有スキンクリームについて、製造直後室温(25℃)にて気泡内包率を測定し、更にこのスキンクリームを40℃で1ヶ月間保管した後、室温(25℃)に戻し気泡内包率を測定し、次式に基づいて気泡安定性のスコアを算出し、下記判断基準に従って評価を行った。
気泡安定性スコア=(D/C)×100
C:製造直後の気泡内包率(%)
D:40℃1ケ月保管後の気泡内包率(%)
(判定基準)
安定性スコア
90以上 ;◎
80以上90未満;○
40以上80未満;△
40未満 ;×
【0053】
<官能評価>
実施例1〜8および比較例1〜4の各スキンクリームについて、女性専門パネル10名により、下記評価項目について評価してもらい、下記基準に従って判定を行った。
(評価項目)
・指にとる時にふわりとした軽い感触を感じる(+)か、感じない(−)か
・肌上で伸ばす時にのびが軽いと感じる(+)か、感じない(−)か
・使用後の肌をしなやかに感じる(+)か、感じない(−)か
(判定基準)
8名以上が+と感じる;◎
6〜7名が+と感じる;○
3〜5名が+と感じる;△
2名以下が+と感じる;×
【0054】
表1より明らかなように、実施例1〜8の水中油型気泡含有スキンクリームは、いずれも40℃1ヶ月保存後においても気泡内包率の低下が小さく気泡安定性に優れるとともに、ふわりとした軽い感触で、のびも軽く、使用後の肌にしなやかさも良好なものであった。一方、ステアリルアルコールを含有しない比較例1は、製造直後の気泡内包率は高いが、経時での気泡安定性に乏しく、のびの軽さも劣るものであった。また、メビジェルに代えて他の高分子を配合した比較例2、3は製造直後の気泡内包率が低く、気泡の特性であるふわりとした軽い感触、のびの軽さを生かしたスキンクリームが得られなかった。
【0055】
実 施 例 9
水中油型気泡含有ファンデーション:
下記の処方および製法によりファンデーションを製造した。
(処方) (%)
(1)メビジェル−32(※2) 10.0
(2)1,3−ブチレングリコール 13.0
(3)プロピレングリコール 3.0
(4)グリセリン 3.0
(5)セトステアリルアルコール 1.0
(6)流動パラフィン 5.0
(7)水添レシチン 2.0
(8)タルク 12.0
(9)酸化チタン 8.0
(10)黄色酸化鉄 1.0
(11)ベンガラ 0.2
(12)黒色酸化鉄 0.05
(13)パラベン 0.1
(14)香料 0.05
(15)精製水 残量
※2:N−イソプロピルアクリルアミド・メタクリル酸n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジメタアクリレート共重合体水溶液(固形分15%;ゾル−ゲル転移温度32℃)
【0056】
(製法)
A:1〜4、15を加温溶解する。
B:5〜13を加熱混合する。
C:AにBを加え乳化し、14を加え、ホイッピング処理をし、冷却する。
【0057】
得られた水中油型気泡含有ファンデーションは、気泡内包率30%で、ふわりと軽い感触で指にとれ、のび広がりも軽く、また経時安定性にも優れたものであった。
【0058】
実 施 例 10
水中油型気泡含有ヘアクリーム:
下記処方および製法により水中油型気泡含有ヘアクリームを製造した。
(処方) (%)
(1)メビジェル−20(※1) 20.0
(2)プロピレングリコール 5.0
(3)1,3−ブチレングリコール 10.0
(4)グリセリン 10.0
(5)セトステアリルアルコール 5.0
(6)モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)2−エチルヘキサン酸グリセリン 2.0
(8)ワセリン 5.0
(9)スクワラン 2.0
(10)香料 0.2
(11)精製水 残量
【0059】
(製法)
A:1〜4、11を加温溶解する。
B:5〜9を加温溶解する。
C:AにBを加え、乳化し、10を加え、ホイッピング処理し、冷却する。
【0060】
得られた水中油型気泡含有ヘアクリ−ムは、気泡内包率10%で、ふわりとした感触で、のびが軽く良好な使用感を有し、経時安定性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、ふんわりとした軽い感触で伸びが軽い良好な物性の気泡を化粧料中に安定して分散させることができるため、独特の優れた使用感を有するファンデーションやクリームなどの化粧料として有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重
合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転
移温度を有する高分子化合物
(B)乳化剤
(C)液状油剤
(D)高級アルコール
を含有することを特徴とする水中油型気泡含有化粧料。
【請求項2】
成分(A)の高分子化合物を0.01〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項1記載の水中油型気泡含有化粧料。
【請求項3】
成分(B)の乳化剤を0.05〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の水中油型気泡含有化粧料。
【請求項4】
成分(C)の液状油剤を0.1〜30.0質量%含有することを特徴とする請求項1なないし3の何れかの項に記載の水中油型気泡含有化粧料。
【請求項5】
成分(D)の高級アルコールを0.1〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項1ないし4の何れかの項に記載の水中油型気泡含有化粧料。



【公開番号】特開2008−239590(P2008−239590A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86709(P2007−86709)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】