説明

化粧用及び更なる使用のためのC−19ステロイド

本発明は、C−19ステロイド化合物、特にアンドロステン−17−(OR)−3−オン構造(式中、Rは水素原子、又は非置換の若しくは置換のアルキル基、アリール基、アシル基又は生物学的代謝若しくは化学的脱保護反応により水酸基に導く如何なる置換基を表す。)を持つC−19ステロイドの化粧品及びその他の使用のための新規使用に関する。本発明は、より詳細には、ジヒドロテストステロンの結合を遮断するためにアンドロゲン受容体への高い結合親和性の特性を示すと同時に同化作用を提供するC−19ステロイドに関するものであり、このステロイド化合物は、特にセルライト、皺、脂肪組織、毛嚢若しくは発毛のような皮膚及び皮膚関連の身体構造の問題に影響を与える又はこれらの問題を制御するための特定の用途や、皮膚及び/又は発汗に作用する皮脂腺及び他の腺のような腺機能及び活性に影響を与え又は制御することための特定の用途に、有効である。また、本発明は、この化合物とジメチルイソソルビドの組合せから成る組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C−19(炭素数が19の)ステロイド化合物、特にアンドロステン−17−(OR)−3−オン構造を持つC−19ステロイドの化粧用及び更なる使用に対する新しい使用に関する。ここでRは水素原子、又は非置換の若しくは置換されたアルキル基、アリール基、アシル基又は生物学的代謝若しくは化学的脱保護反応により水酸基に導かれる全ての置換基を表す。本発明は、特に、ある種の応用に対して有用な特別の特性を示す選択されたC−19ステロイドに関し、特に、セルライト(細胞老廃物)、皺、脂肪組織、毛嚢、又は発毛のような皮膚及び皮膚関連の身体構造の問題に影響を与える、又はこれらの問題を制御するための応用;皮膚及び/又は発汗及びアポクリン汗腺に作用し、汗腺及び他の腺のような腺機能及び活性に影響を与え、又は制御するための応用に対して有用である。
【背景技術】
【0002】
皮膚、皮下組織、及び脂肪組織、及びそれ等に関連する毛嚢、及び異なる起源及び機能の腺のような機能体は、多くの因子の影響下にある。この複雑性のために、従来のアプローチは、皮膚それ自体だけではなく、皮膚関連の身体、器官及び組織に影響を与え及び制御するような複雑なものであった。このような従来のアプローチの一分野は、ホルモン依存的代謝過程に集中した。ホルモン依存性生物学的経路と相互作用する範囲内でさえ、異なるレベル及び標的部位がある。例えば、アロマターゼ及び5α−レダクターゼのようなホルモン生合成に関わる酵素との相互作用;エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体(AR)、LH受容体、又は他の受容体のようなホルモン受容体との相互作用;又はゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌に影響を与えるように全身的効果による、より一般的な相互作用;であるが、これらに制限されない。
【0003】
しかし、この分野における従来の試みは、特異性の問題や望まない又は有害な効果の問題を解決していない。これらの問題は特に皮膚、髪及び汗腺、アポクリン腺等々のような、関連する組織及び器官の美容上の外見の場合に重大である。時には、天然物由来の抽出物が使用されるが、これらは殆ど分かってない又は非特異的な活性を持つ。他の例では、ホルモン受容体やその下流経路に対して、作用薬活性と拮抗薬活性の両者が、複雑で殆ど分かってない。このことに関係して、非ステロイド系選択的アンドロゲン受容体制御因子(SARM)に焦点を当てた試みがなされている
【0004】
体内のジヒドロテストステロン産生の観点から5α−レダクターゼやその組織特異的発現の性質を研究することにより、テストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)レベルに影響を与えるSARMが開発された。この酵素を発現する細胞のみが、十分量のDHTを自ら産生することができる。例えば、ステロイド系フィナステリド(finasterid)又は非ステロイド系ビカルタミド(bicaltamide)又はフルタミド(flutamide)のような薬物は広く使用されている。DHTのアンドロゲン作用を、可能な限り又は完全に抹消させ、同時に同化(アナボリック;anabolic)作用を有する薬剤は今のところ知られていない。この目的に最も近く達したものは、去勢したラットの肛門挙筋の重量を増加させて、萎縮した前立腺の重量を僅かに増加させる薬剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、皮膚の状態、脂肪組織、毛嚢、発毛のような皮膚と結びついた身体構造の状態;及び、皮膚及び/又は発汗に影響を与える、皮脂腺、汗腺、及び他の腺のような、(皮膚と)結びついた腺機能及び活性の状態;をより良く制御し、より良い影響を与えるために、価値のある応用分野への可能性を改善することである。
【0006】
この目的を解決するために、本発明は、請求の範囲に示す特定の応用範囲のためのC−19ステロイド化合物を提供する。これらの応用範囲においては、特に選択したC−19ステロイド化合物が伴っていることが判明した特別の性質が使用される。
【0007】
本発明は、特定の理論に囚われることなく、以下の考察に基づく。
アンドロゲン受容体をコードする遺伝子は、X染色体上に位置する。男はX−染色体を一つのみ有するので、この染色体の欠陥は劇的な結果をもたらす。変質したXY−胎児は、表現形質上、真の男の子になる代わりに、女の子に成長する。
哺乳動物の主要なアンドロゲンは、テストステロンと活性がより高いその代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)である。これに関係するアンドロゲン受容体(AR)は、少なくとも910アミノ酸残基からなる大きなタンパク質である。この分子は、アンドロゲンと結合する蛋白質;核クロマチンのステロイド応答性ドメイン(領域)でDNAと結合する亜鉛フィンガー部分;及び転写を制御するドメイン;から成る。
【0008】
テストステロン(T)は、循環して全ての細胞の細胞質に拡散する。細胞質に存在する酵素及びこれら酵素の活性により、幾つかのテストステロンはアロマターゼによりエストラジオールに代謝され、一部はDHTに還元され(5α−レダクターゼ)、一部はテストステロンのまま残る。T及びDHTの両者は、アンドロゲン受容体に結合して、活性化させることができるが、DHTの方がより強力な活性を持ち長時間作用する。
DHT(又はT)が受容体に結合すると、このタンパク質の一部は切断される。このAR−DHTコンビネーション(連結体)は、第2のAR−DHTと結合して2量体化し、両者はリン酸化し、及び全複合体は、細胞核に移動し、またアンドロゲン感受性標的遺伝子のプロモーター領域のアンドロゲン応答配列(レスポンス・エレメント)と結合する。転写効果は、コアクチベーター又はコリプレッサーにより、亢進又は阻害される。
【0009】
思春期に、男性、女性両者の初期身体変化の多くは、アンドロゲン性(成人タイプの体臭、皮膚及び髪の油性の増加、面皰、陰毛、腋窩毛、薄い上唇、揉み上げ髪)である。
思春期が進むに従い、男性における第2次性徴は、殆ど完全にアンドロゲンに依る(ペニスの連続する成長、精子形成組織及び繁殖力の成熟、顎髭、低い声、男性の下顎及び男っぽさ、体毛、重い骨)。男性における、エストラジオールに起因する主要な思春期変化は、成長加速、骨端閉鎖、成長の停止、及び(もし生ずれば)女性化乳房である。もし、46XY胎児がテストステロン又はDHTに応答できないならば、男性発生過程の非アンドロゲン側面のみが生起し始める。この側面とは、即ち、精巣の形成、テストステロンの産生、及び精巣による抗ミューラー管ホルモン(AMH,anti-mullerian hormon)、及びミューラー管の抑制である。誕生時、完全型アンドロゲン不応症(CAIS)の子供は、不条理な核型及びテストステロンレベル、又は子宮の欠如を疑う理由はない典型的な女の子である。
【0010】
思春期は、女の子の平均より僅かに遅く始まる傾向がある。視床下部及び脳下垂体は、精巣にテストステロンを産生するよう信号を送るので、しばしば男の子に関わる(テストステロン)量が血液中に現れる。LHが増加し、副腎からのDHEA及び精巣からのテストステロンを身体の多くの器官内でエストラジオールに局所的に変換することを促進して(アロマターゼ酵素)、最終的に婦人に特有の身体を覆う脂肪組織を分布させる(臀部及び乳房)。殆ど又は全く陰毛又は他のアンドロゲン性の髪は現れず、時々、戸惑いと、恥ずかしさの原因となる。面皰は希である。
【0011】
完全型アンドロゲン不応症(CAIS)を患う思春期女子及び女性のホルモン測定により、全テストステロンレベルが、女性の範囲を超えて男性のレベルにあり、エストラジオールレベルは女性の範囲を少し越え、LHレベルは少し高く、またFSHレベルは正常であることが特徴付けられる。
主として、思春期が遅いタイミングであるために、CAISの成人女性は、平均より背丈が高い傾向がある。乳房の発達は平均以上とされている。アンドロゲンに対する応答性が欠けているため、通常の成人女性の、(陰部、腋窩、上唇を含む)髪の発達が妨げられる。これに対して、頭髪は平均より豊富なままであり、加齢に伴う頭皮の後退又は薄毛がない。膣の浅さは様々であり、また性交の際の機械的困難さに至るかも知れず、至らないかも知れない。思春期前に精巣は、除去しなければ、例外なく発達するけれども、CAISの成人の精巣は、次第に、異常な精子形成細胞と精子形成の無い特徴を示す。
【0012】
骨格については、平均的XY女性より、釣り合いから見て、より長い脚部と腕部、及びより大きい手と足を持ち、歯の大きさは女性より男性の歯に近いという点で、僅かに男性化を示す。アンドロゲン効果が無いため、このような女性は、面皰又は一時的禿に悩まず、また陰毛及び腋窩毛は殆ど又は全く成長しないであろう。
全体としての効果は、完全型AIS(CAIS)女性又は部分型アンドロゲン不応症(PAIS)女性は、平均(女性の)以上の背丈を持ち、長く釣り合いの良い脚部を持ち、豊富な乳房を持ち、輝く笑顔を持ち、例外的に美しい肌を持ち、例外的に美しく、豊富で、密集した頭髪を持つ、傾向があるということである。
【0013】
アンドロゲン不応症(AIS)の女性は、スポーツが非常に上手いか、又は恐らく他の女子以上にスポーツを愛好する傾向があるようである。トップ女子選手は、性検査の際AISを患うことがしばしば見出されてきた、即ち500人の国際級の女子選手の中1人はAISを患い、一般的な女子人口中のAIS女子の割合が5000人中1人という現在の推定より、一桁高い。実際この結びつきにはかなりの関心が寄せられているが、完全型AISはスポーツにおける女性の実績に対する有用なモデルを示す。
従って、CAIS又はPAIS表現形質は、アンドロゲン性効果の欠乏の有用な代表である。
アンドロゲンは,極めて特異的にアンドロゲン受容体(AR)に結合することによりその効果を発揮する。受容体タンパク質は、良く定義されたドメイン組織を持ち;及び、結合した異なる作用薬及び拮抗薬配位子を伴うC−末端リガンド(配位子)結合ドメイン(LBD)、及び亜鉛フィンガーDNA結合ドメイン(DBD)に対して、高分解能構造が利用可能である。
【0014】
幾つかの、ステロイド受容体のリガンド結合ドメインの構造研究により、C−末端ヘリックス12(H12)の動的特性がこれらの受容体の活性化(アクティベーション)状態の主要な決定因であることを明らかにした。H12は、リガンド無しでは、高い易動性及び異なるコンフォメーション(立体配座)を示す。リガンドが結合すると、H12は、正確な位置に安定化し、リガンド結合ポケットを密閉し、活性化機能(AF−2)ドメインの集合を確定する。リガンド結合ポケットの易動性のあるカルボキシル末端ヘリックス12の再配置の阻害により、抗アンドロゲンは働くことができるが、このことがARリガンド結合ドメインに位置するリガンド依存性トランス活性化機能(AF−2)を阻害する。
【0015】
アンドロゲン受容体は、2種のトランス活性化機能を持つことが示されている:一方は、ヘリックス3,4,5及び12(AF−2)からの残基により形成されるLBDの表面上の構造的に定義づけられた疎水性溝(グルーブ)により代表され、他方は、構造的に柔軟性のあるN−末端ドメイン(NTD)に位置づけ(マップ)られ、AF1と名付けられる。トランス活性化に対する主要な決定因は、NTDに位置づけられる。このNTDは、複数のタンパク質―タンパク質相互作用に関与する可能性があり、このドメインの長さは、核内受容体スーパーファミリーの異なる要素に対するAF1の活性と正の相関関係を持つ。
【0016】
真核生物の転写制御因子としての、全ての核内受容体スーパーファミリー要素は、ホルモン結合性カルボキシル末端ドメイン内に、極めて保存された活性化機能2(AF2)、及び、幾つかに対して、保存されてない、NH(2)−末端領域内に付加的な活性化機能1を含む。AF2の分子的基礎は、リガンド結合ドメイン内の疎水性裂け目に対するLXXLLモチーフを含むコアクチベーター(共活性化)のホルモン依存的補充現象である。アンドロゲン受容体(AR)におけるAF2は、LXXLLモティーフを含むコアクチベーターに単に弱く結合し、及び、その代わり、その生理学的機能に対して要求されるAR NH(2)―末端ドメインとのアンドロゲン依存性相互作用を媒介する。2個のαヘリックス領域は、このアンドロゲン依存性、NH(2)―及びカルボキシル末端相互作用を媒介する。AR NH(2)−末端ドメインにおけるFXXLFはAF2との相互作用を媒介し、及び優勢なアンドロゲン依存性相互作用部位である。このFXXLF配列、及び第2のNH(2)末端WXXLF配列は、リガンド結合ドメインの異なる領域と相互作用してホルモン受容体複合体を安定化し、及びLXXLLモチーフを含むコアクチベーターのAF2補充現象と競合することができる。AF2における、T−依存性 AR FXXLF及びコアクチベーターLXXLLモチーフの間の好ましくない相互作用のために、テストステロンは、DHTより弱いアンドロゲンである。
【0017】
アンドロゲン受容体(AR)のリガンド結合構造は、様々なリガンド構造に適応できる、リガンド結合ポケットに埋め込まれた幾つかの残基のある程度の柔軟性を示す。リガンド構造(ステロイド核又は隣接原子の電子構造、その他に影響を与える不飽和結合の、大きさ、存在及び位置)自体は、結合ドメインと行うことができる相互作用の数を決定する。ステロイド核の両端で静電的相互作用する原子の配置が、実験的測定によるテストステロンよりDHTに対するより高い親和性の主要な原因であるようである。それに対して、スポーツドーピングで用いられるアンドロゲン性ステロイドである、最高の親和性を有するテトラヒドロゲストリノン(THG)は、他のステロイドより受容体に対してより大きなファンデルワールズ接触を立証する。DHTはテストステロンより、より平面的な構造を持ち、従ってリガンド結合ポケットにより良く適合する。
【0018】
5α−レダクターゼ、テストステロンをジヒドロテストステロンに代謝する酵素システム、は2種のイソ型で生ずる。1型イソ酵素は、259アミノ酸からなり、最適pHは6〜9であり、また"皮膚反応型"を表し;これは主に脂肪細胞に局在するが、性器及び非性器の皮膚由来の繊維芽細胞だけではなく、上皮性及び濾胞性ケラチン産生細胞、真皮性乳頭細胞、汗腺、にも局在する。2型イソ酵素は、254アミノ酸からなり、最適pHは約5.5であり、また毛嚢の内毛根鞘及び正常成人性器皮膚由来の繊維芽細胞のみならず、主に副睾丸、精嚢、前立腺及び胎児性器皮膚に局在する。1型及び2型イソ酵素をコードする遺伝子は、それぞれ、染色体5p及び2pに見出され、また夫々5エクソン及び4イントロンからなる。
【0019】
1型イソ酵素は、胎児には検出されず、新生児皮膚及び頭皮に一時的に発現し、思春期以降皮膚に不変的に発現する。2型イソ酵素は、新生児の皮膚及び頭皮に一時的に発現する。2型は胎児性器皮膚、男性副生殖腺、及び良性前立腺過形成、及び前立腺アデノカルシノーマ組織を含め、前立腺に検出される。両酵素は、肝臓に発現するが、生後のみである。II型イソ酵素の突然変異は、男性の偽半陰陽を引き起こし、また多くの突然変異が、様々な民族グループから報告されてきた。冒された46XY各個人は、正常な高い値から上昇した血漿テストステロンレベルで、減少したDHTレベル及び上昇したテストステロン/DHT比を有する。彼等は、誕生時に曖昧な外性器を持ち、その結果女子と信じられ、しばしば女子として養われる。しかし、Wolffian分化は正常に起こり、彼等は副睾丸、輸精管及び精嚢を有する。男性化は、しばしば思春期に起こり、恐らく性役割変化を伴う。成人における前立腺は小さく、未発達であり、また顔毛及び体毛は無い、又は減少する。禿は報告されてない。もし睾丸が下降するならば、精子形成は正常である。5α−レダクターゼ2欠乏の臨床的、生化学的及び分子遺伝学的解析により、男性性分化及び男性病理生理学におけるDHTの重要性が強調される。1型イソ酵素は、正常な男性化した男性のアンドロゲン生理学において重要な役割を演ずることができて、また思春期において2型欠乏男性における男性化に寄与することができる。
【0020】
高レベルの5α−レダクターゼ活性が、ヒトアポクリン腺に検出され、ジヒドロテストステロンの濃度は、アポクリン腺由来の過剰な又は異常な臭いに苦しむ(臭汗症)、患者皮膚の核分画テストステロンの濃度より高いことが見出された。また、骨細胞は、1型イソ酵素を含む。2種のイソ酵素をin vivoで阻害すると、インポテンスの発生率の増加、性欲の減少、射精不調及び女性化乳房を引き起こすことができる。骨には影響がない。
【0021】
アンドロゲン受容体(AR)は、生殖型及び非生殖型組織に広く分布しており、これらの組織は前立腺、精嚢、男性及び女性外性器、皮膚、精巣、卵巣、軟骨、皮脂腺、毛嚢、汗腺、心筋、骨格筋及び平滑筋、胃腸小胞細胞、甲状腺濾胞上皮細胞、副腎皮質、肝臓、松果腺、及び脊髄運動神経を含む、無数の大脳皮質及び皮質下領域を含む。受容体のこの広い分布は、各組織、細胞種に存在するコファクター(補助因子)の特別な種類及び濃度とともにマッピング(位置づけ)される必要がある。これは、夫々の場合に、リガンド活性化後、集合することができる、潜在的核受容体複合体のより正確な像を提供するだろう。
【0022】
最近、新しいファミリーの非ステロイド性分子が同定され、この分子はARに対して選択制及び特異性を有する。識別力のある細胞検定及び医学的化学構造―活性作業と組み合わせた、ヒトARの転写活性化を標的とする分子スクリーニング法を用いて、幾つかのシリーズ(一組)の、拮抗剤、作用剤又は部分的作用剤活性を有する明確な分子が合成された。これらの分子は、"選択的アンドロゲン受容体制御因子(SARM)"と呼ばれる。
【0023】
様々な化学構造を有するSARMが発見され、特徴付けられ、及びARに対する特異性がより改善され、in vivo薬動力学的プロファイルが改善された化合物となり、及びより高度の組織選択性が臨床的開発に加わり、またアンドロゲンの臨床的応用を劇的に拡大することが期待される。SARM発見の急速な進歩及び機構をベースとしてドラッグデザインに対する要求の増加に伴い、ますます多大の努力が、SARMの観察された組織選択性の作用機序に対して注がれてきた。異なるシリーズの分子は、個々のメンバーを含み、その各々は、ある種の組織又は活性に対する選択的選り好み(即ち、筋肉における栄養、強力又は弱いゴナドトロピン・フィードバック)、及び他の末梢(即ち、筋肉)又は中枢神経応答と比較して性付帯的組織(前立腺、精嚢)における広い多様な活性比を示す。
【0024】
同化ステロイドアンドロゲンの使用は、これが肝毒性、前立腺刺激因子活性、男性化作用、及び関係するステロイド受容体に対する交差反応性に起因する、他の副作用と関連しているので、難しい。もし虚弱(frailty)又は骨粗鬆症を治療するために用いる同化SARMがステロイド性であるならば、このSARMは芳香族化可能であってはならず、及びステロール骨格のC5位置が還元可能であってはならない。
今日まで、DHTにより引き起こされたアンドロゲン様作用(髪の毛の成長又は喪失、大袈裟な皮脂産生、前立腺の成長、癌細胞の成長)、及び同時にテストステロンの様な同化作用を発揮することを阻害することができるSARMは開発されてない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明において、驚くべきことに、ある一群のC−19ステロイド化合物が、以下により詳細に説明するように、多くの化粧用用途及びその他の用途、特に、皮膚、皮下又は脂肪細胞、及びこれらが関係する機能的身体又は器官に対する用途、に有用な顕著に肯定的な効果を示すことを見出した。本発明に従って選択したこのC−19ステロイド化合物の上記の使用が有用であることは、このC−19ステロイド化合物がアンドロゲン受容体(AR)に対して持つ高い結合親和性という特性;しかし、一般的にテストステロン及び特にジヒドロテストステロン(DHT)のような天然(体内)由来のアンドロゲンをARから遮蔽する効果を経由したアンドロゲン作用を下げる特性;及び同時に標的組織及び器官、及びそれ等の周囲の状態への同化作用を発揮する特性;に基いている。
【0026】
本発明によれば、以下の2つの効果の両方を有するC−19ステロイド化合物を選択することにより、それを使用することを相応して決定することができる。この2つの効果とは、ARへのDHTの結合を阻害する効果(参照化合物としてDHTに対する結合研究により測定可能)と同化作用(例えば、このような亢進に感受性のある、繊維芽細胞のような、参照細胞のコラーゲン産生の亢進を測定することにより測定可能)である。この使用はさらに、AR結合及び同化作用に影響を与えるに適切な投与量と適切な適用条件により決定される。この適切な適用条件とは、例えば、使用者/患者の種類、又はAR陽性(即ち、測定可能なアンドロゲン受容体を有すること)である標的部位又は器官、又はin vivoにおいて上記の活性を使用者/患者内の指定された最終標的部位又は器官に輸送できる、標的部位又は器官の種類である。
【0027】
生物学的経路上でアンドロゲン作用を減少させ又は完全に取り除き;他方、特に化粧品及びさらなる応用に関係する、脂肪細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、基底細胞、骨細胞及び他の細胞(皮脂腺、真皮パピローマ細胞及びアポクリン汗腺)、及び皮膚内又は皮下に位置する器官又は体のような、標的部位、組織、及び器官上で同化作用活性を高める;ことに関して高い活性を有する化合物は、驚くべきことに、テストステロンを除外してアンドロステン−17−オール−3−オン構造と関係していることが分かったが、ここで本発明の所期の効果をもたらす、より高い活性の化合物は、一般的なC−19ステロイド構造内の17−オール(水酸)基に結合した、1−エン二重結合、及び/又は4−エン二重結合、及び/又は置換基により、更に定義される。
【0028】
本発明を具現化するために、上記で定義した化合物群内でより活性が高いC−19ステロイド化合物を選択する好ましい実施態様において、このC−19ステロイド化合物は、
(ii)同化作用活性の亢進、と組み合わせた(i)AR上の阻害効果、に加えて、以下の効果又は特性を単独又は組み合わせて有する。
(iii)アロマターゼにより芳香族化されない;
(iv)5α−レダクターゼにより還元されない;
(v)5α−レダクターゼを阻害する;
(vi)そのC−17酸化代謝物の形で、亢進したアロマターゼ阻害を示す
【0029】
上記(iii)から(vi)の単独の又は組合せの各特性は、AR阻害及び同化作用亢進の一次活性と組み合わせたとき、ホルモン又はホルモン様代謝物のさらなる補給又は阻害を導き、そうでないと本発明の望ましい効果を妨げる。例えば、選択した化合物が、アロマターゼ又は5α−レダクターゼ又は両者により代謝されない場合、とりわけ、皮膚及び関連器官、組織、及び腺のような標的部位に、エストロゲンもエストロゲン様代謝物もアンドロゲン作用代謝物も産生されず、従って、同化作用は亢進されるが、アンドロゲン作用は更に減少する。大袈裟な男性化を効果的に減らすことが可能である。さらなる5α−レダクターゼの阻害は、さらにアンドロゲン作用を減少させる。更に、in vivoで適用後、本発明の化合物は、17β−ヒドロキシステロイド−デヒドロゲナーゼにより酸化されると、活性のより高いアロマターゼ阻害剤に転換可能であり、そのためある種の応用において価値のある標的部位での活性を追加的に変化させる。
【0030】
本発明によれば、この使用は、上記の効果又は特性(iii)から(vi)を単独で、又は組み合わせて持つC−19ステロイド化合物を選択することにより、相応して決定することができる。これらの(iii)から(vi)の効果又は特性は、既知の方法により、相応して、測定することができる。例えば、5α−レダクターゼ活性は、Mitamura他により記載された方法、Analytical Sciences 21,1241-1244(2005)、により測定することができる。本発明に従う使用は、更に、化合物の適切な投与量、及び、使用者/患者の種類、又は上記(iii)から(vi)の効果又は特性を単独で、又は組み合わせて可能にする標的部位又は器官の種類の様な、適切な適用条件、により決定することができる。
【0031】
本発明の化合物のステロイド性性質は、幾つかの更なる利点と関係する。例えば、細胞内で2型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼにより、より活性の高いステロイド性アロマターゼ阻害剤に変換される特性である。更に、特に、4−ヒドロキシテストステロン又はその塩又はエステルの場合、下垂体からのゴナドトロピン(ゴナドトロピン)放出に負フィードバックを及ぼす潜在的能力がある。その結果、性ホルモンの産生は更に全体的に低下する。この化合物は、それ自体同化作用を示すので、テストステロンの損失を補うことができて、DHT阻害を助ける。更に、ステロイド構造のお陰で、本発明の化合物は、局所投与を著しく助けることができる疎水性特性を示す。
【0032】
本発明の特別な実施態様において、この化合物は、下記化学式
【化1】

(式中、a,b及びcは、それぞれ互いに独立して、単結合又は二重結合を表し、但し、a,b、及びcのうち少なくとも一つは二重結合を表し、aが単結合かつbが二重結合である場合Rは水素原子ではない、
は水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、
は、水素原子又はOR(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基を表す。)を表し、
は、cが単結合の場合、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、cが二重結合の場合、CHR(式中、Rは上記と同様に定義される。)を表し、
は、水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基、非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、COR(式中、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基、又は非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基若しくはベンゾイル基を表す。)で表わされるアシル基、又は生物的代謝又は化学的脱保護により水酸基に導くいかなる置換基を表す。)で表される化合物及びこれらの塩類から選択される。
【0033】
確実に芳香族化せず、ARに対して強い親和性を示し、さらに上記の条件(iv)〜(vi)を満足する活性を有する、という好ましい整合性の観点において、化学式(化1)において、bが二重結合であり、Rが水酸基及び/又はRがメチレン基であり、かつRが水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基又は炭素数が1〜6のアシル基である化合物が好ましい。特に好ましい化合物は、4,17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オン(4−ヒドロキシテストステロン;4OHT)(化学式(化1)において、aは単結合、bは二重結合、cは単結合、RはOH、かつRは水素原子である。)及び17β−ヒドロキシ−6−メチレンアンドロスト−1,4−ジエン(化学式(化1)において、a及びbは二重結合であり、R及びRは、それぞれ、水素原子である。)及びこれらに対応するエステル類(例えば、化学式(化1)において、Rが上記で定義したCORアシル基を表す。)及び塩類である。
【0034】
本発明の特に好ましい化合物である4OHT及びその塩類及びエステル類の場合、もし望むなら、ゴナドトロピン分泌への負フィードバックとなる効果を利用して更なる用途で使用することができる。
本発明の化合物には、代謝されて、上記で定義した化合物になる化合物も含まれる。
さらに、単なるアンドロゲン作用ではなく、標的細胞上で、主に同化作用活性を有する化合物を用いることが好ましい。更に好ましい化合物は、標的細胞にアポトーシス効果を示す化合物である。
【0035】
理論的のみならず実際において、本発明の化合物、特に4−OHT及びこの関連する類縁化合物は、理想的な同化作用薬物である。これはそのままの形で残り、及び芳香族化又は5α還元から逃れる。最小限のアンドロゲン作用を実質的に発揮することなく、又は禁止さえすることにより、アンドロゲン受容体(AR)に対してDHTより高い親和性で結合して、この化合物はこの受容体に対するDHTの結合を妨げるが、この化合物のアンドロゲン受容体への結合は、主として又は専ら同化作用に導く。このことは、皮膚の異なる3カ所の局所的な適用から推論できる。臀部の皮膚領域において、この化合物は、コラーゲンファイバーの濃度を、同化的に増加させ、腋窩アポクリン汗腺において、多かれ少なかれ不快な臭に関係する揮発性脂肪酸のアンドロゲン依存的な産生を阻害し、及び顔又は他の座瘡になりやすい皮膚領域において、この化合物は座瘡のサイズ及び皮脂腺の可能性を減少させる。アポクリン腺及び皮脂腺は、5α−レダクターゼの対応するイソ酵素の1型活性を示し、それによりDHTを産生するので、観察された効果は、恐らくこのイソ酵素の阻害に依るのであろう。4−OHTとその関連化合物の直接の前駆体は、5α−レダクターゼを阻害できることで知られている4−ヒドロキシアンドロステンジオンである。4−OHTもまたこの酵素を阻害することができる(恐らく両者ともイソ型)。
【0036】
EP0307135Aは、上記の化学式に分類されるいくつかの化合物を部分的に開示しているかも知れないが、その治療構想は、アロマターゼ阻害のみ、又は、可能なアンドロゲン性の活性に関係するとしても、ゴナドトロピン分泌(即ち、生殖腺、卵巣、LH-関連効果及びその他を介する作用を必要とする、全身効果)の減少を介して、エストロゲン生合成に対する阻害効果を扱っているにすぎない。しかし本発明の構想はこれとは異なり、本願の化合物は、明白に異なった基準により選択される。その基準は、単独に又は組み合わせて、標的細胞又は標的組織の受容体状態;投与方法;患者群;及び上記使用;に対して向けられた検討により関心のある部位に直接働く効果の観点によるものである。
US2,762,818Aは、医学的意味合いとして、アンドロゲン欠乏状態自体を治療するための、4−ヒドロキシテストステロン及びこのエステル類の使用を越える開示はしていない。エストロゲンへ芳香族化されないことや、DHTに還元されないという特別な性質については、これらの代謝経路が当時(1956年)知られていなかったので、述べられてない。さらに、そこには、本発明の使用を推論できる、アンドロゲン阻害活性を示唆する目的や発見も無い。
さらに、US2003/0229063Aは、ヒトにおける(内分泌疾患に至る)低アンドロゲン/エストロゲン比を取り扱い、この目的の範囲内でエストロゲンレベルを下げるために直接的アロマターゼ阻害効果のみに基づいて4−ヒドロキシテストステロンを使用することを試みたものである。
【0037】
本明細書に参照文献としてその全体が取り込まれたWO2005/062760は、前立腺発癌及び乳癌におけるアンドロゲン受容体(AR)の可能な役割を検討して、ARの存在を検定することにより、乳癌を診断する方法を提示している。しかし、治療学的概念の観点では、WO2005/062760は、AR活性阻害による乳腺発達に関して、AR自体を制御することに限定されており、アンドロゲンが介在する活性に関するものではない。
さらに、US2003/0199487A1は、4−ヒドロキシアンドロステンジオン代謝物及び4−アンドロステンジオン前駆体ホルモンによるDHTが関連する副作用なしに、脂肪のない体重及び運動実行の促進のために、アンドロゲンレベルを次第に増加させることを追求する。
【0038】
本発明で用いられる化合物は、アンドロゲン受容体(AR)に対してDHTよりも高い結合親和性を有することが好ましく、IC50<500nM、好ましくはIC50<100nM、より好ましくはIC50<50nMの範囲のARに対して特異的な高い結合親和性を有することがより好ましい。ここで、IC50は、参照化合物である5α−ジヒドロテストステロン(DHT)の結合を50%減少させるに必要な化合物の濃度で定義される。このIC50値は、例えばRaynaud他による、J. STEROID BIOCHEM. 6、615-622(1975)に記載されている、標準的デキストランで覆われた活性炭吸着法による、参照化合物として放射活性標識したDHTを用いて、1nM参照濃度の放射活性標識した[3H]−DHTを用いた既知の方法により、又は参照文献に記載されている同様のIC50測定法により測定することができる。標的細胞におけるARの濃度は非常に低く、通常ナノモル範囲なので、本明細書で検討されたオーダーの結合定数の差異は顕著である。
【0039】
アンドロゲン受容体(AR)に関して標的細胞又は標的組織の受容体状態は、及び恐らく他の受容体について、他の情報又はデータが知られてなくとも、これらを測定することは可能であり、またもし望むのであれば、当業者に既知の標準的方法により測定可能であり、これらの標準的方法としては、AR−特異的又は他の受容体−特異的抗体を用いる免疫学的検定法、DNA及び/又はRNAハイブリダイゼーション検定法、又はAR−特異的又は他の受容体−特異的核酸プローブを用いたPCR増幅検定法がある。
本発明の化合物は、指定した条件に対して有効量が用いられるであろう。本発明における"使用"は、特定の化合物による治療方法又は予防方法、又は上記使用に対する適切な担体及び/又は希釈剤を伴う活性成分と同じものを含む組成物を含み、及びこの組成物の調製における使用を含む。
【0040】
本発明の化合物を用いて行う実験において、これらの化合物は優れた皮膚透過性を持ち、その結果所定の効果が単純な局所投与により達成されることが示され、単純な局所投与としては、例えば、軟膏、ローション、又はクリーム等々であり、これらは治療の必要のある患者の局部に対する有効量の本発明の化合物を含む。局所投与後、この化合物(類)は皮膚を透過し、また脂肪組織に濃縮する。好ましい態様において、本発明の化合物は、皮膚透過促進剤と組み合わされる。
【0041】
本発明の特に好ましい化合物、4−ヒドロキシテストステロンは、US2762818Aに開示され、また商品として入手可能である(例えば、Bulk Nutrition, Graham, NC, USA-更なる情報はbulknutrition.comを参照;WINKOS GmbH D-79189 Bad Krozingen,DE)。好ましい4,17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オンの特に塩及びエステル等の誘導体は、直鎖型、分枝型又は環状の適切なエステル基;又は、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、及びベンゾイル基のような芳香族アシル基;を含むが、これらに制限されない。エステル類は、4及び/又は17水酸基、好ましくは17水酸基を伴って合成することができる。この塩類及びエステル類はまた既知の方法により調製できる(例えば、US2,762,818Aを参照)。
【0042】
本発明の化合物及び調製物又は組成物は、様々な形で投与可能である。例えば、局所的に、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレイ、粉末、油又は経皮的膏薬、(錠剤を含む)貯蔵型の形で;経口的に、錠剤、カプセル、砂糖又はフィルムで覆われた錠剤、液性溶液又は懸濁の形で:直腸に、座薬の形で;非経口的に、例えば、筋肉中に、又は静脈注射又は輸液により投与することができる。好ましい実施態様によると、本発明の化合物類は、局所的投与の為に企画されている。
適用量は使用者の年齢、体重、体調及び投与形態による。例えば、成人の経口投与に適用される量は1使用あたり、約10から150〜1000mg、毎日1〜5回である。
本発明は、担体又は希釈剤と組み合わせた本発明の化合物を含有する調製物又は組成物を含む。
【0043】
局所使用に対して、この組成物は、例えば植物油及びアーモンド油、ピーナッツ油、オリーブ油、桃芯油、調味用油のような脂肪;植物抽出物;製油;さらに植物性ワックス及び合成及び動物油;ステアリン酸及びステアリン酸エステル、ラウリン酸及びラウリン酸エステル、ソルビタンエステル、セテアリルアルコール(cetearyl alcohol)のような脂肪及びワックス;レシチン、ラノリンアルコール、カロチン、フレグランス類、一価又は多価アルコール、尿素、ポロキサマー(Proloxamer)、トウィーン(Tween)等々のような界面活性剤;保存剤及び着色剤その他を含めて、処方することができる。水中油又は油中水懸濁液としての処方は好ましい。
【0044】
固体経口法は、例えば、活性化合物と共に、例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシ又はジャガイモ澱粉のような希釈剤;例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、及び/又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;例えば、澱粉、アラビア糊、ゼラチン、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ又はポリビニールピロリドンのような結合剤;例えば、澱粉、アルギン酸、アルギン酸塩又はグリコール酸ナトリウム澱粉のような凝集防止剤;発泡性混合物;色素、甘味剤;レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩のような加湿剤;及び、一般的に、薬理学的処方に用いられる非毒性及び薬理学的に不活性な物質;を含むことができる。これらの調製物は、例えば、混合、粒状化、錠剤化、糖被覆、又は薄膜被覆過程により既知の方法で加工することができる。経口使用のための液性懸濁物は、例えば、シロップ、乳濁液、及び懸濁液であることができる。
シロップは、例えば、サッカロース又はグリセリンを伴うサッカロース及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを、担体として含むことができる。懸濁液及び乳濁液は、担体として例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含むことができる。
【0045】
筋肉内注射のための懸濁液又は溶液は、活性化合物と共に、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチルなどの医薬上許容される担体、例えば、プロピレングリコールのようなグリコール類、及びもし希望するなら、適切な量のリドカイン塩酸塩を含むことができる。
静脈内注射又は輸液のための溶液は、担体として、例えば滅菌水を含むことができて、又は好ましくは、この溶液は滅菌した、水溶性、等張塩液の形であることができる。
座薬は、活性化合物と共に医薬上許容される担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤又はレシチンを含むことができる。
【0046】
適切な組成物の活性化合物含量は、本発明の化合物を0.0001〜20重量%、好ましくは、0.6〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%であることができる。通例の範囲は、0.6〜5重量%である。
皮膚透過性を促進するために薬物を混合するとするならば、これらの含量は、ヒアルロニダーゼの場合、例えば、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、ジメチルイソソルビド又はDMSOの場合、1〜25重量%、好ましくは5〜10重量%であることができる。
【0047】
本発明の特別な態様において、上記の化合物は、適切な溶媒を伴う適切な局所投与型に処方化される。化合物の上皮透過性の有効な補助剤と組み合わせて、本発明の化合物の種類に対して優れた溶解度という点で、特に効果的な溶媒として、ジメチルイソソルビド(アルラソルベ(Arlasolve)DMIとも呼ばれ;ICIより入手可能)が単独、又は例えばエタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール及びこれらの混合物の様なアルコール類又はポリオール類及び恐らく上記の他の成分のような他の担体又は溶媒と組み合わせて見出された。
【0048】
もし望むのであれば、上記の効果は、さらに5α−レダクターゼを阻害するに充分な量の5α−レダクターゼ阻害剤、及び/又はARを遮るに充分な量の抗アンドロゲン又はSARMを用いて、補完することができる。この点で、フィナステリド、6−アザステロイド類のような5α−レダクターゼ阻害剤;及び1型又は2型の5α−レダクターゼを阻害する、又は1型及び2型両者を阻害すると知られている他の化合物を;上記化合物と組み合わせて使用することができる。さらに、そういうものとして既知の、抗アンドロゲン又はSARMを、ビカルタミド又はフルタミドなどと組み合わせて使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、好ましいが、これらに制限されない態様を示すが、ここで本発明の化合物を、特に有効な適用分野において、これら化合物の効果を示すことができる。
【0050】
発毛
アンドロゲン性脱毛症は、抜け毛の最も高い頻度の原因であり、50歳までに男性の50%及び女性の40%に影響を及ぼす。この連続過程により、遺伝的に罹りやすい人々において、はっきりしたパターンとなる脱毛症となる。臨床的には異なるが、この種の抜け毛に至る病理学的な経路は、両性において類縁すると考えられている。アンドロゲン性脱毛症は、感受性の高い毛嚢の連続した縮小化を伴うDHT依存的過程であると定義できる。今日、DHTは、一方においてアンドロゲン性脱毛症を引き起こし、及び他方において、アンドロゲン性髭成長を引き起こすという事実について説明はない。
【0051】
アンドロゲン受容体は、コアクチベーターと共に作用して標的遺伝子をトランス活性化するが、アンドロゲンは、真皮乳頭におけるアンドロゲン受容体を通して、思春期後、部位特異的にヒト発毛に作用する (Itami 及び Inui, J. Investig. Dermatol. Symp. Brok. 2005, 10(3), pp. 209-211)。身体の様々な及び特定の部位に分布する、ヒト毛嚢は、アンドロゲン依存的成長に対する著しい感受性を表わす。髭、腋窩、及び前頭皮真皮乳頭細胞は、アンドロゲン標的細胞の特性を有する。これらの細胞は、アンドロゲン受容体の強い発現を示す。5α−レダクターゼ、イソ型2の発現は、髭及び前頭DPCに限られる。DPCは、アンドロゲンのシグナルを毛嚢上皮細胞に、見かけ上、パラ分泌(パラクリン)的に媒介する。髭において、この活性は、後頭におけるより3倍以上高い(Ando 他, Br. J. Dermatol.,141(5):840-845(1999))。非後頭及び髭における支配的な酵素は、2型イソ酵素である。後頭の毛嚢はアンドロゲン受容体を含まない(Itami 他., J. Dermatol. Sci.,7 suppl., S98-103 (1994))。
【0052】
本発明に従う生物学的経路に影響を与えることなく、テストステロンは、局所的に、5α−レダクターゼによりジヒドロテストステロンに変換され、ここでDHTの強いアンドロゲン性効果が発生する。フィナステリド、5α−レダクターゼのイソ型2の阻害剤、を用いた良性前立腺過形成(BPH)の治療及び予防から分かったことは、DHTと共にこの酵素が、アンドロゲン性脱毛症を産む頭皮の領域の毛嚢を提供する。特定の領域における真皮乳頭細胞中のアンドロゲン受容体にDHTが結合することにより、成人毛髪の産毛(アンドロゲン性脱毛症)への後退がもたらされる。その結果、頭皮の毛嚢は、数的には変化がないが、産毛のみ作り出す。進行性抜け毛がある。DHTの源を使い果たす変わりに、DHTに抗するアンドロゲン受容体の遮蔽は、髪補助効果又は頭髪の再発毛さえ導く。脱毛した毛嚢真皮乳頭細胞は、脱毛してない頭皮のアンドロゲン受容体レベルよりも高い受容体レベルを含む。従って、本発明の化合物は、頭皮における発毛促進に対して非常に価値がある。
【0053】
頭皮以外の身体部位での状況は、しかし異なる。時々、他の部位における過度な発毛は迷惑である。従来、これらは脱毛により除かれた。高温ワックスによる脱毛は、多くの変形した毛嚢における発毛を復活させ(テロゲン毛)、従って高温ワックス脱毛の頻度及び痛みを増す。陰毛及び腋窩毛は、CAISにおいて薄い、又は欠いている。対応する細胞培養は、アンドロゲンとして大部分テストステロンを含み、DHTはほんの痕跡を含む。対応する身体部位において不要な発毛は5α−レダクターゼ阻害により防ぐことができない。本発明によると、アンドロゲン受容体を遮蔽してDHTを阻害することにより、これは可能である。殆ど全ての毛嚢において(頭皮、陰部、腋窩毛を除き)真皮乳頭の特定の細胞が、DHTにより活性化され発毛を促進する。もし皮膚の対応する部位を局所的に、例えば4−OHT又は本発明の類縁化合物で処理すると、対応する毛嚢からの発毛は僅かであり、及びこれらは処理以前と比べ異なる構造及び色を示す。体毛はよりゆっくり成長し、濃くはなく、またさらに細く、またより薄い色である。6ヶ月後、大部分の毛嚢は産毛のみ産生する。
従って、本発明の化合物の使用は、適用標的によった好ましい効果をもたらし、それは体毛部位(頭皮以外の領域)における成人毛髪の減少であり、一方頭皮においては成人毛髪の回復がある。従って、本発明の化合物は、発毛における有効な二重の効果を可能とする。
【0054】
セルライト及びコラーゲン合成
セルライトは、不安定な皮下の構造、及び特に脂肪組織と真皮組織における/間の領域に由来する化粧の問題である。これらの構造を安定化させるために、構造タンパク質及び弾性繊維が関係する因子であり、また通常繊維芽細胞がこのような構造タンパク質及び繊維を産生する上で関与している。
アンドロゲン受容体(AR)の存在により、少なくとも部分的に、セルライト及び他の冒された皮下組織の形成に関与する当該の標的細胞において、本発明の化合物と結びつく2重の活性を有効使用することができることが分かったが、ここで2重の活性とは即ち、本発明の化合物が、実質的にアンドロゲン性効果を持つことなしにARと結合することであり、他方、繊維芽細胞のような関係する標的細胞上に同化作用活性を示すことである。本発明に従う好ましいステロイド類の選択により、ARを遮断してDHTのような自然に誘導されたアンドロゲン類の効果を阻害して、他方構造タンパク質及び弾性繊維の産生を好ましく促進し、及びこれらの同化作用により、特にコラーゲン合成を好ましく促進する。
【0055】
アンドロゲン受容体はヒト皮膚に存在することが見出されている(例えば、Liang 他, J. Invest. Dermatol. 1993, 100(5), pp. 663-666 (1993)を参照)。さらに、アンドロゲン性効果を、より良く遮断することができると、ますます同化作用及びとりわけコラーゲン産生の促進が盛んになる(.例えば、J. Clin. Endocrinol. Metab. 89(6), pp. 2033-241 (2004)の中でMeier 他による観察に基づく)。
セルライトの好発部位上の皮膚を、4−OHTを含む調剤で局所処理すると、4週間以内に皮膚のかなりな凝固が起こるという観察から、この調剤は、同化作用を持つことを確認する。この皮膚強化に横たわる機構は、コラーゲン繊維のメッシュ中にトラップされた脂肪細胞の顕著な減少と縮小を伴う、皮膚におけるコラーゲン繊維の劇的な増加である。セルライトは、下にある脂肪組織の真皮への拡散性パターンの押し出しを示す。2種の層間の境界は、コラーゲン繊維からできている。繊維芽細胞を刺激してより多くのコラーゲンを産生させてコラーゲン含量を増すことで、この境界を強化すると、セルライトの状況が著しく改善される。
【0056】
本発明に従う4−OHT又は類縁化合物のような化合物を含む局所的処方は、繊維芽細胞の刺激により皮膚のコラーゲン含量を増加することができる。4−OHTを含む局所的処方は、4−OHAより優れていることが証明された。4−OHTは唯同化作用を持つと想定することが妥当である。皮膚への適用後、この非常にアンドロゲン感受性の高い器官において、どんなものであれアンドロゲン性効果は観察することができなかった。見かけ上、4−OHTは発毛又は吹き出物のようなどんなアンドロゲン性効果も発揮することができない。
コラーゲンの強化、安定化、及び/又は増加が問題である適用症例、即ちセルライト以外の目的に対する皮膚への適用、に対して同様に有益な効果を、想定することができる。
【0057】
皮膚の線条及び上皮の弛緩
線条皮膚萎縮症は、最初は赤味がかり、及び最後には白色の、萎縮が現れる皮膚の線型の、滑らかなバンドにより特徴付けられる。これらは、急な体重増加における様な、皮膚の伸展、又は重量挙げにおける様な、機械的ストレスによる。線条皮膚萎縮症の病理学は知られてない。皮膚線条を患う婦人の生検試料は、またコラーゲンの減少を示す(Viennet 他, Arch Dermatol Res. 297(1), 10-17 (2005))。従って、皮膚線条の治療における最初の目標は、繊維芽細胞を刺激してより多くのコラーゲンを産出することである。従来、これは585nmコラーゲン改造、2重フラッシュランプ励起色素レーザーにより試みられている。585nmの波長は、ヘモグロビンの吸収ピークに対応する。これらの皮膚レーザーにおける加熱効果は、様々な成長因子の放出の引き金となり、コラーゲン改造及び固化を促進する。
皮膚線条はまた、本発明に従う4−OHTを含む適切な処方により治療される。コラーゲン合成に対する有益な効果は、皮膚の厚みの増加をもたらす。赤色皮膚線条は、白肌皮膚により広く分布するのに対し、皮膚線条は、黒色皮膚に対しかなりな問題である。両者の場合、4−OHT及び本発明に従う見かけ上類縁物質は、これらを消失させる。
【0058】
皮膚老化及び皺
皮膚老化の防止は化粧及び製薬産業の神聖な努力目標であるが、この冒険は見当違いかも知れない。老化した皮膚の主要な臨床的及び生化学的特徴は、歳を取ることよりむしろ光老化に起因する。
光損傷を受けた皮膚は、長年の間、レチノイド、α−ヒドロキシ酸、及び抗酸化剤のような製剤による局所処理のような治療選択を用いて治療されてきた。再表皮化及びコラーゲン改造はより若い外観をもたらすだろうという期待の下に、第2レベルの選択として、ポツリヌス毒素注射;コラーゲン又はヒアルロン酸ゲルを用いた軟組織増加;皮膚表面の変更、化学的剥離、皮膚剥離術及びレーザー表面変更処置の使用;のような、顔面若返り処置を用いて、皮膚剥離術又は化学的剥離術を用いて表皮及び様々な厚みの真皮を除くことができる。
コラーゲンは美容増進のための第1番目の充填剤の一つであり、また20年以上用いられてきた。最近、近い将来多く期待できる、新しい注入可能な充填剤の高まりがある。増強剤及び皺充填剤のための多くの新しい製品にもかかわらず、尚単独及び他の皺充填剤と組み合わせた、注入可能なコラーゲンの役割が残る。
皺を滑らかにするために、皮膚にコラーゲンを注射する変わりに、皮膚のコラーゲン含量を増加させるより堅実な方法があり、皺になりやすい場所に、局所に存在する繊維芽細胞を刺激してより多くのコラーゲンを産生させることがより容易である。これは特に、顔及び襟ぐりの皮膚部位において、本発明の化合物の局所的適用を用いて容易に達成することができる。
【0059】
脂肪組織の減少
4−OHT及び本発明に従う類縁化合物は、確かにアンドロゲン性の効果に依ってではなく、脂肪組織の萎縮をもたらす。これらの化合物は強い同化作用を有するので、脂肪組織の減少に対して、恐らくその様な効果が関係するのであろう。
【0060】
体臭及び脱臭剤
臭汗症(ブロムヒドロシス又はブロミドロシス)又は体臭は、思春期後の個人に共通な現象である。希に、もし臭汗症が特に圧倒的である、又は臭汗症に冒された個人の生活を非常に妨げるならば、臭汗症は病的となることができる。臭汗症は、慢性的状態であり、通常不快な、過剰な臭気が皮膚から発散するアポクリン腺分泌により多く決定されるこの状態は、ヒトの生活の質を相当損なうことができる。
【0061】
ヒトの分泌腺は、本来二種に分割される:アポクリン(離出分泌)及びエクリン(漏出分泌)。エクリン腺は全皮膚表面に分布しており、これらは発汗による温度調節に関わっている。それに対して、アポクリン腺は限られた分布であり、脇の下、性器皮膚及び乳房にかかわる。アポクリン成分は、眼窩周囲及び耳介周囲にもまた見出される。アポクリン腺は、熱調節機能を持たないが、特徴的なフェロモン臭に関係する。アポクリン臭汗症は、最も一般的な形であり、一般的でないエクリン臭汗症とは区別される。アポクリン臭汗症の病理学に対して寄与する幾つかの因子がある。アポクリン分泌の細菌性分解により、アンモニア及び短鎖脂肪酸が作られ、特徴的な臭気をもたらす。これらの中で最も多量な酸は、(E)−3−メチル−2−ヘキサン酸(E-3M2H)であり、これは、2アポクリン分泌臭気結合タンパク質(ASOB1及びASOB2)による皮膚表面結合をもたらす。これらの結合タンパク質の1つ、ASOB2,はアポリポタンパク質D(apoD)と同定され、これは担体タンパク質のリポカリン族の既知の一員である。
【0062】
汗の中の非不快臭性前駆体をより不快臭性揮発性酸に変換する(Natsch, 2002)ことにより、腋窩細菌叢が特徴的な腋窩臭を作り出すことは知られている。これらの最も普通の化合物は、E−3M2H及び(RS)−3−ヒドロキシー3−メチルヘキサン酸(HMHA)であり、これらはコリネバクテリア(Corynebacterium)種からの特定の亜鉛依存性N−α−アシル−グルタミンアミノアシラーゼ(N-AGA)の作用を通して放出される。このアミノアシラーゼは、最近、汗の中のグルタミン共役から他の不快臭性酸を放出することが示され、これが個人の体臭の土台となることができる。
アポクリン発汗腺は、5α−レダクターゼイソ型1の高い活性を示す。臭汗症を患うヒトのアポクリン腺は、テストステロンより高いDHTの濃度を示す。アポクリン汗腺は、アンドロゲン性受容体を発現する(Beier 他., Histochem Cell Biol.123(1):61-65 (2005))。アンドロゲン性受容体の賦与は、上皮組織の高さと相関する。アポクリン腺において、高上皮組織は、分泌活性と結びつく。
【0063】
特に、アポクリン汗腺がアンドロゲン受容体を有するので、本発明の化合物は、これらの化合物のARに対する高い結合性によって、及び恐らく、本発明の化合物に結びつく共活性に助けられて、体臭に影響する発汗物質の組成の大変早くでまた効果的な調節を可能にすることが見出された。
従って、本発明の化合物は、冒された身体又は髪部位(特に腋窩)、エクリン及び特にアポクリン汗腺、皮脂腺、汗腺、その他に対する脱臭薬として働き、結果的にバランスの良い、自然な体臭ともたらす。
本発明の化合物がアンドロゲン受容体に対して持つ際だって高い親和性、及び体臭への直接の効果は、少なくとも5α−レダクターゼ阻害の単独阻害では無い様で、作用の主要な機構としてアンドロゲン受容体の遮蔽を示す。
体臭に関連する腺の大部分は、皮下組織に位置する。
従って、有効な薬物を直接に適用することは難しい。この目的のために、ある物質が含まれ、皮膚への透過性を促進する。最適の結果が、4−ヒドロキシテストステロン及び物質ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI)の組合せと共に観察されたが、ここで4−ヒドロキシテストステロンは、同様に上記のように、その塩類及びエステル類により置き換えうる。
【0064】
皮脂腺及び皮膚清潔
一般的座瘡は、脂肪便的慢性疾患であり、これに対しては、面皰、丘疹膿疱性の皮疹、化膿性の嚢胞及び瘢痕の存在が特異的である。多くの薬物治療が座瘡に可能である。医療装備には、局所的レチノイド、抗微生物及び抗バクテリア物質、ホルモン試薬(経口避妊薬及びスピロノラクトン)及び全身的レチノイドが含まれる。座瘡は、多因子的な病理生理学を扱うために、通常組合せ治療が施される。座瘡の病理学における鍵となる因子は、皮脂産生である。イソトレチノイン及びホルモン治療のみが、皮脂腺に作用して、座瘡を改善する。一般的/単純な座瘡の原因病因論において、決定的役割は、DHTにより行われる。
ヒト皮膚、特に皮脂腺は、性ホルモン腺及び副腎皮質に類縁した立体生成器官であり、ステロイド性ホルモン合成及び代謝に要求される全ての酵素を有する(Labrie 他, Horm Res. 54(5-6), 218-229 (2000))。完全にアンドロゲン抵抗性の場合、皮膚は特に清潔である。完全なアンドロゲン非反応性の人は、例えば前頭の皮膚において皮脂を作らない(Imperato-McGinley 他., J Clin Endocrinol Metab. 76(2), 524-528 (1993))。
【0065】
5α−レダクターゼ1型イソ酵素の存在は、皮脂産生にDHTのかなりの寄与があることを示す。皮脂腺におけるこの5α−レダクターゼの活性は、周囲の皮膚(顔、頭皮、座瘡になりにくい皮膚)におけるより高い。顔皮膚及び頭部皮膚における皮脂腺は、座瘡になりにくい皮膚の皮脂腺に比べ高い酵素活性を有する。完全にアンドロゲン抵抗性の場合、皮膚は特に清潔である。DHTは、テストステロンより強く、顔の皮脂腺の増殖を促進する。顔以外の皮脂腺の増殖は、テストステロンにより阻害されるが、DHTはこれらの増殖を促進する(Akamatsu 他, J Invest Dermatol. 99(4):509-511, (1992))。アンドロゲンの影響下にない皮膚は、非常に低い濃度のテストステロン又はDHTを示し、他方、顔皮膚の大きな皮脂腺は、生殖器皮膚と比較しうる濃度を示した。これらの腺は、性に関係なく、典型的なアンドロゲン標的器官である(Kurata 他, J Dermatol Sci. 2(2), 75-78 (1991))。
【0066】
座瘡の局所的治療は、エタノール又はイソプロピルミリスチン酸塩中のシプロテロン酢酸塩(CPA)1%溶液で行われる。男性における使用を排除し、また女性における避妊剤測定を要求して、一般に副作用を減少させるべきである。シプロテロン酢酸塩は、これまでのところ、座瘡を持つ患者の前頭皮膚に適用したとき、皮脂分泌速度を減少させることができない。これは、この薬剤を全身的に与えることで達成することができる。これは、この薬剤が皮膚をかろうじて透過するということの表れである。従って、皮膚透過性を改善するために、固体脂質ナノ粒子に乗せる試みが、為された(この試みにより、皮膚におけるCPA吸収が2〜3倍増加する)。
本発明の化合物により示されたその効果、特に天然のアンドロゲン性薬剤DHT上の遮蔽効果は、従って次には、皮脂性物質の余りに強い産生を妨げ、またそれにより皮膚中又は皮膚における重要な部位におけるこれらの集積を緩和し、最終的に座瘡を除くであろう。
【実施例】
【0067】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
本発明の化合物は以下のように合成することができる。
第1段階として、2.5gテストステロンを100mlの冷MeOHに溶解する。9mlのNaOH(2%)及び17mlのH(30%)を加えた後、混合物を4℃、24時間攪拌する。得られたエポキシドを氷水で沈殿させる。
第2段階として、2gの乾燥エポキシドを2%のHSOを含む200mlの酢酸に溶解する。この溶液を室温で、4時間攪拌する。反応産物を氷水で沈殿させる。
その後、反応産物を1%のNaOH溶液で洗浄して、アセチルエステルを加水分解する。精製した4−ヒドロキシテストステロンの全収量は、40〜50%の範囲である。
【0068】
実施例2
本発明の局所投与に対するクリームは、以下の量の成分を用いて従来の方法で処方することができる。量は100gのクリーム当たりで与えられている:
4−ヒドロキシ−17β−アセチルアンドロスト−4−エン−3−オン 4.5g
セテアリルアルコール 7.5g
パラフィンワックス 3.0g
カルボマーナトリウム塩 2.5g
ミリスチン酸イソプロピル 6.0g
モノステアリン酸ソルビタン 1.0g
ポリソルベート20 3.0g
ステアリルアルコール 2.0g
DMSO 5.0g
純水ad 100.0g
得られたクリームをヒトの冒された皮膚部位上の皮膚に局所的に与えることができる。この様にして1日に1度与えると、セルライト、線条又は皺をコントロールできる。
【0069】
実施例3
本発明のゲルは、以下の量の成分を用いて従来の方法で処方することができる。量は100gのゲル当たりで与えられている:
4−ヒドロキシテストステロン 2.5g
95度エタノール 70.0g
カルボポール980 0.5g
ミリスチン酸イソプロピル 2.5g
トリエタノールアミン 0.5g
純水ad 100.0g
得られたゲルを、脱毛症を患う男性の頭皮上に局所的に与えることができる。又は、得られたゲルをこの身体部分の発毛をさらに低下させるために、脱毛後女性の脚の皮膚上に局所的に与えることができる。
【0070】
実施例4
本発明の脱臭用スプレーとして用いられる溶液を、以下の処方を用いて従来の方法で調製する。量は100gの溶液当たりで与えられている:
4−ヒドロキシテストステロン 2.5g
95度エタノール 70.0g
ミリスチン酸イソプロピル 2.5g
純水ad 100.0g
このスプレーを腋窩部位のような不快な臭気に冒された皮膚に対して要求通りに適用する。又は、4−ヒドロキシ−17β−アセチロキシ−アンドロスト−4−エン−3−オン(4−ヒドロキシテストステロンの17−アセチルエステル)を4−ヒドロキサテストステロンの代わりに指示された量だけ用いることができる。
【0071】
実施例5
全量100g当たり、以下の成分を混合することにより組成物が調整される。
4−ヒドロキシテストステロン 7.5g
ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI) 15.0g
95度エタノール 15.0g
純水ad 100.0g
この組成物は、不快な体臭に冒された腋窩に対して局所的に適用される脱臭スプレーとして用いられる。
【0072】
実施例6
各重量が0.150gであり、25mgの活性化合物を含む錠剤は、以下のように調製することができる(10,000錠剤に対する組成):
4、17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オン 250g
ラクトース 800g
コーンスターチ 415g
滑石粉末 30g
ステアリン酸マグネシウム 5g
4、17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オン、ラクトース及び半量のコーンスターチを混合する;混合物を0.5mmメッシュサイズの篩にかける。コーンスターチ(10g)を温水(90ml)に懸濁して、得られたペーストを用いて顆粒化して粉末にする。顆粒を乾燥して、1.4mmメッシュサイズの篩上で粒状化し、その後残量の澱粉、滑石、及びステアリン酸マグネシウムを加えて、注意深く混合して、錠剤に加工する。この錠剤を、化粧用として経口的に用いることができる。
【0073】
実施例7
各分量が0.200gであり、20mgの活性化合物を含むカプセルを調製することができる(500カプセルに対する組成):
4,17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オン 10g
ラクトース 80g
コーンスターチ 5g
ステアリン酸マグネシウム 5g
この処方物を、2枚の硬いゼラチンカプセルに包み込み、各カプセルに対し分量は0.200gである。この錠剤を化粧用として経口的に用いることができる。
【0074】
実施例8
本発明の局所投与のための軟膏は、以下の量の含有物を用いて、従来の手法で処方することができる。100gの軟膏当たりの量が与えられている:
17β−ヒドロキシ−6−メチレンアンドロスト−1,4−ジエン 2.5g
プロピレングリコール 25.0g
ミリスチン酸イソプロピル 6.0g
モノステアリン酸ソルビタン 1.0g
ポリソルベート80 2.0g
ステアリルアルコール 2.0g
ヒアルロン酸 0.1g
純水ad 100.0g
得られた軟膏を、コラーゲンの不足により冒された組織部位上の皮膚に局所的に与えることができる。
【0075】
実施例9
本発明に従う局所投与のための軟膏は、以下の量の含有物を用いて従来の方法で処方することができる。100gの軟膏当たりの量が与えられている。
4−ヒドロキシ−17β−プロピオニルオキシ−アンドロスト−1,4−ジエン−3−オン 2.5g
プロピレングリコール 20.0g
ミリスチン酸イソプロピル 7.5g
ジメチルイソソルビド(Arlasove DMI) 10.0g
ステアリルアルコール 5.0g
純水ad 100.0g
この軟膏を多量の脂肪細胞によって冒された組織部位上の皮膚に局所的に与えることができる。
【0076】
実施例10
本発明の注射のための組成物は、以下の量の含有物を用いて処方することができる:
4,17β−ジヒドロキシアンドロスト−4−エン−3−オン 10.0mg
ベンジルアルコール 5.0mg
ポリソルベート 25.0mg
塩化ナトリウム 10.0mg
純水及び滅菌水ad 1ml
このように調整した組成物を、不充分なコラーゲン含量に冒された皮下部位に週に1度注射することができる。
【0077】
実施例11
同時に局所的及び化粧の組合せ組成物に対するゲルは、以下の量の含有物を用いて従来の方法で処方される。量は、ゲル100g当たりで与えられている:
4−ヒドロキシテストステロン 2.75g
フィナステリド 1.25g
80%エタノール 10.0g
カルボポール 934P 8.0g
PEG 400 2.5g
尿素 3.0g
オレイン酸エチル 0.5g
純水 100gまで
このゲルを、発毛促進のため男性の頭皮上に局所的に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
【化1】

(式中、a,b及びcは、それぞれ互いに独立して、単結合又は二重結合を表し、但し、a,b、及びcのうち少なくとも一つは二重結合を表し、aが単結合かつbが二重結合である場合Rは水素原子ではない、
は水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、
は、水素原子又はOR(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基を表す。)を表し、
は、cが単結合の場合、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、cが二重結合の場合、CHR(式中、Rは上記と同様に定義される。)を表し、
は、水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基、非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、COR(式中、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基、又は非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基若しくはベンゾイル基を表す。)で表わされるアシル基、又は生物的代謝又は化学的脱保護により水酸基に導くいかなる置換基を表す。)で表される化合物及びこれらの塩類から選択される化合物の化粧用用途のための使用。
【請求項2】
下記化学式
【化1】

(式中、a,b及びcは、それぞれ互いに独立して、単結合又は二重結合を表し、但し、a,b、及びcのうち少なくとも一つは二重結合を表し、aが単結合かつbが二重結合である場合Rは水素原子ではない、
は水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、
は、水素原子又はOR(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基を表す。)を表し、
は、cが単結合の場合、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、cが二重結合の場合、CHR(式中、Rは上記と同様に定義される。)を表し、
は、水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基、非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、COR(式中、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基、又は非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基若しくはベンゾイル基を表す。)で表わされるアシル基、又は生物的代謝又は化学的脱保護により水酸基に導くいかなる置換基を表す。)で表される化合物及びこれらの塩類から選択される化合物を、
下記のいずれかの条件に影響を与える又はその条件を制御するために使用する方法。
− 頭皮上の発毛の促進、又は頭皮以外の身体部位の発毛減少、
− 乱された皮下組織、特にセルライトの発生、
− 皮膚の皺又は線条の発生、及び/又は上部皮膚の弛緩、
− コラーゲンを含む組織の強化、安定化及び/又は増強、
− 脂肪組織の減少、
− 体臭の回避、
− 皮膚清潔、特に座蒼における皮膚清潔の達成
【請求項3】
前記化合物において、a及びcが単結合であり、bが二重結合であり、かつRがOR(式中、ORは上記と同様に定義される。)で表わされる請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が局所的に用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記使用が、
(i)アンドロゲン受容体(AR)への遮蔽効果、及び
(ii)亢進された同化作用活性、
が得られるような条件下で行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記使用が、以下の効果又は特性
(iii)前記化合物が、アロマターゼにより芳香族化されない、
(iv)前記化合物が、5α−レダクターゼにより還元されない、
(v)前記化合物が、5α−レダクターゼを阻害する、
(vi)C−17酸化代謝物の形で、前記化合物が亢進したアロマターゼ阻害を示す、
を単独又は組み合わせて得られるような条件下で行われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物が4−ヒドロキシテストステロン又はこの塩類若しくはエステル類である請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記4−ヒドロキシテストステロン又はこの塩類若しくはエステル類の使用が、ゴナドトロピン分泌に負のフィードバックをもたらす請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記化学式により定義された化合物以外の、抗アンドロゲン及び5α−レダクターゼ阻害剤からなる群から選択される化合物が、組み合わせて使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ジメチルイソソルビド及び下記化学式
【化1】

(式中、a,b及びcは、それぞれ互いに独立して、単結合又は二重結合を表し、但し、a,b、及びcのうち少なくとも一つは二重結合を表し、aが単結合かつbが二重結合である場合Rは水素原子ではない、
は水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、
は、水素原子又はOR(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基を表す。)を表し、
は、cが単結合の場合、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、cが二重結合の場合、CHR(式中、Rは上記と同様に定義される。)を表し、
は、水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基、非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、COR(式中、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基、又は非置換の若しくは炭素数が1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基若しくはベンゾイル基を表す。)で表わされるアシル基、又は生物的代謝又は化学的脱保護により水酸基に導くいかなる置換基を表す。)で表される化合物及びこれらの塩類から選択される化合物の組み合わせから成る組成物。
【請求項11】
前記化合物が4−ヒドロキシテストステロン又はこの塩類若しくはエステル類である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
局所的処方の形態である請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
更に、前記化学式により定義された化合物以外の、抗アンドロゲン及び5α−レダクターゼ阻害剤からなる群から選択される化合物を含む請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−503129(P2011−503129A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533486(P2010−533486)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009540
【国際公開番号】WO2009/062682
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510130457)エルラコス ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】ERLACOS GMBH
【Fターム(参考)】