説明

化粧金属板、及びその製造方法

【課題】本発明はユニットバス内壁や、冷蔵庫のドア、エアコンカバーなどの家庭電化製品の外装や、鋼製家具、エレベーター、建築物内装材等に好適に用いられる化粧金属板に、好適な耐スクラッチ性を付与すること、及び耐スクラッチ性の良好な化粧金属板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】型押しによって成形された微細な凸部を有する化粧シートを金属板に貼り合わせてなる化粧金属板であって、前記凸部の上面が平らであることを特徴とする化粧金属板が提供される。特に、前記化粧シートに占める前記凸部の面積割合が10%以上50%未満であることを特徴とする化粧金属板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユニットバス内壁や、冷蔵庫のドア、エアコンカバーなどの家庭電化製品の外装や、鋼製家具、エレベーター、建築物内装材等に好適に用いられる化粧金属板、及びその製造方法に関する。特に爪等によるスクラッチ傷が目立ちにくい耐擦傷性を有する化粧金属板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧金属板は、ステンレス鋼板やめっき鋼板などの金属板の表面に熱可塑性樹脂からなる化粧シートが貼り合わされた複合材で、高強度で防水性に優れ、意匠性にも優れた材料である。そして化粧金属板に求められる性能のひとつに「耐スクラッチ性」がある。化粧金属板が爪などで引っ掻かれた時に入る傷を「スクラッチ傷」と呼ぶが、このような傷が「入りにくい性質」及び「入っても目立たない性質」を「耐スクラッチ性」と呼ぶ。
【0003】
耐スクラッチ性等の改善された化粧金属板として、特許文献1において、金属板上に架橋間平均分子量が150乃至1000である電離放射線硬化型樹脂及びヌープ硬度1300kg/mm2以上の球状無機粒子を含有する表面保護層が設けられた化粧金属板が提供されている。また特許文献2及び3において、ポリエステル樹脂中に一部が極性基を有するビニル重合体でカプセル化されたゴム状弾性体樹脂を微分散した樹脂組成からなる層を有する化粧金属板が提供されている。更に特許文献4において、金属板に特定粗さの表面模様を付与した後、金属板表面に透明な樹脂フィルムを被覆した化粧金属板が提供されている。しかしながら、化粧金属板に用いられる化粧シートの表面形状を検討して、耐スクラッチ性を向上させた化粧金属板は未だ提供されていない。
【0004】
特許文献5の発明は化粧紙に係る発明であるが、化粧紙用の原紙上にウレタン系樹脂をバインダーとしたインキにより印刷層を設け、更に該印刷層上にウレタン系樹脂の盛り上げインキを用いて盛り上げ印刷を行い、凹凸模様を設けた化粧紙が提供されている。そして該化粧紙は、摩擦等による磨耗を凹凸模様の凸部のみで受ける為、擦過傷による白化現象が目立たない。しかしながらこの化粧紙の技術を化粧金属板に用いることはできなかった。なぜならば、化粧紙に盛り上げインキを盛り上げ印刷することは容易であっても、金属板に該印刷を機械的に連続して行うことは困難な為である。また金属板の表面に特許文献5にて提供される化粧紙を貼り付ける方法も考えられるが、化粧金属板は苛酷な条件で使用されることが多く、該化粧紙を用いるとインキが光によって変退色し、更には化粧紙が水で膨潤する恐れがある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−86275号公報
【特許文献2】特開2003−291260号公報
【特許文献3】特開2003−291261号公報
【特許文献4】特開2004−216803号公報
【特許文献5】特開平08−100397号公報
【0006】
ところでスクラッチ傷は、化粧金属板の表面が淡明色である場合よりも、黒色や紺色といった濃暗色である場合に特に目立つ。しかしながら、近年ユニットバス壁面等において、部分的に濃暗色のアクセントパネルを配置してメリハリを持たせたデザインが高評価を得ており、その為には濃暗色の化粧金属板が必須であった。そこで、濃暗色でありながら耐スクラッチ性に優れた化粧金属板の開発が要望されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、特に着色された化粧金属板に好適な耐スクラッチ性にすぐれた化粧金属板、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、型押しによって成形された微細な凸部を有する化粧シートを金属板に貼り合わせてなる化粧金属板であって、前記凸部の上面が平らであることを特徴とする化粧金属板が提供される。
更に、前記化粧シートに占める前記凸部の面積割合が10%以上50%未満であることを特徴とする前記化粧金属板が提供される。
更にまた、前記凸部が離散型であることを特徴とする前記化粧金属板が提供される。
更にまた、前記凸部が連続型であることを特徴とする前記化粧金属板が提供される。
更にまた、前記化粧シートが着色されていることを特徴とする前記化粧金属板が提供される。
更にまた、前記化粧シートが透明もしくは半透明であり、着色及び/又は印刷が施された別のシートと貼り合わされた後、金属板に貼り合わされてなる前記化粧金属板が提供される。
更にまた、熱可塑性樹脂からなるシートの表面に、エンボスロールを用いて凸部を型押しして化粧シートを製造し、次いで該化粧シートと金属板を貼り合わせることを特徴とする前記化粧金属板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、化粧金属板に貼り合わされる化粧シートに、微細な凸部を型押しすることによって、化粧金属板表面に微細な凸部を成形し、化粧金属板が引っ掻かれたときに、引っ掻いたもの(例えば爪等)が微細な凸部のみに当たり、ベース部には当たらないようにした。その為スクラッチ傷は、微細で不連続な傷となり、大きな連続した傷になりにくい。そして本発明者らは、表面に微細な凸部を有する化粧金属板が引っ掻かれた時、凸部上面が押し潰され、平らに変形することを発見し、凸部の上面を予め平らにするという手段を講じた。凸部の上面が予め平らであると、凸部が押し潰されても外観の変化が少なくなり、よってスクラッチ傷が目立たなくなるのである。
尚、本発明の化粧金属板は、爪で引っ掻かれた時に耐スクラッチ性を発揮することはもちろんであるが、掃除用のスポンジやたわし等によって擦られたときや、化粧金属板の製造から施工までの間に化粧金属板同士が擦れたときにも、耐スクラッチ性を発揮する。
【0010】
また化粧シートにおける凸部の面積割合を小さくし、ベース部の面積割合を大きくすることも提案する。具体的には化粧シートに占める凸部の面積割合が10%以上50%未満であることを提案する。これによって化粧金属板が引っ掻かれた時にスクラッチ傷が入る面積を減らし、傷つかない部分を増やすのである。
【0011】
更に本発明では凸部の形状として離散型と連続型の二つを提案する。離散型は図1に示す凸部201に代表されるもので、独立した凸部201がシート上に離散して存在する。連続型は図2に示す凸部202に代表されるもので、線状の凸部202が平行に配置される。なお連続型の凸部は、図2の凸部202のように一方向のみに平行に配置されていてもよいが、図3の凸部203のように二方向に平行に配置されていてもよい。更に図示してはいないが、三方向、四方向に平行に配置されていても。なお凸部を離散型にするか、連続型にするかは、化粧シートに用いる樹脂のエンボス適性、化粧シートに求められる強度などによって決定するとよい。
【0012】
更にまた、化粧金属板のスクラッチ傷は、化粧シートが濃暗色に着色されている場合非常に目立っていたが、本願発明の化粧金属板はスクラッチ傷が極僅かの面積にしか入らず、入っても目立たないので、例え化粧シートが濃暗色に着色されていても耐スクラッチ性に優れる。
更にまた、着色や印刷が施された別のシートの表面に、透明もしくは半透明の本発明による化粧シートを貼り合わせ、これを金属板に貼り合せると、別のシートに施された着色や印刷を活かしながら、化粧金属板の耐スクラッチ性を向上させることができる。
また本発明にて提供される化粧金属板の製造方法を用いると、特殊なインキを使用する必要なく、極めて単純な方法で化粧金属板の表面に凸部を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)は本発明の化粧金属板の一実施例の部分拡大斜視図、図1(b)は図1(a)のA−A断面矢視図である。図1(a)(b)に示す化粧金属板11には離散型の凸部201が設けられている。以下、本発明を図1(a)(b)に基づいて説明するが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の化粧金属板11は、金属板30に化粧シート21が貼り合わされてなる。そして該化粧シート21は表面に微細な凸部201を有する。具体的には、凸部201が図1に示されるような離散型である場合、凸部201の底面の直径L1を10μm〜1mm程度とする。直径L1が10μmよりも小さいと凸部201を成形することが困難となり、1mmを超えると凸部201にスクラッチ傷が入ったときに、傷が大きすぎて目立つ恐れが生じる。尚、凸部の底面が円形でなく多角形の場合は、底面における最大幅を10μm〜1mm程度とする。
また、隣接する凸部201までの間隔M1も10μm〜1mm程度とする。幅M1が10μmよりも小さいと凸部201を独立して成形することが困難となる。また、幅M1が1mmを超えると化粧金属板11が引っ掻かれた時に、引っ掻いたもの(例えば爪等)を凸部201のみで受け止めることが困難となり、ベース部211にも傷が入る恐れが生じる。尚、幅L1及び幅M1はいずれも100〜600μmが特に適する。
【0015】
また凸部201は上面201aが平らであればその形状は特に限定されず、例えば略円柱状、略四角柱状、略三角柱状等であるとよい。尚、凸部201は上面201aからベース部211に向かって、若干傾斜し、広がっていることが好ましい。ベース部211に向かって若干傾斜して広がるテーパー状であると、凸部201を型押しして成形する際に、型を化粧シート21から外し易く、凸部201が型崩れしにくい。
【0016】
また本願発明の化粧金属板11は、凸部201のみにスクラッチ傷が入り、ベース部211にはスクラッチ傷が入らない。よってスクラッチ傷を目立たせなくするために凸部201の面積割合は小さく、ベース部211の面積割合が大きいことが好ましい。具体的には、化粧シート21表面における凸部201の面積割合が50%未満で、ベース部211の面積割合が過半を占めることが望ましい。但し、凸部201の面積割合が10%未満であると、化粧金属板11が引っ掻かれたときに、引っ掻いたものが凸部201に当らずにベース部211を傷つける恐れが生じる。よって凸部201の面積割合は10%以上50%未満が好適で、特に15%以上40%未満が好適である。なお本明細書において、凸部201の底面積を凸部201の面積とし、化粧シート21の面積から凸部201の底面積を引いたものをベース部211の面積とする。更に、凸部201の面積をα、ベース部211の面積をβとしたとき、凸部201の面積割合はα/(α+β)、ベース部211の面積割合はβ/(α+β)とする。また凸部201の面積やベース部211の面積は、化粧シートの表面形状を直接測定し算出しても良いが、凸部を型押しするための型の表面形状から算出しても良い。両者の値は若干の違いはあっても、ほぼ一致する。
【0017】
なお凸201部の上面201aの面積は特に限定されないが、上面201aの面積が小さいほど、個々のスクラッチ傷が小さくなり、傷が目立ち難くなる。しかしながら、小さすぎると引っ掻かれたときに、凸部201がつぶれてしまいベース部211を傷つける恐れがある。これらを考慮すると凸部201の上面201aは、その面積が0.0001mm〜1mmであることが望ましく、0.0025mm〜0.05mmであることが特に好ましい。
【0018】
更に凸部201の高さも特に限定しないが、2〜50μmが好適である。該範囲よりも小さいと凸部201がベース部211からほとんど突出しないので、引っ掻かれた時に凸部201によってベース部211が傷つくことを防止できなくなる。また凸部201の高さが該範囲よりも大きいと、型押しして凸部を成形する際に、化粧シートを成す樹脂が型内に十分に充填されず、型通りの凸部201を成形できなくなる恐れが生じる。凸部201の高さは、特に10〜30μmが好適である。なお本発明の化粧シートは製造過程において、意図しない部分に若干の凹凸ができてしまうことがあるが、これは本発明の凸部に該当しない。
【0019】
図2(a)は本発明の化粧金属板の他の実施例の表面状態を示す部分拡大説明図、図2(b)は図2(a)のB−Bにおける断面矢視図である。図2に示す化粧金属板12には連続型の微細凸部202が設けられており、各凸部202は互いに平行な位置に配されている。なお凸部202が連続型である場合、凸部202の底面の幅L2は10μm〜1mmが適し、最も近いところに位置する凸部202までの距離M2も10μm〜1mmが適する。これは図1におけるL1およびM1と同様の理由による。そして凸部の最大幅L2及びベース部の幅M2の特に適した値は100〜600μmである。 更に凸部202の高さは、図1の凸部201と同様、2〜50μm、特に10〜30μmが適し、更にまた化粧シート22における凸部202の面積割合も、図1の凸部201と同様、10%以上50%未満、特に15%40%未満が好適である。
該化粧金属板12はユニットバス壁面等に使用した場合、筋状の陰影ができ意匠性に富む。また手触りも一方向に滑り易い独特のものとなる。
【0020】
図3(a)は本発明の化粧金属板の他の実施例の表面状態を示す部分拡大説明図、図3(b)は図3(a)のC−C断面矢視図である。図3に示す化粧シート13にも連続型の微細凸部203が設けられており、各凸部203は二方向に平行に、いわゆる格子状に配置されている。なお該化粧シート13においても、凸部203底面の幅L3は10μm〜1mmが適し、最も近いところに位置する平行な凸部203までの間隔M3も10μm〜1mmが適する。そして凸部の最大幅L3及びベース部の幅M3の特に適した値は100〜600μmである。更に凸部203の高さは、凸部201、202と同様、2〜50μm、特に10〜30μmが適し、更にまた化粧シート23における凸部203の面積割合も、凸部201、202と同様、10%以上50%未満、特に15%40%未満が好適である。
該化粧金属板13は凸部203が格子状に配されているため高強度で、例えばユニットバス壁面等に使用し、化粧金属板の表面が手や背中等で強く押さえ付けられたとしてもほとんど変形しない。
【0021】
尚、凸部が離散型であると、連続型である場合よりも凸部を型押し易いというメリットがある。また離散型の凸部を有する化粧金属板は、その表面が部分的に鏡面で局部的に梨地の独特の外観をし、意匠性に優れる。
【0022】
図4(a)は本発明の化粧金属板の他の実施例の表面状態を示す部分拡大説明図、図4(b)は図4(a)のD−D断面矢視図である。本発明の化粧金属板は、図4に示すように、凸部204やベース部214に混ざって、大型凸部224が成形されていてもよい。大型凸部224は凸部204と比較すると若干スクラッチ傷が入りやすいが、大型凸部224を用いることによって化粧シート14の外観に変化がもたらされ、意匠性が向上する。
【0023】
図5は本発明の化粧金属板の他の実施例を表す部分拡大断面図である。本発明の化粧金属板は、金属板に化粧シートが直に貼り合わされていてもよいが、図5に示すように、化粧シート25が、着色や印刷が施された別のシート40に貼り合わされ、更に金属板30に貼り合わされてもよい。化粧シート25、別のシート40、金属板30を貼り合わせる順番は、特に規定されず、金属板30に別のシート40を貼り合わせた後に化粧シート25を貼り合わせてもよく、化粧シート25と別のシート40を貼り合わせた後にこれを金属板30に貼り合わせてもよい。尚、着色や印刷が施された別のシート40を設ける場合、化粧シート25は透明、もしくは半透明であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明の化粧金属板を製造する方法について説明する。まず化粧シートを製造する。化粧シートは、従来から用いられていた樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂等の一種、或いは複数種をブレンドしたものを原料とし、これをインフレーション押出成形法やTダイ押出成形法等の公知の製膜法によってシート化するとよい。
【0025】
但し、近年社会問題化しつつある環境への負荷を考慮すると、上記した塩素系樹脂の使用は好ましいものとはいえず、非ハロゲン系樹脂を使用することが好ましい。中でも、市場での価格や流通量・調達の容易性をはじめ、化粧シートとしての適度の柔軟性と強度のバランスや、折り曲げや切断・切削等の加工適正、耐摩耗性や耐溶剤性等の表面物性、耐候性等の各種の側面から見て、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。更に本発明の化粧金属板をユニットバスの内装材に使用する場合は、高温、多湿の条件化にさらされることになるので、ガラス転移温度の高いポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
また化粧シートの厚みは特に限定されないが、薄くなりすぎるとエンボス加工が困難となり、金属板等に貼り合わすことも難しくなる。しかしながら厚くなりすぎると原価が高くなり、更にハンドリング性も悪化する。これらのことを考慮し、化粧シートの厚みは20〜400μm程度とする。また化粧シートは、単層のシートであってもよいが、多層のシートであってもよい。更に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、滑剤、AB剤等の各種添加剤を配合してもよく、着色や印刷等が施されていてもよい。シートに求められる機能に応じて、使用する樹脂の種類や層構成、添加剤、着色や印刷の有無等を適宜決定すればよい。
【0027】
次に化粧シートに凸部を型押しする。型押しする方法は特に限定されないが、例えばエンボスロールを用いるとよい。ロール状の鉄芯に銅メッキを行ったエンボスロールに、彫刻法、ヘリオ法等の機械彫りや、エッチング法等によって微細な凹部を設け、ハードクロムメッキを施した後、これを化粧シートに押し付けて、シートに微細な凸部を型押しするのである。なおエンボスロールに凹部を設ける方法としてエッチング法を採用し、エンボスロールの表面に感光剤を塗布し、凹部を設けるところ以外を露光して硬化させ、その後未硬化の感光剤を除去、更に感光剤で覆われていない部分を腐食液によって腐食し、凹部を成形すると、非常に簡単に底部が平らな微細凹部を成形することができる。なお凸部を型押しするタイミングは、化粧シートを製膜して一度巻き取った後に再度加熱して行ってもよいが、化粧シートを製膜した直後に行った方が、再加熱する必要がなく、エネルギーコストが下がるため好適である。
【0028】
最後に金属板に化粧シートを貼り合わせる。貼り合わせ方法は特に限定されず、公知の手段を用いるとよく、例えば、金属板を加熱し接着剤を塗布した後に、化粧シートを積層し、加圧して貼り合せるとよい。このとき、化粧シートが高温になりすぎると凸部の形が崩れる恐れがあるので留意する。そして、化粧シートが貼り合わされた金属板を水等で冷却し、乾燥し、更に所望の大きさにカットすると、本発明の化粧金属板を得ることが出来る。
【0029】
本願発明の化粧金属板は耐スクラッチ性に優れ、例え化粧シートが濃暗色に着色されていてもスクラッチ傷が目立ち難く、更には防水性にも優れるので、近年濃暗色の需要が高まっているユニットバスの壁面材として好適に用いることができる。しかしながらこれに限定されないのはもちろんである。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
銅メッキを行ったロール状の鉄芯に、エッチング法等によって、離散型の凹部を設け、さらにハードクロムメッキを施してエンボスロールを得る。凹部の形は四角柱状とし、凹部底面は一辺の長さが100μmの正方形、凹部の深さは20μmとした。次いで、該エンボスロールを用いてポリブチレンテレフタレートからなる厚さ200μmのシートに微細な凸部を型押しする。得られる化粧シートの凸部は四角柱状で、凸部上面は平らで、一辺の長さが100μの正方形であった。さらに、凸部の高さが20μmであった。また、エンボスロールにおける凹部の面積割合は16%であり、これから化粧シートの凸部の面積割合がほぼ16%であることが分かる。次いで金属板の表面に接着剤を塗布し、前記化粧シートを貼り付け、本発明の化粧金属板を得る。
【0031】
[比較例1]
銅メッキを行ったロール状の鉄心に、サンドブラスト法にて微細なドーム型の凹部を設け、更にハードクロムメッキを施してエンボスロールを得る。次いで、該エンボスロールを用いてポリブチレンテレフタレートからなる厚さ200μmのシートに微細な凸部を型押しする。該凸部は略ドーム状をしていた。また該凸部はシート全面に渡って設けられていた。次いで金属板の表面に接着剤を塗布し、前記化粧シートを貼り付け、比較例1の化粧金属板を得る。
【0032】
次に、実施例1および比較例1の化粧金属板の耐スクラッチ性を試験する。試験方法はJIS K 5400(1990)の手かき法に準拠し、化粧金属板の表面を6B〜Fの鉛筆で各5回引っ掻いて試験する。結果を表1に示す。尚、化粧金属板にすり傷が入った場合は×、すり傷が入らなかった場合は○を記す。
【0033】
【表1】

【0034】
よって実施例1の鉛筆硬度はHB、比較例1の鉛筆硬度はBであり、実施例1の化粧金属板は耐スクラッチ性に優れることが分かる。
【0035】
[実施例2〜8]
実施例1と同様にして化粧金属板を得る。但し、エンボスロールにおける凹部の密度を変化させ、化粧金属板における凸部の面積割合を表2のように変化させた。
【0036】
次に実施例1〜8、比較例1の化粧金属板について、傷の目立ち易さを調べる。試験は、JIS K 5400(1990)鉛筆引っ掻き試験の試験機法に準拠して行った。但し、測定芯は鉛筆に代えて幅0.5mmのアルミニウム芯を用い、試験片の移動距離は20mm、移動速度は3000mm/min、おもりは100g、200g、500gの三種類について行った。評価は目視にて行い、傷がはっきりと見える場合は×、傷がかすかに見える場合は△、全く見えない場合は○とする。結果を表2に記す。
【0037】
【表2】

【0038】
おもりが100gのとき、比較例1の化粧金属板は傷がかすかに確認できたが、実施例1乃至8の化粧金属板は傷が全く見えなかった。また、おもりが200gのとき、比較例1の化粧金属板は傷がはっきりと確認できたが、実施例2、3、5、6、7、8の化粧金属板は傷がかすかに見え、実施例1、4の化粧金属板は傷が全く見えなかった。よって、本願発明の化粧金属板はスクラッチ性に優れ、特に凸部の面積割合が10%以上50%未満であるときその効果が顕著であることが分かる。
【0039】
更に、実施例1の化粧金属板と比較例1の化粧金属板について、化粧金属板を引っ掻く前後で表面形状がどのように変化しているのか、共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)にて確認した。実施例1の化粧金属板の引っ掻く前の顕微鏡写真を図6(a)、引っ掻いた後の顕微鏡写真を図6(b)、比較例1の化粧金属板の引っ掻く前の顕微興写真を図7(a)、引っ掻いた後の顕微鏡写真を図7(b)とする。図6(a)と(b)を比較すると、実施例1の化粧金属板は引っ掻かれると、凸部が押し潰されて若干大きくはなるが、凸部の形そのものはあまり変化しないことがわかる。一方、図7(a)と(b)を比較すると、比較例1の化粧シートは、引っ掻かれるとドーム状の表面形状が部分的に平らに変形することが分かる。尚、ドーム状をした表面と平らな表面では光の反射の仕方が全く違うので、図7(b)に出現する平らな部分は、非常に目立つ傷となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の化粧金属板の一実施例の部分拡大斜視図(a)、及び(a)のA−A断面矢視図(b)である。
【図2】本発明の化粧金属板の他の実施例の部分拡大平面説明図(a)、及び(a)のB−Bにおける断面矢視図(b)である。
【図3】本発明の化粧金属板の他の実施例の部分拡大平面説明図(a)、及び(a)のC−Cにおける断面矢視図(b)である。
【図4】本発明の化粧金属板の他の実施例の部分拡大平面説明図(a)、及び(a)のD−Dにおける断面矢視図(b)である。
【図5】本発明の化粧金属板の他の実施例の部分拡大断面図である。
【図6】実施例1の化粧金属板の引っ掻く前の顕微鏡写真(a)、及び引っ掻いた後の顕微鏡写真(b)である。
【図7】比較例1の化粧金属板の引っ掻く前の顕微興写真(a)、及び引っ掻いた後の顕微鏡写真(b)である。
【符号の説明】
【0041】
11、12、13、14、15 化粧金属板
21、22、23、24、25 化粧シート
201、202、203、204 凸部
201a、202a、203a、204a 凸部上面
211、212、213、214 ベース部
224 大型凸部
30 金属板
40 別のシート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
型押しによって成形された微細な凸部を有する化粧シートを金属板に貼り合わせてなる化粧金属板であって、前記凸部の上面が平らであることを特徴とする化粧金属板。
【請求項2】
前記化粧シートに占める前記凸部の面積割合が10%以上50%未満であることを特徴とする請求項1記載の化粧金属板。
【請求項3】
前記凸部が離散型であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の化粧金属板。
【請求項4】
前記凸部が連続型であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の化粧金属板。
【請求項5】
前記化粧シートが着色されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧金属板。
【請求項6】
前記化粧シートが透明もしくは半透明であり、着色及び/又は印刷が施された別のシートと貼り合わされ、更に金属板に貼り合わされてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧金属板。
【請求項7】
熱可塑性樹脂からなるシートの表面に、エンボスロールを用いて凸部を型押しして化粧シートを製造し、次いで該化粧シートと金属板を貼り合わせることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の化粧金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−42575(P2010−42575A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207542(P2008−207542)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】