説明

医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム

【課題】非隆起型の病変部の形状が把握しやすい情報を生成することが可能な医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】輪郭抽出部32は、ボリュームデータに基づいて管腔体の内壁の第1の輪郭を求める。病変部抽出部33は、第1の輪郭を基準にして内壁よりも外側の領域における画素の画素値に基づいて、病変部の位置を求める。推定部34は、病変部の位置と第1の輪郭とに基づいて、病変部が存在しない場合における内壁の第2の輪郭を推定する。隆起レベル算出部35は、第1の輪郭と第2の輪郭とに基づいて、病変部の凹凸の程度を求める。画像生成部4は、ボリュームデータに基づいて管腔体を表す画像データを生成する。表示制御部5は、凹凸の程度を示す情報と画像データに基づく画像とを表示部61に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病変部を表す医用画像データを生成する医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置やMRI装置などの医用画像撮影装置を用いて被検体を撮影し、その撮影で得られた医用画像データを用いた診断が行われている。例えばスクリーニング検査を含む術前診断においては、医用画像データを用いてCTコロノグラフィー(CT Colonography)が行われている。
【0003】
CTコロノグラフィーにおける画像表示方法としては、展開画像表示(Virtual Gross Pathology:VGP)、又は仮想内視鏡表示(Virtual Endoscopy:VE)がある。
【0004】
展開画像は、大腸や血管や胃などの管腔体が切り開かれた状態を表す。すなわち、展開画像は、管腔体の内部の表面が展開された状態を表す画像であり、管腔体の内部の表面を表す。
【0005】
仮想内視鏡画像は、大腸や血管などの管腔体の内部の表面を3次元的に表す仮想的な内視鏡画像である。仮想内視鏡画像を用いた画像の表示方法は、フライスルーと称されている。フライスルーは、大腸や血管などの管腔体の内部の表面を、内視鏡と同じ視線で観察する技術である。
【0006】
フライスルーを用いた例として、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の方法は、観察対象領域の表面の各ボクセルに対する法線ベクトルを求める。そして、基準となる法線ベクトルと各法線ベクトルとがなす角度を求め、角度の分散を表面の凹凸度として求める。このように表面の凹凸度を求めることで病変部候補を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−14483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来においては、医師などの術者が、展開画像又は仮想内視鏡画像に表された大腸の内壁の表面を観察し、表面の形状に基づいて腫瘍の有無を判断していた。隆起型の腫瘍であれば、術者が表面の形状を観察することで、腫瘍の有無を比較的容易に判断することができる。隆起型の腫瘍には、有茎型の腫瘍、亜悠茎型の腫瘍、及び無茎型の腫瘍がある。
【0009】
しかしながら腫瘍が非隆起型の腫瘍(表面型腫瘍)の場合には、表面の形状を術者が観察するだけでは、腫瘍の有無を判断することは困難である。非隆起型の腫瘍(表面型腫瘍)には、表面隆起型の腫瘍、表面平坦型の腫瘍、及び表面陥凹型の腫瘍がある。表面隆起型の腫瘍が形成されると、内壁の表面に低い隆起が形成されるが、腫瘍の形状はほぼ平坦である。表面平坦型の腫瘍が形成されても、内壁の表面に隆起が形成されず、腫瘍の形状は平坦である。表面陥凹型の腫瘍が形成されると、内壁の表面にくぼみが形成される。このように非隆起型の腫瘍は、大腸の内壁の表面から突起した形状を有しない。表面隆起型の腫瘍であっても隆起の程度は低く、腫瘍の形状はほぼ平坦である。そのため、表面の形状を術者が観察するだけでは、腫瘍の有無を判断することは困難である。一般的に、スクリーニング検査において、非隆起型の腫瘍は隆起型の腫瘍と比べて発見されにくい。
【0010】
非隆起型の腫瘍は隆起型の腫瘍とは異なり、多段階発がん過程を経ずに癌化することが多い。そのため、非隆起型の腫瘍を早期に発見して早期に切除することが重要である。
【0011】
この発明は上記の問題を解決するものであり、非隆起型の病変部の形状が把握しやすい情報を生成することが可能な医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体の内壁の第1の輪郭を求める輪郭抽出手段と、前記第1の輪郭を基準にして、前記内壁よりも外側の領域における画素の画素値に基づいて、病変部の位置を求める病変部抽出手段と、前記病変部の位置と前記第1の輪郭とに基づいて、前記病変部が存在しない場合における前記内壁の第2の輪郭を推定する推定手段と、前記第1の輪郭と前記第2の輪郭とに基づいて、前記病変部の凹凸の程度を求める隆起レベル算出手段と、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体を表す画像データを生成する画像生成手段と、前記凹凸の程度を示す情報と前記画像データに基づく画像とを表示手段に表示させる表示制御手段と、を有する医用画像処理装置である。
請求項8に記載の発明は、コンピュータに、管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体の内壁の第1の輪郭を求める輪郭抽出機能と、前記第1の輪郭を基準にして、前記内壁よりも外側の領域における画素の画素値に基づいて、病変部の位置を求める病変部抽出機能と、前記病変部の位置と前記第1の輪郭とに基づいて、前記病変部が存在しない場合における前記内壁の第2の輪郭を推定する推定機能と、前記第1の輪郭と前記第2の輪郭とに基づいて、前記病変部の凹凸の程度を求める隆起レベル算出機能と、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体を表す画像データを生成する画像生成機能と、前記凹凸の程度を示す情報と前記画像データに基づく画像とを表示装置に表示させる表示制御機能と、を実行させる医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、内壁の第1の輪郭と推定された第2の輪郭とに基づいて病変部の凹凸の程度を求めて、病変部の凹凸の程度を画像とともに表示する。このように病変部の凹凸の程度を求めることで、非隆起型の病変部の形状が把握しやすい情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図2】大腸の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
【図3】大腸の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
【図4】大腸の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
【図5】隆起レベルと色との対応関係の1例を示す図である。
【図6】展開画像と仮想内視鏡画像とを示す図である。
【図7】大腸の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
【図8】この実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、この発明の実施形態に係る医用画像処理装置について説明する。この実施形態に係る医用画像処理装置1には、例えば医用画像撮影装置90が接続されている。
【0016】
(医用画像撮影装置90)
医用画像撮影装置90には、X線CT装置やMRI装置などの撮影装置が用いられる。医用画像撮影装置90は、観察対象を含む撮影領域を撮影することで医用画像データを生成する。例えば医用画像撮影装置90は、3次元の撮影領域を撮影することでボリュームデータを生成する。観察対象の1例は管腔体である。管腔体は、管状の組織と袋状の組織とを含む。管状の組織の1例は、大腸や血管である。袋状の組織の1例は、胃である。例えば管状組織を観察対象とした場合、医用画像撮影装置90は、管状組織を含む撮影領域を撮影することで、管状組織を含む撮影領域を表すボリュームデータを生成する。
【0017】
例えば医用画像撮影装置90としてのX線CT装置は、3次元の撮影領域を撮影することで、位置がそれぞれ異なる複数の断面におけるCT画像データを生成する。X線CT装置は、複数のCT画像データを用いてボリュームデータを生成する。管状組織の1例として大腸を観察対象とした場合、X線CT装置は、大腸を含む3次元の撮影領域を撮影することで大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを生成する。医用画像撮影装置90はボリュームデータを医用画像処理装置1に出力する。以下では、大腸を観察対象の1例とし、腫瘍を病変部の1例として説明する。
【0018】
(医用画像処理装置1)
医用画像処理装置1は、画像記憶部2と、画像処理部3と、画像生成部4と、表示制御部5と、ユーザインターフェース(UI)6と、条件記憶部7とを備えている。
【0019】
(画像記憶部2)
画像記憶部2は、医用画像撮影装置90から出力された医用画像データを記憶する。例えば、画像記憶部2は、大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを記憶する。
【0020】
医用画像撮影装置90がボリュームデータを生成せずに、医用画像処理装置1がボリュームデータを生成しても良い。この場合、医用画像撮影装置90は、複数の医用画像データ(例えばCT画像データ)を医用画像処理装置1に出力する。医用画像処理装置1は、医用画像撮影装置90によって生成された複数の医用画像データを受ける。画像記憶部2は、複数の医用画像データを記憶する。画像生成部4は、複数の医用画像データを画像記憶部2から読み込み、複数の医用画像データに基づいてボリュームデータを生成する。画像記憶部2は、画像生成部4によって生成されたボリュームデータを記憶する。
【0021】
(画像処理部3)
画像処理部3は、観察対象抽出部31と、輪郭抽出部32と、病変部抽出部33と、推定部34と、隆起レベル算出部35と、変換部36とを備えている。画像処理部3はボリュームデータを画像記憶部2から読み込み、ボリュームデータに基づいて病変部の凹凸の程度(隆起レベル)を求める。腫瘍を病変部の1例とする。大腸を観察対象とした場合、画像処理部3は、大腸に存在する腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)を求める。具体的には画像処理部3は、ボリュームデータから大腸の内壁の輪郭を抽出し、腫瘍の位置を求め、正常な内壁の輪郭を推定する。画像処理部3は、抽出された内壁の輪郭と、推定された正常な内壁の輪郭とに基づいて、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)を求める。正常な内壁とは、大腸に腫瘍が形成されていない状態における内壁である。
【0022】
図2から図5を参照して、画像処理部3による処理について説明する。図2から図4は、大腸の長手方向に沿った断面を示す断面図である。図5は、隆起レベルと色との対応関係の1例を示す図である。
【0023】
(観察対象抽出部31)
観察対象抽出部31は、ボリュームデータを画像記憶部2から読み込み、そのボリュームデータから大腸を表すボリュームデータを抽出する。この抽出には公知の方法を用いることができる。例えば観察対象抽出部31は、公知のセグメンテーション処理を実行することで、大腸を表すボリュームデータを抽出する。1例として、観察対象抽出部31は、CT値などの画素値に基づいて大腸を表すボリュームデータを抽出する。観察対象抽出部31は、大腸を表すボリュームデータを、輪郭抽出部32と病変部抽出部33とに出力する。
【0024】
(輪郭抽出部32)
輪郭抽出部32は、大腸を表すボリュームデータに基づいて、3次元空間における大腸の内壁(腸壁)の輪郭を求める。輪郭を求める方法には公知の方法を用いることができる。例えば輪郭抽出部32は、CT値などの画素値に基づいて大腸の内壁の輪郭を求める。以下において、輪郭抽出部32によって求められた内壁の輪郭を、第1の輪郭と称する場合がある。また輪郭抽出部32は、大腸を表すボリュームデータに基づいて、3次元空間における大腸の外壁の輪郭を求めてもよい。また輪郭抽出部32は、大腸を表すボリュームデータに基づいて、3次元空間における大腸の心線の位置を求めてもよい。例えば輪郭抽出部32は、大腸の長手方向に沿って大腸の中心を通る線を心線として求めてもよい。輪郭抽出部32は、内壁の輪郭(第1の輪郭)の位置を示す第1の内壁情報(座標情報)と、外壁の輪郭の位置を示す外壁情報と、心線の位置を示す心線情報とを、病変部抽出部33と隆起レベル算出部35とに出力する。
【0025】
図2に、輪郭抽出部32によって抽出された輪郭の1例を示す。例えば図2(a)には、内壁の輪郭10(第1の輪郭)と外壁の輪郭11とが表されている。1例として、内壁と外壁との間の領域(大腸壁の内部の領域)に腫瘍12が存在する。厚さTは、内壁の輪郭10と外壁の輪郭11との間の長さに相当する。1例として、厚さTは2mm程度である。
【0026】
(病変部抽出部33)
病変部抽出部33は、大腸の内壁よりも外側の領域における画素値(例えばCT値)を求める。すなわち、病変部抽出部33は、大腸壁の内部の組織における画素値を求める。病変部抽出部33は、画素値に基づいて腫瘍の位置を求める。具体的に病変部抽出部33は、大腸の内壁から外壁の方向に向かって所定距離離れた位置の画素値を求める。病変部抽出部33は、その画素値に基づいて腫瘍の位置を求める。
【0027】
腫瘍は、大腸の内壁の表面に形成されず、内壁の表面に最も近い粘膜層に形成される。そのため、粘膜層における画素値を求めることで、大腸に腫瘍が形成されているか否かを判別することができる。しかしながら、医用画像撮影装置90の空間分解能によっては、画素値に基づいて粘着層の位置を求めることは困難である。
【0028】
そこで病変部抽出部33は、第1の内壁情報が示す内壁の輪郭(第1の輪郭)から、外壁に向かう方向に所定距離離れた位置を、腫瘍を検索する位置として定義する。例えば図2(a)に示すように、病変部抽出部33は、内壁の輪郭10(第1の輪郭)から外壁の輪郭11に向かう方向(図中のX方向)に、所定の移動距離、輪郭10を平行移動させる。病変部抽出部33は、移動後の輪郭10を検索線13(破線で示す線)として定義する。所定の移動距離の1例は、1ピクセル(1画素)に相当する距離である。すなわち病変部抽出部33は、輪郭10上のすべての点を、輪郭11に向かう方向(X方向)へ同一距離(1ピクセルに相当する距離)移動させ、移動先の輪郭10を検索線13として定義する。検索線13は、内壁の輪郭10を平行移動させた仮想の線である。そのため、検索線13の形状は、内壁の輪郭10の形状と同じである。
【0029】
1例として、1ピクセルの1辺の長さを0.25mmとする。X線CT装置を用いた場合、0.25mmは最小のスライス厚に相当する。病変部抽出部33は、内壁の輪郭10から外壁の輪郭11に向かう方向に、輪郭10を0.25mm平行移動させ、移動後の位置を検索線13として定義する。内壁の輪郭10から0.25mm離れた位置には、粘膜層が存在すると推定される。そのため、検索線13の位置には、粘膜層が存在すると推定される。移動距離は0.25mmに限定されず、数ピクセルに相当する距離であっても良い。
【0030】
病変部抽出部33は、検索線13上における各画素の画素値(CT値)を求める。病変部抽出部33は、画素値に基づいて腫瘍の位置を求める。例えば病変部抽出部33は、検索線13上における各画素の画素値が、予め設定された所定範囲内の値に含まれているか否かを判定する。所定範囲の値は、画素に表されている組織が病変部(腫瘍)か否かを判定するための基準である。所定範囲の値は、病変部(腫瘍)の画素値(CT値)に相当する値である。所定範囲の値は、図示しない記憶部に予め記憶されている。操作者は操作部62を用いて所定範囲の値を任意に変更することができる。
【0031】
病変部抽出部33は、画素値が所定範囲内の値に含まれる画素を、腫瘍に含まれる画素であると判定する。病変部抽出部33は、検索線13上の各画素を対象にして、所定範囲内の値に画素値が含まれるか否かを判定する。これにより、病変部抽出部33は、検索線13上における腫瘍の位置を求める。病変部抽出部33は、検索線13の位置を示す検索線情報(位置情報)と、病変部(腫瘍)の位置を示す病変部情報(座標情報)とを、推定部34に出力する。
【0032】
以上により、大腸の内壁の表面に近い領域における画素値を求めて、腫瘍の位置を求めることができる。すなわち、検索線13の位置には、粘膜層が存在すると推定される。そのため、検索線13上の各画素の画素値は、粘膜層の画素値であると推定される。その結果、検索線13上の各画素の画素値に基づいて、粘着層に腫瘍が形成されているか否かを判定することができる。
【0033】
(推定部34)
推定部34は、大腸の正常な内壁の輪郭を求める。推定部34は、検索線情報と病変部情報とを受けて、検索線13において腫瘍が存在する範囲を除く。推定部34は、腫瘍が存在していない箇所の検索線13であって、隣り合う検索線13同士を繋げる。例えば図2(a)に示すように、推定部34は、検索線13において腫瘍12が存在している範囲を除く。推定部34は、腫瘍12の両側に延びる検索線13同士を繋げる。図2(a)、(b)に示すように、推定部34は、腫瘍12の一方側に延びる検索線13の端点Aと、腫瘍12の他方側に延びる検索線13の端点Bとを、直線で結ぶことで、連結線13Aを求める。
【0034】
図2(b)に示すように、推定部34は、外壁の輪郭11から内壁の輪郭10に向かう方向(図中のY方向)に、上記の所定の移動距離(例えば1ピクセル分の距離)、連結線13Aを平行移動させる。Y方向は、X方向とは反対の方向である。図2(c)に示すように、推定部34は、移動後の輪郭を輪郭13Bとして定義する。すなわち推定部34は、輪郭10が移動させられた方向とは反対の方向に、輪郭10が移動させられた距離と同じ距離、連結線13Aを平行移動させる。このようにして、推定部34は、大腸の正常な内壁の輪郭13Bを求める。
【0035】
以上のように、推定部34は、検索線13から腫瘍12が存在する範囲を除き、腫瘍の範囲が除かれた検索線13を繋げることで連結線13Aを生成する。推定部34は、その連結線13Aを平行移動前の位置に戻すことで、大腸の正常な輪郭13Bを求める。
【0036】
以下において、推定部34によって推定された内壁の輪郭13Bを、第2の輪郭と称する場合がある。推定部34は、内壁の輪郭13B(第2の輪郭)の位置を示す第2の内壁情報(座標情報)を、隆起レベル算出部35に出力する。
【0037】
図3に、推定された輪郭13Bの1例を示す。図3には、内壁の輪郭10(第1の輪郭)と、外壁の輪郭11と、推定された内壁の輪郭13B(第2の輪郭)とが表されている。内壁の輪郭10は、輪郭抽出部32によって求められた輪郭である。輪郭13Bは、推定部34によって求められた輪郭である。例えば、内壁と外壁との間の領域(大腸壁の内部の領域)に、腫瘍12と腫瘍14とが存在する。腫瘍12の存在により、腫瘍12の周辺における輪郭10が、外壁の輪郭11に向かう方向とは反対の方向に隆起している。腫瘍14の存在により、腫瘍14の周辺における輪郭10が、外壁の輪郭11に向かう方向に凹んでいる。腫瘍が存在しない正常な大腸であれば、腫瘍12と腫瘍14とがそれぞれ存在している箇所の周辺における内壁は、平坦であると推定される。腫瘍12と腫瘍14とがそれぞれ存在する箇所において、推定された輪郭13Bは平坦になっている。なお、説明を簡便にするために、腫瘍12及び腫瘍14は模式的に示されている。
【0038】
(隆起レベル算出部35)
隆起レベル算出部35は、輪郭抽出部32によって求められた内壁の輪郭10(第1の輪郭)と、推定部34によって推定された内壁の輪郭13B(第2の輪郭)とに基づいて、病変部(腫瘍)の凹凸の程度(隆起レベル)を求める。例えば、腫瘍の大きさと腫瘍の方向とが、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)に相当する。
【0039】
まず、隆起レベル算出部35は、輪郭抽出部32によって求められた輪郭10(第1の輪郭)の位置と、推定部34によって推定された輪郭13B(第2の輪郭)の位置との差を求める。この差が、腫瘍の凹凸の程度に相当する。隆起レベル算出部35は、輪郭に差が生じている領域を、病変部(腫瘍)として求める。
【0040】
腫瘍の周辺においては、輪郭抽出部32によって求められた輪郭10(第1の輪郭)の位置と、推定部34によって推定された輪郭13B(第2の輪郭)の位置とに差がある。すなわち、大腸に腫瘍が存在する場合には、腫瘍の形状及び大きさに応じて、輪郭抽出部32によって求められた輪郭10は、隆起しているか、又は陥凹している。一方、推定部34によって推定された輪郭13Bは、腫瘍が存在する範囲が除かれた輪郭である。そのため、輪郭13Bは、腫瘍が存在しないと仮定した場合における正常な内壁の輪郭を表している。従って、輪郭抽出部32によって求められた輪郭10の位置と、推定部34によって推定された輪郭13Bの位置との差を求めることで、腫瘍の位置と凹凸の程度とを求めることができる。
【0041】
次に、隆起レベル算出部35は、輪郭に差がある領域(腫瘍)を対象にして、腫瘍の大きさを求める。具体的には、隆起レベル算出部35は、輪郭に差がある領域(腫瘍)を対象にして、推定された輪郭13Bから実際の輪郭10までの距離を腫瘍ごとに求める。すなわち、隆起レベル算出部35は、正常な内壁から実際の内壁までの距離を腫瘍ごとに求める。隆起レベル算出部35は、その距離を腫瘍の大きさとして定義する。
【0042】
図4を参照して、腫瘍の凹凸の程度を求める方法について説明する。窪み部15は、推定された輪郭13Bの位置と実際の輪郭10の位置とに差がある領域である。窪み部15においては、輪郭10が、外壁の輪郭11に向かう方向に凹んでいる。窪み部15の凹みは、腫瘍に起因する。隆起レベル算出部35は、腫瘍が存在する領域(窪み部15)において、輪郭13Bに直交する直交線を設定する。隆起レベル算出部35は、その直交線と実際の輪郭10とが交差する交点を求める。隆起レベル算出部35は、直交線に沿って輪郭13Bから交点までの距離を求める。隆起レベル算出部35は、腫瘍が存在する領域(窪み部15)において位置を変えて、それぞれの位置において輪郭13Bに直交する直交線を設定する。隆起レベル算出部35は、各直交線と実際の輪郭10とが交差する交点を求める。隆起レベル算出部35は、輪郭13Bから交点までの距離を直交線ごとに求める。隆起レベル算出部35は、各直交線について求められた距離のうち、最大となる距離(長さL1)を求める。すなわち、隆起レベル算出部35は、輪郭13Bと輪郭10との間において最大となる距離(長さL1)を求める。最大の距離(長さL1)は、窪み部15における腫瘍の大きさに対応している。隆起レベル算出部35は、最大の距離(長さL1)を、窪み部15における腫瘍の大きさとして定義する。
【0043】
突起部16は、推定された輪郭13Bの位置と実際の輪郭10とに差がある領域である。突起部16においては、輪郭10が、大腸の心線CLに向かう方向に突出している。突起部16の突起は、腫瘍に起因する。隆起レベル算出部35は、腫瘍が存在する領域(突起部16)において位置を変えて、それぞれの位置において輪郭13Bに直交する直交線を設定する。隆起レベル算出部35は、各直交線と輪郭10とが交差する交点を直交線ごとに求める。隆起レベル算出部35は、輪郭13Bから交点までの距離を直交線ごとに求める。隆起レベル算出部35は、各直交線について求められた距離のうち、最大となる距離(長さL2)を求める。最大の距離(長さL2)は、突起部16における腫瘍の大きさに対応している。隆起レベル算出部35は、最大の距離(長さL2)を、突起部16における腫瘍の大きさとして定義する。
【0044】
また、隆起レベル算出部35は、輪郭に差がある領域(腫瘍)を対象にして、腫瘍の方向を腫瘍ごとに求める。具体的には、隆起レベル算出部35は、推定された輪郭13Bの位置を基準にして、実際の内壁の輪郭10が存在している方向を腫瘍ごとに求める。
【0045】
例えば図4に示すように、推定された輪郭13Bから外壁の輪郭11に向かう方向を、マイナス方向(−方向)と定義する。マイナス方向(−方向)とは反対の方向を、プラス方向(+方向)と定義する。換言すると、輪郭13Bから大腸の心線CLに向かう方向を、プラス方向(+方向)と定義する。輪郭13Bの位置を基準にした輪郭10の方向は、腫瘍の種類に対応している。輪郭13Bよりもマイナス方向に輪郭10が位置している腫瘍は、1例として表面陥凹型の腫瘍に対応する。輪郭13Bよりもプラス方向に輪郭10が位置している領域は、1例として表面隆起型の腫瘍に対応する。
【0046】
隆起レベル算出部35は、輪郭13Bの位置を基準にして、腫瘍が存在する領域(窪み部15)における輪郭10の方向を求める。窪み部15においては、輪郭10は、輪郭13Bよりも外壁の輪郭11側に位置している。すなわち、窪み部15においては、輪郭10は、輪郭13Bよりもマイナス方向に位置している。隆起レベル算出部35は、窪み部15における腫瘍の方向を、マイナス方向と決定する。従って、窪み部15における腫瘍は、表面陥凹型の腫瘍であると判断できる。
【0047】
同様に、隆起レベル算出部35は、輪郭13Bの位置を基準にして、腫瘍が存在する領域(突起部16)における輪郭10の方向を求める。突起部16においては、輪郭10は、輪郭13Bよりも心線CL側に位置している。すなわち、突起部16においては、輪郭10は、輪郭13Bよりもプラス方向に位置している。隆起レベル算出部35は、突起部16における腫瘍の方向を、プラス方向と決定する。従って、突起部16における腫瘍は、表面隆起型の腫瘍であると判断できる。
【0048】
以上のようにして、隆起レベル算出部35は、腫瘍の大きさと腫瘍の方向とを腫瘍ごとに求める。上述したように、腫瘍の大きさと腫瘍の方向とが、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)に相当する。例えば窪み部15における腫瘍については、長さL1が腫瘍の大きさに相当し、マイナス方向が腫瘍の方向に相当する。また、突起部16における腫瘍については、長さL2が腫瘍の大きさに相当し、プラス方向が腫瘍の方向に相当する。
【0049】
隆起レベル算出部35は、腫瘍の位置を示す位置情報(座標情報)と、腫瘍の大きさ(長さ)を示す長さ情報と、腫瘍の方向を示す方向情報とを含む隆起レベル情報を、腫瘍ごとに生成する。隆起レベル算出部35は、隆起レベル情報を変換部36に出力する。
【0050】
図4に示す例では、隆起レベル算出部35は、窪み部15における腫瘍について、腫瘍の位置を示す位置情報と、腫瘍の大きさ(長さL1)の値と、腫瘍の方向(マイナス方向)を示す方向情報とを含む隆起レベル情報を生成する。また、隆起レベル算出部35は、突起部16における腫瘍については、腫瘍の位置を示す位置情報と、腫瘍の大きさ(長さL2)の値と、腫瘍の方向(プラス方向)を示す方向情報とを含む隆起レベル情報を生成する。隆起レベル算出部35は、各隆起レベル情報を変換部36に出力する。
【0051】
隆起レベル算出部35は、腫瘍の方向に基づいて腫瘍の種類を判断しても良い。具体的には、隆起レベル算出部35は、方向がマイナス方向である腫瘍を、表面陥凹型の腫瘍であると判断する。また、隆起レベル算出部35は、方向がプラス方向である腫瘍を、表面隆起型の腫瘍であると判断する。隆起レベル算出部35は、判断結果を隆起レベル情報に含ませて、隆起レベル情報を変換部36に出力しても良い。
【0052】
(変換部36)
変換部36は、隆起レベル情報を隆起レベル算出部35から受ける。変換部36は、隆起レベル情報が示す腫瘍の大きさと腫瘍の方向とに基づいて、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を決定する。例えば、腫瘍の凹凸の程度を色に変換するためのルックアップテーブル(LUT)が、条件記憶部7に記憶されている。ルックアップテーブルは、腫瘍の凹凸の程度と色とが対応付けられたテーブルである。変換部36は、条件記憶部7に記憶されているルックアップテーブルを参照して、腫瘍の凹凸の程度を色に変換する。
【0053】
図5に、ルックアップテーブルの1例を示す。ルックアップテーブル20は、腫瘍の大きさ(長さ)と、腫瘍の方向と、色とが対応付けられたテーブルである。0mmの点が基準点である。基準点(0mm)を基準にして、+方向と−方向とが腫瘍の方向に対応する。+方向が、表面隆起型の腫瘍に対応する。−方向が、表面陥凹型の腫瘍に対応する。基準点(0mm)が、表面平坦型の腫瘍に対応する。基準点からの距離が、腫瘍の大きさ(長さ)に対応する。基準点から離れるほど、腫瘍の大きさ(長さ)が大きいことを示している。図5においては説明を簡便にするために、ルックアップテーブル20の色をハッチングで模式的に表している。ルックアップテーブル20における色は、腫瘍の大きさ(長さ)に応じて段階的に変化している。
【0054】
腫瘍の凹凸の程度に対応する色は、凹凸の程度に応じて異なる色であっても良いし、白黒の濃淡の程度であっても良い。すなわち、腫瘍の凹凸の程度に応じて色を変えても良いし、白黒の濃淡の程度を変えても良い。
【0055】
操作者が操作部62を用いて、ルックアップテーブル20を変更できるようにしても良い。すなわち、操作者が操作部62を用いて、腫瘍の凹凸の程度と色との対応関係を変更できるようにしても良い。
【0056】
変換部36は、隆起レベル情報が示す腫瘍の大きさと方向とに対応する色を、ルックアップテーブル20から選択する。例えば、変換部36は、窪み部15における腫瘍について、腫瘍の大きさ(長さL1)と腫瘍の方向(−方向)とに対応する色を、ルックアップテーブル20から選択する。また、変換部36は、突起部16における腫瘍について、腫瘍の大きさ(長さL2)と腫瘍の方向(+方向)とに対応する色を、ルックアップテーブル20から選択する。
【0057】
変換部36は、隆起レベル情報に含まれる腫瘍の位置情報と、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を示す色情報とを含むカラーデータを生成する。変換部36は、カラーデータを表示制御部5に出力する。
【0058】
(画像生成部4)
画像生成部4は、画像記憶部2からボリュームデータを読み込み、ボリュームデータに基づいて3次元画像データなどの画像データを生成する。例えば画像生成部4は、ボリュームデータに表された組織の内部を平面状に展開して、内部の表面を平面的に表す展開画像データを生成する。また、画像生成部4は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことで、管状組織の内部の表面を3次元的に表す仮想内視鏡画像データを生成しても良い。例えば操作者が操作部62を用いて視点の位置と視線方向とを指定すると、視点の位置を示す視点情報と視線方向を示す視線方向情報とが、ユーザインターフェース(UI)6から画像生成部4に出力される。画像生成部4は、その視点の位置から視線方向に向けてボリュームレンダリングを施すことで、仮想内視鏡画像データを生成する。また、画像生成部4は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施すことで、任意の断面におけるMPR画像データを生成しても良い。例えば操作者が操作部62を用いて断面の位置を指定すると、断面の位置を示す位置情報が、ユーザインターフェース(UI)6から画像生成部4に出力される。画像生成部4は、指定された断面におけるMPR画像データを生成する。画像生成部4は、展開画像データ、仮想内視鏡画像データ、又はMPR画像データなどの画像データを表示制御部5に出力する。
【0059】
画像生成部4は、展開画像データ又は仮想内視鏡画像データのうち、いずれか一方の画像データのみを生成しても良いし、両方の画像データを生成しても良い。操作者が操作部62を用いて画像データの種類を指定した場合に、画像生成部4は、操作者によって指定された画像データを生成しても良い。
【0060】
(表示制御部5)
表示制御部5は、画像生成部4から画像データを受けて、画像データに基づく画像を表示部61に表示させる。例えば表示制御部5は、画像生成部4から展開画像データを受けて、展開画像データに基づく展開画像を表示部61に表示させる。また、表示制御部5は、画像生成部4から仮想内視鏡画像データを受けて、仮想内視鏡画像データに基づく仮想内視鏡画像を表示部61に表示させる。
【0061】
表示制御部5は、変換部36からカラーデータを受けて、カラーデータが示す色を、展開画像においてカラーデータが示す位置に着色する。また表示制御部5は、カラーデータが示す色を、仮想内視鏡画像においてカラーデータが示す位置に着色しても良い。カラーデータが示す色は、腫瘍の凹凸の程度を示す。すなわち、カラーデータが示す色は、腫瘍の大きさと腫瘍の方向とを示す。腫瘍の方向は、腫瘍の種類に対応している。腫瘍の種類には、1例として、表面隆起型、表面平坦型、及び表面陥凹型がある。
【0062】
表示制御部5は、腫瘍の凹凸の程度に応じた色が付けられた展開画像を、表示部61に表示させる。また表示制御部5は、腫瘍の凹凸の程度に応じた色が付けられた仮想内視鏡画像を、表示部61に表示させても良い。
【0063】
表示制御部5は、展開画像又は仮想内視鏡画像のうち、いずれか一方の画像のみを表示部61に表示しても良いし、両方の画像を並べて表示部61に表示しても良い。操作者が操作部62を用いて画像の種類を指定した場合に、表示制御部5は、操作者によって指定された画像を表示部61に表示させても良い。
【0064】
図6に、色が付けられた画像の1例を示す。図6(a)には、展開画像100が表されている。展開画像100には、大腸の内壁が平面的に表されている。表示制御部5は、腫瘍(病変部)が存在する領域110と領域120とに、それぞれのカラーデータが示す色を付けて、展開画像100を表示部61に表示させる。カラーデータが示す色は、腫瘍の凹凸の程度を示す。従って、領域110と領域120とに付けられた色は、それぞれの位置における腫瘍の凹凸の程度を表している。例えば領域110の色は、領域110における腫瘍が表面隆起型の腫瘍であることを示している。また領域110の色は、表面隆起型の腫瘍の隆起の程度を示している。領域120の色は、領域120における腫瘍が表面陥凹型の腫瘍であることを示している。また領域120の色は、表面陥凹型の腫瘍の凹みの程度を示している。
【0065】
また、図6(b)には、仮想内視鏡画像200が表されている。図6(c)には、仮想内視鏡画像300が表されている。仮想内視鏡画像200と仮想内視鏡画像300とには、大腸の内壁が立体的に表されている。図6(b)に示すように、表示制御部5は、腫瘍が存在する領域210に、カラーデータが示す色を付けて、仮想内視鏡画像200を表示部61に表示させる。また図6(c)に示すように、表示制御部5は、腫瘍が存在する領域310に、カラーデータが示す色を付けて、仮想内視鏡画像300を表示部61に表示させる。例えば領域210の色は、領域210における腫瘍が表面隆起型の腫瘍であることを示している。また領域210の色は、表面隆起型の腫瘍の隆起の程度を示している。領域310の色は、領域310における腫瘍が表面陥凹型の腫瘍であることを示している。また領域310の色は、表面陥凹型の腫瘍の凹みの程度を示している。
【0066】
例えば展開画像100に表された領域110と、仮想内視鏡画像200に表された領域210とが対応している。展開画像100に表された領域120と、仮想内視鏡画像300に表された領域310とが対応している。
【0067】
表示制御部5は、展開画像100と仮想内視鏡画像200(又は仮想内視鏡画像300)とを並べて表示部61に表示させても良い。または、表示制御部5は、展開画像100及び仮想内視鏡画像200(又は仮想内視鏡画像300)のうち、いずれか一方の画像を表示部61に表示させても良い。
【0068】
操作者は、展開画像又は仮想内視鏡画像に表示された色を参照することで、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)を把握することが可能となる。すなわち、操作者は、画像に表示された色によって、腫瘍が、表面隆起型の腫瘍であるのか、表面平坦型の腫瘍であるのか、表面陥凹型の腫瘍であるのかを判断することが可能となる。これにより、腫瘍の種類が非隆起型であっても、操作者は、腫瘍の有無及び腫瘍の種類を把握することが可能となる。例えば、スクリーニング検査を含む術前診断に医用画像処理装置1を適用した場合、術前診断を効率的に行うことができる。
【0069】
(変形例)
図7を参照して、変形例について説明する。隆起レベル算出部35は、輪郭に差がある領域(腫瘍)において、複数箇所の凹凸の程度を求めても良い。窪み部15は、推定された輪郭13Bの位置と実際の輪郭10の位置とに差がある領域である。隆起レベル算出部35は、腫瘍が存在する領域(窪み部15)において位置を変えて、それぞれの位置において輪郭13Bに直交する直交線を設定する。隆起レベル算出部35は、各直交線と輪郭10とが交差する交点を直交線ごとに求める。隆起レベル算出部35は、輪郭13Bから交点までの距離を直交線ごとに求める。また、隆起レベル算出部35は、各位置における腫瘍の方向を求める。
【0070】
例えば隆起レベル算出部35は、輪郭13B上においてそれぞれ異なる位置に、点41、点42、点43、点44、及び点45を設定する。隆起レベル算出部35は、点41から点45のそれぞれの点において、輪郭13Bに直交する直交線を設定する。隆起レベル算出部35は、各直交線と輪郭10とが交差する交点を直交線ごとに求める。隆起レベル算出部35は、輪郭13Bから交点までの距離を直交線ごとに求める。図7に示す例では、隆起レベル算出部35は、点41における距離(長さL3)、点42における距離(長さL4)、点43における距離(長さL5)、点44における距離(長さL6)、及び点45における距離(長さL7)を求める。
【0071】
隆起レベル算出部35は、輪郭13B上に設定された各点における腫瘍の方向を求める。図7に示す例では、隆起レベル算出部35は、点41から点45のそれぞれの点において、腫瘍の方向を求める。
【0072】
以上のようにして、隆起レベル算出部35は、複数箇所の長さと方向とを求める。隆起レベル算出部35は、輪郭13B上に設定された点の位置を示す位置情報(座標情報)と、その点における腫瘍の大きさ(長さ)を示す長さ情報と、その点における腫瘍の方向を示す方向情報とを含む隆起レベル情報を、輪郭13B上に設定された点ごとに生成する。図7に示す例では、隆起レベル算出部35は、点41から点45のそれぞれの点について隆起レベル情報を生成する。隆起レベル算出部35は、各点についての隆起レベル情報を変換部36に出力する。
【0073】
変換部36は、各点についての隆起レベル情報に従って、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を各点について決定する。図7に示す例では、変換部36は、点41から点45のそれぞれの点に対する色を決定する。変換部36は、輪郭13B上に設定された点の位置を示す位置情報と、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を示す色情報とを含むカラーデータを、輪郭13B上に設定された各点について生成する。変換部36は、カラーデータを表示制御部5に出力する。
【0074】
表示制御部5は、各点についてのカラーデータが示す色を、展開画像又は仮想内視鏡画像においてカラーデータが示す位置に着色する。表示制御部5は、腫瘍内の各点において凹凸の程度に応じた色が付けられた展開画像又は仮想内視鏡画像を、表示部61に表示させる。
【0075】
以上のように、腫瘍内の複数箇所において凹凸の程度を求めることで、腫瘍内での凹凸の分布を表示することが可能となる。そのことにより、操作者は、腫瘍の凹凸の程度をより詳細に把握することが可能となる。
【0076】
観察対象は大腸以外の部位であっても良い。例えば血管を観察対象とした場合であっても、上述した画像処理部3による処理を行うことで、大腸を観察対象とした場合と同じ作用及び効果を奏することができる。また、胃などの袋状の組織を観察対象にした場合も、大腸を観察対象とした場合と同じ作用及び効果を奏することができる。
【0077】
(ユーザインターフェース(UI)6)
ユーザインターフェース(UI)6は、表示部61と操作部62とを備えている。表示部61は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。操作部62は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0078】
画像処理部3と画像生成部4と表示制御部5とはそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていても良い。記憶装置には、画像処理部3の機能を実行するための画像処理プログラムが記憶されている。画像処理プログラムには、観察対象抽出部31の機能を実行するための観察対象抽出プログラムと、輪郭抽出部32の機能を実行するための輪郭抽出プログラムと、病変部抽出部33の機能を実行するための病変部抽出プログラムと、推定部34の機能を実行するための推定プログラムと、隆起レベル算出部35の機能を実行するための隆起レベル算出プログラムと、変換部36の機能を実行するための変換プログラムとが含まれている。また記憶装置には、画像生成部4の機能を実行するための画像生成プログラムが記憶されている。また記憶装置には、表示制御部5の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで、各部の機能が実行される。
【0079】
(動作)
図8を参照して、医用画像処理装置1による一連の動作について説明する。観察対象は大腸である。例えば被検体に造影剤を投与し、大腸内に炭酸ガスを注入する。医用画像撮影装置90としてのX線CT装置が被検体を撮影することで、大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを生成する。
【0080】
(ステップS01)
医用画像処理装置1は、大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを医用画像撮影装置90から取得する。画像記憶部2は、ボリュームデータを記憶する。
【0081】
(ステップS02)
観察対象抽出部31は、ボリュームデータを画像記憶部2から読み込み、セグメンテーション処理を実行することで、そのボリュームデータから大腸を表すボリュームデータを抽出する。
【0082】
(ステップS03)
輪郭抽出部32は、大腸を表すボリュームデータに基づいて、大腸の内壁の輪郭(第1の輪郭)を求める。
【0083】
(ステップS04)
病変部抽出部33は、大腸壁の内部の画素値を求める。例えば図2(a)に示すように、病変部抽出部33は、内壁の輪郭10(第1の輪郭)から外壁の輪郭11に向かう方向に、1ピクセル分の距離、輪郭10を平行移動させる。病変部抽出部33は、移動後の輪郭10を検索線13として定義する。病変部抽出部33は、検索線13上における各画素の画素値(CT値)を求める。
【0084】
(ステップS05)
病変部抽出部33は、画素値が所定範囲内の値に含まれる画素を、腫瘍に含まれる画素であると判定する。これにより、病変部抽出部33は、検索線13上における腫瘍の位置を求める。
【0085】
(ステップS06)
推定部34は、大腸の正常な内壁の輪郭を求める。例えば図2(a)、(b)に示すように、推定部34は、検索線13において腫瘍12が存在している範囲を除く。推定部34は、腫瘍12の一方側に延びる検索線13の端点Aと、腫瘍12の他方側に延びる検索線13の端点Bとを、直線で結ぶことで、連結線13Aを求める。そして図2(b)に示すように、推定部34は、外壁の輪郭11から内壁の輪郭10に向かう方向に、1ピクセル分の距離、連結線13Aを平行移動させる。図2(c)に示すように、推定部34は、移動後の輪郭を、正常な内膜の輪郭13Bとして定義する。
【0086】
(ステップS07)
隆起レベル算出部35は、内壁の輪郭10(第1の輪郭)と、推定された輪郭13B(第2の輪郭)とに基づいて、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)を求める。例えば図4に示すように、隆起レベル算出部35は、窪み部15における腫瘍の大きさ(長さL1)と、腫瘍の方向(マイナス方向)とを求める。また、隆起レベル算出部35は、突起部16における腫瘍の大きさ(長さL2)と、腫瘍の方向(プラス方向)とを求める。隆起レベル算出部35は、腫瘍の位置を示す位置情報、腫瘍の大きさ(長さ)を示す長さ情報と、腫瘍の方向を示す方向情報とを含む隆起レベル情報を、腫瘍ごとに生成する。
【0087】
(ステップS08)
変換部36は、条件記憶部7に記憶されているルックアップテーブルを参照して、隆起レベル情報が示す腫瘍の大きさと腫瘍の方向とに基づいて、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を、腫瘍ごとに決定する。このように変換部36は、腫瘍の凹凸の程度を色に変換する。変換部36は、腫瘍の位置情報と、腫瘍の凹凸の程度に応じた色を示す色情報とを含むカラーデータを生成する。
【0088】
(ステップS09)
画像生成部4は、画像記憶部2からボリュームデータを読み込み、ボリュームデータに基づいて展開画像データ又は仮想内視鏡画像データを生成する。
【0089】
(ステップS10)
表示制御部5は、カラーデータが示す色を、展開画像又は仮想内視鏡画像においてカラーデータが示す位置に着色する。表示制御部5は、腫瘍の凹凸の程度に応じた色が付けられた展開画像又は仮想内視鏡画像を、表示部61に表示させる。
【0090】
以上の処理によると、腫瘍の凹凸の程度(隆起レベル)に応じた色が、展開画像又は仮想内視鏡画像などの画像に表される。操作者は画像に表示された色を参照することで、腫瘍の凹凸の程度を把握することが可能となる。そのことにより、腫瘍の種類が非隆起型であっても、操作者は、腫瘍の有無及び腫瘍の種類を把握することが可能となる。
【0091】
ステップS02からステップS08までの処理とステップS09の処理とは、順番が逆であっても良い。すなわち、ステップS09の処理は、ステップS02の処理より前に実行されていても良いし、ステップS02からステップS08までの処理の途中で実行されていても良い。
【0092】
上述した実施形態及び変形例では、X線CT装置を用いたCTコロノグラフィーを例にして説明している。別の例として、MRI装置を用いたMRコロノグラフィーを用いても良い。
【符号の説明】
【0093】
1 医用画像処理装置
2 画像記憶部
3 画像処理部
4 画像生成部
5 表示制御部
6 ユーザインターフェース(UI)
7 条件記憶部
31 観察対象抽出部
32 輪郭抽出部
33 病変部抽出部
34 推定部
35 隆起レベル算出部
36 変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体の内壁の第1の輪郭を求める輪郭抽出手段と、
前記第1の輪郭を基準にして前記内壁よりも外側の領域における画素の画素値に基づいて、病変部の位置を求める病変部抽出手段と、
前記病変部の位置と前記第1の輪郭とに基づいて、前記病変部が存在しない場合における前記内壁の第2の輪郭を推定する推定手段と、
前記第1の輪郭と前記第2の輪郭とに基づいて、前記病変部の凹凸の程度を求める隆起レベル算出手段と、
前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体を表す画像データを生成する画像生成手段と、
前記凹凸の程度を示す情報と前記画像データに基づく画像とを表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記病変部抽出手段は、前記内壁の位置から前記外側の領域に向けて所定距離、前記第1の輪郭を平行移動させ、前記平行移動後の前記第1の輪郭上の画素の画素値に基づいて、前記病変部が存在する箇所を求める請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記平行移動後の前記第1の輪郭から前記病変部が存在する箇所を除き、前記病変部の箇所が除かれた前記第1の輪郭を繋げ、前記繋がれた前記第1の輪郭を、前記平行移動前の位置に戻すことで前記第2の輪郭を求める請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記隆起レベル算出手段は、前記第1の輪郭と前記第2の輪郭との差がある箇所を求め、前記差を前記病変部の凹凸の程度として求める請求項1から請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記隆起レベル算出手段は、前記第1の輪郭と前記第2の輪郭との間の距離を求め、前記第2の輪郭を基準にして前記第1の輪郭が存在する方向を求め、前記距離と前記方向とを前記病変部の凹凸の程度とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記凹凸の程度を色に変換する変換手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記変換された色を前記凹凸の程度を示す情報として、前記画像に重ねて前記表示手段に表示させる請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記距離と前記方向とに基づいて、前記凹凸の程度を、前記病変部の形状の種類である隆起型、平面型、又は陥凹型のいずれかに対応した色に変換する変換手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記変換された色を前記凹凸の程度を示す情報として、前記画像に重ねて前記表示手段に表示させる請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータに、
管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体の内壁の第1の輪郭を求める輪郭抽出機能と、
前記第1の輪郭を基準にして前記内壁よりも外側の領域における画素の画素値に基づいて、病変部の位置を求める病変部抽出機能と、
前記病変部の位置と前記第1の輪郭とに基づいて、前記病変部が存在しない場合における前記内壁の第2の輪郭を推定する推定機能と、
前記第1の輪郭と前記第2の輪郭とに基づいて、前記病変部の凹凸の程度を求める隆起レベル算出機能と、
前記ボリュームデータに基づいて前記管腔体を表す画像データを生成する画像生成機能と、
前記凹凸の程度を示す情報と前記画像データに基づく画像とを表示装置に表示させる表示制御機能と、
を実行させる医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167263(P2011−167263A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31971(P2010−31971)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】