説明

医用画像処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】3次元医用画像を入力として、投影面上の投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、視線上の複数の探索点から所与の基準を満たす点の画素値を視線上の投影画素の画素値として選択することによって投影画像を生成する際に、視線上に所与の基準を満たす点が複数あった場合でも、選択された画素値を有する探索点の位置をより適切に特定する。
【解決手段】投影画像生成部31aが、視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、候補点が複数存在する場合に、候補点のうち、投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を選択する。これに先立って、MIP処理条件設定受付部31が位置選択基準を予め設定しておくようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像から投影画像を生成する医用画像処理装置、方法、および、この方法をコンピュータに実行させるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、CT装置、MRI装置、超音波診断装置(エコー)等で得られる3次元医用画像を所望の投影面に投影した投影画像の観察、診断が行われている。このような投影画像を得るために、3次元医用画像中に、任意の視点と投影面上の各投影画素とを通る視線に沿って複数の探索点を設定し、設定された複数の探索点の画素値に基づいて、視線毎に投影画素の画素値を求める画像処理が行われている。このような画像処理としては、例えば、視線毎に探索点の画素値の最大値を抽出して投影するMIP(Maximum Intensity Projection;最大値投影)処理や最小値を抽出して投影するMinIP(Minimum Intensity Projection;最小値投影)処理等が知られている。
【0003】
また、投影画像と任意の断面画像との連動表示を行う技術も提案されている。例えば、ECT(Emission CT)装置で得られた複数の断層画像に対して、所望の投影面でのMIP処理を行うことによってMIP画像を生成するとともに、MIP画像の各投影画素について、対応する視線上でその投影画素の画素値を有する断層画像上の画素の位置をメモリに記憶しておき、オペレータがマウス操作によってMIP画像上の所望の点を指定すると、指定された点の断層画像上の位置をメモリから取得し、その位置での断層画像を表示する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−006044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、ある投影画素に対応する視線上に画素値が最大となる画素が複数あった場合にどの画素の位置をメモリに記憶しておくかについては何ら言及されていない。したがって、このような投影画素がオペレータによって指定されてしまうと、その投影画素に対応する断層画像上の位置が一意に定まらないので、オペレータの所望どおりの断層画像が表示されるとは限らない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、3次元医用画像中の所与の視点と所与の投影面上の複数の投影画素の各々とを結ぶ複数の視線の各々について、その視線上の各点を探索し、所与の基準に基づいて、探索された点のうちの1つの点の画素値をその視線に対応する投影画素の画素値として選択する画像処理において、視線上に所与の基準を満たす点が複数あった場合でも、選択された画素値を有する探索点の位置をより適切に特定可能な医用画像処理装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医用画像処理装置は、3次元医用画像を所与の投影面に投影した投影画像を生成する装置であって、前記投影面上の前記投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、該視線上の複数の点から、該視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、該候補点が複数存在する場合に、該候補点のうち、該投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択することによって、前記投影画像を生成する投影画像生成手段と、前記投影画像生成手段によって用いられる位置選択基準を設定する位置選択基準設定手段とを設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明の医用画像処理方法は、3次元医用画像を所与の投影面に投影した投影画像を生成する方法であって、前記投影面上の前記投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、該視線上の複数の点から、該視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、該候補点が複数存在する場合に、該候補点のうち、該投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択することによって前記投影画像を生成するステップと、前記ステップに先立って、前記位置選択基準を設定するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の医用画像処理プログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのものである。
【0010】
本発明の「3次元医用画像」の具体例としては、CTやMRI等のモダリティで被検体を所与のスキャン方向にスキャンすることによって取得された画像が挙げられる。
【0011】
「所与の視点」は1つの視点とし、中心投影によって投影画像を生成してもよいし、「所与の視点」を投影画素と同数の視点(あるいは投影面から無限遠方にある1つの視点)とし、平行投影によって投影画像を生成してもよい。
【0012】
「画素値選択基準」の具体例としては、前記視線上の複数の点の画素値のうち最大または最小のいずれか一方の値を有する点を前記候補点とするものが挙げられる。ここで、最大値を候補点とする投影画像生成法はMIP処理に相当し、最小値を候補点とする投影画像生成法はMinIP処理に相当する。また、「画素値選択基準」の他の具体例としては、前記視線上の複数の点の画素値のうち最大または最小のいずれか一方の値から所与の許容範囲内にある値を有する点を前記候補点とするものが挙げられる。さらに、「画素値選択基準」は、前記視線上の各点の近傍の所与の探索区間内の画素値の積分値に関する基準であってもよい。この場合、「画素値選択基準」は、上記と同様に、積分値が最大または最小のいずれか一方の値となる点を前記候補点とするものや、積分値のうち最大または最小のいずれか一方の値から所与の許容範囲内にある積分値となる点を前記候補点とするものが考えられる。
【0013】
「位置選択基準」の具体例としては、前記複数の候補点のうち、該候補点を通る視線上の視点から投影画素に向かう向きにおいて、最初または最後のいずれか一方に出現した点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択するものが挙げられる。
【0014】
また、「位置選択基準」は、複数の位置選択基準からユーザによって選択された1つの位置選択基準が設定されるようにしてもよい。
【0015】
本発明において、前記位置選択基準を満たす点の位置を、該位置選択基準を満たす点を通る視線上の投影画素と関連づけて記憶装置に記憶させるようにすることが好ましい。ここで、記憶装置に記憶された位置情報の利用例としては、前記投影画像中の任意の投影画素の指定を受け付け、該指定された投影画素と関連づけられた点の位置を前記記憶装置から取得し、前記3次元医用画像から、前記取得された位置を通る断面を表す1以上の断面画像を生成することが考えられる。さらに、前記断面画像上の前記取得された位置をユーザが識別可能な表示態様で前記断面画像とともに表示装置に表示させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所与の投影面上の複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、視線上の複数の点から画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、候補点が複数存在する場合に、候補点のうち位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を視線上の投影画素の画素値として選択することによって、3次元医用画像から投影画像を生成することができるが、これに先立って、位置選択基準を設定するようにしたので、視線上に画素値選択基準を満たす点が複数あった場合でも、投影画素として選択された画素値を有する点の位置をより適切に特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態となる医用画像処理装置が導入された医用画像診断システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における医用画像処理機能を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図3】3次元医用画像に対するMIP処理と断面画像の断面位置を模式的に表した図
【図4】MIP処理における探索点毎の画素値を表したグラフの一例
【図5】MIP処理の詳細な処理条件の設定の流れを表したフローチャートの一例
【図6】MIP画像と断面画像の連動表示の一例を表した図
【図7】本発明の実施形態における医用画像診断システムを用いた画像処理の流れを表したフローチャート
【図8】本発明の実施の形態の変形例となる医用画像診断システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態となる医用画像処理装置が導入された医用画像診断システムについて説明する。
【0019】
図1は、この医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0020】
モダリティ1には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す3次元医用画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれる。具体例としては、CT、MRIなどが挙げられる。本実施形態では、CTで被検体の体軸方向にスキャンすることによって3次元画像データを生成する場合について説明する。
【0021】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0022】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した医用画像データに対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものである。本発明の医用画像処理は、この画像処理ワークステーション3に実装されており、この処理は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムを実行することによって実現される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0023】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0024】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる医用画像処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる医用画像処理は、MIP処理部31、MIP処理条件設定受付部32、投影画素指定受付部33、指定位置取得部34、断面画像生成部35、表示制御部36によって実現される。また、3次元医用画像V、MIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、画素値選択基準CVal、位置選択基準CPos、MIP画像IMIP、選択位置情報ZBMIP、投影画素PMIP、断面画像IA, IC, IS, IOは、各々、上記各処理部によって、画像処理ワークステーション3の所定のメモリ領域に対して読み書きされるデータである。
【0025】
MIP処理部31は、投影画像生成部31aと選択位置記憶部31bとからなり、投影画像生成部31aが3次元医用画像Vを入力としてMIP処理を行ってMIP画像IMIPを出力するとともに、選択位置記憶部31bがMIP画像IMIPの各画素の画素値として選択された3次元医用画像V中の画素の位置(選択位置情報ZBMIP)を所定のメモリ領域に記憶させる。
【0026】
図3は、3次元医用画像Vを立方体として模式的に表した例であり、上下方向が被検体の体軸方向、奥行き方向が被検体の前後方向、左右方向が被検体の左右方向を表している。この例では、投影画像生成部31aが、所与のMIP処理対象領域RMIP(点R1からR8を頂点とする直方体の領域)を所与の視線方向VLMIPに平行投影する場合、視線方向VLMIPに垂直な投影面(図示省略)上の複数の投影画素の各々を通る視線方向VLMIPの複数の視線の各々について、その視線上の複数の点(探索点)を探索し、所与の画素値選択基準CValを満たす探索点を候補点として仮選択し、所与の位置選択基準CPosを満たす候補点の画素値をその視線上の投影画素の画素値として最終的に選択する。これにより、各視線上について最終的に選択された画素値を投影画素の画素値とするMIP画像IMIPが生成される。その際、選択位置記憶部31bは、最終的に選択された候補点の3次元医用画像V中における座標値を、対応する各投影画素に関連づけて選択位置情報ZBMIPとして所定のメモリ領域に記憶させる。なお、MIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、画素値選択基準CVal、位置選択基準CPosは、MIP処理条件設定受付部32から与えられる処理パラメータである。
【0027】
画素値選択基準CValの第1の具体例としては、ある視線上の画素値が極大となる探索点(極大探索点)のうち、その視線上の探索点の画素値の最大値から所与の許容範囲内にある画素値を有する極大探索点を候補点として仮選択するという基準が挙げられる(以下、この基準を単独画素値基準と呼ぶ)。すなわち、極大探索点の集合を{x1, x2, x3, ・・・xk,・・・, xn}とし、許容誤差をεとしてε=0のときの画素値の最大値をPVmaxとしたときに、投影画像生成部31aは、
PVmax-ε≦PV(xk) (1)
を満たす点を候補点として仮選択する。なお、ある探索点が極大探索点かどうかは、その探索点と、その探索点を通る視線上でその探索点の前後の点との間での画素値の変化を求め、その探索点の前の点からその探索点に向かって画素値が大きくなり、その探索点からその後の点に向かって画素値が小さくなっていれば、その探索点は極大探索点と判断できる。
【0028】
一方、位置選択基準CPosの具体例としては、候補点のうち視線方向VLMIPにおける視線の探索において最初(または最後)に出現した点をその視線上の投影画素値として最終的に選択するという基準が挙げられる。
【0029】
図4は、ある視線上の各探索点における画素値の一例を表したグラフである。この視線上で画素値が最大となる点X2に対して、点X1, X3, X4が上式(2)を満たす極大探索点の場合、上式(2)を満たす極大探索点のうち最初に出現した点を最終的に選択するという位置選択基準であれば、点X1が最終的に選択され、上式(2)を満たす極大探索点のうち最後に出現した点を最終的に選択するという位置選択基準であれば、点X4が最終的に選択される。
【0030】
また、画素値選択基準CValの第2の具体例としては、ある視線上の画素値が極大となる探索点(極大探索点)のうち、その点の近傍の所与の範囲の画素値の積分値が、各極大探索点における積分値の最大値から所与の許容範囲内にある極大探索点を候補点として仮選択するという基準が挙げられる(以下、この基準を積分値基準と呼ぶ)。すなわち、極大探索点の集合を{x1, x2, x3, ・・・xk,・・・, xn}とし、積分範囲をxk-s≦xk≦xk+s、許容誤差をεとしてε=0のときの積分の最大値をIVmaxとしたときに、投影画像生成部31aは、
IVmax-ε≦IV(xk) (2)
となる点を候補点として仮選択する。
【0031】
ここで、
【数1】

【0032】
であり、PV(x)は探索点xにおける画素値を表す。
【0033】
図4を例にすると、許容範囲εの設定によっては、極大探索点X1, X2, X3, X4のうち上記積分値がその最大値から許容範囲εの範囲内にある点X3のみが仮選択されることになる。一方、従来のMIP処理のように視線上の各探索点の画素値のみに着目すると、点X2の画素値が最大画素値となるが、この例のように点X2の周辺で画素値が急峻な変化をしている場合には点X2はノイズを表す点であり、投影画素として最終的に選択される点として適切ではないこともある。このように、上記の積分値を用いた手法では、各点の周辺の画素値も考慮するので、その結果、点X3が最終的に選択され、周辺の画素値も大きく信頼性の高い点を見つけることが可能になる。なお、上記式(2)を満たす極大探索点(候補点)が複数存在する場合には、例えば、上記の位置選択基準CPosに基づいて投影画素に対応する点が候補点から最終的に選択される。
【0034】
MIP処理条件設定受付部32は、MIP処理部31の処理パラメータである、MIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、画素値選択基準CVal、位置選択基準CPosの設定操作を受け付けるユーザインターフェースである。ユーザは、画像処理ワークステーション3に表示されたこれらの処理パラメータの設定画面で、マウスやキーボード等の入力装置を操作して、各処理パラメータの設定を行い、MIP処理条件設定受付部32は、設定された各処理パラメータの値を所定のメモリ領域に格納する。図5は、処理パラメータの設定の流れを示したフローチャートの例である。図に示したように、ユーザはMIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIPの設定を行い(#11, #12)、画素値選択基準CValを設定し(#13)、積分値基準と設定された場合には(#14;積分値)、ユーザは許容範囲εおよび積分範囲sの設定を行い(#15)、単独画素値基準と設定された場合には(#14;単独画素値)、ユーザは許容範囲εの設定を行い(#16)、最後に、ユーザは位置選択基準CPosの設定を行う(#17)。
【0035】
投影画素指定受付部33は、画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示されたMIP画像IMIP中の点(投影画素PMIP)の指定を受け付けるユーザインターフェースである。具体的には、ユーザがマウス等のポインティングデバイスを操作して、表示されたMIP画像IMIP中の所望の点をクリックすると、投影画素指定受付部33は、MIP画像IMIPにおける指定された点(投影画素PMIP)を特定する。ここで指定される投影画素PMIPは、後述のMIP画像IMIPと断面画像IA, IC, IS, IOの連動表示の基準となる点である。
【0036】
指定位置取得部34は、選択位置情報ZBMIPから、投影画素PMIPに関連づけられた3次元医用画像V中の位置PVを取得する。
【0037】
断面画像生成部35は、3次元医用画像Vを入力として、ユーザによって設定された断面の傾き等の処理パラメータに基づき、3次元医用画像V中の位置PVを通るアキシャル断面画像IA、コロナル断面画像IC、サジタル断面画像IS、任意の斜位断面画像IOを生成する。ここで、MIP画像の処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、指定位置PMIP(対応位置PV)、および、各断面画像IA, IC, IS, IOの位置関係の例は図3に模式的に示したとおりである。また、各断面画像の生成には、公知のMPR(Multi Planar Reconstruction)の手法を用いることができる。なお、生成する断面画像は、例えば、上記各断面画像の一部であってもよいし、複数の斜断面による斜位断面画像であってもよい。また、断面画像の生成のための処理パラメータは、設定ファイル等に定義されたものであってもよい。この場合は、断面画像生成部35は、その設定ファイル等から上記処理パラメータを読み込む。
【0038】
表示制御部36は、図6に例示したように、画像処理ワークステーション3のディスプレイに、MIP画像IMIP、アキシャル断面画像IA、コロナル断面画像IC、サジタル断面画像IS、任意の斜位断面画像IOを並べて表示させるとともに、MIP画像IMIP上の投影画素PMIPの位置、各断面画像IA, IC, IS, IO上の投影画素PMIPに対応する位置PVを識別するマーカーを重畳表示させる。なお、図6の各断面画像IA, IC, IS, IO上の直線は、各断面画像の断面位置を表している。
【0039】
次に、本発明の実施形態となる医用画像処理を用いた画像診断の流れについて説明する。図7は、本発明の実施形態となる医用画像処理ソフトウェアの実行下でのユーザの操作や、演算処理、表示処理等の流れを示したフローチャートである。
【0040】
まず、3次元医用画像Vの画像データが取得される(#1)。ここで、3次元医用画像データVは、依頼元の診療科の医師からの検査オーダーに基づいてモダリティ1で撮影され、画像保管サーバ2に保管されたものである。ユーザは、画像処理ワークステーション3に実装された公知のオーダリングシステムの操作端末インターフェースを操作し、処理対象の3次元医用画像データVの取得を要求する。この操作に応じて、画像処理ワークステーションは画像保管サーバ2に対して3次元医用画像データVの検索要求を送信し、画像保管サーバ2は、データベース検索により、処理対象の3次元医用画像データVを取得し、画像処理ワークステーション3に送信する。そして、画像処理ワークステーション3は、所定のハンギングプロトコルに基づいて、受信した3次元医用画像データVから再構成された画像をディスプレイに表示させる(#2)。ここで、ユーザがディスプレイに表示されたユーザインターフェースからMIP処理を行うことを選択すると、本発明の実施形態となる医用画像処理ソフトウェアが起動される。
【0041】
この医用画像処理ソフトウェアの実行下では、まず、ユーザがMIP処理の処理パラメータであるMIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、画素値選択基準CVal、位置選択基準CPosの設定操作を行い、MIP処理条件設定受付部32が各処理パラメータの設定内容を受け付ける(#3)。MIP処理部31では、投影画像生成部31aが、3次元医用画像データVを入力として、MIP処理条件設定受付部32で受け付けられた各処理パラメータ(MIP処理対象領域RMIP、視線方向VLMIP、画素値選択基準CVal、位置選択基準CPos)に基づいて前述のMIP処理を実行し、MIP画像IMIPを生成するとともに、選択位置記憶部31bが、MIP画像IMIPの各投影画素と、各投影画素の画素値として選択された3次元医用画像V中の画素の位置とを関連づけて、選択位置情報ZBMIPとして所定のメモリ領域に記憶させる(#4)。表示制御部36は、生成されたMIP画像IMIPをディスプレイに表示させる(#5)。
【0042】
ここで、ユーザがマウス等の操作により、ディスプレイに表示されたMIP画像IMIP中の所望の点、すなわち、MIP画像IMIPと断面画像IA, IC, IS, IOの連動表示の基準となる点の指定を行うと、投影画素指定受付部33は、指定された投影画素PMIPを特定する(#6)。指定位置取得部34は、選択位置記憶部31bによって記憶された選択位置情報ZBMIPから、投影画素指定受付部33によって特定された投影画素PMIPに関連づけられた3次元医用画像V中の位置PVを取得する(#7)。
【0043】
断面画像生成部34は、3次元医用画像Vを入力として、所与の処理パラメータに基づき、3次元医用画像V中の位置PVを通るアキシャル断面画像IA、コロナル断面画像IC、サジタル断面画像IS、任意の斜位断面画像IOを生成する(#8)。そして、表示制御部36が、MIP画像IMIPに投影画素PMIPを表すマーカーを重畳させるとともに、各断面画像IA, IC, IS, IOに投影画素PMIPに対応する位置PVを表すマーカーを重畳させて、各画像IMIP, IA, IC, IS, IOをディスプレイに表示させる(#9)。
【0044】
以上のように、本発明の実施形態では、MIP処理部31の投影画像生成部31aが、所与の投影面上の複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、画素値選択基準CValを満たす画素値を有する候補点を仮選択し、候補点が複数存在する場合に、候補点のうち位置選択基準CPosを満たす位置にある点の画素値を視線上の投影画素の画素値として最終的に選択することによって、3次元医用画像VからMIP画像IMIPを生成するが、これに先立って、MIP処理条件設定受付部32が位置選択基準CPosを設定するようにしたので、視線上に画素値選択基準CValを満たす点が複数あった場合でも、投影画素として選択された画素値を有する点の位置をより適切に特定することが可能になる。
【0045】
そして、MIP画像IMIPの生成の際に、選択位置記憶部31bが、位置選択基準CPosを満たす点の位置とその点を通る視線上の投影画素とを関連づけた選択位置情報ZBMIPをメモリに記憶させておき、投影画像指定受付部33がユーザから連動表示の基準となる投影画素PMIPの指定を受け付けると、指定位置取得部34は、選択位置情報ZBMIPに基づいて、投影画素PMIPに対応する3次元医用画像V中の位置PVを特定し、断面画像生成部35が、位置PVを通る断面画像IA, IC, IS, IOを生成し、表示制御部36が、MIP画像IMIPと断面画像IA, IC, IS, IOの連動表示を行う。ここで表示される断面画像IA, IC, IS, IOは、上記のMIP処理条件設定受付部32で設定された位置選択基準CPosに基づいて選択された適切な位置を通るものであるから、ユーザは、より適切な断面画像を読影することが可能になり、読影精度や効率の向上に資する。
【0046】
なお、上記単独画素値基準によるMIP処理において、式(1)の許容誤差εに0を設定した場合、視線上で画素値が最大となる点のみが仮選択され、画素値が最大となる点が複数あった場合のみ、位置選択基準CPosに基づいて選択位置情報ZBMIPとして記憶される位置が最終的に選択されることになる。同様に、上記積分値基準によるMIP処理において、式(2)の許容誤差εに0を設定した場合、視線上で積分値が最大となる点のみが仮選択され、積分値が最大となる点が複数あった場合のみ、位置選択基準CPosに基づいて選択位置情報ZBMIPとして記憶される位置が最終的に選択されることになる。
【0047】
上記実施形態において、MIP処理部31の投影画像生成部31aで行われる処理については、診断対象や目的に応じて様々な変形例が考えられる。例えば、動脈瘤を判断する場合には、アキシャル断面画像から骨領域を抽出し、抽出された骨領域をアキシャル断面画像から除去した画像(例えば、特開2008-043565号公報参照)に対して投影画像生成部31aによる処理を行うことが考えられる。
【0048】
また、上記実施形態においてはMIP処理を例として説明を行ったが、本発明の医用画像処理をMinIP処理に適用することも可能である。その場合、上記説明の画素値や積分値の大小関係を逆転させて読み替えればよい。さらに、MinIP処理についても、診断対象や目的に応じて様々な変形例が考えられる。例えば、腹痛で腸管外ガスが疑われる場合、腹部領域のアキシャル断面画像中の体表内領域に対してMinIP処理を行うことが考えられる。具体的には、複数の検査シリーズの3次元医用画像の各々に含まれる複数のアキシャル断面画像に対して撮影部位の認識処理を行うことによって腹部領域を表す断面画像が含まれる検査シリーズの3次元医用画像を抽出し(例えば、特開2008-259682号公報参照)、抽出された検査シリーズの3次元医用画像に含まれるアキシャル断面画像の各々について、被検体の体表内を表す被検体領域と、被検体の体表外を表す非被写体領域とに分類し(例えば、特開2009-082463号公報参照)、各断面画像の被検体領域に対してMinIP処理を行う。あるいは、上記の部位認識処理により腹部領域を表す断面画像のみを抽出し、その体表内領域に対してMinIP処理を行うようにしてもよい。
【0049】
上記実施形態やその変形例におけるMIP処理やMinIP処理の詳細な処理条件については、撮影プロトコルや検査オーダーに基づいてユーザが手動操作によって設定してもよいし、画像処理ワークステーション3が自動的に設定するようにしてもよい。例えば、撮影部位や検査目的毎にMIP/MinIP処理の処理条件を定義した参照テーブルを画像処理ワークステーション3に設けておき、撮影プロトコルや検査オーダーの電子データ、または、3次元医用画像Vの付帯情報を解析することによって撮影部位や検査目的の情報を取得し、取得された情報を参照キーとして上記参照テーブルを検索することによって、その情報に合致する処理条件を取得、設定することが考えられる。あるいは、撮影プロトコルや検査オーダーに上記処理条件の情報自体を付加しておき、画像処理ワークステーション3がその処理条件の情報を取得して自動設定するようにしてもよい。
【0050】
上記の実施形態および変形例はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。
【0051】
この他、上記の実施形態におけるシステム構成、処理フロー、モジュール構成等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、図2に示された各処理が1台の画像処理ワークステーション3で行われるように説明したが、複数台のワークステーションに各処理を分散して協調処理するように構成してもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、画像処理ワークステーション3が画像保管サーバ2から3次元医用画像データV自体を取得するようにシステムを構成していたが、3次元医用画像データVは容量が大きく、画像保管サーバ2における保存コストが膨大になってしまうだけでなく、ネットワーク9を介して3次元医用画像データVを転送する際には、ネットワークの負荷や通信コストも膨大になってしまう。したがって、実際の医療現場では、画像処理ワークステーション3が、3次元医用画像データVを画像保管サーバ2から取得してMIP画像IMIPと断面画像IA, IC, IS, IOの生成や連動表示を行うという上記システム構成を実現することは困難な場合もある。そこで、図8に例示した、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3と、画像ビューア4とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続された従来のPACS (Picture Archive and Communication Systems)に本発明の医用画像処理を実装することも考えられる。この場合、図2のMIP処理部31、MIP処理条件設定受付部32、断面画像生成部35を画像処理ワークステーション3に実装し、投影画素指定受付部33、指定位置取得部34、表示制御部36を画像ビューア4に実装する。具体的には、画像処理ワークステーション3において、予めMIP画像IMIPや選択位置情報ZBMIP、断面画像(例えばIA)を生成しておき、画像保管サーバ2に保管しておく。ここで、このシステムがDICOMに準拠して構成されている場合には、MIP画像IMIPと選択位置情報ZBMIPとを1つのDICOMファイルとして取り扱うことができる。あるいは、選択位置情報ZBMIPに対して識別コードを付与し、MIP画像IMIPの付随情報として、この識別コードを関連づけておいてもよい。そして、画像ビューア4は、画像保管サーバ2から読影対象のMIP画像IMIPとともに選択位置情報ZBMIPを取得して、MIP画像IMIPを画像ビューア4のディスプレイに表示する。ユーザがディスプレイに表示されたMIP画像IMIP中の所望の投影画素PMIPを指定する操作を行うと、画像ビューア4において、投影画素指定受付部33が投影画素PMIPの指定を受け付け、指定位置取得部34が、指定された投影画素PMIPに関連づけられた3次元医用画像V中の位置PVを、画像保管サーバ2から取得した選択位置情報ZBMIPに基づいて特定する。画像ビューア4は、特定された位置PVにおける断面画像(例えばIA)を画像保管サーバ2に要求して取得し、上記実施形態と同様の態様でディスプレイに表示させる。このように、本発明をPACS環境下に実装した場合でも、画像ビューア4が3次元医用画像データVを予め取得しておくことなく、MIP画像IMIPと断面画像(例えばIA)の連動表示が実現される。
【符号の説明】
【0054】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
4 画像ビューア
9 ネットワーク
31 MIP処理部
31a 投影画像生成部
31b 選択位置記憶部
32 MIP処理条件設定受付部
33 投影画素指定受付部
34 指定位置取得部
35 断面画像生成部
36 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元医用画像を所与の投影面に投影した投影画像を生成する医用画像処理装置であって、
前記投影面上の前記投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、該視線上の複数の点から、該視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、該候補点が複数存在する場合に、該候補点のうち、該投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択することによって、前記投影画像を生成する投影画像生成手段と、
前記投影画像生成手段によって用いられる位置選択基準を設定する位置選択基準設定手段とを備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記位置選択基準を満たす点の位置を、該位置選択基準を満たす点を通る視線上の投影画素と関連づけて記憶装置に記憶させる選択位置記憶手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記投影画像中の任意の投影画素の指定を受け付ける投影画素指定受付手段と、
該指定された投影画素と関連づけられた点の位置を前記記憶装置から取得する指定位置取得手段と、
前記3次元医用画像から、前記取得された位置を通る断面を表す1以上の断面画像を生成する断面画像生成手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記断面画像上の前記取得された位置をユーザが識別可能な表示態様で前記断面画像とともに表示装置に表示させる表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記位置選択基準設定手段は、複数の位置選択基準からユーザによって選択された1つの位置選択基準を設定するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記位置選択基準は、前記複数の候補点のうち、該候補点を通る視線上の視点から投影画素に向かう向きにおいて、最初または最後のいずれか一方に出現した点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記画素値選択基準は、前記視線上の複数の点の画素値のうち最大または最小のいずれか一方の値を有する点を前記候補点とするものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記画素値選択基準は、前記視線上の複数の点の画素値のうち最大または最小のいずれか一方の値から所与の許容範囲内にある値を有する点を前記候補点とするものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記画素値選択基準は、前記視線上の各点の近傍の所与の探索区間内の画素値の積分値が、最大または最小のいずれか一方の値となる点を前記候補点とするものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画素値選択基準は、前記視線上の各点の近傍の所与の探索区間内の画素値の積分値が、最大または最小のいずれか一方の値から所与の許容範囲内にある値となる点を前記候補点とするものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
3次元医用画像を所与の投影面に投影した投影画像を生成する医用画像処理方法であって、
前記投影面上の前記投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、該視線上の複数の点から、該視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、該候補点が複数存在する場合に、該候補点のうち、該投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択することによって前記投影画像を生成するステップと、
前記ステップに先立って、前記位置選択基準を設定するステップとを有することを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、3次元医用画像を所与の投影面に投影した投影画像を生成させる医用画像処理プログラムであって、
該コンピュータに、
前記投影面上の前記投影画像を構成する複数の投影画素の各々と所与の視点とを結ぶ複数の視線の各々について、該視線上の複数の点から、該視線上の投影画素の画素値に関する画素値選択基準を満たす画素値を有する候補点を選択し、該候補点が複数存在する場合に、該候補点のうち、該投影画素の画素値として選択されるべき点の位置に関する位置選択基準を満たす位置にある点の画素値を前記視線上の投影画素の画素値として選択することによって前記投影画像を生成するステップと、
前記ステップに先立って、前記位置選択基準を設定するステップとを実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−135968(P2011−135968A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296701(P2009−296701)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】