説明

医用画像処理装置

【課題】ステント及び血管の両方を明瞭に観察すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、第1再構成部と、第2再構成部と、画像合成部とを備える。第1再構成部は、X線収集画像に基づいて、第1再構成フィルターの適用により第1再構成画像を生成する。第2再構成部は、X線収集画像に基づいて、第1再構成フィルターに比較して高周波強調効果の高い第2再構成フィルターの適用により第2再構成画像を生成する。画像合成部は、第1再構成画像と第2再構成画像とを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターベンション治療(血管内治療)の一つに、動脈瘤を対象とするコイリング治療がある。このコイリング治療は、動脈瘤と親血管との境界であるネックのサイズが動脈瘤に対し狭い場合にのみ施行されてきた。仮にネックのサイズが動脈瘤とほぼ同じである場合、コイルを動脈瘤に挿入すると、コイルが動脈瘤から逸脱し、末梢血管を塞栓してしまうリスクがあったからである。
【0003】
しかし、近年、コイリング治療用のステント(Stent)が開発された。ステントを用いた新しい治療法においては、図19及び図20に示すように、親血管にステントが留置され、ステントの網の隙間からコイルが挿入される。この新しい治療法によれば、ステントの網がコイルの逸脱を防止するため、ネックのサイズに因らず、コイリング治療を選択できる可能性がある。図19及び図20は、ステントを用いたコイリング治療を説明するための図である。
【0004】
ここで、ステントを用いたコイリング治療においては、親血管に留置されたステントが、留置後、親血管と動脈瘤のネック部に密着していることが望まれる。しかし、コイリング治療用のステントは網を構成する金属の断面径が非常に細いため、透視や撮影などのX線撮影画像上では非常に見え難く密着度を評価することはできない。このため、一般に、医師や技師は、投影データ(以下、X線収集画像)から高空間分解能モードで再構成された三次元画像を確認し、ステントが親血管と動脈瘤のネック部に密着していることを確認してからコイリング治療を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−80285号公報
【特許文献2】特開2009−22459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、ステント及び血管の両方を明瞭に観察することが難しいという課題がある。仮に、X線収集画像を高分解能で再構成した場合、ステントについてはストラットまで鮮明に描出されたとしても、血管表面の凹凸と混在する結果、境界が分かり難くなるおそれがある。一方、X線収集画像を標準分解能で再構成した場合、ステントマーカーは描出されたとしても、ストラットまでは殆ど描出されないおそれがある。また、例えば投影方向数を増やすことでこの課題を解決しようとしても、被曝線量の増大や造影剤注入量の増大等を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の医用画像処理装置は、第1再構成部と、第2再構成部と、画像合成部とを備える。前記第1再構成部は、X線収集画像に基づいて、第1再構成フィルターの適用により第1再構成画像を生成する。前記第2再構成部は、前記X線収集画像に基づいて、前記第1再構成フィルターに比較して高周波強調効果の高い第2再構成フィルターの適用により第2再構成画像を生成する。前記画像合成部は、前記第1再構成画像と前記第2再構成画像とを合成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置による全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図3A】図3Aは、第1の実施形態に係る濃度ムラ補正を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、第1の実施形態に係る濃度ムラ補正を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例1)を説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態におけるステントマーカーを説明するための図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例2)を説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理を説明するための図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例1)を説明するための図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例2)を説明するための図である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係る再構成処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図12は、第3の実施形態に係る再構成処理を説明するための図である。
【図13】図13は、第3の実施形態に係る再構成領域を説明するための図である。
【図14】図14は、第3の実施形態に係る離散間隔を説明するための図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係る離散間隔を説明するための図である。
【図16】図16は、第3の実施形態に係るコンボリューションフィルターを説明するための図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係る第二の再構成領域の位置を説明するための図である。
【図18】図18は、第3の実施形態に係る第二の再構成領域の位置の指定を説明するための図である。
【図19】図19は、ステントを用いたコイリング治療を説明するための図である。
【図20】図20は、ステントを用いたコイリング治療を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る医用画像処理装置を説明する。まず、第1の実施形態に係る医用画像処理装置として、医用画像処理装置がX線診断装置に組み込まれた例を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
[第1の実施形態に係るX線診断装置の構成]
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、X線撮影機構10と、画像処理装置100とを有する。X線撮影機構10は、X線管球11と、検出器(FPD(Flat Panel Detector))12と、C型アーム13と、寝台14とを有する。C型アーム13は、X線管球11及び検出器12を支持し、土台(図示を省略)に設けられたモータでプロペラのように被検体Pの周りを高速回転する。
【0011】
画像処理装置100は、制御部20と、A/D(Analog/Digital)変換部21と、二次元画像記憶部22と、サブトラクション部23と、三次元再構成部24と、三次元画像記憶部25と、三次元画像合成部26と、三次元画像表示部27と、モニタ28とを有する。
【0012】
制御部20は、X線診断装置1全体を制御する。具体的には、制御部20は、X線収集画像の収集、三次元画像の再構成、三次元画像の表示などを制御する。A/D変換部21は、検出器12に接続され、検出器12から入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、変換したディジタル信号をX線収集画像として二次元画像記憶部22に格納する。二次元画像記憶部22は、X線収集画像を記憶する。
【0013】
サブトラクション部23は、X線収集画像と濃度ムラ補正用の画像との間でサブトラクションを行い、サブトラクション画像を取得する。三次元再構成部24は、サブトラクション画像から三次元画像を再構成する。なお、図1に示すように、三次元再構成部24は、第1再構成部24aと、第2再構成部24bと、特定部24cと、同定部24dとを有する。これらの各部については後に詳細に説明する。三次元画像記憶部25は、三次元画像を記憶する。三次元画像合成部26は、再構成した三次元画像を合成する。三次元画像表示部27は、三次元画像を、ボリュームレンダリング画像や、MPR(Multi Planar Reconstruction)が画像などとしてモニタ28に表示する。
【0014】
[第1の実施形態に係るX線診断装置による処理]
続いて、第1の実施形態に係るX線診断装置1による処理を具体的に説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0015】
図2に示すように、まず、撮影準備が行われる(ステップS1)。具体的には、インターベンション治療が開始されると、医師は、カテーテルを血管内に挿入し、カテーテルが目的の動脈瘤の近くまで到達すると、動脈瘤と親血管との境界であるネックを覆うようにステントを留置する。医師は、ステントがネックを完全に覆っているかどうか、ステントが血管壁に密着しているかどうか、ステントが破損していないかどうかなどを把握するために、3Dイメージングを行う。
【0016】
3Dイメージングでは、C型アーム13は、土台に設けられたモータでプロペラのように被検体Pの周り(例えば、被検体Pの周り180度以上)を高速回転する。医師は、目的の主要血管が全ての方向で視野内に入るように、寝台14の位置、寝台14の高さ、C型アーム13の位置のいずれか一つを、若しくは、組み合わせて調整する。その後、医師が、C型アーム13の回転により被検体Pに危険がないかどうかを確認すると、撮影準備が完了する。
【0017】
次に、医師は、X線診断装置1に、造影剤注入器(Injector)をセットする。造影剤注入器には、通常の血管造影で使用する造影剤を2倍から3倍に希釈したものがセットされる。造影剤濃度が高いものを使用すると、造影剤成分がステントの情報を打ち消してしまうからである。
【0018】
そして、造影剤の注入が開始され(ステップS2)、造影剤の注入が開始されて一定時間(例えば1秒〜2秒)経過した後に、C型アーム13の回転及び撮影が開始し(ステップS3)、X線収集画像の撮影が行われる(ステップS4)。
【0019】
例えば、C型アーム13は、秒間25度で回転し、X線診断装置1は、約0.8度間隔で、約250フレームのX線収集画像の撮影を行う。A/D変換部21は、収集された250フレームのX線収集画像をディジタル信号に変換し、1,024×1,024のX線収集画像250フレーム分として二次元画像記憶部22に格納する。
【0020】
二次元画像記憶部22にX線収集画像が格納されると、制御部20は、二次元画像記憶部22に格納されたX線収集画像と、予め収集された濃度ムラ補正用の画像とを、サブトラクション部23に送り、サブトラクション部23は、サブトラクションを行う(ステップS5)。具体的には、サブトラクション部23は、対応する濃度ムラ補正用の画像からX線収集画像をサブトラクションする。
【0021】
ここで、濃度ムラ補正用の画像について説明する。図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る濃度ムラ補正を説明するための図である。濃度ムラ補正用の画像とは、図3Aに示すように、X線管球11と検出器12との間にエアーだけがある状態で撮影した画像のことであり、キャリブレーション手順の中で、例えば数ヶ月に一度、定期的に収集されている。なお、この濃度ムラ補正用の画像は、SID(Source Image Distance)、FOV(Field Of View)、線質調整フィルター毎に収集されている。
【0022】
図3Aに示す撮影で収集された画像を「F(x,y)」とする。一方、図3Bに示すように、X線管球11と検出器12との間に一様な物質がある状態で撮影した画像を「P(x,y)」とする。すると、物質内を透過する距離を「l」、その物質のX線吸収係数を「μ」とした場合、以下(1)式が成立する。サブトラクション部23は、X線収集画像と濃度ムラ補正用の画像とを用いて以下(2)式を適用することにより、サブトラクション画像Qθ(x,y)を得る。ここで、θは、撮影角度を表している。
【数1】

【数2】

ここで、Pθ(x,y)は、撮影角度θにおける被検体のX線収集画像、F(x,y)は、濃度ムラ補正用画像、Qθ(x,y)は、撮影角度θにおけるサブトラクション画像である。
【0023】
サブトラクション部23によってサブトラクションが行われると、制御部20は、サブトラクション画像Qθ(x,y)を三次元再構成部24に送り、三次元再構成部24は、再構成を行う(ステップS6)。なお、第1の実施形態においては、説明の便宜上、「サブトラクション画像Qθ(x,y)」を「X線プロジェクション画像」と記載する。
【0024】
ここで、第1の実施形態に係る三次元再構成部24及び三次元画像合成部26は、2種類の再構成を行い、各再構成によって得られた2種類の再構成画像を合成し、合成画像を出力する。具体的には、まず、三次元再構成部24の第1再構成部24aは、X線収集画像に基づいて、第1再構成フィルターの適用により第1再構成画像を生成する。また、三次元再構成部24の第2再構成部24bは、X線収集画像に基づいて、第2再構成フィルターの適用により第2再構成画像を生成する。ここで、第2再構成フィルターは、第1再構成フィルターに比較して高周波強調効果の高い再構成フィルターである。また、三次元画像合成部26は、第1再構成画像と第2再構成画像とを合成する。なお、第1の実施形態(後述する変形例1及び変形例2を除く)においては、特定部24c及び同定部24dによる処理を実施しない。したがって、三次元再構成部24は、これらの各部を備えなくてもよい。
【0025】
図4は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理を説明するための図である。図4に示すように、三次元再構成部24は、サブトラクション部23から送られたX線プロジェクション画像に対して、標準の再構成フィルター(以下、適宜「標準再構成フィルター」という)を用いて行う第1再構成と、高周波強調の効果が高い再構成フィルター(以下、適宜「高周波強調再構成フィルター」という)を用いて行う第2再構成とを実施する。なお、各再構成フィルターは、後に図16を用いて詳述するように、例えば、Ramachandranの再構成フィルター、Smoothed Shepp&Loganの再構成フィルター、Shepp&Loganの再構成フィルターのうち、一方の再構成フィルターが他方の再構成フィルターに対して相対的に高周波強調の効果が高くなるように、2種類の再構成フィルターを適宜組み合わせて用いればよい。
【0026】
標準再構成フィルターを用いて第1再構成を実施した場合、図4に示すように、第1再構成部24aは、血管が描出された再構成画像(図4に示す「血管画像」)を得る。この再構成画像は、標準再構成フィルターによって再構成されたものであるので、ステントは殆ど描出されていない。もっとも、血管表面の凹凸が強調され過ぎることもなく、血管の全体構造を観察し易く描出している。
【0027】
また、高周波強調再構成フィルターを用いて第2再構成を実施した場合、図4に示すように、第2再構成部24bは、ステントがストラットまで鮮明に描出された再構成画像(図4に示す「ステント画像」)を得る。なお、図4においては、ステント部分のみを抽出したステント画像を示すが、実際は、ステント及び血管の両方が描出された画像である。ここで、ステントは金属であり、CT(Computed Tomography)値が高い。そこで、第2再構成部24bは、この再構成画像に対してウィンドウ幅やウィンドウレベルを調整することでステントの描出を濃くし、血管の描出を薄くする等の調整を行う。なお、ウィンドウ幅は、例えば、最大輝度から最小輝度までの範囲に割り当てる濃度値の範囲のことであり、ウィンドウレベルは、例えば、ウィンドウ幅の中間に位置する濃度値のことである。
【0028】
なお、図4においては、2種類の再構成を併行して実施する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、高周波強調再構成フィルターによる再構成を実施した後に、標準再構成フィルターによる再構成を実施する流れであっても、あるいは標準再構成フィルターによる再構成を実施した後に、高周波強調再構成フィルターによる再構成を実施する流れであってもよい。
【0029】
図2に戻り、2種類の再構成画像が三次元画像記憶部25に格納されると、制御部20は、三次元画像記憶部25に格納された2種類の再構成画像を三次元画像合成部26に送る。そして、三次元画像合成部26は、2種類の再構成画像を合成する。具体的には、三次元画像合成部26は、第1再構成によって得られた再構成画像と、第2再構成によって得られた再構成画像とを合成し、合成画像を出力する。この合成画像において、ステント及び血管は重畳して描出されることになる。ここで、ステントが描出されずに血管の全体構造が観察し易く描出されている再構成画像と、ステントのみが鮮明に描出され、血管の描出は薄くなるように調整された再構成画像とが重畳して描出されることになるので、結果として、合成画像は、図4に示すように、血管の全体構造が観察できるとともにステントが鮮明に描出された画像となる。
【0030】
そして、2種類の再構成画像が合成されると、制御部20は、合成後の三次元画像を三次元画像表示部27に送り、三次元画像表示部27は、合成後の三次元画像を、ボリュームレンダリング画像やMPR画像として、モニタ28に表示する。
【0031】
なお、ここでは再構成処理において各種補正を実施しない前提で説明したが、これに限られるものではなく、散乱線補正、ビームハードニング補正、リング補正などの補正を実施してもよい。
【0032】
このようなことから、第1の実施形態によれば、ステント及び血管の両方を明瞭に観察することが可能になる。すなわち、第1の実施形態によれば、X線収集画像に対して2種類の再構成を行い、これを合成することで、血管の全体構造が観察できるとともにステントが鮮明に描出された画像を得ることができるので、特に投影方向数を増やすことなく、ステント及び血管の両方を明瞭に観察することが可能になる。
【0033】
(変形例1)
第1の実施形態の変形例1を説明する。図5は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例1)を説明するための図である。図4を用いて説明した再構成及び合成処理との相違点を主に説明すると、変形例1に係る三次元再構成部24は、図5に示すように、標準再構成フィルターによる第1再構成の再構成画像を用いて注目領域を抽出し、抽出した注目領域についてのみ、高周波強調再構成フィルターによる第2再構成を実施する。
【0034】
この注目領域は操作者の指定を受け付けて決定してもよいが、以下では、再構成画像から自動的に抽出する手法を説明する。具体的には、変形例1に係る三次元再構成部24は、特定部24c及び同定部24dによる処理を実施する。特定部24cは、第1再構成の再構成画像に対する閾値処理により、ステントマーカーを特定する。同定部24dは、第1再構成の再構成画像内で、ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する。第2再構成部24bは、X線収集画像のうち、同定部24dによって同定された注目領域についてのみ高周波強調再構成フィルターを適用し、注目領域についてのみ再構成画像を生成する。
【0035】
図6は、第1の実施形態におけるステントマーカーを説明するための図である。例えば、変形例1に係る特定部24cは、第1再構成の再構成画像に対して画像処理を行うことでステントマーカーを特定する。ステントマーカーは、図6に示すように、ステントの両端に位置付けられる(例えば両端に4つずつ設けられる)。このステントマーカーは、吸収率が高く、ステントマーカーの部分だけ高いCT値を有する。このため、特定部24cは、例えば閾値処理を施すことでステントマーカーを特定することができ、同定部24dは、特定部24cによって特定されたステントマーカーによって囲まれる領域を更に抽出することで、注目領域、すなわちステントの領域を同定する。なお、金属の人工歯は同様に高いCT値を有するが、ステントマーカーに比べて体積が非常に大きいので、体積を計測することにより人工歯は除外することができる。
【0036】
すると、第2再構成部24bは、ステントの領域についてのみ高周波強調再構成フィルターを用いて第2再構成を実施することになるので、図5に示すように、まさにステント部分のみが抽出され、ステントが鮮明に描出されたステント画像を得る。このように、変形例1によれば、上述したようなウィンドウ幅やウィンドウレベルの調整が容易になる。また、第2再構成の領域が小さくなるので、再構成に要する時間も削減される。そして、三次元画像合成部26は、図4を用いて説明した第1の実施形態と同様、第1再構成によって得られた再構成画像と、第2再構成によって得られた再構成画像とを合成する。
【0037】
(変形例2)
第1の実施形態の変形例2を説明する。図7は、第1の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例2)を説明するための図である。図5を用いて説明した再構成及び合成処理との相違点を主に説明すると、変形例2において、注目領域の抽出は、高周波強調再構成フィルターによる第2再構成の後処理として行われる。
【0038】
すなわち、変形例2に係る第2再構成部24bは、図4を用いて説明した第1の実施形態と同様、X線プロジェクション画像全体に対して高周波強調再構成フィルターによる第2再構成を実施する。一方、特定部24cは、第1再構成の再構成画像に対する閾値処理によりステントマーカーを特定し、同定部24dは、第2再構成の再構成画像内で、ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する。すなわち、同定部24dは、第1再構成の再構成画像から得られた注目領域の情報を適用し、第2再構成の再構成画像からステントの領域を切り出す。そして、三次元画像合成部26は、第1再構成によって得られた再構成画像と、第2再構成によって得られた再構成画像であってステントの領域のみが切り出された再構成画像とを合成する。このように、変形例2の場合も、ウィンドウ幅やウィンドウレベルの調整が容易になる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態において説明したX線診断装置1と同様のX線診断装置1によって実施されることを想定する。第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態においては、造影剤注入後の画像に対して2種類の再構成を実施していたが、第2の実施形態においては、造影剤注入前後の画像を収集し、それらのサブトラクション画像と造影剤注入前の画像とを用いて2種類の再構成を実施する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
図8は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理を説明するための図である。第2の実施形態において、サブトラクション部23は、造影剤注入前の画像(以下、適宜「マスク画像」という)と濃度ムラ補正用の画像との間でサブトラクションを行う他に、マスク画像と造影剤注入後の画像(以下、適宜「コントラスト画像」という)との間でサブトラクションを行う。なお、前者のサブトラクションにより得られた画像を、以下、適宜、X線プロジェクション画像といい、後者のサブトラクションにより得られた画像を、以下、適宜、DSA(Digital Subtraction Angiography)画像と言う。そして、第2の実施形態に係るサブトラクション部23は、X線プロジェクション画像及びDSA画像を三次元再構成部24に送る。
【0041】
第2の実施形態に係る三次元再構成部24は、サブトラクション部23から送られたDSA画像に対して標準再構成フィルターによる第1再構成を実施し、X線プロジェクション画像に対して高周波強調再構成フィルターによる第2再構成を実施する。すなわち、第1再構成部24aは、DSA画像に対して標準再構成フィルターを適用することで第1再構成を実施し、第2再構成部24bは、X線プロジェクション画像に対して高周波強調再構成フィルターを適用することで第2再構成を実施する。
【0042】
この場合、X線プロジェクション画像は造影剤注入前のものであるので、血管が描出されていない。このため、第2再構成の再構成画像は、血管が描出されず、結果として、ステントのみが鮮明に描出されたものとなる。このようなことから、第2の実施形態によれば、上述したようなウィンドウ幅やウィンドウレベルの調整がより簡易となる。一方、DSA画像は、造影剤注入前後のサブトラクション画像であるので、血管のみが描出されたものとなる。そして、三次元画像合成部26は、第1の実施形態と同様、第1再構成によって得られた再構成画像と、第2再構成によって得られた再構成画像とを合成する。
【0043】
このようなことから、第2の実施形態によれば、ステント及び血管の両方をより明瞭に観察することが可能になる。すなわち、第2の実施形態によれば、ステントのみが描出された画像及び血管のみが描出された画像それぞれに対して2種類の再構成を行い、これを合成することになるので、一方の画像に不鮮明に描出されたステントや血管が重畳されてしまうといった不用な重畳が発生せず、ステント及び血管の両方をより明瞭に観察することが可能になる。
【0044】
(変形例1)
第2の実施形態の変形例1を説明する。図9は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例1)を説明するための図である。図8を用いて説明した再構成及び合成処理との相違点を主に説明すると、変形例1に係る三次元再構成部24は、図9に示すように、DSA画像に対してのみならず、X線プロジェクション画像に対しても、標準再構成フィルターによる第1再構成を実施する。すなわち、上述したように、X線プロジェクション画像には血管が描出されていない。そこで、変形例1に係る特定部24cは、このX線プロジェクション画像に対して標準再構成フィルターによる第1再構成を実施し、その再構成画像に対して画像処理を行うことで、ステントマーカーを特定する。
【0045】
その他の処理は第1の実施形態の変形例1と同様であり、第2再構成部24bは、ステントの領域についてのみ高周波強調再構成フィルターを用いて第2再構成を実施することになるので、図9に示すように、まさにステント部分のみが抽出され、ステントが鮮明に描出されたステント画像を得る。このように、第2の実施形態の変形例1によれば、ウィンドウ幅やウィンドウレベルの調整が不要となる。また、第2再構成の領域が小さくなるので、再構成に要する時間も削減される。
【0046】
なお、第1の実施形態の変形例1と同様、この注目領域は、操作者の指定を受け付けて決定してもよい。
【0047】
(変形例2)
第2の実施形態の変形例2を説明する。図10は、第2の実施形態に係る再構成及び合成処理(変形例2)を説明するための図である。図9を用いて説明した再構成及び合成処理との相違点を主に説明すると、変形例2において、注目領域の抽出は、高周波強調再構成フィルターによる第2再構成の後処理として行われる。
【0048】
すなわち、変形例2に係る第2再構成部24bは、図7を用いて説明した第2の実施形態と同様、X線プロジェクション画像全体に対して高周波強調再構成フィルターによる第2再構成を実施する。一方、特定部24cは、X線プロジェクション画像に対して標準再構成フィルターを適用することで第1再構成を実施し、その再構成画像に対する閾値処理によりステントマーカーを特定する。また、同定部24dは、第2再構成の再構成画像内で、ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する。すなわち、同定部24dは、第1再構成の再構成画像から得られた注目領域の情報を適用し、第2再構成の再構成画像からステントの領域を切り出す。そして、三次元画像合成部26は、第1再構成によって得られた再構成画像と、第2再構成によって得られた再構成画像であってステントの領域のみが切り出された再構成画像とを合成する。このように、変形例2の場合も、ウィンドウ幅やウィンドウレベルの調整が簡易となる。
【0049】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態を説明する。ここで、第3の実施形態を具体的に説明する前に、再構成フィルターについて説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態においては、Ramachandranの再構成フィルター、Smoothed Shepp&Loganの再構成フィルター、Shepp&Loganの再構成フィルターのうち、一方の再構成フィルターが他方の再構成フィルターに対して相対的に高周波強調の効果が高くなるように、2種類の再構成フィルターを適宜組み合わせて用いればよいと説明した。以下では、相対的に高周波強調の効果が高い場合、その再構成フィルターを「シャープなコンボリューションフィルター」と呼び、相対的に高周波強調の効果が低い場合、その再構成フィルターを「スムースなコンボリューションフィルター」と呼ぶ。
【0050】
第1の実施形態及び第2の実施形態においては、この「シャープなコンボリューションフィルター」及び「スムースなコンボリューションフィルター」による2種類の再構成を行う実施形態を説明したが、第3の実施形態においては、事前処理として、縮小処理又はローパスフィルター処理を施す手法を説明する。
【0051】
すなわち、事前処理として縮小処理を施すと、その後の再構成フィルターに「シャープなコンボリューションフィルター」を用いると、縮小処理と併せた全体の結果としては、「スムースなコンボリューションフィルター」を用いた場合と同様の結果が得られる。同様に、事前処理としてローパスフィルター処理を施すと、その後の再構成フィルターに「シャープなコンボリューションフィルター」を用いると、ローパスフィルター処理と併せた全体の結果としては、「スムースなコンボリューションフィルター」を用いた場合と同様の結果が得られる。このため、第3の実施形態において、三次元再構成部24の第1再構成部24aは、事前に縮小処理やローパスフィルター処理を実施する。
【0052】
以下、第3の実施形態に係る再構成及び合成処理を詳細に説明する。第3の実施形態に係る三次元再構成部24による再構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様、2段階で実施される。図11は、第3の実施形態に係る再構成処理の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、三次元再構成部24は、「第一段階の再構成」と「第二段階の再構成」とを実施する。なお、図11においては、三次元再構成部24が、「第一段階の再構成」と「第二段階の再構成」とを併行して実施する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、「第一段階の再構成」を実施した後に「第二段階の再構成」を実施する流れであっても、あるいは「第二段階の再構成」を実施した後に「第一段階の再構成」を実施する流れであってもよい。
【0053】
以下、「第一段階の再構成」及び「第二段階の再構成」それぞれを、図11〜図18を用いて説明する。図12は、第3の実施形態に係る再構成処理を説明するための図である。
【0054】
「第一段階の再構成」を説明する。まず、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、X線プロジェクション画像を縮小する(ステップS101)。例えば、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、図12に示すように、1,024×1,024のX線プロジェクション画像に対し、縮小後の1ピクセルサイズが、縮小前の4ピクセルサイズ分となるように、X線プロジェクション画像を縮小する。すると、縮小後のX線プロジェクション画像は、512×512のX線プロジェクション画像250フレーム分となる。
【0055】
続いて、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、縮小された512×512のX線プロジェクション画像250フレーム分に対して、例えばSmoothed Shepp&Loganのようなスムースなコンボリューションフィルターをかける(ステップS102)。
【0056】
次に、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、逆投影演算を行い第一の三次元画像を生成し、生成した第一の三次元画像を三次元画像記憶部25に格納する(ステップS103)。
【0057】
「第二段階の再構成」を説明する。まず、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、X線プロジェクション画像から、その一部を抽出する(ステップS201)。例えば、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、図12に示すように、1,024×1,024のサブトラクション画像から、512×1,024のX線プロジェクション画像を抽出する。この結果、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、512×1,024のX線プロジェクション画像250フレーム分を取得する。
【0058】
続いて、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、抽出したX線プロジェクション画像に対して再構成処理を行う。再構成方法の一例として、ここでは、Feldkampなどによって提案されたフィルタードバックプロジェクション法の場合を示す。三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、抽出された512×1,024のX線プロジェクション画像250フレーム分に対して、例えばShepp&LoganやRamachandranのようなシャープなコンボリューションフィルターをかける(ステップS202)。
【0059】
次に、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、逆投影演算を行い第二の三次元画像を生成し、生成した第二の三次元画像を三次元画像記憶部25に格納する(ステップS203)。
【0060】
ここで、三次元再構成部24によって再構成される再構成領域について説明する。図13は、第3の実施形態に係る再構成領域を説明するための図である。また、図14及び図15は、第3の実施形態に係る離散間隔を説明するための図である。
【0061】
まず、第二の再構成領域は、図13に示すように、X線管球11と、検出器12のFOVの中心(FOV/2×FOV/2)の領域とで構成される四角錐を全ての方向で定義した場合に、その重なりに内接する円筒として定義される。また、この円筒内は、図14及び図15に示すように、例えば検出器12の1検出素子の幅「D」に投影される再構成領域中心部での長さ「d」で三次元的に離散化される。なお、X線管球11と検出器12との間の距離を「L」、X線管球11と再構成領域中心部との間の距離を「l」とした場合に、長さ「d」は、以下(3)式で示される。
【数3】

【0062】
このように、三次元再構成部24は、長さ「d」で三次元的に離散化された、512×512×512の離散点のデータを、第二の三次元画像として生成する。なお、第二の三次元画像は、512×1,024のX線プロジェクション画像から再構成されているので、三次元再構成部24は、図15に示す円筒内のみならず、円筒外のデータであって512×512×512の立方体内のデータも生成することができる。また、ここでは離散間隔の一例を示したが、これは装置やメーカによって異なることもあるので、基本的には、装置によって定義された離散間隔を用いればよい。
【0063】
一方、第一の再構成領域は、図13に示すように、X線管球11と、検出器12のFOVの領域とで構成される四角錐を全ての方向で定義した場合に、その重なりに内接する円筒として定義される。また、この円筒内は、長さ「2d」で三次元的に離散化される。このように、三次元再構成部24は、長さ「2d」で三次元的に離散化された、512×512×512の離散点のデータを、第一の三次元画像として生成する。
【0064】
また、コンボリューションフィルターについて説明する。図16は、第3の実施形態に係るコンボリューションフィルターを説明するための図である。コンボリューションフィルターには、一般に、「第一段階の再構成」で用いた「スムース」なコンボリューションフィルターと、「第二段階の再構成」で用いた「シャープ」なコンボリューションフィルターとがある。「シャープ」なコンボリューションフィルターは、「スムース」なコンボリューションフィルターに比較して、高周波強調であるという性質を有する。
【0065】
例えば、図16には、3種類のコンボリューションフィルターを示す。この3種類のコンボリューションフィルターとしては、Ramachandranのコンボリューションフィルターが最も「シャープ」であり、Smoothed Shepp&Loganのコンボリューションフィルターが最も「スムース」であり、Shepp&Loganのコンボリューションフィルターがその中間である。
【0066】
一般的に、「シャープ」なコンボリューションフィルターを用いて再構成を行うと、高周波が強調される結果、鮮明な画像となり易い。すなわち、第3の実施形態に係るX線診断装置1は、「第一段階の再構成」と「第二段階の再構成」とで異なる処理を行うのみならず、それぞれに適用するコンボリューションフィルターを変えなくとも、注目領域の画像をより鮮明に抽出し、かつ周辺部の画像劣化を抑えられる。
【0067】
こうして、図12に示すように、第一の三次元画像と第二の三次元画像とが生成される。「第一段階の再構成」によって生成された第一の三次元画像と、「第二段階の再構成」によって生成された第二の三次元画像とを比較すると、第二の三次元画像の1ボクセルサイズは、第一の三次元画像の1ボクセルサイズよりも小さく、その空間分解能が高いことがわかる。すなわち、第二の三次元画像は、縮小されることなくそのまま抽出されたサブトラクション画像から生成されたものであるので、その1ボクセルサイズは、X線収集画像が収集された際の高い空間分解能をそのまま維持する。一方、第一の三次元画像は、縮小されたサブトラクション画像から生成されたものであるので、その1ボクセルサイズは、X線収集画像が収集された際の空間分解能よりも低下する。
【0068】
なお、第3の実施形態に係る三次元画像合成部26は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様、三次元画像同士の合成を行う。例えば、三次元画像合成部26は、図12に示すように、第一の三次元画像と第二の三次元画像とを合成する。なお、第3の実施形態に係る三次元画像合成部26は、第一の三次元画像と第二の三次元画像とで重複する領域については、第二の三次元画像を優先して採用する。
【0069】
なお、ここでは再構成方法の一例としてFeldkamp法を使用した例について説明したが、これに限られるものではなく、その他、Filtered Backprojection法や、ART(Algebraic Reconstruction Technique)などの逐次近似法であってもよい。また、ここでは再構成処理において各種補正を実施しない前提で説明したが、これに限られるものではなく、散乱線補正、ビームハードニング補正、リング補正などの補正を実施してもよい。
【0070】
さらに、ここでは第二の再構成領域を第一の再構成領域の中心とした。しかしこれに限られるものではなく、第二の再構成領域は、中心からずれていてもよい。但し、第一の再構成領域の周辺部では、画質の劣化という現象が発生し得るので、この第二の再構成領域は中心から大きく外れるのは望ましくない。
【0071】
図17は、第3の実施形態に係る第二の再構成領域の位置を説明するための図である。例えば、図17に示すように、第二の再構成領域は、第一の再構成領域の半径「R」、高さ「h」を2/3にした円筒に含まれる領域内にあるのが望ましい。
【0072】
なお、第二の再構成領域の位置は、約90度の角度から収集されたX線収集画像上で指定するなどの方法がある。図18は、第1の実施形態に係る第二の再構成領域の位置の指定を説明するための図である。図18において、中央の円は、第一の再構成領域又は第二の再構成領域の円筒を上からみたものである。図18に示すように、円筒に対し、2つの角度(例えば、約90度間隔)におけるX線収集画像上で、例えば動脈瘤の位置を指定すると、動脈瘤の三次元空間における位置が定まる。そこで、三次元再構成部24は、第二の再構成段階において、三次元空間上で定まった動脈瘤が中心となるように、X線プロジェクション画像を抽出すればよい。
【0073】
このようなことから、第3の実施形態によれば、広い領域(例えば視野に入る全ての領域)の描出と注目領域の鮮明な描出とを同時に実現することが可能になる。例えば、血管の全体構造を把握しつつ、ステントのある注目領域は細かく観察したい、さらには患者に対する被曝を極力少なくしたいという臨床的なニーズを満たすことが可能になる。
【0074】
また、第3の実施形態に係る三次元再構成部24は、第一の三次元画像及び第二の三次元画像の生成にあたりコンボリューションフィルター処理を施すものである。ここで、第二の三次元画像の生成にあたり施されるコンボリューションフィルター処理は、第一の三次元画像の生成にあたり施されるコンボリューションフィルター処理より高周波強調である。
【0075】
このようなことから、第3の実施形態によれば、注目領域の画像をより鮮明に描出することが可能になる。
【0076】
(変形例1)
第3の実施形態において、三次元画像合成部26は、第一の三次元画像と第二の三次元画像とを単純に合成したが、これに限られるものではない。第一の三次元画像と第二の三次元画像との間では、各種補正効果などの幾つかの要因により、画素レベル(濃度値)が多少異なることがある。このため、三次元画像合成部26は、第一の三次元画像の中で第二の再構成領域に相当する部分の画素レベルと、第二の三次元画像の画素レベルとを比較し、補正することが望ましい。例えば、三次元画像合成部26は、第二の三次元画像の平均画素レベルAV2と、第一の三次元画像の中で第二の再構成領域に相当する部分の平均画素レベルAV1とから、その差分である(AV1−AV2)を求め、第二の三次元画像の画素に対し、求めた(AV1−AV2)を加算する。これはグローバルな補正となる。
【0077】
また、三次元画像合成部26は、グローバルな補正を実施した後、さらに、ローカルな補正を行ってもよい。例えば、三次元画像合成部26は、第二の三次元画像における小領域(例えば32×32)内の平均画素レベルと、第一の三次元画像における小領域であって第二の三次元画像における小領域に対応する小領域内の平均画素レベルとを比較し、両画素レベルに大きな差分が生じないように、補正を行う。このような補正を行うことにより、第一の三次元画像と第二の三次元画像との間で画素レベルが調整されるので、合成後の三次元画像において、両画像の境界がより滑らかに描出される。なお、変形例1で説明したこれらの補正は、第1の実施形態及び第2の実施形態においても同様に適用することが可能である。
【0078】
(変形例2)
第3の実施形態において、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、第一段階の再構成の前処理として、縮小処理を行った。しかし、縮小処理を行わず、X線収集画像に対してローパスフィルター処理を施し、ローパスフィルター処理が施されたフィルタリング画像に対して再構成を実施してもよい。例えば、ローパスフィルターの形が、2×2の領域で値が1/4になるものであれば、縮小処理と全く同じ結果となる。
【0079】
さらに、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、第一段階の再構成として、あるローパスフィルターとコンボリューションフィルターとを合成し、X線収集画像に対して直接この合成フィルターを用いて再構成処理を行ってもよい。この変形例では、第一段階の再構成の離散間隔は、必ずしも長さ「2d」である必要はない。例えば、三次元再構成部24(第1再構成部24a)は、縮小処理と等価なローパスフィルターより少しシャープなローパスフィルターを使用し、例えば長さ「1.5d」の離散間隔で再構成してもよい。
【0080】
(変形例3)
第3の実施形態において、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、中心の512×1,024部分のみを抽出して再構成を行った。しかし、第二段階の再構成は、濃度分解能ではなく、空間分解能を重視した再構成を行う。したがって、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、512×1,024部分を抽出する代わりに、中心の512×512部分を抽出して処理してもよい。この場合、再構成画像の濃度分解能は多少低下するが、フィルタリング処理が短時間で済むと言うメリットがある。
【0081】
なお、この場合に、三次元再構成部24(第2再構成部24b)によって生成された第二の三次元画像は、512×1,024のX線プロジェクション画像ではなく、512×512のX線プロジェクション画像から再構成されている。このため、三次元再構成部24(第2再構成部24b)は、図15に示す円筒内のみのデータを生成することができ、円筒外のデータであって512×512×512の立方体内のデータを生成することはできない(適宜、予め定められた値が埋められる)。
【0082】
(第4の実施形態)
これまで、実施の形態に係る医用画像処理装置として、いくつかの実施形態に係るX線診断装置を説明したが、これに限られるものではない。
【0083】
[モダリティ]
例えば、実施の形態に係る医用画像処理装置は、X線CT装置に組み込まれてもよい。また、例えば、実施の形態に係る医用画像処理装置は、単体の医用画像処理装置として実現されてもよい。この場合、医用画像処理装置は、医用画像診断装置にて収集されたX線収集画像を取得し、取得したX線収集画像に基づいて、三次元画像を生成する。例えば、医用画像処理装置は、ネットワークを介してX線診断装置やX線CT装置などの医用画像診断装置に接続され、医用画像診断装置から受信することで、X線収集画像を取得すればよい。
【0084】
なお、単体の医用画像処理装置として実現される場合、医用画像処理装置は、上述した実施形態において説明した三次元再構成部24及び三次元画像合成部26を備える。A/D変換部21及びサブトラクション部23については、医用画像診断装置から受信するデータが、アナログ信号であるのか、ディジタル信号に変換されたX線収集画像であるのか、あるいは、サブトラクションが行われたX線プロジェクション画像であるのか、など、データの形式に応じて、適宜、備えられればよい。また、二次元画像記憶部22及び三次元画像記憶部25については、記憶装置を内蔵するか、あるいは、外付けにするか、など、運用の形態に応じて、適宜、備えられればよい。また、モニタ28についても、表示装置を内蔵するか、あるいは、外付けにするか、など、運用の形態に応じて、適宜、備えられればよい。
【0085】
[コンボリューションフィルター]
また、第3の実施形態においては、事前処理を施したデータを元に「第一段階の再構成」を行い、事前処理を施していないデータを元に「第二段階の再構成」を行っている。事前処理が「スムース」なコンボリューションフィルターを適用するのと等価な処理となっているため、「第一段階の再構成」及び「第二段階の再構成」それぞれに適用するコンボリューションフィルターは、必ずしも変えなければならないものではなく、例えば、同じコンボリューションフィルターを用いても良い。
【0086】
[ステント以外の注目領域]
また、上記実施形態においては、インターベンション治療においてステントを鮮明に描出する例を挙げて説明したが、医用画像処理装置が適用されるケースは、これに限られるものではない。広い領域の描出と注目領域の鮮明な描出とを同時に実現したい場合には同様に適用することができ、例えば、耳の骨のように構造が複雑な部位を注目領域として鮮明に描出したい場合などにも同様に適用することができる。
【0087】
[数値例]
その他、特記する場合を除き、各種数値(「1,024」、「512」など)も一例に過ぎず、運用の形態などに応じて任意に変更することが可能である。
【0088】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の医用画像処理装置によれば、ステント及び血管の両方を明瞭に観察することが可能になる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 X線診断装置
100 画像処理装置
20 制御部
21 A/D変換部
22 二次元画像記憶部
23 サブトラクション部
24 三次元再構成部
25 三次元画像記憶部
26 三次元画像合成部
27 三次元画像表示部
28 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線収集画像に基づいて、第1再構成フィルターの適用により第1再構成画像を生成する第1再構成部と、
前記X線収集画像に基づいて、前記第1再構成フィルターに比較して高周波強調効果の高い第2再構成フィルターの適用により第2再構成画像を生成する第2再構成部と、
前記第1再構成画像と前記第2再構成画像とを合成する画像合成部と
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記X線収集画像は、血管及び該血管に留置されたステントが撮影されたものであり、
前記ステントは、該ステントの両端にステントマーカーを有するものであって、
前記第1再構成画像に対する閾値処理により、前記ステントマーカーを特定する特定部と、
前記第1再構成画像内で前記ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する同定部とを更に備え、
前記第2再構成部は、前記X線収集画像のうち、前記注目領域について前記第2再構成フィルターを適用し、前記注目領域について前記第2再構成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記X線収集画像は、血管及び該血管に留置されたステントが撮影されたものであり、
前記ステントは、該ステントの両端にステントマーカーを有するものであって、
前記第1再構成画像に対する閾値処理により、前記ステントマーカーを特定する特定部と、
前記第2再構成画像内で前記ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する同定部とを更に備え、
前記画像合成部は、前記第1再構成画像と、前記第2再構成画像内で同定された前記注目領域とを合成することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記X線収集画像は、造影剤注入前の注入前画像、及び、造影剤注入後の注入後画像であり、
前記注入後画像と前記注入前画像との差分画像を生成する差分画像生成部を更に備え、
前記第1再構成部は、前記差分画像に対して前記第1再構成フィルターを適用することで、前記第1再構成画像を生成し、
前記第2再構成部は、前記注入前画像に対して前記第2再構成フィルターを適用することで前記第2再構成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記X線収集画像は、血管及び該血管に留置されたステントが撮影されたものであり、
前記ステントは、該ステントの両端にステントマーカーを有するものであって、
前記注入前画像に対して前記第1再構成フィルターを適用することで第3再構成画像を生成し、該第3再構成画像に対する閾値処理により、前記ステントマーカーを特定する特定部と、
前記第3再構成画像内で前記ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する同定部とを更に備え、
前記第2再構成部は、前記注入前画像のうち、前記注目領域について前記第2再構成フィルターを適用し、前記注目領域について前記第2再構成画像を生成することを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記X線収集画像は、血管及び該血管に留置されたステントが撮影されたものであり、
前記ステントは、該ステントの両端にステントマーカーを有するものであって、
前記注入前画像に対して前記第1再構成フィルターを適用することで第3再構成画像を生成し、該第3再構成画像に対する閾値処理により、前記ステントマーカーを特定する特定部と、
前記第2再構成画像内で前記ステントマーカーにより囲まれる注目領域を同定する同定部とを更に備え、
前記画像合成部は、前記第1再構成画像と、前記第2再構成画像内で同定された前記注目領域とを合成することを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第1再構成部は、前処理として前記X線収集画像に縮小処理又はローパスフィルター処理を施し、縮小処理又はローパスフィルター処理が施された該X線収集画像に対して再構成フィルターを適用することで、前記第1再構成画像を生成することを特徴とする請求項1又は4に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記第1再構成画像を形成する1ボクセルの1辺の長さは、前記第2再構成画像を形成する1ボクセルの1辺の長さの1.5倍以上であることを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記画像合成部は、前記第1再構成画像と前記第2再構成画像との間における濃度を更に補正することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画像合成部は、前記第2再構成画像における小領域内の画素値平均と、前記第1再構成画像における小領域であって前記第2再構成画像における小領域に対応する小領域内の画素値平均とを用いて補正することを特徴とする請求項9に記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−96023(P2012−96023A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222903(P2011−222903)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】