説明

医用画像表示装置

【課題】呼吸動や拍動の影響による関心部位の移動軌跡を定量的且つ視覚的に提供すること。
【解決手段】医用画像表示装置は、被検体の生理的運動に関する複数の位相に係る複数のボリュームデータファイルを記憶する記憶部113と、ボリュームデータファイルを用いて位相ごとに複数の関心点に関する複数の3次元位置を特定する位置特定部125と、特定された複数の3次元位置に基づいて複数の関心点にそれぞれ対応する生理的運動に伴う複数の移動軌跡に関する3次元マップと2次元マップとを発生するマップ発生部127と、3次元マップと2次元マップとを表示する表示部117とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医用画像装置は例えば超音波診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴映像装置(MRI)では画像の基礎となるデータを繰り返し収集することが可能である。ここではX線コンピュータ断層撮影装置として説明する。繰り返し収集された投影データから、連続する複数のボリュームデータファイルをコーンビーム再構成法などで再構成し、これらボリュームデータファイルからMPR(断面変化)処理等により生成した断面画像を動画として表示することができる。
【0003】
しかし、呼吸動や拍動等によって観察したい領域が断面から外れてしまいうことがあった。例えば呼吸動による大動脈と腫瘍の癒着観察を診断目的としているとき、呼吸動による腫瘍や大動脈の3次元的な移動により画像から癒着箇所を確認できなくなってしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−282945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、呼吸動や拍動の影響による関心部位の移動軌跡を定量的且つ視覚的に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、被検体の生理的運動に関する複数の位相に係る複数のボリュームデータファイルを記憶する記憶部と、前記ボリュームデータファイルを用いて前記位相ごとに複数の関心点に関する複数の3次元位置を特定する位置特定部と、前記特定された複数の3次元位置に基づいて、前記複数の関心点にそれぞれ対応する前記生理的運動に伴う複数の移動軌跡に関する3次元マップと2次元マップとを発生するマップ発生部と、前記3次元マップと前記2次元マップとを表示する表示部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る医用画像表示装置を含むX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【図2】図1のコーンビーム再構成処理部により発生される一連のボリュームデータファイルを示す図である。
【図3】図1の断面画像発生部により発生される一連のMPR画像を示す図である。
【図4】図1の再生コントローラによる交互再生の説明図である。
【図5】図1の断面位置決定部による断面手動設定モードの説明図である。
【図6】図1の断面位置決定部による断面位置の補間処理の説明図である。
【図7】図1の断面位置決定部による第1の断面自動設定モードの説明図である。
【図8】図1の断面位置決定部による第2の断面自動設定モードの説明図である。
【図9】図8の第2の断面自動設定モードの補足説明図である。
【図10】図1の断面位置決定部による第3の断面自動設定モードの説明図である。
【図11】図10の第3の断面自動設定モードの補足説明図である。
【図12】図3の第3の断面自動設定モードの下で生成された断面画像に対する第1の画像処理を示す図である。
【図13】図3の第3の断面自動設定モードの下で生成された断面画像に対する第2の画像処理を示す図である。
【図14】本実施形態による効果を示す図である。
【図15】本実施形態による効果を従来と対比して示す図である。
【図16】図1の移動軌跡作図処理部及び距離計測部による移動軌跡及び距離等の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像表示装置を説明する。なお、医用画像表示装置は、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴映像装置(MRI)、超音波診断装置、X線診断装置などの被検体の3次元領域に関するデータを連続的に繰り返し収集可能な医用画像発生装置に適合する。本実施形態に係わる医用画像表示装置は、これら医用画像発生装置に組み込まれ、又は単独で機能する。単独で機能するとき、本実施形態に係わる医用画像表示装置は、LANなどの電気的通信回線に接続され、電気的通信回線を介して病院内又は外部の医用画像補間通信システム(PACS)から表示対象データを受信する。ここでは、本実施形態に係わる医用画像表示装置は、X線コンピュータ断層撮影装置に組み込まれたものとして説明する。
【0009】
図1に、本実施形態に係る医用画像表示装置を装備したX線コンピュータ断層撮影装置の構成をブロック図により示している。架台部100は、回転自在に支持される回転フレーム102を有する。回転フレーム102の回転中心軸をZ軸、水平方向をX軸、垂直方向をY軸として説明する。架台駆動部107はホストコントローラ110の制御の下で回転フレーム102を回転駆動するための駆動信号を発生する。回転フレーム102にはコーンビーム形X線管101と2次元検出器(エリア検出器とも呼ばれる)103とがZ軸を中心とした撮影領域Sを挟んで対向して搭載される。撮影領域Sには図示しないが寝台の天板に載置された被検体が配置される。被検体はその体軸がZ軸に略一致するように載置される。高電圧発生器109はホストコントローラ110の制御の下でX線管101に管電流を供給し、また高電圧を印加する。それによりX線管101の焦点Fから四角錐形のX線が発生される。2次元検出器103は、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列はZ軸方向に並列される。各X線検出素子列はX線焦点Fを中心として円弧状に配列される。2次元検出器103には一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集装置104が接続される。
【0010】
データ収集装置104には、2次元検出器103の各チャンネルの電流信号を電圧に変換するI−V変換器と、この電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器と、この積分器の出力信号を増幅するアンプと、このプリアンプの出力信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル・コンバータとが、チャンネルごとに設けられている。
【0011】
データ収集装置104の出力には光学的又は磁気的要素を媒介させる非接触データ伝送装置105を介して前処理装置106が接続される。前処理装置106は、データ収集装置104で検出されたデータに対して、チャンネル間の感度不均一を補正し、またX線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正する等の前処理を実行する。前処理装置106で前処理を受けたデータ(投影データ)は投影データ記憶部112に記憶される。
【0012】
本実施形態では、ホストコントローラ110の制御のもと、いわゆる4次元ダイナミックスキャンが実行される。4次元ダイナミックスキャンでは、予め指定された撮影期間中にわたって回転フレーム102がX線管101と2次元検出器103とともに被検体の周囲を連続的に回転される。撮影期間中にはX線管101からX線が連続的又はパルス的に発生され、2次元検出器103ではX線検出が繰り返される。なおX線管101が360°又は(180°+ファン角)を回転する周期をスキャン周期(第1の周期)と称する。この360°又は(180°+ファン角)の角度範囲分の投影データから単一のボリュームデータファイルが再構成される。ファン角とはX線焦点を中心としたXY面内でのX線の拡がり角である。
【0013】
コーンビーム再構成処理部116は、ホストコントローラ110の制御のもとで投影データ記憶部112に記憶された投影データに基づいて、例えばコーンビーム再構成法によりCT値分布を3次元座標系で表現してなる複数のボリュームデータファイルを再構成する。上述の通り、各ボリュームデータファイルは、360°又は(180°+ファン角)の角度範囲分の投影データから再構成される。複数のボリュームデータファイルは、それぞれの再構成に用いる投影データの角度範囲が例えば30°ずつシフトされる。それにより、複数のボリュームデータファイルそれぞれが対応する時刻、典型的にはそれぞれの再構成に用いた投影データの角度範囲の略中心角度の投影データの収集時刻は30°の回転に要する時間ずつシフトする。つまり、図2に示すように、一連を構成する複数のボリュームデータファイルはスキャン周期(第1の周期)より短い時間間隔(第2の周期)の時間分解能で再構成される。一連のボリュームデータファイルはボリュームデータファイル記憶部113に記憶される。
【0014】
断面画像発生部115は、図3に示すように、表示部(ディスプレイ)117への表示に適合するいわゆるMPR処理(断面変換処理)又はCPR処理(曲断面変換処理)により、一連を構成する複数のボリュームデータファイルからそれぞれ対応する一連を構成する複数の断面画像を発生する。発生された複数の断面画像のデータはボリュームデータファイル記憶部113に記憶される。各断面位置及び断面厚は、複数のボリュームデータファイルに対して個々に断面位置決定部125により決定される。断面位置及び断面厚の決定に関する詳細は後述する。
【0015】
再生コントローラ118は、ボリュームデータファイル記憶部113から一連の断面画像のデータの読み出しを制御することにより、ボリュームデータファイル記憶部113に記憶された一連の断面画像を動画として表示部117に表示させる。
【0016】
この再生表示は被検体の周期的な生理運動に関連付けられる。周期的な生理運動は、典型的には呼吸運動又は心拍運動である。本実施形態では、呼吸運動と心拍運動とのいずれにも適用することができる。ここでは呼吸運動として説明する。被検体の呼吸運動は、例えば呼吸センサ120により測定される。周知の通り、呼吸動作は、横隔膜の往復運動に伴なう肺野の拡張収縮である。肺野の拡張収縮に伴って腹部が前後に往復移動をする。呼吸センサ120は、例えばレーザ測長技術を用いて被検体の腹部表面と外部固定点(レーザ照射位置)との間の距離を呼吸インデックスとして繰り返し計測する。この距離の時間的変化は、被検体の呼吸の状態(呼吸位相)の変化を反映している。最大値/最小値特定部123は、撮影期間中の呼吸インデックスの変化から、最大値と最小値とを特定する。例えば呼吸インデックスが最小値を示す時刻は呼気ボトム時刻を表し、呼吸インデックスが最大値を示す時刻は吸気ピーク時刻を表している。呼気ボトム時刻から吸気ピーク時刻までの期間は、呼吸周期の略半周期を表している。
【0017】
再生コントローラ118は、ボリュームデータファイル記憶部113に記憶されている一連の断面画像から、呼気ボトム時刻から吸気ピーク時刻呼吸までの期間に対応する複数の断面画像を再生対象画像として特定する。再生コントローラ118は、再生対象画像として特定した一連の断面画像を繰り返し再生する。特に再生コントローラ118は、図4に示すように、一連の断面画像を、それぞれが対応する時刻の順番に沿って順方向に実時間再生し(順方向再生)、それに続いて、それぞれが対応する時刻の順番とは逆行する時間経過で逆方向に実時間再生され(逆方向再生)、このように順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される。つまり再生方向が交互に転換される。この呼吸の略半周期に限定して交互再生される動画は、1呼吸期間の動画の繰り返し再生に近似的である。略半周期の期間に限定した交互再生では、交互再生の境界フレーム間で呼吸位相がほぼ同一になり、従って交互再生の境界フレーム間では当然にして組織分布の画面上での変位はほとんど生じない。それによりその動きの視覚上の連続性は維持され、例えば腫瘍に注目して動画を観察しているとき、観察者は大きく視線を移動する必要がなく好適である。それと共に撮影期間を半呼吸期間又はそれを若干超える期間に設定しても、その再生は、1呼吸期間又はそれを超える期間にわたって得た動画とほぼ同等の動きを再現することができる。撮影期間の短縮は被曝低減に最も効果的である。
【0018】
上述した断面位置決定部125は、断面決定に関して複数のモードを装備している。複数の断面決定モードの中の何れかのモードが操作者による図示しない入力デバイスを介した選択指示に従って任意に選択されることができる。
【0019】
図5は断面手動決定モードの説明図である。断面手動決定モードの起動下では断面画像発生部115は一連のボリュームデータファイルから離散的に幾つかのボリュームデータファイルを対象としてXY面に平行な共通する断面候補を設定する。初期的な断面候補は、例えばXYZ座標系の原点を通るXY面設定される。対象とされるボリュームデータファイルとしては、例えば一連のボリュームデータファイルの両端と中央の3つのボリュームデータファイルが初期的に選択される。これら3つのボリュームデータファイルに対して同じ位置の初期的な候補断面に関する断面画像が断面画像発生部115により発生される。候補断面に関する3つの断面画像は表示部117に同時に又は択一的に表示される。操作者は図示しない入力デバイスを介して候補断面をZ軸に沿って移動させながら関心部位の像が最も好適に映る断面を探索し、その断面画像上に当該関心部位の例えばほぼ中心点(関心点又は指定点という)を指定する。3つのボリュームデータファイル全てに対して個々に断面を探索し、関心点を指定する。断面位置決定部125は、手動指定の対象とされる3つのボリュームデータファイル以外のそれらの間の他のボリュームデータファイルの関心点を、図6に示すように、時間軸上で当該補間対象のボリュームデータファイルを挟む2つのボリュームデータファイル上で指定した2つの指定点を使って線形補間により推定する。推定される関心点は2つの指定点を結ぶ3次元座標系での直線上であって、補間対象のボリュームデータファイルの時刻に対する手動指定されたボリュームデータファイルの時刻との間の時間幅Δt1、Δt2により線形補間により計算される点に決定される。推定した指定点の座標は後から手動で変更可能である。
【0020】
複数のボリュームデータファイルそれぞれ対して指定され又は補間された関心点を含み、かつXY面に平行な断面が、ボリュームデータファイルそれぞれ対して決定される。
【0021】
断面画像発生部115により、設定された断面に従って複数のボリュームデータファイルにそれぞれ対応する複数の断面画像が生成される。複数の断面画像はボリュームデータファイル記憶部113に記憶される。ボリュームデータファイル記憶部113から表示部117への再生コントローラ118による読み出し制御により、上述した通り動画として順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される。再生コントローラ118による読み出し制御又は表示部117内のフレームメモリに対する書き込み制御により、各断面画像上の関心点が表示部117のディスプレイ上の特定位置、典型的には中心位置に配置されるように断面画像の表示位置が個別にシフトされる。
【0022】
図14、図15に例示するように、動画再生に際して常に関心部位を含む断面画像が表示され、しかも関心部位の像が画面の特定位置に固定される。それにより腫瘍の癒着などの診断に効果的である。
【0023】
図7は第1の断面自動設定モードの説明図である。第1の断面自動設定モードの起動下では断面画像発生部115は一連のボリュームデータファイルから特定の単一のボリュームデータファイルを対象として例えばXY面に平行な原点を通る初期的な断面候補に関する断面画像を発生する。特定の単一のボリュームデータファイルとしては典型的には一連のボリュームデータファイルの中の中央時刻に最も近いボリュームデータファイルである。操作者は図示しない入力デバイスを介して候補断面をZ軸に沿って移動させながら関心部位の像が最も好適に映る断面を探索し、その断面画像上に当該関心部位内の点を指定する。
【0024】
断面位置決定部125は、指定された関心部位領域内の例えば中央ボクセル値又は平均ボクセル値を用いて、指定された関心部位領域を含む所定の大きさに制限された探索範囲内を対象として他のボリュームデータファイル各々から例えば閾値処理により関心部位領域を抽出する。断面位置決定部125は、抽出された関心部位領域各々の例えば重心を、各ボリュームデータファイルの関心点として設定する。
【0025】
関心点が設定された以後の断面決定及び動画再生処理は上述した手動設定モードで説明した処理に等価である。つまり、複数のボリュームデータファイルそれぞれ対して設定された関心点を含み、かつXY面に平行な断面が、ボリュームデータファイルそれぞれ対して決定され、決定された断面に従って複数のボリュームデータファイルにそれぞれ対応する複数の断面画像が生成され、再生コントローラ118による読み出し制御のもとで順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される。
【0026】
この第1の断面自動設定モードは手動設定モードと同様に関心部位が腫瘍等の一塊形状であるときに好適である。
【0027】
図8は第2の断面自動設定モードの説明図である。第2の断面自動設定モードは対象が気管支や血管等の管状部位であるときに好適である。断面位置決定部125により一連のボリュームデータファイル各々から閾値処理により例えば血管領域が抽出される。抽出された血管領域に対して図9に示すように狭窄等を含む関心区間が例えばその両端の2点を操作者が指定することにより設定される。断面位置決定部125により、指定された2点を通る、抽出された血管領域の血管芯線が特定される。指定された2点間の血管芯線を含むように、断面位置、XYZ各軸に対する断面のオブリーク角、さらに最小の断面厚が断面位置決定部125により複数のボリュームデータファイルそれぞれについて個々に決定される。操作者が1点指定の場合、主流の起始部へ向かって自動で芯線を特定できる。
【0028】
断面決定以後の断面画像発生処理及び動画再生処理は上述した手動設定モードで説明した処理に略等価である。本モードでは、断面に垂直な断面厚方向にボクセル値は加算されることにより断面画像が発生される。複数のボリュームデータファイルそれぞれ対して決定された断面に従って複数のボリュームデータファイルにそれぞれ対応する複数の断面画像が生成され、再生コントローラ118による読み出し制御のもとで順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される。
【0029】
この第2の断面自動設定モードでは、心臓の冠状動脈などの複雑に屈曲した血管等の関心区間全体を常に画面上で視認することができる。
【0030】
図10は第3の断面自動設定モードの説明図である。第3の断面自動設定モードもその対象が気管支や血管等の管状部位であるときに好適である。断面位置決定部125により一連のボリュームデータファイル各々から閾値処理により例えば血管領域が抽出される。抽出された血管領域に対して図11に示すように狭窄等を含む関心区間がその両端の2点を操作者が指定することにより設定される。なお、血管の例えば末梢側の1点を操作者が指定し、血管上部まで自動的にトレースし、血管末梢と血管上部との間に関心区間を設定するようにしても良い。
【0031】
断面位置決定部125により、指定された2点を通る、抽出された血管領域の血管芯線が特定される。指定された2点間の血管芯線のXY面への投影像に沿って、XY面に垂直な断面を、XY面に垂直な状態を維持したままで湾曲する。それにより複数のボリュームデータファイルそれぞれについて個々に断面(湾曲断面)決定される。
【0032】
断面決定以後の断面画像発生処理及び動画再生処理は上述した手動設定モードで説明した処理に略等価である。複数のボリュームデータファイルそれぞれ対して決定された湾曲断面に従って複数のボリュームデータファイルにそれぞれ対応する複数の断面画像が生成され、再生コントローラ118による読み出し制御のもとで順方向再生と逆方向再生とが交互に繰り返される。
【0033】
この第3の断面自動設定モードでは、第2の断面自動設定モードのそれよりもより詳細な状態で複雑に屈曲した血管等の関心区間全体を常に画面上で視認することができる。
【0034】
なお、第2、第3の断面自動設定モードで発生される断面画像上で複雑に走行する血管の像が図12、図13に示すように直線的になるように断面画像発生部115により変形するようにしてもよい。
【0035】
なお、断面に限らず、仮想内視鏡モードも呼吸動等によって設定した視点が気管支外等へズレてしまうのを視点を設定することで可能とすることにも応用出来る。
【0036】
移動軌跡作図処理部127は、断面位置決定部125で断面決定時に用いた関心部位に関する関心点と、それと同じ又は他の関心部位に関する他の関心点それぞれに関する3次元位置、つまりxyz座標を全呼吸位相にわたって特定する。他の関心点は、操作者による手動又は領域抽出処理を伴って半自動により全呼吸位相にわたる複数のボリュームデータファイルから特定される。例えば、複数の関心点が、腫瘍領域、大動脈領域、横隔膜領域、肋骨領域それぞれの領域重心、中心又は特定構造を示す位置に設定される。
【0037】
移動軌跡作図処理部127は、全呼吸位相にわたって特定された複数の関心点にそれぞれ対応する3次元位置を用いて、関心点ごとに個々に呼吸運動に伴う移動軌跡を示す3次元マップと3種の2次元マップとを発生する(図16参照)。3次元マップはxyzの直交3軸座標系上に全呼吸位相にわたって全ての関心点をプロットすることにより生成される。関心点の表示態様、例えばカラーが関心部位毎に相違される。また関心点の移動方向が分かるように吸気から呼気に向かう方向を示す→等のマーカが関心点ごとに並記される。なお、表示部117への表示に際しては3次元マップは、操作者が自由に指定及び移動できる視点から平行投影処理により疑似3次元化される。
【0038】
3種の2次元マップとして、xyの直交2軸座標系上に全呼吸位相にわたって全ての関心点をプロットすることにより生成されるアキシャルマップと、xzの直交2軸座標系上に全呼吸位相にわたって全ての関心点をプロットすることにより生成されるコロナルマップと、yzの直交2軸座標系上に全呼吸位相にわたって全ての関心点をプロットすることにより生成されるサジタルマップとが生成される。
【0039】
表示に際しては、ホストコントローラ110の制御のもとで、3次元マップが3種の2次元マップ、又は操作者により任意に指定された1又は2つの2次元マップとともに同一画面に表示される。表示方法としては、3次元マップと2次元マップとが静止画として表示され、または呼吸位相の進行に従って表示点が移動する動画のように表示するようにしてもよい。
【0040】
複数の関心点の移動軌跡を表示することで、関心点間の移動の差異、例えば大動脈の移動量に対し腫瘍の移動量が大幅に大きいこと等を視覚的に把握することができる。
【0041】
距離計測部129は、複数の位相にわたる関心点の移動距離を関心点毎に計測する。この距離は両端位置間の直線的な距離であっても良いし、移動経路に沿った実際に移動する距離であってもよい。各関心点の移動距離は図16に示すように3次元マップ及び2次元マップとともに表示される。
【0042】
また距離計測部129は、3次元マップ又は2次元マップ上で操作者が任意に指定した2つの関心点間の距離を呼吸位相ごとに計測する。距離計測部129は、複数の呼吸位相のなかで最大距離、最小距離、変化率などの指標を特定又は計算し、図16に示すように3次元マップ及び2次元マップとともに表示する。また距離計測部129は、操作者により指定された特定位相の関心点間距離を図16に示すように3次元マップ及び2次元マップとともに表示する。
【0043】
3以上の関心点を計算対象として指定したとき、距離計測部129は、3以上の関心点で包囲された領域の面積又は体積を呼吸位相ごとに計算する。距離計測部129は、複数の呼吸位相のなかで最大面積、最大体積、それらの変化率などの指標を計算し、3次元マップ及び2次元マップとともに表示する。
【0044】
このように関心点の移動量を表示したり、面積や体積などから形状変化を表すことも出来る。さらに関心点の指定により、気管支の収縮度や拡張度、壁厚などの意義のある計測が可能である。もちろん呼吸動によって計測位置が異ならないように収縮・拡張に合わせて計測位置も追従して計測するものとする。
【0045】
このように関心領域に対し呼吸位相毎の動きの位置や量を自動的に定量解析しグラフ化可能である。動きによる影響があっても関心領域を中心に表示することが可能となり,関心領域が呼吸動や拍動によって どのような影響があるかを確認し、さらに定量解析することが出来る。これら情報は放射線治療計画用に定量化した動きの量をデータ変換し、その計画に活用可能である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
100…架台部、101…X線管、102…回転フレーム、103…2次元検出器、104…データ収集装置、106…前処理装置、107…架台駆動部、109…高電圧発生器、110…ホストコントローラ、112…投影データ記憶部、113…ボリュームデータファイル記憶部、115…断面画像発生部、116…コーンビーム再構成処理部、117…表示部(ディスプレイ)、118…再生コントローラ、120…呼吸センサ、121…呼吸波形記憶部、123…最大値/最小値特定部、125…断面位置決定部、127…移動軌跡作図処理部、129…距離計測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生理的運動に関する複数の位相に係る複数のボリュームデータファイルを記憶する記憶部と、
前記ボリュームデータファイルを用いて前記位相ごとに複数の関心点に関する複数の3次元位置を特定する位置特定部と、
前記特定された複数の3次元位置に基づいて、前記複数の関心点にそれぞれ対応する前記生理的運動に伴う複数の移動軌跡に関する3次元マップと2次元マップとを発生するマップ発生部と、
前記3次元マップと前記2次元マップとを表示する表示部とを具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
前記特定された複数の3次元位置に基づいて前記関心点間の距離を前記位相ごとに計測する距離計測部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記距離計測部は、前記位相ごとに計測した前記関心点間の距離の最大距離と最小距離との少なくとも一方を特定することを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記関心点間の距離は、前記3次元マップと前記2次元マップとともに前記表示部に表示されることを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記複数の位相のうち操作者により指定された特定位相に関する前記関心点間の距離が、前記3次元マップと前記2次元マップとともに前記表示部に表示されることを特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記特定された複数の3次元位置に基づいて前記複数の位相にわたる前記関心点の移動距離を計測する距離計測部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−85969(P2012−85969A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237804(P2010−237804)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】