説明

医用診断装置

【課題】医用データのアクセスにおける応答速度を向上する。
【解決手段】スキャンガントリ1、ガントリ制御部21、前処理部22および画像再構成部23は、医用診断用の医用データとして断層画像データを取得する。RAID制御部29は、医用データを複数のデータブロックに分割し、保存部27,28のそれぞれに複数のデータブロックのうちの異なるデータブロックを並行的に書き込みながら複数のデータブロックのそれぞれを保存部27,28のいずれかに書き込み、複数のデータブロックの全てを保存部27,28のいずれかに書き込み終えた後の保存部27,28へのアクセスがない期間に、保存部27,28に書き込まれた複数のデータブロックをそのデータブロックが書き込まれていない他の保存部27,28にそれぞれ書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取得した医用データを複数の保存媒体にミラーリング保存する医用診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RAID(redundant arrays of inexpensive disks)レベル1(RAID 1)のミラーリングは、多重化した保存媒体に全く同一のデータを保存することで、データ保存における信頼性を向上する手法である。本手法を実施していれば、片方の保存媒体に保存されたデータが壊れて読み出せなくなった場合でも、他方の保存媒体からデータを読み出すことができ、データ消失を防ぐことができる。
【0003】
医用診断装置においても、医用データの保存における信頼性の向上のためにこのミラーリングが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−102721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的にRAID 1では、複数の保存媒体のうちの1つがメイン媒体に、またその他がバックアップ媒体に設定される。そして保存対象となるデータは、まずメイン媒体に書き込まれたのち、バックアップ媒体に書き込まれる。そしてデータの読み出しは、メイン媒体が正常である限りはメイン媒体からのみ行われる。
【0006】
このため、データの書き込みは、1つの保存媒体の応答速度でしか行うことができなかった。またデータの読み出しについても、同様に1つの保存媒体の応答速度でしか行うことができなかった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、医用データのアクセスにおける応答速度を向上できる医用診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による医用診断装置は、複数の保存媒体のそれぞれに並行的にアクセス可能な医用診断装置に、医用診断用の医用データを取得する取得手段と、前記医用データを複数のデータブロックに分割し、前記複数の保存媒体のそれぞれに前記複数のデータブロックのうちの異なるデータブロックを並行的に書き込みながら前記複数のデータブロックのそれぞれを前記複数の保存媒体のいずれかに書き込み、前記複数のデータブロックの全てを前記複数の保存媒体のいずれかに書き込み終えた後の前記保存媒体へのアクセスがない期間に、前記複数の保存媒体に書き込まれた前記複数のデータブロックをそのデータブロックが書き込まれていない他の前記保存媒体にそれぞれ書き込む書き込み手段とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医用データのアクセスにおける応答速度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置の主要部の構成を示す図。
【図2】断層画像データのミラーリング保存のためのシーケンスを示す図。
【図3】断層画像データの読み出しのためのシーケンスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置(以下、CT装置と称する)100の主要部の構成を示す図である。このCT装置100は、スキャンガントリ1とコンピュータ装置2とから構成される。スキャンガントリ1は、被検体に関する投影データを収集するための構成要素である。スキャンガントリ1で収集された投影データは、コンピュータ装置2での画像再構成等の処理に供される。
【0013】
スキャンガントリ1は、寝台10、X線管装置11、X線検出器12、架台回転駆動部13、高電圧発生部14、寝台駆動部15およびデータ収集部16を含む。
【0014】
スキャンガントリ1には、X線管装置11およびX線検出器12は、図示しない円環状の回転架台に対向関係で搭載されている。回転架台は、架台回転駆動部13により駆動されて回転する。このとき、X線管装置11とX線検出器12とが、同一の回転軸RAの軸周りを回転する。スキャンガントリ1は、X線管装置11およびX線検出器12の回転軌道の内側に、空洞(撮影口)を形成している。
【0015】
X線管装置11は、X線管11aおよびX線フィルタ11bを含む。X線管11aは、高電圧発生部14から電力供給を受けて、X線検出器12に向けてX線を放射する。X線フィルタ11bは、被曝低減のために低エネルギー成分を除去する。高電圧発生部14は、高電圧変圧器、フィラメント電流発生器および整流器を備える。この他に高電圧発生部14は、管電圧およびフィラメント電流を任意にまたは段階的に調整するために、管電圧切換器およびフィラメント電流切換器等を備えている。
【0016】
X線検出器12は、複数のX線検出素子列を回転軸RAに沿う方向に配列して構成される。X線検出器12は、入射するX線を検出して、その強度に応じた電気信号を出力する。
【0017】
被検体は、寝台10の天板10aに載置される。寝台10は、寝台駆動部15により駆動されて、天板10aをその長手方向(図1中の左右方向)に移動する。通常、この長手方向が回転軸RAと平行になるように寝台10が設置される。また通常、被検体は、その体軸が回転軸RAに沿うように天板10aに載置される。かくして被検体は、天板10aの移動に伴ってスキャンガントリ1の空洞内に挿入される。
【0018】
データ収集部16は、X線検出器12の出力を収集し、コンピュータ装置2に供給する。なお、X線検出器12とデータ収集部16との間には、スリップリングや光通信などを用いたインタフェースが介挿される。これによりデータ収集部16は、回転架台を連続回転させながら、X線検出器12の出力を収集できる。
【0019】
コンピュータ装置2は、ガントリ制御部21、前処理部22、画像再構成部23、一時記憶部24、表示部25、操作卓26、第1の保存部27、第2の保存部28およびRAID制御部29を備える。これらのガントリ制御部21、前処理部22、画像再構成部23、一時記憶部24、表示部25、操作卓26、第1の保存部27、第2の保存部28およびRAID制御部29は、データ/制御バス30を介して互いに接続されている。
【0020】
ガントリ制御部21は、診断に必要な投影データが得られるようなスキャンが行われるようにスキャンガントリ1の動作を制御する。
【0021】
スキャンガントリ1からコンピュータ装置2に供給されたデータは、前処理部22を介して投影データとして画像再構成部23に供給される。画像再構成部23は、上記の投影データに基づいて断層画像データを再構成する。
【0022】
一時記憶部24は、断層画像データを一時的に記憶する。一時記憶部24としては、例えばRAMが利用できる。
【0023】
表示部25は、一時記憶部24に記憶された断層画像データに基づいて断層画像を生成する。
【0024】
操作卓26は、操作者が例えばスキャン条件などの様々な情報や各種指示を入力するために設けられている。操作卓26は、操作画面を備える。
【0025】
第1および第2の保存部27,28は、断層画像データをミラーリング保存する。第1および第2の保存部27,28は、例えばハードディスク装置などがそれぞれ利用できる。
【0026】
RAID制御部29は、同一の断層画像データを第1および第2の保存部27,28にミラーリング保存するための後述する書き込み処理を行う。またRAID制御部29は、第1および第2の保存部27,28にミラーリング保存されている断層画像データを読み出すための後述する読み出し処理を行う。
【0027】
次に以上のように構成されたCT装置100の動作について説明する。
【0028】
CT装置100では、既存の同種の装置と同様な動作によって断層画像データを再構成することができる。このとき、最終的に画像再構成部23により再構成された断層画像データは、一時記憶部24に一時的に記憶される。そして断層画像データは、その一部または全てが必要に応じて第1および第2の保存部27,28にミラーリング保存される。
【0029】
図2は断層画像データのミラーリング保存のためのシーケンスを示す図である。
【0030】
RAID制御部29は、画像再構成部23により再構成されて一時記憶部24に記憶されている断層画像データを複数のデータブロックに分割する。このとき、断層画像データの先頭から一定サイズ毎に分割しても良いし、一定個数に均等に分割しても良い。ここでは図2に示すように、ブロックA〜Eの5つのデータブロックに分割することとする。
【0031】
そしてRAID制御部29は、2つずつのデータブロックを第1および第2の保存部27,28に同時に書き込んで行く。具体的には例えばRAID制御部29は、まずブロックAおよびブロックBを第1および第2の保存部27,28に同時に書き込む。次にRAID制御部29は、ブロックCおよびブロックDを第1および第2の保存部27,28に同時に書き込む。そして最後にRAID制御部29は、残りのブロックEを第1の保存部28に書き込む。これにより、ブロックA,C,Eが第1の保存部28に保存され、ブロックB,Dが第2の保存部28に保存される。つまり、全てのブロックが第1および第2の保存部27,28のいずれかに保存される。以下、この状態を暫定保存状態と称する。
【0032】
こののちにRAID制御部29は、必要に応じて他の断層画像データの書き込みや読み出しのために第1および第2の保存部27,28にアクセスすることができる。そして、第1および第2の保存部27,28へのアクセスの必要が全く必要なくなったならば、あるいは第1および第2の保存部27,28へのアクセスの頻度が一定レベル以下となったならば、RAID制御部29は第1および第2の保存部27,28の一方のみに保存されているブロックを他方にコピーする。具体的には例えばRAID制御部29は、ブロックAを第1の保存部27から第2の保存部28にコピーし、ブロックBを第2の保存部28から第1の保存部27にコピーし、ブロックCを第1の保存部27から第2の保存部28にコピーし、ブロックDを第2の保存部28から第1の保存部27にコピーし、ブロックEを第1の保存部27から第2の保存部28にコピーする。
【0033】
かくしてこのようなコピーが完了したならば、全てのブロックが第1および第2の保存部27,28の双方に保存される。以下、この状態をミラーリング保存状態と称する。
【0034】
図3は断層画像データの読み出しのためのシーケンスを示す図である。
【0035】
RAID制御部29は、第1および第2の保存部27,28に保存された断層画像データを読み出す場合には、2つずつのデータブロックを第1および第2の保存部27,28からそれぞれ同時に読み出して行く。具体的にはRAID制御部29は、まずブロックAおよびブロックBを第1および第2の保存部27,28から同時に読み出す。次にRAID制御部29は、ブロックCおよびブロックDを第1および第2の保存部27,28から同時に読み出す。そして最後にRAID制御部29は、残りのブロックEを第1の保存部28から読み出す。そしてRAID制御部29は、このようにして読み出したブロックA〜Eを順番に並べて連結することによって断層画像データを再生し、これを一時記憶部24に書き込む。
【0036】
このように本実施形態によれば、暫定保存状態およびミラーリング保存状態のいずれであっても、第1および第2の保存部27,28に記憶されたデータから断層画像データを再生することができる。従って、暫定保存状態とすることができれば、該当する断層画像データを保護できる。そして断層画像データの保存を開始してから暫定保存状態とするまでに要する時間は、一般的なRAID 1によるデータ保存を実施する場合に比べておよそ半分で済む。そして、暫定保存状態からミラーリング保存状態へ移行するためのコピー処理は、他の断層画像データの第1および第2の保存部27,28への書き込みや読み出しを行う必要が無いときに行われるので、このような他の断層画像データの書き込みや読み出しはコピー処理によって妨げられることなく効率的に行える。さらにコピー処理によってミラーリング保存状態とすることによって、第1および第2の保存部27,28の一方の障害時にも断層画像データを確実に保護できる。
【0037】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0038】
第1および第2の保存部27,28を加えて3つ以上の保存部を備え、これらの保存部にそれぞれ異なるデータブロックを同時に書き込んでも良い。
【0039】
第1および第2の保存部27,28は、CT装置100に内蔵されず、CT装置100に外付けされるものであっても良い。
【0040】
以上のようなミラーリング保存のための技術は、例えばMRI装置、超音波診断装置、X線診断装置、あるいは核医学診断装置などの様々な種類の医用診断装置に適用できる。
【0041】
ミラーリング保存の対象は、断層画像データ以外の如何なる医用データであっても構わない。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…スキャンガントリ、2…コンピュータ装置、10…寝台、11…X線管装置、12…X線検出器、13…架台回転駆動部、14…高電圧発生部、15…寝台駆動部、16…データ収集部、21…ガントリ制御部、22…前処理部、23…画像再構成部、24…一時記憶部、25…表示部、26…操作卓、27…第1の保存部、28…第2の保存部、29…RAID制御部、30…データ/制御バス、100…X線コンピュータ断層撮像装置(CT装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保存媒体のそれぞれに並行的にアクセス可能な医用診断装置において、
医用診断用の医用データを取得する取得手段と、
前記医用データを複数のデータブロックに分割し、前記複数の保存媒体のそれぞれに前記複数のデータブロックのうちの異なるデータブロックを並行的に書き込みながら前記複数のデータブロックのそれぞれを前記複数の保存媒体のいずれかに書き込み、前記複数のデータブロックの全てを前記複数の保存媒体のいずれかに書き込み終えた後の前記保存媒体へのアクセスがない期間に、前記複数の保存媒体に書き込まれた前記複数のデータブロックをそのデータブロックが書き込まれていない他の前記保存媒体にそれぞれ書き込む書き込み手段とを具備したことを特徴とする医用診断装置。
【請求項2】
前記複数のデータブロックのうちの少なくとも2つを前記複数の保存媒体から並列的に読み出しつつ前記複数のデータブロックの全てを前記複数の保存媒体から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段により読み出された前記複数のデータブロックを合成して前記医用データを再生する再生手段とをさらに具備したことを特徴とする請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項3】
それぞれ同一の医用データを記憶した複数の保存媒体のそれぞれに並行的にアクセス可能な医用診断装置において、
前記医用データを複数のデータブロックに分割し、前記複数のデータブロックのうちの少なくとも2つを前記複数の保存媒体から並列的に読み出しつつ前記複数のデータブロックの全てを前記複数の保存媒体から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段により読み出された前記複数のデータブロックを合成して前記医用データを再生する再生手段とを具備したことを特徴とする医用診断装置。
【請求項4】
前記読み出し手段は、前記複数のデータブロックを前記複数の保存媒体と同数のグループにグループ分けし、各グループに属する1つずつの前記データブロックを前記複数の保存媒体から並列的に読み出すことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の医用診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253109(P2010−253109A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107985(P2009−107985)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】