医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法
【課題】 樹脂からなる成形用材料を用いて複雑な形状の医療用チューブの成形が行える医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法を提供すること。
【解決手段】 隔壁部12を挟んで流路13a等が形成された医療用チューブ10を成形する押出成形用金型20を、凹部25b,27a,28aが形成された外形成形金型と、ランド部23を備えたピン22とで構成した。また、外形成形金型とピン22との間に形成される空間を、成形用材料を先細り円筒状に形成する後部側成形空間部と、医療用チューブ10を形成できる断面形状を備えた先端側成形空間部とで構成した。そして、先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を医療用チューブ10の断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状をランド部23における流路13a等を形成する部分のうちの流路13a,13cを形成する部分を除いた形状にした。
【解決手段】 隔壁部12を挟んで流路13a等が形成された医療用チューブ10を成形する押出成形用金型20を、凹部25b,27a,28aが形成された外形成形金型と、ランド部23を備えたピン22とで構成した。また、外形成形金型とピン22との間に形成される空間を、成形用材料を先細り円筒状に形成する後部側成形空間部と、医療用チューブ10を形成できる断面形状を備えた先端側成形空間部とで構成した。そして、先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を医療用チューブ10の断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状をランド部23における流路13a等を形成する部分のうちの流路13a,13cを形成する部分を除いた形状にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の傷部から排液を排出したり、患者の傷部に薬液を供給したりするために用いられる医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の傷部に溜まる排液を排出するために医療用チューブが用いられている。そして、このような医療用チューブの中に、シリコーンの成形体で構成され、基端側部分が円筒状に形成され、患者の傷部に留置される先端側部分が中心軸を挟んで区分けされた複数の流路で構成されたものがある。また、この医療用チューブの先端側部分には、各流路を形成する壁部のうちの外周側部分をそれぞれ軸方向に沿って切り欠くことによってスリットが形成されている。このスリットを設けることによって医療用チューブの開口部分を大きくして効率的に排液を吸引することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この医療用チューブ(傷部ドレンカテーテル)の先端側部分の断面形状としては、リング状に形成された部分の内面に十字形に形成された部分の片の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成し、そのリング状部分の各片間に対応する部分を切り欠いてスリットを形成することにより四つの流路をそれぞれ外部に連通させた形状がある。また、リング状部分の内面にリング状の中心から三方に延びる片の各先端部をそれぞれ連結して三つの流路を形成し、そのリング状部分の各片間に対応する部分を切り欠いてスリットを形成することにより三つの流路をそれぞれ外部に連通させた形状もある。
【0004】
また、前述したような従来の医療用チューブを製造する方法としては、例えば、まず、断面形状が、リング状に形成された部分の内面に十字形の片の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路が形成されたチューブを押出成形により形成する。ついで、そのリング状部分の各片間に対応する部分を加工処理により切り欠いてスリットを設けることにより医療用チューブを形成する方法がある。また、押出成形により直接スリットを備えた医療用チューブを成形する方法もある。
【特許文献1】特公平2−17185号公報
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、従来の医療用チューブの製造方法のうち、加工処理によりスリットを形成する場合には、製造工程が増えコストが高くなるという問題がある。また、押出成形により一度で最終形状の医療用チューブを成形する場合には、成形用材料として軟質樹脂を用いると、一般に押出成形用金型の金属製スリーブとの滑りが悪くなるため、例えば真空サイジング法により成形することは困難である。また、軟質樹脂であってもシリコーン樹脂(非熱可塑性樹脂)を用いた場合は、粘度が高いため、押出成形用金型の成形用空間の形状に近い形状に容易に成形できるが、軟質ポリウレタンや軟質ポリ塩化ビニルのような軟質熱可塑性樹脂からなる成形用材料を用いた場合には、シリコーン樹脂を用いた場合と同様の従来の押出成形方法では成形を行うことが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、樹脂からなる成形用材料を用いて複雑な形状の医療用チューブの成形を精度よく行える医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法を提供することである。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型の構成上の特徴は、軸部を挟んで複数の流路が形成された医療用チューブを成形するための押出成形用金型であって、後部側から先端側に貫通する凹部が形成された外形成形金型と、外形成形金型の凹部内に設置され凹部の後部側部分の内周面との間に成形用材料を通過させる先細り円筒状の後部側成形空間部を形成し、先端部が凹部の先端側部分の内周面との間に医療用チューブを形成するための断面形状を備えた先端側成形空間部を形成するランド部で構成された内形成形ピンとを備え、先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を医療用チューブの断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路に対応する各部分の少なくとも一つの部分を取り除いてその部分を成形用材料が通過する空間にした形状にしたことにある。
【0008】
前述のように構成した本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型では、外形成形金型と内形成形ピンとで形成される成形用空間のうちの後部側部分を先細り円筒状の後部側成形空間部に形成して、成形される成形用材料が直径の大きな円筒状から徐々に医療用チューブの太さに近づくようにしている。そして、成形用空間のうちの先端側に位置する先端側成形空間部の断面形状を、後部側部分と先端部とで異なる形状にしている。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路を形成する部分の少なくとも一つの流路を形成する部分を取り除いた形状にし、先端部の断面形状を医療用チューブの断面形状と同じにしている。
【0009】
このように、先端側成形空間部の後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路を形成する部分の少なくとも一つの流路を形成する部分を取り除いた形状にしたため、その部分は空間の他の部分とともに成形用材料が通過する空間になる。このため、先端側成形空間部の前端部よりも後部側部分の方が、断面積当りの成形用材料の量が多くなり、先端側成形空間部の後部側部分から前端部に充分な成形用材料が供給されるようになる。これによって、先端側成形空間部の前端部に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブが成形できなくなるといったことが生じなくなる。この結果、先端側成形空間部から外部に押し出される成形体は、設計された断面形状を備えた良好な医療用チューブになる。
【0010】
また、このような押出成形用金型が取り付けられる押出成形装置には、押出成形用金型に送り込む成形用材料を加熱する加熱シリンダーや、加熱シリンダー内に設置され成形用材料を押出成形用金型側に押し出すスクリュー等が備わっている。そして、先端側成形空間部に断面形状の大きな部分を設けることにより、スクリューの回転トルクを低くすることができ、その分成形用材料の温度を下げることができる。この結果、成形用材料の粘度を高くすることができ、成形される医療用チューブの形状を安定させることができる。
【0011】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型の他の構成上の特徴は、外形成形金型の先端部を後部側成形空間部から移動してくる成形用材料の外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、ランド部の一部をプレート部の外面形成用凹部内の所定位置に伸ばし、ランド部のプレート部内に位置する部分で、成形される医療用チューブに周面が閉塞された流路を形成できるようにしたことにある。
【0012】
この医療用チューブを成形するための押出成形用金型では、外形成形金型の先端部を、医療用チューブの外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、このプレート部の外面形成用凹部内にランド部の一部を伸ばしている。このため、医療用チューブが備える複数の流路のうちの所定の流路を両端部以外の周面を閉塞した形状に形成することができる。この場合のプレート部の外面形成用凹部内に伸ばすランド部の一部は複数であってもよい。これによると、周面が閉塞された流路を医療用チューブに複数形成することができる。
【0013】
なお、医療用チューブの所定部分にスリットを設けてそのスリットを介して流路を外部に連通させる場合には、プレート部の外形形成用凹部における流路に対応する部分の外周側の空間の所定部分に閉塞部を設ける。これによって、医療用チューブのその閉塞部に対応する部分にスリットを形成することができる。したがって、医療用チューブのすべての流路に対応してスリットを設ける場合には、プレート部の外面形成用凹部内にランド部の先端部を伸ばすことなく、プレート部の外面形成用凹部だけでスリットを備えた流路を形成することができる。
【0014】
この外形成形金型の先端部では、流路を形成する面であってもスリットによって外部に連通している部分は、外形成形金型によって成形されるものとする。また、ランド部の外周部の所定の部分を外周方向に突出させて外形成形金型の凹部やプレート部の外面形成用凹部の所定の部分に接触させるか、または凹部の内周面や外面形成用凹部の内周面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成させることにより、医療用チューブにおけるランド部の突出した部分に対応する部分にスリットを形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面に十字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、リング状の空間部の所定部分を閉塞して形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にしたことにある。これによると、所定の流路を外部に連通させるスリットが設けられた異形の医療用チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。なお、この場合のリング状の空間部を閉塞して形成されるスリットは、1個の流路だけに設けてもよいし2個〜4個の複数の流路に設けてもよい。また、この場合のリング状としては、円形や長円形などの形状がある。
【0016】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面にH字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、リング状の空間部の所定部分を閉塞して形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にしたことにある。これによると、所定の流路を外部に連通させるスリットを備えた扁平な医療用チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。なお、この場合のリング状の空間部を閉塞して形成されるスリットは、1個の流路だけに設けてもよいし2個〜4個の複数の流路に設けてもよい。また、この場合のリング状としては、円形や長円形などの形状がある。
【0017】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂であることにある。これによると、通常は、複雑な形状の医療用チューブを成形することが難しい熱可塑性樹脂を用いて良好な医療用チューブを得ることができる。
【0018】
本発明に係る医療用チューブの押出成形方法の構成上の特徴は、前述した押出成形用金型を用いて医療用チューブを成形する医療用チューブの押出成形方法であって、外形成形金型の凹部内に内形成形ピンを設置して形成される先細り円筒状の後部側成形空間部内に成形用材料を通過させて成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、先端側成形空間部の後部側部分で、先細り円筒形成工程で形成された成形用材料の円形の断面形状を、複数の流路のうちの少なくとも一つの流路を形成する部分に成形用材料を充填させた形状である円形の断面形状と医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、先端側成形空間部の先端部で、中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程とを備えたことにある。
【0019】
このように構成した医療用チューブの押出成形方法は、成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、先細り円筒状の成形用材料の断面形状を円形の断面形状と医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程とを備えている。このため、成形用材料の断面形状は、外形成形金型の凹部と内形成形ピンとの間に形成された後部側成形空間部の円形の断面形状から、一旦医療用チューブの断面形状に近い中間の形状に変形したのちに、中間形状から最終形状の医療用チューブの断面形状に変形する。
【0020】
これによって、成形用材料の一度の変形による形状の変化を小さくすることができ、成形用材料の金型に対する滑りが悪い場合であっても複雑な形状の医療用チューブを精度よく成形することができる。また、中間の形状をランド部における複数の流路に対応する部分の少なくとも一つの部分を除いた形状としたため、中間部分では通過する成形用材料の量が多くなり、最終形状形成工程に充分な成形用材料が供給されるようになる。これによって、最終形状形成工程に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブが成形できなくなるといったことが生じなくなる。
【0021】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法の他の構成上の特徴は、最終形状形成工程で形成される成形用材料の断面形状を、円形リング状部の内面に十字形に形成された軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、円形リング状部の所定部分を切り欠いて四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させたことにある。これによると、スリットが設けられた異形チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。また、本発明によると製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。
【0022】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法のさらに他の構成上の特徴は、最終形状形成工程で形成される成形用材料の断面形状を、長円形リング状部の内面にH字形に形成された軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、長円形リング状部の所定部分を切り欠いて四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させたことにある。これによると、スリットを備えた扁平なチューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。
【0023】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法のさらに他の構成上の特徴は、成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂であることにある。これによると、通常は、複雑な形状の医療用チューブを成形することが難しい熱可塑性樹脂を用いて良好な医療用チューブを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態によって形成された医療用チューブ10を示している。この医療用チューブ10は、ポリウレタン(本発明に係る軟質の熱可塑性樹脂)からなる成形体で構成されており、略円筒状の外周部11と、外周部11の内部に軸方向に沿って形成された断面形状が十字形の隔壁部12(本発明に係る軸部)とで構成されている。隔壁部12を構成する各片の先端部はそれぞれ外周部11の内面に連結されて、外周部11の内部を四つの流路13a,13b,13c,13dに区分している。そして、外周部11における流路13a,13b,13cに対応する部分にそれぞれ流路13a,13b,13cを外部に連通させるためのスリット14a,14b,14cが、それぞれ隔壁部12の中心軸と平行に形成されている。
【0025】
このように構成された医療用チューブ10は、ポリウレタンからなる軟質の熱可塑性樹脂材料を、図2に示した押出成形用金型20を用いて成形することによって得られる。この押出成形用金型20は、金型本体21と、金型本体21内に設置されたピン22と、ピン22の先端部を構成するランド部23と、金型本体21の先端部に設けられたプレート部24とを備えている。金型本体21とプレート部24とで本発明に係る外形成形金型が構成され、ランド部23を備えたピン22とで本発明に係る内形成形ピンが構成される。
【0026】
金型本体21は、後部側(図2の左側で、以下、図2の左側を後部側、右側を前部側または先端側として説明する。)に配置された略矩形のブロック体からなるピンホルダ部25と、ピンホルダ部25の前側に配置されたブッシングホルダ部26とを備えており、ブッシングホルダ部26の内部にブッシング27,28が設置されている。ピンホルダ部25の内部には、前後に貫通する段違い略円柱状の穴部が形成されており、その穴部の後部側がピン22の後部側部分を保持するピン保持孔25aを構成し、前部側がピン22の中央部分を収容する凹部25bで構成されている。
【0027】
凹部25bの直径は、ピン保持孔25aの直径よりもやや大きくなっており、ピン保持孔25aと凹部25bとの間には段差が形成されている。また、凹部25bの後部側部分は、後端から前部側に行くほど先細りになった傾斜状の周面で構成され、凹部25bの前部側部分は、直径が略同一になった周面で構成されている。そして、凹部25bの後端側部分の上部には、ピンホルダ部25の上面に形成された材料入口29から延びてくる材料通路29aが連通している。すなわち、材料通路29aは、凹部25bに対して直交して連通している。
【0028】
ブッシングホルダ部26の内部には、ブッシングホルダ部26の中央部分を前後に貫通し後部側よりも前部側がやや細径になった2段状のブッシング取り付け用凹部が形成されている。そして、ブッシング取り付け用凹部の後部側に矩形のブッシング27が後面をピンホルダ部25に接面させて配置され、ブッシング取り付け用凹部におけるブッシング27の前側に、ブッシング27よりも小さな矩形のブッシング28が先端部をブッシングホルダ部26から突出させた状態で配置されている。また、ブッシング27の前端面中央には深さ(前後方向の奥行き)の浅い凹部が形成されており、ブッシング28の後部は、その凹部内に位置している。
【0029】
ブッシング27の後端面中央から前端面中央にかけては、後部側が大径で前部側が小径になった略円錐台状の凹部27aが形成されており、この凹部27aの後端部には、直径が同一になった部分が僅かに形成されている。凹部27aの後端部の直径は凹部25bの前端部の直径と同一に設定されている。ブッシング28の後端面中央から前端面中央にかけては、小径円柱状の凹部28aが形成されており、この凹部28aの直径は凹部27aの前端部の直径と同一に設定されている。また、ピン保持孔25a、凹部25b、凹部27aおよび凹部28aは中心軸がそれぞれ同一線上に位置するように配置されている。
【0030】
ピン22は、ピンホルダ部25のピン保持孔25a内に固定された円柱状の被固定部22aと、被固定部22aの前端から前方に向かって延び被固定部22aよりも直径がやや大きく、軸方向の長さが短い円柱状のストレート部22bと、ストレート部22bの前端から前方に向かって延び前端側が徐々に細くなった円錐台状のテーパ部22cと、ランド部23とで構成されている。そして、ストレート部22bの外周面と凹部25bの内周面との間およびテーパ部22cの外周面と凹部27aの内周面との間には、成形用材料が移動するための隙間が形成されており、この隙間で本発明に係る後部側成形空間部が構成される。
【0031】
また、ピン22の先端部を構成するランド部23は、図3および図4に示したようにしてテーパ部22cの先端部に設けられており、図5ないし図7に示したように2本の棒状体で構成されている。すなわち、ランド部23の後端側部分は、図6に示したように、断面形状が扇形の2つの棒状成形部23a,23bで構成されている。この2つの棒状成形部23a,23bは、テーパ部22cの前端面の外周に円弧状部分を沿わせて円周方向に180度の間隔を保って対向して形成されており、軸方向に平行に配置されている。
【0032】
このランド部23における棒状成形部23aの先端部以外の部分は、ブッシング28の凹部28a内に配置されており、ランド部23の外周面と凹部28aの内周面との間(棒状成形部23a,23b間を含む。)には、大きな隙間が形成されている。この隙間で本発明の先端側成形空間部の後部側部分が構成される。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分には、医療用チューブ10が備える流路13a等のうちの流路13a,13cを形成する部分が備わっていない。したがって、材料入口29から成形用材料を供給すると、この成形用材料は、材料通路29aを通過して凹部25bに入ると円筒状になり、凹部27aで先細り状の円筒状になる。そして、凹部28aで、図6に示した凹部28aの内部から棒状成形部23a,23bを除いた部分に成形用材料が充填される。
【0033】
ここでは、医療用チューブ10が備える流路13a等のうちの流路13b,13dに対応する部分だけが形成される。棒状成形部23aが流路13dに対応し、棒状成形部23bが流路13bに対応する。また、ランド部23の先端側部分の断面形状は、図7に示したように、棒状成形部23bの外周面における円弧状部分の中央に突起31を設けた形状に形成されている。突起31は、後端部が棒状成形部23bの外周面から徐々に幅を広げながら前方に向って高く(棒状成形部23bの外周面から離れる方向)なっていく傾斜部で構成されており、傾斜部の先端部から一定の高さを保って棒状成形部23bの前端部まで延びている。この突起31の外周側の先端面は、凹部28aの内周面に接触するか、または、凹部28aの内周面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成しており、突起31が位置する部分で、スリット14bが形成される。
【0034】
また、棒状成形部23aの外周面には突起は設けられてなく、棒状成形部23aの軸方向の長さは、図5に示したように、棒状成形部23bよりも長くなっている。このため、前述したように、棒状成形部23bは、ブッシング28の凹部28a内に配置されており、棒状成形部23aの先端部はブッシング28の凹部28aから前方に突出している。そして、棒状成形部23aの前端面には、図4(図3を軸周り方向に45度回転して棒状成形部23a,23bを上下に配置させた状態での縦断面を示している。)に示したように、ピン22の後部側から延びてくるエア吐出用孔32の先端部が開口している。このエア吐出用孔32の先端側部分32aは、後部側部分32bよりも細く形成されており、図8は、テーパ部22c内に形成されたエア吐出用孔32の後部側部分32bを示している。
【0035】
プレート部24は、図9および図10に示したように、円板状に形成されており、その中央部に厚み方向に貫通する成形用スリット33が形成され、外周側部分に円周に沿って一定間隔で厚み方向に貫通する3個のボルト挿通穴34a,34b,34cが形成されている。成形用スリット33の周縁部を結んだときに形成される円形(図11に示した周縁部と破線とで形成される円形)の大きさは、凹部28aの断面と同じ大きさに形成されている。また、成形用スリット33の縁部の形状は、図11に示したように、医療用チューブ10の端面の縁部の形状から流路13dに対応する扇形部分を除いた形状に形成されている。
【0036】
そして、成形用スリット33における流路13a,13b,13cに対応する部分には、それぞれ突起31を含む棒状成形部23bの端面と同形の閉塞部33a,33b,33cが形成されている。このように形成されたプレート部24は、成形用スリット33における医療用チューブ10の流路13dに対応する部分(図11における左上部分における周縁部から一定距離を保った部分)に、ランド部23の棒状成形部23aの先端部を位置させた状態でボルト(図示せず)を介してブッシング28の前面に固定される。このとき、プレート部24の後面中央部は、棒状成形部23bおよび突起31の先端面に当接するか、または、その先端面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成した状態になる。
【0037】
これによって、プレート部24の中央部には、成形用スリット33と棒状成形部23aとで構成される医療用チューブ10の端面と同形の空間部が形成される。この空間部で本発明の先端側成形空間部の先端部が構成される。なお、図11に実線で示したプレート部24における成形用スリット33の縁部は、外形成形金型の一部を構成し、成形用スリット33内に位置する棒状成形部23aの先端部の周面は、医療用チューブ10の内形を形成するための部分になる。また、棒状成形部23bの後部側部分は、医療用チューブ10の内形を形成する部分になり、棒状成形部23bの先端側部分は、医療用チューブ10の外形を形成する部分になる。
【0038】
また、プレート部24の厚みと、棒状成形部23aの突出した先端部の長さとは同じ長さに設定され、棒状成形部23aの先端面がプレート部24の前面と同一面上に位置する。なお、図示していないが、押出成形用金型20が取り付けられる押出成形装置には、押出成形用金型20と押出成形装置とをつなぎ、材料入口29から材料通路29a側に成形用材料を送り込むアダプタ、材料入口29に送り込む成形用材料を加熱する加熱シリンダー、加熱シリンダー内に設置されたスクリュー、押出成形用金型20の周辺に設けられた各装置を制御する制御装置等、押出成形用金型20を用いて押出成形を行うために必要な各装置や機構が備わっている。
【0039】
このように構成された押出成形用金型20を用いて、医療用チューブ10を成形する場合には、まず、押出成形用金型20を適正温度に加熱にしたのちに、材料投入口(図示せず)に投入した成形用材料を加熱シリンダーで加熱しながらスクリューで送り出して、アダプタを介して材料通路29a内に充填する。ついで、さらに成形用材料を送り出して、成形用材料を材料通路29aから後部側成形空間部内に移動させていく。このとき、成形用材料は、凹部25bの内周面とストレート部22bの外周面との間の隙間で円筒状に形成され、さらに凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間を通過する間に成形用材料は徐々に直径の小さな円筒状に変形していく。
【0040】
そして、成形用材料は、凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間から凹部28aの内周面とランド部23の後部側部分の外周面とで形成される先端側成形空間部内の後部側部分に移動していく。これによって、円筒状の成形用材料は、図6に、二点鎖線で示した凹部28aの内部側全体から棒状成形部23a,23bの部分を除いた領域に充填される。ここでは、流路13b,13dが形成される。また、この領域では、断面積あたりの成形用材料の量は、凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間の先端部分よりも多くなる。
【0041】
そして、成形用材料が先端側成形空間部内の後部側部分の前方側に移動すると、成形用材料は、先端側成形空間部内における突起31が形成された部分には充填されなくなる。このため、成形用材料は、図7に、二点鎖線で示した凹部28aの内部側全体から棒状成形部23a,23bおよび突起31の部分を除いた領域に充填される。ここでは、流路13b,13dに加えてスリット14bが形成される。そして、成形用材料は、プレート部24に達したところで、プレート部24の裏面に沿って絞られながら成形用スリット33と棒状成形部23aとで形成される空間部内を通過して外部に押し出される。
【0042】
外部に押し出された成形体は、冷却され略相似形のまま40〜70%程度に収縮したのちに医療用チューブ10として使用される。この押出成形の際、成形用材料は、適度な温度に加熱されて材料通路29aからプレート部24の成形用スリット33に移動するまでに徐々に変形していくため、無理なく成形されていく。そして、プレート部24に到達する前に、先端側成形空間部内の後部側部分でやや多めの成形用材料が溜まるため、プレート部24の成形用スリット33には、充分な成形用材料が供給されるようになり、得られた医療用チューブ10は寸法精度、特に肉厚が設計通りの良好な成形品になる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る医療用チューブの押出成形用金型20および押出成形方法では、材料入口29から材料通路29a内に投入された成形用材料を、後部側成形空間部内で円筒状に形成したのちに、徐々に医療用チューブ10の太さに近づけるようにしている。そして、先端側成形空間部の後部側部分の内部に位置するランド部23を、医療用チューブ10の流路13dに対応する棒状成形部23aと、流路13bに対応する棒状成形部23bとだけで構成している。このため、先端側成形空間部の後部側部分においては、医療用チューブ10の断面形状に対応する部分だけでなく、流路13a,13cに対応する部分にも成形用材料が充填される。これによって、先端側成形空間部の前端部に位置するプレート部24の成形用スリット33に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブ10が成形できなくなるといったことが生じなくなる。
【0044】
また、本実施形態に係る押出成形用金型20では、プレート部24の成形用スリット33の所定部分に棒状成形部23aの先端部を延ばすことによって、周面が閉塞された流路13dを形成することができる。さらに、突起31や閉塞部33a,33b,33cを設けることによって、スリット14a,14b,14cによって外部と連通した流路13a,13b,13cを形成することができる。このため、周面が閉塞された流路13dや外部と連通した流路13a,13b,13cを容易に形成することができる。また、本実施形態によれば、軟質の熱可塑性樹脂であるポリウレタンを用いても、複雑な形状の医療用チューブ10を良好な状態で成形することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図12および図13は、本発明の第2実施形態に係る押出成形用金型で成形された医療用チューブ40を示している。この医療用チューブ40は、断面形状が略長円形の外周部41と、外周部41の内部に軸方向に沿って形成された断面形状がH字形の隔壁部42(本発明に係る軸部)とで構成されている。隔壁部42を構成する各片の先端部はそれぞれ外周部41の内面に連結されて、外周部41の内部を四つの流路43a,43b,43c,43dに区分している。そして、外周部41における流路43a,43b,43cに対応する部分にそれぞれ流路43a,43b,43cを外部に連通させるためのスリット44a,44b,44cが、それぞれ隔壁部42の延びる方向と平行に形成されている。
【0046】
また、医療用チューブ40の外周面における流路43dが形成された部分には、X線を通さない不透過性材料からなるライン45が設けられている。このライン45は、体内に留置された医療用チューブ40の位置をX線照射により確認する際に利用される。また、図14ないし図16には、ピン52の要部(被固定部を除いた部分)を示している。このピン52は、被固定部(図示せず)の前端から前方に向かって延びる軸方向の長さが短い円柱状のストレート部52aと、ストレート部52aの前端から前方に向かって延び前端側が徐々に細くなった円錐台状のテーパ部52bと、テーパ部52bの前端から前方に向って延び先端側に行くほど断面形状が長円形になる先細り扁平状の扁平テーパ部52cと、ランド部53とで構成されている。
【0047】
また、図示していないが、このピン52が取り付けられる外形成形金型は、前述したブッシング27,28の凹部27a,28aを、扁平テーパ部52cとランド部53に対応する形状にするとともに、ブッシングホルダ部26およびブッシング27の前寄りの部分に、不透過性材料を成形空間内に供給するための流路を設けた構成になっている。そして、外形成形金型の前端部は、図17に示した成形用スリット55を備えたプレート部54で構成されている。そして、ストレート部52a、テーパ部52bおよび扁平テーパ部52cの外周面と、それに対応する外形成形金型の凹部の内周面との間には、成形用材料が移動するための隙間が形成されており、この隙間で本発明に係る後部側成形空間部が構成される。
【0048】
また、ピン52の先端部を構成するランド部53は、扁平テーパ部52cの先端部に設けられており、図14ないし図16に示したように2本の棒状体で構成されている。すなわち、ランド部53は、断面形状が略半円状の2つの棒状成形部53a,53bで構成されている。この2つの棒状成形部53a,53bは、扁平テーパ部52cの前端面の長手方向の両側に円弧状部分をそれぞれ外部側に向け、互いに間隔を保って対向した状態で形成されており、平行に配置されている。棒状成形部53a,53bの前後方向の後部側部分と前部側部分とはともに同じ太さで延びているが、中央部分は後部よりも前部が徐々に細くなったテーパ部で構成されており、これによって、棒状成形部53a,53bは先細りになっている。また、棒状成形部53aの先端部分は棒状成形部53bの先端部分よりも長くなっている。
【0049】
このランド部53の外周面と外形成形金型の凹部の内周面との間および棒状成形部53a,53b間には、大きな隙間が形成されており、この隙間で本発明の先端側成形空間部の後部側部分が構成される。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分には、医療用チューブ40が備える流路43a等のうちの流路43a,43cを形成する部分が備わっていない。したがって、先端側成形空間部の後部側部分では、医療用チューブ40が備える流路43a等のうちの流路43b,43dに対応する部分だけが形成される。棒状成形部53aが流路43dに対応し、棒状成形部53bが流路43bに対応する。また、棒状成形部53aの前端面には、ピン52の後部側から延びてくるエア吐出用孔56の先端部が開口している。
【0050】
プレート部54は、前述したプレート部24において、成形用スリット33に代えて成形用スリット55を設けた構成になっている。この成形用スリット55の縁部の形状は、医療用チューブ40の端面の縁部の形状から流路43dに対応する半円形部分を除いた形状に形成されている。そして、プレート部54における流路43a,43b,43cおよびスリット44a,44b,44cを形成する部分は、それぞれ流路43a,43b,43cおよびスリット44a,44b,44cの断面形状と同形の閉塞部55a,55b,55cで構成されている。
【0051】
このように形成されたプレート部24は、成形用スリット55における流路43dに対応する部分に棒状成形部53aの先端部を位置させた状態でボルトを介してブッシングの前面に固定される。これによって、プレート部54の中央部には、成形用スリット55と棒状成形部53aとで構成される医療用チューブ40の端面と同形の空間部が形成される。この空間部で本発明の先端側成形空間部の先端部が構成される。この第2実施形態のそれ以外の部分の構成については、前述した第1実施形態と同一である。
【0052】
また、本実施形態によると、スリット44a,44b,44cを備えた扁平な医療用チューブ40を一度の押出成形で成形できる。このため、医療用チューブ40の成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。この第2実施形態のそれ以外の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
【0053】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形用金型および押出成形方法は、前述した実施形態に限定するものでなく、本発明の技術範囲内で適宜変更が可能である。例えば、前述した各実施形態では、医療用チューブ10等にそれぞれ三つのスリット14a等を形成しているが、このスリットをすべての流路に対応する部分にも設けてもよい。また、医療用チューブ10等に形成するスリットを一つまたは二つにしてもよいし、スリットを設けなくてもよい。
【0054】
さらに、医療用チューブに形成する流路も四つに限らず他の複数にしてもよい。また、医療用チューブの形状も前述した実施形態の形状に限らず適宜変更することができる。さらに、前述した第1実施形態の医療用チューブ10にも、X線を通さない不透過性材料からなるラインを設けることができる。また、医療用チューブを構成する軟質の熱可塑性樹脂についてもポリウレタンに限らずポリ塩化ビニル等の他の材料を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態により成形された医療用チューブを示した斜視図である。
【図2】押出成形用金型の断面図である。
【図3】ピンの先端側部分を示した側面図である。
【図4】ピンの先端側部分を示した断面図である。
【図5】ランド部を拡大した側面図である。
【図6】図3の6−6断面図である。
【図7】図3の7−7断面図である。
【図8】図3の8−8断面図である。
【図9】プレート部の正面図である。
【図10】図9の10−10断面図である。
【図11】プレート部の成形用スリットを拡大した正面図である。
【図12】本発明の第2実施形態により成形された医療用チューブを示した側面図である。
【図13】第2実施形態により成形された医療用チューブの端面を示した正面図である。
【図14】ピンの先端側部分を示した平面図である。
【図15】ピンの先端側部分を示した側面図である。
【図16】ピンの先端側部分を示した正面図である。
【図17】プレート部の成形用スリットを拡大した正面図である。
【符号の説明】
【0056】
10,40…医療用チューブ、12,42…隔壁部、13a,13b,13c,13d,43a,43b,43c,43d…流路、14a,14b,14c,44a,44b,44c…スリット、20…押出成形用金型、21…金型本体、22,52…ピン、22c,52b…テーパ部、23,53…ランド部、23a,23b,53a,53b…棒状成形部、24,54…プレート部、27a,28a…凹部、33,55…成形用スリット、52c…扁平テーパ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の傷部から排液を排出したり、患者の傷部に薬液を供給したりするために用いられる医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の傷部に溜まる排液を排出するために医療用チューブが用いられている。そして、このような医療用チューブの中に、シリコーンの成形体で構成され、基端側部分が円筒状に形成され、患者の傷部に留置される先端側部分が中心軸を挟んで区分けされた複数の流路で構成されたものがある。また、この医療用チューブの先端側部分には、各流路を形成する壁部のうちの外周側部分をそれぞれ軸方向に沿って切り欠くことによってスリットが形成されている。このスリットを設けることによって医療用チューブの開口部分を大きくして効率的に排液を吸引することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この医療用チューブ(傷部ドレンカテーテル)の先端側部分の断面形状としては、リング状に形成された部分の内面に十字形に形成された部分の片の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成し、そのリング状部分の各片間に対応する部分を切り欠いてスリットを形成することにより四つの流路をそれぞれ外部に連通させた形状がある。また、リング状部分の内面にリング状の中心から三方に延びる片の各先端部をそれぞれ連結して三つの流路を形成し、そのリング状部分の各片間に対応する部分を切り欠いてスリットを形成することにより三つの流路をそれぞれ外部に連通させた形状もある。
【0004】
また、前述したような従来の医療用チューブを製造する方法としては、例えば、まず、断面形状が、リング状に形成された部分の内面に十字形の片の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路が形成されたチューブを押出成形により形成する。ついで、そのリング状部分の各片間に対応する部分を加工処理により切り欠いてスリットを設けることにより医療用チューブを形成する方法がある。また、押出成形により直接スリットを備えた医療用チューブを成形する方法もある。
【特許文献1】特公平2−17185号公報
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、従来の医療用チューブの製造方法のうち、加工処理によりスリットを形成する場合には、製造工程が増えコストが高くなるという問題がある。また、押出成形により一度で最終形状の医療用チューブを成形する場合には、成形用材料として軟質樹脂を用いると、一般に押出成形用金型の金属製スリーブとの滑りが悪くなるため、例えば真空サイジング法により成形することは困難である。また、軟質樹脂であってもシリコーン樹脂(非熱可塑性樹脂)を用いた場合は、粘度が高いため、押出成形用金型の成形用空間の形状に近い形状に容易に成形できるが、軟質ポリウレタンや軟質ポリ塩化ビニルのような軟質熱可塑性樹脂からなる成形用材料を用いた場合には、シリコーン樹脂を用いた場合と同様の従来の押出成形方法では成形を行うことが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、樹脂からなる成形用材料を用いて複雑な形状の医療用チューブの成形を精度よく行える医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法を提供することである。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型の構成上の特徴は、軸部を挟んで複数の流路が形成された医療用チューブを成形するための押出成形用金型であって、後部側から先端側に貫通する凹部が形成された外形成形金型と、外形成形金型の凹部内に設置され凹部の後部側部分の内周面との間に成形用材料を通過させる先細り円筒状の後部側成形空間部を形成し、先端部が凹部の先端側部分の内周面との間に医療用チューブを形成するための断面形状を備えた先端側成形空間部を形成するランド部で構成された内形成形ピンとを備え、先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を医療用チューブの断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路に対応する各部分の少なくとも一つの部分を取り除いてその部分を成形用材料が通過する空間にした形状にしたことにある。
【0008】
前述のように構成した本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型では、外形成形金型と内形成形ピンとで形成される成形用空間のうちの後部側部分を先細り円筒状の後部側成形空間部に形成して、成形される成形用材料が直径の大きな円筒状から徐々に医療用チューブの太さに近づくようにしている。そして、成形用空間のうちの先端側に位置する先端側成形空間部の断面形状を、後部側部分と先端部とで異なる形状にしている。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路を形成する部分の少なくとも一つの流路を形成する部分を取り除いた形状にし、先端部の断面形状を医療用チューブの断面形状と同じにしている。
【0009】
このように、先端側成形空間部の後部側部分の断面形状をランド部における複数の流路を形成する部分の少なくとも一つの流路を形成する部分を取り除いた形状にしたため、その部分は空間の他の部分とともに成形用材料が通過する空間になる。このため、先端側成形空間部の前端部よりも後部側部分の方が、断面積当りの成形用材料の量が多くなり、先端側成形空間部の後部側部分から前端部に充分な成形用材料が供給されるようになる。これによって、先端側成形空間部の前端部に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブが成形できなくなるといったことが生じなくなる。この結果、先端側成形空間部から外部に押し出される成形体は、設計された断面形状を備えた良好な医療用チューブになる。
【0010】
また、このような押出成形用金型が取り付けられる押出成形装置には、押出成形用金型に送り込む成形用材料を加熱する加熱シリンダーや、加熱シリンダー内に設置され成形用材料を押出成形用金型側に押し出すスクリュー等が備わっている。そして、先端側成形空間部に断面形状の大きな部分を設けることにより、スクリューの回転トルクを低くすることができ、その分成形用材料の温度を下げることができる。この結果、成形用材料の粘度を高くすることができ、成形される医療用チューブの形状を安定させることができる。
【0011】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型の他の構成上の特徴は、外形成形金型の先端部を後部側成形空間部から移動してくる成形用材料の外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、ランド部の一部をプレート部の外面形成用凹部内の所定位置に伸ばし、ランド部のプレート部内に位置する部分で、成形される医療用チューブに周面が閉塞された流路を形成できるようにしたことにある。
【0012】
この医療用チューブを成形するための押出成形用金型では、外形成形金型の先端部を、医療用チューブの外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、このプレート部の外面形成用凹部内にランド部の一部を伸ばしている。このため、医療用チューブが備える複数の流路のうちの所定の流路を両端部以外の周面を閉塞した形状に形成することができる。この場合のプレート部の外面形成用凹部内に伸ばすランド部の一部は複数であってもよい。これによると、周面が閉塞された流路を医療用チューブに複数形成することができる。
【0013】
なお、医療用チューブの所定部分にスリットを設けてそのスリットを介して流路を外部に連通させる場合には、プレート部の外形形成用凹部における流路に対応する部分の外周側の空間の所定部分に閉塞部を設ける。これによって、医療用チューブのその閉塞部に対応する部分にスリットを形成することができる。したがって、医療用チューブのすべての流路に対応してスリットを設ける場合には、プレート部の外面形成用凹部内にランド部の先端部を伸ばすことなく、プレート部の外面形成用凹部だけでスリットを備えた流路を形成することができる。
【0014】
この外形成形金型の先端部では、流路を形成する面であってもスリットによって外部に連通している部分は、外形成形金型によって成形されるものとする。また、ランド部の外周部の所定の部分を外周方向に突出させて外形成形金型の凹部やプレート部の外面形成用凹部の所定の部分に接触させるか、または凹部の内周面や外面形成用凹部の内周面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成させることにより、医療用チューブにおけるランド部の突出した部分に対応する部分にスリットを形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面に十字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、リング状の空間部の所定部分を閉塞して形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にしたことにある。これによると、所定の流路を外部に連通させるスリットが設けられた異形の医療用チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。なお、この場合のリング状の空間部を閉塞して形成されるスリットは、1個の流路だけに設けてもよいし2個〜4個の複数の流路に設けてもよい。また、この場合のリング状としては、円形や長円形などの形状がある。
【0016】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面にH字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、リング状の空間部の所定部分を閉塞して形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にしたことにある。これによると、所定の流路を外部に連通させるスリットを備えた扁平な医療用チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。なお、この場合のリング状の空間部を閉塞して形成されるスリットは、1個の流路だけに設けてもよいし2個〜4個の複数の流路に設けてもよい。また、この場合のリング状としては、円形や長円形などの形状がある。
【0017】
また、本発明に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型のさらに他の構成上の特徴は、成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂であることにある。これによると、通常は、複雑な形状の医療用チューブを成形することが難しい熱可塑性樹脂を用いて良好な医療用チューブを得ることができる。
【0018】
本発明に係る医療用チューブの押出成形方法の構成上の特徴は、前述した押出成形用金型を用いて医療用チューブを成形する医療用チューブの押出成形方法であって、外形成形金型の凹部内に内形成形ピンを設置して形成される先細り円筒状の後部側成形空間部内に成形用材料を通過させて成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、先端側成形空間部の後部側部分で、先細り円筒形成工程で形成された成形用材料の円形の断面形状を、複数の流路のうちの少なくとも一つの流路を形成する部分に成形用材料を充填させた形状である円形の断面形状と医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、先端側成形空間部の先端部で、中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程とを備えたことにある。
【0019】
このように構成した医療用チューブの押出成形方法は、成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、先細り円筒状の成形用材料の断面形状を円形の断面形状と医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程とを備えている。このため、成形用材料の断面形状は、外形成形金型の凹部と内形成形ピンとの間に形成された後部側成形空間部の円形の断面形状から、一旦医療用チューブの断面形状に近い中間の形状に変形したのちに、中間形状から最終形状の医療用チューブの断面形状に変形する。
【0020】
これによって、成形用材料の一度の変形による形状の変化を小さくすることができ、成形用材料の金型に対する滑りが悪い場合であっても複雑な形状の医療用チューブを精度よく成形することができる。また、中間の形状をランド部における複数の流路に対応する部分の少なくとも一つの部分を除いた形状としたため、中間部分では通過する成形用材料の量が多くなり、最終形状形成工程に充分な成形用材料が供給されるようになる。これによって、最終形状形成工程に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブが成形できなくなるといったことが生じなくなる。
【0021】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法の他の構成上の特徴は、最終形状形成工程で形成される成形用材料の断面形状を、円形リング状部の内面に十字形に形成された軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、円形リング状部の所定部分を切り欠いて四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させたことにある。これによると、スリットが設けられた異形チューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。また、本発明によると製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。
【0022】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法のさらに他の構成上の特徴は、最終形状形成工程で形成される成形用材料の断面形状を、長円形リング状部の内面にH字形に形成された軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、長円形リング状部の所定部分を切り欠いて四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させたことにある。これによると、スリットを備えた扁平なチューブを一度の押出成形で成形できるため、成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。
【0023】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形方法のさらに他の構成上の特徴は、成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂であることにある。これによると、通常は、複雑な形状の医療用チューブを成形することが難しい熱可塑性樹脂を用いて良好な医療用チューブを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る医療用チューブを成形するための押出成形用金型および押出成形方法を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態によって形成された医療用チューブ10を示している。この医療用チューブ10は、ポリウレタン(本発明に係る軟質の熱可塑性樹脂)からなる成形体で構成されており、略円筒状の外周部11と、外周部11の内部に軸方向に沿って形成された断面形状が十字形の隔壁部12(本発明に係る軸部)とで構成されている。隔壁部12を構成する各片の先端部はそれぞれ外周部11の内面に連結されて、外周部11の内部を四つの流路13a,13b,13c,13dに区分している。そして、外周部11における流路13a,13b,13cに対応する部分にそれぞれ流路13a,13b,13cを外部に連通させるためのスリット14a,14b,14cが、それぞれ隔壁部12の中心軸と平行に形成されている。
【0025】
このように構成された医療用チューブ10は、ポリウレタンからなる軟質の熱可塑性樹脂材料を、図2に示した押出成形用金型20を用いて成形することによって得られる。この押出成形用金型20は、金型本体21と、金型本体21内に設置されたピン22と、ピン22の先端部を構成するランド部23と、金型本体21の先端部に設けられたプレート部24とを備えている。金型本体21とプレート部24とで本発明に係る外形成形金型が構成され、ランド部23を備えたピン22とで本発明に係る内形成形ピンが構成される。
【0026】
金型本体21は、後部側(図2の左側で、以下、図2の左側を後部側、右側を前部側または先端側として説明する。)に配置された略矩形のブロック体からなるピンホルダ部25と、ピンホルダ部25の前側に配置されたブッシングホルダ部26とを備えており、ブッシングホルダ部26の内部にブッシング27,28が設置されている。ピンホルダ部25の内部には、前後に貫通する段違い略円柱状の穴部が形成されており、その穴部の後部側がピン22の後部側部分を保持するピン保持孔25aを構成し、前部側がピン22の中央部分を収容する凹部25bで構成されている。
【0027】
凹部25bの直径は、ピン保持孔25aの直径よりもやや大きくなっており、ピン保持孔25aと凹部25bとの間には段差が形成されている。また、凹部25bの後部側部分は、後端から前部側に行くほど先細りになった傾斜状の周面で構成され、凹部25bの前部側部分は、直径が略同一になった周面で構成されている。そして、凹部25bの後端側部分の上部には、ピンホルダ部25の上面に形成された材料入口29から延びてくる材料通路29aが連通している。すなわち、材料通路29aは、凹部25bに対して直交して連通している。
【0028】
ブッシングホルダ部26の内部には、ブッシングホルダ部26の中央部分を前後に貫通し後部側よりも前部側がやや細径になった2段状のブッシング取り付け用凹部が形成されている。そして、ブッシング取り付け用凹部の後部側に矩形のブッシング27が後面をピンホルダ部25に接面させて配置され、ブッシング取り付け用凹部におけるブッシング27の前側に、ブッシング27よりも小さな矩形のブッシング28が先端部をブッシングホルダ部26から突出させた状態で配置されている。また、ブッシング27の前端面中央には深さ(前後方向の奥行き)の浅い凹部が形成されており、ブッシング28の後部は、その凹部内に位置している。
【0029】
ブッシング27の後端面中央から前端面中央にかけては、後部側が大径で前部側が小径になった略円錐台状の凹部27aが形成されており、この凹部27aの後端部には、直径が同一になった部分が僅かに形成されている。凹部27aの後端部の直径は凹部25bの前端部の直径と同一に設定されている。ブッシング28の後端面中央から前端面中央にかけては、小径円柱状の凹部28aが形成されており、この凹部28aの直径は凹部27aの前端部の直径と同一に設定されている。また、ピン保持孔25a、凹部25b、凹部27aおよび凹部28aは中心軸がそれぞれ同一線上に位置するように配置されている。
【0030】
ピン22は、ピンホルダ部25のピン保持孔25a内に固定された円柱状の被固定部22aと、被固定部22aの前端から前方に向かって延び被固定部22aよりも直径がやや大きく、軸方向の長さが短い円柱状のストレート部22bと、ストレート部22bの前端から前方に向かって延び前端側が徐々に細くなった円錐台状のテーパ部22cと、ランド部23とで構成されている。そして、ストレート部22bの外周面と凹部25bの内周面との間およびテーパ部22cの外周面と凹部27aの内周面との間には、成形用材料が移動するための隙間が形成されており、この隙間で本発明に係る後部側成形空間部が構成される。
【0031】
また、ピン22の先端部を構成するランド部23は、図3および図4に示したようにしてテーパ部22cの先端部に設けられており、図5ないし図7に示したように2本の棒状体で構成されている。すなわち、ランド部23の後端側部分は、図6に示したように、断面形状が扇形の2つの棒状成形部23a,23bで構成されている。この2つの棒状成形部23a,23bは、テーパ部22cの前端面の外周に円弧状部分を沿わせて円周方向に180度の間隔を保って対向して形成されており、軸方向に平行に配置されている。
【0032】
このランド部23における棒状成形部23aの先端部以外の部分は、ブッシング28の凹部28a内に配置されており、ランド部23の外周面と凹部28aの内周面との間(棒状成形部23a,23b間を含む。)には、大きな隙間が形成されている。この隙間で本発明の先端側成形空間部の後部側部分が構成される。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分には、医療用チューブ10が備える流路13a等のうちの流路13a,13cを形成する部分が備わっていない。したがって、材料入口29から成形用材料を供給すると、この成形用材料は、材料通路29aを通過して凹部25bに入ると円筒状になり、凹部27aで先細り状の円筒状になる。そして、凹部28aで、図6に示した凹部28aの内部から棒状成形部23a,23bを除いた部分に成形用材料が充填される。
【0033】
ここでは、医療用チューブ10が備える流路13a等のうちの流路13b,13dに対応する部分だけが形成される。棒状成形部23aが流路13dに対応し、棒状成形部23bが流路13bに対応する。また、ランド部23の先端側部分の断面形状は、図7に示したように、棒状成形部23bの外周面における円弧状部分の中央に突起31を設けた形状に形成されている。突起31は、後端部が棒状成形部23bの外周面から徐々に幅を広げながら前方に向って高く(棒状成形部23bの外周面から離れる方向)なっていく傾斜部で構成されており、傾斜部の先端部から一定の高さを保って棒状成形部23bの前端部まで延びている。この突起31の外周側の先端面は、凹部28aの内周面に接触するか、または、凹部28aの内周面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成しており、突起31が位置する部分で、スリット14bが形成される。
【0034】
また、棒状成形部23aの外周面には突起は設けられてなく、棒状成形部23aの軸方向の長さは、図5に示したように、棒状成形部23bよりも長くなっている。このため、前述したように、棒状成形部23bは、ブッシング28の凹部28a内に配置されており、棒状成形部23aの先端部はブッシング28の凹部28aから前方に突出している。そして、棒状成形部23aの前端面には、図4(図3を軸周り方向に45度回転して棒状成形部23a,23bを上下に配置させた状態での縦断面を示している。)に示したように、ピン22の後部側から延びてくるエア吐出用孔32の先端部が開口している。このエア吐出用孔32の先端側部分32aは、後部側部分32bよりも細く形成されており、図8は、テーパ部22c内に形成されたエア吐出用孔32の後部側部分32bを示している。
【0035】
プレート部24は、図9および図10に示したように、円板状に形成されており、その中央部に厚み方向に貫通する成形用スリット33が形成され、外周側部分に円周に沿って一定間隔で厚み方向に貫通する3個のボルト挿通穴34a,34b,34cが形成されている。成形用スリット33の周縁部を結んだときに形成される円形(図11に示した周縁部と破線とで形成される円形)の大きさは、凹部28aの断面と同じ大きさに形成されている。また、成形用スリット33の縁部の形状は、図11に示したように、医療用チューブ10の端面の縁部の形状から流路13dに対応する扇形部分を除いた形状に形成されている。
【0036】
そして、成形用スリット33における流路13a,13b,13cに対応する部分には、それぞれ突起31を含む棒状成形部23bの端面と同形の閉塞部33a,33b,33cが形成されている。このように形成されたプレート部24は、成形用スリット33における医療用チューブ10の流路13dに対応する部分(図11における左上部分における周縁部から一定距離を保った部分)に、ランド部23の棒状成形部23aの先端部を位置させた状態でボルト(図示せず)を介してブッシング28の前面に固定される。このとき、プレート部24の後面中央部は、棒状成形部23bおよび突起31の先端面に当接するか、または、その先端面との間に成形用材料が進入できない僅かな隙間を形成した状態になる。
【0037】
これによって、プレート部24の中央部には、成形用スリット33と棒状成形部23aとで構成される医療用チューブ10の端面と同形の空間部が形成される。この空間部で本発明の先端側成形空間部の先端部が構成される。なお、図11に実線で示したプレート部24における成形用スリット33の縁部は、外形成形金型の一部を構成し、成形用スリット33内に位置する棒状成形部23aの先端部の周面は、医療用チューブ10の内形を形成するための部分になる。また、棒状成形部23bの後部側部分は、医療用チューブ10の内形を形成する部分になり、棒状成形部23bの先端側部分は、医療用チューブ10の外形を形成する部分になる。
【0038】
また、プレート部24の厚みと、棒状成形部23aの突出した先端部の長さとは同じ長さに設定され、棒状成形部23aの先端面がプレート部24の前面と同一面上に位置する。なお、図示していないが、押出成形用金型20が取り付けられる押出成形装置には、押出成形用金型20と押出成形装置とをつなぎ、材料入口29から材料通路29a側に成形用材料を送り込むアダプタ、材料入口29に送り込む成形用材料を加熱する加熱シリンダー、加熱シリンダー内に設置されたスクリュー、押出成形用金型20の周辺に設けられた各装置を制御する制御装置等、押出成形用金型20を用いて押出成形を行うために必要な各装置や機構が備わっている。
【0039】
このように構成された押出成形用金型20を用いて、医療用チューブ10を成形する場合には、まず、押出成形用金型20を適正温度に加熱にしたのちに、材料投入口(図示せず)に投入した成形用材料を加熱シリンダーで加熱しながらスクリューで送り出して、アダプタを介して材料通路29a内に充填する。ついで、さらに成形用材料を送り出して、成形用材料を材料通路29aから後部側成形空間部内に移動させていく。このとき、成形用材料は、凹部25bの内周面とストレート部22bの外周面との間の隙間で円筒状に形成され、さらに凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間を通過する間に成形用材料は徐々に直径の小さな円筒状に変形していく。
【0040】
そして、成形用材料は、凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間から凹部28aの内周面とランド部23の後部側部分の外周面とで形成される先端側成形空間部内の後部側部分に移動していく。これによって、円筒状の成形用材料は、図6に、二点鎖線で示した凹部28aの内部側全体から棒状成形部23a,23bの部分を除いた領域に充填される。ここでは、流路13b,13dが形成される。また、この領域では、断面積あたりの成形用材料の量は、凹部27aの内周面とテーパ部22cの外周面との間の隙間の先端部分よりも多くなる。
【0041】
そして、成形用材料が先端側成形空間部内の後部側部分の前方側に移動すると、成形用材料は、先端側成形空間部内における突起31が形成された部分には充填されなくなる。このため、成形用材料は、図7に、二点鎖線で示した凹部28aの内部側全体から棒状成形部23a,23bおよび突起31の部分を除いた領域に充填される。ここでは、流路13b,13dに加えてスリット14bが形成される。そして、成形用材料は、プレート部24に達したところで、プレート部24の裏面に沿って絞られながら成形用スリット33と棒状成形部23aとで形成される空間部内を通過して外部に押し出される。
【0042】
外部に押し出された成形体は、冷却され略相似形のまま40〜70%程度に収縮したのちに医療用チューブ10として使用される。この押出成形の際、成形用材料は、適度な温度に加熱されて材料通路29aからプレート部24の成形用スリット33に移動するまでに徐々に変形していくため、無理なく成形されていく。そして、プレート部24に到達する前に、先端側成形空間部内の後部側部分でやや多めの成形用材料が溜まるため、プレート部24の成形用スリット33には、充分な成形用材料が供給されるようになり、得られた医療用チューブ10は寸法精度、特に肉厚が設計通りの良好な成形品になる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る医療用チューブの押出成形用金型20および押出成形方法では、材料入口29から材料通路29a内に投入された成形用材料を、後部側成形空間部内で円筒状に形成したのちに、徐々に医療用チューブ10の太さに近づけるようにしている。そして、先端側成形空間部の後部側部分の内部に位置するランド部23を、医療用チューブ10の流路13dに対応する棒状成形部23aと、流路13bに対応する棒状成形部23bとだけで構成している。このため、先端側成形空間部の後部側部分においては、医療用チューブ10の断面形状に対応する部分だけでなく、流路13a,13cに対応する部分にも成形用材料が充填される。これによって、先端側成形空間部の前端部に位置するプレート部24の成形用スリット33に供給される成形用材料の量が少なくなって充分な肉厚の医療用チューブ10が成形できなくなるといったことが生じなくなる。
【0044】
また、本実施形態に係る押出成形用金型20では、プレート部24の成形用スリット33の所定部分に棒状成形部23aの先端部を延ばすことによって、周面が閉塞された流路13dを形成することができる。さらに、突起31や閉塞部33a,33b,33cを設けることによって、スリット14a,14b,14cによって外部と連通した流路13a,13b,13cを形成することができる。このため、周面が閉塞された流路13dや外部と連通した流路13a,13b,13cを容易に形成することができる。また、本実施形態によれば、軟質の熱可塑性樹脂であるポリウレタンを用いても、複雑な形状の医療用チューブ10を良好な状態で成形することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図12および図13は、本発明の第2実施形態に係る押出成形用金型で成形された医療用チューブ40を示している。この医療用チューブ40は、断面形状が略長円形の外周部41と、外周部41の内部に軸方向に沿って形成された断面形状がH字形の隔壁部42(本発明に係る軸部)とで構成されている。隔壁部42を構成する各片の先端部はそれぞれ外周部41の内面に連結されて、外周部41の内部を四つの流路43a,43b,43c,43dに区分している。そして、外周部41における流路43a,43b,43cに対応する部分にそれぞれ流路43a,43b,43cを外部に連通させるためのスリット44a,44b,44cが、それぞれ隔壁部42の延びる方向と平行に形成されている。
【0046】
また、医療用チューブ40の外周面における流路43dが形成された部分には、X線を通さない不透過性材料からなるライン45が設けられている。このライン45は、体内に留置された医療用チューブ40の位置をX線照射により確認する際に利用される。また、図14ないし図16には、ピン52の要部(被固定部を除いた部分)を示している。このピン52は、被固定部(図示せず)の前端から前方に向かって延びる軸方向の長さが短い円柱状のストレート部52aと、ストレート部52aの前端から前方に向かって延び前端側が徐々に細くなった円錐台状のテーパ部52bと、テーパ部52bの前端から前方に向って延び先端側に行くほど断面形状が長円形になる先細り扁平状の扁平テーパ部52cと、ランド部53とで構成されている。
【0047】
また、図示していないが、このピン52が取り付けられる外形成形金型は、前述したブッシング27,28の凹部27a,28aを、扁平テーパ部52cとランド部53に対応する形状にするとともに、ブッシングホルダ部26およびブッシング27の前寄りの部分に、不透過性材料を成形空間内に供給するための流路を設けた構成になっている。そして、外形成形金型の前端部は、図17に示した成形用スリット55を備えたプレート部54で構成されている。そして、ストレート部52a、テーパ部52bおよび扁平テーパ部52cの外周面と、それに対応する外形成形金型の凹部の内周面との間には、成形用材料が移動するための隙間が形成されており、この隙間で本発明に係る後部側成形空間部が構成される。
【0048】
また、ピン52の先端部を構成するランド部53は、扁平テーパ部52cの先端部に設けられており、図14ないし図16に示したように2本の棒状体で構成されている。すなわち、ランド部53は、断面形状が略半円状の2つの棒状成形部53a,53bで構成されている。この2つの棒状成形部53a,53bは、扁平テーパ部52cの前端面の長手方向の両側に円弧状部分をそれぞれ外部側に向け、互いに間隔を保って対向した状態で形成されており、平行に配置されている。棒状成形部53a,53bの前後方向の後部側部分と前部側部分とはともに同じ太さで延びているが、中央部分は後部よりも前部が徐々に細くなったテーパ部で構成されており、これによって、棒状成形部53a,53bは先細りになっている。また、棒状成形部53aの先端部分は棒状成形部53bの先端部分よりも長くなっている。
【0049】
このランド部53の外周面と外形成形金型の凹部の内周面との間および棒状成形部53a,53b間には、大きな隙間が形成されており、この隙間で本発明の先端側成形空間部の後部側部分が構成される。すなわち、先端側成形空間部の後部側部分には、医療用チューブ40が備える流路43a等のうちの流路43a,43cを形成する部分が備わっていない。したがって、先端側成形空間部の後部側部分では、医療用チューブ40が備える流路43a等のうちの流路43b,43dに対応する部分だけが形成される。棒状成形部53aが流路43dに対応し、棒状成形部53bが流路43bに対応する。また、棒状成形部53aの前端面には、ピン52の後部側から延びてくるエア吐出用孔56の先端部が開口している。
【0050】
プレート部54は、前述したプレート部24において、成形用スリット33に代えて成形用スリット55を設けた構成になっている。この成形用スリット55の縁部の形状は、医療用チューブ40の端面の縁部の形状から流路43dに対応する半円形部分を除いた形状に形成されている。そして、プレート部54における流路43a,43b,43cおよびスリット44a,44b,44cを形成する部分は、それぞれ流路43a,43b,43cおよびスリット44a,44b,44cの断面形状と同形の閉塞部55a,55b,55cで構成されている。
【0051】
このように形成されたプレート部24は、成形用スリット55における流路43dに対応する部分に棒状成形部53aの先端部を位置させた状態でボルトを介してブッシングの前面に固定される。これによって、プレート部54の中央部には、成形用スリット55と棒状成形部53aとで構成される医療用チューブ40の端面と同形の空間部が形成される。この空間部で本発明の先端側成形空間部の先端部が構成される。この第2実施形態のそれ以外の部分の構成については、前述した第1実施形態と同一である。
【0052】
また、本実施形態によると、スリット44a,44b,44cを備えた扁平な医療用チューブ40を一度の押出成形で成形できる。このため、医療用チューブ40の成形後に、加工処理によってスリットを設ける必要がなくなる。この結果、製造工程を減少でき製造コストの低減化も図れる。この第2実施形態のそれ以外の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
【0053】
また、本発明に係る医療用チューブの押出成形用金型および押出成形方法は、前述した実施形態に限定するものでなく、本発明の技術範囲内で適宜変更が可能である。例えば、前述した各実施形態では、医療用チューブ10等にそれぞれ三つのスリット14a等を形成しているが、このスリットをすべての流路に対応する部分にも設けてもよい。また、医療用チューブ10等に形成するスリットを一つまたは二つにしてもよいし、スリットを設けなくてもよい。
【0054】
さらに、医療用チューブに形成する流路も四つに限らず他の複数にしてもよい。また、医療用チューブの形状も前述した実施形態の形状に限らず適宜変更することができる。さらに、前述した第1実施形態の医療用チューブ10にも、X線を通さない不透過性材料からなるラインを設けることができる。また、医療用チューブを構成する軟質の熱可塑性樹脂についてもポリウレタンに限らずポリ塩化ビニル等の他の材料を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態により成形された医療用チューブを示した斜視図である。
【図2】押出成形用金型の断面図である。
【図3】ピンの先端側部分を示した側面図である。
【図4】ピンの先端側部分を示した断面図である。
【図5】ランド部を拡大した側面図である。
【図6】図3の6−6断面図である。
【図7】図3の7−7断面図である。
【図8】図3の8−8断面図である。
【図9】プレート部の正面図である。
【図10】図9の10−10断面図である。
【図11】プレート部の成形用スリットを拡大した正面図である。
【図12】本発明の第2実施形態により成形された医療用チューブを示した側面図である。
【図13】第2実施形態により成形された医療用チューブの端面を示した正面図である。
【図14】ピンの先端側部分を示した平面図である。
【図15】ピンの先端側部分を示した側面図である。
【図16】ピンの先端側部分を示した正面図である。
【図17】プレート部の成形用スリットを拡大した正面図である。
【符号の説明】
【0056】
10,40…医療用チューブ、12,42…隔壁部、13a,13b,13c,13d,43a,43b,43c,43d…流路、14a,14b,14c,44a,44b,44c…スリット、20…押出成形用金型、21…金型本体、22,52…ピン、22c,52b…テーパ部、23,53…ランド部、23a,23b,53a,53b…棒状成形部、24,54…プレート部、27a,28a…凹部、33,55…成形用スリット、52c…扁平テーパ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を挟んで複数の流路が形成された医療用チューブを成形するための押出成形用金型であって、
後部側から先端側に貫通する凹部が形成された外形成形金型と、
前記外形成形金型の凹部内に設置され前記凹部の後部側部分の内周面との間に成形用材料を通過させる先細り円筒状の後部側成形空間部を形成し、先端部が前記凹部の先端側部分の内周面との間に前記医療用チューブを形成するための断面形状を備えた先端側成形空間部を形成するランド部で構成された内形成形ピンとを備え、
前記先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を前記医療用チューブの断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状を前記ランド部における前記複数の流路に対応する各部分の少なくとも一つの部分を取り除いてその部分を前記成形用材料が通過する空間にした形状にしたことを特徴とする医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項2】
前記外形成形金型の先端部を前記後部側成形空間部から移動してくる前記成形用材料の外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、前記ランド部の一部を前記プレート部の外面形成用凹部内の所定位置に伸ばし、前記ランド部のプレート部内に位置する部分で、成形される医療用チューブに周面が閉塞された流路を形成できるようにした請求項1に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項3】
前記先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面に十字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、前記リング状の空間部の所定部分を閉塞して前記形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にした請求項1または2に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項4】
前記先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面にH字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、前記リング状の空間部の所定部分を閉塞して前記形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にした請求項1または2に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項5】
前記成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂である請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の押出成形用金型を用いて医療用チューブを成形する医療用チューブの押出成形方法であって、
前記外形成形金型の凹部内に前記内形成形ピンを設置して形成される先細り円筒状の後部側成形空間部内に成形用材料を通過させて前記成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、
前記先端側成形空間部の後部側部分で、前記先細り円筒形成工程で形成された成形用材料の円形の断面形状を、前記複数の流路のうちの少なくとも一つの流路を形成する部分に前記成形用材料を充填させた形状である前記円形の断面形状と前記医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、
前記先端側成形空間部の先端部で、前記中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を前記医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程と
を備えたことを特徴とする医療用チューブの押出成形方法。
【請求項7】
前記最終形状形成工程で形成される前記成形用材料の断面形状を、リング状部の内面に十字形に形成された前記軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、前記リング状部の所定部分を切り欠いて前記四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させた請求項6に記載の医療用チューブの押出成形方法。
【請求項8】
前記最終形状形成工程で形成される前記成形用材料の断面形状を、リング状部の内面にH字形に形成された前記軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、前記リング状部の所定部分を切り欠いて前記四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させた請求項6に記載の医療用チューブの押出成形方法。
【請求項9】
前記成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂である請求項6ないし8のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブの押出成形方法。
【請求項1】
軸部を挟んで複数の流路が形成された医療用チューブを成形するための押出成形用金型であって、
後部側から先端側に貫通する凹部が形成された外形成形金型と、
前記外形成形金型の凹部内に設置され前記凹部の後部側部分の内周面との間に成形用材料を通過させる先細り円筒状の後部側成形空間部を形成し、先端部が前記凹部の先端側部分の内周面との間に前記医療用チューブを形成するための断面形状を備えた先端側成形空間部を形成するランド部で構成された内形成形ピンとを備え、
前記先端側成形空間部の断面形状のうち、先端部の断面形状を前記医療用チューブの断面形状と同じにし、後部側部分の断面形状を前記ランド部における前記複数の流路に対応する各部分の少なくとも一つの部分を取り除いてその部分を前記成形用材料が通過する空間にした形状にしたことを特徴とする医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項2】
前記外形成形金型の先端部を前記後部側成形空間部から移動してくる前記成形用材料の外側に沿った面を形成する外面形成用凹部を備えたプレート部で構成し、前記ランド部の一部を前記プレート部の外面形成用凹部内の所定位置に伸ばし、前記ランド部のプレート部内に位置する部分で、成形される医療用チューブに周面が閉塞された流路を形成できるようにした請求項1に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項3】
前記先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面に十字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、前記リング状の空間部の所定部分を閉塞して前記形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にした請求項1または2に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項4】
前記先端側成形空間部の先端部の断面形状を、リング状の空間部の内面にH字形の空間部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を形成可能にするとともに、前記リング状の空間部の所定部分を閉塞して前記形成可能な四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させることのできる形状にした請求項1または2に記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項5】
前記成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂である請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブを成形するための押出成形用金型。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の押出成形用金型を用いて医療用チューブを成形する医療用チューブの押出成形方法であって、
前記外形成形金型の凹部内に前記内形成形ピンを設置して形成される先細り円筒状の後部側成形空間部内に成形用材料を通過させて前記成形用材料を先細り円筒状に形成する先細り円筒形成工程と、
前記先端側成形空間部の後部側部分で、前記先細り円筒形成工程で形成された成形用材料の円形の断面形状を、前記複数の流路のうちの少なくとも一つの流路を形成する部分に前記成形用材料を充填させた形状である前記円形の断面形状と前記医療用チューブの断面形状との中間の形状に形成する中間形状形成工程と、
前記先端側成形空間部の先端部で、前記中間形状形成工程で形成された成形用材料の断面形状を前記医療用チューブの断面形状に形成する最終形状形成工程と
を備えたことを特徴とする医療用チューブの押出成形方法。
【請求項7】
前記最終形状形成工程で形成される前記成形用材料の断面形状を、リング状部の内面に十字形に形成された前記軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、前記リング状部の所定部分を切り欠いて前記四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させた請求項6に記載の医療用チューブの押出成形方法。
【請求項8】
前記最終形状形成工程で形成される前記成形用材料の断面形状を、リング状部の内面にH字形に形成された前記軸部の各先端部をそれぞれ連結して四つの流路を備えた形状にするとともに、前記リング状部の所定部分を切り欠いて前記四つの流路のうちの少なくとも一つの流路を外部に連通させた請求項6に記載の医療用チューブの押出成形方法。
【請求項9】
前記成形用材料が軟質の熱可塑性樹脂である請求項6ないし8のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブの押出成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−5842(P2010−5842A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165730(P2008−165730)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
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