説明

半導体ウエハ冷却装置

【課題】被照射物たる半導体ウエハの温度ばらつきを抑制しつつ冷却する半導体ウエハ冷却装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管2と、載置面に開口を有してトレイ1に設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハ10を吸着する真空配管3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば放射線を照射する際の被照射物である半導体ウエハを載置して冷却するトレイを備える半導体ウエハ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
p型半導体材料中で電子が再結合する時間、あるいはn型半導体材料でホールが再結合する時間のことを少数キャリアのライフタイムという。導通後に残る少数キャリアがより迅速に再結合するようにライフタイムを制御する必要があり、このライフタイム制御は、金や白金等の重金属を拡散したり電子やプロトン等の荷電粒子を照射することにより行われる。
【0003】
このような放射線照射工程における半導体ウエハの温度上昇を防ぐために、半導体ウエハを載置するトレイに、冷却水などの冷媒が流れる冷却配管を設けてウエハを冷却する。例えば特許文献1に記載の電子線照射用被処理物搬送装置では、被処理物を載置するトレイと密着する水冷板の内部に冷却配管が蛇行配置されており、当該冷却配管を流れる冷却水によって被処理物を冷却する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−312764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように冷却配管を蛇行配置することによって、1本の冷却配管によってトレイの全面を冷却することが可能である。しかし、このような冷却配管の配置構造では、冷却配管の真上に位置する部分と配管間の真上に位置する部分とでトレイの冷却性能が異なるため、半導体ウエハとトレイの接触位置によって単一のウエハ内でも温度差が生じてしまう。さらに、上流と下流では冷媒の温度が異なるため、トレイ上の載置位置によってウエハ間で温度差が生じてしまう。
【0006】
また、被照射物である半導体ウエハに反りがあると、同一半導体ウエハ内においてトレイと接触している部分とそうでない部分が発生し、これらの部分に温度差が生じてしまう。
【0007】
このような半導体ウエハの面内やウエハ間で生じる温度差によって、半導体ウエハから切り出して製作する半導体デバイスにおいてライフタイムやその他の電気特性にばらつきが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑み、例えば放射線照射工程において被照射物たる半導体ウエハの温度ばらつきを抑制しつつ冷却する半導体ウエハ冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、前記載置面に開口を有して前記トレイに設けられ、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを吸着する真空配管と、を備える。
【0010】
本発明の第2の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に両端間で折り返し状に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる一の冷却配管とを備え、前記半導体ウエハから切り出す正方形チップの一辺をa(mm)とし、前記冷却配管の側壁厚みをb(mm)とした場合に、前記冷却配管の隣り合う配管との距離c(mm)が
【0011】
【数1】

【0012】
を満たす。
【0013】
本発明の第3の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる一対の冷却配管とを備え、前記冷却配管の夫々は複数の配管を並列接続した構成であり、一方の前記冷却配管を構成する配管は前記載置面に平行な面内で他方の前記冷却配管を構成する配管と交互に配置される。
【0014】
本発明の第4の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハの外周部に前記載置面の反対側から当接して前記半導体ウエハを前記載置面に押圧するクランプリングと、を備える。
【0015】
本発明の第5の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に前記載置面に渡って面状に設けられ、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、を備える。
【0016】
本発明の第6の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、前記冷却配管内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の半導体ウエハ冷却装置は、載置面に開口を有してトレイに設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハを吸着する真空配管を備えるため、半導体ウエハ面内での温度差を抑制することが可能である。
【0018】
本発明の第2の半導体ウエハ冷却装置では、前記半導体ウエハから切り出す正方形チップの一辺をa(mm)とし、前記冷却配管の側壁厚みをb(mm)とした場合に、冷却配管の隣り合う配管との距離c(mm)が
【0019】
【数1】

【0020】
を満たすことにより、少なくとも正方形チップの1/2以上の範囲の直下に冷却配管2が構成されるため、冷却効率が向上する。
【0021】
本発明の第3の半導体ウエハ冷却装置において、一対の冷却配管の夫々は複数の配管を並列接続した構成であり、一方の前記冷却配管を構成する配管は前記載置面に平行な面内で他方の前記冷却配管を構成する配管と交互に配置されることにより、各配管と半導体ウエハまでの距離は等しくなる。冷却配管2a,2bで冷却水の流れる方向を反対向きにすれば、トレイのどこに半導体ウエハを載置しても均等に冷却することが可能で、ウエハ間の温度ムラを抑制することが出来る。
【0022】
本発明の第4の半導体ウエハ冷却装置では、載置面上に載置された半導体ウエハの外周部に前記載置面の反対側から当接して前記半導体ウエハを前記載置面に押圧するクランプリングにより、半導体ウエハとトレイの載置面との密着性が向上するため、半導体ウエハは全面がムラなくトレイによって冷却され、ウエハ面内での温度ムラを抑制する。
【0023】
本発明の第5の半導体ウエハ冷却装置は、トレイ内に載置面に渡って面状に設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管を備えるため、トレイの全面をムラなく冷却することができ、ウエハ面内の温度差を抑制する。
【0024】
本発明の第6の半導体ウエハ冷却装置は、冷却配管内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段を備えるため、冷媒流の上流側と下流側で生じる温度差を緩和し、ウエハ間の温度差を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図2】実施の形態2の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図3】実施の形態3の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図4】実施の形態3の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図5】実施の形態4の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図6】実施の形態4の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図7】実施の形態5の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【図8】実施の形態5の半導体ウエハ冷却装置の変形例の構成図である。
【図9】実施の形態6の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の半導体ウエハ冷却装置の構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図である。
【0027】
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10が載置される。トレイ1の内部には冷却配管2が形成されており、冷却配管2を流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。例えば、冷却配管2は図1(a)に示すようにトレイ1の両端間で折り返し状に配置(蛇行配置)された1本の冷却配管である。
【0028】
さらにトレイ1の内部には、冷却配管2に干渉しないように真空配管3が形成され、トレイ1の載置面には真空配管3の開口が形成される。真空配管3内部は真空ポンプによって減圧された状態にあり、トレイ1の載置面に設けられた開口を通して半導体ウエハ10をトレイ1の載置面に真空吸着させることが可能である。
【0029】
すなわち、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管2と、載置面に開口を有してトレイ1に設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハ10を吸着する真空配管3とを備える。真空配管3で真空吸着されることにより、半導体ウエハ10はトレイ1に対して隙間を設けることなくその全面がトレイ1と接触する。半導体ウエハ10は全面がムラなくトレイ1によって冷却されるため、ウエハ面内での温度ムラが小さくなるという効果を奏する。
【0030】
なお、図1には半導体ウエハ10の中心に位置するよう真空配管3の開口を設けた場合の例を示しているが、開口の数を増やすことによって半導体ウエハ10とトレイ1との密着性をさらに高めることが可能である。
【0031】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置によれば、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管2と、載置面に開口を有してトレイ1に設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハ10を吸着する真空配管3とを備える。真空配管3で真空吸着されることにより、半導体ウエハ10はトレイ1に対して隙間を設けることなくその全面がトレイ1と接触するため、半導体ウエハ10は全面がムラなくトレイ1によって冷却され、ウエハ面内での温度ムラが小さくなるという効果を奏する。
【0032】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10(図1参照)が載置される。トレイ1の内部には冷却配管2が形成されており、冷却配管2を流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。冷却配管2はトレイ1の両端間で折り返し状に配置(蛇行配置)された1本の冷却配管である。
【0033】
半導体ウエハ10から切り出される正方形チップの一辺をa(mm)とし、冷却配管2の側壁厚みをb(mm)とした場合に、冷却配管2の隣り合う配管との距離(配管間隔)c(mm)が
【0034】
【数2】

【0035】
を満たすようにする。例えば正方形チップの一辺をa=22.5(mm)、冷却配管2の側壁厚みをb=1.25(mm)とすると、配管間隔c≦8.75(mm)となる。このような構成により、少なくとも正方形チップの1/2以上の範囲の直下に冷却配管2が構成されるため、冷却効率が向上する。
【0036】
なお、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置に、実施の形態1で述べた真空配管3を適用すれば、冷却効率の向上に加えてウエハ面内での温度ムラが小さくすることが出来る。
【0037】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置によれば、既に述べたとおり以下の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、冷却配管2はトレイ1内に両端間で折り返し状に配置された一の冷却配管であり、半導体ウエハ10から切り出す正方形チップの一辺をa(mm)とし、冷却配管2の側壁厚みをb(mm)とした場合に、冷却配管2の隣り合う配管との距離c(mm)が式(1)を満たすことにより、少なくとも正方形チップの1/2以上の範囲の直下に冷却配管2が構成されるため、冷却効率が向上する。
【0038】
(実施の形態3)
図3、図4は実施の形態3の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10(図1参照)が載置される。トレイ1の内部には一対の冷却配管2a,2bが形成されており、冷却配管2a,2bを互いに逆方向に流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。
【0039】
冷却配管2a,2bは夫々、複数の枝配管が並列に接続された構成であり、冷却配管2aの枝配管と冷却配管2bの枝配管はトレイ1の載置面に平行な面において交互に配置される。
【0040】
図4(a)はトレイ1の裏面側(載置面と反対の面)から冷却配管2a,2bを見た図であり、図4(b)は図4(a)のA側から冷却配管2a,2bを見た図、図4(c)は図4(a)のB側から冷却配管2a,2bを見た図、図4(d)は図3のC側から冷却配管2a,2bを見た図である。
【0041】
冷却配管2a,2bを構成する複数の配管はトレイ1の載置面に平行な面において交互に配置されるため、各配管と半導体ウエハ10までの距離は等しく、さらに冷却配管2a,2bで冷却水の流れる方向が異なるため、トレイ1のどこに半導体ウエハ10を載置しても均等に冷却することが可能で、ウエハ間の温度ムラを抑制することが出来る。
【0042】
また、トレイ1の両端部では冷却配管2bをトレイ1の裏面側にずらすことによって、互いに干渉することなくトレイ1の短手方向に冷却配管2a,2bを配設している。
【0043】
なお、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置に、実施の形態1で述べた真空配管3を適用すれば、ウエハ間の温度ムラの抑制とともにウエハ面内での温度ムラが小さくすることが出来る。
【0044】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が互いに逆方向に流れる一対の冷却配管2a,2bとを備え、冷却配管2a,2bの夫々は複数の枝配管を並列接続した構成であり、一方の冷却配管2aを構成する枝配管は前記載置面に平行な面内で他方の冷却配管2bを構成する枝配管と交互に配置される。これにより、トレイ1上の温度ムラが抑制されるためウエハ間やウエハ面内での温度ばらつきが減少する。
【0045】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。図5(a)はトレイ1の平面図、図5(b)は図5(a)のB−B断面図である。本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10が載置される。トレイ1の内部には冷却配管2が形成されており、冷却配管2を流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。冷却配管2は例えばトレイ1の両端間で折り返し状に配置(蛇行配置)された1本の冷却配管である。
【0046】
さらに、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10の外周部をトレイ1の載置面に対して押圧するクランプリング4を備えている。クランプリング4には様々な構成が考えられるが、例えば図5(b)に示すクランプリング4は3本の脚が冷却配管2と干渉することなくトレイ1の内部に埋め込まれており、当該脚がモータ駆動によってトレイ1の載置面に対して垂直方向に移動することによって、クランプリング4が半導体ウエハ10の外周部に当接、押圧する。
【0047】
これにより半導体ウエハ10とトレイ1の載置面との密着性が向上するため、半導体ウエハ10は全面がムラなくトレイ1によって冷却され、ウエハ面内での温度ムラが小さくなるという効果を奏する。
【0048】
あるいは、図6に示すように、トレイ1と一体にネジ1aを形成し、ローレットナット5を用いてクランプリング4を上からトレイ1の載置面に押さえつける構成にしても良い。このような場合はトレイ1に埋め込む構成部材を必要としないので、冷却配管2との干渉を考慮せずにクランプリング4を配置することが出来る。
【0049】
なお、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置に、実施の形態1〜3で述べた構成を適用することも可能である。
【0050】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管2と、載置面上に載置された半導体ウエハ10の外周部に載置面の反対側から当接して半導体ウエハ10を載置面に押圧するクランプリング4と、を備える。これにより半導体ウエハ10とトレイ1の載置面との密着性が向上するため、半導体ウエハ10は全面がムラなくトレイ1によって冷却され、ウエハ面内での温度ムラが小さくなるという効果を奏する。
【0051】
(実施の形態5)
図7は実施の形態5の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。図7(a)は半導体ウエハ冷却装置の平面図、図7(b),(c)は図7(a)のC−C断面図である。本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10(図1参照)が載置される。図7(a)に示すように本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置ではトレイ1の内部が中空形状となっている。
【0052】
言い換えれば、トレイ1内には載置面に渡って面状の冷却配管6が設けられており、冷却配管6を流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。通常の冷却配管であれば、トレイ1において配管のある部分の真上と配管のない部分(配管間)の真上とに温度差が生じてしまうが、このように面状の冷却配管6を設けることによってトレイ1の全面がムラなく冷却され、ウエハ面内の温度差を抑制することが出来る。
【0053】
図7(b)には、面状の冷却配管6を唯一つ設けた場合を例示しているが、図7(c)に示すように、載置面に近い側の第一の冷却配管6aと、第一の冷却配管6aに対して載置面とは反対の側に設けた第二の冷却配管6bの二段構成にしても良い。冷却配管6a,6bにおいて冷媒流方向を反対向きにすることにより、冷却配管6a,6bの上流側と下流側の温度差が緩和され、ウエハ間の温度差を抑制することが出来る。
【0054】
なお、後述する実施の形態6の冷媒流方向切替手段を図7(b)の半導体ウエハ冷却装置に適用することにより、より一層ウエハ間の温度差を抑制することが出来る。
【0055】
<変形例>
図8は、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置の変形例の構成を示す平面図である。変形例では、冷却配管6に冷媒を導入する供給経路と、冷却配管6を通過した冷媒が外部に流出する流出経路をそれぞれ複数設ける。図8ではそれぞれ3つの経路を設けた場合を例示している。このように冷媒の供給経路と流出経路を複数に分岐することによって、冷却配管6内に冷媒が滞留することを防ぐ。
【0056】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハ10を載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に載置面に渡って面状に設けられ、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管6とを備えるため、トレイ1の全面がムラなく冷却され、ウエハ面内の温度差を抑制することが出来る。
【0057】
また、冷却配管2は載置面側に設けられた第一の冷却配管6aと、第一の冷却配管6aに対し載置面とは反対の側に設けられた第二の冷却配管6bとを備えることとし、第一、第二の冷却配管6a,6b内を冷媒が互いに逆方向に流れるようにすれば、冷却配管6a,6bの上流側と下流側の温度差が緩和され、ウエハ間の温度差を抑制することが出来る。
【0058】
さらに、冷媒を冷却配管6に導入する複数の供給経路と、冷媒を冷却配管6から外部に流出させる複数の流出経路とを備えることにより、冷媒が冷却配管6内に滞留することを防ぐ。
【0059】
(実施の形態6)
図9は、本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置の構成図である。本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置において、トレイ1にはその載置面に複数の半導体ウエハ10が載置される。トレイ1の内部には冷却配管2が形成されており、冷却配管2を流れる例えば冷却水などの冷媒によって半導体ウエハ10の冷却が行われる。例えば、冷却配管2は図9に示すようにトレイ1の両端間で折り返し状に配置(蛇行配置)された1本の冷却配管である。
【0060】
さらに、本実施の形態では冷却配管2内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段を備える。図9には冷媒流方向切替手段の一例を示しているが、冷却配管2の供給経路と流出経路が連結配管9aで連結され、連結配管9aの上流側で供給経路と流出経路が連結配管9bで連結される。連結配管9a,9bには配管バルブ8b、8aが夫々設けられ、供給経路と流出経路の夫々において連結配管9a,9bの間に配管バルブ7a、7bが夫々設けられている。以上が冷媒流方向切替手段の構成である。
【0061】
配管バルブ7a、7bを開けて配管バルブ8a、8bを閉めると図の実線矢印の方向に冷媒が流れ、配管バルブ7a、7bを閉めて配管バルブ8a,8bを開けると図の点線矢印の方向に冷媒が流れる。このように適宜冷媒流方向を切り替えることによって、冷媒流の上流側と下流側で生じる温度差を緩和することが可能である。これによりウエハ間の温度差を抑制可能である。
【0062】
なお、本実施の形態の冷媒流方向切替手段は、実施の形態1,2,4,5の半導体ウエハ冷却装置に適用することが可能で、ウエハ間の温度差を抑制する効果を奏する。
【0063】
<効果>
本実施の形態の半導体ウエハ冷却装置は、半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイ1と、トレイ1内に配置され、載置面上に載置された半導体ウエハ10を冷却する冷媒が流れる冷却配管2と、冷却配管2内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段とを備える。これにより、冷媒流の上流側と下流側で生じる温度差を緩和し、ウエハ間の温度差を抑制することが出来る。
【0064】
(その他)
以上、本発明を種々の実施例について説明したが、これらの実施例を適宜に組み合わせて本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 トレイ、1a ネジ 2,2a,2b,6,6a,6b 冷却配管、3 真空配管、4 クランプリング、5 ローレットナット、7a,7b,8a,8b 配管バルブ、9a,9b 連結配管、10 半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、
前記載置面に開口を有して前記トレイに設けられ、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを吸着する真空配管と、を備える半導体ウエハ冷却装置。
【請求項2】
前記冷却配管は、前記トレイ内に両端間で折り返し状に配置された一の冷却配管であり、
前記半導体ウエハから切り出す正方形チップの一辺をa(mm)とし、前記冷却配管の側壁厚みをb(mm)とした場合に、前記冷却配管の隣り合う配管との距離c(mm)が
【数3】

を満たす請求項1に記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項3】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に両端間で折り返し状に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる一の冷却配管とを備え、
前記半導体ウエハから切り出す正方形チップの一辺をa(mm)とし、前記冷却配管の側壁厚みをb(mm)とした場合に、前記冷却配管の隣り合う配管との距離c(mm)が
【数4】

を満たす半導体ウエハ冷却装置。
【請求項4】
前記冷却配管は前記冷媒が互いに逆方向に流れる一対の冷却配管であり、
前記冷却配管の夫々は複数の枝配管を並列接続した構成であり、
一方の前記冷却配管を構成する枝配管は前記載置面に平行な面内で他方の前記冷却配管を構成する枝配管と交互に配置される請求項1に記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項5】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が互いに逆方向に流れる一対の冷却配管とを備え、
前記冷却配管の夫々は複数の枝配管を並列接続した構成であり、
一方の前記冷却配管を構成する枝配管は前記載置面に平行な面内で他方の前記冷却配管を構成する枝配管と交互に配置される半導体ウエハ冷却装置。
【請求項6】
前記載置面上に載置された前記半導体ウエハの外周部に前記載置面の反対側から当接して前記半導体ウエハを前記載置面に押圧するクランプリングをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項7】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、
前記載置面上に載置された前記半導体ウエハの外周部に前記載置面の反対側から当接して前記半導体ウエハを前記載置面に押圧するクランプリングと、を備える半導体ウエハ冷却装置。
【請求項8】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に前記載置面に渡って面状に設けられ、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、を備える半導体ウエハ冷却装置。
【請求項9】
前記冷却配管は、
前記載置面側に設けられた第一の冷却配管と、
前記第一の冷却配管に対し前記載置面とは反対の側に設けられた第二の冷却配管とを備え、
前記第一、第二の冷却配管内を前記冷媒が互いに逆方向に流れる請求項8に記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項10】
前記冷媒を前記冷却配管に導入する複数の供給経路と、
前記冷媒を前記冷却配管から外部に流出させる複数の流出経路とをさらに備える請求項8又は9に記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項11】
前記冷却配管内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段をさらに備える、請求項1〜3,7〜10のいずれかに記載の半導体ウエハ冷却装置。
【請求項12】
半導体ウエハを載置する載置面を有するトレイと、
前記トレイ内に配置され、前記載置面上に載置された前記半導体ウエハを冷却する冷媒が流れる冷却配管と、
前記冷却配管内における冷媒の流れる方向を切り替える冷媒流方向切替手段と、を備える半導体ウエハ冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−43916(P2012−43916A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182728(P2010−182728)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】